(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038187
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】接合方法及び接合体
(51)【国際特許分類】
B23K 9/23 20060101AFI20230309BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230309BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20230309BHJP
B23K 9/007 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
B23K9/23 H
B23K26/21 G
F16B5/08 A
B23K9/007
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198160
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2019169544の分割
【原出願日】2019-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊原 涼平
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
(57)【要約】
【課題】簡単かつ安価な構成であっても、十分な接合強度を得る。
【解決手段】異なる材料からなる第1金属部材2と第2金属部材3の板状部同士を重ね合わせて接合する方法は、第1金属部材2の板状部6に挿通孔7を形成し、第1金属部材の板状部6と第2金属部材3の板状部11を重ね合わせる第1ステップと、第1金属部材2の板状部6の第2金属部材3とは反対側に、挿通孔7が覆われるようにして第2金属材料3と同一の金属材料からなる第1接合部材4を配置する第2ステップと、第1金属部材2と第2金属部材3の板状部6,11同士を重ね合わせた状態で、第2金属部材3に形成された突起17を、挿通孔7を介して第2金属部材3側から第1金属部材2に挿通する第3ステップと、第1接合部材4と突起17を溶接し、第1金属部材2と第2金属部材3を接合する第4ステップとを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の板状部同士を重ね合わせて接合する方法であって、
前記第1金属部材の板状部と前記第2金属部材の板状部に、重ね合わせた状態で互いに連通する挿通孔をそれぞれ形成する第1ステップと、
前記第1金属部材の板状部の前記第2金属部材とは反対側に、金属材料からなる第1接合部材を配置する第2ステップと、
前記第1金属部材と前記第2金属部材の板状部同士を重ね合わせた状態で、前記第1接合部材と同一の金属材料からなる第2接合部材を、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通する第3ステップと、
前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を前記第1接合部材と前記第2接合部材で接合する第4ステップと、
を含む接合方法。
【請求項2】
前記第2接合部材は、前記第2金属部材側から前記第1接合部材に至る貫通孔を有するものであり、
前記第4ステップでは、前記貫通孔を介して前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第2接合部材は前記挿通孔に挿通される突起を有するものであり、
前記第4ステップでは、前記第1接合部材に前記突起を当接させた状態で、当接部分を溶接する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1接合部材は板状であり、
前記第1金属部材は、前記第1接合部材を保持可能なガイドリブを備え、
前記第2ステップでは、前記ガイドリブにより前記第1接合部材を保持する、請求項2又は3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記第1接合部材は、前記第1金属部材に予め接合される中空筒状であり、
前記第2接合部材は、前記第1接合部材の中心孔に挿通される軸部と、前記挿通孔の横断面形状よりも大きい頭部とを備える、請求項1に記載の接合方法。
【請求項6】
前記第1金属部材はアルミ製であり、前記第2金属部材、前記第1接合部材及び前記第2接合部材は鋼製である、請求項1から5のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第1金属部材は閉断面状に形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記第1金属部材と前記第2金属部材は車体部材である、請求項1から7のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記車体部材はサイドメンバである、請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
異なる材料からなり、互いに重ね合わせられ、重ね合わせた状態で互いに連通する挿通孔をそれぞれ形成された板状部を有する第1金属部材及び第2金属部材と、
前記第1金属部材の板状部の前記第2金属部材とは反対側に配置される、金属材料からなる第1接合部材と、
前記第1接合部材と同一の金属材料からなり、前記第1金属部材と前記第2金属部材の板状部同士を重ね合わせた状態で、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通される第2接合部材と、
を備え、
