(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038153
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】工具用ソケット
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
B25B21/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080390
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021144922
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(71)【出願人】
【識別番号】520125944
【氏名又は名称】優鋭有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】長船 勝己
(72)【発明者】
【氏名】坪野 直樹
(57)【要約】
【課題】容易に組み立てることができる工具用ソケットを提供する。
【解決手段】工具用ソケットは、外側部材と、内側部材と、外側部材内において内側部材を軸方向における一方側に向かって付勢する付勢部材と、内側部材に保持される係止部とを備える。外側部材は、アウターソケット部と、付勢部材を収容する収容部と、アウターソケット部と収容部との間において内側に突出する突出部とを有する。内側部材は、インナーソケット部と、インナーソケット部から突出部の内側を通って収容部まで延びる保持部とを有する。保持部において突出部より上記軸方向における他方側に貫通孔が形成されている。係止部は、保持部の貫通孔に挿入された挿入部と、挿入部の一部が保持部の外周面から外側に突出するように挿入部を保持部の内周面側から支持する弾性部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向における一方側の端面が開口した筒状の外側部材と、
前記軸方向に移動できるように前記外側部材の前記一方側の端部に挿入された筒状の内側部材と、
前記外側部材内において前記内側部材よりも前記軸方向における他方側に設けられ、かつ前記内側部材を前記一方側に向かって付勢する付勢部材と、
前記外側部材内において前記内側部材に保持される係止部と、を備え、
前記外側部材は、前記一方側の端部に設けられた中空状のアウターソケット部と、前記アウターソケット部よりも前記他方側において前記付勢部材を収容する中空状の収容部と、前記軸方向において前記アウターソケット部と前記収容部との間に設けられかつ前記外側部材の径方向において前記アウターソケット部の内周面および前記収容部の内周面に対して内側に突出する突出部とを有し、
前記内側部材は、前記アウターソケット部内に位置付けられる中空状のインナーソケット部と、前記インナーソケット部から前記径方向における前記突出部の内側を通って前記収容部まで延びる筒状の保持部とを有し、
前記保持部において前記突出部よりも前記他方側に、前記保持部の径方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記係止部は、前記保持部の径方向に移動できるように前記貫通孔に挿入された挿入部と、前記保持部の径方向において前記挿入部の一部が前記保持部の外周面から外側に突出するように、かつ前記挿入部によって前記保持部の径方向における内側に向かって押されることによって弾性変形するように、前記挿入部を前記保持部の内周面側から支持する弾性部とを有し、
前記外周面から外側に突出した前記挿入部の前記一部が前記外側部材の前記突出部に係止されることによって、前記外側部材の前記一方側から前記内側部材が抜け落ちることが防止される、工具用ソケット。
【請求項2】
前記弾性部は、前記保持部の内周面に沿って弧状に湾曲しかつ前記保持部の内周面側において前記保持部に保持されている、請求項1に記載の工具用ソケット。
【請求項3】
前記保持部の内周面には前記弾性部を収容する溝が形成されており、
前記貫通孔は、前記保持部の前記外周面と前記溝とを連通するように形成されている、請求項1または2に記載の工具用ソケット。
【請求項4】
前記挿入部および前記弾性部は、互いに別個の部材からなる、請求項1または2に記載の工具用ソケット。
【請求項5】
前記挿入部は、球状部材からなる、請求項4に記載の工具用ソケット。
【請求項6】
前記挿入部および前記弾性部は、一体形成されている、請求項1または2に記載の工具用ソケット。
【請求項7】
