(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038074
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/04 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61L2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144977
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】駒井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松藤 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 光央
(72)【発明者】
【氏名】三堂 由健
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA21
4C058BB03
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD07
4C058DD12
(57)【要約】
【課題】装置全体の大型化を避けつつ、処理水を冷却することの可能な処理装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、被処理物2を処理する処理装置1であって、処理槽3と、循環手段8と、熱交換器9と、第1冷却手段11と、第2冷却手段12とを備え、処理槽3は、被処理物2を収容するよう構成され、循環手段8は、循環路80を備えるとともに、処理槽3内の処理水を循環させるよう構成され、熱交換器9は、循環路80に設けられており、第1冷却手段11は、熱交換器9に第1冷却水を供給し、熱交換器9を介して処理水を冷却するよう構成され、第2冷却手段12は、第1冷却手段11による処理水の冷却後に、熱交換器9に第2冷却水を供給し、熱交換器9を介して処理水を冷却するよう構成される、処理装置1が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する処理装置であって、
処理槽と、循環手段と、熱交換器と、第1冷却手段と、第2冷却手段とを備え、
前記処理槽は、前記被処理物を収容するよう構成され、
前記循環手段は、循環路を備えるとともに、前記処理槽内の処理水を循環させるよう構成され、
前記熱交換器は、前記循環路に設けられており、
前記第1冷却手段は、前記熱交換器に第1冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成され、
前記第2冷却手段は、前記第1冷却手段による前記処理水の冷却後に、前記熱交換器に第2冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成される、処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置であって、
前記第1冷却手段はクーリングタワーを備え、前記第2冷却手段はチラーを備える、処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の処理装置であって、
流体供給手段を備え、
前記流体供給手段は、前記クーリングタワーによる前記処理水の冷却後であって前記チラーによる前記処理水の冷却前に、前記熱交換器に流体を供給する、処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の処理装置であって、
給蒸手段を備え、
前記給蒸手段は、前記熱交換器に蒸気を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を加熱するよう構成され、
前記流体供給手段は、前記給蒸手段による前記処理水の加熱後であって前記クーリングタワーによる前記処理水の冷却後にも、前記熱交換器に流体を供給する、処理装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の処理装置であって、
