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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038126
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】建物の空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20230309BHJP
   F24F 11/76 20180101ALI20230309BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20230309BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F11/76
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145063
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】有富 由香
【テーマコード(参考)】
3L053
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB02
3L053BB04
3L260AA01
3L260AB07
3L260BA32
3L260CA12
3L260CA13
3L260DA10
3L260FA07
3L260FB44
3L260HA01
(57)【要約】
【課題】空調ダクト等の空気搬送部材に結露が生じるのを抑制することができる建物の空調システムを提供する。
【解決手段】
空調システム30は、複数の部屋14~17と、床下空間22とを有する建物10に適用される。空調システム30は、少なくとも冷房運転が可能であり、冷房運転時には冷房用の空調空気を生成する室内機32と、床下空間22に配設され、空調機32により生成された空調空気を各居室14~16へ搬送する接続ダクト51、分岐チャンバ52及び空調ダクト53~55とを備える。各居室14~16に搬送された空調空気は、室内機32に還流するようになっている。空調機32は、還流した空気を還気RAとして取り込み、その還気RAを冷媒との間で熱交換することにより空調空気を生成する。空調機32には、空調機32に取り込まれた還気RAの一部を、熱交換することなく床下空間22に導く還気導き部材61が設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の居住空間と、前記居住空間の床下又は屋根裏の空間である裏空間とを有する建物に適用され、
少なくとも冷房運転が可能であり、前記冷房運転時には冷房用の空調空気を生成する空調装置と、
前記裏空間に配設され、前記空調装置により生成された前記空調空気を前記各居住空間へ搬送する空気搬送部材と、を備え、
前記各居住空間に搬送された前記空調空気は前記空調装置へ還流するようになっており、
前記空調装置は、前記還流した空気を還気として取り込み、その還気を冷媒との間で熱交換することにより空調空気を生成する建物の空調システムであって、
前記空調装置に取り込まれた還気の一部を、前記熱交換することなく前記裏空間へ導く還気導き手段を備えることを特徴とする、建物の空調システム。
【請求項2】
前記空調装置は、前記空調装置に取り込んだ還気を、前記熱交換を行う熱交換部へ送る空気通路と、その空気通路において前記熱交換部へ向かう空気の流れを生じさせる送風手段とを有し、
前記還気導き手段は、前記空気通路において前記送風手段よりも下流側であってかつ前記熱交換部よりも上流側から前記還気の一部を前記裏空間に導くものである、請求項1に記載の建物の空調システム。
【請求項3】
前記空気搬送部材として、前記空調装置に接続された分岐チャンバと、前記分岐チャンバに接続された複数の空調ダクトとを有し、
前記空調装置により生成された空調空気は、前記分岐チャンバと前記各空調ダクトとを通じて前記各居住空間に搬送されるようになっており、
前記還気導き手段は、前記空調装置から前記裏空間へ延び、内部を通じて前記還気の一部を前記裏空間へ導く管状の還気導き部材であり、
前記還気導き部材は、前記分岐チャンバの周囲に前記還気の一部を導くことを特徴とする、請求項1又は2に記載の建物の空調システム。
【請求項4】
前記裏空間には、複数の前記空調ダクトが互いに近接した位置で同じ方向に延びているダクト並設部が設けられ、
前記還気導き部材は、前記ダクト並設部に前記還気の一部を導くことを特徴とする、請求項3に記載の建物の空調システム。
【請求項5】
前記空調装置は、前記空調装置から前記裏空間に前記還気導き手段により導かれる還気の量を調整する調整手段を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の建物の空調システム。
【請求項6】
前記居住空間の温度を検出する温度検出手段と、
前記調整手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記居住空間の温度に基づいて、前記調整手段を制御することを特徴とする、請求項5に記載の建物の空調システム。
【請求項7】
前記裏空間において結露が発生していることを検出する結露検出手段を備え、
前記制御手段は、前記結露検出手段が結露の発生を検出した場合には、前記裏空間に導かれる還気の量が増加するように、前記調整手段を制御することを特徴とする、請求項6に記載の建物の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、複数の居住空間の空調を一括して行う全館式の空調装置が設けられている場合がある(例えば特許文献1)。全館式の空調装置は、屋内に設けられた室内機と、屋外に設けられた室外機とを備える。室内機は、空調空気(冷房用及び暖房用の空気)を生成し、その生成した空調空気を、空調ダクトを介して空調対象である各居住空間へ供給する。これにより、供給された空調空気により各居住空間の空調(冷暖房)が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-139015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物において、空調ダクトは、例えば床下空間に配設される。床下空間は、閉鎖空間であるため、夏場には熱や湿気が溜まりやすい。そのため、空調装置の冷房運転を行うと、空調ダクトは、その内部を流れる冷房用空気によって表面が低温となることが考えられる。