前記弾性部は、前記軸方向から見て、C字形状またはリング形状を有している、請求項1または2に記載の工具用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトおよびナット等の締め付けを行うために、インパクトドライバーおよびインパクトレンチ等の電動工具が用いられている。電動工具を用いてボルト等の締め付けを行う際には、電動工具に種々の工具用ソケットが取り付けられる。このようなソケットとして、径の異なる2つの保持部(ボルト等を保持する部分)を有するソケットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたソケットは、大径のナットを保持する第1の保持部を有する外側部材と、小径のナットを保持する第2の保持部を有する内側部材とを備えている。第1の保持部は、外側部材の軸方向における一方側の端部に設けられている。外側部材の軸方向における他方側の端部は、ビットを挿入できるように構成されている。外側部材は、当該ビットを介して、インパクトドライバー等の電動工具に取り付けられる。
【0004】
内側部材は、外側部材の軸方向に移動できるように、外側部材に収容されている。外側部材内において、上記他方側の端部と内側部材との間に、付勢部材が設けられている。付勢部材は、内側部材を、外側部材の軸方向における一方側に向かって付勢している。内側部材に外部から力が作用していない状態では、付勢部材によって、内側部材の第2の保持部が外側部材の第1の保持部の内側に位置付けられる。
【0005】
特許文献1のソケットを用いて小径のナットを締め付ける場合には、第2保持部にナットを保持させる。一方、大径のナットを締め付ける場合には、内側部材を外側部材の軸方向における他方側に押し込んで第1の保持部の内周面を露出させて、第1の保持部にナットを保持させる。
【0006】
このように、特許文献1のソケットでは、外側部材に対する内側部材の位置を調整することによって、径の異なる2つのナットの締め付けを行うことができる。この場合、径の異なる2つのナットの締め付けを行うに際して、電動工具に対するソケットの取り外しおよび取り付けの手間を省くことができるので、作業効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような外側部材および内側部材を備えたソケットでは、内側部材が外側部材から抜け落ちることを防止する必要がある。そこで、特許文献1のソケットでは、外側部材の内周面に設けられた凹部に円環部材が嵌め込まれている。また、内側部材の先端部の外周面に、外側部材側に突出する膨出部が設けられている。このような構成により、内側部材の膨出部が円環部材に係止されることによって、内側部材が外側部材から抜け落ちることを防止することができる。
【0009】
ところで、特許文献1のソケットでは、内側部材を外側部材に嵌め込む際には、外側部材の内周面の凹部に円環部材を嵌め込んだ状態で、内側部材の先端部によって円環部材を押し広げつつ、円環部材に内側部材を通す必要がある。しかしながら、外側部材の内周面の凹部に円環部材を適切に嵌め込むことは容易ではなく、手間がかかる。
【0010】
そこで、本発明は、容易に組み立てることができる工具用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の工具用ソケットを要旨とする。
【0012】
(1)軸方向における一方側の端面が開口した筒状の外側部材と、
前記軸方向に移動できるように前記外側部材の前記一方側の端部に挿入された筒状の内側部材と、
前記外側部材内において前記内側部材よりも前記軸方向における他方側に設けられ、かつ前記内側部材を前記一方側に向かって付勢する付勢部材と、
前記外側部材内において前記内側部材に保持される係止部と、を備え、
前記外側部材は、前記一方側の端部に設けられた中空状のアウターソケット部と、前記アウターソケット部よりも前記他方側において前記付勢部材を収容する中空状の収容部と、前記軸方向において前記アウターソケット部と前記収容部との間に設けられかつ前記外側部材の径方向において前記アウターソケット部の内周面および前記収容部の内周面に対して内側に突出する突出部とを有し、
前記内側部材は、前記アウターソケット部内に位置付けられる中空状のインナーソケット部と、前記インナーソケット部から前記径方向における前記突出部の内側を通って前記収容部まで延びる筒状の保持部とを有し、
前記保持部において前記突出部よりも前記他方側に、前記保持部の径方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記係止部は、前記保持部の径方向に移動できるように前記貫通孔に挿入された挿入部と、前記保持部の径方向において前記挿入部の一部が前記保持部の外周面から外側に突出するように、かつ前記挿入部によって前記保持部の径方向における内側に向かって押されることによって弾性変形するように、前記挿入部を前記保持部の内周面側から支持する弾性部とを有し、
前記外周面から外側に突出した前記挿入部の前記一部が前記外側部材の前記突出部に係止されることによって、前記外側部材の前記一方側から前記内側部材が抜け落ちることが防止される、工具用ソケット。
【0013】
(2)前記弾性部は、前記保持部の内周面に沿って弧状に湾曲しかつ前記保持部の内周面側において前記保持部に保持されている、上記(1)に記載の工具用ソケット。
【0014】
(3)前記保持部の内周面には前記弾性部を収容する溝が形成されており、
前記貫通孔は、前記保持部の前記外周面と前記溝とを連通するように形成されている、上記(1)または(2)に記載の工具用ソケット。
