(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038089
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】アンテナパターン及びアンテナシート
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/16 20060101AFI20230309BHJP
H01P 3/04 20060101ALI20230309BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H01Q9/16
H01P3/04
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145004
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八屋 知義
(72)【発明者】
【氏名】安武 達也
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AB07
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーできるとともに、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電源で安定した無線通信を行うことができる無線通信中継用のアンテナパターン、及びそのようなアンテナパターンを備えたアンテナシートを提供すること。
【解決手段】導電線からなるアンテナパターンであって、前記導電線を折返し配置することで形成された線対称のアンテナエレメントを少なくとも1対含み、前記アンテナエレメントは、長さaの第1直線部と、前記第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、前記第1直線部の長さaと前記第2直線部の長さbとが異なる、アンテナパターン。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電線からなるアンテナパターンであって、前記導電線を折返し配置することで形成された線対称のアンテナエレメントを少なくとも1対含み、
前記アンテナエレメントは、長さaの第1直線部と、前記第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、前記第1直線部の長さaと前記第2直線部の長さbとが異なる、
アンテナパターン。
【請求項2】
前記第1直線部の長さaと前記折返し部の長さcを合わせた長さa+cと、前記第2直線部の長さbと前記折返し部の長さcを合わせた長さb+cのうち、一方は受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当し、他方は受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当する、請求項1に記載のアンテナパターン。
【請求項3】
前記アンテナエレメントの対が給電線を介して複数設けられた、請求項1又は2に記載のアンテナパターン。
【請求項4】
前記アンテナパターンの最先端のアンテナエレメントの対が1本の導電線として繋がっており、これにより前記アンテナパターンが全体で1本の連続した線状の導電性パターンとして設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナパターン。
【請求項5】
シート状基材と、前記シート状基材の一方側に導電線を折返し配置することで設けられた、導電性パターンからなるアンテナ回路パターンを含むアンテナシートであって、
前記アンテナ回路パターンは、第1のアンテナ部と、該第1のアンテナ部と離れて設けられた第2のアンテナ部と、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを接続する伝送線部とを含み、
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部はそれぞれ、線対称のアンテナエレメントを少なくとも1対含み、前記アンテナエレメントは、長さaの第1直線部と、前記第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、前記第1直線部の長さaと前記第2直線部の長さbとが異なる、
アンテナシート。
【請求項6】
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の両方において、前記第1直線部の長さaと前記折返し部の長さcを合わせた長さa+cと、前記第2直線部の長さbと前記折返し部の長さcを合わせた長さb+cのうち、一方は受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当し、他方は受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当する、請求項5に記載のアンテナシート。
【請求項7】
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の少なくとも一方において、前記アンテナエレメントの対が給電線を介して複数設けられた、請求項5又は6に記載のアンテナシート。
【請求項8】
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の少なくとも一方において、最先端のアンテナエレメントの対が1本の導電線として繋がっており、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部と前記伝送線部とが、全体で1本の連続した線状の導電性パターンとして設けられている、請求項5~7のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【請求項9】
