(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038096
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】二次電池用電極、二次電池、飛行体、及び、二次電池用電極の生産方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230309BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230309BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230309BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20230309BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20230309BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20230309BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20230309BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230309BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230309BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230309BHJP
H01M 4/1399 20100101ALI20230309BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230309BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230309BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/62 Z
H01M4/137
H01M4/60
H01M10/0566
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M4/04 A
H01M4/139
H01M4/1399
B64D27/24
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145014
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521157432
【氏名又は名称】ORLIB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴也
(72)【発明者】
【氏名】高柳 良基
(72)【発明者】
【氏名】宮川 絢太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正春
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AJ03
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ06
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA08
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA19
5H050CA25
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050FA10
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二次電池の正極又は負極として用いられる二次電池用電極を提供する。
【解決手段】電解液又は固体若しくはゲル状の電解質を備える二次電池用電極が、導電性物質を含む集電体222と、集電体の少なくとも一部と接し、活物質を含む活物質層224とを備える。二次電池用電極において、集電体及び活物質層の少なくとも一方に、電解液の電解質イオンが侵入可能な空隙、及び、活物質よりもイオンの輸率の大きなイオン伝導性物質の少なくとも一方を有するイオン透過領域462、464が配される。イオン透過領域は、二次電池用電極が二次電池に組み込まれたときに、二次電池の電解液又は電解質と、活物質の表面とに接触可能な位置に配されてよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液又は固体若しくはゲル状の電解質を備える二次電池の正極又は負極として用いられる二次電池用電極であって、
導電性物質を含む集電体と、
前記集電体の少なくとも一部と接し、活物質を含む活物質層と、
を備え、
前記集電体及び前記活物質層の少なくとも一方に、前記電解液の電解質イオンが侵入可能な空隙、及び、前記活物質よりもイオンの輸率の大きなイオン伝導性物質の少なくとも一方を有するイオン透過領域が配される、
二次電池用電極。
【請求項2】
前記イオン透過領域は、前記二次電池用電極が前記二次電池に組み込まれたときに、前記二次電池の前記電解液又は前記電解質と、前記活物質の表面とに接触可能な位置に配される、
請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項3】
前記活物質は、結晶質又は非晶質の有機化合物又はその塩を含む、
請求項1又は請求項2に記載の二次電池用電極。
【請求項4】
前記活物質は、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩である、
請求項3に記載の二次電池用電極。
【請求項5】
前記ジチアジアジン基を有する化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物又はその誘導体を含む、
請求項4に記載の二次電池用電極。
[一般式(1)]
【化1】
[一般式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を示す。また、重合度nは、1以上の正の整数である。]
【請求項6】
前記イオン透過領域の前記空隙は、前記活物質層の表面に形成された直径が1μm以上の孔を含む、
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項7】
前記活物質層は、前記活物質及び結着剤を含む複数の粒子を有し、
前記イオン透過領域の前記空隙は、
前記複数の粒子の間に形成され、
前記活物質層の表面から前記活物質層の内部に向かって延伸する、
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項8】
前記イオン透過領域の前記イオン伝導性物質は、高分子ゲル電解質、高分子電解質及び固体電解質の少なくとも1つを含む、
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項9】
前記イオン透過領域の前記イオン伝導性物質は、前記活物質と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との混合物又は反応物を含む、
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項10】
前記活物質層は、前記活物質及び結着剤を含み、
前記イオン透過領域の前記イオン伝導性物質は、前記結着剤と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との反応物を含む、
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項11】
前記二次電池は、前記電解液を備え、
前記集電体及び前記活物質層は、前記集電体の第1面と、前記活物質層の第1面とが接するように配され、
前記イオン透過領域の前記空隙は、
(i)前記集電体の前記第1面に形成され、前記集電体の側面から前記集電体の内部に向かって延伸する凹部、
(ii)前記集電体を貫通する貫通孔、及び、
(iii)前記活物質層の前記第1面に配され、前記活物質層の側面から前記活物質層の内部に向かって延伸する凹部、
の少なくとも1つを含む、
請求項1から請求項10までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項12】
前記二次電池は、前記電解液を備え、
前記集電体及び前記活物質層は、前記集電体の第1面と、前記活物質層の第1面とが接するように配され、
前記イオン透過領域の前記空隙は、前記活物質層の前記第1面の反対側に配される第2面、又は、前記活物質層の側面に形成された凹部を含む、
請求項1から請求項11までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項13】
前記凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有する、
請求項11及び請求項12に記載の二次電池用電極。
【請求項14】
前記イオン透過領域の体積は、前記活物質層に配された前記イオン透過領域の体積を含む前記活物質層の体積の50%以下である、
請求項1から請求項13までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項15】
前記イオン透過領域に含まれる前記イオン伝導性物質の質量は、前記活物質層に配された前記イオン透過領域の質量を含む前記活物質層の質量の50%以下である、
請求項1から請求項14までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項16】
前記活物質層の厚さは、80μm以上である、
請求項1から請求項15までの何れか一項に記載の二次電池用電極。
【請求項17】
請求項1から請求項16までの何れか一項に記載の二次電池用電極と、
電解液又は固体若しくはゲル状の電解質と、
を備える、二次電池。
【請求項18】
請求項17に記載の二次電池と、
前記二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、
を備える、飛行体。
【請求項19】
集電体及び活物質層を含む二次電池用電極の生産方法であって、
活物質、前記活物質よりもイオンの輸率の大きなイオン伝導性物質、及び、溶媒を含むスラリーを準備する段階と、
前記集電体の表面に前記スラリーを塗布する段階と、
前記活物質及び前記イオン伝導性物質が相分離するように、前記スラリーを乾燥させる段階と、
を有する、二次電池用電極の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極、二次電池、飛行体、及び、二次電池用電極の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極活物質としてルベアン酸又はルベアン酸ポリマーを含む正極を採用することにより、容量密度が400[Ah/kg‐蓄電セル]程度の蓄電セルが作製され得ることが開示されている。特許文献2には、ジスルフィド系の有機化合物を含む正極を採用することで、エネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた蓄電セルが作製され得ることが開示されている。しかしながら、蓄電セルの更なる性能向上が望まれている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2008-147015号公報
[特許文献2]米国特許第4833048号明細書
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、二次電池用電極が提供される。上記の二次電池用電極は、例えば、電解液又は固体若しくはゲル状の電解質を備える二次電池の正極又は負極として用いられる。上記の二次電池用電極は、例えば、導電性物質を含む集電体を備える。上記の二次電池用電極は、例えば、集電体の少なくとも一部と接し、活物質を含む活物質層を備える。上記の二次電池用電極において、例えば、集電体及び活物質層の少なくとも一方に、イオン透過領域が配される。イオン透過領域は、例えば、電解液の電解質イオンが侵入可能な空隙、及び、活物質よりもイオンの輸率の大きなイオン伝導性物質の少なくとも一方を有する。
【0004】
上記の二次電池用電極において、イオン透過領域は、二次電池用電極が二次電池に組み込まれたときに、二次電池の電解液又は電解質と、活物質の表面とに接触可能な位置に配されてよい。上記の二次電池用電極において、活物質は、結晶質又は非晶質の有機化合物又はその塩を含んでよい。上記の二次電池用電極において、活物質は、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩であってよい。上記の二次電池用電極において、ジチアジアジン基を有する化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物又はその誘導体を含んでよい。
[一般式(1)]
【化1】
[一般式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を示す。また、重合度nは、1以上の正の整数である。]
【0005】