その場合、床下空間において空調ダクトの表面に結露が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空調ダクト等の空気搬送部材に結露が生じるのを抑制することができる建物の空調システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の空調システムは、複数の居住空間と、前記居住空間の床下又は屋根裏の空間である裏空間とを有する建物に適用され、少なくとも冷房運転が可能であり、前記冷房運転時には冷房用の空調空気を生成する空調装置と、前記裏空間に配設され、前記空調装置により生成された前記空調空気を前記各居住空間へ搬送する空気搬送部材と、を備え、前記各居住空間に搬送された前記空調空気は前記空調装置へ還流するようになっており、前記空調装置は、前記還流した空気を還気として取り込み、その還気を冷媒との間で熱交換することにより空調空気を生成する建物の空調システムであって、前記空調装置に取り込まれた還気の一部を、前記熱交換することなく前記裏空間へ導く還気導き手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の空調システムでは、空調装置の冷房運転により生成された冷房用の空調空気が空気搬送部材により各居住空間へ搬送される。搬送された空調空気は、その後、空調装置へ還流する。そして、空調装置は、その還流した空気を還気として取り込み空調空気を生成する。ここで、居住空間の空調(冷房)に用いられ、その後空調装置へと還流する空気、つまり還気は比較的温度の高い乾燥した空気となっていることが考えられる。そこで、第1の発明では、そのような点に着目し、空調装置に取り込まれた還気の一部を、熱交換することなく還気導き手段により裏空間へ導くようにしている。これにより、裏空間に比較的高温の乾燥した空気を送ることができるため、裏空間に配設された空気搬送部材に結露が生じるのを抑制することができる。
【0008】
第2の発明の建物の空調システムは、第1の発明において、前記空調装置は、前記空調装置に取り込んだ還気を、前記熱交換を行う熱交換部へ送る空気通路と、その空気通路において前記熱交換部へ向かう空気の流れを生じさせる送風手段とを有し、前記還気導き手段は、前記空気通路において前記送風手段よりも下流側であってかつ前記熱交換部よりも上流側から前記還気の一部を前記裏空間に導くものであることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、一般に空調装置に設けられている送風手段による空気の流れを利用して、裏空間に還気の一部を導くことができる。これにより、裏空間に乾燥した空気を積極的に導くことができるため、空気搬送部材に結露が生じるのをより一層抑制することができる。
【0010】
第3の発明の建物の空調システムは、第1又は第2の発明において、前記空気搬送部材として、前記空調装置に接続された分岐チャンバと、前記分岐チャンバに接続された複数の空調ダクトとを有し、前記空調装置により生成された空調空気は、前記分岐チャンバと前記各空調ダクトとを通じて前記各居住空間に搬送されるようになっており、前記還気導き手段は、前記空調装置から前記裏空間へ延び、内部を通じて前記還気の一部を前記裏空間へ導く管状の還気導き部材であり、前記還気導き部材は、前記分岐チャンバの周囲に前記還気の一部を導くことを特徴とすることを特徴とする。
【0011】
複数の空調ダクトが接続される分岐チャンバには、各空調ダクトを流れる空調空気がそれぞれ流れるため、外表面が低温になり易く、結露が生じ易いと考えられる。そこで、第3の発明では、還気導き部材を通じて分岐チャンバの周囲に還気を導くようにしている。これにより、分岐チャンバに結露が生じるのを好適に抑制することができる。
【0012】
第4の発明の建物の空調システムは、第3の発明において、前記裏空間には、複数の前記空調ダクトが互いに近接した位置で同じ方向に延びているダクト並設部が設けられ、前記還気導き部材は、前記ダクト並設部に前記還気の一部を導くことを特徴とする。
【0013】
複数の空調ダクトが互いに近接して同じ方向に延びている部分では、周囲の空気が冷え易く、そのため結露が生じ易いと考えられる。そこで、第4の発明では、還気導き部材を通じてダクト並設部の周囲に還気を導くようにしている。これにより、ダクト並設部に結露が生じるのを好適に抑制することができる。
【0014】
第5の発明の建物の空調システムは、第1~第4のいずれかの発明において、前記空調装置は、前記空調装置から前記裏空間に前記還気導き手段により導かれる還気の量を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0015】
裏空間に導く還気の量が多いと、空調空気を生成するための還気が不足し、居住空間を十分に空調できなくなるおそれがある。その一方、裏空間に導く還気の量が少ないと、裏空間において結露の発生を抑制できないおそれがある。そこで、第5の発明では、これらの点を鑑み、裏空間に導く還気の量を調整できるようにしている。これにより、居住空間の温度状況と裏空間の結露状況とに応じて、裏空間に導く還気の量を適切な量に調整することが可能となる。
【0016】
第6の発明の建物の空調システムは、第5の発明において、前記居住空間の温度を検出する温度検出手段と、前記調整手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記居住空間の温度に基づいて、前記調整手段を制御することを特徴とする。
【0017】
第6の発明によれば、居住空間の温度に基づき、裏空間に導かれる還気の量が調整される。そのため、例えば夏場において居住空間の温度が高くなった場合には、裏空間に導く還気の量を少なくすることで空調空気の生成を促すことができる。これにより、居住空間を速やかに冷やすことができる。
【0018】
第7の発明の建物の空調システムは、第6の発明において、前記裏空間において結露が発生していることを検出する結露検出手段を備え、前記制御手段は、前記結露検出手段が結露の発生を検出した場合には、前記裏空間に導かれる還気の量が増加するように、前記調整手段を制御することを特徴とする。
【0019】
第7の発明によれば、裏空間において結露が発生した場合には裏空間に導かれる還気の量が増えるため、結露の発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】空調システムが設けられた建物を示す図。
図2】室内機周辺の構成を示す断面図。
図3】運転モード切替処理の流れを示すフローチャート。
図4】空調システムが設けられた建物を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1に示すように、基礎11の上方には、住宅等の建物10が設けられている。基礎11は、鉄筋コンクリート造りの布基礎からなり、建物10の外周部全域に亘って設けられている。
【0023】
建物10は、二階階建てとされ、その一階部分12には、複数の部屋14~17が設けられている。これらの部屋14~17のうち、部屋14~16は、例えばリビングやダイニング、和室、寝室等からなり、以下、居室14~16ということがある。また、部屋17は、後述する空調システム30の室内機32が設置される機械室となっており、以下、機械室17ということがある。部屋14~17は、間仕切壁18により互いに仕切られている。間仕切壁18に設けられた通気口19やドアアンダーカット等を通じて、隣接する部屋14~17同士で常時通気可能となっている。
【0024】
一階部分12には、床部21が設けられ、この床部21により部屋14~17の床面が形成されている。なお、床部21は、床面材と床面材を支持する床梁とを有して構成されている。
【0025】