前記伝送線部は、2本の導電線が平行に配置された平行伝送路である、請求項5~8のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【請求項10】
さらに、前記アンテナ回路パターンの少なくとも一部を保護するための保護層を含む、請求項5~9のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【請求項11】
さらに、前記シート状基材の少なくとも一方側の表面に設けられた粘着層を含む、請求項5~10のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナパターン及びアンテナシートに関する。特に、本発明は、無線通信用のアンテナパターン及びアンテナシートであって、電波を通さない又は減衰退させる障害物があっても、無電源で通信距離を伸ばすことができる無線通信中継用のアンテナパターン、及びそのようなアンテナパターンを備えたアンテナシートに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、携帯電話やスマートフォン、モバイルノートパソコンなどの無線通信を利用した移動通信システムは社会において欠かすことのできない技術となっている。
【0003】
無線通信には、必ず電波を受信するためのアンテナが必要になる。一般に、パソコンやスマートフォンをインターネットに接続するときには、中継機となるモデムやルーターを介してインターネット回線に接続することになる。無線LANルーター(Wi-Fiルーター)を利用して別の場所にあるパソコンやスマートフォンなどの機器をインターネットに無線接続する場合、親機となる無線LANルーターと子機となるパソコンなどの無線LAN機器同士をケーブルで接続する必要がないため、見栄えや使い勝手はよいが、例えば、家庭など室内で利用する場合、扉や壁や天井などを構成する部材の材質が電波を通さない、又は電波を減衰退させることがあり、通信が十分にできない場合がある。そのような場合、中継装置(リピーター)や中継アンテナを設置することで、通信距離の延長や、電波の届かない死角エリアへの通信を可能にすることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、室内の第1壁面に設置される第1平面アンテナと、他の室内又は屋外の第2壁面に設置される第2平面アンテナと、前記第1平面アンテナと前記第2平面アンテナとを接続する高周波伝送用ケーブルを備え、前記高周波伝送用ケーブルが非居住空間に配設され、室内からは目視されないことを特徴とする屋内中継用平面アンテナが記載されている。第1平面アンテナと第2平面アンテナとを非居住空間内を通した高周波伝送用ケーブルで接続することにより、一方の平面アンテナで受信した無線信号を電界強度の減衰を抑えながら他方の平面アンテナへ伝送することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線LAN機器同士でデータを受送信するためには、同じ帯域幅のチャンネルを使用する必要がある。しかし、無線LANは電波を使うため、使用する環境や周波数帯によっては、電波の干渉で通信が途切れるなどのトラブルが起こることがある。そのため、電波干渉を防ぐために、近くに存在するアクセスポイント同士で異なるチャンネルを使用するように設定することが必要となる場合がある。
【0007】
また、アンテナを設置するためのコスト、及びメンテナンスのしやすさの観点から、アンテナは、できるだけ構造がシンプルであることが好ましく、無電源で機能できることが好ましい。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーできるとともに、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電源で安定した無線通信を行うことができる無線通信中継用のアンテナパターン、及びそのようなアンテナパターンを備えたアンテナシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、アンテナパターンのアンテナエレメントの直線部の長さを制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。より具体的には、アンテナエレメントにおいて、互いに並行する第1直線部と第2直線部の長さを異なるものに構成することにより、受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーでき、簡便な方法で、無電源で安定した無線通信を行うことができる。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下に例示される。
【0010】
本発明は一側面において、導電線からなるアンテナパターンであって、前記導電線を折返し配置することで形成された線対称のアンテナエレメントを少なくとも1対含み、
前記アンテナエレメントは、長さaの第1直線部と、前記第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、前記第1直線部の長さaと前記第2直線部の長さbとが異なる、
アンテナパターンである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記第1直線部の長さaと前記折返し部の長さcを合わせた長さa+cと、前記第2直線部の長さbと前記折返し部の長さcを合わせた長さb+cのうち、一方は受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当し、他方は受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当するように構成することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記アンテナエレメントの対は、給電線を介して複数設けることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記アンテナパターンの最先端のアンテナエレメントの対を1本の導電線として繋げ、これにより前記アンテナパターンを全体で1本の連続した線状の導電性パターンとして設けることができる。
