(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000382
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電動作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221222BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20221222BHJP
【FI】
E02F9/26 A
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101155
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】古賀 信洋
(72)【発明者】
【氏名】田宮 和紀
(72)【発明者】
【氏名】坂口 暢也
【テーマコード(参考)】
2D015
5H501
【Fターム(参考)】
2D015HA03
5H501AA06
5H501DD03
5H501DD04
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL51
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電力供給状態に関する情報を、作業者に通知する。
【解決手段】作業機械本体10は、電源部Sに接続可能である。電動機35は、作業機械本体10に搭載され、電源部Sから供給される電力により駆動される。油圧ポンプ21は、作業機械本体10に搭載され、電動機35により駆動される。油圧アクチュエータ23は、作業機械本体10に搭載され、油圧ポンプ21が吐出する圧油により駆動される。電動機コントローラ45は、電源部Sから電動機35への電力供給状態を検出する。通知部60は、電動機コントローラ45で検出された電力供給状態に関する情報を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部に接続可能な作業機械本体と、
前記作業機械本体に搭載され、前記電源部から供給される電力により駆動される電動機と、
前記作業機械本体に搭載され、前記電動機により駆動される油圧ポンプと、
前記作業機械本体に搭載され、前記油圧ポンプが吐出する圧油により駆動される油圧アクチュエータと、
前記電源部から前記電動機への電力供給状態を検出する電動機コントローラと、
前記電動機コントローラで検出された前記電力供給状態に関する情報を出力する通知部と、
を備える、
電動作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機械であって、
前記電動機は、複数相の交流電力により駆動され、
前記電動機コントローラは、複数相のうち少なくとも2相の、電圧および電流の少なくともいずれかを、前記電力供給状態として検出する、
電動作業機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動作業機械であって、
前記電動機コントローラは、前記電力供給状態がエラーの状態であるか否かのエラー判定を行い、前記電動機の状態を示す複数の動作フェーズを設定し、
前記複数の動作フェーズは、
前記電動機の回転が停止している起動前フェーズと、
前記電動機が起動中である起動中フェーズと、
前記電動機が起動後に運転している運転中フェーズと、
を含み、
前記電動機コントローラは、前記エラー判定の条件を、複数の前記動作フェーズごとに有する、
電動作業機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業機械であって、
前記油圧アクチュエータは、前記作業機械本体を走行させるための走行モータを備える、
電動作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を有する電動作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来の電動作業機械が記載されている。同文献に記載の発明では、電力供給線を介して電源部と作業機械本体とが接続される(同文献の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動作業機械では、例えば、電線や接続端子の、誤接続、断線、接触不良など、電源から電動機への電力供給状態が適切でない状況が生じる場合がある。同文献に記載の発明では、電力供給状態が適切でない場合でも、電力供給状態に関する情報が作業者に通知されない。そのため、電力供給状態を作業者に通知できる電動作業機械が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、電力供給状態に関する情報を、作業者に通知することができる電動作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電動作業機械は、作業機械本体と、電動機と、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、電動機コントローラと、通知部と、を備える。前記作業機械本体は、電源部に接続可能である。前記電動機は、前記作業機械本体に搭載され、前記電源部から供給される電力により駆動される。前記油圧ポンプは、前記作業機械本体に搭載され、前記電動機により駆動される。前記油圧アクチュエータは、前記作業機械本体に搭載され、前記油圧ポンプが吐出する圧油により駆動される。前記電動機コントローラは、前記電源部から前記電動機への電力供給状態を検出する。前記通知部は、前記電動機コントローラで検出された前記電力供給状態に関する情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、電力供給状態に関する情報を、作業者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す電動作業機械1のブロック図である。
【
図3】
図2に示す電動機コントローラ45の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図3を参照して、電動作業機械1について説明する。
【0010】
電動作業機械1は、
図1に示すように、電源部Sから供給される電力により作動する作業機械である。電動作業機械1は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う電動建設機械であり、例えば、電動ショベルでもよく、電動クレーンでもよい。以下では、電動作業機械1が電動ショベル(さらに詳しくは電動油圧ショベル)である場合について説明する。電動作業機械1は、電力供給線Cを介して電源部Sに接続可能である。電源部Sは、電動作業機械1の電源である。電源部Sは、電動作業機械1の外部に設けられる(外部電源である)。電源部Sは、移動不可能または移動可能(可搬式)である。電源部Sは、電動作業機械1が用いられる建造物(例えば工場など)に固定された電源設備でもよい。電源部Sは、電動作業機械1を移動させる際に電動作業機械1に接続される可搬式の電源でもよく、例えば発動発電機でもよく、具体的にはディーゼル発電機などでもよい。電力供給線Cは、電源部Sから電動作業機械1に電力を伝える電線(ケーブル)である。電動作業機械1は、作業機械本体10と、