前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を前記第1接合部材と前記第2接合部材で接合してなる、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる材料で構成された車体部材同士の接合には、次のような接合方法が採用されている。具体的には、アルミ製のサイドメンバと鋼製の骨格部材との接合に、FDS(Flow Drilling Screw、フロードリルスクリュー)やSPR(Self Piercing Rivets、セルフピアスリベット)を使用する接合方法が採用されている(例えば、特許文献1,2参照)。ここに、FDSとは、副資材としてネジを利用して、重ねた被接合材の上部から、ねじを高速回転させながら挿入し、発生する摩擦熱により軟化させた被接合材を機械的に締結する接合方法である。また、SPRとは、重ねた被接合材の上部から、リベットを圧入して上側の被接合材に貫通させ、下側の被接合材でリベットの先端を拡径させることにより被接合材同士を締結する接合方法である。
【0003】
しかしながら、FDSやSPRのいずれであっても、特殊な形状の接合部材(スクリューやリベット)が必要となる。また、これらの接合方法を行うために特別な設備投資を行う必要もある。このため、全体として高価なものとなっている。さらに、接合部材の数を減らしても十分な接合強度が得られるような接合方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120346号公報
【特許文献2】特開2013-2505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単かつ安価な構成であっても、十分な接合強度を得ることができる接合方法及び接合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の板状部同士を重ね合わせて接合する方法であって、前記第1金属部材の板状部と前記第2金属部材の板状部に、重ね合わせた状態で互いに連通する挿通孔をそれぞれ形成する第1ステップと、前記第1金属部材の板状部の前記第2金属部材とは反対側に、金属材料からなる第1接合部材を配置する第2ステップと、前記第1金属部材と前記第2金属部材の板状部同士を重ね合わせた状態で、前記第1接合部材と同一の金属材料からなる第2接合部材を、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通する第3ステップと、前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を前記第1接合部材と前記第2接合部材で接合する第4ステップと、を含む接合方法。
【0007】
これによれば、異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の接合を、同一金属材料からなる第1接合部材と第2接合部材で挟持し、両者を溶接することにより完了することができる。このため、接合部材を特殊な構成とする必要がない上、両者を溶接するだけの設備があればよく、安価に製作することができる。しかも、同一金属材料同士を溶接しているので、接合強度も十分なものとして所望の信頼性を得ることが可能となる。
【0008】
前記第2接合部材は、前記第2金属部材側から前記第1接合部材に至る貫通孔を有するものであり、前記第4ステップでは、前記貫通孔を介して前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接するのが好ましい。
【0009】
これによれば、第2接合部材に形成した貫通孔を介して第1接合部材と第2接合部材の当接部分に直接アクセスすることができる。したがって、貫通孔を介してこの当接部分をアーク溶接により低コストで強固に接合することが可能となる。
【0010】
前記第2接合部材は前記挿通孔に挿通される突起を有するものであり、前記第4ステップでは、前記第1接合部材に前記突起を当接させた状態で、当接部分を溶接するのが好ましい。
【0011】
これによれば、第2接合部材には貫通孔を形成することなく突起を設けることにより第1接合部材に当接させることができる。このため、第1接合部材と第2接合部材の当接部分をスポット溶接により低コストで強固に接合することが可能なる。
【0012】
前記第1接合部材は板状であり、前記第1金属部材は、前記第1接合部材を保持可能なガイドリブを備え、前記第2ステップでは、前記ガイドリブにより前記第1接合部材を保持するのが好ましい。
【0013】
これによれば、板状の第1接合部材をガイドリブによって簡単に脱落しないように保持することができる。
【0014】
前記第1接合部材は、前記第1金属部材に予め接合される中空筒状であり、前記第2接合部材は、前記第1接合部材の中心孔に挿通される軸部と、前記挿通孔の横断面形状よりも大きい頭部とを備えるのが好ましい。
【0015】
これによれば、第1接合部材を配置する作業が不要となり作業性を向上させることができる。
【0016】
前記第1金属部材はアルミ製であり、前記第2金属部材、前記第1接合部材及び前記第2接合部材は鋼製であるのが好ましい。
【0017】
これによれば、内側がアルミニウムからなり、外側が鉄鋼からなる骨格構造を簡単かつ安価に接合することができる。
【0018】
前記第1金属部材は閉断面状に形成されていてもよい。
【0019】
これによれば、閉断面状の第1金属部材であっても、第1接合部材と第2接合部材を使用して第2金属部材を接合することができる。
【0020】
前記第1金属部材と前記第2金属部材は車体部材とすることができる。
【0021】
前記車体部材はサイドメンバであってもよい。