床部21の下方には、床下空間22が設けられている。床下空間22は、床部21により部屋14~17と上下に仕切られている。また、床下空間22は、その周囲が基礎11により囲まれている。なお、床下空間22は裏空間に相当する。
【0026】
建物10には、全館式の空調システム30が設けられている。以下においては、その空調システム30の構成について説明する。
【0027】
空調システム30は、建物10の一階部分12の各居室14~16を空調対象として空調を行うものである。空調システム30は、ヒートポンプ式の空調システムであり、屋内に設けられた室内機32と、屋外に設けられた室外機33とを備える。室内機32と室外機33とは冷媒管34を介して接続されており、図1では便宜上、冷媒管34を点線で示している。なお、室内機32が空調装置に相当する。また、各居室14~16が「居住空間」に相当する。
【0028】
室内機32は、上述したように機械室17に設置され、機械室17の床面に縦置きされている。室内機32は、少なくとも冷房運転及び暖房運転を行うことが可能となっている。室内機32は、機械室17内の空気を還気RAとして取り込み、その空気を温度調整することで空調空気(冷房用空気及び暖房用空気)を生成するものである。すなわち、室内機32は、冷房運転時には機械室17から取り込んだ空気を冷却することで冷房用空気を生成し、暖房運転時には機械室17から取り込んだ空気を加熱することで暖房用空気を生成する。
【0029】
図2に示すように、室内機32は、その内部に空気の流れる空気通路35を有している。室内機32の側板部には、その上部に、機械室17内の還気RAを空気通路35に取り込む還気取込口38が形成されている。還気取込口38には、フィルタ38aが取り付けられている。これにより、室内機32の内部に埃等の異物が入り込むことを防止できる。
【0030】
室内機32には、熱交換器41及びファン42が設けられている。熱交換器41は、室内機32において還気取込口38から延びる空気通路35の中間部に設けられている。熱交換器41は、冷媒管34と接続され、その冷媒管34を流れる冷媒と空気通路35を流れる還気RAとの間で熱交換を行わせるものである。空気通路35内の還気RAは、熱交換器41による熱交換により冷却又は加熱され、それにより冷房用空気又は加熱用空気(空調空気)となる。
【0031】
ファン42は、室内機32の空気通路35内において、還気取込口38よりも下流側であってかつ熱交換器41よりも上流側に設けられている。ファン42は、空気通路35内において還気取込口38から熱交換器41(ひいては下流側)へ向かう空気の流れを生じさせるものである。なお、熱交換器41が熱交換部に相当し、ファン42が送風手段に相当する。
【0032】
室内機32の底面部には、接続ダクト51が接続されるダクト接続口45が形成されている。ダクト接続口45は、空気通路35において熱交換器41よりも下流側に形成され、空気通路35の下流側の端部に位置している。熱交換器41による熱交換により生成された空調空気はダクト接続口45へ送られる。
【0033】
室内機32のダクト接続口45には、接続ダクト51が接続されている。接続ダクト51は、機械室17の床部21を貫通して床下空間22に延びている(図1参照)。床下空間22(詳しくは、室内機32の直下)には、分岐チャンバ52が設けられている。分岐チャンバ52は、室内機32と接続ダクト51を介して接続されている。
【0034】
分岐チャンバ52には、接続ダクト51以外にも複数の空調ダクト53~55が接続されている。これらの空調ダクト53~55は、分岐チャンバ52と同様、床下空間22に設けられている。詳しくは、空調ダクト53は居室14に向けて延び、空調ダクト54は居室15に向けて延び、空調ダクト55は居室16に向けて延びている。各空調ダクト53~55のうち、居室15,16に向けて延びる2つの空調ダクト54,55は、分岐チャンバ52から同方向に向けて延びている。なお、図1においては、便宜上、空調ダクト54が空調ダクト55の上方に存在するかのように示されているが、実際には、空調ダクト53~55は、いずれも床下空間22の底面上に敷設されている。また、接続ダクト51、分岐チャンバ52及び各空調ダクト53~55は、いずれも空気搬送部材に相当する。
【0035】
各空調ダクト53~55には、各居室14~16の床部21に設けられた給気吹出口58が接続されている。室内機32により生成された空調空気は、接続ダクト51と分岐チャンバ52と空調ダクト53~55を介して各居室14~16の給気吹出口58に供給され、その供給された空調空気は、各給気吹出口58より各居室14~16に給気SAとしてそれぞれ吹き出される。これにより、各居室14~16の空調(冷暖房)が行われる。
【0036】
また、建物10では、上述のとおり、居室14~16及び機械室17は、間仕切壁18に設けられた通気口19やドアアンダーカット等を通じて常時通気可能となっている。各居室14~16に供給された空調空気(給気SA)は、還気RAとして各居室14~16から通気口19等を通じて機械室17へと流れ、室内機32へ戻る(還流する)。室内機32は、その戻った還気RAをもとに空調空気を再度生成する。このように、本空調システム30は、空気循環式の空調システムとされている。
【0037】
各空調ダクト54,55において分岐チャンバ52から延びる所定の長さ部分(以下、所定長さ部分54a,55aという)は、互いに近接した位置で同じ方向に延びている。この場合、これら各所定長さ部分54a,55aによりダクト並設部57が構成されている。詳しくは、ダクト並設部57を構成する各所定長さ部分54a,55aは、略直線状にかつ互いに平行をなして延びている。
【0038】
ところで、空気搬送部材の外表面温度は、空気搬送部材の内部を流れる空調空気の温度の影響を受ける。そして、空気搬送部材によって空気搬送部材の周囲の空気が冷やされたり温められたりする場合がある。このため、例えば、空気搬送部材の周囲の空気は、空調システム30が冷房運転を行っている場合には、空気搬送部材を流れる冷房空気によって空気搬送部材を介して冷やされる場合がある。空調システム30が暖房運転を行っている場合には、空気搬送部材を流れる暖房空気によって空気搬送部材を介して温められる場合がある。そして、かかる現象は、大量の空調空気が内部を流れる接続ダクト51及び分岐チャンバ52や、複数のダクトが並設されているダクト並設部57の周囲において、顕著に発生すると考えられる。
【0039】
このため、例えば、夏季において、床下空間22の空気が高温多湿状態である場合に、室内機32(ひいては空調システム30)の冷房運転が行われると、床下空間22において、接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57を中心に結露の発生が懸念される。
【0040】
そこで、上記の点を鑑み、本実施形態の空調システム30は、冷房運転時に室内機32に取り込まれた還気RAの一部を床下空間22に導く還気導き部材61を備えている。以下、この還気導き部材61に関する構成について説明する。
【0041】
還気導き部材61は、例えば中空の角ダクトからなる。還気導き部材61は、一端部が室内機32に接続される接続部62となっており、他端部(開放端部)が還気RAを吹き出す還気吹出口63となっている。