【0014】
本発明は別の側面において、シート状基材と、前記シート状基材の一方側に導電線を折返し配置することで設けられた、導電性パターンからなるアンテナ回路パターンを含むアンテナシートであって、
前記アンテナ回路パターンは、第1のアンテナ部と、該第1のアンテナ部と離れて設けられた第2のアンテナ部と、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とを接続する伝送線部とを含み、
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部はそれぞれ、線対称のアンテナエレメントを少なくとも1対含み、前記アンテナエレメントは、長さaの第1直線部と、前記第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、前記第1直線部の長さaと前記第2直線部の長さbとが異なる、
アンテナシートである。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の両方において、前記第1直線部の長さaと前記折返し部の長さcを合わせた長さa+cと、前記第2直線部の長さbと前記折返し部の長さcを合わせた長さb+cのうち、一方は受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当し、他方は受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当するように構成することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の少なくとも一方において、前記アンテナエレメントの対は、給電線を介して複数設けることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部の少なくとも一方において、最先端のアンテナエレメントの対を1本の導電線として繋げ、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部と前記伝送線部とを、全体で1本の連続した線状の導電性パターンとして設けることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記伝送線部は、2本の導電線が平行に配置された平行伝送路とすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、アンテナシートは、さらに、前記アンテナ回路パターンの少なくとも一部を保護するための保護層を含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、アンテナシートは、さらに、前記シート状基材の少なくとも一方側の表面に設けられた粘着層を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーできるとともに、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電源で安定した無線通信を行うことができる無線通信中継用のアンテナパターン、及びそのようなアンテナパターンを備えたアンテナシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(A)は、本発明のアンテナパターンのアンテナエレメントの対の一例を模式的に示す平面図である。
図1(B)は、本発明のアンテナパターンのアンテナエレメントの対の別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、アンテナエレメントの対が複数設けられたアンテナパターンの一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
図3(B)はアンテナシートに粘着層を設けた一例を模式的に示す断面図である。
図3(c)はアンテナシートに保護層を設けた一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は、本発明のアンテナシートにおいて、導電性パターンの導電線がシート状基材の表面に埋め込まれた状態の一例を示す。
図4(B)は、本発明のアンテナシートにおいて、導電性パターンの導電線の一部がシート状基材の表面に覆われる状態の一例を示す。
【
図5】
図5は、比較例に用いたアンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明のアンテナシートの貼り付け態様の一例を示す模式図である。
図6(B)は、
図6(A)の貼り付け態様を上面から見た図である。
【
図7】
図7は、本発明のアンテナシートの貼り付け態様の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。なお、本発明の各実施形態を説明する図面における寸法、縮尺、角度などは、理解に資するために便宜上示すものであり、実際の寸法、縮尺、角度などを示すとは限らない。
【0024】
(1.アンテナエレメント)
図1(A)は、本発明のアンテナパターンのアンテナエレメントの対の一例を模式的に示す平面図である。
図1(B)は、本発明のアンテナパターンのアンテナエレメントの対の別の一例を模式的に示す平面図である。本実施形態のアンテナパターンは、そのようなアンテナエレメントを少なくとも1対含むことを特徴とする。
【0025】