上記の二次電池用電極において、イオン透過領域の空隙は、活物質層の表面に形成された直径が1μm以上の孔を含んでよい。上記の二次電池用電極において、活物質層は、活物質及び結着剤を含む複数の粒子を有してよい。イオン透過領域の空隙は、複数の粒子の間に形成され、活物質層の表面から活物質層の内部に向かって延伸してよい。
【0006】
上記の二次電池用電極において、イオン透過領域のイオン伝導性物質は、高分子ゲル電解質、高分子電解質及び固体電解質の少なくとも1つを含んでよい。上記の二次電池用電極において、イオン透過領域のイオン伝導性物質は、活物質と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との混合物又は反応物を含んでよい。上記の二次電池用電極において、活物質層は、活物質及び結着剤を含んでよい。イオン透過領域のイオン伝導性物質は、結着剤と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との反応物を含んでよい。
【0007】
上記の二次電池用電極において、二次電池は、電解液を備えてよい。上記の二次電池用電極において、集電体及び活物質層は、集電体の第1面と、活物質層の第1面とが接するように配されてよい。イオン透過領域の空隙は、(i)集電体の第1面に形成され、集電体の側面から集電体の内部に向かって延伸する凹部、(ii)集電体を貫通する貫通孔、及び、(iii)活物質層の第1面に配され、活物質層の側面から活物質層の内部に向かって延伸する凹部の少なくとも1つを含んでよい。上記の二次電池用電極において、集電体及び活物質層は、集電体の第1面と、活物質層の第1面とが接するように配されてよい。イオン透過領域の空隙は、活物質層の第1面の反対側に配される第2面、又は、活物質層の側面に形成された凹部を含んでよい。上記の二次電池用電極において、凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。
【0008】
上記の二次電池用電極において、イオン透過領域の体積は、活物質層に配されたイオン透過領域の体積を含む活物質層の体積の50%以下であってよい。上記の二次電池用電極において、イオン透過領域に含まれるイオン伝導性物質の質量は、活物質層に配されたイオン透過領域の質量を含む活物質層の質量の50%以下であってよい。上記の二次電池用電極において、活物質層の厚さは、80μm以上であってよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、二次電池が提供される。上記の二次電池は、例えば、第1の態様に係る二次電池用電極を備える。上記の二次電池は、例えば、電解液又は固体若しくはゲル状の電解質を備える。
【0010】
本発明の第3の態様においては、飛行体が提供される。上記の飛行体は、例えば、第2の態様に係る二次電池を備える。上記の飛行体は、例えば、二次電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置を備える。
【0011】
本発明の第4の態様においては、集電体及び活物質層を含む二次電池用電極の生産方法が提供される。上記の生産方法は、例えば、活物質、活物質よりもイオンの輸率の大きなイオン伝導性物質、及び、溶媒を含むスラリーを準備する段階を有する。上記の生産方法は、例えば、集電体の表面にスラリーを塗布する段階を有する。上記の生産方法は、例えば、活物質及びイオン伝導性物質が相分離するように、スラリーを乾燥させる段階を有する。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。
【
図5】正極活物質層224の断面の一例を概略的に示す。
【
図6】正極活物質層224の断面の他の例を概略的に示す。
【
図8】正極220の断面のさらに他の例を概略的に示す。
【
図9】正極220の生産方法の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
近年、活物質の質量当たりの容量密度を向上させるべく、分子量の比較的小さな有機果房物を活物質として用いた二次電池の開発が行われている。単位質量当たりの容量密度を向上させることを目的として、電極に配された活物質層の厚さを増加させることが考えられる。しかしながら、活物質層の厚さが増加しても、活物質量の増加量から期待されるほどは、容量が向上しない場合があった。本技術の一実施形態によれば、電極内部におけるイオンの移動が改善される。例えば、電極の内部に、電解質イオンが移動可能な領域が形成される。これにより、二次電池のエネルギー密度、出力及び/又は寿命が向上する。本実施形態に係る二次電池は、単位質量あたりのエネルギー密度が大きいので、飛行体の用途に特に適している。
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。また、「置換又は非置換」とは、「任意の置換基で置換されている、又は、置換基で置換されていない」ことを意味する。上記の置換基の種類は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。また、上記の置換基の個数は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。
【0017】
図1は、飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110と、電力制御回路120と、1又は複数の電動機130と、1又は複数のプロペラ140と、1又は複数のセンサ150と、制御装置160とを備える。本実施形態において、蓄電池110は、1又は複数の蓄電セル112を有する。
【0018】
本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110に蓄積された電気エネルギーを利用して飛行する。飛行体100としては、飛行機、飛行船又は風船、気球、ヘリコプター、ドローンなどが例示される。
【0019】
本実施形態において、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、外部の充電装置又は発電装置(図示されていない。)から電気エネルギーを受領し、当該電気エネルギーを1以上の蓄電セル112に蓄積する。また、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、1以上の蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを電動機130に供給する。
【0020】
本実施形態において、蓄電セル112は、電気エネルギーを蓄積する(蓄電セル112の充電と称される場合がる)。また、蓄電セル112は、蓄積された電気エネルギーを放出する(蓄電セル112の放電と称される場合がある)。蓄電セル112は、二次電池であってよい。蓄電セル112は、非水二次電池であってよい。
【0021】
非水二次電池としては、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム金属二次電池、リチウム空気二次電池、リチウム硫黄二次電池、マグネシウムイオン二次電池、アルミニウムイオン二次電池などが例示される。また、非水二次電池の一態様であるリチウムイオン二次電池は、非水電解液を使用した非水リチウムイオン二次電池と、固体電解質を使用した全固体リチウムイオン二次電池とを含む概念であってよい。
【0022】
例えば、車両に搭載される二次電池用の活物質としては、単位体積あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料が選択されることが多い。一方、本実施形態において、蓄電セル112は飛行体100に搭載される。そのため、蓄電セル112に用いられる活物質は、単位質量あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料であることが好ましい。
【0023】
蓄電セル112の質量エネルギー密度は、400[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、500Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、600[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、650[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、700[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがさらに好ましい。蓄電セル112の質量エネルギー密度は、400以上600以下[Wh/kg‐蓄電セル]であってもよく、400以上700以下[Wh/kg‐蓄電セル]であってもよく、500以上700以下[Wh/kg‐蓄電セル]であってもよい。これにより、飛行体の電源の用途に特に適した蓄電セルが得られる。
【0024】
蓄電セル112の体積エネルギー密度は、300以上1200[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、400以上1000[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。蓄電セル112が飛行体100の電源の一部として飛行体100に搭載される場合、蓄電セル112の体積エネルギー密度は、600[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、800[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。
【0025】
蓄電セル112の容量密度は、150[Ah/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、180[Ah/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、200[Ah/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましい。これにより、飛行体の電源の用途に特に適した蓄電セルが得られる。
【0026】
蓄電セル112は、上記の数値範囲内の質量エネルギー密度と、上記の数値範囲内の体積エネルギー密度を有してもよい。これにより、車両の電源に用いることが比較的困難な蓄電セルを、飛行体の電源として利用することができる。蓄電セル112の詳細は後述される。
【0027】
本実施形態において、電力制御回路120は、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御する。電力制御回路120は、制御装置160からの命令に基づいて、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御してよい。電力制御回路120は、例えば、制御装置160からの制御信号に基づいて動作する複数のスイッチング素子を含む。
【0028】
本実施形態において、電動機130は、電力制御回路120を介して、蓄電池110から電気エネルギーを受領する。電動機130は、蓄電池110から受領した電気エネルギーを利用して、プロペラ140を回転させる。これにより、電動機130は、蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを利用して、飛行体100の推進力を発生させることができる。
【0029】
本実施形態において、センサ150は、飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定する。飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、GPS信号受信機、加速度センサ、角加速度センサ、ジャイロセンサなどが例示される。センサ150は、蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定してよい。蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、温度センサ、電流センサ、電圧センサなどが例示される。
【0030】
本実施形態において、制御装置160は、飛行体100を制御する。制御装置160は、電力制御回路120を制御することで、蓄電池110の電力の入出力を制御してよい。例えば、制御装置160は、蓄電池110の出力電流、出力電圧、入力電流、入力電圧などを制御する。これにより、制御装置160は、飛行体100の位置及び姿勢を制御することができる。制御装置160は、センサ150からの出力に基づいて電力制御回路120を制御することで、飛行体100の位置及び姿勢を制御してよい。
【0031】
蓄電池110は、二次電池の一例であってよい。蓄電セル112は、二次電池の一例であってよい。電動機130は、推進力発生装置の一例であってよい。
【0032】
図2は、蓄電セル112の一例を概略的に示す。本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型の非水二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。本実施形態においては、正極220の一部に、イオンが移動可能な領域(イオン透過領域と称される場合がある)が形成される場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。
【0033】
[蓄電セル]