前記流体供給手段は、前記熱交換器に圧縮空気を供給する、処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被処理物の加熱処理や冷却処理等に用いられる処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理槽内に被処理物を収容し、処理槽と熱交換器の間で処理水を循環させて、熱交換器を通過する処理水を蒸気や冷水等により間接的に加熱又は冷却することで被処理物の処理を行う処理装置がある。例えば、特許文献1には、熱交換器に蒸気を供給することで処理水を加熱して被処理物を間接的に加熱処理するとともに、熱交換器にクーリングタワーにより冷却された冷却水を供給することで、処理水を冷却して被処理物を間接的に冷却処理することが可能な処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、処理水を冷却するためにクーリングタワーを用いる場合、処理水の冷却能力に限界がある。また、クーリングタワーの代わりにチラーを用いることも考えられるが、その場合には、処理水が高温であること等により、容量の大きなチラーを用いる必要があり、処理装置全体の大型化につながっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、装置全体の大型化を避けつつ、処理水を冷却することの可能な処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、被処理物を処理する処理装置であって、処理槽と、循環手段と、熱交換器と、第1冷却手段と、第2冷却手段とを備え、前記処理槽は、前記被処理物を収容するよう構成され、前記循環手段は、循環路を備えるとともに、前記処理槽内の処理水を循環させるよう構成され、前記熱交換器は、前記循環路に設けられており、前記第1冷却手段は、前記熱交換器に第1冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成され、前記第2冷却手段は、前記第1冷却手段による前記処理水の冷却後に、前記熱交換器に第2冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成される、処理装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、第1冷却手段により処理水の粗熱を取った後に第2冷却手段により処理水をさらに冷却することで、大型の1つの冷却手段によって冷却を行う場合よりも小型の冷却手段を用いれば良くなり、結果として1つの冷却手段により処理水を冷却する場合よりも処理装置全体を小型化することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記第1冷却手段はクーリングタワーを備え、前記第2冷却手段はチラーを備える。
【0010】
好ましくは、流体供給手段を備え、前記流体供給手段は、前記クーリングタワーによる前記処理水の冷却後であって前記チラーによる前記処理水の冷却前に、前記熱交換器に流体を供給する。
【0011】
好ましくは、給蒸手段を備え、前記給蒸手段は、前記熱交換器に蒸気を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を加熱するよう構成され、前記流体供給手段は、前記給蒸手段による前記処理水の加熱後であって前記クーリングタワーによる前記処理水の冷却後にも、前記熱交換器に流体を供給する。
【0012】
好ましくは、前記流体供給手段は、前記熱交換器に圧縮空気を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌装置1を示す概略図である。
【
図2】
図1の殺菌装置1の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0015】
1.殺菌装置1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置としての殺菌装置1を示す概略図である。本実施形態の殺菌装置1は、被処理物2を加熱殺菌し、その後冷却するための装置である。被処理物2の種類は特に問わないが、食品、特にレトルト食品に好適に用いられる。
【0016】
本実施形態の殺菌装置1は、
図1に示すように、処理槽3と、給水手段4と、排水手段5と、加圧手段6と、排気手段7と、循環手段8と、熱交換器9と、給蒸手段10と、第1冷却手段11と、第2冷却手段12と、ドレン排出手段13と、流体供給手段としての圧縮空気供給手段14と、制御手段15とを備える。以下、各構成を具体的に説明する。
【0017】
処理槽3は、被処理物2を収容する中空容器である。処理槽3は、その形状を特に問わないが、本実施例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。従って、扉を開けることで、処理槽3に対し被処理物2を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽3の開口部を気密に閉じることができる。本実施形態において、被処理物2は、処理槽3内において台車上に複数段に亘って収容されたトレー20に載置され、処理槽3内の底面よりも上方において加熱殺菌処理がなされる。
