IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公益財団法人鉄道総合技術研究所の特許一覧

特開2023-38046遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法
<>
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図1
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図2
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図3
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図4
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図5
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図6
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図7
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図8
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図9
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図10
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図11
  • 特開-遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038046
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/04 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
B61L29/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144938
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】影山 椋
(72)【発明者】
【氏名】長峯 望
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161RR03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たに検知手段を設けることなく、遮断桿の折損などの異常が発生しているか否かを適切に検知する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、踏切内を通行可能な開き位置と、踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、第1色及び第1色とは異なる第2色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿の折損を検出する遮断桿の折損検出装置において、遮断桿を含む画像から、遮断桿の軸方向における第1色の色成分の変化を示す第1波形と、第2色の色成分の変化を示す第2波形と、を取得する取得部と、第1波形及び第2波形のそれぞれの微分値を積算する演算部と、積算した結果から遮断桿の折損の有無を判定する判定部と、を有し、判定部は、遮断桿の軸方向における全長の範囲内で、第1波形及び第2波形の微分値を積算した積算値が0となる部位が一定の長さ連続するときに、遮断桿が折損していると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切内を通行可能な開き位置と、前記踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、第1色及び前記第1色とは異なる第2色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿の折損を検出する遮断桿の折損検出装置において、
前記遮断桿を含む画像から、前記遮断桿の軸方向における前記第1色の色成分の変化を示す第1波形と、前記第2色の色成分の変化を示す第2波形と、を取得する取得部と、
前記第1波形及び前記第2波形のそれぞれの微分値を積算する演算部と、
積算した結果から前記遮断桿の折損の有無を判定する判定部と、
を有し、
前記判定部は、前記遮断桿の軸方向における全長の範囲内で、前記第1波形及び前記第2波形の微分値を積算した積算値が0となる部位が一定の長さ連続するときに、前記遮断桿が折損していると判定する
ことを特徴とする遮断桿の折損検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遮断桿の折損検出装置において、
前記画像から前記第1色の画素の領域を抽出した第1の二値画像と、前記画像から前記第2色の画素の領域を抽出した第2の二値画像とを生成する二値画像生成部を有し、
前記取得部は、前記二値画像生成部にて生成された前記第1及び前記第2の二値画像を用いて、前記第1波形及び前記第2波形を取得する
ことを特徴とする遮断桿の折損検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遮断桿の折損検出装置において、
前記閉じ位置にある前記遮断桿を斜め上方から撮像する撮像装置と、
射影変換を行う画像補正部と、
を有し、
前記取得部は、前記射影変換をした後の画像を用いて前記第1波形及び前記第2波形を生成する
ことを特徴とする遮断桿の折損検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の遮断桿の折損検出装置において、
前記撮像装置により得られる画像から前記遮断桿の領域を切出した切出し画像を生成する生成部を有し、
前記画像補正部は、前記切出し画像に対して前記射影変換を行うことを特徴とする遮断桿の折損検出装置。
