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特開2023-38115ランフラットタイヤ・リム組立体及びその製造方法及び中子
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  • 特開-ランフラットタイヤ・リム組立体及びその製造方法及び中子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038115
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ・リム組立体及びその製造方法及び中子
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/04 20060101AFI20230309BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
B60C17/04
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145045
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 岳
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅彦
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
【Fターム(参考)】
3D131BB10
3D131BC05
3D131BC25
3D131JA08
4F215AH20
4F215VC03
4F215VP38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させた、ランフラットタイヤ・リム組立体及びその製造方法、並びに前記ランフラットタイヤ・リム組立体に用いる中子を提供する。
【解決手段】ランフラットタイヤ・リム組立体は、ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子2とタイヤ3とがリム4に装着され、中子2は、螺旋状の形状を有し、螺旋状の中子2の各々の端部は、リム4のハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子とタイヤとがリムに装着された、ランフラットタイヤ・リム組立体であって、
前記中子は、螺旋状の形状を有し、
螺旋状の前記中子の各々の端部は、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触していることを特徴とする、ランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項2】
前記中子の各々の端部は、前記中子の端から、螺旋状の前記中子を螺旋軸方向に見た際に前記中子の端から180°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している、請求項1に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項3】
前記中子の各々の端部は、前記中子の端から、螺旋状の前記中子を螺旋軸方向に見た際に前記中子の端から240°以上450°以下螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している、請求項2に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項4】
前記中子は、前記中子の両端部間に位置し、前記リムに接していない、中間部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項5】
前記中子の前記中間部における螺旋のピッチは、前記中子の前記各々の端部における螺旋のピッチよりも長い、請求項1~4のいずれか一項に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項6】
ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子とタイヤとがリムに装着された、ランフラットタイヤ・リム組立体を製造する方法であって、
螺旋状の形状を有する前記中子を螺旋の周方向に回転させながら前記中子を前記タイヤに挿入する工程と、
前記中子が挿入された前記タイヤを、リム組み後に、螺旋状の前記中子の各々の端部が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触するように、リム組みする工程と、を含むことを特徴とする、ランフラットタイヤ・リム組立体。
【請求項7】
ランフラットタイヤ・リム組立体に用いられる中子であって、
前記中子の外径は、前記タイヤのビード部の内径より大きく、
前記中子は、螺旋状の形状を有し、
前記中子は、前記中子の両端部間に位置する中間部を有し、
前記中子の前記中間部における螺旋のピッチは、前記中子の前記各々の端部における螺旋のピッチよりも長いことを特徴とする、中子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤ・リム組立体、ランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法、及び、ランフラットタイヤ・リム組立体に用いる中子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランフラット状態でタイヤの荷重を支持するために、ランフラットタイヤ・リム組立体に中子を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3635273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランフラット状態で走行してもタイヤを損傷させないようにタイヤの撓みを抑制するためには、中子の外径はタイヤのビード部の内径より大きい必要がある。このため、中子をタイヤのビード部の間を通してタイヤ内に挿入することは困難である。また、中子を分割してからタイヤ内に挿入することもできるが、その後、タイヤ内で分割した中子を組み立てる等の工夫が必要となり、中子の組み立て工数が過大となってしまう問題があった。