【0022】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、異なる材料からなり、互いに重ね合わせられ、重ね合わせた状態で互いに連通する挿通孔をそれぞれ形成された板状部を有する第1金属部材及び第2金属部材と、前記第1金属部材の板状部の前記第2金属部材とは反対側に配置される、金属材料からなる第1接合部材と、前記第1接合部材と同一の金属材料からなり、前記第1金属部材と前記第2金属部材の板状部同士を重ね合わせた状態で、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通される第2接合部材と、を備え、前記第1接合部材と前記第2接合部材を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を前記第1接合部材と前記第2接合部材で接合してなる、接合体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材を、同一金属材料からなる第1接合部材と第2接合部材によって挟持して溶接することにより接合しているので、特別な設備投資を必要とすることなく、簡単かつ安価に、所望の接合強度を有する接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る接合体を示す概略図である。
【
図4】他の実施形態に係る接合部分を示す断面図である。
【
図5】他の実施形態に係る接合部分を示す断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る接合部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1の用途は限定されるものではないが、車体部材、特に車両のフロントサイドメンバをシャシに接合する場合が挙げられる。
【0027】
接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5(アークリベット)で接合一体化したものである。
【0028】
第1金属部材2はアルミニウム又はアルミニウム合金製(ここでは、アルミニウム6000系の押出材)で、閉断面形状(ここでは、断面矩形状)に形成されて中空筒状となっている。
図2では、第1金属部材2の内部空間は仕切壁2aによって上下に2分割されている。但し、内部空間は分割されていなくてもよいし、3以上に分割されていてもよい。
図1及び
図2は、第1金属部材2をフロントサイドメンバとして使用する例を示している。
【0029】
第1金属部材2には、板状部である長辺側側壁の一方(第1接合壁6)に、一端側から上下2列で長手方向に所定間隔を空けて複数の第1挿通孔7が形成されている。第1挿通孔7を形成する範囲は、第1接合壁6の一端から他端側に向かって所定寸法の範囲(後述する第2金属部材3の筒状部10で丁度覆われる範囲)とされている。各第1挿通孔7は、上方列と下方列とで長手方向の位置が半ピッチずれて形成されている。
【0030】
第1金属部材2は、第1接合壁6がほぼ鉛直方向に沿うように配置された状態で使用される。このため、第1接合壁6の内面には、各第1挿通孔7に対応する位置に、後述する第1接合部材4を仮止めするためのガイドリブ8がそれぞれ形成されている。各ガイドリブ8は上下一対の突条8aからなり、第1接合部材4がそれぞれ保持される。
図2の例では、突条8a同士は平行に延びる板状であるが、先端部分が互いに接近する方向に屈曲しているのが好ましい。これによれば、ガイドリブ8に保持する第1接合部材4の脱落を確実に防止することができる。また、突条8aの外面には補強リブを設けて剛性を高めるようにするようにしてもよい。
【0031】
第2金属部材3はハイテンション鋼のような鋼製で、本体部9と筒状部10とを有する。筒状部10は中空で、断面矩形状に形成され、第1金属部材2の一端部を覆うように配置される。ここでは、第2金属部材3がシャシである。
【0032】
筒状部10は、板状部である側壁(第2接合壁11)に複数の第2挿通孔12が形成されている。各第2挿通孔12は、第2金属部材3で第1金属部材2の一端部を覆った取付位置で、第1挿通孔7に対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0033】
第1接合部材4は、第2金属部材3と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、板状に形成されている。第1接合部材4は、第1金属部材2の一端側開口部から挿入され、ガイドリブ8に保持される。
【0034】
第2接合部材5は、第2金属部材3及び第1接合部材4と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、頭部13と軸部14とで構成されている。頭部13は、第1挿通孔7及び第2挿通孔12の内径寸法よりも大きく、後述するように、第1接合部材4との間に第1金属部材2及び第2金属部材3を挟持するのに十分なサイズとされている。軸部14が第1挿通孔7及び第2挿通孔12を挿通し、第1接合部材4に当接した状態で、頭部13が第2金属部材3の外面に当接する。第2接合部材5の中心には貫通孔15が形成され、全体として中空筒状となっている。
【0035】
次に、前記構成からなる接合体1の接合方法について説明する。
【0036】
第1金属部材2の第1接合壁6に第1挿通孔7を形成する。また、第2金属部材3の第2接合壁11に第2挿通孔12を形成する(第1ステップ)。第1挿通孔7と第2挿通孔12を形成する位置は、第1金属部材2の一端部を第2金属部材3の筒状部10で覆い、第1接合壁6と第2接合壁11が重なり合った取付位置で、第1挿通孔7と第2挿通孔12が互いに連通するように決められている。
【0037】
第1金属部材2の第1接合壁6の内面(第2金属部材3とは反対側の面)に、第1接合部材4を配置する(第2ステップ)。第1接合部材4は、第1金属部材2の一端側から挿入し、ガイドリブ8で保持することにより脱落不能とする。
【0038】
第1金属部材2の第1接合壁6と第2金属部材3の第2接合壁11を重ね合わせた状態で、第2金属部材3の第2挿通孔12と第1金属部材2の第1挿通孔7に第2接合部材5の軸部14を挿通する(第3ステップ)。第2接合部材5は、軸部14の先端が第1接合部材4に当接した時点で、頭部13が第2金属部材3の外面に当接する。