図2に示す油圧回路部20と、電動機装置30と、作業機械コントローラ51と、作業機械操作部53と、電動機操作部55と、通知部60と、を備える。
【0011】
作業機械本体10は、
図1に示すように、下部走行体11と、上部旋回体13と、アタッチメント15と、を備える。下部走行体11は、作業機械本体10を走行させる。下部走行体11は、例えばクローラを備える。上部旋回体13は、下部走行体11に旋回可能に搭載される。上部旋回体13は、運転室13aと、カウンタウエイト13bと、を備える。運転室13aは、作業者(オペレータ)が電動作業機械1を操作することが可能な部分である。電動作業機械1は、運転室13a内の作業者に操作されてもよく、電動作業機械1の外部から遠隔操作されてもよく、自動運転を行うコントローラ(例えば作業機械コントローラ51(
図2参照)など)により自動操作されてもよい。カウンタウエイト13bは、作業機械本体10の前後方向のバランスをとるためのおもりである。
【0012】
アタッチメント15は、作業を行う部分であり、例えば、ブーム15aと、アーム15bと、先端アタッチメント15cと、を備える。ブーム15aは、上部旋回体13に起伏可能(上下方向に回転可能)に取り付けられる。アーム15bは、ブーム15aに対して回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15cは、アタッチメント15の先端部に設けられ、アーム15bに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント15cは、例えば物を挟む装置(グラップルなど)でもよく、破砕や掘削などを行う装置でもよく、土砂などをすくうバケットでもよい。
【0013】
油圧回路部20(
図2参照)は、圧油により作業機械本体10を作動させる。油圧回路部20は、作業機械本体10に搭載される。
図2に示すように、油圧回路部20は、油圧ポンプ21と、油圧アクチュエータ23と、油圧制御弁25と、を備える。
【0014】
油圧ポンプ21は、電動機35(後述)により駆動されることで、油(圧油)を吐出する。油圧ポンプ21の吐出流量は、可変でもよく、固定でもよい。
【0015】
油圧アクチュエータ23は、作業機械本体10(
図1参照)を作動させる。油圧アクチュエータ23は、油圧ポンプ21が吐出する圧油により駆動される。
図1に示すように、油圧アクチュエータ23は、走行モータ23aと、旋回モータ23bと、ブームシリンダ23cと、アームシリンダ23dと、先端アタッチメントシリンダ23eと、を備える。走行モータ23aは、作業機械本体10を走行させ、下部走行体11を走行させ、例えばクローラを駆動させる。走行モータ23aは、油圧モータである(旋回モータ23bも同様)。旋回モータ23bは、下部走行体11に対して上部旋回体13を旋回させる。ブームシリンダ23cは、上部旋回体13に対してブーム15aを起伏させる。ブームシリンダ23cは、伸縮シリンダ(油圧シリンダ)である(アームシリンダ23dおよび先端アタッチメントシリンダ23eも同様)。アームシリンダ23dは、ブーム15aに対してアーム15bを回転させる。先端アタッチメントシリンダ23eは、アーム15bに対して先端アタッチメント15cを回転させる。なお、先端アタッチメント15c自体が駆動可能である場合(例えば物を挟んだり開放したりすることが可能である場合など)、先端アタッチメント15cを駆動させるための油圧シリンダや油圧モータが設けられてもよい。
【0016】
油圧制御弁25は、
図2に示すように、油圧ポンプ21から油圧アクチュエータ23に供給される圧油を制御することで、油圧アクチュエータ23の作動を制御する。油圧制御弁25は、油圧ポンプ21と油圧アクチュエータ23との間(油路における間)に設けられる。油圧制御弁25は、油路における油の流れの方向を制御する方向制御弁である。油圧制御弁25は、油圧アクチュエータ23に供給される油の流量と、油圧アクチュエータ23作動方向と、を制御する。
【0017】
電動機装置30は、電源接続部31と、電力線33と、電動機35と、電動機制御装置40と、を備える。
【0018】
電源接続部31は、
図1に示すように、電力供給線Cを介して電源部Sに接続可能である。電源接続部31は、電力供給線Cを接続可能に構成される。電源接続部31は、作業機械本体10に搭載され、例えば上部旋回体13に設けられ、例えばカウンタウエイト13bの近傍などに設けられる。具体的には例えば、電源接続部31は、スリップリングなどである。
【0019】
電力線33は、
図2に示すように、電動機35に接続される電線である。電力線33は、作業機械本体10(
図1参照)に搭載され、例えば上部旋回体13(
図1参照)の内部に配置される(電動機35、後述するブレーカ41、および、後述する結線切替部43も同様)。電力線33は、電動機35と電源接続部31とに接続される。電力線33は、電源部Sに電気的に接続可能である。電力線33は、複数相(例えば三相)の交流電源を伝えることが可能に構成される。具体的には例えば、電力線33は、U相33uと、V相33vと、W相33wと、を備える。
【0020】
電動機35は、油圧ポンプ21を駆動する。電動機35は、電源部Sから供給される電力により駆動(さらに詳しくは回転駆動)する。例えば、電動機35は、複数相(例えば三相)の交流電力により駆動される交流電動機である。例えば、電動機35は、誘導電動機(例えばかご型、巻線型など)でもよく、同期電動機でもよい。電動機35の運転時の回転数は、一定(固定)でもよく、可変でもよい。
【0021】
電動機制御装置40は、電動機35に関する制御を行う装置(例えば制御盤など)である。電動機制御装置40は、ブレーカ41と、結線切替部43と、電動機コントローラ45と、を備える。
【0022】
ブレーカ41は、電力線33に過電流が流れた場合に、電力線33の回路を遮断する。ブレーカ41は、熱により回路を遮断する装置(サーマルトリップさせる装置)である。ブレーカ41は、電力線33の各相(U相33u、V相33v、W相33w)に設けられる。ブレーカ41は、回路を遮断しているか否かの情報を、電動機コントローラ45に出力する。
【0023】
結線切替部43は、電動機35を起動するための装置である。結線切替部43は、電動機35の運転時の電流に比べて、電動機35の起動時の電流を小さくするための装置である。具体的には例えば、電動機35が三相誘導電動機である場合に、結線切替部43は、スターデルタ始動を行うための装置である。結線切替部43は、電力線33の各相(U相33u、V相33v、W相33w)どうしの結線を切り替える。結線切替部43は、電動機コントローラ45からの指令により、結線を切り替える。結線切替部43は、電動機35の起動時(後述する起動中フェーズ)には、電動機35の電流を制限する(電流が上昇しすぎないように抑える)ような結線とする。具体的には、結線切替部43は、起動中フェーズには、電力線33をスター結線にする。結線切替部43は、電動機35の運転時(後述する運転中フェーズ)には、電動機35の全負荷運転が可能となるような結線とする。具体的には、結線切替部43は、運転中フェーズには、電力線33をデルタ結線にする。結線切替部43は、結線の状態の情報を電動機コントローラ45に出力する。