【0042】
室内機32の側面部には、還気導き部材61の接続部62が接続される接続口65が形成されている(図2参照)。接続口65は室内機32の空気通路35と連通されており、詳しくはファン42よりも下流側であって且つ熱交換器41よりも上流側で空気通路35と連通されている。これにより、空気通路35に取り込まれた還気RAの一部が、空気通路35においてファン42よりも下流側で且つ熱交換器41よりも上流側から、接続口65を介して還気導き部材61の内部に導かれるようになっている。したがって、この場合、空気通路35に取り込まれた還気RAの一部を、熱交換器41に導くことなく、つまり熱交換器41による熱交換を行うことなく床下空間22に導くことができる。
【0043】
還気導き部材61は、その接続部62が接続口65に接続されている。還気導き部材61は、接続部62から下方に延びて機械室17の床部21を貫通している。還気導き部材61において床下空間22に位置する部分には曲げ部64が設けられている。この曲げ部64により、還気吹出口63が接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57を向いた状態となっている(図1参照)。
【0044】
室内機32の空気通路35から還気RAの一部が還気導き部材61に導かれると、その還気RAは還気導き部材61の内部を通じて床下空間22側に流れ、還気吹出口63から接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57に向かって放出される。これにより、還気導き部材61によって、接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57の周囲に還気RAが導かれるようになっている。
【0045】
還気RAは、夏季に空調システム30を冷房運転している場合には、接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57の周囲の空気と比較して、より高温で乾燥している。このため、接続ダクト51、分岐チャンバ52及びダクト並設部57の周囲の空気は、還気RAが導入されると、より暖かく、且つ乾いた状態となる。これにより、接続ダクト51、ダクト並設部57及び分岐チャンバ52にて結露が生じることを抑制できる。
【0046】
ところで、空調システム30は、各部屋14~17の内気を温度調整しつつ循環させることで、各居室14~16の空調管理を行うものである。このため、還気RAを床下空間22にあまりにも多く放出してしまうと、給気SAの風量が不足して、各居室14~16の空調管理に支障が生じことが懸念される。
【0047】
このため、本実施形態の空調システム30は、運転モードとして、還気導き部材61による床下空間22への還気RAに還気RAを導く「還気導きモード」と、還気導き部材61による床下空間22に還気RAを導くことを行わない「還気導き停止モード」とを有している。また、還気導きモードには、還気RAを床下空間22に最大限導く「第1還気導きモード」と、還気RAの床下空間22への導き量が第1還気導きモードよりも制限される「第2還気導きモード」と、が存在する。空調システム30は、建物10における状況に応じて、第1還気導きモードと第2還気導きモードと還気導き禁止モードとを自動で切り替えるようになっている。
【0048】
室内機32は、接続口65を開閉可能なシャッタ66を有している。シャッタ66は、矩形板状をなしており、空気通路35に設けられている。詳しくは、シャッタ66は、その下端部において室内機32の側板部に回動軸67を介して連結され、回動軸67を中心として回動することによりシャッタ66を開閉する。回動軸67は、電動モータからなる駆動部68と接続されている。シャッタ66は、駆動部68によって開閉されるようになっている。
【0049】
また、シャッタ66は、その開き度合いが段階的に可変となっている。具体的には、シャッタ66は、その回動により、シャッタ66が全開状態とされる「全開位置」と、シャッタ66が半開状態とされる「半開位置」と、シャッタ66が全閉状態とされる「閉位置」とに位置切替可能となっている。
【0050】
シャッタ66は、全開位置又は半開位置に位置する場合には、その上面が、還気RAの流れの一部を遮るように設けられている。これにより、室内機32の空気通路35を流れる還気RAの一部をシャッタ66に沿って還気導き部材61に導くことができる。また、シャッタ66の板面(上面)と室内機32の側板部の板面とがなす角度は、シャッタ66が全開位置にある場合には、約90°となり、シャッタ66が半開位置にある場合には、約45°となる。このため、全開位置の場合、半開位置の場合よりも熱交換器41に向かう還気RAの流れを大きく遮ることになる。したがって、シャッタ66が全開位置にある場合には、半開位置にある場合よりも多くの還気RAを還気導き部材61に導くことができる。一方、シャッタ66が閉位置に位置する場合には、接続口65が閉鎖されるため、還気RAの全部が熱交換器41へ流れる。
【0051】
シャッタ66は、空調システム30が第1還気導きモードの場合には全開位置に位置し、第2還気導きモードの場合には半開位置に位置し、還気導き停止モードの場合には閉位置に位置するようになっている。これにより、空調システム30の運転モードを切り換えることによって、床下空間22に導く還気RAの量を調整することが可能となっている。なお、シャッタ66は、調整手段に相当する。
【0052】
各居室14~16には、各居室14~16の室温を検出する室温センサ75(温度検出手段に相当)がそれぞれ設けられている。これにより、各居室14~16における室温が逐次検出される。
【0053】
床下空間22には、結露水の発生を検知する結露検出センサ76(結露検出手段に相当)が設けられている。詳しくは、結露検出センサ76は、結露水の発生し易いダクト並設部57に設けられている。これにより、ダクト並設部57における結露水の発生状況が逐次検知される。
【0054】
空調システム30は、制御手段としてのコントローラ70を備える。コントローラ70は、CPUや各種メモリを有する周知のマイクロコンピュータを具備するものであり、各種情報が記憶される記憶部70aを有している。コントローラ70は、居室15の壁面に設けられたリモコン71に内蔵されている。また、リモコン71は、居住者が操作する操作部72を有している。
【0055】
コントローラ70には、室温センサ75と結露検出センサ76とが接続されている。コントローラ70には、室温センサ75による検出結果と結露検出センサ76による検出結果とが逐次入力される。コントローラ70は、上記検出結果を記憶部70aに逐次記憶する。
【0056】
コントローラ70には、駆動部68が接続されている。コントローラ70は、室温センサ75による検出結果に基づいて、駆動部68の駆動制御(すなわち、シャッタ66の開閉制御)を実行する。
【0057】
コントローラ70には、操作部72が接続されている。コントローラ70は、居住者による操作部72の操作に基づいて、室内機32を制御する。
【0058】
続いて、コントローラ70により実行される運転モード切替処理について図3を参照しつつ説明する。なお、本処理は、室内機32(ひいては空調システム30)の運転中に所定の周期で繰り返し実行される。