【請求項5】
踏切内を通行可能な開き位置と、前記踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、第1色及び前記第1色とは異なる第2色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿の折損検出方法であって、
前記遮断桿を含む画像から、前記遮断桿の軸方向における前記第1色の色成分の変化を示す第1波形と、前記第2色の色成分の変化を示す第2波形と、を取得する波形取得ステップと、
前記第1波形及び前記第2波形のそれぞれの微分値を積算する積算ステップと、
積算した結果から遮断桿の折損の有無を判定する判定ステップと、
を有し、
前記判定ステップは、前記遮断桿の軸方向における全長の範囲内で、前記第1波形及び前記第2波形の微分値を積算した積算値が0となる部位が一定の長さ連続するときに、前記遮断桿が折損していると判定する
ことを特徴とする遮断桿の折損検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断桿の折損検出装置及び遮断桿の折損検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路と一般道路とが交差する踏切には踏切保安設備が設けられている場合がある。踏切保安設備は、列車の安全な運行を確保するもので、踏切内を通行する歩行者や自動車や自動二輪車などの車両が、走行する列車に衝突することを防護する。踏切保安設備としては、例えば、踏切遮断機が挙げられる。踏切遮断機は、列車が踏切に接近すると遮断桿を降下させて歩行者や自動車が踏切内に侵入することを一時的に防止し、また、列車が踏切を通過すると遮断桿を上昇させて、歩行者や自動車が踏切を通行することを許容するものである。
【0003】
上述した遮断桿は、踏切に侵入する自動車によって折損されることがある。遮断桿の折損は、列車の安全な運行を妨げるものであるから、遮断桿が折損した場合には、折損した遮断桿を迅速に交換する必要がある。遮断桿の折損は、例えば、列車を運転する運転手、踏切を通行又は踏切近傍を歩行する歩行者により発見されることが多い。また、近年では、遮断桿の折損を自動的に検知する方法も考案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、例えば、遮断桿を昇降させるモータが正常に動作しているときの電流データから求められる時系列データの線形統計量および非線形統計量に基づいて異常の有無の判定基準を決定し、遮断桿が動作する毎に、上記モータを動作させたときの電流データと、決定した判定基準と、を比較することで、遮断桿に異常が発生しているか否かを検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-290549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮断桿の折損の検知は、遮断機や遮断桿に何らかの検知手段を設けることで実現するものである。現在、数多くの踏切が設けられており、各踏切に対して設置される遮断機に対して検知手段を設けることは、多額の費用や手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遮断機や遮断桿に新たに検知手段を設けることなく、遮断桿の折損などの異常が発生しているか否かを適切に検知することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る遮断桿の折損検出装置は、踏切内を通行可能な開き位置と、前記踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、第1色及び前記第1色とは異なる第2色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿の折損を検出する遮断桿の折損検出装置において、前記遮断桿を含む画像から、前記遮断桿の軸方向における前記第1色の色成分の変化を示す第1波形と、前記第2色の色成分の変化を示す第2波形と、を取得する取得部と、前記第1波形及び前記第2波形のそれぞれの微分値を積算する演算部と、積算した結果から前記遮断桿の折損の有無を判定する判定部と、を有し、前記判定部は、前記遮断桿の軸方向における全長の範囲内で、前記第1波形及び前記第2波形の微分値を積算した積算値が0となる部位が一定の長さ連続するときに、前記遮断桿が折損していると判定するものである。
【0008】
また、前記画像から前記第1色の画素の領域を抽出した第1の二値画像と、前記画像から前記第2色の画素の領域を抽出した第2の二値画像とを生成する二値画像生成部を有し、前記取得部は、前記マスク画像生成部にて生成された前記第1及び前記第2の二値画像を用いて、前記第1波形及び前記第2波形を取得するものである。
【0009】
また、前記閉じ位置にある前記遮断桿を斜め上方から撮像する撮像装置と、射影変換を行う画像補正部と、を有し、前記取得部は、前記射影変換をした後の画像を用いて前記第1波形及び前記第2波形を生成するものである。
【0010】
また、前記撮像装置により得られる画像から前記遮断桿の領域を切出した切出し画像を生成する生成部を有し、前記画像補正部は、前記切出し画像に対して前記射影変換を行うものである。
【0011】
また、本発明に係る遮断桿の折損検出方法は、踏切内を通行可能な開き位置と、前記踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、第1色及び前記第1色とは異なる第2色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿の折損検出方法であって、前記遮断桿を含む画像から、前記遮断桿の軸方向における前記第1色の色成分の変化を示す第1波形と、前記第2色の色成分の変化を示す第2波形と、を取得する波形取得ステップと、前記第1波形及び前記第2波形のそれぞれの微分値を積算する積算ステップと、積算した結果から遮断桿の折損の有無を判定する判定ステップと、を有し、前記判定ステップは、前記遮断桿の軸方向における全長の範囲内で、前記第1波形及び前記第2波形の微分値を積算した積算値が0となる部位が一定の長さ連続するときに、前記遮断桿が折損していると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、遮断機や遮断桿に新たに検知手段を設けることなく、遮断桿の折損などの異常が発生しているか否かを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態における踏切保安設備の一例を示す説明図である。
