(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038127
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】収益用不動産の将来価格予測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20230309BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230309BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145064
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】721000985
【氏名又は名称】株式会社耶馬台コーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】宮地忠継
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収益不動産の価格を周期性あるものとしてとらえ、更に具体的な年次における将来価格を予測するシステムを提供する。
【解決手段】具体的な収益不動産に対応する場合に、まずは物件について、収益不動産売却希望者、仲介者又はコンサルタントが、将来の賃料予測において一定の必要な情報をシステムに入力する。同時に、過去においてのその地域の当該物件と同種の物件の表面利回りの最高値と最低値を入力する。また、不動産価格の周期、求める期限までの年数及び周期における現在の位置を入力する。これらのプロセスを経ることにより当該収益不動産の具体的な将来時点における将来価格予測値を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収益不動産売買の際に一定時期の将来価格を予測するシステムであって、具体的物件に関して収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが不動産のデータベースから来た情報あるいは自身で入力した情報に対し、その物件の賃料水準の一定の変動データおよび最高、最低の表面利回り、周期、周期における現在の位置を入力することにより将来の一定時期の当該物件の予測価格を出力する収益不動産価格予測システム。
【請求項2】
収益不動産価格予測システムは、具体的物件に関して収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはbコンサルタントが不動産のデータベースから来た情報あるいは自身で入力した物件情報に対し、(1)当該地域の賃料動向とそこから出てくる期間終了時の一般的賃料予測(パーセント)(2)当該地域の人口動態による期間終了時における人口予測(パーセント)(3)当該建物劣化による期間終了時におけるそこから出てくる賃料予測(パーセント)と(4)当該地域の最近の過去の最高の表面利回り(パーセント)(5)当該地域の最近の過去の最低の表面利回り(パーセント)(6)当該地域の現在の表面利回り(パーセント)(7)トレンドのサイクル(周期)(年単位)(8)現在の表面利回りの方向性(9)現在のその方向性が始まってからの経過年数を入力することにより、sin関数を活用することにより当該物件の将来の一定時期の予測表面利回り及び予測価格を端末に出力するように構成されているプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
収益用不動産の売買における合理的な将来価格の予測システム
【背景技術】
【0002】
我が国経済の発展とともに、人々の収益用不動産に対する投資意欲が高まっています。この場合物件購入者としては、一定期間後のその物件の市場価格がどうなるかは大変関心の深いところです。特に物件購入に際して金融を受けている場合で、その金融が一定の時期に大きな残価を返済するようなケースでは重大です。もとより不動産の市場価格は種々の予期しない将来の出来事により影響され、何人といえどもその正確な予測はできません。しかしながら、このような予測不可能な要素を除いたレヴェルにおいて一定の合理的な予測はありうるはずです。だがその分野においても従来一定の法則に基づく将来価格の予測の公表されたシステムは見受けられませんでした。物件の表面利回りの上限と下限をシステムが自動的に入力して暦年に応じてそれに微増額を加算していき、それぞれに対応する将来価格と、その中間的な査定値を出すシステムがありました。