本実施形態において、蓄電セル112は、正極ケース212と、負極ケース214と、封止剤216と、金属バネ218とを備える。また、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240と、電解液250とを備える。本実施形態において、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。本実施形態において、負極240は、負極集電体242と、負極活物質層244とを有する。
【0034】
本実施形態において、正極ケース212及び負極ケース214を組み立てることで、正極ケース212及び負極ケース214の内部に空間が形成される。正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部には、金属バネ218、正極220、セパレータ230、負極240及び電解液250が収容される。正極220、セパレータ230及び負極240は、金属バネ218の反発力により、正極ケース212及び負極ケース214の内部に固定される。
【0035】
正極ケース212及び負極ケース214は、例えば、円盤状の薄板形状を有する導電性の材料により構成される。本実施形態において、封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214の間に形成される隙間を封止する。封止剤216は、絶縁性材料を含む。封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214を絶縁する。
【0036】
[正極]
上述されたとおり、本実施形態においては、正極220の一部に、イオンが移動可能な領域(イオン透過領域と称される場合がある。)が形成される。イオン透過領域としては、(i)電解液250の電解質イオンが侵入可能な空隙が形成された領域、(ii)正極220の正極活物質よりもイオン(例えば、二次電池の電解質イオン、二次電池のキャリアとなる金属イオンなどである。)の輸率が大きな物質(イオン伝導性物質と称される場合がある。)が形成された領域などが例示される。イオン透過領域は、例えば、正極集電体222及び正極活物質層224の少なくとも一方に配される。イオン透過領域の詳細は後述される。
【0037】
本実施形態において、正極集電体222は、正極活物質層224を保持する。正極集電体222の材料としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などの導電性物質が例示される。正極集電体222の形状としては、箔、メッシュ、パンチドメタル、エキスパンドメタル等が例示される。正極集電体222の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、3~200μmである。正極集電体222の厚さは、4~150μmであってもよく、5~100μmであってもよく、6~20μmであってもよい。
【0038】
本実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面に形成される。正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一部と接する。正極活物質層224の厚さは、正極集電体222の片面あたり、1~300μmであってもよく、2~200μmであってもよい。正極活物質層224の厚さは、正極集電体222の片面あたり、80μm以上であってもよく、80μm超であってもよく、100μm以上であってもよく、120μm以上であってもよい。
【0039】
正極集電体222の片面あたりの正極活物質層224の厚さが80μm以上又は80μm超になると、実際に作製された蓄電セル112の容量密度が、正極活物質層224に含まれる正極活物質の質量から算出される理論的な容量密度の80%未満となる場合がある。このような場合、電極の内部にイオン透過領域が形成されることの効果が、特に顕著に表れる。
【0040】
一実施形態によれば、正極集電体222及び正極活物質層224の接触面に、イオン透過領域が形成される。これにより、正極活物質層224の表面のうち正極集電体222に覆われた領域に配された正極活物質と、電解質イオン又はキャリアイオンとの反応が促進される。その結果、正極活物質層224に含まれる正極活物質の質量から算出される理論的な容量密度に対する、実際に作製された蓄電セル112の容量密度の比が向上する。これにより、上記の比が例えば80%以上となり、蓄電セル112の容量密度が向上する。
【0041】
他の実施形態によれば、正極活物質層224の内部に、その一部が正極活物質層224の表面に配されるイオン透過領域が形成される。これにより、正極活物質層224の表面と、正極活物質層224の内部との間におけるイオンの移動が促進され、正極活物質層224の内部に配された正極活物質と、電解質イオン又はキャリアイオンとの反応が促進される。その結果、正極活物質層224に含まれる正極活物質の質量から算出される理論的な容量密度に対する、実際に作製された蓄電セル112の容量密度の比が向上する。これにより、上記の比が例えば80%以上となり、蓄電セル112の容量密度が向上する。
【0042】
正極活物質層224は、例えば、正極活物質と、結着剤(バインダーと称される場合がある。)とを含む。正極活物質層224は、導電助剤をさらに含んでもよい。正極活物質層224は、上述されたイオン伝導性物質を含んでもよい。正極物質層を構成し得る各材料の詳細は後述される。
【0043】
(正極活物質)
正極活物質層224は、正極活物質として、例えば、有機化合物又はその塩を含む。上記の有機化合物は、結晶質又は非晶質の有機化合物であってよい。正極活物質層224が正極活物質として結晶質又は非晶質の有機化合物又はその塩を含む場合、正極活物質層224の表面に緻密な膜(例えば、有機化合物の膜である。)が形成されることがある。正極活物質層224の表面に緻密な膜が形成されると、正極活物質層224の表面と、正極活物質層224の内部との間のイオンの移動が妨げられる。このような場合、電極の内部にイオン透過領域が形成されることの効果が、特に顕著に表れる。
【0044】
正極活物質は、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩であってよい。ジチアジアジン基を有する化合物は、結晶質又は非晶質の有機化合物の一例であってよい。ジチアジアジン基を有する化合物は、一般式(1)で表される化合物、又は、当該化合物の誘導体であってよい。
【0045】
【0046】
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を示す。上記の有機基は、炭素、水素、ホウ素、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1種以上の原子により構成されてよい。上記の有機基は、ヘテロ原子として、窒素及び硫黄の少なくとも一方を含んでよい。また、一般式(1)において、nは、ジチアジアジン基の重合度を示す。重合度nは、1以上の正の整数であってよい。重合度nは、1~20であってよい。重合度nが1~20である場合、重合度が20を大きく超える場合と比較して、分子の剛直性が小さく、自由体積が比較的大きい。これにより、重合度が20を大きく超える場合と比較して、充放電反応である酸化還元反応の速度が大きくなる。
【0047】
上記の有機基は、置換又は非置換の炭化水素基であってよい。上記の有機基としては、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のカルボキシ基、置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のアシルオキシ基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のヘテロアリールオキシ基、置換又は非置換のエステル基、置換又は非置換のエーテル基、置換又は非置換のアミノ基、置換又は非置換のスルホン酸基、置換又は非置換のシアノ基、置換又は非置換のチオエーテル基などが例示される。上記の有機基は、エステル結合(-COO-)を有する一価の基であってもよく、エーテル結合(-O-)を有する一価の基であってもよい。
【0048】
ジチアジアジン基を有する化合物は、ジチアジアジン基とチオアミド基を有する化合物であってもよい。ジチアジアジン基を有する化合物は、一般式(2)で表される化合物、又は、当該化合物の誘導体であってよい。正極活物質層224は、正極活物質として、複数の種類の化合物を含んでよい。複数の種類の化合物は、一般式(2)で表される化合物であって、重合度nが異なる複数の種類の化合物を含んでよい。
【0049】
【0050】
一般式(2)において、nは、ジチアジアジン基の重合度を示す。重合度nは、1以上の正の整数であってよい。重合度nは、1~20であってよい。重合度nが1~20である場合、重合度が20を大きく超える場合と比較して、分子の剛直性が小さく、自由体積が比較的大きい。これにより、重合度が20を大きく超える場合と比較して、充放電反応である酸化還元反応の速度が大きくなる。
【0051】
ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩の合成方法は特に限定されない。ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩は、例えば、(i)ジアミノ-N-アルキルエタンチオアミドとアルキルイミノクロロメタンスルフェニルクロライドの環化反応、(ii)ジチオオギザミドの酸化重合などにより合成され得る。
【0052】
正極活物質層224がジチアジアジン基を有する化合物又はその塩を含むことは、例えば、正極活物質層224の表面のラマンマッピング測定により確認される。具体的には、まず、充電状態、放電状態、中間状態のいずれかにおいて、蓄電セル112を構成する正極220を乾燥雰囲気化で取り出す。次に、取り出された正極220を洗浄し、乾燥させる。次に、正極活物質層224の表面のうち導電性物質の少ない領域を、ラマンマッピング法により観察する。
【0053】
正極活物質層224に含まれる物質がジチアジアジン基を有する場合、530~545cm-1の位置にS-S結合に由来するピークが観察され、1150~1250cm-1の位置にN-N結合に由来するピークが観察される。なお、一般式(2)における重合度nは、充電状態で取り出された正極220の表面のラマンマッピング測定により確認され得る。例えば、重合度nは、1000~1100cm-1に出現するC=S結合に由来するピーク強度と、上述されたS-S結合及びN―N結合のピーク強度とを比較することで、測定され得る。
【0054】
本実施形態によれば、正極活物質層224が、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩を含む。これにより、容量密度が大きく、充放電を繰り返しても容量低下の少ないサイクル特性の良好な蓄電セル112が得られる。
【0055】
ジチアジアジン基を有する化合物は、電池電極反応に伴って錯塩を生成すると考えられる。例えば、電極活物質として、一般式(2)で表される化合物であって、重合度nが1である有機化合物が使用され、電解質塩のカチオンとして、リチウムイオンが使用された場合に予想される充放電反応の一例を、化学反応式(A)に示す。なお、説明を簡単にすることを目的として、化学反応式(A)においてはチオアミド基の記載が省略されている。
【0056】
【0057】
化学反応式(A)に示されるように、ジチアジアジン基を有する化合物においては、充放電時に2電子が反応に関与する。具体的には、ジチアジアジン基を有する化合物に含まれるジチオン部分(C-S-S-C)が還元時にLi+と結合し、酸化時にLi+を放出する。
【0058】
本実施形態に係るジチアジアジン基を有する化合物は、ジチアジアジン基あたり2以上の電子で酸化還元することができるので、充放電効率が良好で質量当たりの容量密度の大きな電極活物質が得られる。また、本実施形態に係るジチアジアジン基を有する化合物は、反応を繰り返しても安定であり、電子数の減少が少ない。これにより、充放電を繰り返しても安定であり、サイクル特性が良好である。その結果、充放電時の安定性が向上し、エネルギー密度の大きな二次電池が実現され得る。
【0059】
なお、正極活物質は、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩に限定されない。蓄電セル112がリチウムイオン二次電池又はリチウム金属二次電池である場合、正極活物質の他の例としては、LiMnO2、LiNiO2、LiCoO2、Li(MnxNi1-x)O2、Li(MnxCo1-x)O2、Li(NiyCo1-y)O2、Li(MnxNiyCo1-x-y)O2などの層状酸化物;Li2MnO3-LiNiO2、Li2MnO3-LiCoO2、Li2MnO3-Li(NiyCo1-y)O2などの固溶体;Li2MnSiO4、Li2NiSiO4、Li2CoSiO4、Li2(MnxNi1-x)SiO4、Li2(MnxCo1-x)SiO4、Li2(NiyCo1-y)SiO4、Li2(MnxNiyCo1-x-y)SiO4などのケイ酸塩;LiMnBO3、LiNiBO3、LiCoBO3、Li(MnxNi1-x)BO3、Li(MnxCo1-x)BO3、Li(NiyCo1-y)BO3、Li(MnxNiyCo1-x-y)BO3などのホウ酸塩;V2O5;LiV3O6;MnOなどが挙げられる。上記式において、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。これらの正極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の正極活物質が組み合せられてもよい。