図2】遮断桿の折損を検出する折損検出装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】撮像された画像から遮断桿の領域を切り出した切出し画像を生成する際の説明図である。
図4図4(a)は破損していない遮断桿を撮像した画像から得られた切出し画像の一例を示す図、図4(b)は破損していない遮断桿を撮像したときに得られる黄色二値画像の一例を示す図、図4(c)は破損していない遮断桿を撮像したときに得られる黒色二値画像の一例を示す図である。
図5】遮断桿が破損していないときに得られる黄色成分波形及び黒色成分波形の一例を示す図である。
図6】遮断桿が破損していないときに得られる黄色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形、及び黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形の一例を示す図である。
図7】遮断桿が破損していないときに得られる黄色成分の輝度値の微分値と、黒色成分の輝度値の微分値とを積算した積算値の変化を示す波形である。
図8図8(a)は破損した遮断桿を撮像した画像から得られた切出し画像の一例を示す図、図8(b)は破損した遮断桿を撮像したときに得られる黄色二値画像の一例を示す図、図8(c)は破損した遮断桿を撮像したときに得られる黒色二値画像の一例を示す図である。
図9】遮断桿が折損しているときに得られる黄色成分波形及び黒色成分波形の一例を示す図である。
図10】遮断桿が折損しているときに得られる黄色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形、及び黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形の一例を示す図である。
図11】遮断桿が折損しているときに得られる黄色成分の輝度値の微分値と、黒色成分の輝度値の微分値とを積算した積算値の変化を示す波形である。
図12】遮断桿の折損の有無を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る踏切保安設備の一例について説明する。図1に示すように、踏切保安設備10は、例えば踏切遮断機11や踏切警報機12を含み、鉄道線路と一般道路とが交差する踏切において、列車の安全な運行を行い、また、踏切内を通行する歩行者や自動車やバイク等の車両の安全を確保するために、鉄道線路と一般道路とを分離する設備である。
【0015】
踏切遮断機11は、例えば、遮断機本体21及び遮断桿22を有する。遮断機本体21は、踏切警報機12の警報柱31、又は踏切遮断機11用に設置した警報柱23の上端部に取り付けられる。図1においては、遮断機本体21は、踏切遮断機11用に設置した警報柱23に取り付けられる場合を例示している。図示は省略するが、遮断機本体21は、駆動モータや開閉機構などを収納した筐体を有する。筐体は、内部に収納される開閉機構に接続された回転駆動軸を背面側で外部に露呈する。回転駆動軸は、遮断桿22の一端を保持する。
【0016】
遮断桿22は、例えばカーボンファイバーなどの合成樹脂材を用いた筒状の部材である。遮断桿22の外周面は、遮断桿22の軸方向に、例えば黄色及び黒色を交互に配置した縞模様に装飾される。縞模様において、遮断桿22の軸方向における黄色の領域の長さ(縞幅)は180~300mmの範囲、黒色の縞幅は120~200mmの範囲であり、また、黄色の縞幅と黒色の縞幅との比は3:2である。ここで、黄色及び黒色は、例えば日本工業規格(JIS Z 9101)により規定されている。また、遮断桿22における黄色の縞幅及び黒色の縞幅は、例えば日本工業規格(JIS E3701 1995)により規定されている。なお、図1においては、遮断桿22を縞模様とし、遮断機本体21及び警報柱23に対しては縞模様としていないが、実際には、遮断機本体21及び警報柱23の外周面に対しても、黄色及び黒色の縞模様の装飾が施されている。
【0017】
遮断桿22は、鉄道線路と一般道路が交差する踏切内に、歩行者や車両の進入を防止する閉じ位置(図1中実線)と、歩行者や車両が踏切内を通行することが可能な開き位置(図1中二点鎖線)との間で回動する。なお、本実施の形態では、閉じ位置と開き位置との間で、遮断桿22が回動する場合を説明するが、地面に対して水平に配置された遮断桿22を地面に対して鉛直な方向に移動させる(昇降させる)遮断機であってもよい。
【0018】
踏切警報機12は、例えば、警報柱31に、踏切標識32、警告灯33、方向指示器34、警報音発生器35及び撮像装置36などを備えている。踏切標識32は、前方に踏切があることを標示するもので、警報柱31の上端部に取り付けられる。警告灯33は、左右又は上下に設けた閃光灯33a,33bを交互に点灯することで、踏切に列車が接近していることを歩行者や車両を運転する運転者に視覚的に警告する。図1においては、左右に2つの閃光灯33a,33bを設けた警告灯33の場合を例示している。方向指示器34は、踏切に接近する列車の進行方向を、歩行者や自動車などの車両を運転する運転者に視覚的に警告する。また、警報音発生器35は、警報柱31の上端部に設けられ、踏切に列車が接近しているときに警告音を発生することで、歩行者や、車両を運転する運転者に列車が接近していることを聴覚的に警告する。撮像装置36は、警報柱31の上端部に設けられ、例えば閉じ位置にある踏切遮断機11の遮断桿22を撮像する。
【0019】