【0015】
(4)前記挿入部および前記弾性部は、互いに別個の部材からなる、上記(1)から(3)のいずれかに記載の工具用ソケット。
【0016】
(5)前記挿入部は、球状部材からなる、上記(4)に記載の工具用ソケット。
【0017】
(6)前記挿入部および前記弾性部は、一体形成されている、上記(1)から(3)のいずれかに記載の工具用ソケット。
【0018】
(7)前記弾性部は、前記軸方向から見て、C字形状またはリング形状を有している、上記(1)から(6)のいずれかに記載の工具用ソケット。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容易に組み立てることができる工具用ソケットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、
図1は、本発明の一実施形態に係る工具用ソケットおよび当該工具用ソケットが取り付けられるインパクトレンチを示す図である。
【
図4】
図4は、外側部材および内側部材を示す断面図である。
【
図6】
図6は、内側部材を外側部材内に押し込んだ状態のソケットを示す断面図である。
【
図7】
図7は、内側部材の外側部材への挿入方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係るソケットを示す断面図である。
【
図11】
図11は、弾性部材のその他の例およびそれを備えたソケットを示す図である。
【
図12】
図12は、本発明のその他の実施形態に係るソケットを示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明のさらに他の実施形態に係るソケットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る工具用ソケットは、インパクトレンチおよびインパクトドライバー等の公知の電動工具に取り付けて用いられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る工具用ソケットおよび当該工具用ソケットが取り付けられるインパクトレンチを示す図である。
【0022】
(インパクトレンチの構成)
まず、インパクトレンチ100について説明する。
図1に示すように、インパクトレンチ100は、本体部102およびドライブ角104を有している。図示は省略するが、本体部102内には、ドライブ角104を回転駆動するためのモータが設けられている。ドライブ角104は、角柱形状を有している。また、ドライブ角104には、貫通孔104aが形成されている。貫通孔104aには、工具用ソケット10をドライブ角104に連結するためのピン200(後述の
図2(b)参照)が挿入される。ドライブ角104に連結された工具用ソケット10は、ドライブ角104が回転することで回転する。なお、インパクトレンチ100としては、公知の種々のインパクトレンチを用いることができるので、インパクトレンチ100の詳細な説明は省略する。
【0023】
(工具用ソケットの構成)
次に、本発明の一実施形態に係る工具用ソケット10(以下、ソケット10と略記する。)について詳細に説明する。
図2は、ソケット10を示す図であり、(a)はソケット10の外観を示す図であり、(b)は(a)のb-b部分を示す断面図である。また、
図3は、ソケット10の分解図である。
【0024】
図2および
図3に示すように、ソケット10は、外側部材12と、内側部材14と、付勢部材16と、係止部18とを備えている。なお、
図2および
図3、ならびに後述の
図4、
図6~
図8、および
図11~
図13においては、外側部材12の軸方向を矢印Xで示している。以下においては、外側部材12の軸方向を、軸方向Xと記載する。
【0025】
図4は、外側部材12および内側部材14を示す断面図である。
図2および
図4に示すように、外側部材12は、軸方向Xにおける一方側の端面および他方側の端面が開口した中空かつ略円筒形状を有している。外側部材12は、アウターソケット部20と、連結部22と、収容部24と、突出部26とを有している。
【0026】
アウターソケット部20は、軸方向Xにおける外側部材12の一方側の端部に設けられている。アウターソケット部20は、軸方向Xに直交する断面において多角形状を有する内周面20aを有している。本実施形態では、内周面20aによって、図示しない締め付け部材(ボルト、ナット等)を保持することができる。
【0027】
連結部22は、軸方向Xにおける外側部材12の他方側の端部に設けられている。連結部22には、差込口22a、溝22b、および一対の貫通孔22cが形成されている。差込口22aは、軸方向Xにおいて外側部材12の他方側に向かって開口するように形成されている。本実施形態では、差込口22aは、断面矩形状を有している。
【0028】