【0060】
蓄電セル112がナトリウムイオン二次電池である場合、正極活物質の他の例としては、NaFeO2、NaNiO2、NaCoO2、NaMnO2、NaVO2、Na(NiXMn1-X)O2、Na(FeXMn1-X)O2、NaVPO4F、Na2FePO4F、Na3V2(PO4)3などが挙げられる。上記式において、0<x<1である。これらの正極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の正極活物質が組み合せられてもよい。
【0061】
正極活物質層224における正極活物質の含有量は、特に限定されない。正極活物質層224における正極活物質の含有量は、例えば、二次電池の仕様に応じて決定される。
【0062】
一実施形態において、正極活物質層224が後述される導電助剤を含まない場合、正極活物質層224における正極活物質の含有量は、40~99質量%であってよく、70~99質量%であってもよく、70~97質量%であってもよい。上記の含有量は、80~99質量%であってよく、80~95質量%であってもよい。上記の含有量は、90~98質量%であってよく、94~97質量%であってもよい。
【0063】
他の実施形態において、正極活物質層224が導電助剤を含む場合、正極活物質層224における正極活物質及び導電助剤の含有量は、40~99質量%であってよく、70~99質量%であってもよく、70~97質量%であってもよい。正極活物質層224が導電助剤を含む場合、正極活物質層224における正極活物質の含有量は、39.8~98.8質量%であってよく、69.8~98.8質量%であってもよく、69.8~96.8質量%であってもよい。
【0064】
正極活物質層224に含まれる正極活物質全体に対する、ジチアジアジン基を有する化合物又はその塩の含有量は、10~95質量%であってもよく、50~95質量%であってもよい。正極活物質層224に含まれる正極活物質は、実質的にジチアジアジン基を有する化合物又はその塩であってもよい。
【0065】
正極活物質全体に対するジチアジアジン基を有する化合物又はその塩の含有量が10~95質量%である場合、上記の含有量が10質量%未満の場合と比較して、高容量の蓄電セル112が得られる。上記の含有量が10~95質量%である場合、上記の含有量が95質量%を超える場合と比較して、導電助剤及び結着剤の添加量を少なくすることができる。これにより、蓄電セル112の出力の低下が抑制され得る。
【0066】
(結着剤)
本実施形態において、結着剤は、正極活物質層224を構成する材料(例えば、正極活物質、導電助剤、イオン伝導性物質などである。)を結着し、正極220の電極形状を保持する。結着剤の種類は特に限定されるものではないが、結着剤としては、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴムなどが例示される。これらの結着剤は単独で用いられてもよく、2種以上の結着剤が組み合せられてもよい。
【0067】
正極活物質層224における結着剤の含有量は、特に限定されない。正極活物質層224における結着剤の含有量は、1~60質量%であってよく、1~30質量%であってもよく、3~30質量%であってもよい。上記の含有量は、1~20質量%であってよく、5~20質量%であってもよい。上記の含有量は、2~10質量%であってよく、3~6質量%であってもよい。
【0068】
一実施形態において、正極活物質層224の残部は、正極活物質であってよい。他の実施形態において、正極活物質層224の残部は、正極活物質と、導電助剤及びイオン伝導性物質の少なくとも一方との混合物であってよい。さらに他の実施形態において、正極活物質層224は、正極活物質、結着剤、導電助剤及びイオン伝導性物質とは異なる物質を含んでもよい。
【0069】
(導電助剤)
本実施形態において、導電助剤は、正極220の抵抗を低減させる。導電助剤の種類は、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、導電助剤としては、炭素材料、導電性高分子などが例示される。炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどが例示される。これらの導電助剤は単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0070】
正極活物質層224における導電助剤の含有量は、特に限定されない。上述されたとおり、正極活物質層224は、導電助剤を実質的に含まなくてもよい。正極活物質層224が導電助剤を含む場合、正極活物質層224における導電助剤の含有量は、80質量%以下であってよい。正極活物質層224における導電助剤の含有量は、0.2~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~6質量%であることがさらに好ましい。
【0071】
(イオン伝導性物質)
本実施形態において、イオン伝導性物質は、正極220の正極活物質よりもイオンの輸率が大きな物質である。上記のイオンは、蓄電セル112の電解質の陽イオン(単に、電解質イオンと称される場合がある。)であってもよく、蓄電セル112のキャリアとなる金属イオンであってもよい。
【0072】
イオン伝導性物質は、常温で1×10-5[S/cm]以上のイオン伝導度を有する物質であってもよく、常温で1×10-4[S/cm]以上のイオン伝導度を有する物質であってもよい。イオン伝導性物質は、セ氏60度で1×10-4[S/cm]以上のイオン伝導度を有する物質であってもよく、セ氏60度で5×10-4[S/cm]以上のイオン伝導度を有する物質であってもよい。
【0073】
一実施形態において、イオン伝導性物質は、(i)各種の電解質、(ii)カチオンと、アニオンとが組み合わせられた各種のイオン液体、(iii)グリコールエーテル類、及び/又は、(iv)鎖状スルホン類を含む。各種の電解質としては、高分子ゲル電解質、高分子電解質及び固体電解質の少なくとも1つが例示される。グリコールエーテル類としては、(i)ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレンなどと称される場合がある)、(ii)グリコールジエーテル、(iii)クラウンエーテル類などが例示される。グリコールジエーテルは、対称グリコールジエーテルであってよい。対称グリコールジエーテルとしては、グライム類が例示される。
【0074】
例えば、イオン伝導性物質は、高分子ゲル電解質、高分子電解質及び固体電解質の少なくとも1つを含む。イオン伝導性物質は、実質的に、高分子ゲル電解質、高分子電解質及び固体電解質の少なくとも1つであってよい。
【0075】
他の実施形態において、イオン伝導性物質は、正極活物質と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との混合物又は反応物を含む。イオン伝導性物質は、実質的に、正極活物質と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との混合物又は反応物であってよい。これにより、正極合材中の自由体積が増加する。その結果、正極活物質の自己交換反応が促進される。
【0076】
上述されたとおり、本実施形態においては、正極活物質として有機化合物が用いられる。正極活物質として用いられる有機化合物の水素原子又は官能基と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方の水素原子又は官能基とが反応して、上記の反応物が生成されてよい。
【0077】
非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の分子量は、50~2000であってもよく、100~1000であってもよく、150~500であってもよく、150~250であってもよい。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが例示される。安定ラジカル化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン1-オキシル、ガルビノキシルラジカル、2,2-ジフェニル‐1-ピクリルヒドラジルなどが例示される。正極220の正極活物質の主要成分がジチアジアジン基を有する化合物又はその塩である場合、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル又はこれらの組み合わせであってよく、安定ラジカル化合物は、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン1-オキシル、ガルビノキシルラジカル又はこれらの組み合わせであってよい。
【0078】
さらに他の実施形態において、イオン伝導性物質は、結着剤と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との反応物を含む。イオン伝導性物質は、結着剤と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方との反応物であってよい。これにより、正極合材中の自由体積が増加する。その結果、正極活物質の自己交換反応が促進される。
【0079】
上述されたとおり、本実施形態においては、結着剤として有機化合物が用いられる。結着剤として用いられる有機化合物の水素原子又は官能基と、非イオン性界面活性剤及び安定ラジカル化合物の少なくとも一方の水素原子又は官能基とが反応して、上記の反応物が生成されてよい。上記の非イオン性界面活性剤及び/又は安定ラジカル化合物は、正極活物質に関連して説明された非イオン性界面活性剤及び/又は安定ラジカル化合物と同様の構成を有してよい。
【0080】
正極活物質層224にイオン伝導性物質を有するイオン透過領域が形成される場合、正極活物質層224に形成されたイオン透過領域に含まれるイオン伝導性物質の質量は、正極活物質層224の質量の50%以下であってもよく、10%以下であってもよく、1%以下であってもよい。なお、上記の正極活物質層224の質量は、正極活物質層224に配されたイオン透過領域の質量を含む。
【0081】
上記のイオン伝導性物質の質量が、上記の正極活物質層224の質量の50%以下である場合、イオン伝導性物質の質量が増加することに伴う電解質イオンの移動促進効果による容量密度の増加量が、イオン伝導性物質の質量が増加することによる正極活物質の減少に伴う容量密度の減少量よりも大きい。これにより、蓄電セル112の容量密度が増加する。
【0082】
[正極活物質層224の製造方法]
一実施形態において、正極活物質層224は、例えば、正極集電体222の少なくとも一方の面の上に、正極活物質層224を構成する材料及び有機溶媒を含むペースト(スラリーと称される場合がある。)が塗布された後、当該ペーストが乾燥されることで形成される。有機溶媒の種類、及び/又は、正極活物質と有機溶媒との配合比は、二次電池の要求特性、生産性などを考慮して、任意に設定され得る。
【0083】
上記の有機溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の有機溶媒としては、塩基性溶媒、非水溶媒、プロトン性溶媒などが例示される。塩基性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン(N-メチルピロリドン、NMPなどと称される場合がある)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどが例示される。非水溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトンなどが例示される。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、水などが例示される。
【0084】
正極活物質層224の構造は特に限定されない。一実施形態において、正極活物質層224は、単一の層により構成される。他の実施形態において、正極活物質層224は、複数の層により構成される。複数の層は互いに異なる組成を有してもよく、複数の層の一部が同一の組成を有してもよい。複数の層の一部は、正極活物質を実質的に含まなくてもよい。
【0085】
複数の層の一部は、他の層を貫通して連結されていてもよい。例えば、塗布パターンの異なる複数の種類のペーストが順番に塗布されることで、積層された複数の層を有する正極活物質層224が作製される。また、正極活物質層224が順番に積層された第1層、第2層及び第3層を有する場合において、第2層には開口が形成されており、当該開口を介して、第1層及び第3層が接続されてもよい。第2層の開口には、第1層又は第3層を構成する材料が充填されてよい。
【0086】
他の実施形態において、正極活物質層224は、上記のペーストを用いることなく作製される。正極活物質層224は、例えば、正極活物質層224を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を正極集電体222の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。
【0087】
[イオン透過領域]
