IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特開2023-38220姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図3
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図4
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図5
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図6
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図7
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図8
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図9
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図10
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図11
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図12
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図13
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図14
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図15
  • 特開-姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038220
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】姿勢推定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20230309BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20230309BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230309BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230309BHJP
【FI】
B60W40/06
B60W40/114
G08G1/16 C
G05D1/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209722
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2018163738の分割
【原出願日】2018-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(57)【要約】
【課題】移動体に取り付けられた計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定可能な姿勢推定装置を提供する。
【解決手段】車載機1は、区画線を車両に取り付けられたライダ2により計測した計測点群を取得し、当該計測点群に基づき、車両の走行方向に沿った区画線の中心線を算出する。そして、車載機1は、ライダ2が基準とするヨー方向基準角に対する区画線の中心線の方向に基づき、ライダ2の車両への取り付け姿勢を推定する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得手段と、
前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出手段と、
前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定手段と、
を有する姿勢推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置の姿勢を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーダやカメラなどの計測装置の計測データに基づいて、自車位置推定などを行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、計測センサの出力と、予め地図上に登録された地物の位置情報とを照合させることで自己位置を推定する技術が開示されている。また、特許文献2には、カルマンフィルタを用いた自車位置推定技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-257742号公報
【特許文献2】特開2017-72422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
計測装置から得られるデータは、計測装置を基準とした座標系の値であり、車両に対する計測装置の姿勢等に依存したデータとなっているため、車両を基準とした座標系の値に変換する必要がある。従って、計測装置の姿勢にずれが生じた場合には、そのずれを的確に検知して計測装置のデータに反映させたり、計測装置の姿勢を修正したりする必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、移動体に取り付けられた計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定可能な姿勢推定装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、姿勢推定装置であって、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得手段と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出手段と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定手段と、を有する。