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特開2023-38244釣竿の性能を客観的に評価するための評価方法
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  • 特開-釣竿の性能を客観的に評価するための評価方法 図1
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  • 特開-釣竿の性能を客観的に評価するための評価方法 図3a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038244
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】釣竿の性能を客観的に評価するための評価方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A01K87/00 620Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001891
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2020029986の分割
【原出願日】2020-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕之
(57)【要約】
【課題】 釣竿の動的なデータを用いて、釣竿の現実の使用状態や動き等に応
じた、釣竿の性能の客観的な評価方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態による評価方法は、釣竿を使用した際の、釣竿
の竿先から竿尻に至る各位置におけるひずみエネルギーを算出し、該各位置におけるひず
みエネルギーの変化に基づき、釣竿を評価する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿を使用した際の、釣竿の竿先から竿尻に至る各位置におけるひずみエネルギーを算
出し、
該各位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき、釣竿を評価することを特徴とする
釣竿評価方法。
【請求項2】
前記釣竿の評価は、釣竿を使用した際の、釣竿の速度と加速度とにも基づき行う、請求
項1に記載の釣竿評価方法。
【請求項3】
前記各位置におけるひずみエネルギーの算出は、該各位置におけるひずみエネルギーの
時系列データの抽出である、請求項1又は2に記載の釣竿評価方法。
【請求項4】
前記各位置におけるひずみエネルギーの変化と前記釣竿の使用態様に基づき、釣竿の性
能を評価する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記ひずみエネルギーの変化に対する前記釣竿を保持する釣り人への負荷を算出し、該
負荷を用いて釣竿を評価する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記釣竿の使用態様は、釣竿のキャスティング動作である、請求項4に記載の評価方法
【請求項7】
前記釣竿の使用態様は、釣竿の引き寄せ動作である、請求項4に記載の評価方法。
【請求項8】
前記釣竿の使用態様は、釣竿の取込み動作である、請求項4に記載の評価方法。
【請求項9】
前記ひずみエネルギーの変化は、前記釣竿の各位置におけるひずみエネルギーの蓄積及
び解放である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項10】
釣竿の一部の位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき、釣竿を評価する、請求項
1から9までのいずれか1項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿の性能を客観的に評価するための評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿には、様々な特性が要求される。釣竿の設計時に重要視される特性には、客観的に
測定可能な客観的特性があり、例えば、竿体の曲げ剛性やねじれ剛性が挙げられる。
【0003】
釣竿のこのような客観的特性は、定量的なものではあるものの、釣竿の実際の動きが反
映されたものではない、すなわち動的な評価ではないことから、このような特性をもって
、釣竿の性能を客観的を評価することは事実上困難であるという問題がある。
【0004】
従来より、釣竿の性能を客観的に評価することが求められている。例えば、特開201
3-153740号公報(特許文献1)には、物理的要素による数値化された感性的評価
を用いて、樹脂製の管状若しくは板状の長尺部材を設計する設計システムが開示されてい
る。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る方法では、釣竿の現実の使用状態や動きなどの動的な