本実施形態において、正極220の一部にはイオン透過領域が形成される。イオン透過領域は、例えば、正極集電体222及び正極活物質層224の少なくとも一方に形成される。上述されたとおり、イオン透過領域としては、(i)電解液250の電解質イオンが侵入可能な空隙が形成された領域、(ii)イオン伝導性物質が形成された領域などが例示される。
【0088】
一実施形態において、イオン透過領域は、正極集電体222の表面に配された凹部であってよい。上記の凹部は、正極集電体222の表面から正極集電体222の内部に向かって延伸してよい。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。イオン透過領域は、上記の凹部の少なくとも一部に配されたイオン伝導性物質であってもよい。孔形状の凹部は、正極集電体222を貫通してもよく、正極集電体222を貫通しなくてもよい。
【0089】
上記の凹部が孔形状を有する場合、当該孔の直径は1μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよい。上記の孔の直径は、0.01μm~5μmであってよく、0.01μm~1μmであってよい。これにより、蓄電セル112が電解液250を備える場合、電解液250の一部がイオン透過領域の内部に侵入し得る。電解液250は、イオン透過領域に配された空隙の全てを充填してもよく、イオン透過領域に配された空隙の一部を充填してもよい。
【0090】
上記の孔の直径は、例えば、孔の開口の面積を同等の面積を有する円の直径として算出される。上記の孔の直径は、例えば、サンプルの特定の位置を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより算出される。
【0091】
他の実施形態において、イオン透過領域は、正極活物質層224に配された凹部であってよい。上記の凹部は、正極活物質層224の表面から正極活物質層224の内部に向かって延伸してよい。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。イオン透過領域は、上記の凹部の少なくとも一部に配されたイオン伝導性物質であってもよい。孔形状の凹部は、正極活物質層224を貫通してもよく、正極集電体222を貫通しなくてもよい。
【0092】
イオン透過領域は、電解液250又は
図3に関連して説明される電解質330と、正極活物質層224の表面とに接触可能な位置に配される。例えば、イオン透過領域は、正極220が蓄電セル112に組み込まれたときに、イオン透過領域が、電解液250又は電解質330と、正極活物質層224の表面との両方に接触するような位置に配される。正極活物質層224の表面は、(i)正極集電体222の側の面の表面であってもよく、(ii)セパレータ230又は負極240の側の面の表面であってもよく、(iii)正極集電体222の側の面と、セパレータ230の側の面とを連結する面(側面と称される場合がある。)の表面であってもよい。
【0093】
一実施形態において、イオン透過領域は、正極活物質層224に配された凹部又は当該凹部に配されたイオン伝導性物質であり、イオン透過領域の一端は、正極活物質層224の表面又は当該表面と略同一な面上に位置し、イオン透過領域の他端は、正極活物質層224の内部に位置する。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。イオン透過領域が上記の凹部である場合、正極活物質層224の表面には開口が形成されている。この場合、イオン透過領域の一端は、正極活物質層224の表面と略同一な面上に位置する。
【0094】
本実施形態によれば、正極220が蓄電セル112に組み込まれたときに、イオン透過領域と、正極活物質層224の表面又は当該表面の近傍に存在する電解液250又は電解質330との間で電解質イオンが移動し得る。また、イオン透過領域と、正極活物質層224の凹部の内面に存在する正極活物質との間で電解質イオンが移動し得る。上述されたとおり、電解質イオンはイオン透過領域の内部を移動することができる。これにより、正極活物質層224の内部に配された正極活物質が有効に機能する。
【0095】
他の実施形態において、イオン透過領域は、正極集電体222の側面から正極集電体222の内部に向かって延伸する凹部又は当該凹部に配されたイオン伝導性物質であり、イオン透過領域の一端は、正極活物質層224の表面に位置し、イオン透過領域の他端は、正極集電体222の内部に配される。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。
【0096】
本実施形態によれば、正極220が蓄電セル112に組み込まれたときに、イオン透過領域と、正極集電体222の側面又は当該側面の近傍に存在する電解液250又は電解質330との間で電解質イオンが移動し得る。また、イオン透過領域と、正極活物質層224の表面のうち正極集電体222と対向する面に存在する正極活物質との間で電解質イオンが移動し得る。上述されたとおり、電解質イオンはイオン透過領域の内部を移動することができる。これにより、正極活物質層224の正極集電体222に覆われた領域に配された正極活物質が有効に機能する。
【0097】
さらに他の実施形態において、イオン透過領域は、正極集電体222を貫通して、正極活物質層224の表面に到達する凹部又は当該凹部に配されたイオン伝導性物質であり、イオン透過領域の一端は、正極活物質層224の表面に位置し、イオン透過領域の他端は、正極集電体222の表面又は当該表面と略同一な面上に位置する。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。イオン透過領域が上記の凹部である場合、正極集電体222の表面には開口が形成されている。この場合、イオン透過領域の他端は、正極集電体222の表面と略同一な面上に位置する。
【0098】
本実施形態によれば、正極220が蓄電セル112に組み込まれたときに、イオン透過領域と、正極集電体222の表面又は当該表面の近傍に存在する電解液250又は電解質330との間で電解質イオンが移動し得る。また、イオン透過領域と、正極活物質層224の表面のうち正極集電体222と対向する面に存在する正極活物質との間で電解質イオンが移動し得る。上述されたとおり、電解質イオンはイオン透過領域の内部を移動することができる。これにより、正極活物質層224の正極集電体222に覆われた領域に配された正極活物質が有効に機能する。
【0099】
イオン透過領域の体積は、正極活物質層224の体積(正極活物質層224に配されたイオン透過領域の体積を含む。)の50%以下であってよく、当該体積の10%以下であってもよく、当該体積の1%以下であってもよい。これにより、蓄電セル112の容量密度が増加する。
【0100】
イオン透過領域の質量は、正極活物質層224の質量(正極活物質層224に配されたイオン透過領域の質量を含む。)の50%以下であってよく、当該質量の10%以下であってもよく、当該質量の1%以下であってもよい。これにより、蓄電セル112の容量密度が増加する。
【0101】
[セパレータ]
本実施形態において、セパレータ230は、正極220及び負極240を隔離する。セパレータ230は、例えば、電解液を保持することにより、正極220及び負極240の間のイオン伝導性を確保する。セパレータ230の材料は特に限定されるものではないが、セパレータ230の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、若しくは、これらの積層体、又は、これらと、ガラス、セラミックなどとの複合体が例示される。セパレータ230の形状としては、微多孔フィルム、不織布、フィルターなどが例示される。セパレータ230の厚さは、特に限定されるものではないが、10~50μmであることが好ましい。セパレータ230の開口率は、特に限定されるものではないが、30~70%であることが好ましい。
【0102】
[負極]
本実施形態において、負極集電体242は、負極活物質層244を保持する。負極集電体242の材料としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などが例示される。負極集電体242は、樹脂の支持層と、支持層の表面に配された金属層とを備えてもよい。上記の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどが例示される。上記の金属層は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなる層であってよい。上記の金属層は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなる層を含んでよい。金属層は、箔であってもよく、メッキ層であってもよい。
【0103】
負極活物質にリチウム金属を用いる場合は、リチウム金属が集電体の役割を兼ね得る。そのため、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、蓄電セル112は、負極集電体242を備えなくてもよい。
【0104】
負極集電体242の形状としては、箔、メッシュ、パンチドメタル、エキスパンドメタル等が例示される。負極集電体242の厚さは、特に限定されるものではないが、5~200μmであってよい。負極集電体242の厚さは、6~20μmであることが好ましい。
【0105】
本実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面に形成される。負極活物質層244の厚さは、負極集電体242の片面あたり、1~300μmであってもよく、2~200μmであってもよい。負極活物質層244は、例えば、負極活物質、結着剤を含む。負極活物質層244は、導電助剤を含んでもよい。
【0106】
一実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面の上に、負極活物質層244を構成する材料及び有機溶媒を含むペーストを塗布し、当該ペーストを乾燥させることで形成される。有機溶媒の種類、及び/又は、負極活物質と有機溶媒との配合比は、二次電池の要求特性、生産性などを考慮して、任意に設定され得る。
【0107】
上記の有機溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の有機溶媒としては、塩基性溶媒、非水溶媒、プロトン性溶媒などが例示される。塩基性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン(N-メチルピロリドン、NMPなどと称される場合がある)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどが例示される。非水溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトンなどが例示される。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、水などが例示される。
【0108】
他の実施形態において、負極活物質層244は、上記のペーストを用いることなく作製される。負極活物質層244は、例えば、負極活物質層244を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を負極集電体242の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。
【0109】
(負極活物質)
負極活物質層244は、1以上の負極活物質を含む。負極活物質としては、(i)黒鉛、(ii)難焼結性炭素又は難黒鉛化炭素、(iii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iv)SiOなどが例示される。負極活物質として、(i)黒鉛、(ii)難焼結性炭素又は難黒鉛化炭素、(iii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iv)SiOなどの材料が用いられる場合、当該材料は、リチウムがプレドープされていてよい。
【0110】
負極活物質は、金属リチウム、リチウム合金などのリチウム含有物質であってもよい。例えば、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、負極として金属リチウムが用いられる。これらの負極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の負極活物質が組み合せられてもよい。
【0111】
負極活物質層244は、リチウム金属箔を含んでもよい。これにより、蓄電セル112にリチウムが供給される。リチウム金属箔の厚さは、1~300μmであってよく、2~200μmであってよく、3~100μmであってよい。リチウム金属箔の厚さ及び/又は質量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量に応じて決定されてよい。
【0112】
蓄電セル112がナトリウムイオン二次電池である場合、負極活物質の他の例としては、(i)黒鉛、(ii)難焼結性炭素又は難黒鉛化炭素、(iii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iv)チタン酸化物などがあげられる。負極活物質は、金属ナトリウム、ナトリウム合金などのナトリウム含有物質であってもよい。これらの負極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の負極活物質が組み合せられてもよい。