【0005】
また、中子をリムのウェルの部分で支持する場合等、中子の内径がリムフランジの外径よりも大幅に小さくなる場合には、タイヤ内に中子を挿入した状態で、リムフランジを越えてリム組みさせることが困難となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させた、ランフラットタイヤ・リム組立体、及び、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させ得る、ランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法、及び、軽量化しつつもタイヤへの装填性を向上させた、ランフラットタイヤ・リム組立体に用いる中子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子とタイヤとがリムに装着された、ランフラットタイヤ・リム組立体であって、
前記中子は、螺旋状の形状を有し、
螺旋状の前記中子の各々の端部は、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触していることを特徴とする、ランフラットタイヤ・リム組立体。
本明細書において、「前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している」の「接触している」とは、無負荷状態では上記端部が、リムのハンプ及び/又はビードシートから多少浮いており、タイヤが担う荷重を負荷した状態の荷重直下で接触する場合も含まれる。
【0008】
(2)前記中子の各々の端部は、前記中子の端から、螺旋状の前記中子を螺旋軸方向に見た際に前記中子の端から180°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している、上記(1)に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【0009】
(3)前記中子の各々の端部は、前記中子の端から、螺旋状の前記中子を螺旋軸方向に見た際に前記中子の端から240°以上450°以下螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触している、上記(2)に記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【0010】
(4)前記中子は、前記中子の両端部間に位置し、前記リムに接していない、中間部を有する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
「リムに接していない」とは、タイヤ走行時においてリムに接しないことを意味する。
【0011】
(5)前記中子の前記中間部における螺旋のピッチは、前記中子の前記各々の端部における螺旋のピッチよりも長い、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のランフラットタイヤ・リム組立体。
【0012】
(6)ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子とタイヤとがリムに装着された、ランフラットタイヤ・リム組立体を製造する方法であって、
螺旋状の形状を有する前記中子を螺旋の周方向に回転させながら前記中子を前記タイヤに挿入する工程と、
前記中子が挿入された前記タイヤを、リム組み後に、螺旋状の前記中子の各々の端部が、前記リムのハンプ及び/又はビードシートの位置に接触するように、リム組みする工程と、を含むことを特徴とする、ランフラットタイヤ・リム組立体。
【0013】
(7)ランフラットタイヤ・リム組立体に用いられる中子であって、
前記中子の外径は、前記タイヤのビード部の内径より大きく、
前記中子は、螺旋状の形状を有し、
前記中子は、前記中子の両端部間に位置する中間部を有し、
前記中子の前記中間部における螺旋のピッチは、前記中子の前記各々の端部における螺旋のピッチよりも長いことを特徴とする、中子。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させた、ランフラットタイヤ・リム組立体、及び、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させ得る、ランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法、及び、軽量化しつつもタイヤへの装填性を向上させた、ランフラットタイヤ・リム組立体に用いる中子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤ・リム組立体の概略説明図である。
図2】リムの概略断面図である。
図3】螺旋状の中子をタイヤに装填する際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0017】
<ランフラットタイヤ・リム組立体>
図1は、本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤ・リム組立体の概略説明図である。このランフラットタイヤ・リム組立体1は、中子2とタイヤ3とがリム4に装着されてなる。
【0018】
<<中子>>
中子2は、ランフラット状態で走行してもタイヤを損傷させないようにタイヤの撓みを抑制するものである。中子2は、特に限定はされないが、タイヤの荷重支持能力と軽量化とのバランスのため、例えば、SUS、高張力鋼、アルミニウム、あるいは、カーボン、アラミド繊維、ガラス繊維のいずれか1つあるいはその組み合わせで補強された熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等から形成することができる。
【0019】
中子2は、図示のように螺旋状の形状を有している。換言すると、中子2は、軸周りに回転しながら軸方向へ移動するような形状を有している。本例では、中子2は、中子2の両端部2a、2b間に位置する中間部2cを有する。また、本例では、タイヤ内に装填する前の状態で、中子2の中間部2cにおける螺旋のピッチは、中子2の各々の端部2a、2bにおける螺旋のピッチよりも長くなっている。タイヤ内に装填し、タイヤがリム組みされた状態では、中子2の端部2a、2bのピッチは0とすることができる。また、中子2は、螺旋状部材の中間部2cでのタイヤ径方向の幅が、端部2a、2bでのタイヤ径方向の幅より狭くなっている。なお、図示のように、中子2の端は、中子2の他の部分や他の部材等とは連結されておらず、開放されている。