本実施の形態では、撮像装置36を警報柱31の上端部に設けた場合を説明するが、遮断桿22全体を撮像できればよいので、撮像装置36は、踏切近傍に設けられる他の柱に設けることも可能である。また、この他に、近年、踏切内の状態を撮像する撮像装置が設置されている場合もあるので、警報柱31に新たに撮像装置36を設置するのではなく、すでに設置されている撮像装置を用いることも可能である。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に示す折損検出装置41の電気的構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、折損検出装置41は、上述した撮像装置36により得られる画像を用いて、踏切遮断機11の遮断桿22の折損の有無を検出する装置である。なお、上述した踏切遮断機11、踏切警報機12、撮像装置36及び折損検出装置41は、踏切制御装置61により制御される。
【0021】
図2に示すように、折損検出装置41は、領域抽出部51、画像補正部52、色空間変換部53、二値画像生成部54、演算部55及び判定部56を有する。なお、演算部55は、請求項に記載の取得部及び演算部に相当する。
【0022】
領域抽出部51は、撮像装置36により撮像された画像P1を用いて、切出し画像CP1を生成する。図3に示すように、領域抽出部51は、画像P1において、遮断桿22が含まれる領域A1を、切出し画像CP1として抽出(トリミング)する。
【0023】
撮像装置36における撮像範囲(画角)は固定である。また、遮断桿22が閉じ位置にあるとき、撮像範囲に対する遮断桿22の位置は、ほぼ同一の位置である。したがって、閉じ位置にある遮断桿22が含まれる領域を抽出領域として予め設定し、領域抽出部51は、撮像装置36により撮像された画像P1から、予め設定した抽出領域を抽出して、切出し画像CP1を生成する。
【0024】
また、上述したように、遮断桿22の外周面は、黄色及び黒色の縞模様に装飾されている。したがって、画像P1を用いて、黄色の領域及び黒色の領域が一方向に交互に連続する矩形の範囲を、遮断桿22が含まれる領域として抽出することで、切出し画像CP1を生成してもよい。
【0025】
画像補正部52は、領域抽出部51により生成された切出し画像CP1に対して、画像補正を行う。上述したように、撮像装置36は、踏切警報機12の上端部に配置されている。切出し画像CP1は、遮断桿22の先端側に向けて幅狭となる台形状となる。そこで、画像補正部52は、切出し画像CP1に含まれる遮断桿22が長方形状となるように、切出し画像CP1に対して射影変換を行う。以下、射影変換を行った後の切出し画像CP1を切出し画像CP2と称する。
【0026】
射影変換は、例えば、切出し画像CP1における画素の画素値をsrc(i、j)、射影変換を行った切出し画像CP2における画素の画素値をdst(x,y)、変換行列をMとすると、射影変換を行った切出し画像CP2の画素の画素値dst(x,y)は、以下の(1)式で表わされる。
【0027】
【数1】
【0028】
また、変換行列Mは、以下の(2)式で表される。
【0029】
【数2】
【0030】
色空間変換部53は、射影変換を行った切出し画像CP2の色空間を変換する。例えば撮像装置36により撮像された画像P1や、切出し画像CP1,CP2における色空間は、赤(R)色、緑(G)色及び青(B)色で表されるRGB色空間である。したがって、色空間変換部53は、切出し画像CP1,CP2の色空間をRGB色空間から、色相(H)、彩度(S)及び明度(V)で表されるHSV色空間に変換し、切出し画像CP3を生成する。なお、切出し画像CP1,CP2の色空間がHSV色空間であれば、色空間変換部53による処理を行う必要はない。
【0031】
二値画像生成部54は、色空間が変換された切出し画像CP3を用いて、画素値が黄色の色成分を示す画素の領域を抽出した黄色二値画像MP1を生成する。また、二値画像生成部54は、色空間が変換された切出し画像CP3を用いて、画素値が黒色の色成分を示す画素の領域を抽出した黒色二値画像MP2を生成する。ここで、黄色二値画像MP1が請求項に記載の第1の二値画像に、黒色二値画像MP2が請求項に記載に第2の二値画像に各々相当する。
【0032】
図4(a)は、撮像装置36により得られる画像P1から生成される切出し画像CP1の一例を示す。また、図4(b)は、二値画像生成部54により生成された黄色二値画像MP1の一例、図4(c)は、二値画像生成部54により生成された黒色二値画像MP2の一例を示す。
【0033】
図4(b)に示すように、黄色二値画像MP1において、ハッチングされていない領域が、黄色の色成分を有する画素の領域(以下、黄色領域)Ma1となり、ハッチングされた領域が黄色以外の色成分を有する画素の領域となる。また、黄色二値画像MP1において、黄色領域Ma1に含まれる画素の輝度値は「255」となり、それ以外の領域に含まれる画素の輝度値は「0」となる。なお、図4(b)においては、引出線を出す必要があることから、黄色領域Ma1を除く領域に対してハッチングにて表しているが、実際には、黄色二値画像MP1において、黄色領域Ma1は白色、それ以外の領域は黒色で示される。
【0034】
また、図4(c)に示すように、黒色二値画像MP2において、ハッチングされていない領域が、黒色の色成分を有する画素の領域(以下、黒色領域)Ma2となり、ハッチングされた領域が黒色以外の色成分を有する画素の領域となる。また、黒色二値画像MP2において、黒色領域Ma2に含まれる画素の輝度値は「255」となり、それ以外の領域に含まれる画素の輝度値は「0」となる。なお、図4(c)においては、引出線を出す必要があることから、黒色領域Ma2を除く領域をハッチングにて表しているが、実際には、黒色二値画像MP2において、黒色領域Ma2は白色、それ以外の領域は黒色で示される。
【0035】
演算部55は、黄色二値画像MP1を用いて、黄色の色成分の変化を示す波形(以下、黄色成分波形)を求める。同時に、演算部55は、黒色二値画像MP2から黒色の色成分の変化を示す波形(以下、黒色成分波形)を求める。ここで、遮断桿22の軸方向をx方向、x方向に直交する方向をy方向とする。また、x方向を列方向、y方向を行方向とする。ここで、黄色成分波形が請求項に記載の第1波形に、黒色成分波形が請求項に記載の第2波形に各々相当する。