図1によると、本実施形態のアンテナパターンのアンテナエレメントは、導電線を折返し配置することで形成されており、図面では中心線(点線)に対して上下対称に設けられている。上下のアンテナエレメントは、それぞれ、長さaの第1直線部と、第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、第1直線部と第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなり、第1直線部の長さaと第2直線部の長さbとが異なる長さになっている。長さaは、中心線から上下方向に向かって、折返し部cと繋がる端部までの距離をいい、長さbは、中心線から上下方向に向かって、折返し部cと繋がる端部までの距離をいう。当該アンテナエレメントの対において、それぞれの第1直線部の長さaと第2直線部の長さbが相等しいことが好ましい。
【0026】
第1直線部の長さaと第2直線部の長さbとが異なる長さであることにより、受信すべき電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーでき、近くに存在するアクセスポイント同士による異なるチャンネルでの受信を容易にすることができる。
【0027】
図1(A)では、受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーするため、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当する長さとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当する長さにすることができる。例えば、Wi-Fiの国際的な標準規格であるIEEE802.11aの場合、無線LANの5GHz帯の周波数としては、5.2GHz帯(W52)の周波数帯域は5150~5250MHz(4チャンネル)、5.3GHz帯(W53)の周波数帯域は5250~5350MHz(4チャンネル)、5.6GHz帯(W56)の周波数帯域は5470~5725MHz(11チャンネル)が利用可能であり、これらすべての帯域幅をカバーするには、最小受信周波数5150MHzから最大受信周波数5725MHzの周波数帯域をカバーする必要がある。この場合、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを最小受信周波数5150MHzの1/4λに相当する約14.5mmとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを最大受信周波数5725MHzの1/4λに相当する約13mmの長さにするとよい。
【0028】
またIEEE802.11bの場合、2.4GHz帯の周波数帯域は2401~2495MHz(中心周波数で2412~2484MHz)で、日本国内では14チャンネルが利用可能である。2.4GHz帯は5GHz帯に比べると電波が遠くまで届きやすく、壁などの障害物にも強いため、比較的に広範囲で使用することが可能だが、1つのチャンネル幅が規格上22MHz(中心周波数から両側に11MHz)であるため、周波数が重なり合わないように干渉なしで通信できるのは5チャンネルずつ離した3チャンネル(最大4チャンネル)を割り当てていくのが一般的である。この場合でも、2401~2443MHz(1~5チャンネル)、2426~2468MHz(6~10チャンネル)、2451~2483MHz(11~13チャンネル)及び2473~2495MHz(14チャンネル)、のすべての帯域幅をカバーするには、最小受信周波数2401MHzから最大受信周波数2495MHzの周波数帯域をカバーする必要がある。この場合、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを最小受信周波数2401MHzの1/4λに相当する約31mmとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを最大受信周波数2495MHzの1/4λに相当する約30mmの長さにするとよい。
【0029】
さらに、実際の必要に応じて、これらの周波数帯域のいずれかの最小受信周波数と、いずれかの最大受信周波数を任意に選択したうえ、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+c、及び第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを設定することができる。本発明の異なる実施形態は、これらの任意の組み合わせを含むものとする。さらには、本発明の様々なアンテナパターンにおいて、異なるアンテナエレメントの対を組み合わせて配置することができる。例えば、アンテナパターンにおいて、一部のアンテナエレメントの対における第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを最小受信周波数5150MHzの1/4λに相当する約14.5mmとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを最大受信周波数5725MHzの1/4λに相当する約13mmの長さとし、別の一部のアンテナエレメントの対における第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを最小受信周波数2401MHzの1/4λに相当する約31mmとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを最大受信周波数2495MHzの1/4λに相当する約30mmの長さとすることも可能である。
【0030】
図1(A)の場合、第1直線部と折返し部と第2直線部の端部をそれぞれ繋げて1つの線状に形成するには、第1直線部の長さaよりも第2直線部の長さbと折返し部cを合わせた長さb+cの方を長く(a<b+c)する必要がある。また折返し部cの長さは任意であるが、第1直線部の長さaに対する折返し部cの折り曲げ率〔c/(a+c)〕と第2直線部の長さbに対する折返し部cの折り曲げ率〔c/(b+c)〕は、60%以下、好ましくは40%以下であるようにするとよい。特に折り曲げ率を最大40%までとして折り曲げると、放射効率の悪化を非常に小さく抑えることができ、アンテナの小型化に寄与することができる。