【0113】
(結着剤)
本実施形態において、結着剤は、負極活物質層244を構成する材料(例えば、負極活物質、導電助剤などである。)を結着し、負極240の電極形状を保持する。結着剤の種類は特に限定されるものではないが、結着剤としては、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴムなどが例示される。これらの結着剤は単独で用いられてもよく、2種以上の結着剤が組み合せられてもよい。
【0114】
(導電助剤)
本実施形態において、導電助剤は、負極240の抵抗を低減させる。導電助剤の種類は、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、導電助剤としては、炭素材料、導電性高分子などが例示される。炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどが例示される。これらの導電助剤は単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0115】
(負極活物質層244の組成)
負極活物質層244の組成は、二次電池の仕様に応じて適切に決定される。負極活物質層244における負極活物質の含有量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量と同様であってよい。負極活物質層244における結着剤の含有量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量と同様であってよい。負極活物質層244における導電助剤の含有量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量と同様であってよい。
【0116】
[電解質]
本実施形態において、電解液250は、電解液250に含まれる電解質のイオンを介して、正極活物質と、負極活物質との間のイオン伝導を実現する。電解液250としては、電解質塩を有機溶剤に溶解させて得られた液体、アニオンとカチオンを組み合わせたイオン性液体などが例示される。電解液250のイオン伝導度は、室温で10-5~10-1[S/cm]程度であってよい。
【0117】
本実施形態によれば、電解液250として、非水電解液が用いられる。非水電解液としては、公知の有機電解液が使用され得る。例えば、蓄電セル112がリチウムイオン二次電池又はリチウム金属二次電池である場合、(i)エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの1種以上からなる溶媒に、(ii)過塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた溶液が、電解液250として使用される。
【0118】
非水電解液は、例えば、金属塩及び非水溶媒を含有する。非水電解液は、ハイドロフルオロエーテルを含んでもよい。電解液250がハイドロフルオロエーテルを含むことにより、電解液250が、正極活物質層224、セパレータ230などに染み込みやすくなる。
【0119】
金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩などが例示される。ナトリウム塩としては、NaPF6、NaBF4、NaClO4およびNaAsF6などの無機ナトリウム塩、及び、NaCF3SO3、NaN(CF3SO2)2、NaN(C2F5SO2)2、NaC(CF3SO2)3などの有機ナトリウム塩が例示される。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6などの無機リチウム塩、及び、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機リチウム塩が例示される。
【0120】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシメタン、1,3-ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び、これらの混合物が例示される。ハイドロフルオロエーテルとしては、1,1,2,2-テトラフルオロエチルー2,2,2-トリフルオロエチルエーテルや1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシブタンなどが例示される。
【0121】
非水電解液におけるナトリウム塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5~4.0mol/Lの範囲内であってよい。ナトリウム塩の濃度は、0.7mol/L~2.0mol/Lの範囲内であってもよく、1.0mol/L~1.5mol/Lの範囲内であってもよい。非水電解液におけるリチウム塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5~4.0mol/Lの範囲内であってよい。リチウム塩の濃度は、0.7mol/L~2.0mol/Lの範囲内であってもよく、1.0mol/L~1.5mol/Lの範囲内であってもよい。
【0122】
[別実施形態の一例]
本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の種類、構造などは、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蓄電セル112は、正極、セパレータ及び負極が渦巻状に巻回した巻回電極体を備える円筒型電池であってもよい。さらに他の実施形態において、蓄電セル112は、正極及び負極がセパレータを挟んで交互に積層した積層電極体が、ラミネートで封止されたラミネート型電池であってもよい。
【0123】
本実施形態においては、負極240が、負極集電体242及び負極活物質層244を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の負極は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、例えば、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、金属リチウムが負極として使用され得る。
【0124】
本実施形態においては、蓄電セル112の電解質として電解液250が用いられる場合を例として、蓄電セル112の一例が説明された。しかしながら、蓄電セル112の電解質は、本実施形態に限定されない。
【0125】
他の実施形態において、蓄電セル112の電解質として、固体電解質又はゲル電解質が使用されてよい。蓄電セル112の電解質として、電解質塩を含有させた高分子化合物が用いられてもよい。
【0126】
固体電解質としては、Li2S-P2S5系、Li2S-GeS2-P2S5系などの無機固体電解質が例示される。固体電解質として、高分子化合物が用いられてよい。固体電解質として利用可能な高分子化合物としては、フッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル系重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体、及び、これらのアクリレート体及び/又はメタクリレート体の重合体などが例示される。
【0127】
フッ化ビニリデン系重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体、フッ化ビニリデン-モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体が例示される。アクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル-エチルアタリレート共重合体、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ビニルアセテート共重合体などが例示される。
【0128】
本実施形態においては、正極220の一部に、イオンが移動可能な領域(イオン透過領域と称される場合がある)が形成される場合を例として、蓄電セル112の一例が説明された。しかしながら、蓄電セル112は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、負極240の一部に、イオン透過領域が形成されてもよい。
【0129】
本実施形態においては、電解液250として、非水電解液が用いられる場合を例として、蓄電セル112の一例が説明された。しかしながら、蓄電セル112は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、電解液250として、イオン性液体が用いられてよい。
【0130】
イオン性液体のカチオンとしては、イミダゾリウム、アンモニウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、テトラアルキルフォスフォニウム、トリアルキルスルフォニウムなどが例示される。イミダゾリウムとしては、2-エチルイミダゾリウム、3-プロピルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジメチルイミダゾリウムなどが例示される。アンモニウムとしては、ジエチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム、トリエチル(2-メトキシエトキシメチル)アンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムなどが例示される。
【0131】
イオン性液体のアニオンとしては、ハロゲン化物アニオン、ホウ素化物アニオン、アミドアニオン又はイミドアニオン、スルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン、リン酸アニオン、アンチモンアニオン、ラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテートなどが例示される。ハロゲン化物アニオンとしては、Cl-、Br-、I-などが例示される。ホウ素化物アニオンとしては、BF4
-、B(CN)4
-、B(C2O4)2
-などが例示される。アミドアニオン又はイミドアニオンとしては、(CN)2N-、[N(CF3)2]-、[N(SO2CF3)2]-などが例示される。スルフェートアニオン又はスルフォネートアニオンとしては、RSO3
-、RSO4
-、RfSO3
-、RfSO4
-(Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示すRfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を示す。)などが例示される。リン酸アニオンとしては、Rf
2P(O)O-、PF6
-、Rf
3PF3
-が例示される(Rfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を示す)。アンチモンアニオンとしては、SbF6が例示される。
【0132】
[蓄電セル112の他の例]
図3は、蓄電セル112の他の例を概略的に示す。
図3に関連して説明される蓄電セル112は、正極220及び負極240が、セパレータ230の代わりに固体又はゲル状の電解質330を介して配される点と、蓄電セル112の内部に電解液250が配されていない点とを除き、
図2に関連して説明される蓄電セル112と同様の構成を有する。
【0133】
固体の電解質としては、
図2に関連して説明されたとおり、Li
2S-P
2S
5系、Li
2S-GeS
2-P
2S
5系などの無機固体電解質が例示される。固体電解質として、高分子化合物が用いられてよい。固体電解質として利用可能な高分子化合物としては、フッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル系重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体、及び、これらのアクリレート体及び/又はメタクリレート体の重合体などが例示される。ゲル状の電解質として、公知のゲル状の電解質が用いられてよい。
【0134】
[イオン透過領域の詳細]
図4、
図5、
図6、
図7及び
図8を用いて、イオン透過領域の詳細が説明される。
図4は、正極220の断面の一例を概略的に示す。
図5は、正極活物質層224の断面の一例を概略的に示す。
図6は、正極活物質層224の断面の他の例を概略的に示す。
図7は、正極220の断面の他の例を概略的に示す。
図8は、正極220の断面のさらに他の例を概略的に示す。
【0135】
図4に示されるとおり、本実施形態において、正極集電体222は、第1面422と、第2面424と、側面426を有する。本実施形態において、正極活物質層224は、第1面442と、第2面444と、側面446を有する。本実施形態において、正極活物質層224には、1以上のイオン透過領域460が形成される。本実施形態において、イオン透過領域460は、1以上のイオン透過領域462と、1以上のイオン透過領域464とを含む。
【0136】
本実施形態において、正極集電体222及び正極活物質層224は、正極集電体222の第1面422と、正極活物質層224の第1面442とが接するように配される。本実施形態において、第2面424は、第1面422と反対側の面であり、側面426は、第1面422及び第2面424を連結する。本実施形態において、第2面444は、第1面442と反対側の面であり、側面446は、第1面442及び第2面444を連結する。