【0039】
第1接合部材4と第2接合部材5をアーク溶接、ここではエレメントアークスポット溶接(Element Arc Spot Welding:EASW)により接合し、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5で接合する(第4ステップ)。第2接合部材5は中心に貫通孔15を形成されているので、この貫通孔15にアーク溶接法によって溶融した溶接材料16(
図3中、2点鎖線で示す。)を鋳込む。これにより、鋼製の第2接合部材5と同材料からなる第1接合部材4とが強固に溶接される。このとき、第2接合部材5が径方向外側に膨らんで第1金属部材2と第2金属部材3に対して嵌合状態となる。このため、第1金属部材2と第2金属部材3の位置決めが強固なものとなる。また、溶接ではアルミ製の第1金属部材2は全く溶融せず、金属間化合物を生成することがない。なお、第4ステップの溶接方法の詳細については、例えば、特開2018-34164号公報に記載されたものと同様な方法により行うことができる。また、第1接合部材4と第2接合部材5はレーザ溶接により一体化するようにしてもよい。
【0040】
以上のステップにより接合体1が形成される。このようにして接合体1を形成することにより、次のような効果が得られる。
(1)アーク溶接であるので、特別な設備は必要なく、第1接合部材4及び第2接合部材5も単純な構成であり、安価に製作することができる。
(2)同一材料からなる鋼製の第1接合部材4と第2接合部材5とを溶接するようにしたので、強固な接合状態を得ることができる。したがって、従来に比べて接合位置の数を減らしても十分な強度を確保することができる。また、EASWを利用することにより、第1金属部材2が化合物となることがなく、第1金属部材2と第2金属部材3の位置決めも強固なものとすることができる。
【0041】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2金属部材3の一部とで一体化したものである。第2接合部材5は備えていない。
【0042】
第1接合部材4には、第1金属部材2の第1挿通孔7に対応する位置に突起17(ダボ)が形成されている。第2金属部材3には、第1実施形態のような第2挿通孔12は形成されていない。
【0043】
前記構成の接合体1の接合方法では、第1ステップでは、第1金属部材2にのみ第1挿通孔7を形成する。第2ステップでは、第1金属部材2に第1接合部材4を配置する。このとき、突起17を第1挿通孔7に配置することにより仮止めする。第3ステップでは、第1金属部材2の第1挿通孔7を覆うように第2金属部材3を配置する。第4ステップでは、第1接合部材4の突起17と第2金属部材3とをスポット溶接し(溶融部分を2点鎖線で示す。)、第1金属部材2と第2金属部材3とを接合する。この場合、スポット溶接する位置は、予め第2金属部材3の外面に印を付けておくのが好ましい。なお、第4ステップでの溶接方法の詳細については、例えば、特開2018-122333号公報に記載されたものと同様な方法により行うことができる。
【0044】
第2実施形態に係る接合方法により形成した接合体1によれば、第1実施形態で得られる効果に加えて、さらに第2接合部材5が不要となり、部品点数を減らして構成を簡略化し、軽量化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0045】
なお、
図5に示すように、突起17は第2金属部材3に形成するようにしてもよい。そして、突起17を第1金属部材2の第1挿通孔7に配置し、スポット溶接するようにすればよい。これによれば、第1接合部材4の仮止めで突起17を第1挿通孔7に配置する面倒を回避することができる。また、突起17を形成することによりスポット溶接する位置が明確となり、別途印を付けておく必要がなくなる。また、突起17は、第1接合部材4と第2金属部材3の両方に形成するようにしてもよい。さらに、突起17は溶接する部分と接触するようにしておけば、より確実に接合することができる点で好ましい。
【0046】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5で一体化したものである。第1金属部材2及び第2金属部材3の構成は前記第1実施形態で説明したものと同様である。
【0047】
第1接合部材4は、第2金属部材3と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、板状に形成されている点も前記第1実施形態と同じであるが、次の点で相違する。すなわち、第1接合部材4には、第1金属部材2の第1挿通孔7及び第2金属部材3の第2挿通孔12に対応する位置に第3連通孔18が形成されている。そして、第1接合部材4を第1金属部材2に仮止めした状態で、内面側の各第3挿通孔に対応する位置に筒部19が一体化されている。ここでは、筒部19にはナットが使用され、予め第1接合部材4に溶接等によって一体化されている。
【0048】
第2接合部材5は、第1実施形態と同様に、第2金属部材3及び第1接合部材4と同様な鋼製であり、頭部13と軸部14で構成され、中心に貫通孔15が形成されている。但し、第1接合部材4の筒部19をナットで構成する場合、軸部14に雄ねじを形成してナットに螺合可能とするのが好ましい。
【0049】
前記構成の接合体1の接合方法では、前記第1実施形態と同様に、第1ステップ及び第2ステップを実行する。但し、第3ステップでは、第2接合部材5の軸部14を、第2金属部材3の第2挿通孔12と第1金属部材2の第1挿通孔7に挿通するだけでなく、さらに筒部19に挿通する。そして、筒部19がナットで構成されている場合には、第2接合部材5の軸部14を螺合させるのが好ましい。そして、第4ステップで、第1接合部材4と第2接合部材5を、前記第1実施形態と同様なEASWで溶接する。この場合、第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19にも挿通させているので、第1接合部材4と第2接合部材5の溶接強度を、第1実施形態の場合に比べてより一層高めることができる。