溝22bは、連結部22の外周面に形成されている。溝22bは、差込口22aの外側を囲むように環状に形成されている。一対の貫通孔22cは、外側部材12の径方向に延びるように形成されている。各貫通孔22cの一端は差込口22aにおいて開口し、他端は溝22bにおいて開口している。一対の貫通孔22cは、外側部材12の径方向において、差込口22aを間に挟んで互いに対向するように形成されている。なお、本明細書において外側部材12の径方向とは、軸方向Xに直交する方向を意味する。
【0029】
図1に示すように、溝22bには、Oリング202が嵌め込まれる。
図1および
図2に示すように、ソケット10をインパクトレンチ100に取り付ける際には、インパクトレンチ100のドライブ角104を、ソケット10の差込口22aに差し込むとともに、Oリング202の一部を溝22bからずらして貫通孔22cを露出させる。その状態で、ソケット10の一対の貫通孔22cおよびドライブ角104の貫通孔104aにピン200を差し込む。その後、Oリング202の上記一部を溝22bに嵌め込み、貫通孔22cを塞ぐ。これにより、ドライブ角104およびソケット10からのピン200の抜け落ちが防止され、ソケット10とインパクトレンチ100とが連結される。なお、ソケット10をインパクトレンチ100から取り外す際には、Oリング202の一部を溝22bからずらして貫通孔22cを露出させてピン200を取り出せばよい。これにより、ソケット10とドライブ角104との連結が解除され、インパクトレンチ100からソケット10を取り外すことができる。
【0030】
図2および
図4に示すように、収容部24は、中空形状を有し、軸方向Xにおいてアウターソケット部20よりも他方側に設けられている。本実施形態では、収容部24は、軸方向Xにおいてアウターソケット部20と連結部22との間に設けられている。収容部24には、付勢部材16が収容されている。
【0031】
突出部26は、軸方向Xにおいてアウターソケット部20と収容部24との間に設けられている。突出部26は、外側部材12の径方向において、アウターソケット部20の内周面20aおよび収容部24の内周面24aに対して内側に突出するように設けられている。
図4に示すように、本実施形態では、突出部26の内周面は、軸方向Xにおける一方側から他方側に向かって順に設けられたテーパー面26a、円筒面26bおよびフランジ面26cを有している。テーパー面26aは、軸方向Xにおける他方側に向かって直径が漸次減少するように形成されている。円筒面26bは、テーパー面26aから軸方向Xにおける他方側に向かって延びるように、かつ略均一な直径を有するように形成されている。フランジ面26cは、円環形状を有し、円筒面26bから外側部材12の径方向外側に向かって延びるように形成されている。
【0032】
図2に示すように、内側部材14は、軸方向Xにおける外側部材12の一方側の端部に挿入されている。内側部材14は、軸方向Xに移動できるように外側部材12内に挿入されている。
図2および
図4に示すように、内側部材14は、インナーソケット部40と、保持部42とを有している。
【0033】
図2に示すように、インナーソケット部40は、中空形状を有し、アウターソケット部20内に位置付けられている。
図2および
図4に示すように、インナーソケット部40は、軸方向Xに直交する断面において多角形状を有する内周面40aを有している。本実施形態では、内周面40aによって、図示しない締め付け部材(ボルト、ナット等)を保持することができる。
【0034】
本実施形態では、軸方向Xにおいて、インナーソケット部40の長さは、アウターソケット部20の長さよりも小さい。インナーソケット部40の外周面40bは、アウターソケット部20の内周面20aに対応する多角形状を有している。インナーソケット部40の外径(外周面40bに外接する仮想円の直径)は、アウターソケット部20の内径(内周面20aに外接する仮想円の直径)よりも小さい。このような構成により、インナーソケット部40は、アウターソケット部20内において軸方向Xに移動することができる。また、インナーソケット部40は、アウターソケット部20と一体回転することができる。
【0035】
保持部42は、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成され、かつインナーソケット部40から突出部26の内側(外側部材12の径方向における内側)を通って収容部24まで延びるように設けられている。
図2~
図4に示すように、保持部42には、一対の貫通孔42aおよび溝42bが形成されている。
図2に示すように、一対の貫通孔42aおよび溝42bは、軸方向Xにおいて突出部26よりも他方側に位置付けられている。なお、本実施形態では、軸方向Xにおける突出部26よりも他方側において、後述する球状部材80が保持部42から外側に突出できるように、貫通孔42aの少なくとも一部が軸方向Xにおいて突出部26よりも他方側に形成される。したがって、
図2に示す状態において、貫通孔42aの一部が、軸方向Xにおいて突出部26の他方側の端よりも一方側に位置していてもよい。同様に、
図2に示す状態において、溝42bの一部が、軸方向Xにおいて突出部26の他方側の端よりも一方側に位置していてもよい。本実施形態では、軸方向Xにおける貫通孔42aの中心が、軸方向Xにおいて突出部26よりも他方側に位置付けられている。同様に、軸方向Xにおける溝42bの中心が、軸方向Xにおいて突出部26よりも他方側に位置付けられている。