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、姿勢推定装置が実行する制御方法であって、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得工程と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出工程と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定工程と、を有する。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得手段と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出手段と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定手段として前記コンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両システムの概略構成図である。
図2】車載機の機能的構成を示すブロック図である。
図3】2次元座標により表された車両座標系とライダ座標系との関係を示す図である。
図4】3次元座標により表された車両座標系とライダ座標系との関係を示す図である。
図5】ライダのロール角を推定する際の検出対象地物となる道路標識付近に車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。
図6】道路標識の被計測面を正面視した場合の道路標識と対象計測点群との位置関係を示す。
図7】ライダ座標系における対象計測点群及び抽出された外縁点群を示す。
図8】外縁点群が形成する四角形の各辺の近似直線を示す。
図9】ロール角推定処理の手順を示すフローチャートである。
図10】ライダのピッチ角を推定する際の検出対象地物となる道路標識付近に車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。
図11】ピッチ角推定処理の手順を示すフローチャートである。
図12】ライダのヨー角を推定する際の検出対象地物となる区画線に沿って車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。
図13】検出ウィンドウにおける中心点を丸印により示した図である。
図14】検出ウィンドウごとに算出した区画線の中心線とヨー方向基準角とがなす角度を示す。
図15】ヨー角推定処理の手順を示すフローチャートである。
図16】ロール角、ピッチ角及びヨー角の推定値に基づく処理の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、姿勢推定装置は、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得手段と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出手段と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定手段と、を有する。姿勢推定装置は、この態様により、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって走行路面に沿って形成された地物を基準として、計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定することができる。
【0011】
上記姿勢推定装置の一態様では、前記取得手段は、前記地物に関する地物情報に基づき前記地物の位置を認識することで、当該位置において前記計測装置が計測した計測点群を前記地物の計測点群として取得する。姿勢推定装置は、この態様により、移動体の走行路に沿った鉛直面又は走行路の幅方向に沿った鉛直面を有する地物の位置を把握して当該地物の計測点群を好適に取得することができる。
【0012】
上記姿勢推定装置の他の一態様では、前記推定手段は、前記線と前記計測装置におけるヨー方向の基準線とのなす角に基づき、前記計測装置のヨー方向の姿勢を推定する。姿勢推定装置は、この態様により、計測装置のヨー方向の姿勢を好適に推定することができる。
【0013】
上記姿勢推定装置の他の一態様では、前記推定手段は、異なる前記計測点群に基づき前記算出手段が算出した複数の前記線と前記基準線とのなす角を平均化することで、前記計測装置のヨー方向の姿勢を推定する。姿勢推定装置は、この態様により、計測装置のヨー方向の姿勢をより的確に推定することができる。
【0014】
上記姿勢推定装置の他の一態様では、前記算出手段は、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の複数の点を算出し、当該複数の点から前記線を算出し、前記推定手段は、異なる前記計測点群に基づき前記算出手段が算出した複数の前記線と前記基準線とのなす角を、当該線の各々の算出に用いた前記点の数に基づき平均化することで、前記計測装置のヨー方向の姿勢を推定する。この態様では、姿勢推定装置は、算出した線の各々の精度を好適に考慮した重み付けにより、計測装置のヨー方向の姿勢をより的確に推定することができる。
【0015】
好適な例では、前記地物は、前記走行路に設けられた区画線又は縁石であるとよい。また、他の好適な例では、前記計測装置は、光を走査する光走査装置であるとよい。
【0016】