【0018】
処理槽3には、処理槽3内の温度を検出する温度センサ(図示省略)が設けられると共に、処理槽3内の水位を検出する水位検出器(図示省略)が設けられている。水位検出器は、その構成を特に問わないが、たとえば電極式水位検出器とされる。
【0019】
給水手段4は、給水路40を介して処理槽3内へ水を供給する。給水路40は、処理槽3の底部に接続され、処理槽3へ向けて給水ポンプ41と給水弁42とが設けられている。給水ポンプ41を作動させた状態で給水弁42を開くことで、給水源からの水を処理槽3内に供給して、処理槽3内に水を貯留することができる。本実施例では、処理槽3内に収容した被処理物2が浸漬しない設定水位まで、処理槽3内に水が貯留される。
【0020】
排水手段5は、排水路50を介して処理槽3内から水を排出する。排水路50は、処理槽3の底部に接続され、排水弁51及び逆止弁52が設けられている。排水弁51を開くことで、処理槽3内の水を外部へ排出することができる。
【0021】
加圧手段6は、加圧路60を介して処理槽3内へ加圧空気(言い換えれば圧縮空気)を供給する。加圧路60に設けた加圧弁61を開くことで、加圧空気源からの加圧空気を処理槽3内に供給して、大気圧を超える圧力に処理槽3内を加圧することができる。
【0022】
排気手段7は、大気圧を超える圧力下の処理槽3内から排気路70を介して気体を排出する。排気路70は、処理槽3の上部に接続され、処理槽3の側から順に、排気弁71と逆止弁72とが設けられている。処理槽3内が大気圧を超える圧力にある状態で、排気弁71を開くと、処理槽3内の気体は排気路70を介して外部へ排出され、処理槽3内の圧力を下げることができる。
【0023】
循環手段8は、処理槽3と熱交換器9との間で水(処理水)を循環させる。循環手段8は、循環路80と、循環ポンプ81と、噴出ノズル82とを備える。循環路80は、一端部が処理槽3の底部に接続され、循環ポンプ81と熱交換器9とを順に介して、他端部が処理槽3内の噴出ノズル82に接続されている。噴出ノズル82は、循環路80からの処理水を被処理物2へ向けて噴射する。噴出ノズル82の形状及び数は任意であるが、処理槽3に収容された被処理物2の上部に満遍なく処理水が噴出されるよう構成することが好ましい。
【0024】
熱交換器9は、循環手段8の循環路80に設けられる。熱交換器9は、循環路80を流通する処理水を、後述する給蒸手段10から供給される蒸気により加熱し、また、後述する第1冷却手段11又は第2冷却手段12から供給される冷水により冷却するために用いられる。なお、以下の説明において、給蒸手段10から供給される蒸気や第1冷却手段11又は第2冷却手段12から供給される冷却水(第1冷却水又は第2冷却水)が流通する側を熱交換器9の一次側、循環路80と接続されて処理水が流通する側を熱交換器9の二次側と呼ぶ。
【0025】
給蒸手段10は、熱交換器9の一次側に加熱蒸気を供給して、循環路80を流通する処理水を加熱する。給蒸手段10は、ボイラからの蒸気を熱交換器9へ供給する給蒸路100を備え、この給蒸路100には給蒸弁101が設けられている。給蒸弁101の開度を調整することで、循環路80を循環する処理水の温度、ひいては処理槽3内の温度を、所望に調整することができる。具体的には、処理槽3の温度センサの検出温度に基づき、給蒸弁101の開度が調整される。図示例の場合、給蒸路100は、給蒸弁101よりも下流側(熱交換器9の側)の管路の一部が第1冷却手段11の第1冷水送り路112と共通の管路となっている。また、給蒸路100は、第1冷水送り弁114より下流側(熱交換器9側)の位置において第1冷水送り路112と合流している。
【0026】
第1冷却手段11は、熱交換器9の一次側に冷水(以下、第1冷却水と呼ぶ)を供給して、循環路80を流通する処理水を冷却する。第1冷却手段11は、クーリングタワー110を備える。クーリングタワー110にて冷却された水は、第1冷却水(クーリングタワー水)として、第1送水ポンプ111により第1冷水送り路112を介して熱交換器9へ供給され、熱交換器9を通過後の水は第1冷水戻し路113を介してクーリングタワー110へ戻される。第1冷却水により間接的に循環路80を循環する処理水を冷却することで、処理槽3内の温度を低下させ、被処理物2を冷却することができる。
【0027】
第1冷水送り路112には第1冷水送り弁114が設けられる一方、第1冷水戻し路113には第1冷水戻し弁115が設けられている。そして、第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115を開いた状態で第1送水ポンプ111を作動させると、クーリングタワー110と熱交換器9の一次側との間で第1冷却水を循環させることができる。一方、第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115を閉じれば、熱交換器9への冷水の通水を停止することができる。