【0059】
ステップS11では、室内機32が冷房運転中であるか否かを判定する。冷房運転中であれば、YES判定してステップS12に進む。冷房運転中でなければNO判定して本処理を終了する。
【0060】
ステップS12では、空調システム30の運転モードが第1還気導きモードであるか否かを判定する。第1還気導きモードであればYES判定してステップS13に進む。第2還気導きモード又は還気導き停止モードであればNO判定してステップS21に進む。
【0061】
ステップS13では、室温センサ75により取得された各居室14~16の室温の全てが、所定温度T1以下であるか否かについて判定する。所定温度T1は、居住者により設定された空調設定温度であり、例えば27℃に設定される。YES判定の場合は、本処理を終了する。NO判定の場合、つまり居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが所定温度T1より高くなっている場合は、ステップS14に進む。なお、所定温度T1は予め記憶部70aに記憶されている。
【0062】
ステップS14では、空調システム30の運転モードを第1還気導きモードから第2還気導きモードに切り替える。換言すると、シャッタ66を全開位置から半開位置へと変位させて、還気RAの床下空間22への導き量を制限する。その後、本処理を終了する。
【0063】
ステップS21では、空調システム30の運転モードが第2還気導きモードであるか否かを判定する。第2還気導きモードであればYES判定してステップS21に進む。還気導き停止モードであればNO判定してステップS31に進む。
【0064】
ステップS22では、室温センサ75により取得された各居室14~16の室温の全てが、所定温度T1以下であるか否かについて判定する。YES判定の場合はステップS23に進む。NO判定の場合はステップS25に進む。
【0065】
ステップS23では、空調システム30の運転モードを第2還気導きモードから第1還気導きモードに切り替える。換言すると、シャッタ66を半開位置から全開位置へと変位させて、還気RAが床下空間22により多く流れるようにする。その後、本処理を終了する。
【0066】
ステップS25では、室温センサ75により取得された各居室14~16の室温の全てが、所定温度T2以下であるか否かについて判定する。所定温度T2は、所定温度T1よりも高温に設定され、予め記憶部70aに記憶されている。また、所定温度T2は、居室14~16内の居住者がそこまで不快に感じない程度の温度とされる。例えば、所定温度T1が27℃の場合には、所定温度T2は29℃に設定される。各居室14~16の室温の全てが所定温度T2以下である場合は、YES判定して本処理を終了する。各居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが所定温度T2を超えている場合は、NO判定してステップS26に進む。なお、所定温度T2は、居住者が自分で設定するようにしてもよいし、「所定温度T2は所定温度T1に2℃を加えた温度とする」といったように、所定温度T1の設定値に応じて自動で定まるようにしてもよい。
【0067】
ステップS26では、空調システム30の運転モードを第2還気導きモードから還気導き停止モードに切り替える。換言すると、シャッタ66を半開位置から閉位置へと変位させて、還気RAが床下空間22に導かれないようにする。その後、本処理を終了する。
【0068】
ステップS31では、室温センサ75により取得された各居室14~16の室温の全てが、所定温度T2以下であるか否かについて判定する。YES判定の場合はステップS32に進む。NO判定の場合はステップS33に進む。
【0069】
ステップS32では、空調システム30の運転モードを還気導き停止モードから第2還気導きモードに切り替える。換言すると、シャッタ66を閉位置から半開位置へと変位させて、還気RAの床下空間22への導きを開始する。ただし、居室14~16の冷房も行う必要があるため、還気RAの床下空間22への導き量は制限する。その後、本処理を終了する。
【0070】
ステップS33では、結露検出センサ76が結露水の発生を検知したか否かを判定する。YES判定の場合はステップS34に進む。NO判定の場合は本処理を終了する。
【0071】
ステップS34では、ステップS32と同様、空調システム30の運転モードを還気導き停止モードから第2還気導きモードに切り替える。その後、本処理を終了する。
【0072】
以上のように、運転モード切替処理では、居室14~16の室温と所定温度T1,T2との比較に基づいて、室内機32から床下空間22への還気RAの導き量を調整している。居室14~16の室温が所定温度T1以下の場合には、既に居室14~16の室温は空調設定温度に達していることになる。この場合、空調システム30は、居室14~16に給気SAを少し供給するだけで、居室14~16の室温を維持することができる。このため、空調システム30は、第1還気導きモードをとり、床下空間22への還気RAの導き量を最大とするようになっている。
【0073】
また、居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが、所定温度T1より大きく、且つ各居室14~16の室温の全てが所定温度T2以下である場合には、居室14~16の室温は空調設定温度には達していないものの、居室14~16内の居住者が不快に感じない程度の温度には達していることになる。この場合、更に居室14~16を冷却すべきではあるものの、居室14~16の冷却速度が若干低下したとしても、居住者は、そこまでの不快感を抱くことなく居室14~16内にて過ごすことができると考えられる。このため、空調システム30は、第2還気導きモードをとり、床下空間22に還気RAを導くことを、その導き量を制限しつつ行うようになっている。
【0074】
一方、居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが所定温度T2を超えている場合には、居室14~16内の居住者は、不快感を抱くおそれがあるとともに、居室14~16が少しでも早く冷却されることを望むと考えられる。この場合、空調システム30は、還気導き停止モードをとり、床下空間22への還気RAの導きを停止して、居室14~16への給気SA量を最大限確保するようになっている。
【0075】
ただし、結露検出センサ76が結露水の発生を検知した場合には、居室14~16の室温の少なくともいずれかが所定温度T2を超えている場合であっても、床下空間22に還気RAを導くことを実行する。この場合、居室14~16の冷却と床下空間22の結露の抑制とは、いずれも必要性が高いため、空調システム30は、第2還気導きモードをとるようになっている。
【0076】
なお、図3には示していないが、空調システム30の電源をオフにした場合には、シャッタ66は閉位置をとるようになっている。また、空調システム30の運転モードは、居住者がリモコン71の操作部72を操作することによっても切り替えることができる。
【0077】
以上、詳述した第1実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0078】