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】リーウェイズ株式会社のインターネットサイトのGateシステムによる Investment Planner の中の 「区分マンション物件概要と査定表」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在までの収益用不動産の売買市場においては、収益用物件の賃料収入の売買価格に対する比率である表面利回りを過去のデータに基づき引用して、将来の各暦年の表面利回りの上限と下限をシステムが単純な毎年の微増と捉え、そこから中間的な査定値を計算し、このそれぞれの値に対応する物件価格を出すシステムはありましたが、そこでは将来の各暦年の表面利回りについて、単に当初入力された表面利回りの下限値及び上限値について、それぞれを1年ごとに微増するだけで、同時にその中間値を出していました。ここより出てくる将来の収益不動産価格は、単に表面利回りの下限値(過熱状態)に基づく最高価格と、表面利回りの上限値(停滞状態)に基づく最低価格が出るだけで、査定額として出されている価格はその中間的な価格にすぎません。ところが不動産市場は種々の事情が重なって、一定の周期性を持って動いており、賃料の変動は少額なのでその時々の表面利回りそのものが周期性を持って動いています。問題はその周期性をとらえることであり、単に過去の下限値や上限値をベースにして表面利回りやあるいはその結果の算定価格を把握しても実態には近づかない。その中間値を出しても意味が無いし、また表面利回りの下限値と上限値に基づく不動産価格をだせば、正解はそういう下限値と上限値を前提とすれば当然にその範囲の中にある事になります。しかしそれがどういう数字になるかという事が本当の論点です。そこで本発明は収益不動産の価格を周期性あるものとしてとらえ、更に具体的な年次における将来価格を予測しようとするシステムを提供することを目的とします。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明によれば、具体的な収益不動産に対応する場合に、まずは物件について収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが将来の賃料予測において一定の必要な情報をシステムに入力する。同時に過去においてのその地域の当該物件と同種の物件の表面利回りの最高値と最低値を入力する。また不動産価格の周期を入力する。また求める期限までの年数を入力する。そして周期における現在の位置を入力する。これらのプロセスを経ることにより当該収益不動産の具体的な将来時点における将来価格予測値を算出できることを見出し、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は収益不動産売買の際に一定時期の将来価格を予測するシステムであって、具体的物件に対して収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが不動産のデータベースから来た情報あるいは自身で入力した情報に対し、その物件の賃料水準の一定の変動データおよび最高、最低の表面利回り、周期、周期における現在の位置を入力することにより将来の一定時期の当該物件の予測価格を出力する収益不動産価格予測システムであり、更に具体的には具体的物件に関して収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが不動産のデータベースから来た情報あるいは自身で入力した物件情報に対し、(1)当該地域の賃料動向とそこから出てくる期間終了時の一般的賃料予測(パーセント)(2)当該地域の人口動態による期間終了時における人口予測(パーセント)(3)当該建物劣化による期間終了時におけるそこから出てくる賃料予測(パーセント)と(4)当該地域の最近の過去の最高の表面利回り(パーセント)(5)当該地域の最近の過去の最低の表面利回り(パーセント))6)当該地域の現在の表面利回り(パーセント)(7)トレンドのサイクル(周期)(年単位)(8)現在の表面利回りの方向性(9)現在のその方向性が始まってからの経過年数を入力することにより、sin関数を活用することにより当該物件の将来の一定時期の予測表面利回り及び予測価格を端末に出力するように構成されているプログラムである。
ここで本願の用語を説明します。
表面利回り: 収益用賃貸物件の1年間の全収入の物件価格に対する割合。 1年間の全収入をこの表面利回りで除することにより物件価格を出すこともできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば収益不動産の価格を周期性あるものとしてとらえ、更に具体的な年次における将来価格を予測しようとするシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は収益不動産物件の賃料の表面利回りと経過年数の関係を表した座標図を示している。
【
図2】
図2は
図1の座標図において、対象物件の現在位置と、予測価格を求める時点の位置を示している。
【
図3】
図3は本発明の全体構成で、プログラムを処理するサーバとネットワークを通じて入出力する情報処理端末を示している。
【
図4】