【0050】
第3実施形態に係る接合方法により形成した接合体1によれば、第1実施形態で得られる効果に加えてさらに次のような効果が得られる。
第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19に挿通させた状態で溶接しているので、溶接強度を第1実施形態に比べてさらに高めることができる。特に、第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19に螺合する場合、第1接合部材4と第2接合部材5によって第1金属部材2と第2金属部材3をしっかりと挟持することができるので、両者を隙間のない状態で強固に接合することができる点で好ましい。
【0051】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0052】
前記実施形態では、ほぼ鉛直方向に沿って配置される第1接合壁6に第1接合部材4を配置するようにしたが、この第1接合部材4を配置する側壁はこれに限らず、例えば、底壁とすることもできる。第1接合部材4を底壁に配置する場合、必ずしもガイドリブ8は必要ではない。
【0053】
前記実施形態では、第1接合壁6と第2接合壁11の間のみを接合する場合について説明したが、さらに反対側の側壁、底壁、天井壁の少なくともいずれか1つを接合するようにしてもよい。4方全ての壁を接合すれば、より接合強度を高めることができる。
【0054】
前記実施形態では、第1金属部材2を断面矩形状としたが、これに限らず、三角形等の他の断面形状であってもよい。また、第1金属部材2は4つの側壁で囲まれた構造としたが、必ずしも閉断面形状となっていなくてもよく、一部が開口した略閉断面形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1…接合体
2…第1金属部材
3…第2金属部材
4…第1接合部材
5…第2接合部材
6…第1接合壁
7…第1挿通孔
8…ガイドリブ
9…本体部
10…筒状部
11…第2接合壁
12…第2挿通孔
13…頭部
14…軸部
15…貫通孔
16…溶接材料
17…突起
18…第3連通孔
19…筒部
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の板状部同士を重ね合わせて接合する方法であって、
前記第1金属部材の前記板状部に挿通孔を形成し、前記第1金属部材と第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせる第1ステップと、
前記第1金属部材の前記板状部の前記第2金属部材とは反対側に、前記挿通孔が覆われるようにして前記第2金属部材と同一の金属材料からなる第1接合部材を配置する第2ステップと、
前記第1金属部材と前記第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせた状態で、前記第2金属部材の前記板状部に形成された突起を、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通する第3ステップと、
前記第1接合部材と前記突起を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を接合する第4ステップと、
を含む、接合方法。
【請求項2】
前記第1接合部材は板状である、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1金属部材はアルミ製であり、前記第2金属部材、及び前記第1接合部材は鋼製である、
請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1金属部材は閉断面状に形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記第1金属部材と前記第2金属部材は車体部材である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記車体部材はサイドメンバである、
請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
挿通孔が形成された板状部を有する第1金属部材と、
前記第1金属部材に重ね合わされる板状部を有し、前記第1金属部材と異なる材料からなる第2金属部材と、
前記第1金属部材の前記板状部の前記第2金属部材とは反対側に前記挿通孔を覆うようにして配置され、前記第2金属部材と同一の金属材料からなる第1接合部材と、
前記第2金属部材の前記板状部に形成され、前記第1金属部材と前記第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせた状態で、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通される突起と、
を備え、
前記第1接合部材と前記突起を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を接合してなる、
接合体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる材料で構成された車体部材同士の接合には、次のような接合方法が採用されている。具体的には、アルミ製のサイドメンバと鋼製の骨格部材との接合に、FDS(Flow Drilling Screw、フロードリルスクリュー)やSPR(Self Piercing Rivets、セルフピアスリベット)を使用する接合方法が採用されている(例えば、特許文献1,2参照)。ここに、FDSとは、副資材としてネジを利用して、重ねた被接合材の上部から、ねじを高速回転させながら挿入し、発生する摩擦熱により軟化させた被接合材を機械的に締結する接合方法である。また、SPRとは、重ねた被接合材の上部から、リベットを圧入して上側の被接合材に貫通させ、下側の被接合材でリベットの先端を拡径させることにより被接合材同士を締結する接合方法である。