【0036】
図2~
図4に示すように、各貫通孔42aは、保持部42を、保持部42の径方向に貫通するように設けられている。本実施形態では、一対の貫通孔42aは、保持部42の径方向において互いに対向するように形成されている。
図2および
図4に示すように、溝42bは、保持部42の内周面42cに形成されている。本実施形態では、溝42bは、保持部42の周方向に沿うように環状に形成されている。本実施形態では、各貫通孔42aの一端側(内周面42c側)は、溝42bにおいて開口している。すなわち、各貫通孔42aは、保持部42の外周面42dと溝42bとを連通するように形成されている。なお、本明細書において保持部42の径方向とは、保持部42の軸方向に直交する方向を意味する。本実施形態では、保持部42の軸方向は外側部材12の軸方向Xに一致する。したがって、保持部42の径方向と外側部材12の径方向とは一致する。
【0037】
図2に示すように、付勢部材16は、軸方向Xにおいて内側部材14よりも他方側に位置するように、かつ内側部材14を軸方向Xにおける一方側に向かって付勢するように、収容部24に収容されている。付勢部材16は、軸方向Xに伸縮可能に構成されている。本実施形態では、付勢部材16として、コイルばねが用いられている。付勢部材16の軸方向Xにおける一端部は、保持部42の先端部(軸方向Xにおける他方側の端部)に支持され、付勢部材16の軸方向Xにおける他端部は、収容部24の内面に支持されている。
【0038】
係止部18は、外側部材12内において内側部材14の保持部42に保持されている。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、係止部18は、一対の球状部材80と、弾性部材82とを有する。
【0039】
図2に示すように、一対の球状部材80は、一対の貫通孔42aにそれぞれ挿入されている。本実施形態では、各球状部材80は、保持部42の径方向に移動できるように、貫通孔42aに挿入されている。球状部材80は、例えば、金属によって構成される。本実施形態では、球状部材80が挿入部に対応する。
【0040】
図5は、弾性部材82を示す図であり、(a)は弾性部材82を軸方向Xから見た図であり、(b)は弾性部材82を保持部42の径方向外側から見た図である。
図2および
図5に示すように、弾性部材82は、保持部42の内周面42cに沿って弧状に湾曲し、かつ内周面42c側において保持部42に保持されている。本実施形態では、弾性部材82は、C字形状を有している。本実施形態では、弾性部材82は、弾性変形可能な材料(例えば、金属)によって構成されたC字状の板ばねである。弾性部材82には、一対の貫通孔82aが形成されている。
【0041】
図2に示すように、弾性部材82は、内側部材14の溝42bに嵌められている。弾性部材82は、保持部42の径方向において各球状部材80の一部が保持部42の外周面42dから外側に突出するように、各球状部材80を保持部42の内周面42c側から支持している。本実施形態では、保持部42の外周面42dから外側に突出した各球状部材80の一部が内側部材14の突出部26のフランジ面26cに係止されることによって、軸方向Xにおける内側部材14の一方側への移動が規制される。これにより、軸方向Xにおける外側部材12の一方側から内側部材14が抜け落ちることが防止される。本実施形態では、弾性部材82が弾性部に対応する。
【0042】
本実施形態では、保持部42の一対の貫通孔42aと弾性部材82の一対の貫通孔82aとがそれぞれ保持部42の径方向において対向するように、溝42bに弾性部材82が嵌められている。言い換えると、一対の貫通孔42aと一対の貫通孔82aとがそれぞれ互いに連通するように、溝42bに弾性部材82が嵌められている。これにより、貫通孔42aに挿入された球状部材80の一部を、貫通孔82a内に嵌めることができる。この場合、球状部材80を介して保持部42と弾性部材82とが互いに係止される。これにより、保持部42に対して弾性部材82が保持部42の周方向に移動することを防止することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、貫通孔82aの直径は、球状部材80の直径よりも小さい。これにより、球状部材80が、貫通孔42aから貫通孔82aを介して保持部42内に抜け落ちることを防止することができる。また、本実施形態では、収容部24の内周面24aと保持部42の外周面42dとの距離(外側部材12の径方向における距離)は、球状部材80の直径よりも小さい。これにより、球状部材80が、貫通孔42aから内周面24aと外周面42dとの隙間を介して収容部24内に抜け落ちることを防止することができる。
【0044】
上述したように、本実施形態に係るソケット10では、付勢部材16が内側部材14を軸方向Xにおける一方側に向かって付勢している。このため、内側部材14に対して外部から力が加えられていない場合には、