図4は具体的な物件について収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントがサーバ100における予測価格計算プログラムを稼働させ、データベースからの引用データまたは自身で入力したデータを対象として、対象物件の予測価格を計算させる処理を示したシーケンス図である。。
【
図5】
図5はデータベースからの引用の場合の入力画面
【
図7】
図7は期日における表面利回り及び予測価格の出力画面
【発明を実施するための形態】
【0008】
先ず本発明についての中心的概念である『周期』について説明します。結論的にはこの『周期』はプログラム的にはシステムの利用者が自由に入れられますが、当分の間は17年を使う事を強制します。以下その理由を述べます。我が国の不動産市場は1973年の日本列島改造論の影響によるピーク、その後落ち込み再び1990年のバブル経済によるピーク、そしてその後の落ち込み後2008年のリーマンショック前の大回復とここ50年程は17年の周期をつけています。そして現在はオリンピック後でもあるにもかかわらず、まだ不動産価格は落ちておらず、一部の有力意見によると2025年がピークでその後急速に落ち込むとされています。その意味で17年周期説は維持されていると考えられます。これは別な角度よりの考察をすれば、不動産・建設にとって理屈のあることのようにも見えます。つまり不動産・建設は景気が良くなってくると一気に建設に走るが、その間2、3年を要し、物件が市場に出る頃はもうピークを過ぎて、そこにおける供給過剰のために一気に下落を促進させる。市場淘汰が進むと物件不足のためにまた徐々に価格が高騰しだし再びピークに至るというもので、この間はそれほど短いものでは無く、17年前後かかるというものです。これらを根拠に出願者は17年周期説を取っています。しかしこれは絶対ではなく、ある段階でもし周期に対する見方が世間全体で変わり、それが正当性を持った時はその数字を入力すればよいと考えます。その意味で『周期』は入力可能にしてあるのであり、恣意的に入力してよいものとは考えておりません。
【0009】
ここに前段の『周期』説をとると『周期』と言うものの持つ特色、つまり波動性について着目することになります。一定の周期があるとき、それを表しているのは波動であり、それはsin関数と考えます。つまり不動産価格の周期はsin関数でとらえられるのであり、具体的にはX軸には時間(年数)Y軸には表面利回りを表現すればよいことになります。Y = sinXと言う形になります。
【0010】
ここでまず当該物件の期限における賃料水準を考えます。これは物件選択時の賃料水準に対して(1)当該地域の賃料動向とそこから出てくる期間終了時の一般的賃料予測(パーセント)(2)当該地域の人口動態による期間終了時における人口予測(パーセント)(3)当該建物劣化による期間終了時におけるそこから出てくる賃料予測(パーセント)についてこの(1)、(2)、(3)を全部乗算します。そしてこの(1)、(2)、(3)は地域における現状の調査、行政のデータ、リフォームと長期修繕計画等の一般的データおよびシステム利用者の判断によるデータとなります。この計算による賃料の将来水準が出ればこれに戸数と12か月を乗ずることにより当該物件の期限における年間賃料収入を得ることができます。この期限における年間賃料水準をその時の表面利回りで除することにより物件価格は出ます。
【0011】
さて期限における表面利回りをシステムがいかに計算するかですが、ここにおいてこのsin関数を現実の不動産市場に合わせるため若干の修正が必要になります。表面利回りの最高値をA(パーセント)、最低値をB(パーセント)とします。物件の将来価格を求めたい時期までの期間をC(年数)とします。sin関数は単純にはY軸の1とー1の間で波動を描いて展開します。この波動の高さは2です。Y軸のAとBとの間の大きさでこの関数に波動を描かせるためには関数は拡大されY = (AーB)/2sinXとなります。更にこの関数がY軸のA点とB点との間で波動を描かねばなりませんから関数はY = (AーB)/2sinX + (AーB)/2 +Bとなります。これでこの関数の表す波動はきれいにY軸のAとBとの間で展開します。
X軸の数値は通常はπ(パイ)で表します。sin関数の周期は2πです。そこで本プログラムの周期は17年なので1年は2π/17となります。関数は当初の初期(つまりX = 0 (つまりY = (AーB)/2+B ) から出発して17年の周期を展開します。出発点よりπ/2年経過して表面利回りの最高値、つまり物件価格の最低値と言うことになります。この後はX軸の年数がたつごとにY軸の表面利回りは下がり(つまり価格は上がり)、X軸が3/2πになった時に表面利回りは最低値のBになります。(つまり価格は最高値)。 この後は今度は表面利回りは上がっていくのであり(つまり価格が下落)17年で(つまり2π)で当初の表面利回り(つまり当初の価格)になります。この事を勘案、本プログラムでは現在物件価格が上昇を初めて何年か、あるいは下降を始めて何年かを入力させています。この数字により座標軸上の位置が定まり、その後の予測時期までの年数(C)をX軸で加えることによりsin関数によりY軸の数字が出ます。その数字から価格が出ます。