【0024】
電動機コントローラ45は、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである(作業機械コントローラ51も同様)。例えば、電動機コントローラ45の機能は、電動機コントローラ45の記憶部に記憶されたプログラムが演算部で実行されることにより実現される(作業機械コントローラ51も同様)。電動機コントローラ45は、どこに配置されてもよい。電動機コントローラ45は、例えば作業機械本体10(
図1参照)に搭載されてもよく、例えば上部旋回体13(
図1参照)の内部に配置されてもよい。電動機コントローラ45は、作業機械本体10(
図1参照)の外部に配置されてもよい。
【0025】
この電動機コントローラ45は、電源部Sから電動機35への電力供給状態を検出する。電動機コントローラ45は、油圧回路部20の稼働への影響が生じるような、異常な電力供給状態を検出する。上記「油圧回路部20の稼働への影響」は、例えば油圧ポンプ21の逆回転、回転数の変動、回転数の過大や過小などである。電動機コントローラ45は、複数相(U相33u、V相33v、W相33w)の電力線33のうち、少なくとも2相で電力供給状態を検出する。電動機コントローラ45は、電力線33の全ての相で電力供給状態を検出してもよい。電動機コントローラ45は、電力線33の電圧および電流の少なくともいずれかを検出する。この「電圧および電流の少なくともいずれか」は、「電力供給状態」に含まれる。
【0026】
この電動機コントローラ45は、電力供給状態がエラーの状態であるか否かのエラー判定を行う(後述)。電動機コントローラ45は、電動機35の動作フェーズ(後述)を判別する。電動機コントローラ45は、電動機35に供給されるべき電圧および周波数を設定するための設定部(図示なし)を備える。この設定部は、コネクタの接続によって設定が行われるものでもよく、ボタンやスイッチなどの操作によって設定が行われるものでもよい。電動機コントローラ45の設定部に設定された値に基づいて、エラー判定に用いられる基準値が設定される(後述)。
【0027】
この電動機コントローラ45は、通信を行う。電動機コントローラ45は、例えば、ブレーカ41、結線切替部43、および電動機操作部55から信号を受信する。電動機コントローラ45は、作業機械操作部53から信号を受信してもよい。電動機コントローラ45は、例えば、結線切替部43および作業機械コントローラ51に信号を送信する。電動機コントローラ45は、油圧制御弁25に信号を送信してもよく、油圧制御弁25を制御するための弁(図示しない電磁比例弁など)に信号を送信してもよい。電動機コントローラ45が行う通信は、有線通信、無線通信、および光通信の少なくともいずれかを含んでもよい(他の機器同士の通信も同様)。具体的には例えば、電動機コントローラ45から作業機械コントローラ51への通信は、CAN(Controller Area Network)通信でもよい。さらに具体的には、電動機コントローラ45は、電力供給状態のエラーの内容に応じて、作業機械コントローラ51に送信する信号の状態を変えてもよい。なお、作業機械コントローラ51から通知部60への通信も、どのような通信でもよく、例えばCAN通信でもよい。
【0028】
なお、
図2に示す例では、電動機コントローラ45は、ブレーカ41、および結線切替部43とともに、電動機制御装置40にまとめて設けられる。一方、ブレーカ41、結線切替部43、および電動機コントローラ45の少なくともいずれかは、電動機制御装置40にまとめて設けられなくてもよく、互いに離れた位置に設けられてもよい。
【0029】
作業機械コントローラ51(メカトロコントローラ)は、作業機械本体10(
図1参照)の作動などを制御する。例えば、作業機械コントローラ51は、通知部60に通知を出力させてもよい(後述)。作業機械コントローラ51は、作業機械操作部53の操作に応じて様々な制御を行ってもよい。作業機械コントローラ51は、電動機コントローラ45と別に設けられてもよく、電動機コントローラ45と兼用されてもよい。
図1に示すように、作業機械コントローラ51は、例えば作業機械本体10に搭載され、例えば上部旋回体13に搭載され、例えば運転室13a内に配置される。なお、作業機械コントローラ51は、作業機械本体10に搭載されるとともに運転室13aの外部に配置されてもよく、作業機械本体10の外部に配置されてもよい。
【0030】
作業機械操作部53は、電動作業機械1を操作するためのものである。作業機械操作部53は、作業者に操作される。作業機械操作部53は、油圧アクチュエータ23を操作する。さらに詳しくは、作業機械操作部53は、油圧制御弁25(
図2参照)を操作することで、油圧アクチュエータ23を操作する。例えば、作業機械操作部53は、作業機械本体10に設けられ、具体的には運転室13a内に設けられる(電動機操作部55も同様)。例えば、電動作業機械1が遠隔操作される場合は、作業機械操作部53は、遠隔操作をするための遠隔運転室に設けられてもよい(電動機操作部55も同様)。例えば、電動作業機械1が自動操作される場合は、作業機械操作部53は、自動操作を指令する装置(例えばタブレットなど)に設けられてもよい(電動機操作部55も同様)。例えば、作業機械操作部53が運転室13aに設けられる場合は、作業機械操作部53は、電気信号を出力してもよく、油圧(パイロット圧)を出力してもよい。例えば、作業機械操作部53が作業機械本体10の外部に設けられる場合は、作業機械操作部53は、電気信号を出力してもよい。
【0031】
電動機操作部55は、
図2に示す電動機35に関する操作を行うためのものである。電動機操作部55は、作業者に操作される。例えば、電動機操作部55は、キースイッチ55aと、スタートスイッチ55bと、を備える。キースイッチ55aは、電動機35の起動および停止を行うためのスイッチである。例えば、キースイッチ55aは、「オン」と「オフ」とを切り替え可能なスイッチである(スタートスイッチ55bも同様)。例えば、キースイッチ55aは、作業機械本体10を起動させるためのスイッチなどである。具体的には、キースイッチ55aは、ボタンによるスイッチでもよく、回転によるスイッチでもよく、タッチパネルでもよい(スタートスイッチ55bについても同様)。スタートスイッチ55bは、電動機35の起動を開始させるためのスイッチである。後述するように、キースイッチ55aがオンにされた状態で、スタートスイッチ55bがオンにされると、電動機35が起動する。
図2および
図3ではキースイッチ55aを、「キーSW」と示し、スタートスイッチ55bを、「スタートSW」と示した。
図2に示すキースイッチ55aとスタートスイッチ55bとは、1つのスイッチにより構成されてもよく、別々のスイッチにより構成されてもよい。
【0032】
通知部60は、作業者に対して通知を行う。通知部60は、電動機コントローラ45で検出された電力供給状態に関する情報を出力する。通知部60は、電力供給状態がエラーの状態であると電動機コントローラ45に判定された場合に、エラーに関する情報(例えばエラーの内容)を出力する。通知部60は、エラーに関する情報以外の、電力供給状態に関する情報(例えば、電流、電圧、周波数、電力供給状態が正常であることなど)を出力してもよい。通知部60は、表示により通知を行ってもよく、音声により通知を行ってもよい。