【0031】
図1(A)の場合、上下対称のアンテナエレメントの対のそれぞれの第2直線部b同士の間には給電線(又は給電点)のための間隔が設けられている。この間隔は任意であるが、1mm~5mm、好ましくは、1mm~3mmであるとよい。また、
図1(A)では、上下対称のアンテナエレメントの対のそれぞれの第1直線部aは1つの線状に繋がっているが、第2直線部bと同様に間隔を有してもよく、この場合の第1直線部aの長さは、上下対称のアンテナエレメントの対の中心線から折返し部cと繋がる端部までの長さであるとよい。
【0032】
図1(B)は、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを受信する電波の周波数帯域における最大受信周波数の1/4λに相当する長さとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを受信する電波の周波数帯域における最小受信周波数の1/4λに相当する長さにしたアンテナパターンである。
図1(B)では、
図1(A)の第1直線部aと折返し部cと第2直線部bとで形成される台形状の線状パターンが反転した形になっている。この場合でも、
図1(A)のアンテナパターンと同様に、受信する電波の周波数帯域における複数の帯域幅(チャンネル)をカバーすることができる。
【0033】
(2.アンテナパターン)
図2は、前述の本発明の実施形態に係るアンテナエレメントの対が複数設けられたアンテナパターンの一例を模式的に示す平面図である。
図2によると、第1直線部aと折返し部cと第2直線部bとで形成されるアンテナエレメントの対が給電線を介して複数設けられている。アンテナパターンには、前述の本発明の実施形態に係るアンテナエレメントの対のほか、ほかの形状のアンテナエレメントの対を配置することも可能であるが、好ましくは、すべてのアンテナエレメントの対が、前述の本発明の実施形態に係るアンテナエレメントの対である。本発明の実施形態に係るアンテナエレメントの対を複数配置する場合、それぞれの第1直線部及び第2直線部がすべて平行になるように配置することが好ましい。アンテナエレメントの対の総数は2以上であればよいが、数が増えるとアンテナシートの寸法が大きくなるため、10以下、好ましくは5以下であってよい。また隣接する2つのアンテナエレメントの対の間隔dは、2mm~20mm、好ましくは、3mm~10mmが好適である。アンテナエレメントの対の総数、間隔は設計の自由度が高いので、これで指向性や受信感度をある程度調整することができる。
【0034】
本発明の実施形態に係るアンテナエレメントの対を複数配置する場合、1つのアンテナエレメントの対における第1直線部の長さa、第2直線部の長さb、及び折返し部の長さcは、他のアンテナエレメントの対のそれぞれと同じであってもよく、異なってもよい。好ましくは、すべての1つのアンテナエレメントの対において、第1直線部の長さa、第2直線部の長さb、及び折返し部の長さcが同じになるように構成する。
【0035】
図2において、アンテナパターンの最先端のアンテナエレメントの対が給電線と同様の間隔を有しているが、最先端のアンテナエレメントの対を1本の導電線として繋げることによりアンテナパターンを全体で1本の連続した線状の導電性パターンとして設けることができる(
図3(A)参照)。
図2の実施形態において、アンテナパターンの最先端のアンテナエレメントの対とは、最も左側に位置するアンテナエレメントの対を意味する。
【0036】
(3.アンテナシート)
図3(A)は、本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
図3(B)はアンテナシートに粘着層を設けた一例を模式的に示す断面図である。
図3(c)はアンテナシートに保護層を設けた一例を模式的に示す断面図である。
【0037】
図3(A)によると、アンテナシート1は、シート状基材2と、シート状基材2の一方側に導電線を折返し配置することで設けられた、導電性パターンからなるアンテナ回路パターン3を含み、アンテナ回路パターン3は、第1のアンテナ部31と、第1のアンテナ部31と離れて設けられた第2のアンテナ部32と、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部4とを備える。
【0038】
第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32はそれぞれ、
図1又は
図2に開示される実施形態のように、長さaの第1直線部と、第1直線部と平行に設けられた長さbの第2直線部と、第1直線部と第2直線部とを繋ぐ長さcの折返し部とからなるアンテナエレメントが線対称に設けられ、第1直線部の長さaと第2直線部の長さbとが異なる長さになっている。また、
図3(A)の実施形態では、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32は、第1直線部と折返し部と第2直線部とで形成されるアンテナエレメントの対がそれぞれ給電線を介して上下対称に4対設けられている。
【0039】
第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部4は、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32との間で電力信号を伝送する伝送路で、平行な2本の直線で構成される。伝送線部4の長さは特に制限はないが、例えば、5mm~500mm、好ましくは、10mm~100mmが好適である。また、平行間隔は、1mm~5mm、好ましくは、1.5mm~3mmが好適である。
【0040】
図3(A)に例示した本実施形態のアンテナシート1によると、第1のアンテナ部31で受信した電波を第2のアンテナ部32から送信することができ、通信障害となる障害物が存在しても、簡便な方法で、無電源で安定した無線通信を行うことができる無線通信中継用のアンテナシート1とすることができる。