図2に示すように、内側部材14は、球状部材80が外側部材12の突出部26に係止される位置に位置付けられる。この状態では、インナーソケット部40の一部がアウターソケット部20から突出し、アウターソケット部20の内周面20aは露出していない。このため、アウターソケット部20およびインナーソケット部40のうち、インナーソケット部40のみの使用が可能となる。
【0045】
一方、
図6に示すように、インナーソケット部40(内側部材14)を軸方向Xにおける他方側に押し込むことによって、アウターソケット部20の内周面20aを露出させることができる。これにより、アウターソケット部20の使用が可能になる。このように、本実施形態に係るソケット10では、インナーソケット部40(内側部材14)を軸方向Xに移動させることによって、アウターソケット部20およびインナーソケット部40を選択的に使用することができる。
【0046】
次に、内側部材14の外側部材12への挿入方法について説明する。
図7は、内側部材14の外側部材12への挿入方法を説明するための図である。
【0047】
図7(a)に示すように、内側部材14を外側部材12に挿入する際には、まず、保持部42の一対の貫通孔42aと弾性部材82の一対の貫通孔82aとが保持部42の径方向において対向するように、溝42bに弾性部材82が嵌められる。その状態で、一対の貫通孔42aにそれぞれ球状部材80を挿入する。なお、球状部材80が貫通孔42aから抜け落ちることを防止するために、例えば、貫通孔42aにグリス等を塗布することが好ましい。
【0048】
次に、
図7(b),(c)に示すように、外側部材12に内側部材14を挿入する。具体的には、内側部材14の保持部42を、突出部26の内側を通過させつつ収容部24内に挿入する。この際、各球状部材80は、保持部42の貫通孔42aに保持された状態を維持しつつ、突出部26によって保持部42の径方向内側に向かって押される。具体的には、各球状部材80は、テーパー面26aおよび円筒面26bに沿って保持部42の径方向内側に向かって移動する。これにより、各球状部材80が弾性部材82を保持部42の径方向内側に向かって押し、弾性部材82が弾性変形する。
【0049】
一対の球状部材80が円筒面26bよりも軸方向Xにおける他方側に移動すると、
図2(b)に示すように、一対の球状部材80は、弾性部材82に押されることによって、保持部42の径方向外側に向かって移動する。これにより、保持部42の径方向において各球状部材80の一部が保持部42の外周面42dから外側に突出する。球状部材80の一部が外周面42dから外側に突出した状態は、弾性部材82によって維持される。
【0050】
(作用効果)
上述したように、本実施形態に係るソケット10では、球状部材80が、保持部42の径方向に移動できるように貫通孔42aに挿入されている。また、貫通孔42aに挿入された球状部材80は、その一部が保持部42の外周面42dから外側に突出するように、保持部42の内周面42c側から弾性部材82によって支持されている。このような構成により、外周面42dから外側に突出した球状部材80の一部が外側部材12の突出部26に係止されることによって、外側部材12から内側部材14が抜け落ちることを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、
図7を用いて説明したように、一対の球状部材80および弾性部材82を保持した内側部材14を外側部材12に挿入することによって、ソケット10を組み立てることができる。ここで、本実施形態では、外側部材12の外側で、一対の球状部材80および弾性部材82を内側部材14に取り付けることができる。この場合、従来のソケットのように外側部材の内周面に円環部材を取り付ける場合(例えば、特許文献1参照)に比べて、ソケット10を容易に組み立てることができる。
【0052】
また、本実施形態では、弾性部材82は、内側部材14の内周面側に取り付けられている。この点について、従来のソケットのように、外側部材の内周面に円環部材を取り付ける場合(例えば、特許文献1参照)、内側部材を外側部材に挿入する際に、円環部材の一部が内側部材によって外側部材の軸方向に押される。このため、円環部材の寸法精度が高くない場合には、円環部材が所定の位置から外れて上記軸方向に押し込まれてしまったり、円環部材が外側部材と内側部材との間で上記軸方向に変形してしまったりするおそれがある。この場合、円環部材の本来の機能(内側部材の抜け落ち防止)を発揮できなくなる。一方、本実施形態では、上記のように、弾性部材82は、内側部材14の内周面側に取り付けられている。この場合、内側部材14を外側部材12に挿入する際に、弾性部材82は、球状部材80によって保持部42の径方向内側に向かって押されるが、内側部材14または外側部材12によって軸方向Xに押し込まれたり、外側部材12と内側部材14との間で軸方向Xに変形したりすることがない。その結果、ソケット10を容易かつ適切に組み立てることができる。