【0033】
この通知部60は、
図1に示す作業機械本体10を作業者が作動させようとするときに、作業者に通知を行えるように構成されることが好ましい。例えば、通知部60は、作業者が作業機械操作部53を操作しようとするときに、作業者に通知を行えるような位置に配置されることが好ましい。通知部60は、作業機械操作部53の近傍に配置されることが好ましい。具体的には例えば、通知部60は、作業機械本体10に設けられてもよく、上部旋回体13に設けられてもよく、運転室13a内に設けられてもよい。具体的には例えば、通知部60は、運転室13a内に配置される表示画面(クラスタゲージ)などでもよい。通知部60は、作業機械本体10の外部に設けられてもよく、例えば遠隔操作をするための遠隔運転室に設けられてもよく、自動操作を指令する装置(例えばタブレットなど)に設けられてもよい。通知部60は、電動機35(
図2参照)の電力供給状態に関する情報とは異なる通知を行う装置と兼用されてもよい。通知部60は、作業機械本体10に関する情報(エラーなど)を通知する装置と兼用されてもよい。この場合、作業者は、電力供給状態に関する情報と、電力供給状態に関する情報以外の情報と、の両方の通知を1つの装置から受け取ることができる。
【0034】
(作動)
電動作業機械1は、以下のように作動するように構成される。
図2に示す電動機コントローラ45の作動の概要は、次の通りである。電動機コントローラ45は、電動機35の状態を示す複数の動作フェーズを設定する。複数の動作フェーズは、起動前フェーズと、起動中フェーズと、運転中フェーズと、を含む。
【0035】
起動前フェーズは、電動機35の回転が停止している状態である。起動前フェーズは、電動機コントローラ45が作動し、電動機35の回転が停止している状態である。例えば、起動前フェーズは、キースイッチ55aがオンであり、電動機35の回転が停止している状態である。
【0036】
起動中フェーズは、電動機35が起動中の状態である。さらに詳しくは、起動中フェーズは、電動機35の回転が停止していた状態から、電動機35の回転数が上昇している状態である。起動中フェーズは、起動前フェーズと運転中フェーズとの間の動作フェーズである。
【0037】
運転中フェーズは、電動機35が起動後に運転している状態である。運転中フェーズは、電動機35が回転している状態であって、電動機装置30の回転数の変動が起動中フェーズよりも小さい状態である。なお、起動前フェーズ、起動中フェーズ、および運転中フェーズ以外の動作フェーズが電動機コントローラ45に設定されてもよい。また、起動前フェーズ、起動中フェーズ、および運転中フェーズの少なくともいずれかが、電動機コントローラ45に設定されなくてもよい。
【0038】
電動機コントローラ45の処理の具体例を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。以下では、フローチャートに示す各処理のステップ(S11~S43)については、
図3を参照して説明する。
【0039】
ステップS11では、
図2に示す電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオンか否かを判定する。キースイッチ55aがオンでない場合(ステップS11でNOの場合)、電動機コントローラ45は、何もしない(ステップS11に戻る)。キースイッチ55aがオンである場合(ステップS11でYESの場合)、電動機コントローラ45は、作業機械コントローラ51との通信を開始する。例えば、電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオンになった後、所定時間(例えば3秒など)経過後に通信を開始してもよい。なお、キースイッチ55aがオンになったときに、電動機コントローラ45が起動してもよい(電動機コントローラ45が処理を開始してもよい)。キースイッチ55aがオンの場合、電動機コントローラ45は、起動前フェーズを開始し(ステップS21)、ステップS22に進む。
【0040】
ステップS22では、電動機コントローラ45は、起動前フェーズのエラー(起動前エラー)があるか否かを判定する。さらに詳しくは、電動機コントローラ45は、起動前フェーズにおいて、電力供給状態がエラーの状態であるか否かを判定する。起動前エラーの内容については後述する(他の動作フェーズのエラーも同様)。
【0041】
起動前エラーがある場合(ステップS22でNOの場合)、電動機コントローラ45は、電力供給状態に関する情報を通知部60に通知させる(ステップS22n)。具体的には例えば、電動機コントローラ45が、電力供給状態に関する情報を作業機械コントローラ51に送信し、作業機械コントローラ51が、電力供給状態に関する情報を通知部60に通知させる(他の動作フェーズでの通知も同様)。このとき、通知部60は、エラーと判定されたエラーの内容(後述する「逆相」「電圧過小」など)を通知してもよい(他の動作フェーズでの通知も同様)。この場合、作業者はエラーの内容を知ることができる。通知部60は、電圧の値、電流の値、周波数などを通知してもよい(他の動作フェーズでの通知も同様)。
【0042】
起動前エラーがある場合、電動機コントローラ45は、通知部60に通知を行わせ(ステップS22n)、電動機35を起動させることなく、制御フローを終了してもよい。起動前エラーがあり、電源供給状態が適切でない状態で電動機35を起動させると、機器(例えば電動機35や油圧回路部20など)が破損する場合がある。起動前エラーがある場合に電動機35を起動させないことにより、機器の破損を抑制することができる。なお、起動前エラーがある場合に、電動機コントローラ45は、通知部60に通知を行わせ(ステップS22n)、そのまま電動機35を起動させてもよい。起動前エラーがない場合(ステップS22でYESの場合)、電動機コントローラ45は、ステップS23に進む。
【0043】
ステップS23では、電動機コントローラ45は、スタートスイッチ55bがオンか否かを判定する。スタートスイッチ55bがオンでない場合(ステップS23でNOの場合)、電動機コントローラ45は、何もしない(ステップS23に戻る)。スタートスイッチ55bがオンである場合(ステップS23でYESの場合)、電動機コントローラ45は、ステップS31に進む。
【0044】
ステップS31では、電動機コントローラ45は、起動前フェーズを終了し、起動中フェーズを開始し、電動機35を起動させる。具体的には、電動機コントローラ45は、結線切替部43を、電動機35の起動のための結線(具体的にはスター結線)に切り替える。このとき、電動機コントローラ45は、起動タイマー(後述)を開始させる。
【0045】
起動中フェーズでは(電動機35の起動中は)、油圧ポンプ21の回転数は、油圧アクチュエータ23が適切に作動できるような回転数よりも小さい(回転数が不足している)。また、起動中フェーズでは、油圧ポンプ21のトルクは、油圧アクチュエータ23が適切に作動できるようなトルクよりも小さい(トルクが不足している)。そこで、電動機コントローラ45は、起動フェーズ中に、油圧アクチュエータ23が作動しないように制御してもよい。具体的には例えば、電動機コントローラ45は、起動フェーズ中に、作業機械操作部53から油圧制御弁25への指令を遮断してもよい(例えばレバーロックを行ってもよい)。なお、電動機コントローラ45は、起動フェーズ中に、油圧アクチュエータ23を作動可能としてもよい。次に、電動機コントローラ45は、ステップS32に進む。