【0003】
しかしながら、FDSやSPRのいずれであっても、特殊な形状の接合部材(スクリューやリベット)が必要となる。また、これらの接合方法を行うために特別な設備投資を行う必要もある。このため、全体として高価なものとなっている。さらに、接合部材の数を減らしても十分な接合強度が得られるような接合方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120346号公報
【特許文献2】特開2013-2505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単かつ安価な構成であっても、十分な接合強度を得ることができる接合方法及び接合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の板状部同士を重ね合わせて接合する方法であって、前記第1金属部材の前記板状部に挿通孔を形成し、前記第1金属部材と第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせる第1ステップと、前記第1金属部材の前記板状部の前記第2金属部材とは反対側に、前記挿通孔が覆われるようにして前記第2金属部材と同一の金属材料からなる第1接合部材を配置する第2ステップと、前記第1金属部材と前記第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせた状態で、前記第2金属部材の前記板状部に形成された突起を、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通する第3ステップと、前記第1接合部材と前記突起を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を接合する第4ステップと、を含む、接合方法を提供する。
【0007】
これによれば、異なる材料からなる第1金属部材と第2金属部材の接合を、同一金属材料からなる第1接合部材と第2金属部材を溶接することにより完了することができる。このため、両者を溶接するだけの設備があればよく、安価に製作することができる。しかも、同一金属材料同士を溶接しているので、接合強度も十分なものとして所望の信頼性を得ることが可能となる。第1金属部材と第2金属部材との他に、第1接合部材があればよく、部品点数を減らして構成を簡略化し、軽量化を図ることができる。
【0008】
前記第1接合部材は板状であるのが好ましい。
【0009】
前記第1金属部材はアルミ製であり、前記第2金属部材、及び前記第1接合部材は鋼製であるのが好ましい。
【0010】
これによれば、内側がアルミニウムからなり、外側が鉄鋼からなる骨格構造を簡単かつ安価に接合することができる。
【0011】
前記第1金属部材は閉断面状に形成されていてもよい。
【0012】
これによれば、閉断面状の第1金属部材であっても、第1接合部材を使用して第2金属部材を接合することができる。
【0013】
前記第1金属部材と前記第2金属部材は車体部材とすることができる。
【0014】
前記車体部材はサイドメンバであってもよい。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、挿通孔が形成された板状部を有する第1金属部材と、前記第1金属部材に重ね合わされる板状部を有し、前記第1金属部材と異なる材料からなる第2金属部材と、前記第1金属部材の前記板状部の前記第2金属部材とは反対側に前記挿通孔を覆うようにして配置され、前記第2金属部材と同一の金属材料からなる第1接合部材と、前記第2金属部材の前記板状部に形成され、前記第1金属部材と前記第2金属部材の前記板状部同士を重ね合わせた状態で、前記挿通孔を介して前記第2金属部材側から前記第1金属部材に挿通される突起と、を備え、前記第1接合部材と前記突起を溶接し、前記第1金属部材と前記第2金属部材を接合してなる、接合体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特別な設備投資を必要とすることなく、簡単かつ安価に、所望の接合強度を有する接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
第1参考例に係る接合体を示す概略図である。
【
図4】
第2参考例に係る接合部分を示す断面図である。
【
図5】
実施形態に係る接合部分を示す断面図である。
【
図6】
第3参考例に係る接合部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
(第1
参考例)
図1は、第1
参考例に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1の用途は限定されるものではないが、車体部材、特に車両のフロントサイドメンバをシャシに接合する場合が挙げられる。
【0020】
接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5(アークリベット)で接合一体化したものである。
【0021】
第1金属部材2はアルミニウム又はアルミニウム合金製(ここでは、アルミニウム6000系の押出材)で、閉断面形状(ここでは、断面矩形状)に形成されて中空筒状となっている。
図2では、第1金属部材2の内部空間は仕切壁2aによって上下に2分割されている。但し、内部空間は分割されていなくてもよいし、3以上に分割されていてもよい。
図1及び
図2は、第1金属部材2をフロントサイドメンバとして使用する例を示している。
【0022】