【0020】
<<タイヤ>>
タイヤ3は、空気入りタイヤである。タイヤ3は、既知の構成とすることができる。一例としては、タイヤ3は、一対のビード部と、一対のビード部にトロイド状に跨るカーカスと、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト及びトレッドと、を備えたものとすることができる。
【0021】
<<リム>>
リム4は、適用リムとすることができる。「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
【0022】
図2は、リムの概略断面図である。図2に示すように、リム4は、ディスク(図示せず)、一対のリムフランジ4b、一対のビードシート4c、ウェル4d、及び一対のハンプ4eを備えている。ディスクは、車両のハブに支持固定される。ビードシート4cには、タイヤ3のビード部が装着される。リムフランジ4bは、タイヤ3のビード部を側面から支えるために、ビードシート4cからリム4の径方向外側且つ幅方向外側に延びている。ウェル4dは、タイヤの脱着を容易にさせるために、一対のビードシート4cの間でリムの径方向内側に向かって凹形状を呈している。ハンプ4eは、タイヤのビードがウェル4dに落ちるのを防ぐために、リムの径方向外側に突出している。
【0023】
ここで、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体1では、中子2の外径はタイヤのビードの内径より大きい。これにより、ランフラット状態で走行してもタイヤを損傷させないようにタイヤの撓みを抑制することができる。
【0024】
本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体1では、リム組後の内圧を充填しない状態(例えば0kPa)において、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bは、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触している。より具体的には、本実施形態では、中子2の各々の端部2a、2bは、
(i)中子2の端から、
(ii)螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から180°以上(より好ましくは、240°以上450°以下)螺旋の周方向に離間した位置まで、
の部分が、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触している。また、本例では、中子2の中間部2cは、リム4に接していない。
図3は、螺旋状の中子をタイヤに装填する際の様子を示す図である。以下、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体の作用効果について説明する。
【0025】
本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体1によれば、タイヤ3の内圧が低下した場合に、図1に示したように、タイヤのトレッドの裏面に中子2の外面が接触することにより、中子2がタイヤの荷重を支持することができ、ランフラット走行が可能となる。
ここで、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体1では、中子2は、螺旋状の形状を有している。これにより、図3に模式的に示すように、螺旋状の形状を有する中子2を、中子2の端からタイヤ3内に挿入し、タイヤ3に沿わせながら螺旋の周方向に回転させていくことで、ビード部の内径より外径の大きい中子2をタイヤ3に容易に挿入することができる。
次に、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bは、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触している。これにより、中子の内径はビードシート4cの外径よりも大きくなり、且つ、中子2が螺旋状であるため、中子2を挿入したタイヤ3をリム組みする際にも、中子2をリムフランジ4bの幅方向内側に容易に入れることができる。
以上のように、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体1によれば、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させることができる。
さらに、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bが、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触していることにより、ランフラット走行時に、路面からタイヤ3のトレッドを介して中子2に伝わる力をさらにリム4に伝えることができる。このため、安定したランフラット走行が可能である。
【0026】
ここで、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から180°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触していることが好ましい。中子2の端部2a、2bとリム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cとの接触範囲を上記の180°以上とすることにより、中子2とリム4との接触の安定性をより一層高めることができるからである。同様の理由により、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から240°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触していることが好ましい。一方で、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から450°以下螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触していることが好ましい。これにより、中子2の厚さをある程度確保しても重量増を抑制することができ、中子2によるタイヤ3の荷重支持能力をより一層向上させることができるからである。