【0028】
第2冷却手段12は、熱交換器9の一次側に第1冷却手段11が供給する冷水(第1冷却水)よりも冷たい冷水(以下、第2冷却水と呼ぶ)を供給して、循環路80を流通する処理水を冷却する。第2冷却手段12は、チラー120を備える。チラー120にて冷却(生成)された水は、第2冷却水(チラー水)として、第2送水ポンプ121により第2冷水送り路122を介して熱交換器9へ供給され、熱交換器9を通過後の水は第2冷水戻し路123を介してチラー120へ戻される。第2冷却水により間接的に循環路80を循環する処理水を冷却することで、処理槽3内の温度を低下させ、被処理物2をさらに冷却することができる。
【0029】
第2冷水送り路122には第2冷水送り弁124が設けられる一方、第2冷水戻し路123には第2冷水戻し弁125が設けられている。そして、第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を開いた状態で第2送水ポンプ121を作動させると、チラー120と熱交換器9との間で第2冷却水を循環させることができる。一方、第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を閉じれば、熱交換器9への冷水の通水を停止することができる。
【0030】
図示例の場合、第2冷水送り路122は、第2冷水送り弁124よりも下流側(熱交換器9側)の管路の一部が第1冷却手段11の第1冷水送り路112と共通の管路となっている。また、第2冷水戻し路123は、第2冷水戻し弁125の上流側(熱交換器9側)の管路の一部が第1冷却手段11の第1冷水戻し路113と共通の管路となっている。ここで、第2冷水送り路122は、第1冷水送り弁114よりも下流側(熱交換器9側)であって給蒸路100と第1冷水送り路112の合流部よりも上流側の位置において第1冷水送り路112と合流している。また、第2冷水戻し路123は、第1冷水戻し弁115よりも上流側(熱交換器9側)であって後述するドレン排出手段13のドレン排出路130と第1冷水戻し路113の合流部よりも下流側の位置において第1冷水戻し路113と合流している。
【0031】
ドレン排出手段13は、給蒸手段10により熱交換器9に供給された加熱蒸気の凝縮水を外部へ排出する。ドレン排出手段13は、第1冷水戻し路113から分岐するドレン排出路130に、ドレン排出弁131、スチームトラップ132及び逆止弁133が順に設けられて構成される。なお、ドレン排出手段13は、第1冷水戻し路113と第2冷水戻し路123の合流箇所より上流側(熱交換器9側)において第1冷水戻し路113から分岐している。熱交換器9への蒸気供給時、ドレン排出弁131を開けておくことで、蒸気の凝縮水を下方へ脱落させて外部へ排出することができる。
【0032】
圧縮空気供給手段14は、熱交換器9の一次側に流体としての圧縮空気を供給して、熱交換器9の一次側を加圧する。圧縮空気供給手段14は、圧縮空気源と接続する圧縮空気供給路140と、圧縮空気供給弁141とを備える。図示例の場合、圧縮空気供給路140は、圧縮空気供給弁141よりも下流側(熱交換器9側)の管路の一部が第1冷却手段11の第1冷水送り路112と共通の管路となっている。また、圧縮空気供給路140は、第1冷水送り路112と給蒸路100の合流箇所より上流側であって、第1冷水送り路112と第2冷水送り路122の合流箇所より下流側の位置において、第1冷水送り路112と合流している。なお、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給路140に接続される圧縮空気源と、加圧手段6の加圧路60に接続される加圧空気源とは、共通化することも可能である。
【0033】
制御手段15は、温度センサや水位検出器の検出信号や経過時間などに基づき、上述した各手段を制御する。制御手段15は、具体的には、給水ポンプ41、給水弁42、排水弁51、加圧弁61、排気弁71、循環ポンプ81、給蒸弁101、クーリングタワー110、第1送水ポンプ111、第1冷水送り弁114、第1冷水戻し弁115、チラー120、第2送水ポンプ121、第2冷水送り弁124、第2冷水戻し弁125、ドレン排出弁131、圧縮空気供給弁141等を制御する。また、制御手段15には、温度センサ及び水位検出器などが接続されている。制御手段15は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽3内の被処理物2の加熱殺菌やその後の冷却を行う。
【0034】