・上記第1実施形態では、室内機32の冷房運転により生成された冷房用の空調空気が、接続ダクト51、分岐チャンバ52及び各空調ダクト53~55を通じて居室14~16へ搬送される。搬送された空調空気は、その後、室内機32へ還流する。そして、室内機32は、その還流した空気を還気RAとして取り込み空調空気を生成する。ここで、居室14~16の冷房に用いられ、その後室内機32へと還流する空気、つまり還気RAは、比較的温度の高い乾燥した空気となっていることが考えられる。ここで、上記第1実施形態では、室内機32に取り込まれた還気RAの一部を、熱交換することなく還気導き部材61により床下空間22へ導くようにしている。これにより、床下空間22に比較的高温の乾燥した空気を送ることができるため、床下空間22に配設された接続ダクト51、分岐チャンバ52及び空調ダクト53~55に結露が生じるのを抑制することができる。
【0079】
・上記第1実施形態では、ファン42による空気の流れを利用して、床下空間22に還気RAの一部を導くことができる。これにより、床下空間22に乾燥した空気を積極的に導くことができるため、接続ダクト51、分岐チャンバ52及び空調ダクト53~55に結露が生じるのをより一層抑制することができる。また、ファン42は、空気通路35内部において熱交換器41に向かう空気の流れを生み出すための送風手段である。かかる送風手段は、一般に空調装置に設けられているものである。つまり、空調装置の一般的な構成を利用しつつ、上記の効果を得るようになっている。
【0080】
・上記第1実施形態では、接続口65は、空気通路35においてファン42よりも下流側であって且つ熱交換器41よりも上流側に設けられている。さらに、シャッタ66は、全開位置又は半開位置に位置している場合には、その上面が、還気RAの流れの一部を遮るようになっている。これにより、室内機32に取り込まれた還気RAの一部を、還気導き部材61にスムーズに導くことができる。
【0081】
・床下空間22に導かれる還気RAは、室内機32に取り込まれた還気RAのうちのあくまでも一部であって、残りの還気RAは空調空気となる。したがって、床下空間22に還気RAを導きつつも、居室14~16の空調を継続することができる。
【0082】
・室内機32と床下空間22とは還気導き部材61を介して接続されている。このため、室内機32が空調運転を停止している場合には、床下空間22の空気が室内機32に向かって逆流したり、床下空間22にいた昆虫等が室内機32に入り込んだりすることが懸念される。しかし、上記第1実施形態によれば、室内機32が空調運転を停止している場合には、シャッタ66が閉位置をとるようになっているため、かかる不具合を抑制することができる。
【0083】
・複数の空調ダクト53~55が接続される分岐チャンバ52には、各空調ダクト53~55を流れる空調空気がそれぞれ流れるため、外表面が低温になり易く、結露が生じ易いと考えられる。また、接続ダクト51においても、同様に結露が生じやすいと考えられる。そこで、上記第1実施形態では、還気導き部材61を通じて接続ダクト51及び分岐チャンバ52の周囲に還気RAを導くようにしている。これにより、接続ダクト51及び分岐チャンバ52に結露が生じるのを好適に抑制することができる。
【0084】
・複数の空調ダクトが互いに近接して同じ方向に延びている部分では、周囲の空気が冷え易く、そのため結露が生じ易いと考えられる。そこで、上記第1実施形態では、還気導き部材61を通じてダクト並設部57の周囲に還気RAを導くようにしている。これにより、ダクト並設部57に結露が生じるのを好適に抑制することができる。
【0085】
・各居室14~16の空調を急速に進めたい場合には、各居室14~16に供給する空調空気(給気SA)の量を増加させることが考えられる。しかし、床下空間22に導く還気RAの量が多いと、空調空気を生成するための還気RAが不足して、居室14~16を十分に空調できなくなるおそれがある。その一方、床下空間22に導く還気RAの量が少ないと、床下空間22において結露の発生を抑制できないおそれがある。そこで、上記第1実施形態によれば、接続口65にシャッタ66を開閉可能に設け、当該シャッタ66を開閉制御することで、床下空間22に導く還気RAの量を調整できるようになっている。これにより、居室14~16の温度状況と床下空間22の結露状況とに応じて、床下空間22に導く還気RAの量を適切な量に調整することができる。
【0086】
・また、上記第1実施形態では、室温センサ75によって、各居室14~16の室温を取得する。そして、各居室14~16の室温に基づいて、シャッタ66の開閉制御を行うようになっている。これにより、夏場において居室14~16の温度が高くなった場合には、床下空間22に導く還気RAの量を少なくすることで空調空気の生成を促すことができる。これにより、居室14~16を速やかに冷やすことができる。
【0087】
詳しくは、各居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが所定温度T2を超えている場合、すなわち、居室14~16が暑くなっていて、居室14~16を早く冷却したい場合には、シャッタ66を閉位置にして、床下空間22に還気RAを導くことを止めるようになっている。これにより、給気SAの導き量が不足することを抑制し、居室14~16の冷却を全力で進めることができる。
【0088】
各居室14~16の室温のうち少なくともいずれかが所定温度T1よりも高温であり、且つ各居室14~16の室温の全てが所定温度T2以下である場合、すなわち、居室14~16の冷却がある程度進んでいる場合には、シャッタ66を半開位置として、第2還気導きモードにより床下空間22に還気RAを導くことを開始する。第2還気導きモードでは、第1還気導きモードよりも床下空間22への還気RAの導き量は制限される。これにより、居室14~16の冷却を進めつつ、床下空間22の結露抑制も進めることができる。また、所定温度T2は、居室14~16内の居住者が不快に感じない程度の温度に設定されているため、多少空調の進みが遅くなったとしても、そこまでの支障はない。
【0089】
各居室14~16の室温の全てが所定温度T1以下となった場合、すなわち、居室14~16の冷却が完了した場合には、シャッタ66を全開位置として、第1還気導きモードに切り替える。第1還気導きモードでは、床下空間22への還気RAの導き量は最大となる。この段階では、居室14~16の室温を維持するだけでよいため、給気SAの必要量は比較的小さくなっている。このため、床下空間22の結露抑制を全力で進めるようになっている。
【0090】
・床下空間22において、現に結露が発生している場合には、早急に結露の解消を図ることが望ましい。そこで、上記第1実施形態では、結露検出センサ76によって、床下空間22(詳しくは、ダクト並設部57)に結露が発生したか否かを検知するようになっている。そして、結露の発生が検知された場合には、たとえ各居室14~16の室温の全てが所定温度T2より大きい場合であっても、床下空間22に還気RAを導くことを実行するようになっている。この場合、居室14~16の冷却と床下空間22の結露抑制とは、いずれも実行する必要性が高いため、空調システム30は、第2還気導きモードをとるようになっている。これにより、居室14~16の冷却を進めつつも、床下空間22に生じた結露の解消を図ることができる。