【0027】
また、中子2は、中子2の両端部2a、2b間に位置し、リム4に接していない、中間部2cを有する中間部2c及び両端部2a、2bが中子2の両端の間を軸方向に支えるバネの役割を果たし、両端部2a、2bをより確実に位置決めすることができるからである。
【0028】
また、中子2の中間部2cにおける螺旋のピッチは、中子2の各々の端部2a、2bにおける螺旋のピッチよりも長いことが好ましい。中間部2cを疎にして部材を軽量化しつつも、上述した軸方向に支えるバネの力をより一層発揮することができるからである。
【0029】
また、中子2は、螺旋状部材の中間部2cでのタイヤ径方向の幅が、端部2a、2bでのタイヤ径方向の幅より狭くなっていることも好ましい。これにより、リム組み時に、中間部2cがリムフランジ4bを容易に乗り越えられるようにして、リム組み性をさらに向上させることができるからである。
【0030】
(ランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法)
次に、本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法について説明する。この製造方法は、ランフラット走行時にタイヤの荷重を支持可能な中子とタイヤとがリムに装着された、ランフラットタイヤ・リム組立体を製造する方法である。製造すべきランフラットタイヤ・リム組立体の構成は、ランフラットタイヤ・リム組立体の実施形態において既に説明した通りであるので、再度の説明を省略する。
【0031】
本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法は、図3に示すように、螺旋状の形状を有する中子2を螺旋の周方向に回転させながら中子2をタイヤ3に挿入する工程を有する。また、中子2が挿入されたタイヤ3をリム組みする工程を有する。このリム組み工程では、リム組み後に、(内圧を充填しない状態(例えば0kPa)で)螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bが、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにする。
以下、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法の作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法によれば、まず、タイヤ3の内圧が低下した場合にランフラット走行が可能なランフラットタイヤ・リム組立体を得ることができる。
ここで、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法では、螺旋状の形状を有する中子2を螺旋の周方向に回転させながら中子2をタイヤ3に挿入する工程を有する。これにより、図3に模式的に示すように、螺旋状の形状を有する中子2を、中子2の端からタイヤ3内に挿入し、タイヤ3に沿わせながら螺旋の周方向に回転させていくことで、ビードの内径より外径の大きい中子2をタイヤ3に容易に挿入することができる。
次に、中子2が挿入されたタイヤ3をリム組みする工程を有し、このリム組み工程では、リム組み後に、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bが、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにしている。これにより、中子の内径はビードシート4cの外径よりも大きくなり、且つ、中子2が螺旋状であるため、中子2を挿入したタイヤ3をリム組みする際にも、中子2をリムフランジ4bの幅方向内側に容易に入れることができる。
以上のように、本実施形態のランフラットタイヤ・リム組立体の製造方法によれば、中子のタイヤへの装填性及びリム組み性を向上させることができる。
さらに、リム組み工程において、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bが、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにしていることにより、製造されたランフラットタイヤ・リム組立体においては、ランフラット走行時に、路面からタイヤ3のトレッドを介して中子2に伝わる力をさらにリム4に伝えることができる。これにより、安定したランフラット走行が可能である。
【0033】
ここで、リム組み工程においては、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から180°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにすることが好ましい。中子2の端部2a、2bとリム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cとの接触範囲を上記の180°以上とすることにより、中子2とリム4との接触の安定性をより一層高めることができるからである。同様の理由により、リム組み工程においては、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から240°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにすることが好ましい。一方で、リム組み工程において、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から450°以下螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触するようにすることが好ましい。これにより、中子2の厚さをある程度確保しても重量増を抑制することができ、中子2によるタイヤ3の荷重支持能力をより一層向上させることができるからである。
【0034】
また、本実施形態の製造方法において用いる中子2は、中子2の両端部2a、2b間に位置し、リム4に接していない、中間部2cを有する中間部2c及び両端部2a、2bが中子2の両端の間を軸方向に支えるバネの役割を果たし、両端部2a、2bをより確実に位置決めすることができるからである。