上記姿勢推定装置の他の一態様では、前記基準とする方向は、前記取り付け姿勢のずれが生じていない場合に前記計測装置の座標系において前記移動体の走行方向とみなされる方向であり、前記取り付け姿勢のずれが生じた場合に、当該ずれに応じて前記移動体の走行方向と異なる方向を示す。姿勢推定装置は、この態様により、算出した被計測面上の線に対する基準とする方向のずれに基づき、計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、姿勢推定装置が実行する制御方法であって、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得工程と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出工程と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定工程と、を有する。姿勢推定装置は、この制御方法を実行することで、計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行するプログラムであって、被計測面が移動体が走行する走行路面と平行であって前記走行路面に沿って形成された地物を、前記移動体に取り付けられた計測装置により計測した計測点群を取得する取得手段と、前記計測点群に基づき、前記移動体の走行方向に沿った前記被計測面上の線を算出する算出手段と、前記計測装置が基準とする方向に対する前記線の方向に基づき、前記計測装置の前記移動体への取り付け姿勢を推定する推定手段として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、計測装置の移動体への取り付け姿勢を好適に推定することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な各実施例について説明する。
【0020】
[概略構成]
図1は、本実施例に係る車両システムの概略構成図である。図1に示す車両システムは、車両の運転支援に関する制御を行う車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2、ジャイロセンサ3、加速度センサ4、及びGPS受信機5などのセンサ群とを有する。
【0021】
車載機1は、ライダ2、ジャイロセンサ3、加速度センサ4、及びGPS受信機5などのセンサ群と電気的に接続し、これらの出力データを取得する。また、道路データ及び道路付近に設けられた地物に関する地物情報などを記憶した地図データベース(DB:DataBase)10を記憶している。そして、車載機1は、上述の出力データ及び地図DB10に基づき、車両の位置の推定を行い、位置推定結果に基づいた自動運転制御などの車両の運転支援に関する制御などを行う。また、車載機1は、ライダ2の出力などに基づいて、ライダ2の姿勢の推定を行う。そして、車載機1は、この推定結果に基づいて、ライダ2が出力する点群データの各計測値を補正する処理などを行う。車載機1は、本発明における「姿勢推定装置」の一例である。
【0022】
ライダ2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群情報を生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光のその照射方向での物体までの距離とに基づき生成され、車載機1へ供給される。ライダ2は、本発明における「計測装置」の一例である。
【0023】
図2は、車載機1の機能的構成を示すブロック図である。車載機1は、主に、インターフェース11と、記憶部12と、入力部14と、制御部15と、情報出力部16と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0024】
インターフェース11は、ライダ2、ジャイロセンサ3、加速度センサ4、及びGPS受信機5などのセンサから出力データを取得し、制御部15へ供給する。また、インターフェース11は、制御部15が生成した車両の走行制御に関する信号を車両の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)へ供給する。
【0025】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、地図DB10と、ライダ設置情報ILとを有する。地図DB10は、例えば、道路データ、施設データ、及び、道路周辺の地物データなどを含むデータベースである。道路データには、経路探索用の車線ネットワークデータ、道路形状データ、交通法規データなどが含まれる。地物データは、道路標識等の看板や停止線等の道路標示、白線等の道路区画線や道路沿いの構造物等の情報(例えば位置情報及び種別情報)を含む。また、地物データは、自車位置推定に用いるための地物の高精度な点群情報などを含んでもよい。その他、地図DBには、位置推定に必要な種々のデータが記憶されてもよい。
【0026】
ライダ設置情報ILは、ある基準時(例えばライダ2のアライメント調整直後などの姿勢ずれが生じていない時)におけるライダ2の車両に対する相対的な姿勢及び位置に関する情報である。本実施例では、ライダ2等の姿勢を、ロール角、ピッチ角、ヨー角(即ちオイラー角)により表すものとする。ライダ設置情報ILは、後述するライダ2の姿勢の推定処理が実行された場合に、推定結果に基づき更新されてもよい。
【0027】
入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付ける。情報出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0028】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。制御部15は、インターフェース11から供給される各センサの出力信号及び地図DB10に基づき、自車位置の推定を行い、自車位置の推定結果に基づいて自動運転制御を含む車両の運転支援に関する制御などを行う。このとき、制御部15は、ライダ2の出力データを用いる場合には、ライダ2が出力する計測データを、ライダ設置情報ILに記録されたライダ2の設置情報に含まれる姿勢及び位置を基準として、ライダ2を基準とした座標系から車両を基準とした座標系(以下「基準座標系」)に変換する。さらに、本実施例では、制御部15は、車両に対するライダ2の現在(即ち処理基準時)の姿勢を推定することで、ライダ設置情報ILに記録された姿勢に対する変化量を算出し、当該変化量に基づきライダ2が出力する計測データを補正する。これにより、制御部15は、ライダ2の姿勢にずれが生じた場合であっても、当該ずれの影響を受けないようにライダ2が出力する計測データを補正する。制御部15は、本発明におけるプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0029】
[座標系の変換]
ライダ2により取得される3次元点群データの各計測点が示す3次元座標は、ライダ2の位置及び姿勢を基準とした座標系(「ライダ座標系」とも呼ぶ。)で表されており、車両の位置及び姿勢を基準とした座標系(「車両座標系」とも呼ぶ。)に変換する必要がある。ここでは、ライダ座標系と車両座標系との変換について説明する。