【0046】
ステップS32では、電動機コントローラ45は、起動中フェーズのエラー(起動中エラー)があるか否かを判定する。さらに詳しくは、電動機コントローラ45は、起動中フェーズにおいて、電力供給状態がエラーの状態であるか否かを判定する。起動中エラーがある場合(ステップS32でNOの場合)、電動機コントローラ45は、電源供給状態に関する情報(例えばエラーの内容など)を通知部60に通知させる(ステップS32n)。そして、電動機コントローラ45は、電動機35の起動を継続させてもよく、ステップS33に進んでもよい。起動中エラーがある場合、電動機コントローラ45は、通知部60に通知を行わせ(ステップS32n)、電動機35の起動を停止してもよく、制御フローを終了してもよい(ステップS32nの後の、二点鎖線の矢印を参照)。起動中エラーがない場合(ステップS32でYESの場合)、電動機コントローラ45は、電動機35の起動を継続し、ステップS33に進む。
【0047】
ステップS33では、電動機コントローラ45は、起動中フェーズが開始した時(起動タイマーが開始された時)から、「起動所定時間」が経過したか否かを判定する。起動所定時間は、電動機35の起動に必要な時間など(具体的には例えば3秒など)であり、電動機コントローラ45に設定される。起動所定時間が経過していない場合(ステップS33でNOの場合)、電動機コントローラ45は、ステップS32に戻り、起動フェーズを継続する。起動所定時間が経過した場合(ステップS33でYESの場合)、電動機コントローラ45は、ステップS41に進む。
【0048】
ステップS41では、電動機コントローラ45は、起動中フェーズを終了し、運転中フェーズを開始する。具体的には、電動機コントローラ45は、結線切替部43を、電動機35の運転のための結線(具体的にはデルタ結線)に切り替える。次に、電動機コントローラ45は、ステップS42に進む。
【0049】
ステップS42では、電動機コントローラ45は、運転中フェーズのエラー(運転中エラー)があるか否かを判定する。さらに詳しくは、電動機コントローラ45は、運転中フェーズにおいて、電力供給状態がエラーの状態であるか否かを判定する。運転中エラーがある場合(ステップS42でNOの場合)、電動機コントローラ45は、電源供給状態に関する情報(例えばエラーの内容など)を通知部60に通知させる(ステップS42n)。そして、電動機コントローラ45は、電動機35の運転を継続させてもよく、ステップS43に進んでもよい。運転中エラーがある場合、電動機コントローラ45は、電動機35の運転を停止してもよく、制御フローを終了してもよい(ステップS42nの後の、二点鎖線の矢印を参照)。運転中エラーがない場合(ステップS42でYESの場合)、電動機コントローラ45は、ステップS43に進む。
【0050】
ステップS43では、電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオフか否かを判定する。キースイッチ55aがオンである場合(ステップS43でNOの場合)、電動機コントローラ45は、電動機35の運転を継続し、ステップS42に戻る。キースイッチ55aがオフである場合(ステップS43でYESの場合)、電動機コントローラ45は、電動機35の運転を停止させる。この場合、電動機コントローラ45は、制御を終了する。例えば、電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオフになった時から所定時間(例えば約30秒など)経過後に、完全に停止してもよい。キースイッチ55aがオフの場合、電動機コントローラ45は、作業機械コントローラ51との通信を停止する。例えば、電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオフになった時から所定時間(例えば約30秒など)経過後に、作業機械コントローラ51との通信を停止してもよい。キースイッチ55aがオフである場合、電動機コントローラ45は、エラーを解除してもよい。なお、電動機コントローラ45は、キースイッチ55aがオフにされること以外の条件により、エラーを解除してもよい。
【0051】
(エラー判定の詳細)
電動機コントローラ45は、電力供給状態がエラーの状態であるか否かのエラー判定を行う。電動機コントローラ45が判定するエラーの内容は、様々に設定されてもよい。エラーの内容には、例えば、逆相、電圧過大、電圧過小、電圧欠相、電流過大、電流過小、電流欠相、周波数過大、周波数過小、サーマルトリップ、および結線状態異常がある(詳細は後述)。
【0052】
電動機コントローラ45は、エラー判定の条件(エラー条件)を、複数の動作フェーズごとに有する。電動機コントローラ45には、動作フェーズに応じた適切なエラー条件が設定されることが好ましい。例えば、あるエラーの内容(例えば逆相)において、動作フェーズごとにエラー条件の有無が異なってもよい。さらに詳しくは、ある動作フェーズではエラー条件が設定され、他の動作フェーズではエラー条件が設定されなくてもよい。また、あるエラーの内容(例えば電圧過小)において、動作フェーズごとに異なるエラー条件が設定されてもよい。具体的には例えば、動作フェーズごとにエラー条件の閾値が相違してもよい。エラーの内容と、動作フェーズと、エラー条件と、の具体例を表1に示す。
【0053】
【0054】
(逆相)
電動機コントローラ45は、電動機35に入力される交流電力の相回転が逆であるか(すなわち逆相であるか)否かを検出する。例えば、電力供給線C、電源接続部31、および電力線33の少なくともいずれかの誤接続によって、電動機35に入力される電力が逆相になる場合がある。電動機装置30に入力される電力が逆相である場合、電動機35が逆回転し、油圧ポンプ21が逆回転し、油圧ポンプ21が破損する場合がある。例えば、電動機コントローラ45は、電力線33の電圧または電流の波形を検出することで相順を検出する。そして、電動機コントローラ45は、検出した相順が、予め設定された相順と等しいか否かを判定する。
【0055】
表1に示す例では、逆相か否かのエラー条件が設定されているか否かは、動作フェーズによって異なる。具体的には、逆相か否かのエラー条件は、起動前フェーズに設定され、起動中フェーズおよび運転中フェーズには設定されない。この場合、電動機コントローラ45は、起動前フェーズに逆相か否かを判定し、起動中フェーズおよび運転中フェーズには逆相か否かを判定しない。
【0056】
なお、表1に記載のエラー条件は一例にすぎず、エラー条件は様々に設定可能である。例えば、電動機コントローラ45は、起動中フェーズおよび運転中フェーズの少なくともいずれかに、逆相か否かを判定してもよい。各動作フェーズにエラー条件が設定されているか否かが様々に設定可能であることは、他のエラーの内容についても同様である。
【0057】
(電圧過小)