第1金属部材2には、板状部である長辺側側壁の一方(第1接合壁6)に、一端側から上下2列で長手方向に所定間隔を空けて複数の第1挿通孔7が形成されている。第1挿通孔7を形成する範囲は、第1接合壁6の一端から他端側に向かって所定寸法の範囲(後述する第2金属部材3の筒状部10で丁度覆われる範囲)とされている。各第1挿通孔7は、上方列と下方列とで長手方向の位置が半ピッチずれて形成されている。
【0023】
第1金属部材2は、第1接合壁6がほぼ鉛直方向に沿うように配置された状態で使用される。このため、第1接合壁6の内面には、各第1挿通孔7に対応する位置に、後述する第1接合部材4を仮止めするためのガイドリブ8がそれぞれ形成されている。各ガイドリブ8は上下一対の突条8aからなり、第1接合部材4がそれぞれ保持される。
図2の例では、突条8a同士は平行に延びる板状であるが、先端部分が互いに接近する方向に屈曲しているのが好ましい。これによれば、ガイドリブ8に保持する第1接合部材4の脱落を確実に防止することができる。また、突条8aの外面には補強リブを設けて剛性を高めるようにするようにしてもよい。
【0024】
第2金属部材3はハイテンション鋼のような鋼製で、本体部9と筒状部10とを有する。筒状部10は中空で、断面矩形状に形成され、第1金属部材2の一端部を覆うように配置される。ここでは、第2金属部材3がシャシである。
【0025】
筒状部10は、板状部である側壁(第2接合壁11)に複数の第2挿通孔12が形成されている。各第2挿通孔12は、第2金属部材3で第1金属部材2の一端部を覆った取付位置で、第1挿通孔7に対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0026】
第1接合部材4は、第2金属部材3と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、板状に形成されている。第1接合部材4は、第1金属部材2の一端側開口部から挿入され、ガイドリブ8に保持される。
【0027】
第2接合部材5は、第2金属部材3及び第1接合部材4と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、頭部13と軸部14とで構成されている。頭部13は、第1挿通孔7及び第2挿通孔12の内径寸法よりも大きく、後述するように、第1接合部材4との間に第1金属部材2及び第2金属部材3を挟持するのに十分なサイズとされている。軸部14が第1挿通孔7及び第2挿通孔12を挿通し、第1接合部材4に当接した状態で、頭部13が第2金属部材3の外面に当接する。第2接合部材5の中心には貫通孔15が形成され、全体として中空筒状となっている。
【0028】
次に、前記構成からなる接合体1の接合方法について説明する。
【0029】
第1金属部材2の第1接合壁6に第1挿通孔7を形成する。また、第2金属部材3の第2接合壁11に第2挿通孔12を形成する(第1ステップ)。第1挿通孔7と第2挿通孔12を形成する位置は、第1金属部材2の一端部を第2金属部材3の筒状部10で覆い、第1接合壁6と第2接合壁11が重なり合った取付位置で、第1挿通孔7と第2挿通孔12が互いに連通するように決められている。
【0030】
第1金属部材2の第1接合壁6の内面(第2金属部材3とは反対側の面)に、第1接合部材4を配置する(第2ステップ)。第1接合部材4は、第1金属部材2の一端側から挿入し、ガイドリブ8で保持することにより脱落不能とする。
【0031】
第1金属部材2の第1接合壁6と第2金属部材3の第2接合壁11を重ね合わせた状態で、第2金属部材3の第2挿通孔12と第1金属部材2の第1挿通孔7に第2接合部材5の軸部14を挿通する(第3ステップ)。第2接合部材5は、軸部14の先端が第1接合部材4に当接した時点で、頭部13が第2金属部材3の外面に当接する。
【0032】
第1接合部材4と第2接合部材5をアーク溶接、ここではエレメントアークスポット溶接(Element Arc Spot Welding:EASW)により接合し、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5で接合する(第4ステップ)。第2接合部材5は中心に貫通孔15を形成されているので、この貫通孔15にアーク溶接法によって溶融した溶接材料16(
図3中、2点鎖線で示す。)を鋳込む。これにより、鋼製の第2接合部材5と同材料からなる第1接合部材4とが強固に溶接される。このとき、第2接合部材5が径方向外側に膨らんで第1金属部材2と第2金属部材3に対して嵌合状態となる。このため、第1金属部材2と第2金属部材3の位置決めが強固なものとなる。また、溶接ではアルミ製の第1金属部材2は全く溶融せず、金属間化合物を生成することがない。なお、第4ステップの溶接方法の詳細については、例えば、特開2018-34164号公報に記載されたものと同様な方法により行うことができる。また、第1接合部材4と第2接合部材5はレーザ溶接により一体化するようにしてもよい。
【0033】
以上のステップにより接合体1が形成される。このようにして接合体1を形成することにより、次のような効果が得られる。
(1)アーク溶接であるので、特別な設備は必要なく、第1接合部材4及び第2接合部材5も単純な構成であり、安価に製作することができる。
(2)同一材料からなる鋼製の第1接合部材4と第2接合部材5とを溶接するようにしたので、強固な接合状態を得ることができる。したがって、従来に比べて接合位置の数を減らしても十分な強度を確保することができる。また、EASWを利用することにより、第1金属部材2が化合物となることがなく、第1金属部材2と第2金属部材3の位置決めも強固なものとすることができる。
【0034】
(第2
参考例)
図4は、第2
参考例に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2金属部材3の一部とで一体化したものである。第2接合部材5は備えていない。
【0035】
第1接合部材4には、第1金属部材2の第1挿通孔7に対応する位置に突起17(ダボ)が形成されている。第2金属部材3には、第1参考例のような第2挿通孔12は形成されていない。