なお、上記構成の制御手段15は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段15の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段15の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0035】
2.殺菌装置1の動作
制御手段15は、所定の手順(プログラム)に従い、各種の弁及びポンプを制御することによって処理槽3内の被処理物2の加熱殺菌やその後の冷却を行う。具体的には、制御手段15は、
図2に示すように、処理槽3内に被処理物2を収容した状態で、処理槽3内への給水工程S1、殺菌工程S3へ移行するための移行工程S2、被処理物2を加熱殺菌する殺菌工程S3、殺菌工程S3の後に熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給する第1圧縮空気供給工程S4、第1冷却手段11により加熱殺菌後の被処理物2を冷却する第1冷却工程S5、第1冷却工程S5の後に熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給する第2圧縮空気供給工程S6、第2冷却手段12により被処理物2をさらに冷却する第2冷却工程S7、処理槽3内からの排水工程S8を順次に実行する。以下、各工程をより詳細に説明する。
【0036】
<給水工程S1>
給水工程S1では、制御手段15は、給水手段4により処理槽3内に給水して、処理槽3内に設定水位まで水を貯留する。具体的には、給水手段4は、給水ポンプ41を作動させた状態で給水弁42を開くことで給水を行う。処理槽3内に設定水位まで水が貯留されたことは、水位検出器により検出できる。設定水位とは、処理槽3内のいずれの被処理物2も水没させない水位であり、好ましくはさらに低い水位として、処理槽3内のいずれの被処理物2も浸漬しない水位である。
【0037】
<移行工程S2>
移行工程S2では、制御手段15は、循環手段8の循環ポンプ81を駆動させ、処理槽3と熱交換器9との間で処理水を循環させながら、その処理水を熱交換器9において給蒸手段10により加熱して、処理槽3内の温度を上昇させる。具体的には、制御手段15は、給蒸弁101を開くことで熱交換器9に加熱蒸気を供給して、処理水を加熱する。また、移行工程S2において、制御手段15は、ドレン排出手段13のドレン排出弁131を開けておき、蒸気の凝縮水を外部へ排出するようにしている。一方、移行工程S2において、制御手段15は、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を閉じておく。移行工程S2の開始から移行時間経過するか、処理槽3内が殺菌温度まで上昇すると、移行工程S2を終了する。
【0038】
なお、循環ポンプ81の始動直後には、循環ポンプ81からの水は循環路80やトレー20に溜まるので、処理槽3内の水位は低下する。よって、処理槽3内へ適宜水を補給しなければ、処理槽3内の貯留水が不足して、循環ポンプ81へのエア噛みが生じるおそれがある。そこで、水位検出器により処理槽3内の水位を監視して、処理槽3内の水位が下限水位を下回ると、設定水位になるまで給水手段4により処理槽3内に水を供給する。加えて、このような給水制御を行うとしても、循環ポンプ81の始動直後には、処理槽3内への水の補給が追い付かず、処理槽3内の水位が下がり過ぎ、循環ポンプ81へのエア噛みが生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、循環ポンプ81の始動時、循環ポンプ81を間欠運転するか、処理水の流量を徐々に増加させるようになっている。
【0039】
移行工程S2の終了後は、被処理物2が加熱により膨張して包装(レトルトパウチなど)が破裂するのを防止するために、加圧手段6の加圧弁61と排気手段7の排気弁71とを制御して、処理槽3内の温度に応じた加圧がなされる。以後、循環手段8による水の循環と、処理槽3内の加圧とは、第2冷却工程S7の終了まで引き続きなされる。
【0040】
<殺菌工程S3>
殺菌工程S3では、制御手段15は、循環手段8により処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させながら給蒸手段10による熱交換器9への蒸気供給を制御することで処理水を加熱して殺菌水とし、これにより処理槽3内を殺菌温度に維持して処理槽3内の被処理物2を加熱して殺菌する。具体的には、制御手段15は、給蒸弁101の開度を調整することで、処理槽3の温度センサの検出温度を殺菌温度以上に維持する。また、殺菌工程S3においても、制御手段15は、ドレン排出手段13のドレン排出弁131を開けておき、蒸気の凝縮水を外部へ排出するようにしている。一方、殺菌工程S3において、制御手段15は、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を閉じておく。