【0030】
図3は、2次元座標により表された車両座標系とライダ座標系との関係を示す図である。ここでは、車両座標系は、車両の中心を原点とし、車両の進行方向に沿った座標軸「x」と車両の側面方向に沿った座標軸「y」を有する。また、ライダ座標系は、ライダ2の正面方向(矢印A2参照)に沿った座標軸「x」とライダ2の側面方向に沿った座標軸「y」を有する。
【0031】
ここで、車両座標系に対するライダ2のヨー角を「Lψ」、ライダ2の位置を[L、Lとした場合、車両座標系から見た時刻「k」の計測点[x(k)、y(k)]は、回転行列「Cψ」を用いた以下の式(1)によりライダ座標系の座標[x(k)、y(k)]へ変換される。
【0032】
【数1】
一方、ライダ座標系から車両座標系への変換は、回転行列の逆行列(転置行列)を用いればよい。よって、ライダ座標系で取得した時刻kの計測点[x(k)、y(k)]は、以下の式(2)により車両座標系の座標[x(k)、y(k)]に変換することが可能である。
【0033】
【数2】
図4は、3次元座標により表された車両座標系とライダ座標系との関係を示す図である。ここでは、座標軸x、yに垂直な座標軸を「z」、座標軸x、yに垂直な座標軸を「z」とする。
【0034】
車両座標系に対するライダ2のロール角を「Lφ」、ピッチ角を「Lθ」、ヨー角を「Lψ」とし、ライダ2の座標軸xにおける位置が「L」、座標軸yにおける位置が「L」、座標軸zにおける位置が「L」とした場合、車両座標系から見た時刻「k」の計測点[x(k)、y(k)、z(k)]は、ロール、ピッチ、ヨーに対応する各回転行列「Cφ」、「Cθ」、「Cψ」により表される方向余弦行列「C」を用いた以下の式(3)により、ライダ座標系の座標[x(k)、y(k)、z(k)]へ変換される。
【0035】
【数3】
一方、ライダ座標系から車両座標系への変換は、方向余弦行列の逆行列(転置行列)を用いればよい。よって、ライダ座標系で取得した時刻kの計測点[x(k)、y(k)、z(k)]は、以下の式(4)により車両座標系の座標[x(k)、y(k)、z(k)]に変換することが可能である。
【0036】
【数4】
以下では、ライダ座標系から車両座標系へ変換するための式(4)に用いられるロール角Lφ、ピッチ角Lθ、ヨー角Lψの各推定方法について順に説明する。
【0037】
[ロール角の推定]
まず、ライダ2のロール角Lφの推定方法について説明する。車載機1は、走行路の進行方向に対して垂直面(即ち走行路に対して正面)を有する方形(矩形)状の道路標識を、ライダ2により検出すべき対象となる地物(「検出対象地物Ftag」とも呼ぶ。)とみなし、当該道路標識の傾きをライダ2が計測する計測点群に基づき算出することで、ライダ2のロール角Lφを推定する。
【0038】
図5は、ライダ2のロール角を推定する際の検出対象地物Ftagとなる道路標識22付近に車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。図5において、破線円20は、ライダ2により地物を検出可能な範囲(「ライダ検出範囲」とも呼ぶ。)を示し、破線枠21は、検出対象地物Ftagである道路標識22を検出するための検出ウィンドウを示す。
【0039】
この場合、車載機1は、地図DB10を参照することで、走行路の進行方向に対して垂直面を有する方形状の道路標識22がライダ検出範囲内に存在することを認識し、当該道路標識22に関する地物データに基づき破線枠21に示す検出ウィンドウを設定する。この場合、車載機1は、例えば、検出対象地物Ftagとなる道路標識の種別情報などを予め記憶しておき、当該種別情報が示す種別の道路標識がライダ検出範囲内に存在するか否かを地図DB10の地物データを参照して判定する。なお、地図DB10の地物データに地物の大きさ又は/及び形状の情報が含まれている場合には、車載機1は、検出対象地物Ftagとなる道路標識22の大きさ又は/及び形状の情報に基づき検出ウィンドウの大きさ又は/及び形状を決定してもよい。そして、車載機1は、ライダ2が計測する計測点群のうち、設定した検出ウィンドウ内に存在する計測点群(「対象計測点群Ptag」とも呼ぶ。)を、道路標識22の計測点群として抽出する。
【0040】
図6(A)~(C)は、道路標識22の被計測面を正面視した場合の対象計測点群Ptagとライダ2によるレーザ光の走査線23(即ち、レーザ光の被照射点を時系列に結ぶ線)との位置関係を示す。なお、説明を容易にするため,ライダ2の初期姿勢角Lφ,Lθ,LΨが0度である場合を例にとっている。ここで、図6(A)は、ライダ2にロール方向のずれが生じていない場合の対象計測点群Ptagとライダ2の走査線23との関係を示し、図6(B)、(C)は、ロール方向のずれΔLφが生じている場合の対象計測点群Ptagとライダ2の走査線23との関係を示す。ここで、図6(B)は、車両座標系のy-z平面内における対象計測点群Ptagとライダ2の走査線23との関係を示し、図6(C)は、基準座標系のy‘-z‘平面内における対象計測点群Ptagとライダ2の走査線23との関係を示す。なお、ここでは、説明便宜上、ライダ2の姿勢ずれが生じていないときには、道路標識22の長手方向はy軸と平行であるものとし、車両は平坦な道路上に存在しているものとする。
【0041】
図6(A)に示すように、ライダ2のロール角にずれが生じていない場合には、ライダ2は、道路標識22の横方向(即ち水平方向又は長手方向)と平行にスキャンを行う。そして、この場合、対象計測点群Ptagの縦方向における点群の数は、横方向における位置に関わらず同じ数(図6(A)では6個)となる。
【0042】
一方、ライダ2のロール角にずれが生じている場合には、道路標識22に対して走査線が斜めに傾いている。ここで、道路標識22の長手方向は車両に対して傾いておらず、ライダ2の走査線が車両に対して傾いているため、車両座標系で観察した場合には、図6(B)に示すように、y軸と道路標識22の長手方向とが平行となり、ライダ2の走査線がy軸に対して傾く。一方、基準座標系で観察した場合には、図6(C)に示すように、y‘軸とライダ2の走査線とが平行となり、道路標識22の長手方向がy‘軸に対して傾く。
【0043】