変化を必ずしも正確に反映できていないため、釣竿の性能を客観的に評価できているとは
言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-153740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、釣竿の動的なデータを用いて、釣竿の現実の使用状態や動き等
に応じた、釣竿の性能の客観的な評価方法を提供することにある。
【0008】
本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による評価方法は、釣竿を使用した際の、釣竿の竿先から竿尻に至
る各位置におけるひずみエネルギーを算出し、該各位置におけるひずみエネルギーの変化
に基づき、釣竿を評価する。また、本発明の一実施形態による評価方法における釣竿の評
価は、該各位置におけるひずみエネルギーの変化と、釣竿を使用した際の、釣竿の速度と
加速度とに基づき行う。
【0010】
本発明の一実施形態による評価方法において、前記各位置におけるひずみエネルギーの
算出は、該各位置におけるひずみエネルギーの時系列データの抽出である。
【0011】
本発明の一実施形態による評価方法は、前記各位置におけるひずみエネルギーの変化と
前記釣竿の使用態様に基づき、釣竿の性能を評価するようにされる。
【0012】
本発明の一実施形態による評価方法は、前記ひずみエネルギーの変化に対する前記釣竿
を保持する釣り人への負荷を算出し、該負荷を用いて釣竿を評価するようにされる。
【0013】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿のキャステ
ィング動作である。
【0014】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿の引き寄せ
動作である。
【0015】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿の取込み動
作である。
【0016】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該ひずみエネルギーの変化は、当該釣
竿の各位置におけるひずみエネルギーの蓄積及び解放である。
【0017】
本発明の一実施形態による評価方法は、釣竿の一部の位置におけるひずみエネルギーの
変化に基づき、釣竿を評価するようにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によって、釣竿のひずみエネルギーの動的なデータを用いることで、
釣竿の現実の使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な性能評価が可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による評価システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態による評価方法のフローを示す図である。
図3a】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図3b】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図3c】本発明の一実施形態による評価方法におけるルアー速度及び竿先速度の変化を示す図である。
図3d】本発明の一実施形態による評価方法における総ひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による評価方法におけるひずみエネルギーの時間変化を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による評価方法における人の支持力の時間変化を示す図である。
【0020】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、各図面において
共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、
必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
図1は、本発明の評価方法に使用するひずみエネルギーの計測システム1の全体の構成
を模式的に示す図である。図1に示されるように、計測システム1は、竿の各位置に所定
のマーキング8を施した釣竿10と、該釣竿10の一端に取り付けられた錘20と、当該
マーキング8を捉えるカメラ30とで構成される。操作者が、釣竿10を保持して釣りの
動作を行うと、当該カメラ30が当該マーキング8を捉えることで、竿全体及びマーキン
グの各位置における変化を計測するように構成される。
【0022】
なお、計測システム1は、釣竿20を保持する保持装置をさらに設けるよう構成しても
よい。また、計測システム1は、釣竿10、錘20、カメラ30以外の異なる別の装置と
組み合わせて構成してもよい。