【0036】
まず、演算部55は、黄色二値画像MP1に含まれる画素のうち、同一列に位置する画素の輝度値の平均を輝度値Iyellow(x)として算出する。そして、演算部55は、輝度値Iyellow(x)を行ごとにプロットすることで、図5に示すように、黄色の色成分の輝度値Iyellow(x)の変化を示す黄色成分波形を求める。なお、同一列に位置する画素の輝度値の平均を輝度値Iyellow(x)として算出しているが、同一列に位置する画素の輝度値の平均値ではなく、同一行となる画素の輝度値の最頻値や中央値を輝度値Iyellow(x)として求めてもよい。
【0037】
同様にして、演算部55は、黒色二値画像MP2に含まれる画素のうち、同一列に位置する画素の輝度値の平均を輝度値Iblack(x)として算出する。そして、演算部55は、図5に示すように、輝度値Iblack(x)を行ごとにプロットすることで、黒色の色成分の輝度値Iblack(x)の変化を示す黒色成分波形を求める。なお、同一列に位置する画素の輝度値の平均を輝度値Iblack(x)として算出しているが、同一列に位置する画素の輝度値の平均値ではなく、同一行となる画素の輝度値の最頻値や中央値を輝度値Iblack(x)として求めてもよい。
【0038】
次に、演算部55は、求めた黄色成分及び黒色成分の輝度値の微分値を求める。以下、黄色成分の輝度値の微分値をIyellow(x)、黒色成分の輝度値の微分値をIblack(x)とする。図6は、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dx及び黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxから得られる波形である。このように、演算部55は、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxの変化を示す波形、及び黒色成分の微分値dIblack(x)/dxの変化を示す波形を求めることで、各色成分における輝度値の増減を識別することができる。
【0039】
最後に、演算部55は、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxと、黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxと、を積算する。積算値をIvとすると、積算値Ivは、以下の(3)式となる。図7は、積算値Ivの変化を示す波形の一例を示す。
Iv=dIyellow(x)/dx×dIblack(x)/dx・・・(3)
【0040】
判定部56は、演算部55により求められた積算値Ivの波形を参照して、遮断桿22に、折損などの異常が発生しているか否かを判定する。詳細には、判定部56は、遮断桿22の根元から遮断桿22の先端に相当する範囲に、一定の長さを超える積算値Iv=0となる範囲が含まれるか否かを判定する。同時に、判定部56は、折損していない場合の遮断桿22の先端に相当する位置に到達する前に積算値Iv=0となるか否かを判定することで、遮断桿22に、折損などの異常が発生しているか否かを判定する。
【0041】
図5は、黄色成分波形及び黒色成分波形の一例を示す。なお、図5において、黄色成分波形は実線、黒色成分波形は点線で示している。図5に示すように、黄色成分波形と黒色成分波形とにおいて、各々の成分波形の極大値は交互に入れ替わりながら推移する。すなわち、黄色成分波形において輝度値Iyellow(x)が極大値をとるとき、黒色成分波形において輝度値Iblack(x)は極小値をとることが多い。また、黄色成分波形において輝度値Iyellow(x)が極小値をとるとき、黒色成分波形において輝度値Iblack(x)は極大値をとることが多い。
【0042】
図6は、黄色成分の輝度値の微分値の変化及び黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形である。図6において、黄色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形を実線、黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形を点線で示している。図6に示すように、各色成分の輝度値の微分値は、行毎の平均輝度値をxで微分した値である。したがって、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxにおいて、遮断桿22の黄色の領域では正の値となり、遮断桿22の黒色の領域では、負の値となる。同様にして、黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxにおいて、遮断桿22の黒色の領域では正の値となり、遮断桿22の黄色の領域では、負の値をとることが多い。また、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxが正の値をとるとき、黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxが負の値をとることが多い。
【0043】
これは、遮断桿22の軸方向をx軸としたときに、黄色成分波形における輝度値Iyellow(x)と黒色成分波形における輝度値Iblack(x)とは極大値及び極小値を繰り返す状態となり、また、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxが増加するとき、黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxが減少する状態を繰り返すことに相当する。同時に、黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxが増加するとき、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dxが減少する状態を繰り返すことに相当する。
【0044】