【0041】
処理槽3内が殺菌温度以上で殺菌時間経過すると、制御手段15は、給蒸手段10による熱交換器9への蒸気供給を停止して、殺菌工程S3を終了する。具体的には、制御手段15は、給蒸手段10の給蒸弁101を閉じる。なお、前述したように、殺菌工程S3では、加圧手段6と排気手段7とを制御して、処理槽3内を、大気圧を超える設定圧力(処理槽内温度相当の飽和蒸気圧力よりもやや高圧)に維持される。
【0042】
<第1圧縮空気供給工程S4>
第1圧縮空気供給工程S4は、殺菌工程S3の終了後、第1冷却工程S5の開始前に所定時間実施される。第1圧縮空気供給工程S4では、制御手段15は、圧縮空気供給手段14により熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給し、熱交換器9の一次側を加圧する。具体的には、制御手段15は、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を開くことで熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給する。また、制御手段15は、ドレン排出手段13のドレン排出弁131を開けておく。一方、制御手段15は、給蒸手段10の給蒸弁101、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を閉じておく。なお、圧縮空気供給手段14による熱交換器9の加圧は、第1冷却工程S5の開始時または開始直後まで継続される。言い換えると、圧縮空気供給手段14による所定時間の熱交換器9の加圧の終了後、又は終了直前に、第1冷却工程S5が開始される。制御手段15は、圧縮空気供給弁141を閉じることで第1圧縮空気供給工程S4を終了する。
【0043】
<第1冷却工程S5>
第1冷却工程S5では、制御手段15は、循環手段8により処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させながら第1冷却手段11により熱交換器9に第1冷却水を通水することで処理水を冷却し、これにより処理槽3内の被処理物2を冷却する。具体的には、制御手段15は、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115開くとともに第1送水ポンプ111を駆動し、ドレン排出手段13のドレン排出弁131を閉じることで、クーリングタワー110と熱交換器9の間で第1冷却水を循環させる。なお、第1冷却工程S5において、制御手段15は、給蒸手段10の給蒸弁101、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を閉じておく。
【0044】
第1冷却工程S5の開始から冷却時間経過するか、又は、処理槽3内の温度が予め設定された第1冷却温度まで下がると(第1冷却温度になってから所定時間経過すると)、第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115閉じるとともに第1送水ポンプ111を停止させる。これにより、第1冷却手段11による熱交換器9への第1冷却水の供給を停止して、第1冷却工程S5を終了する。
【0045】
<第2圧縮空気供給工程S6>
第2圧縮空気供給工程S6は、第1冷却工程S5の終了後、第2冷却工程S7の開始前に所定時間実施される。第2圧縮空気供給工程S6では、制御手段15は、圧縮空気供給手段14により熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給し、熱交換器9の一次側を加圧する。具体的には、制御手段15は、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を開くことで熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給する。また、制御手段15は、ドレン排出手段13のドレン排出弁131を開く。また、第2圧縮空気供給工程S6において、制御手段15は、給蒸手段10の給蒸弁101、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を閉じておく。これにより、熱交換器9の一次側を流通していた第1冷却水がドレン排出路130から排出される。なお、第2圧縮空気供給工程S6においては、「所定時間」として、例えば、圧力0.35MPaの圧縮空気が熱交換器9の一次側に10秒間供給される。また、第2圧縮空気供給工程S6を所定時間実行した後は、制御手段15は、圧縮空気供給弁141を閉じることで第2圧縮空気供給工程S6を終了する。