電動機コントローラ45は、電動機35に入力される電圧が過小か否かを検出する。例えば、電動作業機械1に不適切な電源が接続された場合などに、電動機35に入力される電圧が異常になる場合がある(電圧過大、電圧欠相も同様)。例えば、電動機コントローラ45は、電力線33の各相(U相33u、V相33v、W相33w)のそれぞれについて、電圧過小か否かを検出する(電圧過大、電圧欠相も同様)。電動機コントローラ45は、電力線33の電圧(検出した電圧)と、閾値と、を比較することで、電圧過小か否かを判定する(電圧過大、電圧欠相も同様)。
【0058】
具体的には、検出された電圧が閾値以下(例えば表1の「設定電圧値-Va(例:-5%)以下」など)である状態が、ある時間継続(例えば表1の「Ta(例:3秒)以上継続」など)した場合に、電圧過小のエラー条件が満たされる。
【0059】
電動機コントローラ45は、例えば、起動前フェーズと、起動中フェーズと、運転中フェーズと、で電圧過小か否かを判定する(電圧過大、電圧欠相、周波数過大、周波数過大、周波数過小も同様)。電圧過小か否かの判定におけるエラー条件は、起動前フェーズと、起動中フェーズと、運転中フェーズとで相違する(電圧過大、電圧欠相も同様)。
【0060】
さらに詳しくは、電力線33の適切な電圧は、電動機35の動作フェーズによって異なる。具体的には、電動機35の起動中は、起動前や運転中よりも、電圧が低くなる。そこで、電圧過小か否かを判定するための電圧の閾値(例えば表1の「設定電圧値-Va(例:-5%)」など)は、起動前フェーズよりも起動中フェーズの方が小さいことが好ましい。この閾値は、運転中フェーズよりも起動中フェーズの方が小さいことが好ましい。この閾値は、起動前フェーズよりも運転中フェーズの方が小さくてもよい。
【0061】
電圧過小のエラー条件に含まれる時間の条件(継続時間)(例えば表1の「Ta(例:3秒)以上継続」など)は、動作フェーズごとに異なってもよい(電圧過大、電圧欠相も同様)。この継続時間は、起動前フェーズよりも起動中フェーズの方が短くてもよい。この継続時間は、運転中フェーズよりも起動中フェーズの方が短くてもよい。この継続時間は、運転中フェーズよりも起動前フェーズの方が短くてもよい。
【0062】
表1の起動前フェーズの電圧過小のエラー条件は、「設定電圧値-Va(例:-5%)以下をTa(例:3秒)以上継続」である。「設定電圧値-Va(例:-5%)以下」について説明する。「設定電圧値-Va」は、「設定電圧値からVaを引いた値」を意味する。「設定電圧値」は、電動機コントローラ45に設定された値であり、例えば図示しない設定部(コネクタの接続など)により設定される(後述する設定周波数も同様)。「Va」の値は、例えば、設定電圧値に基づいて決まる値である(表1のVb~Viも同様)。具体的には、「Va」の値は、設定電圧値に、ある割合を掛けた値などである(Vb~Viも同様)。さらに具体的には、この例では、「Va」の値は、設定電圧値の5%の値である。また「Ta(例:3秒)以上継続」の「Ta」は時間であり(Tb~Trも同様)、この例では3秒である。
【0063】
なお、上記のように、表1に記載のエラー条件は一例にすぎず、エラー条件は様々に設定可能である。具体的には例えば、「Va」の値は、設定電圧値に基づいて決まる値(相対的な値)でなくてもよく、絶対的な値(例えば10Vなど)でもよい(他のエラー条件の閾値についても同様)。また、表1に記載の各数値(「-5%」「3秒」など)は、各閾値の大小関係をイメージしやすくするための一例に過ぎず、様々に設定可能である。
【0064】
(電圧過大)
電動機コントローラ45は、電動機35に入力される電圧が過大か否かを検出する。具体的には、検出された電圧が閾値以上(例えば表1の「設定電圧値+Vd(例:+5%)以上」など)である状態が、ある時間継続した場合に、電圧過大のエラー条件が満たされる。
【0065】
電動機35の起動中は、起動前や運転中よりも、電圧が低くなる。そこで、電圧過大か否かを判定するための電圧の閾値(例えば表1の「設定電圧値+Vd(例:+5%)」など)は、起動前フェーズよりも起動中フェーズの方が小さいことが好ましい。この閾値は、運転中フェーズよりも起動中フェーズの方が小さいことが好ましい。この閾値は、運転中フェーズよりも起動前フェーズの方が小さくてもよい。「設定電圧値+Vd(例:+5%)」は、「設定電圧値にVdを加えた値」を意味する。
【0066】
(電圧欠相)
電動機コントローラ45は、電動機35の各相(U相33u、V相33v、W相33w)の少なくともいずれかが欠相の状態であるか否かを検出する。電動機コントローラ45は、欠相であるか否かを、電圧に基づいて検出してもよく、電流に基づいて検出してもよい。電圧に基づいて検出される欠相を「電圧欠相」とし、電流に基づいて検出される欠相を「電流欠相」(後述)とする。例えば、電動作業機械1に不適切な電源が接続された場合や、電力供給線C、電源接続部31、および電力線33の少なくともいずれかに誤接続や断線が生じている場合などに、欠相が生じる場合がある。
【0067】
具体的には、検出された電圧が閾値以下(例えば表1の「設定電圧値-Vg(例:-70%)以下」など)である状態が、ある時間継続した場合に、電圧欠相のエラー条件が満たされる。電圧欠相か否かを判定するための電圧の閾値(例えば表1の「設定電圧値-Vg(例:-70%)」など)は、動作フェーズごとに異なっていなくてもよく、異なってもよい。
【0068】
(周波数過大)
電動機コントローラ45は、電動機35に入力される交流電力の周波数が過大か否かを検出する。例えば、電動作業機械1に不適切な電源が接続された場合などに、電動機35に入力される周波数が異常になる場合がある(周波数過小も同様)。電動機35に入力される周波数が過大である場合、電動機35が過回転(想定される回転数よりも高い回転数で回転)となり、油圧ポンプ21が過回転となり、油圧アクチュエータ23の作動速度が過大となる場合がある。例えば、電動機コントローラ45は、電力線33の電圧または電流の波形を検出することで、周波数を検出する。そして、電動機コントローラ45は、検出した周波数と、閾値と、を比較することで、周波数過大か否かを判定する(周波数過小も同様)。
【0069】
具体的には、検出された周波数が閾値以上(例えば表1の「設定周波数+Fj(例:+5%)以上」など)である状態が、ある時間継続した場合に、周波数過大のエラー条件が満たされる。
【0070】
周波数過大か否かの判定におけるエラー条件は、起動前フェーズと、起動中フェーズと、運転中フェーズとで相違してもよく、少なくとも2つの動作フェーズで同一でもよい(周波数過小も同様)。周波数過大か否かを判定するための周波数の閾値(例えば表1の「設定周波数+Fj(例:+5%)」など)は、動作フェーズごとに異なってもよく、異ならなくてもよい(周波数過小も同様)。この閾値は、例えば、起動中フェーズと運転中フェーズとで等しく、これらと起動前フェーズとで相違してもよい(周波数過小も同様)。例えば、この閾値は、起動中フェーズよりも起動前フェーズで小さくてもよく、運転中フェーズよりも起動前フェーズで小さくてもよい。
【0071】