【0035】
また、本実施形態の方法に用いる中子2においては、中子2の中間部2cにおける螺旋のピッチは、中子2の各々の端部2a、2bにおける螺旋のピッチよりも長いことが好ましい。中間部2cを疎にして部材を軽量化しつつも、上述した軸方向に支えるバネの力をより一層発揮することができるからである。
【0036】
また、本実施形態の方法に用いる中子2は、螺旋状部材の中間部2cでのタイヤ径方向の幅が、端部2a、2bでのタイヤ径方向の幅より狭くなっていることも好ましい。これにより、リム組み時に、中間部2cがリムフランジ4bを容易に乗り越えられるようにして、リム組み性をさらに向上させることができるからである。
【0037】
(中子)
次に、本発明の一実施形態にかかる中子について説明する。本実施形態の中子2は、ランフラットタイヤ・リム組立体に用いられるものである。中子2は、ランフラット状態で走行してもタイヤを損傷させないようにタイヤの撓みを抑制可能である。中子2は、螺旋状の形状を有している。換言すると、中子2は、軸周りに回転しながら軸方向へ移動するような形状を有している。中子2は、中子2の両端部2a、2b間に位置する中間部2cを有している。中子2の中間部2cにおける螺旋のピッチは、中子2の各々の端部2a、2bにおける螺旋のピッチよりも長い。その他の詳細は、既にランフラットタイヤ・リム組立体の実施形態において、ランフラットタイヤ・リム組立体の構成要素として説明した通りであるので、再度の説明を省略する。
【0038】
本実施形態の中子2によれば、中子2は螺旋状の形状を有しているため、タイヤ3への挿入が容易である。そして、中子2は、中子2の中間部2cにおける螺旋のピッチが、中子2の各々の端部2a、2bにおける螺旋のピッチよりも長いため、中間部2cを疎にして部材を軽量化することができる。このように、本実施形態の中子2によれば、軽量化しつつもタイヤ3への装填性を向上させることができる。
さらに、上述したように、螺旋状の中子2の各々の端部2a、2bが、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に接触可能であるように構成することが好ましい。例えば、中子2の螺旋軸方向の延在長さを適用リムにおけるハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置に合うように設計することによりそのような構成とすることができる。また、例えば中子2は、タイヤ3及びリム4に組み立てられることで、螺旋軸方向に圧縮され、両端部2a,2bのピッチが(ほぼ)0になることで、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4c上に位置するように構成することもできる。
これらのような構成によれば、中子2を挿入したタイヤ3をリム組みする際にも、中子2をリムフランジ4bの幅方向内側に容易に入れることができ、また、当該中子2を有するランフラットタイヤ・リム組立体において、ランフラット走行時に、路面からタイヤ3のトレッドを介して中子2に伝わる力をさらにリム4に伝えるようにすることができる。これにより、安定したランフラット走行が可能となる。
【0039】
さらに、中子2の各々の端部2a、2bが、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から180°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム組み時に、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触可能であるように構成することが好ましい。中子2の端部2a、2bとリム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cとの接触範囲を上記の180°以上とすることにより、中子2とリム4との接触の安定性をより一層高めることができるからである。同様の理由により、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から240°以上螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム組み時に、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触可能であるように構成することが好ましい。一方で、中子2の各々の端部2a、2bは、中子2の端から、螺旋状の中子2を螺旋軸方向に見た際に中子2の端から450°以下螺旋の周方向に離間した位置まで、の部分が、リム4のハンプ4a及び/又はビードシート4cの位置に接触するように構成することが好ましい。これにより、中子2の厚さをある程度確保しても重量増を抑制することができ、中子2によるタイヤ3の荷重支持能力をより一層向上させることができるからである。
これらのような構成は、例えば、中子2の端部での螺旋のピッチを、適用リムにおけるハンプ4e及び/又はビードシート4cの位置や寸法に合うように設計することにより達成することができる。また、上述したように、例えば中子2は、タイヤ3及びリム4に組み立てられることで、螺旋軸方向に圧縮され、両端部2a,2bのピッチが(ほぼ)0になることで、リム4のハンプ4e及び/又はビードシート4c上に位置するように構成することもできる。
【0040】
また、中子2の中間部2cは、リム組み時に、リム4に接しないように構成することが好ましい。中間部2cがリム4に接していないことにより、中間部2cが両端部2a、2b間を軸方向に支えるバネの役割を果たし、両端部2a、2bをより確実に位置決めすることができるからである。このような構成は、中子2の中間部2cの螺旋の径を、例えば中子2の端部2a、2bの螺旋の径と同じとすることにより達成することができる。
【0041】
中子2は、螺旋状部材の中間部2cでのタイヤ径方向の幅が、端部2a、2bでのタイヤ径方向の幅より狭くなっていることも好ましい。これにより、リム組み時に、中間部2cがリムフランジ4bを容易に乗り越えられるようにして、リム組み性をさらに向上させることができるからである。
【符号の説明】
【0042】
1:ランフラットタイヤ・リム組立体、 2:中子、 3:タイヤ、
4:リム
図1
図2
図3