【0137】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域462のそれぞれは、正極活物質層224の第2面444から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。イオン透過領域462は、正極活物質層224の第2面444から正極活物質層224の内部に向かって延伸する凹部であってよい。上記の凹部は、孔形状、溝形状、窪み形状及びこれらの組み合わせを有してよい。イオン透過領域462は、上記の凹部の少なくとも一部に配されたイオン伝導性物質であってよい。上記のイオン伝導性物質の第1部分は、上記の凹部の内面に接する。上記のイオン伝導性物質の第2部分は、第2面444の面上又は第2面444の近傍に配される。第2部分は、第1部分とは異なる部分であってよい。
【0138】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域464のそれぞれは、正極活物質層224の厚さ方向(図中、z方向である。)に正極活物質層224を貫通する。イオン透過領域464は、正極活物質層224を貫通する貫通孔であってよい。イオン透過領域464は、上記の貫通孔の少なくとも一部に配されたイオン伝導性物質であってよい。上記のイオン伝導性物質の第1部分は、上記の貫通孔の内面に接する。上記のイオン伝導性物質の第2部分は、第2面444の面上又は第2面444の近傍に配される。第2部分は、第1部分とは異なる部分であってよい。
【0139】
図5を用いて、正極活物質層224に形成されるイオン透過領域の他の特徴が説明される。
図5に示されるとおり、本実施形態において、正極活物質層224には、1以上のイオン透過領域462と、1以上のイオン透過領域464と、1以上のイオン透過領域562と、1以上のイオン透過領域572と、1以上のイオン透過領域574と、1以上のイオン透過領域582と、1以上のイオン透過領域584とが形成される。
【0140】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域562のそれぞれは、正極活物質層224の第2面444から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。1以上のイオン透過領域562のそれぞれは、延伸方向が正極活物質層224の厚さ方向(図中、z方向である。)に対して傾いている点で、
図4に関連して説明されたイオン透過領域462と相違する。上記の相違点以外の特徴に関し、1以上のイオン透過領域562のそれぞれは、イオン透過領域462と同様の構成を有してよい。なお、他の実施形態において、イオン透過領域562は、正極活物質層224を貫通してよい。
【0141】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域572のそれぞれは、正極活物質層224の側面446から正極活物質層224の内部に向かって延伸する点で、
図4に関連して説明されたイオン透過領域462と相違する。上記の相違点以外の特徴に関し、1以上のイオン透過領域572のそれぞれは、イオン透過領域462と同様の構成を有してよい。
【0142】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域574は、正極活物質層224の幅方向(図中、x方向である。)に正極活物質層224を貫通する点で、
図4に関連して説明されたイオン透過領域464と相違する。上記の相違点以外の特徴に関し、1以上のイオン透過領域574のそれぞれは、イオン透過領域464と同様の構成を有してよい。
【0143】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域582のそれぞれは、イオン透過領域464の一部から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。イオン透過領域582の一端は、イオン透過領域464の内面に位置する。イオン透過領域582の他端は、正極活物質層224の内部に位置してもよく、正極活物質層224の表面に位置してもよい。なお、他の実施形態において、イオン透過領域582は、イオン透過領域464以外のイオン透過領域の一部から正極活物質層224の内部に向かって延伸してよい。
【0144】
本実施形態において、1以上のイオン透過領域584のそれぞれは、正極活物質層224の内部で複数のイオン透過領域462を連結する。なお、他の実施形態において、イオン透過領域584は、任意の種類のイオン透過領域を連結してよい。イオン透過領域584は、任意の個数のイオン透過領域を連結してもよい。
【0145】
本実施形態によれば、イオン透過領域462、イオン透過領域464、イオン透過領域462、イオン透過領域462、イオン透過領域582、及び、イオン透過領域584は、第2面444の面上又は第2面444の近傍に配された電解液250又は電解質330と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。本実施形態によれば、イオン透過領域572及びイオン透過領域574は、側面446の面上又は側面446の近傍に配された電解液250と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。
【0146】
図6を用いて、正極活物質層224に形成されるイオン透過領域の他の特徴が説明される。
図6に示されるとおり、本実施形態において、正極活物質層224は、複数の粒子640を含む。複数の粒子640のそれぞれは、正極活物質と、結着剤とを含む。複数の粒子640の少なくとも一部は、正極活物質と、結着剤と、導電助剤及びイオン伝導性物質の少なくとも一方とを含んでもよい。
【0147】
本実施形態によれば、複数の粒子の間に1以上の空隙660が形成される。1以上の空隙660のそれぞれは、正極活物質層224の表面から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。
【0148】
一実施形態において、空隙660は、正極活物質層224の第1面442から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。他の実施形態において、空隙660は、正極活物質層224の第2面444から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。さらに他の実施形態において、空隙660は、正極活物質層224の側面446から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。さらに他の実施形態において、空隙660は、正極活物質層224を貫通する。空隙660は、正極活物質層224の厚さ方向に正極活物質層224を貫通してもよく、正極活物質層224の幅方向に正極活物質層224を貫通してもよく、正極活物質層224の長さ方向(図示されていないy方向である。)に正極活物質層224を貫通してもよい。
【0149】
図7を用いて、正極220に形成されるイオン透過領域の他の特徴が説明される。
図7は、正極220の第1断面702及び第2断面704の一例を概略的に示す。第1断面702は、正極220を正極220の構成部材の積層方向(図中、z方向である。)と略平行な断面で切断した場合における、正極220の断面の一例であってよい。第1断面702は、第2断面704におけるB-B'であってよい。第2断面704は、第1断面702におけるA-A'であってよい。
【0150】
図7に示されるとおり、本実施形態において、正極活物質層224の第1面442には、溝形状を有する凹部772、凹部774及び凹部776と、窪み形状を有する凹部778とが形成される。本実施形態において、正極集電体222及び正極活物質層224は、正極集電体222の第1面422と、正極活物質層224の第1面442とが接するように配される。これにより、凹部772、凹部774、凹部776及び凹部778は、正極活物質層224の側面446から正極活物質層224の内部に向かって延伸する。
【0151】
一実施形態において、凹部772、凹部774、凹部776及び凹部778のそれぞれは空隙であってよい。これにより、凹部772、凹部774、凹部776及び凹部778のそれぞれがイオン透過領域として機能する。イオン透過領域は、側面446の面上又は側面446の近傍に配された電解液250と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。
【0152】
他の実施形態において、凹部772、凹部774、凹部776及び凹部778の少なくとも1つの内部に、イオン伝導性物質が配されてよい。これにより、上記のイオン伝導性物質がイオン透過領域として機能する。イオン透過領域は、側面446の面上又は側面446の近傍に配された電解液250と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。
【0153】
図8を用いて、正極220に形成されるイオン透過領域の他の特徴が説明される。
図8は、正極220の第1断面802及び第2断面804の一例を概略的に示す。第1断面802は、正極220を正極220の構成部材の積層方向(図中、z方向である。)と略平行な断面で切断した場合における、正極220の断面の一例であってよい。第1断面802は、第2断面804におけるB-B'であってよい。第2断面804は、第1断面802におけるA-A'であってよい。
【0154】
図8に示されるとおり、本実施形態において、正極集電体222の第1面422には、溝形状を有する凹部872、凹部874及び凹部876と、窪み形状を有する凹部878と、孔形状を有する凹部882とが形成される。本実施形態において、正極集電体222及び正極活物質層224は、正極集電体222の第1面422と、正極活物質層224の第1面442とが接するように配される。
【0155】
これにより、凹部872、凹部874、凹部876及び凹部878は、正極集電体222の側面426から正極集電体222の内部に向かって延伸する。凹部882は、正極集電体222を貫通する。また、
図8における凹部872、凹部874、凹部876、凹部878及び凹部882のそれぞれの上端は、正極活物質層224の第1面442と接触する。
【0156】
一実施形態において、凹部872、凹部874、凹部876、凹部878及び凹部882のそれぞれは空隙であってよい。これにより、凹部872、凹部874、凹部876、凹部878及び凹部882のそれぞれがイオン透過領域として機能する。凹部872、凹部874、凹部876及び凹部878のそれぞれに対応する各イオン透過領域は、側面446の面上又は側面446の近傍に配された電解液250と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。凹部882に対応する各イオン透過領域は、第1面424の面上又は第1面424の近傍に配された電解液250又は電解質330と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。
【0157】
他の実施形態において、凹部872、凹部874、凹部876、凹部878及び凹部882のの少なくとも1つの内部に、イオン伝導性物質が配されてよい。これにより、上記のイオン伝導性物質がイオン透過領域として機能する。凹部872、凹部874、凹部876及び凹部878のそれぞれに対応する各イオン透過領域は、側面446の面上又は側面446の近傍に配された電解液250と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。凹部882に対応する各イオン透過領域は、第1面424の面上又は第1面424の近傍に配された電解液250又は電解質330と、各イオン透過領域の内面に配された正極活物質との間における電解質イオンの移動を促進する。
【0158】
図9は、正極220の生産方法の一例を概略的に示す。本実施形態においては、正極活物質層224の内部に、イオン透過領域として機能するイオン伝導性物質が配された正極220が生産される場合を例として、二次電極用電極の生産方法の一例が説明される。
【0159】
本実施形態によれば、まず、ステップ912(ステップがSと記載される場合がある。)において、正極活物質層224を構成する材料及び有機溶媒を含むスラリーを調整する。例えば、正極活物質と、イオン伝導性物質と、溶媒とを含むスラリーが調整される。スラリーには、結着剤及び導電助剤の少なくとも一方がさらに添加されてもよい。また、S914において、正極集電体222の第1面422の上に、S912で調整されたスラリーを塗布する。
【0160】
次に、S916において、正極活物質と、イオン伝導性物質とが相分離するように、スラリーを乾燥させる。具体的には、イオン伝電性物質が凝集するまで、溶媒の蒸発速度を抑制しながらスラリーに含まれる溶媒の一部を蒸発させる。溶媒の蒸発速度を抑制する方法としては、スラリーの温度及び/又は圧力を制御することなどが例示される。正極活物質と、イオン伝導性物質との相分離の程度は、例えば、SEMを用いて正極の表面及び/又は断面を観察することにより決定される。例えば、スラリーの温度及び/又は圧力と、乾燥時間と、上記のSEMによる観察結果とに基づいて、スラリーの乾燥操作の操作パラメータが決定される。これにより、スラリーの温度及び/又は圧力を制御することで、正極活物質と、イオン伝導性物質との相分離の程度が予め定められた基準に合致した時点で、溶媒の蒸発速度を抑制しながら溶媒を蒸発させる工程を終了させることができる。