次に、対象計測点群Ptagの抽出後の処理について説明する。まず、車載機1は、対象計測点群Ptagの各計測点に対する受光強度を所定の閾値により判定することで、所定の閾値以下となる受光強度に対応する計測点を対象計測点群Ptagから除外する。そして、車載機1は、受光強度に基づく除外処理後の対象計測点群Ptagから、外縁を構成する点群(「外縁点群Pout」とも呼ぶ。)を抽出する。例えば、車載機1は、上下左右の少なくとも一方向において、隣接する計測点が存在しない対象計測点群Ptagの計測点を、外縁点群Poutとして抽出する。
【0044】
図7(A)は、ライダ座標系における対象計測点群Ptagを示し、図7(B)は、所定の閾値以下となる受光強度に対応する計測点を除外した後の対象計測点群Ptagを示す。また、図7(C)は、図7(B)に示す対象計測点群Ptagから抽出した外縁点群Poutを示す。図7(A)、(B)に示すように、図7(A)に示す計測点のうち、レーザ光の一部のみが反射したことにより一部が欠けている計測点については、受光強度が所定の閾値以下となり、対象計測点群Ptagから除外されている。また、図7(B)、(C)に示すように、上下左右の少なくとも一方向において隣接する計測点が存在しない計測点が外縁点群Poutとして抽出されている。
【0045】
次に、車載機1は、外縁点群Poutから道路標識22の長手方向の傾きを算出する。ここで、外縁点群Poutは四角形を形成することから、この四角形のそれぞれの辺ごとに外縁点群Poutを分類し、辺ごとに分類した外縁点群Poutから、最小二乗法などの回帰分析手法により各辺の近似直線の傾きを算出する。
【0046】
図8(A)は、四角形の上辺を形成する外縁点群Poutを抽出し,最小2乗法で直線を引いた図を示す。図8(B)は、四角形の底辺を形成する外縁点群Poutを抽出し,最小2乗法で直線を引いた図を示す。図8(C)は、四角形の左辺を形成する外縁点群Poutを抽出し,最小2乗法で直線を引いた図を示す。図8(D)は、四角形の右辺を形成する外縁点群Poutを抽出し,最小2乗法で直線を引いた図を示す。
【0047】
この場合、車載機1は、図8(A)~(D)に示される各直線を算出し、各直線のy‘軸に対する傾き「φ」~「φ」を算出する。そして、車載機1は、以下の式(5)に示すように、これらの傾き「φ」~「φ」の平均を、道路標識22の傾き「φ」として算出する。
【0048】
【数5】
ここで、四角形の左辺及び右辺は、上辺及び底辺に対して約90°ずれているため、式(5)では、四角形の左辺及び右辺を構成する外縁点群Poutから求めた直線の傾きφ及びφに対して「π/2」だけ補正している。
【0049】
なお、好適には、車載機1は、傾きφを求める場合、四角形の各辺を構成する外縁点群Poutの数に基づき、各傾きφ~φに重み付けをしてもよい。この場合、四角形の上辺を形成する外縁点群Poutの数を「n」、四角形の底辺を形成する外縁点群Poutの数を「n」、四角形の左辺を形成する外縁点群Poutの数を「n」、四角形の右辺を形成する外縁点群Poutの数を「n」とすると、車載機1は、以下の式(6)に基づき重み付け平均を行うことで、傾きφを算出する。
【0050】
【数6】
他の好適な例では、車載機1は、傾きφを求める場合、ライダ2の水平方向の対象計測点群Ptagの間隔「I」と垂直方向の対象計測点群Ptagの間隔「I」とに基づいて、各傾きφ~φに重み付けをしてもよい。ここで、水平間隔I及び垂直間隔Iは、それぞれ図7(B)に示される間隔となる。この場合、車載機1は、垂直間隔Iが長いほど、四角形の上辺及び底辺の傾きφ及びφの精度が低くなり、水平間隔Iが長いほど、四角形の左辺及び右辺の傾きφ及びφの精度が低くなるとみなし、以下の式(7)に示すように、水平間隔I及び垂直間隔Iの逆数を用いて重み付け平均を行うことで、傾きφを算出する。
【0051】
【数7】
また、車載機1は、四角形の各辺を構成する点群の数n~n及び垂直間隔I及び水平間隔Iの両方を加味した重み付け平均により傾きφを算出してもよい。この場合、車載機1は、以下の式(8)に基づき重み付け平均を行うことで、傾きφを算出する。
【0052】
【数8】
また、車載機1は、ジャイロセンサ3及び加速度センサ4の出力に基づき車体のロール角「φ」を算出し、式(5)~(8)のいずれかにより算出した傾きφとの差分をとることで、ライダ2のロール角Lφを算出する。この場合、車載機1は、以下の式(9)に基づきライダ2のロール角Lφを算出する。
【0053】
【数9】
これにより、車載機1は、車両の傾きの影響を排除したライダ2のロール角Lφを好適に算出することができる。
【0054】
好適には、検出対象地物Ftagである道路標識22が水平方向に対して傾いている可能性や計測誤差等を勘案し、車載機1は、上記のライダ2のロール角Lφの算出を、検出対象地物Ftagとなる多くの道路標識に対して実施し、それらを平均化するとよい。これにより、車載機1は、確からしいライダ2のロール方向の傾きLφを好適に算出することができる。
【0055】
また、車体のロール角φは平均すると0°と見なせるため,上述の平均化の時間を長くすることにより、車体のロール角度φを取得する必要がなくなる。例えば、十分大きいN個分の傾きφを取得した場合、車載機1は、ライダ2のロール角Lφを、以下の式(10)により定めてもよい。
【0056】
【数10】
上述のNは、車体ロール角φの平均が略0°とみなすことができるサンプル数であり、例えば実験等に基づき予め定められる。
【0057】
図9は、ロール角推定処理の手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、車載機1は、地図DB10を参照し、車両周辺の検出対象地物Ftagに対して検出ウィンドウを設定する(ステップS101)。この場合、車載機1は、検出対象地物Ftagとして、走行路の進行方向に対して垂直面を有する方形状の道路標識を選定し、現在位置から所定距離以内に存在する上述の道路標識を地図DB10から特定する。そして、車載機1は、特定した道路標識に関する位置情報等を地図DB10から取得することで、検出ウィンドウを設定する。
【0059】
次に、車載機1は、ステップS101で設定した検出ウィンドウ内のライダ2の計測点群を、検出対象地物Ftagの点群(即ち対象計測点群Ptag)として取得する(ステップS102)。そして、車載機1は、ステップS102で取得した対象計測点群Ptagから、これらの点群の外縁を形成する外縁点群Poutを抽出する(ステップS103)。