したがって、図7に示すように、遮断桿22が折損していないときには、遮断桿22の根本から先端までに相当する範囲において、上述した積算値Ivは負の値となりやすい。なお、図示は省略しているが、遮断桿22の先端を超えると、積算値Ivは0となる。したがって、各色成分をxで微分した値dIyellow(x)/dx,dIblack(x)/dxを求め、これら値を積算すると、遮断桿22の背景の色や各処理の誤差により、積算値Ivが正となる場合もあるが、ほとんどの領域で積算値Ivは負の値となる。
【0045】
図4図7は、遮断桿22が破損していない場合の演算結果等を示す図である。図8図11は、遮断桿22が破損している場合の演算結果を示す図である。図8(a)から図8(c)は、遮断桿22が破損している場合の切出し画像CP1、黄色二値画像MP1及び黒色二値画像MP2の一例である。図9は、図8(b)に示す黄色二値画像MP1及び図8(c)に示す黒色二値画像MP2から得られる黄色成分波形及び黒色成分波形である。図10は、図9に示す黄色成分の輝度値の微分値及び黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形であり、図11は、黄色成分の輝度値の微分値及び黒色成分の輝度値の微分値を積算した積算値の変化を示す波形である。
【0046】
遮断桿22が例えば黒色の縞の部分で折損している(図8に示す位置x1で折損している)ときには、黄色領域Ma1は抽出されやすいが、黒色領域Ma2は遮断桿22の折損部位から遮断桿22の先端までの間で抽出されにくい。このとき、図9及び図10に示すように、遮断桿22の折損部位から遮断桿22の先端までの範囲において、黄色成分の輝度値Iyellow(x)の変化を示す黄色成分波形や黄色成分の輝度値Iyellow(x)の微分値Iyellow(x)/dxの変化を示す波形は得られる一方で、黒色成分の輝度値Iblack(x)の変化を示す黒色成分波形や黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxの変化を示す波形は得られにくい。なお、図9図10においても、黄色成分波形や、黄色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形を実線で、黒色成分波形や、黒色成分の輝度値の微分値の変化を示す波形を点線で示している。
【0047】
その結果、図11に示すように、遮断桿22が位置x1で折損しているとき、遮断桿22が折損している部位における積算値Iv=0となる長さL1が、例えば黒色の縞幅より長くなる。したがって、遮断桿22が折損していると判定される。なお、遮断桿22が折損している部位が遮断桿22の黄色の縞の部分となる場合もあるので、例えば積算値Iv=0となる長さが黒色の縞幅より長くなるか否かの他に、黄色の縞幅より長くなるか否かの判定も同時に行う。つまり、積算値Iv=0となる長さL1が、黄色の縞幅又は黒色の縞幅よりも長くなるか否かによって、遮断桿22が折損しているか否かが判定される。
【0048】
また、この他に、遮断桿22が折れて遮断桿22の先端側がなくなる場合には、遮断桿22の折れた部分から遮断桿22の先端側において、上述した黄色領域Ma1や黒色領域Ma2を得ることができない。すなわち、遮断桿22の折れた部分から遮断桿22の先端側において、黄色成分波形や黒色成分波形が得られず、上述した積算値Ivも0となる。したがって、この場合も、遮断桿22が折損していると判定される。
【0049】
さらに、遮断桿22が地面に対して鉛直方向に折損している場合には、遮断桿22全体が撮像される。この場合、図示は省略するが、遮断桿22の先端に相当する位置に到達する前に、上述した積算値IvがIv=0となる。したがって、この場合も遮断桿22が折損していると判定される。
【0050】
なお、図9及び図10において、部分的に色成分の輝度値の変化を示す波形や色成分の輝度値の微分値を得るようにしているが、これは、切出し画像CP1において、遮断桿22の背景部分として黄色の領域や黒の領域が含まれるからである。
【0051】
次に、遮断桿22の折損判定に係る処理の流れについて、図12のフローチャートを用いて説明する。なお、図12に示すフローチャートにおける処理の流れは、撮像装置36による撮像が行われた後で実行される処理の流れである。
【0052】
撮像装置36により撮像が行われると、踏切制御装置61は、折損検出装置41に対して、遮断桿22が折損しているか否かの判定を指示する。ステップS101において、領域抽出部51は、撮像装置36から入力される画像P1から、遮断桿22の領域A1を抽出して切出し画像CP1を生成する。
【0053】
ステップS102において、画像補正部52は、切出し画像CP1に対して射影変換を行って、切出し画像CP1に対する画像補正を行う。図3に示すように、切出し画像CP1が台形状となるとき、画像補正を行った切出し画像CP2は、図4(b)に示す矩形状となる。
【0054】
ステップS103において、色空間変換部53は、画像補正された切出し画像CP2の色空間をRGB色空間からHSV色空間に変換する。
【0055】
ステップS104において、二値画像生成部54は、色空間が変換された切出し画像CP3を用いて、黄色二値画像MP1及び黒色二値画像MP2を生成する。上述したように、遮断桿22は、黄色と黒色とが交互に配置される縞模様に装飾されている。したがって、二値画像生成部54は、切出し画像CP3を用いて黄色二値画像MP1と、黒色二値画像MP2とを生成する。
【0056】
ステップS105において、演算部55は、黄色二値画像MP1を用いて、遮断桿22の軸方向における黄色成分の輝度値Iyellow(x)の変化を示す黄色成分波形を生成する。ここで、遮断桿22は、円筒状の部材であるから、x方向に直交するy方向(図4(b)参照)に所定量の幅を有する。したがって、演算部55は、同一列の画素の各々の輝度値を平均した平均輝度値を行ごとの輝度値Iyellow(x)として求める。そして、黄色成分の輝度値Iyellow(x)の変化を示す黄色成分波形を生成する。また、演算部55は、黒色二値画像MP2を用いて、同様の手順にて、黒色成分の輝度値Iblack(x)を列ごとに求め、黒色成分の輝度値Iblack(x)の変化を示す黒色成分波形を生成する。