【0046】
<第2冷却工程S7>
第2冷却工程S7では、制御手段15は、循環手段8により処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させながら第2冷却手段12により熱交換器9に第2冷却水を通水することで処理水を冷却し、これにより処理槽3内の被処理物2を冷却する。具体的には、制御手段15は、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を開くとともに、第2送水ポンプ121を駆動することで、チラー120と熱交換器9の間で第2冷却水を循環させる。なお、第2冷却工程S7において、制御手段15は、給蒸手段10の給蒸弁101、第1冷却手段11の第1冷水送り弁114及び第1冷水戻し弁115、圧縮空気供給手段14の圧縮空気供給弁141を閉じておく。
【0047】
第2冷却工程S7の開始から冷却時間経過するか、又は、処理槽3内の温度が予め設定された第1冷却温度よりも低い第2冷却温度まで下がると(第1冷却温度まで下がってから所定時間経過すると)、第2冷水送り弁124及び第2冷水戻し弁125を閉じるとともに第2送水ポンプ121を停止させる。これにより、第2冷却手段12による熱交換器9への第2冷却水の供給を停止して、第2冷却工程S7を終了する。
【0048】
<排水工程S8>
排水工程S8では、排水手段5により処理槽3内から処理水を排水する。この際、制御手段15は、加圧弁61を開いて加圧手段6により処理槽3内を加圧した状態で排水弁51を開くことで、処理槽3内から外部へ水を迅速に排出できる。その後、加圧弁61を閉じる一方、排気手段7の排気弁71を開いて、処理槽3内を大気圧まで戻した後、処理槽3の扉を開けて、処理槽3内から被処理物2を取り出すことができる。
【0049】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の殺菌装置1は、第1冷却手段11と第2冷却手段12の2つの冷却手段を備えている。そして、制御手段15は、各種の弁及びポンプを制御することで、第1冷却工程S5において第1冷却手段11により処理水の粗熱を取った後に、第2冷却工程S7において第2冷却手段12により処理水をさらに冷却するよう構成されている。これにより、1つの冷却手段により処理水を冷却する場合よりも殺菌装置1全体を小型化することが可能となっている。
【0050】
また、第1冷却手段11がクーリングタワー110を備えていることで、熱交換器9において殺菌工程S3後の高温の処理水から熱を受け取り高温となっている第1冷却水を、好適に冷却することが可能となっている。さらに、第2冷却手段12がチラー120を備えていることで、クーリングタワー110を備えた第1冷却手段11により粗熱を取った後の処理水をさらに冷却することが可能となっている。
【0051】
本実施形態の殺菌装置1は、第1圧縮空気供給工程S4において、制御手段15が圧縮空気供給手段14により熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給し、熱交換器9の一次側を加圧するようになっている。これにより、次の第1冷却工程S5において第1冷却水が供給された際の、蒸気の凝縮による急激な減圧を防止することができる。また、これにより、第1冷却水の供給時に、安全弁(図示せず)から蒸気が噴き出すことが防止され、配管から音や振動が発生することを防止することも可能となっている。
【0052】
本実施形態の殺菌装置1は、第1冷却手段11がクーリングタワー110を備える構成であるが、クーリングタワー110を使用する場合、クーリングタワー110を流通する水には防食及びスライム発生抑制のための薬品等を投入することがある。このような場合、投入した薬品やその他、クーリングタワー110に起因する汚れが第1冷却水とともに熱交換器9の一次側も流通することになるが、この汚れが第2冷却工程S7において第2冷却手段12のチラー120に流入すると、チラー120に不具合が生じるおそれがある。
【0053】
この点、本実施形態の殺菌装置1は、第2圧縮空気供給工程S6において、制御手段15が圧縮空気供給手段14により熱交換器9の一次側に圧縮空気を供給し、熱交換器9の一次側を加圧するようになっている。これにより、第1冷却工程S5において熱交換器9の一次側を流通していた第1冷却水がドレン排出弁131から排出され、熱交換器9内が浄化されることになる。これにより、クーリングタワー110に起因する汚れが次の第2冷却工程S7において第2冷却手段12のチラー120に流入せず、チラー120に不具合が生じることを防止することが可能となっている。
【0054】