【0060】
そして、車載機1は、ステップS103で抽出した外縁点群Poutの横方向の傾きφを算出する(ステップS104)。この場合、車載機1は、図8(A)~(D)において説明したように、外縁点群Poutが形成する四角形の各辺に該当する点群から各辺に対応する直線の傾きφ~φを求め、式(5)~(8)のいずれかの式を採用して傾きφを算出する。
【0061】
その後、車載機1は、傾きφの平均化処理又は/及び車体のロール角φとの差分処理により、ライダ2のロール角Lφを算出する(ステップS105)。上述の平均化処理では、車載機1は、ステップS101~S104の処理を複数の検出対象地物Ftagに対して実行することで複数の傾きφを取得し、取得した複数の傾きφの平均値を、傾きLφとして算出する。
【0062】
[ピッチ角の推定]
次に、ライダ2のピッチ角Lθの推定方法について説明する。車載機1は、走行路の幅方向に対して垂直面(即ち走行路に対して横向きの面)を有する方形状の道路標識を検出対象地物Ftagとみなし、当該道路標識の傾きをライダ2が出力する計測点群にもとづき算出することで、ライダ2のピッチ角を推定する。
【0063】
図10は、ライダ2のピッチ角を推定する際の検出対象地物Ftagとなる道路標識24付近に車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。図10において、破線円20は、ライダ2により地物を検出可能なライダ検出範囲を示し、破線枠21は、検出対象地物Ftagである道路標識24に対して設定した検出ウィンドウを示す。
【0064】
この場合、車載機1は、地図DB10を参照することで、走行路の幅方向に対して垂直面を有する方形状の道路標識24が破線円20に示されるライダ検出範囲内に存在することを認識し、当該道路標識24に関する位置情報等に基づき破線枠21に示す検出ウィンドウを設定する。この場合、車載機1は、例えば、検出対象地物Ftagとなる道路標識の種別情報などを予め記憶しておき、当該種別情報が示す種別の道路標識がライダ検出範囲内に存在するか否かを地図DB10の地物データを参照して判定する。そして、車載機1は、ライダ2が出力する計測点群のうち、設定した検出ウィンドウ内に存在する計測点群を、対象計測点群Ptagとして抽出する。
【0065】
次に、車載機1は、抽出した対象計測点群Ptagに対して、ロール角の推定方法と同様の処理を実行することで、ライダ2のピッチ角を推定する。
【0066】
具体的には、まず、車載機1は、対象計測点群Ptagの各計測点に対する受光強度を所定の閾値により判定することで、所定の閾値以下となる受光強度に対応する計測点を対象計測点群Ptagから除外する。そして、車載機1は、受光強度に基づく除外処理後の対象計測点群Ptagから、外縁を構成する外縁点群Poutを抽出する。次に、車載機1は、外縁点群Poutが構成する四角形の各辺の近似直線の傾き「θ」~「θ」を最小二乗法などの回帰分析手法により算出する。そして、車載機1は、傾きθ~θに基づく平均化処理を行うことで、道路標識22の傾き「θ」を算出する。なお、車載機1は、式(6)~(8)と同様、四角形の各辺を構成する点群の数n~nと、垂直間隔I及び水平間隔Iとの少なくとも一方を加味した重み付け平均により傾きθを算出してもよい。
【0067】
また、車載機1は、ジャイロセンサ3及び加速度センサ4の出力に基づき車体のピッチ角「θ」を算出し、傾きθとの差分をとることで、ライダ2のピッチ角Lθを算出する。この場合、車載機1は、以下の式(11)に基づきライダ2のピッチ方向の傾きLθを算出する。
【0068】
【数11】
これにより、車載機1は、車両の傾きの影響を排除したライダ2のピッチ角Lθを好適に算出することができる。また、好適には、検出対象地物Ftagである道路標識24が水平方向に対して傾いている可能性や計測誤差等を勘案し、車載機1は、上記のライダ2のピッチ角Lθの算出を、検出対象地物Ftagとなる多くの道路標識に対して実施し、それらを平均化するとよい。これにより、車載機1は、確からしいライダ2のピッチ角Lθを好適に算出することができる。ここで、車体のピッチ角θは平均すると0°と見なせるため,上述の平均化の時間を長くすることにより、車体のピッチ角度θを取得する必要がなくなる。例えば、N個分の傾きθを取得した場合、ライダ2のピッチ角Lθは、以下の式(12)により表される。
【0069】
【数12】
【0070】
図11は、ピッチ角推定処理の手順を示すフローチャートである。
【0071】
まず、車載機1は、地図DB10を参照し、車両周辺の検出対象地物Ftagに対して検出ウィンドウを設定する(ステップS201)。この場合、車載機1は、検出対象地物Ftagとして、走行路の幅方向に対して垂直面を有する方形状の道路標識を選定し、現在位置から所定距離以内に存在する上述の道路標識を地図DB10から特定する。そして、車載機1は、特定した道路標識に関する位置情報等を地図DB10から取得することで、検出ウィンドウを設定する。
【0072】
次に、車載機1は、ステップS201で設定した検出ウィンドウ内のライダ2の計測点群を、検出対象地物Ftagの点群(即ち対象計測点群Ptag)として取得する(ステップS202)。そして、車載機1は、ステップS202で取得した検出対象地物Ftagの点群から、これらの点群の外縁を形成する外縁点群Poutを抽出する(ステップS203)。
【0073】
そして、車載機1は、ステップS203で抽出した外縁点群Poutの長手方向の傾きθを算出する(ステップS204)。その後、車載機1は、傾きθの平均化処理又は/及び車体のピッチ角θとの差分処理により、ライダ2のピッチ方向の傾きLθを算出する(ステップS205)。上述の平均化処理では、車載機1は、ステップS201~S204の処理を複数の対象計測点群Ptagに対して実行することで複数の傾きθを算出し、これらの平均値を傾きLθとして算出する。
【0074】
[ヨー角の推定]
次に、ライダ2のヨー角Lψの推定方法について説明する。車載機1は、白線などの区画線を検出対象地物Ftagとみなし、区画線の中心線の方向をライダ2が計測する計測点群に基づき算出することで、ライダ2のヨー角Lψを推定する。
【0075】