【0023】
このようにして、図示の計測システム1は、釣竿を使用した際の、釣竿10の速度と、
加速度と、釣竿の各位置の座標とを検出する。そして、釣竿の各位置の座標に基づく曲率
と剛性とから、釣竿10のひずみエネルギーを算出し、評価を行う。より詳細につき以下
述べる。
【0024】
図2を参照して、本発明の一実施形態による評価方法について説明する。本発明の一実
施形態による評価方法において、まず、(S1)において、釣竿10の各位置の座標に基
づく曲率と剛性を検出する。次に、(S2)において、上述の計測システム1により、釣
竿10を使用した際の、釣竿10の速度と、加速度とを検出する。ここで、(S1)より
も(S2)を先行させてもよいし、同時に行っても構わない。すなわち、(S3)におい
て、(S1)及び(S2)における検出情報を必要とするが、これは検出の順序自体に意
義があることを意味するものではなく、適宜順序の変更が可能である。
【0025】
次に、(S3)において、(S1)において検出された釣竿10の上記各情報に基づき
、釣竿10を使用した際の、釣竿10の竿先から竿尻に至る各位置におけるひずみエネル
ギー及びその変化を算出する。
【0026】
そして、(S3)において算出された該各位置におけるひずみエネルギーの変化に基づ
き、釣竿を評価する。ここで、釣竿の評価において、該各位置におけるひずみエネルギー
の変化に加えて、(S2)において検出された釣竿10の速度及び加速度を併せて用いる
ことができる。
【0027】
本発明の一実施形態による評価方法により、釣竿のひずみエネルギーの動的なデータを
用いることで、釣竿の現実の使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な性
能評価が可能となる。
【0028】
本発明の一実施形態による評価方法において、釣竿の各位置におけるひずみエネルギー
の算出は、該各位置におけるひずみエネルギーの時系列データの抽出である。このように
、釣竿の各位置におけるひずみエネルギーの時系列データを用いることで、釣竿の現実の
使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な性能評価が可能となる。
【0029】
本発明の一実施形態による評価方法は、前記各位置におけるひずみエネルギーの変化と
前記釣竿の使用態様に基づき、釣竿の性能を評価するようにされる。これは、釣竿の使用
態様の如何によっては、釣竿の性能評価の観点が異なることを考慮したものである。これ
により、釣竿の性能の評価が釣竿の使用態様に沿ってより正確に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿のキャステ
ィング動作である。
【0031】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿の引き寄せ
動作である。
【0032】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該釣竿の使用態様は、釣竿の取込み動
作である。
【0033】
本発明の一実施形態による評価方法は、前記ひずみエネルギーの変化に対する前記釣竿
を保持する釣り人への負荷を算出し、該負荷を用いて釣竿を評価するようにされる。これ
により、釣り人への負荷を踏まえた釣竿の性能の評価が可能となる。
【0034】
本発明の一実施形態による評価方法において、当該ひずみエネルギーの変化は、当該釣
竿の各位置におけるひずみエネルギーの蓄積及び解放である。また、本発明の一実施形態
による評価方法は、釣竿の一部の位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき、釣竿を
評価するようにされる。
【0035】
図3図8を参照して、本発明の一実施形態による評価方法の例を具体的に説明する。
まず、図3a、bは、2種類の釣竿(竿C、D)の使用態様がキャスティング動作である
場合の釣竿の各位置におけるひずみエネルギーの時間変化を示し、図3cは、2種類の釣
竿の使用態様がキャスティング動作である場合のルアー速度の時間変化を示すものである
図3a、bにおいて、横軸は時間を、縦軸はひずみエネルギーを示す。また、図3cに
おいて、横軸は時間を、縦軸はルアー速度を示す。
【0036】
また、図3dは、2種類の釣竿の使用態様がキャスティング動作である場合の釣竿の総
ひずみエネルギーの時間変化を示す。図3dにおいて、横軸は時間を、縦軸は総ひずみエ
ネルギーを示す。
【0037】
図3a、bに示すように、竿C、D共にキャスト動作が開始されてから、竿全体にひず
みエネルギーが蓄積されていくが、竿の元端に向かうに従って、より多くのひずみエネル
ギーが蓄積されていっていることが時系列として示されている。これらから、釣竿の使用
態様がキャスティング動作である場合に、どの時間にどの区間で最もひずみエネルギーが
蓄積されているかを確認することができる。
【0038】
特に、竿Dでは、より早い時間で最も多くのひずみエネルギーが蓄積されており、竿D