周波数過大のエラー条件に含まれる時間の条件(継続時間)(例えば表1の「Tj(例:3秒)以上継続」など)は、起動中フェーズや運転中フェーズよりも、起動前フェーズの方が短くてもよい(周波数過小も同様)。起動中フェーズのときに、検出された周波数が閾値以上の状態であることが検出され、この状態のまま運転中フェーズとなる場合が考えられる。この場合、起動中フェーズでの継続時間と運転中フェーズでの継続時間との和がTk(例:5秒)以上となった場合にエラーであると判定されてもよい(周波数過小も同様)。また、運転中フェーズのみでの継続時間がTk(例:5秒)以上となった場合にエラーであると判定されてもよい(周波数過小も同様)。
【0072】
表1の起動前フェーズの周波数過大のエラー条件は、「設定周波数+Fj(例:+5%)以上をTj(例:3秒)以上継続」である。「設定周波数+Fj」は、「設定周波数にFjを加えた値」を意味する。「Fj」の値は、設定電圧値に基づいて決まる値である(表1のFk~Fnも同様)。具体的には、「Fj」の値は、設定電圧値に、ある割合を掛けた値などである(Fk、Fm、Fnも同様)。さらに具体的には、この例では、「Fj」の値は、設定周波数の5%の値である。
【0073】
(周波数過小)
電動機コントローラ45は、電動機35に入力される交流電力の周波数が過小か否かを検出する。電動機35に入力される周波数が過小である場合、電動機35の回転数が不足(想定される回転数よりも小さい回転数で回転)し、油圧ポンプ21の回転数が不足し、油圧アクチュエータ23の作動速度が不足する場合がある。
【0074】
具体的には、検出された周波数が閾値以下(例えば表1の「設定周波数-Fm(例:-5%)」以下など)である状態が、ある時間継続した場合に、周波数過小のエラー条件が満たされる。周波数過小か否かを判定するための周波数の閾値(例えば表1の「設定周波数-Fm(例:-5%)」など)は、起動中フェーズよりも起動前フェーズで小さくてもよく、運転中フェーズよりも起動前フェーズで小さくてもよい。「設定周波数-Fm(例:-5%)」は、「設定周波数からFmを引いた値」を意味する。
【0075】
(電流過小)
電動機コントローラ45は、電動機35を流れる電流が過小か否かを検出する。例えば、電動作業機械1に不適切な電源が接続された場合などに、電動機35を流れる電流が異常になる場合がある(電流過大、電流欠相も同様)。例えば、電動機コントローラ45は、電力線33の各相(U相33u、V相33v、W相33w)の少なくとも2相について、電流過小か否かを検出する(電流過大、電流欠相も同様)。電動機コントローラ45は、電力線33の電流(検出した電流)と、閾値と、を比較することで、電流過小か否かを判定する(電流過大、電流欠相も同様)。
【0076】
具体的には、検出された電流がある範囲内(例えば表1の「設定電流値-Io(例:-95%)<I≦設定電流値-Ip(例:-80%)」など)となっている状態が、ある時間継続した場合に、電流過小のエラー条件が満たされる。
【0077】
電流過大か否かのエラー条件が設定されているか否かは、動作フェーズによって異なる(電流過大、電流欠相も同様)。具体的には、電流過大か否かのエラー条件は、運転中フェーズに設定され、起動前フェーズおよび起動中フェーズには設定されない(電流過大、電流欠相も同様)。電動機コントローラ45は、例えば、起動前フェーズおよび起動中フェーズには電流過小か否かを判定せず、運転中フェーズに電流過小か否かを判定する(電流過大、電流欠相も同様)。なお、電流過小か否かのエラー条件が、起動前フェーズや起動中フェーズに設定されてもよい(電流過大および電流欠相についても同様)。
【0078】
表1の起動前フェーズの電流過小のエラー条件は、「設定電流値-Io(例:-95%)<I≦設定電流値-Ip(例:-80%)をTo(例:5秒)以上継続」である。「設定電流値-Io」は、「設定電流値からIoを引いた値」を意味する(Ipも同様)。「設定電流値」は、例えば、電動機コントローラ45に設定された設定電圧値から算出されてもよく、設定電圧値とは関係なく電動機コントローラ45に設定されていてもよい。「Io」の値は、設定電流値に基づいて決まる値である(表1のIp、Irも同様)。具体的には、「Io」の値は、設定電流値にある割合を掛けた値などである(Ip、Irも同様)。さらに具体的には、この例では、「Ip」の値は、設定電流値の95%である。「I」は、電動機コントローラ45が検出した電流値である(表1の電流過大のエラー条件も同様)。
【0079】
(電流過大)
電動機コントローラ45は、電動機35を流れる電流が過大か否かを検出する。具体的には、検出された電流が閾値(例えば表1の「設定電流値のRq(例:150%)」)以上である状態が、ある時間以上継続した場合に、電流過大のエラー条件が満たされる。「Rq」は、設定電流値に掛けられる割合であり、100%よりも大きい。
【0080】
(電流欠相)
電動機コントローラ45は、欠相であるか否かを電流に基づいて検出する。具体的には、検出された電流が閾値以下(例えば表1の「設定電流値-Ir(例:-95%)以下」など)である状態が、ある時間以上継続した場合に、電流欠相のエラー条件が満たされる。例えば、電圧欠相か否かを判定するための電流の閾値(例えば表1の「設定電流値-Ir(例:-95%)」など)は、電流過小の下限値(表1の「設定電流値-Io(例:-95%)」)と等しくてもよい。
【0081】
(サーマルトリップ)
電動機コントローラ45は、ブレーカ41により回路が遮断されている(サーマルトリップしているか)か否かを検出する。この検出は、常時行われ、起動前フェーズ、起動中フェーズ、および運転中フェーズに行われる。電動機コントローラ45は、ブレーカ41により回路が遮断されている場合にエラーであると判定する(すなわちサーマルトリップのエラー条件が満たされる)。
【0082】
(結線状態異常)
電動機コントローラ45は、結線切替部43による結線の切り換え状態が正常か否かを検出する。具体的には、電動機コントローラ45は、起動中フェーズから運転中フェーズに切り替わったときに、結線切替部43がスター結線からデルタ結線に切り替わったか否かを検出する。電動機コントローラ45は、結線切替部43がスター結線からデルタ結線に切り替わっていないことを検出した場合、結線状態異常のエラーであると判定する(すなわち結線状態異常のエラー条件が満たされる)。
【0083】
具体的には、起動中フェーズのある時間範囲における電流の平均値に所定割合(例えば150%など)を掛けた値が、動作中フェーズのある時間範囲における電流の平均値以上である場合に、結線状態異常のエラー条件が満たされる。上記「起動中フェーズのある時間範囲」は、例えば、起動前フェーズから起動中フェーズに切り替わった時から、所定時間経過後の時間範囲(例えば2~2.5秒)などである。上記「動作中フェーズのある時間範囲」は、例えば、起動中フェーズから運転中フェーズに切り替わった時から、所定時間経過後の時間範囲(例えば0.5~1秒)などである。
【0084】
(電力供給状態の異常が生じる具体例)
電力供給状態の異常が生じる具体例は、次の通りである。