図12は、ライダ2のヨー角を推定する際の検出対象地物Ftagとなる区画線に沿って車両が走行する場合の車両周辺の俯瞰図を示す。この例では、車両の左側に連続する区画線である連続線30が存在し、車両の右側に断続的に存在する区画線である破線31が存在している。また、矢印25は、ライダ2にヨー方向のずれが生じていない場合のヨー方向の基準方向を示し,ライダ2の座標軸「x」をライダ2のヨー角LΨだけ回転させた向きであり、車両の進行方向に沿った座標軸「x」と一致する。すなわち、ライダ2のヨー角LΨは、ずれが生じていなければ、車両の走行方向であるとみなすヨー角(「ヨー方向基準角」とも呼ぶ。)を示す。一方、矢印26は、ライダ2にヨー方向のずれがΔLΨ生じた場合のヨー方向基準角を示しており、ヨー方向基準角を修正しないと、車両の走行方向と一致しなくなる。ヨー方向基準角は、例えば予め記憶部12等に記憶されている。
【0076】
この場合、例えば、地図DB10内には、連続線30の離散的な座標位置及び破線31の離散的な座標位置を示す区画線情報が含まれている。そして、車載機1は、この区画線情報を参照し、車両の左前方、左後方、右前方、右後方の各方向において、車両から所定距離(例えば5m)離れた位置から最も近い座標位置を抽出し、抽出した座標位置を中心として矩形領域を、破線枠21A~21Dに示される検出ウィンドウとして設定する。
【0077】
次に、車載機1は、ライダ2が計測する計測点群から、検出ウィンドウ内において、路面上かつ、所定の閾値以上の反射強度なる点群を、対象計測点群Ptagとして抽出する。そして、車載機1は、走査線ごとの対象計測点群Ptagの中心点を求め、検出ウィンドウごとにこれらの中心点を通る直線(矢印27A~27D参照)を、区画線の中心線として算出する。
【0078】
図13(A)は、破線枠21Aの検出ウィンドウにおける中心点を丸印により示した図であり、図13(B)は、破線枠21Bの検出ウィンドウにおける中心点を丸印により示した図である。また、図13(A)、(B)では、ライダ2によるレーザ光の走査線28が明示されている。なお、区画線に入射するライダ2のレーザ光は下斜め方向に射出されているため、走査線は、車両に近づくほど間隔が短くなっている。
【0079】
図13(A)、(B)に示すように、車載機1は、各走査線28に対して中心点を算出する。中心点は、計測点が示す座標位置を走査線28ごとに平均した位置であってもよく、各走査線28上の左端及び右端の計測点の中間点であってもよく、各走査線28上の中間に存在する計測点であってもよい。そして、車載機1は、算出した中心点から、最小二乗法などの回帰分析手法により区画線の中心線(矢印27A、27B参照)を検出ウィンドウごとに算出する。
【0080】
そして、車載機1は、検出ウィンドウごとに算出した区画線の中心線とヨー方向基準角(図12の矢印26参照)とがなす角を、傾き「ψ」~「ψ」として算出する。図14(A)~(D)は、傾きψ~ψをそれぞれ示した図である。図14(A)~(D)に示すように、傾きψ~ψは、区画線の中心線を指し示す矢印27A~27Dと、ヨー方向基準角を指し示す矢印26とがなす角に相当する。
【0081】
そして、車載機1は、以下の式(13)に示されるように、傾きψ~ψを平均化することで、傾きψを算出する。
【0082】
【数13】
また、車載機1は、区画線の中心線の算出に用いた中心点の数に基づき傾きψ~ψを重み付けしてもよい。この場合、傾きψとなる区画線の中心線の算出に用いた中心点の数を「n」、傾きψとなる区画線の中心線の算出に用いた中心点の数を「n」、傾きψとなる区画線の中心線の算出に用いた中心点の数を「n」、傾きψとなる区画線の中心線の算出に用いた中心点の数を「n」とすると、車載機1は、以下の式(14)に基づき傾きψを算出する。
【0083】
【数14】
これにより、車載機1は、少ない中心点により算出した区画線(図12では破線31)の中心線の傾きの重みを相対的に低くし、傾きψを的確に求めることができる。よって、図13(A)の検出状況に対して、図13(B)の検出状況では重みが低くなる。なお、図12図14の説明では、同時に4箇所の区画線に対する傾きψ~ψを算出する例について示したが、少なくとも1箇所の区画線に対する傾きを算出すればよい。
【0084】
次に、傾きψからライダ2のヨー角Lψを算出する方法について説明する。白線などの区画線は、道路に沿って描かれているため、車体のヨー角はほぼ一定(即ち走行路と平行)とみなすことができる。よって、車載機1は、ロール角やピッチ角の推定方法と異なり、傾きψを、ライダ2のヨー角のずれΔLψ(即ち「ΔLψ=ψ」)として算出する。ただし、通常の走行では、車線変更や、車線内での車体のふらつきが存在する。よって、車載機1は、多くの区画線に対して中心線の傾きを算出する処理を実行し、それを平均化するとよい。これにより、車載機1は、確からしいライダ2のヨー角のずれΔLψを好適に算出することができる。例えば、N個分の傾きψを取得した場合、ライダ2のヨー角Lψは、以下の式(15)により表される。
【0085】
【数15】
ここで、「LΨ0」は、ヨー角にずれが生じていないときのヨー角LΨ(即ちヨー方向基準角)を示す。
【0086】
図15は、ヨー角推定処理の手順を示すフローチャートである。
【0087】
まず、車載機1は、地図DB10を参照し、区画線に対して1個以上の検出ウィンドウを設定する(ステップS301)。そして、車載機1は、ステップS301で設定した検出ウィンドウ内のライダ2の計測点群を、区画線の点群(即ち対象計測点群Ptag)として取得する(ステップS302)。
【0088】
そして、車載機1は、設定した各検出ウィンドウ内の区画線の中心線を算出する(ステップS303)。この場合、車載機1は、ライダ2の走査線ごとに対象計測点群Ptagの中心点を求め、中心点から最小二乗法等に基づき検出ウィンドウごとに区画線の中心線を算出する。そして、車載機1は、予め記憶部12等に記憶したヨー角基準角と、区画線の中心線との角度ψを算出する(ステップS304)。この場合、車載機1は、ステップS301において2つ以上の検出ウィンドウを設定した場合には、検出ウィンドウごとにヨー角基準角と区画線の中心線との角度を求め、これらの角度を平均化又は中心点の数により重み付け平均化することで、上述の角度ψを算出する。
【0089】
そして、車載機1は、異なる区画線を対象にステップS301~S304を実行することで算出した複数の角度ψを平均化し、式(15)に基づき、ライダ2のヨー角Lψを算出する(ステップS305)。