【0057】
演算部55は、また、黄色成分波形及び黒色成分波形から、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dx及び黒色成分の輝度値の微分値Iblack(x)/dxを求める。最後に、演算部55は、黄色成分の輝度値の微分値dIyellow(x)/dx及び黒色成分の輝度値の微分値dIblack(x)/dxを積算した積算値Ivを求める。
【0058】
ステップS106において、判定部56は、積算値Ivを用いて、遮断桿22が折損しているか否かの判定を行う。例えば遮断桿22が折損していない場合、遮断桿22の根本から先端に相当する範囲において、積算値Ivは負の値となる。また、仮に積算値Iv=0となる部位があっても連続することはない。
【0059】
一方、遮断桿22が折損している場合には、遮断桿22の折損部位から遮断桿22の先端までの範囲において、積算値Iv=0である範囲が一定長存在するか、遮断桿22の全長に到達する前に積算値Iv=0となる。したがって、判定部56は、遮断桿22の根元から遮断桿22の先端までの範囲において、積算値Iv=0である範囲が一定長を超えて発生する場合に、遮断桿22が折損していると判定する。また、判定部56は、遮断桿22の先端に相当する位置に到達する前に積算値Iv=0となる場合に、遮断桿22が折損していると判定する。
【0060】
なお、折損検出装置41により、遮断桿22の折損の有無の判定結果は、例えば、図示を省略した外部装置に出力される。なお、外部装置としては、例えば踏切保安設備を管理する管理装置であってもよいし、上述した踏切制御装置13であってもよい。
【0061】
上記に説明した実施の形態では、切出し画像CP1に対して射影変換などの画像補正を行った後、黄色二値画像MP1や黒色二値画像MP2を生成しているが、射影変換などの画像補正を行わずに、黄色二値画像MP1や黒色二値画像MP2を生成してもよい。
【0062】
例えば、撮像装置36は、遮断桿22を斜め上方から撮像することにより取得されるもので、画像P1に含まれる遮断桿22は、遮断桿22の先端に向けて、黄色の縞幅や黒色の縞幅は短くなる。したがって、切出し画像CP1に対して射影変換を行わずに、黄色二値画像MP1や黒色二値画像MP2を生成した場合には、黄色領域又は黒色領域に対して、遮断桿22の長手方向における幅が一定幅となるように、黄色二値画像MP1や黒色二値画像MP2に対して画像補正を行う。
【0063】
上記に説明した実施の形態では、閉じ位置にある遮断桿22を撮像装置36にて撮像した画像P1を用いて、遮断桿22が折損しているか否かを判定しているが、開き位置にある遮断桿22を撮像装置36にて撮像した画像を用いて、遮断桿22が折損しているか否かを判定することも可能である。
【0064】
上記に説明した実施の形態では、黄色及び黒色の縞模様の遮断桿22を例に取り上げているが、遮断桿22の縞模様は、黄色及び黒色の縞模様に限定されるものではなく、例えば赤色及び白色の縞模様であってもよい。
【0065】
上記に説明した実施の形態では、撮像装置36により撮像された画像P1を用いて遮断桿22が折損しているか否かを判定する折損検出装置41を設けた場合を説明しているが、折損検出装置41の機能を、踏切制御装置61に設けることも可能である。
【0066】
上記に説明した実施の形態では、折損検出装置41を設ける場合を説明しているが、折損検出装置41の構成や折損検出装置41によって実行される処理をコンピュータにおいて実行可能なプログラムとしてもよい。なお、このようなプログラムは、コンピュータにより読み取り可能なメモリに記憶されていることが好ましい。
【0067】
<効果など>
本実施の形態に示す遮断桿の折損検出装置は、踏切内を通行可能な開き位置と、前記踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、黄色及び黒色とが軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿22の折損を検出する遮断桿22の折損検出装置41であって、遮断桿22を含む画像P1から、遮断桿22の軸方向(x方向)における黄色の色成分の変化を示す黄色成分波形と、黒色の色成分の変化を示す黒色成分波形と、を取得して、取得した黄色成分波形及び黒色成分波形の微分を積算する演算部55と、積算した結果から遮断桿22の折損の有無を判定する判定部56と、を有し、判定部56は、遮断桿22のx方向における全長の範囲内で、微分した黄色成分波形及び黒色成分波形を積算した積算値Ivが0となる部位が一定の長さ連続するときに、前記遮断桿22が折損していると判定するものである。
【0068】
遮断桿22は黄色と黒色との縞模様で装飾されているため、その縞模様から取得した黄色成分波形の極大値(または極小値)と黒色成分波形の極大値(または極小値)が交互に合われる。このことは黄色成分を有する画素の輝度値(または黒色成分を有する画素の輝度値)が増加する時、黒色成分を有する画素の輝度値(または黄色成分を有する画素の輝度値)が減少する状態を繰り返すことに相当する。したがって、各色成分をxで微分した微分値を求めて、その積をとると、ほとんどの領域で負の値となる。
【0069】
一方、遮断桿22の破損し、黄色成分を有する画素の輝度値(または黒色成分を有する画素の輝度値)の増減がなくなる場合、その微分値は0となることから、その積算値は0となる。この特性を利用し、積算値が0となる部位が一定の長さ連続したときに、遮断桿22が破損したと判定することができる。
【0070】
例えば、画像P1に含まれる背景部分に遮断桿と同一の画素値を有する画素が含まれる場合、黄色成分及び黒色成分の輝度値を抽出しただけでは、各色成分を有する画素が遮断桿22の領域に含まれる画素であるか、背景の領域に含まれる画素であるかが識別できないため、遮断桿22の破損の有無を正確に判定することはできない。しかしながら、上述したように、各色成分の輝度値の微分値を積算することで、積算された値が明確に異なる値となることから、遮断桿22の破損の有無を正確に判定することができる。そして、遮断桿22を含む画像を撮像(取得)する撮像装置があれば、踏切遮断機に遮断桿22の折損を検出する手段を設けることなく、画像解析によって、遮断桿22の折損を自動的に検出することができる。また、上記画像解析によって、遮断桿22の折損の有無を判定するだけでなく、遮断桿22における黄色の縞幅や黒色の縞幅が決定されていることを利用して、遮断桿22の折損位置を特定することも可能となる。