【0041】
本発明の一実施形態において用いられるシート状基材2は、所定の厚みを有し、単層又は複数層で構成され、各層は、紙、合成紙、熱可塑性樹脂シートなどを用いることができる。柔軟性の観点から、シート状基材2が単層である場合、樹脂材料からなる層であることが好ましく、シート状基材2が複数層で構成される場合、少なくともその一層が樹脂材料からなることが好ましい。シート状基材2の少なくとも一層を構成する樹脂材料には熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂等を用いることができ、これらの材料として、1種を単独に使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
シート状基材2を複数層で構成する場合の例としては、紙基材上に熱可塑性樹脂を塗工やラミネートしたものを挙げることができる。
【0044】
シート状基材2を熱可塑性樹脂で構成する場合、透明又は半透明な熱可塑性樹脂からなるものであれば、全体として透明又は半透明なアンテナシート1を作製することができるので好適である。全体として透明又は半透明な無線通信中継用アンテナシート1は、貼り付け対象となる建築物等の被着体の意匠性を損なうことなく貼着可能となる。
【0045】
シート状基材2には、無機微細粉末あるいは有機フィラー、分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、紫外線安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等を適宜添加することができる。
【0046】
シート状基材2の強度を維持し、導電性パターン3を担持する機能を果たすためには、シート状基材2の厚みは、0.030mm以上であることが好ましく、0.050mm以上であることがより好ましい。一方、シート状基材2の柔軟性を維持する観点から、シート状基材2の厚みは、1.000mm以下であることが好ましく、0.500mm以下であることがより好ましい。
【0047】
上述の様に、シート状基材2は単層又は複数層(あるいは、異なる材料の層の組み合わせ)で構成されてもよいが、シート状基材2全体としては、可撓性又は可塑性を有することが好ましい。その理由として、後述する
図6~7に示すように、折り曲げて使用する態様に適用することができるからである。
【0048】
導電性パターン3の配置手段は限定されないが、銀ペースト等の導電性インキを用いた印刷や銅箔等の金属箔のエッチングによる形成、一定の径を有する断面視で円形の導電線を所定のパターンに配設して形成することができる。
【0049】
印刷方式では、銀ペースト等の導電性インキを、スクリーン印刷やオフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷方式を用いて、シート状基材2の一方側に、印刷アンテナとして所望のアンテナ回路パターンを形成することができる。
【0050】
エッチングによる形成では、銅箔やアルミ箔を絶縁フィルムと貼り合せた基材をエッチングし、エッチングアンテナとして、所望のアンテナ回路パターンを形成する。エッチングによる形成では、絶縁フィルムをそのままシート状基材2として用いてよく、また絶縁フィルムのアンテナ回路パターンを形成した面にシート状基材2を貼り合せ、絶縁フィルムとシート状基材2でアンテナ回路パターンを挟み込んだ形にしてもよい。
【0051】
導電性パターン3を導電線で形成する場合、その導電線は、少なくとも金属線を含んで構成され、好ましくは、金属線が自己融着性の絶縁被膜により被覆されてなるものとすることができる。金属線としては、例えば、銅、鉄、金、銀、銅ニッケル、ニッケルクロム、鉄ニッケルクロム等の金属線を用いることができるが、導電性を有するものであれば他の材料を用いることもできる。通信特性や耐久性、コストの観点から、金属線として銅又は銅合金が好ましい。銅合金の例としては、亜鉛、鉛、錫、銀、アルミ、ニッケル、ベリリウム、ジルコニウムなどを単独もしくは複数組み合わせてなる銅合金を用いることが好ましい。
【0052】
金属線を被覆する絶縁被膜は、絶縁性の樹脂被膜であり、絶縁被膜で被覆された導電線は市販のエナメル線とすることができる。絶縁性の樹脂被膜の具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等を挙げることができる。絶縁被膜は、典型的には黒色であるが、貼り付け対象となる被着体の色彩にあわせて絶縁被膜を任意の色に着色させてもよい。
【0053】
導電性パターン3を構成する導電線の直径は通信特性を考慮すると、例えば、0.03mm~0.2mmとすることができる。細い導電線を形成するのは容易ではない場合もあるが、貼り付け対象となる被着体の透明性や意匠性を損なわないためには導電線はできるだけ細いほうがよく、導電線の直径は好ましくは、0.05mm~0.15mmである。
【0054】
本発明の好ましい1つの実施態様として、導電性パターン3は、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32と伝送線部4とを1つの連続した導電線で形成することができる。
図3(A)では、第1のアンテナ部31の最先端のアンテナエレメントの対の第1直線部が1本の導電線で繋がっており、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32と伝送線部4とが全体で1本の導電線からなる連続した導電性パターンとして設けられた例を示している。なお、第1のアンテナ部31の最先端のアンテナエレメントの対とは、伝送線部4との距離が最も遠いアンテナエレメントの対を意味する。
【0055】
このような導電性パターンの形成方法としては、典型的にはシート状基材2の一方の表面に、導電線を引き回して、所定のパターン形態を描き、導電線を少なくともシート状基材2の一方の表面に埋め込むことにより固定することで、形成することができる。ここで、埋め込むとは、導電線に接しているシート部分の位置が、導電線の下端よりも高い状態にあることを意味する。例えば、