【0090】
ここで、以上説明したロール角、ピッチ角及びヨー角の推定値に基づく処理の具体例について説明する。図16は、ロール角、ピッチ角及びヨー角の推定値に基づく処理の具体例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、車載機1は、図9図11、又は図15のフローチャートの処理を実行することで、ライダ2のロール角Lφ、ピッチ角Lθ、又はヨー角Lψのいずれかを算出したか否か判定する(ステップS401)。そして、車載機1は、ライダ2のロール角Lφ、ピッチ角Lθ、又はヨー角Lψのいずれかを算出した場合(ステップS401;Yes)、算出した角度がライダ設置情報ILに記録された角度から所定角度以上変化しているか否か判定する(ステップS402)。上述の閾値は、後述するステップS404でのライダ2の計測データの補正処理を行うことで引き続きライダ2の計測データを使用できるか否かを判定するための閾値であり、例えば予め実験等に基づき設定される。
【0092】
そして、車載機1は、算出した角度がライダ設置情報ILに記録された角度から所定角度以上変化している場合(ステップS402;Yes)、対象のライダ2の出力データの使用(即ち障害物検知や自車位置推定等への利用)を中止し、対象のライダ2について再度のアライメント調整を行う必要がある旨の警告を情報出力部16により出力する(ステップS403)。これにより、事故等により著しく姿勢・位置のずれが生じたライダ2の計測データを用いることによる安全性低下等を確実に抑制する。
【0093】
一方、車載機1は、算出した角度がライダ設置情報ILに記録された角度から所定角度以上変化していない場合(ステップS402;No)、ライダ設置情報ILに記録された角度からの算出した角度の変化量に基づき、ライダ2が出力する点群データの各計測値を補正する(ステップS404)。この場合、車載機1は、例えば、上述の変化量に対する計測値の補正量を示すマップ等を記憶しておき、当該マップ等を参照することで、上述の計測値を補正する。また、変化量の所定の割合の値を計測値の補正量として計測値を補正してもよい。
【0094】
以上説明したように、本実施例における車載機1は、車両の走行路の進行方向に対して垂直面又は走行路の幅方向に対して垂直面を有する道路標識を、車両に取り付けられたライダ2により計測した対象計測点群Ptagを取得する。そして、車載機1は、対象計測点群Ptagから算出される、ライダ2の設置情報に基づく座標系を基準とした道路標識の長手方向の傾きに基づいて、ライダ2の車両への取り付け姿勢を推定する。これにより、車載機1は、ロール方向及びピッチ方向におけるライダ2の車両への取り付け姿勢を的確に推定することができる。
【0095】
また、以上説明したように、本実施例における車載機1は、区画線を車両に取り付けられたライダ2により計測した計測点群を取得し、当該計測点群に基づき、車両の走行方向に沿った区画線の中心線を算出する。そして、車載機1は、ライダ2が基準とするヨー方向基準角に対する区画線の中心線の方向に基づき、ライダ2の車両への取り付け姿勢を推定する。これにより、車載機1は、ヨー方向におけるライダ2の車両の取り付け姿勢を好適に推定することができる。
【0096】
[変形例]
以下、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施例に適用してもよい。
【0097】
(変形例1)
図13及び図15のステップS303の説明では、車載機1は、検出ウィンドウ内における区画線の幅方向における中心点を算出することで区画線の中心線を算出した。これに代えて、車載機1は、検出ウィンドウ内における走査線の右端点又は左端点を抽出し、区画線の右端又は左端を通る直線を算出してもよい。これによっても、車載機1は、走行路と平行となる線を好適に特定して角度ψを算出することができる。
【0098】
(変形例2)
図12図15で説明したヨー角の推定処理では、車載機1は区間線を検出対象地物Ftagとみなした。これに代えて、又はこれに加えて、車載機1は、縁石などを検出対象地物Ftagとみなしてもよい。このように、車載機1は、区画線に限らず、被計測面が走行路面と平行であって走行路面に沿って形成された任意の地物を検出対象地物Ftagとみなして図12図15で説明したヨー角の推定処理を実行してもよい。
【0099】
(変形例3)
図16のステップS404において、車載機1は、ライダ2が出力する点群データの各計測値を補正する代わりに、図9図11、又は図15のフローチャートの処理により算出したロール角、ピッチ角、ヨー角に基づき、ライダ2が出力する点群データの各計測値を車両座標系に変換してもよい。
【0100】
この場合、車載機1は、算出したロール角Lφ、ピッチ角Lθ、ヨー角Lψを用いて、式(4)に基づき、ライダ2が出力する点群データの各計測値をライダ座標系から車体座標系に変換し、変換後のデータに基づいて、自車位置推定や自動運転制御などを実行してもよい。
【0101】
他の例では、車載機1は、各ライダ2の姿勢を修正するためのアクチュエータなどの調整機構が各ライダ2に備わっている場合には、図16のステップS404の処理に代えて、ライダ設置情報ILに記録された角度からのずれ分だけライダ2の姿勢を修正するように調整機構を駆動させる制御を行ってもよい。
【0102】
(変形例4)
図1に示す車両システムの構成は一例であり、本発明が適用可能な車両システムの構成は図1に示す構成に限定されない。例えば、車両システムは、車載機1を有する代わりに、車両の電子制御装置が図9図11図15図16等に示す処理を実行してもよい。この場合、ライダ設置情報ILは、例えば車両内の記憶部に記憶され、車両の電子制御装置は、ライダ2などの各種センサの出力データを受信可能に構成される。
【0103】
(変形例5)
車両システムは、ライダ2を複数台備えてもよい。この場合、車載機1は、それぞれのライダ2に対して図9図11、及び図15のフローチャートの処理を実行することで、各ライダ2のロール角、ピッチ角、及びヨー角を推定する。
【符号の説明】
【0104】
1 車載機
2 ライダ
3 ジャイロセンサ
4 加速度センサ
5 GPS受信機
10 地図DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16