図1に示す作業機械本体10(電動作業機械1)が、稼働エリア(ヤード)の外部から稼働エリアに搬入される場合がある。この場合、作業機械本体10が、輸送車両(トレーラなど)により稼働エリア付近まで輸送される場合がある。この場合、作業機械本体10が、輸送車両から自走で降車し、輸送車両から稼働エリアまで自走で移動する場合がある。この自走の際に、作業機械本体10に、稼働エリアの電源部Sを接続することができない場合がある。作業機械本体10に電源部Sが接続されなければ、作業機械本体10は、自走できない。そこで、作業機械本体10が、可搬式の電源部S(発電機)に接続され、この可搬式の電源部Sから電力供給を受け、自走する場合がある。その後、作業機械本体10が稼働エリアに到着すると、作業機械本体10が、稼働エリアに設けられた電源部S(電源設備)に接続され、この電源部Sから電力供給を受ける。この場合、電源接続部31と電力供給線Cとのつなぎ替えなど、電線のつなぎ替えが複数回発生する。このとき、誤接続が発生すると、電動機35(
図2参照)への電力供給状態が異常となるおそれがある。
【0085】
また、電動作業機械1の使用中(作業中)に、電源部Sの異常、電力供給線Cの異常(例えば断線)、電源接続部31の異常(例えば接触不良)、電力線33の異常(例えば断線)などが生じる場合がある。このとき、
図2に示す電動機35への電力供給状態が異常となるおそれがある。
【0086】
電動機35への電力供給状態が異常の状態のままで電動作業機械1が作動すると、例えば、電動機35が破損する場合や、電動機35が本来の性能を発揮できない(本来の出力を出せない)場合などがある。その結果、電動機35に駆動される油圧ポンプ21や油圧アクチュエータ23が、破損する場合や、本来の性能を発揮できない場合がある。
【0087】
一方、本実施形態の電動作業機械1では、電力供給状態が通知部60に出力される。その結果、作業者は、電動機35への電力供給状態の異常に気付きやすい。その結果、作業者は、電動機35への電力供給状態に関する適切な処置をとりやすい。その結果、電動機35への電力供給状態が適切でないまま電動作業機械1が作動し、電動作業機械1を構成する機器(電動機35、油圧ポンプ21、および油圧アクチュエータ23など)が破損する、という問題を抑制することができる。また、電動機35への電力供給状態が適切でないまま電動作業機械1が作動し、電動作業機械1を構成する機器が本来の性能を発揮できない、という問題を抑制することができる。
【0088】
(第1の発明の効果)
図2に示す電動作業機械1による効果は、次の通りである。電動作業機械1は、作業機械本体10(
図1参照)と、電動機35と、油圧ポンプ21と、油圧アクチュエータ23と、電動機コントローラ45と、通知部60と、を備える。
図1に示すように、作業機械本体10は、電源部Sに接続可能である。電動機35は、作業機械本体10に搭載され、電源部Sから供給される電力により駆動される。
図2に示す油圧ポンプ21は、作業機械本体10(
図1参照)に搭載され、電動機35により駆動される。油圧アクチュエータ23は、作業機械本体10(
図1参照)に搭載され、油圧ポンプ21が吐出する圧油により駆動される。
【0089】
[構成1]電動機コントローラ45は、電源部Sから電動機35への電力供給状態を検出する。通知部60は、電動機コントローラ45で検出された電力供給状態に関する情報を出力する。
【0090】
上記[構成1]では、電源部Sから電動機35への電力供給状態が、通知部60により出力される。よって、電力供給状態に関する情報を、作業者に通知することができる。その結果、電動機35への電力供給状態が適切でないまま、作業者が電動作業機械1を作動させることを抑制することができる。
【0091】
(第2の発明の効果)
[構成2]電動機35は、複数相の交流電力により駆動される。電動機コントローラ45は、複数相のうち少なくとも2相の、電圧および電流の少なくともいずれかを、電力供給状態として検出する。
【0092】
上記[構成2]では、複数相のうち少なくとも2相の情報が検出される。よって、電動機35に入力される電力が逆相か否かを検出することができる。よって、電動機35の逆回転を検出することができる。その結果、油圧ポンプ21の逆回転を検出することができる。また、上記[構成2]では、電圧および電流の少なくともいずれかが検出される。電圧および電流の少なくともいずれかの時間変化から、電動機35に入力される交流電力の周波数を検出することができる。よって、電動機35の回転数を検出することができる。その結果、油圧ポンプ21の回転数を検出することができる。その結果、油圧ポンプ21から吐出される圧油の流量の異常を検出することができ、油圧アクチュエータ23の速度の異常を検出することができる。
【0093】
(第3の発明の効果)
[構成3]電動機コントローラ45は、電力供給状態がエラーの状態であるか否かのエラー判定を行う(
図3のステップS22、S32、S42を参照)。電動機コントローラ45は、電動機35の状態を示す複数の動作フェーズを設定する。複数の動作フェーズは、電動機35の回転が停止している起動前フェーズと、電動機35が起動中である起動中フェーズと、電動機35が起動後に運転している運転中フェーズと、を含む。電動機コントローラ45は、エラー判定の条件を、複数の動作フェーズごとに有する(上記の表1を参照)。
【0094】
上記[構成3]により、次の効果が得られる。電動機35の状態(動作フェーズ)によって、適切な電源供給状態は変わる。そこで、上記[構成4]では、電動機コントローラ45は、動作フェーズごとに、エラー判定の条件(エラー条件)を有している。よって、電動機コントローラ45は、動作フェーズに応じて適切なエラー条件が設定された場合、動作フェーズに応じた適切なエラー判定を行うことができる。その結果、電力供給状態が異常ではないのにエラーと判定されることや、電力供給状態が異常であるのにエラーと判定されないこと(誤判定)を抑制することができる。
【0095】
(第4の発明の効果)
[構成4]
図1に示すように、油圧アクチュエータ23は、作業機械本体10を走行させるための走行モータ23aを備える。
【0096】
上記[構成4]では、作業機械本体10が(電動作業機械1が)自走するためには、電動作業機械1に電力が供給される必要がある。そのため、電動作業機械1では、電力による自走を行わない機械に比べ、電力供給線Cがつなぎ変えられる可能性が高く、誤接続が生じる可能性が高い。そのため、電動作業機械1では、電力による自走を行わない機械に比べ、電力供給状態を作業者に通知することが重要である。電動作業機械1では、上記[構成1]により、電力供給状態を作業者に通知することができる。
【0097】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の構成(例えば配置や形状など)が変更されてもよい。例えば、
図2に示す各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、
図3に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、設定値、閾値、範囲など(例えばエラー条件の閾値など)は、一定でもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じて自動的に変えられてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 電動作業機械
10 作業機械本体
21 油圧ポンプ
23 油圧アクチュエータ
23a 走行モータ
35 電動機
45 電動機コントローラ
60 通知部
S 電源部