【0036】
前記構成の接合体1の接合方法では、第1ステップでは、第1金属部材2にのみ第1挿通孔7を形成する。第2ステップでは、第1金属部材2に第1接合部材4を配置する。このとき、突起17を第1挿通孔7に配置することにより仮止めする。第3ステップでは、第1金属部材2の第1挿通孔7を覆うように第2金属部材3を配置する。第4ステップでは、第1接合部材4の突起17と第2金属部材3とをスポット溶接し(溶融部分を2点鎖線で示す。)、第1金属部材2と第2金属部材3とを接合する。この場合、スポット溶接する位置は、予め第2金属部材3の外面に印を付けておくのが好ましい。なお、第4ステップでの溶接方法の詳細については、例えば、特開2018-122333号公報に記載されたものと同様な方法により行うことができる。
【0037】
第2参考例に係る接合方法により形成した接合体1によれば、第1参考例で得られる効果に加えて、さらに第2接合部材5が不要となり、部品点数を減らして構成を簡略化し、軽量化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0038】
(実施形態)
図5に示す実施形態では、突起17は第2金属部材3に形成される。そして、突起17を第1金属部材2の第1挿通孔7に配置し、スポット溶接する。これによれば、第1接合部材4の仮止めで突起17を第1挿通孔7に配置する面倒を回避することができる。また、突起17を形成することによりスポット溶接する位置が明確となり、別途印を付けておく必要がなくなる。また、突起17は、第1接合部材4と第2金属部材3の両方に形成するようにしてもよい。さらに、突起17は溶接する部分と接触するようにしておけば、より確実に接合することができる点で好ましい。
【0039】
(第3
参考例)
図6は、第3
参考例に係る接合方法により製造した接合体1を示す。この接合体1は、第1金属部材2と第2金属部材3を第1接合部材4と第2接合部材5で一体化したものである。第1金属部材2及び第2金属部材3の構成は前記第1
参考例で説明したものと同様である。
【0040】
第1接合部材4は、第2金属部材3と同様に、ハイテンション鋼のような鋼製で、板状に形成されている点も前記第1参考例と同じであるが、次の点で相違する。すなわち、第1接合部材4には、第1金属部材2の第1挿通孔7及び第2金属部材3の第2挿通孔12に対応する位置に第3連通孔18が形成されている。そして、第1接合部材4を第1金属部材2に仮止めした状態で、内面側の各第3挿通孔に対応する位置に筒部19が一体化されている。ここでは、筒部19にはナットが使用され、予め第1接合部材4に溶接等によって一体化されている。
【0041】
第2接合部材5は、第1参考例と同様に、第2金属部材3及び第1接合部材4と同様な鋼製であり、頭部13と軸部14で構成され、中心に貫通孔15が形成されている。但し、第1接合部材4の筒部19をナットで構成する場合、軸部14に雄ねじを形成してナットに螺合可能とするのが好ましい。
【0042】
前記構成の接合体1の接合方法では、前記第1参考例と同様に、第1ステップ及び第2ステップを実行する。但し、第3ステップでは、第2接合部材5の軸部14を、第2金属部材3の第2挿通孔12と第1金属部材2の第1挿通孔7に挿通するだけでなく、さらに筒部19に挿通する。そして、筒部19がナットで構成されている場合には、第2接合部材5の軸部14を螺合させるのが好ましい。そして、第4ステップで、第1接合部材4と第2接合部材5を、前記第1参考例と同様なEASWで溶接する。この場合、第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19にも挿通させているので、第1接合部材4と第2接合部材5の溶接強度を、第1参考例の場合に比べてより一層高めることができる。
【0043】
第3参考例に係る接合方法により形成した接合体1によれば、第1参考例で得られる効果に加えてさらに次のような効果が得られる。
第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19に挿通させた状態で溶接しているので、溶接強度を第1参考例に比べてさらに高めることができる。特に、第2接合部材5の軸部14を第1接合部材4の筒部19に螺合する場合、第1接合部材4と第2接合部材5によって第1金属部材2と第2金属部材3をしっかりと挟持することができるので、両者を隙間のない状態で強固に接合することができる点で好ましい。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0045】
前記実施形態では、ほぼ鉛直方向に沿って配置される第1接合壁6に第1接合部材4を配置するようにしたが、この第1接合部材4を配置する側壁はこれに限らず、例えば、底壁とすることもできる。第1接合部材4を底壁に配置する場合、必ずしもガイドリブ8は必要ではない。
【0046】
前記実施形態では、第1接合壁6と第2接合壁11の間のみを接合する場合について説明したが、さらに反対側の側壁、底壁、天井壁の少なくともいずれか1つを接合するようにしてもよい。4方全ての壁を接合すれば、より接合強度を高めることができる。
【0047】
前記実施形態では、第1金属部材2を断面矩形状としたが、これに限らず、三角形等の他の断面形状であってもよい。また、第1金属部材2は4つの側壁で囲まれた構造としたが、必ずしも閉断面形状となっていなくてもよく、一部が開口した略閉断面形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1…接合体
2…第1金属部材
3…第2金属部材
4…第1接合部材
5…第2接合部材
6…第1接合壁
7…第1挿通孔
8…ガイドリブ
9…本体部
10…筒状部
11…第2接合壁
12…第2挿通孔
13…頭部
14…軸部
15…貫通孔
16…溶接材料
17…突起
18…第3連通孔
19…筒部