図1ご参照
【0012】
本発明の重要なポイントである具体的な現在時点の決め方、および期限における処置について少し詳しく説明します。本システムの利用者が、その利用者及び対象物件が今まで述べてきた周期のグラフのどこにいるのかは、なかなか分かりにくいところでありますが、本発明では、物件相場が上がり始めて何年目か(表面利回りが下がり始めて何年目か)、あるいは下がり始めて何年目か(表面利回りが上がり始めて何年目か)という事を外部入力させる事にしました。それは、こういう数字ならば、利用者が感覚的に掴みやすいと考えたからです。そして、相場が上がり始める最初の地点はグラフ上の最高点、つまりX軸のπ/2点です。こうすれば出発点が定まり、それより何年後かははっきりと決まります(P点)。この後期限までの年数(C)をX軸で1年を2π/17として加算すれば (F点) おのずとその時の表面利回りは出ます。物件相場が下がり始めている状況のもとでは、同様にして現時点が下がり始めて何年目かを入れれば、下がり始の地点(X軸の3/2π点)からの年数が決まり現時点が決まります。この後は同様に現時点に対して期限までの年数を加算すれば、予測すべき時点の表面利回りが出ます。
図2ご参照
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する
【0014】
図1、
図2については11段落、12段落で説明しました。
【0015】
図3は本発明の実施形態にかかわるサーバ100を含むネットワークの構成を示した構成図である。サーバ100はインターネット等の通信ネットワークを介して、複数の情報処理端末200のそれぞれと通信可能に接続されている。サーバ100は情報処理端末200を通じて物件の売り手(収益不動産売却希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントにより設定された不動産物件情報につき情報処理端末200を操作する物件の買い手(収益不動産購入希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントに提供し、本システムを動かしていく。
【0016】
サーバ100は一般的なコンピューターとしての構成を有する。すなわちサーバ100はCPUまたはGPUとして使われるプロセッサ101と、DRAM等によって構成されデータやプログラムを一時的に記憶するメモリ105と、物件の売り手(収益不動産売却希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントまたは買い手(収益不動産購入希望者)もしくは仲介者もしくはコンサルタントとの間で情報のやり取りを行う入出力インターフェイス121と、有線または無線の通信を制御する通信インターフェイス122と、磁気ディスクまたはフラッシュメモリ等によって構成されデータやプログラムを記憶するストレージ130とを備える。プロセッサ101はストレージ130に記憶されているデータやプログラムをメモリに呼び込んで当該プログラムに含まれている命令を実行する。
【0017】
入出力インターフェイス121はキーボード、マウス、カメラ等により構成され、通信インターフェイス122はネットワークアダプター、各種の通信ソフトウェアー等によって構成される。
【0018】
本実施形態においてストレージ130はデータベースを格納しており、本システム運用者が今までの不動産取引で作成した情報データベース133を持つ。
【0019】
図4は収益不動産売却希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタント又は収益不動産購入希望者もしくは仲介者もしくはコンサルタントが本システムにより予測価格を計算する場合のシーケンス図です。本プログラムが稼働するときは2つの場合があります。一つはすでにサーバーに入っている不動産取引のデータです。もう一つはこのプログラムだけで直接データを入れる場合です。シーケンス図では、すでに入っている場合も表現するため、その状況も書きました。
【0020】
図5はデータベースからの引用の場合の入力画面です。物件番号を入力し、一定期間後の予測価格をシステムに計算させるデータを入力します。
【0021】
図6は直接データ入力の場合の入力画面です。「物件価格」、「期間(期限までの期間)」、「現在賃料」、「戸数」を入力し、一定期間後の予測価格をシステムに計算させるデータを入力します。
【0022】
図7は期日における表面利回り及び予測価格の出力画面です。物件番号入力により既に蓄積されているデータベースより対象物件を引用してきたときは、そこに保存されている当事者が任意に入力した期日における金融残高の数字である残価金額も出力されます。