図4(A)に示すように、シート状基材2の表面よりも奥側に導電線の下端がめりこんだ状態であってもよい。あるいは、
図4(B)に示すように、導電線の下端は、シート面と同じ高さかそれよりも高い位置にあるが、シート面の一部が盛り上がって、導電線の下端の一部を覆うような状態であってもよい。
【0056】
シート状基材2の表面への導電線の埋め込み方法としては、例えば、少なくとも一方の表面が熱可塑性樹脂で構成されるシート状基材2を用い、超音波融着の原理を活用して導電線をシート状基材2の表面に埋め込むことが望ましい。超音波融着を行うに際しては、導電線を繰り出しながら熱可塑性樹脂からなるシート状基材2の表面を溶融させ、導電線をシート状基材2の表面に埋め込むことが可能な配線描画装置を用いることができる。このような配線描画装置が備える超音波ヘッドにより、導電線をシート状基材2の表面上へ繰り出しつつ、振動と加圧によりシート状基材2の表面に導電線を埋め込むことができる。
【0057】
シート状基材2の表面への導電線の埋め込みにより、シート状基材2上での導電性パターン3の位置決めを行うことができ、外部からの衝撃等による導電線の位置ずれの抑制を図ることができる。また、シート状基材2の表面に導電線を埋め込むことで、シート状基材2の表面上に導電線を配置することによるシート状基材2の表面の凹凸の程度を低減することができる。
【0058】
(4.粘着層)
本発明の一実施形態において、シート状基材2の少なくとも一方側の表面に粘着層を設けることができる。より具体的には、シート状基材2の導電性パターン3が設けられた一方の面、及びシート状基材2の導電性パターン3が設けられていない他方の面の少なくともどちらか一方に、粘着層5を設けることができる。
図3(B)では、シート状基材2の導電性パターン3が設けられていない他方の面に粘着層5が設けられている。
【0059】
粘着層は、本発明のアンテナシート1の貼り付け対象となる建造物や建築物の建具等の被着体に貼り付けるものである。粘着層としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系、ポリエステル系、セルロース系、エマルジョン等の粘着剤が使用可能である。また必要により粘着剤の特性向上のための添加剤として、フィラーや粘着付与剤や硬化剤なども適宜使用できる。
【0060】
粘着層5の厚みは接着力が得られる厚みであれば特に限定されず、通常は20μm以上であり、好ましくは25μm以上である。粘着層5の厚みの上限は特に限定されないが、通常は200μm以下であり、好ましくは75μm以下である。粘着層5を形成する場合、粘着剤をグラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、コンマコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング等の塗布方式を用いて形成できる。
【0061】
(5.保護層)
本発明の一実施形態において、導電性パターン3の少なくとも一部を保護するために、保護層6を設けることができる。より具体的には、シート状基材2の導電性パターン3が設けられた一方の面に、導電性パターン3の少なくとも一部を保護する保護層6を設けることができる。
図3(C)では、シート状基材2の一方の面に、導電性パターン3が設けられ、当該導電性パターン3が設けられたシート状基材2の面の全面に、導電性パターン3を被覆するように保護層6が設けられている。
【0062】
保護層6は、シート状基材2の一方側に設けられた導電性パターン3が外部に露出しないように保護する。導電性パターン3が自己融着性の絶縁層により被覆された導電線であれば保護層6は必ずしも必要ではないが、保護層6は、擦れなどで導電性パターン3がシート状基材2から剥がれたり、衝撃で断線したりすることを防止することができる。
【0063】
保護層6の材料の具体例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系もしくはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ-プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂等を構成するモノマー、プレポリマー、オリゴマー又はポリマーの1種又は2種以上を主成分とする組成物を挙げることができる。
【0064】
保護層6の形成方法としては、例えば、オフセット印刷やグラビア印刷等、スクリーン印刷等の印刷方式で形成することができる。また、シート状基材2と同様の透明又は半透明な熱可塑性樹脂シートを、必要により接着層を介して熱プレスでラミネート形成することもできる。シート状基材2と保護層6が透明又は半透明なものであると、全体として透明又は半透明なアンテナシート1を好適に作製することができる。全体として透明又は半透明なアンテナシート1は、貼り付け対象となる建築物等の被着体の意匠性を損なうことなく貼着可能となる。
【0065】
保護層6の厚みは、例えば、印刷方式で形成する際には、下限が1μm以上、好ましくは5μm以上であり、上限が100μm以下、好ましくは50μm以下である。熱可塑性樹脂シートを用いる場合、例えば、保護層6の厚みの下限が10μm以上、好ましくは50μm以上であり、上限が500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0066】
本発明では、保護層6が導電性パターン3を視覚的に隠蔽する隠蔽層とすることができる。隠蔽層としては保護層6を着色したものでよく、保護層6そのもの、又は保護層6上に印刷による意匠を施したものでもよい。意匠としては、貼り付け対象となる建造物や建築物の建具等の被着体と外観類似の化粧層とすることで、貼り付けた無線通信中継用アンテナシート1を目立たないようにすることができる。例えば、建築物の建具等の被着体が一定パターンの模様を表面に有している場合には、外見上、当該パターンと連続的になるように貼り付けることが可能な化粧層であってもよい。