【0053】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、保持部42に一対の挿入部(上述の実施形態では球状部材80)が設けられているが、挿入部の数は2つに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、保持部42の貫通孔42aの数は、挿入部の数に応じて調整すればよい。
【0054】
上述の実施形態では、係止部18が、球状部材80およびC字状の板ばねからなる弾性部材82を有する場合について説明したが、係止部の構成は上述の例に限定されない。
図8は、本発明の他の実施形態に係るソケット10aを示す断面図である。
【0055】
図8に示すように、本実施形態に係るソケット10aが上述のソケット10と異なるのは、係止部18の代わりに係止部18aを備えている点である。係止部18aが係止部18と異なるのは、弾性部材82の代わりに、弾性部材84を備えている点である。
【0056】
図9は、弾性部材84を示す図であり、(a)は弾性部材84を軸方向Xから見た図であり、(b)は弾性部材84を保持部42の径方向外側から見た図である。
図8および
図9に示すように、本実施形態に係るソケット10aでは、弾性部材84として、ねじりばねが用いられている。
【0057】
本実施形態に係るソケット10aにおいても、弾性部材84は、保持部42の径方向において球状部材80の一部が保持部42の外周面42dから外側に突出するように、かつ球状部材80によって保持部42の径方向内側に向かって押されることによって弾性変形するように、球状部材80を保持部42の内周面42c側から支持している。これにより、ソケット10aにおいても、上述のソケット10と同様の作用効果が得られる。
【0058】
なお、
図8および
図9に示すように、ソケット10aでは、弾性部材84は、軸方向Xから見て、一端部および他端部が互いに重なるように形成されている。言い換えると、弾性部材84は、軸方向Xから見てリング形状を有している。しかしながら、弾性部材84の代わりに、
図10に示すような、軸方向Xから見てC字形状を有する弾性部材84aを用いてもよい。なお、
図10において、(a)は弾性部材84aを軸方向Xから見た図であり、(b)は弾性部材84aを保持部42の径方向外側から見た図である。本実施形態では、球状部材80が内側部材14内に抜け落ちることを防止するために、弾性部材84aの一端部と他端部との隙間は、球状部材80の直径よりも小さく設定される。なお、弾性部材として、板ばねおよびねじりばね以外の他のばねを用いてもよい。
【0059】
図10に示した弾性部材84aは、一端部および他端部が軸方向Xに互いにずれた形状を有している。しかしながら、
図11に示すように、一端部および他端部が軸方向Xにずれていない弾性部材84bを用いてもよい。なお、
図11において、(a)は弾性部材84bを軸方向Xから見た図であり、(b)は弾性部材84bを保持部42の径方向外側から見た図であり、(c)は弾性部材84bを取り付けた状態のソケット10aを示す図である。本実施形態では、弾性部材84bとして、C字状のリングばねが用いられる。なお、弾性部材84bの軸方向Xの寸法は、弾性部材84,84aに比べて小さい。したがって、本実施形態では、弾性部材84,84aを用いる場合に比べて、
図11(c)に示すように、溝42bの幅(軸方向Xにおける長さ)が小さく設定される。なお、本実施形態においても、球状部材80が内側部材14内に抜け落ちることを防止するために、弾性部材84bの一端部と他端部との隙間は、球状部材80の直径よりも小さく設定される。
【0060】
上述の実施形態では、挿入部(上述の実施形態では球状部材80)および弾性部(上述の実施形態では弾性部材82,84,84a,84b)が互いに別個の部材からなる場合について説明したが、挿入部および弾性部が一体形成されていてもよい。
図12は、本発明のその他の実施形態に係るソケットを示す図であり、(a)はソケットを示す断面図であり、(b)は(a)のb-b部分を示す断面図である。なお、
図12(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、係止部および保持部のみを示している。
【0061】
図12に示すように、本実施形態に係るソケット10bが上述のソケット10と異なるのは、係止部18の代わりに係止部18bを備えている点である。係止部18bは、一対の棒状部86と、一対の棒状部86を接続するように一対の棒状部86と一体形成された湾曲部88とを備えている。一対の棒状部86および湾曲部88は、金属等の弾性変形可能な材料によって構成されている。本実施形態では、棒状部86が挿入部に対応し、湾曲部88が弾性部に対応する。
【0062】
各棒状部86は、保持部42の径方向に延びるように形成されている。各棒状部86はそれぞれ、保持部42の径方向に移動できるように貫通孔42aに挿入されている。湾曲部88は、保持部42の内周面42cに沿って半円弧状に湾曲するように内周面42c側において保持部42に保持されている。湾曲部88は、保持部42の内周面42cに形成された溝42bに嵌め込まれている。
【0063】