【0071】
また、上述したように、遮断桿22は、カーボンファイバーなどの筒状の部材であり、例えば強風などにおいて遮断桿22が変形する場合もある。遮断桿22が変形した場合は、遮断桿22が変形していないときと同様に、遮断桿22の全長において、黄色成分波形(または黒色成分波形)の増減は見られる。したがって、このような場合でも遮断桿22の折損したとの誤判定を防止することができる。
【0072】
また、切出し画像CP3から黄色の画素の領域を抽出した黄色二値画像MP1と、切出し画像CP3から黒色の画素の領域を抽出した黒色二値画像MP2とを生成する二値画像生成部54を有し、演算部55は、二値画像生成部54にて生成された二値画像MP1,MP2を用いて、黄色成分波形及び黒色成分波形を取得するものである。
【0073】
これによれば、二値画像MP1,MP2を用いることで、黄色成分の輝度値の変化を示す波形(黄色成分波形)と、黒色成分の輝度値の変化を示す波形(黒色成分波形)とを簡単に生成することができる。
【0074】
閉じ位置にある遮断桿22を斜め上方から撮像する撮像装置36と、射影変換を行う画像補正部52と、を有し、演算部55は、射影変換後の切出し画像CP3を用いて黄色成分波形及び黒色成分波形を生成するものである。
【0075】
これによれば、遮断桿22の全体を撮像した画像P1を用いて、遮断桿22の破損の有無の判定を行うことができる。
【0076】
また、撮像装置36により得られる画像P1から遮断桿22の領域A1を切出した切出し画像CP1を生成する領域抽出部51を有し、画像補正部52は、切出し画像CP1に対して射影変換を行うものである。
【0077】
撮像装置36は、遮断桿22を斜め上方から撮像する場合、切出し画像CP1に含まれる遮断桿22の形状は、先端に向けて先細となる台形状である。切出し画像CP1に対して射影変換を行った切出し画像CP2に含まれる遮断桿22の形状は、長方形状となるので、遮断桿22における黄色及び黒色の縞模様の領域が得られやすくなるので、上記判定における判定精度を向上させることができる。
【0078】
また、本発明の遮断桿の折損検出方法は、踏切内を通行可能な開き位置と、踏切内への進入を禁止する閉じ位置との間で移動するとともに、黄色及び黒色とが自身の軸方向に交互に配列された縞模様により装飾される遮断桿22の折損検出方法であって、遮断桿22を含む画像P1から、遮断桿22のx方向における黄色の色成分の変化を示す黄色成分波形と、黒色の色成分の変化を示す黒色成分波形と、を取得する波形取得ステップと、黄色成分波形及び黒色成分波形を各々微分した後、微分した黄色成分波形及び黒色波形を積算する積算ステップと、積算した結果から遮断桿22の折損の有無を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0079】
例えば遮断桿22が黄色と黒色との縞模様で装飾されていることで、黄色の色成分の輝度値の変化を示す波形が極大値をとるときには黒色の色成分の輝度値の変化を示す波形が極小値をとり、黄色の色成分の輝度値の変化を示す波形が極小値をとるときには黒色の色成分の輝度値の変化を示す波形が極大値をとる。つまり、これら色成分の輝度値の変化を示す波形においては、極大値と極小値とが交互に現れる。
【0080】
また、色成分の輝度値の微分値において、黄色成分の輝度値の微分値が増加するとき、黒色成分の輝度値の微分値が減少する状態を繰り返す。同時に、黒色成分の輝度値の微分値が増加するとき、黄色成分の輝度値の微分値が減少する状態を繰り返す。その結果、これら各色成分の輝度値の微分値の積算値Ivは、ほとんど負の値となる。その結果、遮断桿22が折損していなければ、遮断桿22の全長においては、積算値Ivがほぼ負の値をとるのに対して、遮断桿22が折損している場合には、遮断桿22の折損部位から先端側では、上記積算値Ivは0となる。
【0081】
例えば、画像P1に含まれる背景部分に遮断桿と同一の画素値を有する画素が含まれる場合、黄色成分及び黒色成分の輝度値を抽出しただけでは、各色成分を有する画素が遮断桿22の領域に含まれる画素であるか、背景の領域に含まれる画素であるかが識別できないため、遮断桿22の破損の有無を正確に判定することはできない。しかしながら、上述したように、各色成分の輝度値の微分値を積算することで、積算された値が明確に異なる値となることから、遮断桿22の破損の有無を正確に判定することができる。そして、遮断桿22を含む画像を撮像(取得)する撮像装置があれば、踏切遮断機に遮断桿22の折損を検出する手段を設けることなく、画像解析によって、遮断桿22の折損を自動的に検出することができる。また、上記画像解析によって、遮断桿22の折損の有無を判定するだけでなく、遮断桿22における黄色の縞幅や黒色の縞幅が決定されていることを利用して、遮断桿22の折損位置を特定することも可能となる。
【0082】
また、上述したように、遮断桿22は、カーボンファイバーなどの筒状の部材であり、例えば強風などにおいて遮断桿22が変形する場合もある。遮断桿22が変形した場合は、遮断桿22が変形していないときと同様に、遮断桿22の全長において、上述した積算値は、常に負の値をとる。このように、遮断桿22の折損した場合と、遮断桿22が一時的に変形した場合との差別化を図ることができ、確実に遮断桿22の折損を検出することができる。
【符号の説明】
【0083】
11…踏切遮断機
12…踏切警報機
22…遮断桿
36…撮像装置
41…折損検出装置
51…領域抽出部
52…画像補正部
53…色空間変換部
54…二値画像生成部
55…演算部
56…判定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12