【0091】
・空調システム30の運転モードは、居住者がリモコン71の操作部72を操作することによっても切り替えることができる。これにより、居住者は、自身の判断に基づいて、適切な運転モードを選択することができる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図4を参照しつつ説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0093】
建物10の二階部分81には、複数の居室82~84が設けられている。居室82~84は、東西方向に一列に並んで配置され、詳しくは西側から東側に向かって居室82、居室83、居室84の順に配置されている。居室82~84は、間仕切壁85により互いに仕切られているが、ドアアンダーカット86等を通じて、隣接する居室同士で常時通気可能となっている。また、建物10は、二階部分81の上に屋根部92を有し、居室82の外側にベランダ93を有している。
【0094】
二階部分81には、天井部91が設けられ、この天井部91により居室82~84の天井面が形成されている。また、天井部91は天井面材を有して構成されている。天井部91の上方には、屋根部92の小屋裏空間94が形成されている。なお、小屋裏空間94は裏空間に相当する。
【0095】
建物10には、二階部分81の各居室82~84を空調対象として空調を行う空調システム100が設けられている。以下、この空調システム100の構成について説明する。なお、各居室82~84が空調システムにより空調を行う「居住空間」に相当する。
【0096】
空調システム100は、空調システム30と同様、ヒートポンプ式の空調システムとされており、少なくとも冷房運転及び暖房運転を行うことが可能となっている。空調システム100は、屋内に設けられた室内機102と、ベランダ93に設けられた室外機103とを有している。なお、空調システム30と同様、室内機102と室外機103とは冷媒管104を介して接続されており、図4では便宜上、冷媒管104を点線で示している。
【0097】
小屋裏空間94には、室内機102が設置されている。室内機102は、居室82と居室83との間に設けられた間仕切壁85の直上に位置している。室内機102の側板部には、分岐チャンバ106が取り付けられており、室内機102の内部と分岐チャンバ106の内部とは連通している。分岐チャンバ106には、複数の空調ダクト111~113が接続されている。空調ダクト111は居室82に向けて延び、空調ダクト112は居室83に向けて延び、空調ダクト113は居室84に向けて延びている。すなわち、空調ダクト112,113は同じ方向に向かって伸びている。なお、図4においては、便宜上、空調ダクト113が空調ダクト112の上方に存在するかのように示されているが、実際には、空調ダクト111~113は、いずれも小屋裏空間94の底面上に敷設されている。
【0098】
各空調ダクト111~113には、各居室82~84の天井部91に設けられた給気吹出口117がそれぞれ接続されている。室内機102により生成された空調空気は、各給気吹出口117より各居室82~84に給気SAとしてそれぞれ吹き出される。これにより、各居室82~84の空調(冷暖房)が行われる。
【0099】
建物10では、上述のとおり、居室82~84は、ドアアンダーカット86を通じて常時通気可能となっている。このため、居室83,84に供給された空調空気(給気SA)は、ドアアンダーカット86を通じて居室82へ流れるようになっている。
【0100】
居室82の天井部91には、還気取込口118が設けられている。還気取込口118は、室内機102と還気ダクト119を介して接続されている。これにより、室内機102は、居室82内の空気を室内機102内に還気RAとして取り込むことができる。つまり、居室83,84に供給された給気SAは、居室82に供給された給気SAとともに、還気RAとして室内機102へ戻る(還流する)。室内機102は、その戻った還気RAをもとに空調空気を再度生成する。このように、空調システム100についても、空調システム30と同様、循環式の空調システムとなっている。
【0101】
なお、室内機102は、室内機32と同様、ファン及び熱交換器を有している(図示略)。室内機102は、その内部に取り込んだ還気RAを、熱交換器により温度調整して空調空気の生成を行う。
【0102】
各空調ダクト112,113において分岐チャンバ106から延びる所定の長さ部分(以下、所定長さ部分112a,113aという)は、互いに近接した位置で同じ方向に延びている。この場合、これら各所定長さ部分112a,113aによりダクト並設部115が構成されている。詳しくは、ダクト並設部115を構成する各所定長さ部分112a,113aは、略直線状かつ互いに平行をなして延びている。
【0103】
ここで、小屋裏空間94においても、第1実施形態の場合と同様に、夏季に空調システム100を冷房運転している場合には、ダクト並設部115や分岐チャンバ106にて結露が生じることが懸念される。このため、室内機102は、空調システム100の空調運転時に室内機102に取り込まれた還気RAの一部を小屋裏空間94内に導く還気導き部材121を備えている。
【0104】
還気導き部材121は、中空のパイプであるパイプ121a,121b,121cと中空のT字管121dとから構成される。
【0105】
詳しくは、パイプ121a,121bは直管状をなしており、パイプ121cはL字状に折り曲げられている。パイプ121aは、一端部が室内機102の分岐チャンバ106側の側板部に接続されており、空調ダクト112,113に沿ってまっすぐ延びている。パイプ121aの他端部には、T字管121dが取り付けられている。T字管121dは、分岐チャンバ106の直上に位置しており、T字管121dには、パイプ121aの他にパイプ121bとパイプ121cとが連結されている。パイプ121bは、T字管121dから下方に向けてまっすぐ延びている。パイプ121bの解放端部には、還気RAを吹き出す還気吹出口122が形成されている。このため、還気導き部材121は、還気吹出口122から分岐チャンバ106に向けて上方から還気RAを吹き付けることができる。
【0106】
また、パイプ121cは、T字管121dから空調ダクト112,113に沿ってまっすぐ延びている。パイプ121cの解放端部には、還気RAを吹き出す還気吹出口123が形成されている。パイプ121cにおいてダクト並設部115の直上に位置する部分には、曲げ部121eが設けられている。この曲げ部121eにより、還気吹出口123が還気吹出口123からダクト並設部115を向いた状態となっている。このため、還気導き部材121は、還気吹出口123からダクト並設部115に向けて上方から還気RAを吹き付けることができる。
【0107】
つまり、還気導き部材121は、その中間部(詳しくは、分岐チャンバ106の直上に位置する部分)で分岐しており、全体としてF字状をなしている。還気導き部材121は、2つの還気吹出口122,123を有しており、各還気吹出口122,123から分岐チャンバ106とダクト並設部115とにそれぞれ還気RAを吹き付けるようになっている。