本実施形態においては、軸方向Xにおいて、貫通孔42aの長さは、溝42bの長さよりも大きく、貫通孔42aは、溝42bの一部を切断するように形成されている。本実施形態では、一対の貫通孔42aによって、溝42bが2つの部分に分離されている。なお、本実施形態においても、各貫通孔42aは、保持部42の外周面42dと溝42bとを連通するように形成されている。詳細な説明は省略するが、上述の実施形態においても、貫通孔42aによって溝42bの一部が切断されるように、貫通孔42aおよび溝42bを形成してもよい。
【0064】
本実施形態に係るソケット10bにおいても、湾曲部88は、保持部42の径方向において棒状部86の一部が保持部42の外周面42dから外側に突出するように、かつ棒状部86によって保持部42の径方向内側に向かって押されることによって弾性変形するように、棒状部86を保持部42の内周面42c側から支持している。また、上述のソケット10,10aと同様に、内側部材14が外側部材12に対して軸方向Xにおける一方側に移動することは、保持部42の外周面42dから外側に突出した棒状部86の一部が外側部材12の突出部26に係止されることによって規制される。したがって、ソケット10bにおいても、上述のソケット10,10aと同様の作用効果が得られる。
【0065】
図13は、本発明のさらに他の実施形態に係るソケットを示す図であり、(a)はソケットを示す断面図であり、(b)は(a)のb-b部分を示す断面図である。なお、
図13(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、係止部および保持部のみを示している。
【0066】
図13に示すように、本実施形態に係るソケット10cが上述のソケット10と異なるのは、係止部18の代わりに係止部18cを備えている点である。係止部18cは、球状部材80と、棒状部86と、棒状部86と一体形成された湾曲部88aとを備えている。棒状部86および湾曲部88aは、金属等の弾性変形可能な材料によって構成されている。本実施形態では、球状部材80および棒状部86が挿入部に対応し、湾曲部88aが弾性部に対応する。
【0067】
球状部材80は、保持部42の径方向に移動できるように、一方の貫通孔42aに挿入されている。棒状部86は、保持部42の径方向に延びるように形成されている。棒状部86は、保持部42の径方向に移動できるように他方の貫通孔42aに挿入されている。湾曲部88aは、保持部42の内周面42cに沿って鉤状に湾曲するように内周面42c側において保持部42に保持されている。湾曲部88aは、保持部42の内周面42cに形成された溝42bに嵌め込まれている。
【0068】
なお、上述のソケット10bと同様に、本実施形態に係るソケット10cにおいても、軸方向Xにおける貫通孔42aの長さは、軸方向Xにおける溝42bの長さよりも大きく、貫通孔42aは、溝42bの一部を切断するように形成されている。また、本実施形態においても、各貫通孔42aは、保持部42の外周面42dと溝42bとを連通するように形成されている。
【0069】
本実施形態では、湾曲部88aは、保持部42の径方向において球状部材80の一部および棒状部86の一部が保持部42の外周面42dから外側に突出するように、かつ球状部材80および棒状部86によって保持部42の径方向内側に向かって押されることによって弾性変形するように、球状部材80および棒状部86を保持部42の内周面42c側から支持している。また、内側部材14が外側部材12に対して軸方向Xにおける一方側に移動することは、保持部42の外周面42dから外側に突出した球状部材80の一部および棒状部86の一部が外側部材12の突出部26に係止されることによって規制される。したがって、ソケット10cにおいても、上述のソケット10,10a,10bと同様の作用効果が得られる。
【0070】
上述の実施形態では、外側部材12の連結部22は、インパクトレンチ100のドライブ角104に連結可能に構成されていたが、連結部の構成は上述の例に限定されず、連結部が、他の電動工具に連結可能に構成されていてもよい。例えば、連結部が棒状の接続部材(ドライバービット等)を介してインパクトドライバーに連結可能に構成されていてもよい。なお、連結部の構成としては、インパクトレンチおよびインパクトドライバー等の電動工具に取り付けられる公知のソケットの連結部の構成を利用できるので、詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、容易に組み立てることができる工具用ソケットが得られる。
【符号の説明】
【0072】
10,10a,10b,10c ソケット
12 外側部材
14 内側部材
16 付勢部材
18,18a,18b,18c 係止部
20 アウターソケット部
20a アウターソケット部の内周面
24 収容部
24a 収容部の内周面
26 突出部
40 インナーソケット部
42 保持部
42a 貫通孔
42b 溝
42c 保持部の内周面
42d 保持部の外周面
80 球状部材(挿入部)
82,84,84a,84b 弾性部材(弾性部)
86 棒状部(挿入部)
88,88a 湾曲部(弾性部)