【0067】
本発明では、シート状基材の導電性パターンが設けられた一方の面の保護層6上に更に第2の粘着層を設けることもできる。ただし、その場合、保護層6と第2の粘着層が接することは必須ではなく、間に別の層を設けてもよい。
【0068】
本実施形態の1つの使用態様として、建造物を構成する少なくとも2つの面を有する部材において、該部材の第1面に第1のアンテナ部31を、該第1面に隣接する第2面に第2のアンテナ部32を配置し、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32に接続された伝送線部4で第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32との間に電力信号を伝送する無線通信中継用のアンテナシート1として用いることができる。特に、建造物を構成する部材が建築物の建具である場合に好適に用いられる。
【0069】
図6は、コンクリートや土壁などの建造物の壁面に本実施形態のアンテナシート1を貼り付けた一例を示す模式図である。
図7は建築物の建具、例えば扉に本実施形態のアンテナシート1を貼り付けた一例を示す模式図である。
【0070】
図6(A)及び
図6(B)のように、コンクリートや土壁などの建造物の角部にアンテナシート1を貼り付けることで、コードレス電話機やFAX機、加熱中の電子レンジなどの電波干渉を起こすような機器があっても通信距離の延長や電波の届かない死角エリアへの通信を可能にすることができる。なお、建造物の角部が必ずしも直角でなくてもよい。
【0071】
また、
図7のように、通信障害となる扉や窓などの障害物の両面を跨ぐようにアンテナシート1を貼り付けることで、電波が遮蔽された空間の無線通信を、簡便な方法で、安定に行うことができる。
【実施例0072】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
シート状基材2となる熱可塑性樹脂シート(三菱樹脂株式会社製ポリカシートDPI-AO、厚み0.075mm)を準備し、シート状基材2の一方の面に導電線(ELEKTRISOLA社製自己融着被膜導線AB15、Φ0.10mm)を、超音波ヘッドを備えた配線描画装置(Ruhlamat社製WCE150、設定条件:USP1200、speed40%)を用いて埋め込み、
図3(A)に示す導電性パターンからなるアンテナ回路パターン3を形成した。
【0074】
第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32は、国際標準規格IEEE802.11aの5GHz帯の19チャンネルに対応するように、
図1(A)を参照して、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを周波数帯域の最小受信周波数5150MHzの1/4λに相当する約14.5mm、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを周波数帯域の最大受信周波数5725MHzの1/4λに相当する約13mm、折返し部の長さcを3mmとした。また
図2を参照して、アンテナエレメントは上下対称に4対、隣接する2つのアンテナエレメントの対の間隔dは7.5mmとした。第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32とを接続する伝送線部4の長さは50mmとした。最後に、縦100mmm×横200mmにカットし、
図3(A)に示すアンテナシート1を作製した。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同様の手順によりアンテナシート1を作製した。このとき、
図1(B)を参照して、第1直線部の長さaと折返し部の長さcを合わせた長さa+cを周波数帯域の最大受信周波数の1/4λに相当する13mmとし、第2直線部の長さbと折返し部の長さcを合わせた長さb+cを周波数帯域の最小受信周波数の1/4λに相当する長さ14.5mmとし、折返し部の長さcを3mmとした。すなわち、第1直線部の長さaと第2直線部の長さbの長さを入れ替えた以外、実施例1のアンテナシート1と同様の構成であった。
【0076】
(比較例1)
実施例1と同様にアンテナシートを作製した。このとき、
図5を参照して、第1のアンテナ部31と第2のアンテナ部32は、国際標準規格IEEE802.11aの5GHz帯の19チャンネルの中心周波数に対応するようにW
1を25mm、W
2を12.5mmとした。折返し部は1mmとし、アンテナエレメントは上下対称に4対、隣接する2つのアンテナエレメントの対の間隔dは2mmとした。これにより、第1直線部と第2直線部の長さが等しいアンテナシートを作製した。
【0077】
実施例1、2と比較例1のアンテナシートを用いて受送信特性を評価した。評価方法は、シールドボックスの外側と内側に第1アンテナ部と第2アンテナ部が位置するようにアンテナシートを配置し、シールドボックスの蓋で第1アンテナ部と第2アンテナ部の境(伝送線部)を挟み遮断した状態で、シールドボックス外の信号発生器に接続された送信アンテナから照射した5GHz帯の信号を第1アンテナ部で受信し、シールドボックス内の第2アンテナ部より再放射した電波を、シールドボックス内の受信アンテナにて受信し、その信号レベルをスペクトラムアナライザにて測定した。この操作を、周波数を変えて行った。信号レベル(受送信特性)が0に近ければ近いほど、信号の減衰が小さかったことを意味する。
【0078】
結果を表1に示した。実施例1と実施例2のアンテナシートは、5150MHzから5275MHzの範囲で安定した受送信特性を示した。一方、比較例1は、5350MHzで良好な受送信特性を示すが、中心の周波数帯域から外れると、受送信特性が悪くなる傾向が見られた。
【0079】