【0108】
なお、空調システム100では、調整手段、制御手段、温度検出手段及び結露検出手段に相当する構成は設けられておらず、空調システム100よりも構成が簡素化されている。つまり、調整手段、制御手段、温度検出手段及び結露検出手段は必須の構成ではない。
【0109】
以上、詳述した第2実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0110】
・空調システム100は、二階部分81を空調対象とするものであり、室内機102は小屋裏空間94に設置されている。また、空調ダクト111~113は、小屋裏空間94に配設されている。還気RAは、室内機102によって温度調整される前であっても、小屋裏空間94内の空気よりも乾燥していると考えられる。このため、かかる構成においても、還気導き部材121によって還気RAの一部を小屋裏空間94に導くことで、小屋裏空間94に配設された空気搬送部材に結露が生じるのを抑制することができる。
【0111】
・還気導き部材121は、2つの還気吹出口122,123を有しており、ダクト並設部115及び分岐チャンバ106のそれぞれに対して還気RAを吹き付けるようになっている。これにより、ダクト並設部115や分岐チャンバ106にて結露が生じることを好適に抑制できる。
【0112】
本発明は、上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0113】
(a)上記第1及び第2実施形態では、夏季における不具合の解消について例示したが、冬季においても、建物10の裏空間では、空気環境に関する不具合が生じることが懸念される。例えば、床下空間22や小屋裏空間94には、冷気が溜まりやすい。そして、床下空間22や小屋裏空間94に溜まった冷気によって、床部21や天井部91を介して居室14~16,82~84が冷やされてしまうことが懸念される。
【0114】
しかし、上記第1及び第2実施形態では、還気導き部材61,121によって、還気RAの一部を床下空間22及び小屋裏空間94に導入するようになっている。還気RAは、空調システム30,100の暖房運転時には、床下空間22及び小屋裏空間94の空気よりも高温となっていると考えられる。このため、床下空間22及び小屋裏空間94の空気を高温化することができる。
【0115】
また、空調システムを暖房運転すると、空気搬送部材の内部を流れる高温の空調空気の影響で、空気搬送部材の周囲の空気は比較的高温の状態となる。特に、空調ダクトが並設されている部分や分岐チャンバの周囲において、かかる現象は顕著となる。ここで、上記第1及び第2実施形態では、還気導き部材61,121によって、接続ダクト51、分岐チャンバ52,106及びダクト並設部57,115に還気RAを吹き付けるようになっている。これにより、接続ダクト51、分岐チャンバ52,106及びダクト並設部57,115の周囲に存在する比較的高温の空気を拡散させることができるため、床下空間22及び小屋裏空間94を全体的に高温化することができる。したがって、上記冬季における不具合を抑制することができる。
【0116】
(b)上記第1実施形態では、各居室14~16に室温センサ75を設け、室温センサ75の取得結果に基づいて、シャッタ66を制御するようになっているが、シャッタ66の制御方法はこれに限定されない。例えば、居室14~16の室温センサ75に代えて床下空間22に温湿度センサを設け、当該温湿度センサの取得結果に基づいて制御するようにしてもよい。具体的には、夏季においては、床下空間22の空気が高温且つ多湿であるほど、床下空間22にて結露等の不具合が生じやすくなると考えられる。このため、床下空間22の温湿度について所定の閾値を設定し、温湿度センサにより取得された温湿度が当該所定の閾値を超えた場合には、より積極的に床下空間22に還気RAを導くようにシャッタ66の開閉制御を行う構成が考えられる。これにより、空気搬送部材にて結露が生じるのを抑制することができる。
【0117】
(c)シャッタ66は、居住者が手動で開け閉め可能なものであってもよい。この場合、室温センサ75や駆動部68を不具備とすることができるため、構成の簡素化を図ることができる。
【0118】
(d)各居住空間の配置は、特に限定されない。ただし、室内機からみて同一の方向に複数の居住空間が並ぶような配置であると、複数の空調ダクトが近接して同じ方向に延びるような空調ダクトの配置が生じやすくなる。このため、結露等の不具合が生じやすくなる。
【0119】
(e)室内機の構成は、上記第1及び第2実施形態の構成に限定されるものではなく、熱交換前の還気RAを還気導き手段に適切に導入可能な構成であればよい。
【0120】
(f)還気導き手段の構成は、上記第1及び第2実施形態の構成に限定されない。還気導き手段の形状や還気導き手段が有する還気吹出口の個数は限定されない。また、複数の還気導き手段を設けることもできる。
【0121】
(g)還気導き部材61,121による還気RAの導き先は、接続ダクト51、分岐チャンバ52,106及びダクト並設部57,115に限定されない。例えば、空調ダクト53,111のように、近くに他の空調ダクトが設けられていない箇所に導入してもよい。また、還気導き部材61,121は、還気RAを特定の箇所を狙って吹き付けるようにしなくてもよく、裏空間に還気RAを導入することができれば、裏空間における結露の発生を抑制することができる。
【0122】
(h)室内機に還気導き部材を設けることは必須ではない。例えば、裏空間に室内機の少なくとも一部が存在する構成とした場合には、室内機の筐体のうち裏空間内に位置する部分に開口部を設け、当該開口部を介して筐体内部の還気RAを筐体外部に放出可能とする構成も考えられる。かかる構成によっても、裏空間に還気RAを導くことができる。なお、この場合、当該開口部が還気導き手段に相当する。
【0123】
(i)空調システムは、1つの階を空調対象とするものに限定されず、建物10全体を空調対象とするものであってもよい。
【0124】
(j)空調システムによっては除湿運転が可能となっているものがある。かかる空調システムでは、除湿運転の際、室内機により冷房用空気を生成する場合があり、その場合、除湿運転時にも空調ダクト等に結露が生じるおそれがある。その際、還気導き部材61,121を用いた上記第1及び第2実施形態によれば、除湿運転時にも空気搬送部材等に結露が生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0125】
10…建物、14~16…居住空間としての居室、22…裏空間としての床下空間、30…空調システム、32…空調装置としての室内機、35…空気通路、41…熱交換部としての熱交換器、42…送風手段としてのファン、51…接続ダクト、52…分岐チャンバ、53~55…空調ダクト、57…ダクト並設部、61…還気導き手段としての還気導き部材、66…調整手段としてのシャッタ、70…制御手段としてのコントローラ、75…温度検出手段としての室温センサ、76…結露検出手段としての結露検出センサ。
図1
図2
図3
図4