【0161】
正極活物質と、イオン伝導性物質とが十分に相分離した後、S918において、スラリーを完全に乾燥させる。これにより、正極活物質層224の表面の少なくとも一部にイオン透過領域が形成された正極220が作製される。
【0162】
[別実施形態の一例]
本実施形態においては、正極活物質層224の内部に、イオン透過領域として機能するイオン伝導性物質が配された正極220が生産される場合を例として、二次電極用電極の生産方法の一例が説明された。しかしながら、二次電極用電極の生産方法は、本実施形態に限定されない。
【0163】
他の実施形態において、正極活物質層224の表面にイオン透過領域として機能する孔、溝又は窪みが形成された正極220が生産される。上記の孔は、正極活物質層224を貫通する貫通孔であってよい。
【0164】
本実施形態によれば、例えば、まず、正極活物質層224を構成する材料及び有機溶媒を含むスラリーを調整する。例えば、正極活物質と、溶媒とを含むスラリーが調整される。スラリーには、結着剤及び導電助剤の少なくとも一方がさらに添加されてもよい。次に、正極集電体222の第1面422の上に、S912で調整されたスラリーを塗布する。次に、スラリーに孔、溝又は窪みを形成する。その後、スラリーを乾燥させる。これにより、正極220が生産される。なお、スラリーを乾燥させた後、孔、溝又は窪みが形成されてもよい。
【実施例0165】
[実施例1]
[二次電池の作製]
(正極活物質の作製)
0.05Mのジチオギザミドを含むスルホラン溶液が入ったガラス製容器に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)を加えて撹拌した。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、0.25Mとなるように添加した。上記の溶液に2枚の白金電極を浸漬し、溶液を撹拌しながら、白金電極に4.2Vの定電圧を24時間印加した。上記の24時間の反応により黒色の溶液が得られた。上記の黒色の溶液をろ過、乾燥して、黒色の粉末を得た。
【0166】
黒色の粉末について、ラマン分光測定(ラマンマッピング)及び赤外分光測定を実施した。ラマン分光測定及び赤外分光測定の結果、上記の反応の生成物は化学式(3)で表わされる1,2,4,5-ジチアジアジン-3,6-ジカルボチオアミドであることを確認した。
[化学式(3)]
【化5】
【0167】
(正極の作製)
次に、正極活物質としての上記1,2,4,5-ジチアジアジン-3,6-ジカルボチオアミド300mgと、導電性補助剤としてのグラファイト粉末600mgと、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン100mgと、有機溶媒としてのN‐メチル‐2‐ピロリドン2gとを混合して、スラリーを調整した。
【0168】
次に、集電体として、幅150mm、長さ230mm、厚さ15μmのアルミニウム箔を用意した。次に、上記のアルミニウム箔の一方の面の表面に、上記のスラリーを塗布した。その後、スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で30分乾燥した。これにより、アルミニウム箔の表面に活物質層が形成された。乾燥後の活物質層の厚さは80μmであった。
【0169】
その後、活物質層が形成されたアルミニウム箔を直径12mmの円形に打ち抜き、直径2μmの針を用いて10μm間隔で穴あけ加工を行った。これにより、活物質層をその厚さ方向に貫通する1.13×106個の貫通孔が形成された。これにより、イオン透過領域を有する活物質層を備えた正極を作製した。
【0170】
(二次電池の組立)
次に、正極を電解液に含浸させ、正極中の空隙に電解液を染み込ませた。ここで、電解液としては、メチルテトラグライム(有機溶剤)と、LiN(CF3SO2)2(電解質塩)とを等モル量ずつ含有した混合溶液を使用した。
【0171】
次に、上記の電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムからなる厚さ20μmのセパレータを上記正極上に積層し、その上に直径14mmに打ち抜いた厚さ0.2mmのリチウム押し出し板を設置し、さらに直径16mmのステンレス製集電体を積層した。その後、集電体上に金属製ばねを載置すると共に、周縁にガスケットを配した状態で負極ケースを正極ケースに接合し、かしめ機によって外装を封止して、正極活物質として1,2,4,5‐ジチアジアジン‐3,6‐ジカルボチオアミド、負極活物質として金属リチウムを有する密閉型のコイン型二次電池を作製した。
【0172】
なお、本実施例においては、正極及びセパレータは電解液に浸漬し、濡れたままのものを使用した。そのため、コイン型二次電池の内部空間への電解液の充填は省略した。
【0173】
[二次電池の動作確認]
以上のように作製したコイン型二次電池を、充放電試験機(東洋システム(株)製TOSCAT3100)を用いて0.1[mA]の定電流で電圧が4.2[V]になるまで充電し、その後、0.1[mA]の定電流で1.5[V]になるまで放電を行った。その結果、この電池は、充放電電圧2.1[V]に電圧平坦部を有する放電容量2.1[mAh]の二次電池であることが確認された。上記の放電容量から計算した正極活物質の質量当たりの容量密度は500[Ah/kg]であった。
【0174】
また、上記の充放電試験機を使用して1.5~4.2[V]の範囲で充放電を100サイクル繰り返した。その結果、100サイクル繰り返した後の放電容量は1.8[mAh](初期容量の97%)であり、安定性に優れていることがわかった。
【0175】
[比較例1]
[二次電池の作製]
実施例1と同様の手順により、1,2,4,5-ジチアジアジン-3,6-ジカルボチオアミドを作製した。正極活物質としての1,2,4,5-ジチアジアジン-3,6-ジカルボチオアミド300mgと、導電性補助剤としてのグラファイト粉末600mgと、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン100mgとを混合して混練し、その後加圧成形し、厚さ約150μmのシート状部材を得た。次に、このシート状部材を真空中70℃で1時間乾燥した後、直径12mmの円形に打ち抜くことで、正極を作製した。また、上記の正極を用いて、実施例1と同様の手順により、正極活物質として1,2,4,5‐ジチアジアジン‐3,6‐ジカルボチオアミド、負極活物質として金属リチウムを有する密閉型のコイン型二次電池を作製した。
【0176】
[二次電池の動作確認]
以上のように作製したコイン型二次電池を、充放電試験機(東洋システム(株)製TOSCAT3100)を用いて0.1mAの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、0.1mAの定電流で1.5Vになるまで放電を行った。その結果、この電池は、充放電電圧2.1Vに電圧平坦部を有する放電容量2.7mAhの二次電池であることが確認された。上記の放電容量から計算した正極活物質の質量当たりの容量密度は350[Ah/kg]であった。
【0177】
その後、上記の充放電試験機を使用して1.5~4.2Vの範囲で充放電を100サイクル繰り返した。その結果、100サイクル繰り返した後の放電容量は2.3mAh(初期容量の85%)であった。
【0178】
[実施例2]
[二次電池の作製]
(正極活物質の作製)
0.01Mのジチオオギザミドを含むエタノール溶液が入ったガラス製容器にヘキサフルオロリン酸リチウムを加えて撹拌した。ヘキサフルオロリン酸リチウムは、0.25Mとなるように添加した。上記の溶液に2枚の白金電極を浸漬し、溶液を撹拌しながら、白金電極に4.2Vの定電圧を48時間印加した。上記の48時間の反応により黒色の溶液が得られた。上記の黒色の溶液をろ過、乾燥して、黒色の粉末を得た。
【0179】
黒色の粉末について、ラマン分光測定(ラマンマッピング)及び赤外分光測定を実施した。ラマン分光測定及び赤外分光測定の結果、上記の反応の主な生成物は化学式(4)で表わされる[3,3'‐ビス‐1,2,4,5‐ジチアジアジン]‐6,6'‐ジカルボチオアミドであることを確認した。
[化学式(4)]
【化6】
【0180】
(正極の作製及び二次電池の組立)
正極活物質として実施例1の1,2,4,5‐ジチアジアジン‐3,6‐ジカルボチオアミドに代えて、[3,3'‐ビス‐1,2,4,5‐ジチアジアジン]‐6,6'‐ジカルボチオアミドを使用した以外は、実施例1と同様の方法でコイン型電池を作製した。
【0181】
[二次電池の動作確認]
実施例1と同じ充放電試験機を用いて、上記コイン型二次電池を、0.1[mA]の定電流で電圧が4.2[V]になるまで充電し、その後、0.1[mA]の定電流で1.5[V]まで放電を行った。その結果、この電池は充放電電圧2.1[V]に電圧平坦部を有する放電容量1.8[mAh]の二次電池であることが確認された。上記の放電容量から計算した正極活物質の質量当たりの容量密度は450[Ah/kg]であった。
【0182】
また、上記の充放電試験機を使用して1.5~4.2[V]の範囲で充放電を100サイクル繰り返した。その結果、100サイクル繰り返した後の放電容量は1.6[mAh](初期容量の89%)であり、安定性に優れていることがわかった。
【0183】
[比較例2]
[二次電池の作製]
正極活物質として比較例1の1,2,4,5‐ジチアジアジン‐3,6‐ジカルボチオアミドに代えて、[3,3'‐ビス‐1,2,4,5‐ジチアジアジン]‐6,6'‐ジカルボチオアミドを使用した以外は、比較例1と同様の方法でコイン型電池を作製した。
【0184】
[二次電池の動作確認]
実施例1と同じ充放電試験機を用いて、上記コイン型二次電池を、0.1[mA]の定電流で電圧が4.2[V]になるまで充電し、その後、0.1[mA]の定電流で1.5[V]まで放電を行った。その結果、この電池は充放電電圧2.1[V]に電圧平坦部を有する放電容量2.25[mAh]の二次電池であることが確認された。上記の放電容量から計算した正極活物質の質量当たりの容量密度は300[Ah/kg]であった。
【0185】
また、上記の充放電試験機を使用して1.5~4.2[V]の範囲で充放電を100サイクル繰り返した。その結果、100サイクル繰り返した後の放電容量は1.58[mAh](初期容量の70%)であった。
【0186】
実施例1の二次電池と、比較例1の二次電池とを比較すると、実施例1の二次電池における正極活物質の質量当たりの容量密度は、比較例1の二次電池における正極活物質の質量当たりの容量密度よりも大きい。同様に、実施例2の二次電池と、比較例2の二次電池とを比較すると、実施例2の二次電池における正極活物質の質量当たりの容量密度は、比較例2の二次電池における正極活物質の質量当たりの容量密度よりも大きい。これは、正極の活物質層に形成された貫通孔がイオン透過領域として機能したことにより、当該活物質層の内部に配された正極活物質が有効に利用されたものと考えられる。
【0187】
なお、本願明細書の記載に接した当業者であれば、活物質層の内部にイオン伝導性物質が配され、当該イオン伝導性物質の一部が活物質層の表面に配されている場合、当該イオン伝導性物質が、実施例1及び実施例2の貫通孔と同様に、イオン透過領域として機能することを理解することができる。したがって、実施例1及び実施例2、並びに、比較例1及び比較例2の記載に接した当業者であれば、上述されたイオン伝導性物質をイオン透過領域として利用した正極も、大きな容量密度を有することを理解することができる。
【0188】
また、本技術分野に属する当業者であれば、活物質及びイオン伝導性物質とを含むスラリーを乾燥させる工程において、活物質及びイオン伝導性物質を相分離させることで、イオン伝導性物質を利用して、実施例1及び実施例2の貫通孔と同様の機能を有するイオン透過領域が形成され得ることを理解することができる。これにより、本願明細書の記載に接した当業者であれば、上述されたイオン伝導性物質をイオン透過領域として利用した正極を作製することができる。
【0189】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0190】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
100 飛行体、110 蓄電池、112 蓄電セル、120 電力制御回路、130 電動機、140 プロペラ、150 センサ、160 制御装置、212 正極ケース、214 負極ケース、216 封止剤、218 金属バネ、220 正極、222 正極集電体、224 正極活物質層、230 セパレータ、240 負極、242 負極集電体、244 負極活物質層、250 電解液、330 電解質、422 第1面、424 第2面、426 側面、442 第1面、444 第2面、446 側面、460 イオン透過領域、462 イオン透過領域、464 イオン透過領域、562 イオン透過領域、572 イオン透過領域、574 イオン透過領域、582 イオン透過領域、584 イオン透過領域、640 粒子、660 空隙、702 第1断面、704 第2断面、772 凹部、774 凹部、776 凹部、778 凹部、802 第1断面、804 第2断面、872 凹部、874 凹部、876 凹部、878 凹部、882 凹部