本実施形態の殺菌装置1は、第1圧縮空気供給工程S4において用いる圧縮空気供給手段14を第2圧縮空気供給工程S6でも用いる構成となっている。これにより、第1圧縮空気供給工程S4と第2圧縮空気供給工程S6とで別々の構成を用いることなく、第1冷却工程S5において蒸気の凝縮による急激な減圧を防止し、且つ第1冷却工程S5の後の熱交換器9の浄化を行うことが可能となっている。
【0055】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0056】
上記実施形態では、処理装置としての殺菌装置1が熱交換器9に蒸気を供給する給蒸手段10を備えていた。しかしながら、処理装置は殺菌を行うものである必要はなく、給蒸手段10を備えていなくても良い。すなわち、本発明の処理装置は、食品等の被処理物2を単に冷却する装置として構成することも可能である。この場合も、第1冷却手段11と第2冷却手段12の2つの冷却手段を備えることで、1つの冷却手段により処理水を冷却する場合よりも処理装置全体を小型化することが可能となっている。
【0057】
上記実施形態においては、第1冷却手段11がクーリングタワー110を備え、第2冷却手段12がチラー120を備える構成であったが、第1冷却手段11及び第2冷却手段12がともにチラーを備える構成であっても良い。この場合であっても、2つのチラーにより順次冷却を行うことで、1つのチラーによる冷却を行う場合よりも小型(小容量)のチラーを用いることができ、装置全体の大型化を避けることが可能となる。具体的には例えば、第1冷却手段11を第1冷却温度(例えば、10℃)まで冷却可能なチラーとし、第2冷却手段12を第2冷却温度(例えば、3℃)まで冷却可能なチラーとすれば、冷却対象である循環路80の処理水の温度に応じて適切なチラーを用いることができ、装置全体の大型化を避けつつ、冷却効率も向上させる(省力化する)ことも可能となる。
【0058】
上記実施形態において、制御手段15は、クーリングタワー110による処理水の冷却後(第1冷却工程S5の後)であってチラー120による処理水の冷却前(第2冷却工程S7の前)に、熱交換器9の一次側に流体を供給する流体供給手段として圧縮空気供給手段14を用いて、第2圧縮空気供給工程S6を実行していた。しかしながら、流体供給手段として、圧縮空気ではなく洗浄水(液体)を熱交換器9の一次側に供給する洗浄水供給手段を用いることも可能である。なお、第2冷却手段12の第2冷水送り弁124を開け、第2冷水戻し弁125を閉じておけば、洗浄水として第2冷却水(チラー水)を用いることも可能ある。
【0059】
上記実施形態においては、殺菌装置1が圧縮空気供給手段14を備え、制御手段15は、圧縮空気供給手段14を用いて第1圧縮空気供給工程S4及び第2圧縮空気供給工程S6を実行する構成であった。しかしながら、制御手段15が第1圧縮空気供給工程S4と第2圧縮空気供給工程S6のいずれか一方を行わない構成であってもよい。
【0060】
また、殺菌装置1が圧縮空気供給手段14を備えていない構成であっても良い。殺菌装置1が圧縮空気供給手段14を備えていない構成の場合であっても、例えば、第1冷却工程S5の後に、第2圧縮空気供給工程S6として、熱交換器9に残存する第1冷却水をドレン排出手段13により排出するようにしても良い。このようにしても、第1冷却手段11に起因する汚れの第2冷却手段12への流入を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 :殺菌装置(処理装置)
2 :被処理物
3 :処理槽
4 :給水手段
5 :排水手段
6 :加圧手段
7 :排気手段
8 :循環手段
9 :熱交換器
10 :給蒸手段
11 :第1冷却手段
12 :第2冷却手段
13 :ドレン排出手段
14 :圧縮空気供給手段(流体供給手段)
15 :制御手段
20 :トレー
40 :給水路
41 :給水ポンプ
42 :給水弁
50 :排水路
51 :排水弁
52 :逆止弁
60 :加圧路
61 :加圧弁
70 :排気路
71 :排気弁
72 :逆止弁
80 :循環路
81 :循環ポンプ
82 :噴出ノズル
100 :給蒸路
101 :給蒸弁
110 :クーリングタワー
111 :第1送水ポンプ
112 :第1冷水送り路
113 :第1冷水戻し路
114 :第1冷水送り弁
115 :第1冷水戻し弁
120 :チラー
121 :第2送水ポンプ
122 :第2冷水送り路
123 :第2冷水戻し路
124 :第2冷水送り弁
125 :第2冷水戻し弁
130 :ドレン排出路
131 :ドレン排出弁
132 :スチームトラップ
133 :逆止弁
140 :圧縮空気供給路
141 :圧縮空気供給弁
S1 :給水工程
S2 :移行工程
S3 :殺菌工程
S4 :第1圧縮空気供給工程
S5 :第1冷却工程
S6 :第2圧縮空気供給工程
S7 :第2冷却工程
S8 :排水工程