の釣竿の竿元部分には竿Cの釣り竿の竿元部分よりもより多くのひずみエネルギーが蓄積
されていくことが判る。ここで、区間とは、竿の竿先から竿元までを適宜10の区間に分
けた場合の竿の各部分を指し、竿先(区間1)から竿元(区間10)まで及ぶ。
【0039】
図3cに示すように、竿C、D共に同じキャスティング速度で釣竿を操作しているが、
ルアー速度に関しては、竿Dの方が、時間4以降速度が高くなり、時間20まで継続して
速度が高くなっていることが判る。また、図3dに示すように、総ひずみエネルギーに関
しても、竿Dの方がより早く(竿Dは時間8付近で最大となり、竿Cは時間11付近で最
大となる)総ひずみエネルギーが最大となり、また、その総ひずみエネルギー量もより多
く蓄積されていき、その後より多くのエネルギーが解放されていっていることが判る。
【0040】
このように、図3a、b、dのひずみエネルギーの時系列変化のデータを参照すると、
ひずみエネルギーが蓄積され、その後解放されていく過程で、竿のひずみエネルギーがル
アー速度の増加をもたらしていることが判る。
【0041】
このように、釣竿の使用態様がキャスティング動作である場合に、各竿毎のひずみエネ
ルギーの各区間の時間変化、各竿毎の総ひずみエネルギーの時間変化から、どのような竿
であればルアーの速度をより増加させることができるかを的確に予測することが可能とな
る。
【0042】
本発明の一実施形態による評価方法により、釣竿のひずみエネルギー等の動的なデータ
を用いることで、釣竿の現実の使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な
性能評価が可能となる。
【0043】
次に、図4を参照して、釣竿の使用態様が釣竿の引き寄せ動作である場合の釣竿全体と
してのひずみエネルギーの時間変化を示す。図4において、竿A、竿Bそれぞれについて
、横軸は時間を、縦軸はひずみエネルギーを示す。時間は引き寄せ開始から終了までを2
0分割して時間0-20で示している。
【0044】
図示のように、引き寄せ動作開始から時間5までの間では、竿Bの方がひずみエネルギ
ーが大きく蓄積されかつ一気に解放されていることが分かる。このことから、竿Aに比べ
て竿Bの方がより早く魚を寄せることができることが分かる。
【0045】
次に、時間5-8までの間では、竿Bの方はひずみエネルギーが蓄積されていく状態と
なっており、竿Aの方はひずみエネルギーの蓄積と解放のバランスが取れている。このこ
とから、竿Bの方が魚がほとんど動いておらず、竿Aの方は魚の寄りがほぼ一定で推移し
ていくことが分かる。
【0046】
時間8-14の間では、竿Bの方はひずみエネルギーの蓄積が安定していないことが分
かる。他方で、竿Aの方はひずみエネルギーの蓄積が安定的に行われていることが分かる
。このことから、竿Aの方は一定の速度で魚の寄せを行うことができ、竿Bの差を広げて
行っていることが分かる。これは、竿Bの竿がぶれやすい傾向があり、節間の剛性のつな
がりが悪いことが原因と考えられる。
【0047】
次に、時間14以降の間では、竿A、竿B共に竿全体としては同様のひずみエネルギー
の解放を示している。
【0048】
図5は、竿A、竿Bの竿区間7-11(#02節)におけるひずみエネルギーの時間変
化を示す。ここで、節とは各竿を4つの区間に分けた場合の各区間を指し、各竿の竿先か
ら竿元まで#01節から#04節として区分けしている。各節も区間に分けられ、#01
節は区間1-6、#02節は区間7-11、#03節は区間12-15、#04節は区間
16-18に分けられている。この区間は均等な間隔で分けてもよいし、竿先に向かうに
従ってより狭い間隔で設けるようにしても構わない。図5の場合、竿の変形がしやすい竿
先の方がより狭い間隔で区間を設けると良好であるが、その他の方法でもよい。横軸は時
間を、縦軸はひずみエネルギーを示す。図示のように、当該竿区間においては、竿A、竿
Bいずれもひずみエネルギーは、開始から終了まで増加傾向にあることが分かる。また、
竿Aは、区間10前後を過ぎたあたりから、ひずみエネルギーが竿Bのそれよりも大きく
蓄積されていっていることが分かる。このように、竿Aの方が竿を立てて魚を引き寄せる
際に安定しており、魚の動きを抑えるのに大きな役割を果たしていることが分かる。また
、魚が手元に来てから暴れさせない、釣り人の意図した通り魚を取り込めることが分かっ
た。
【0049】
図6は、竿A、竿Bの竿区間16-18(#04節)におけるひずみエネルギーの時間
変化を示す。ここで、節とは各竿を4つの区間に分けた場合の各区間を指し、各竿の竿先
から竿元まで#01節から#04節として区分けしている。各節も区間に分けられ、#0
1節は区間1-6、#02節は区間7-11、#03節は区間12-15、#04節は区
間16-18に分けられている。この区間は均等な間隔で分けてもよいし、竿先に向かう
に従ってより狭い間隔で設けるようにしても構わない。図6の場合も、竿の変形がしやす
い竿先の方がより狭い間隔で区間を設けると良好であるが、その他の方法でもよい。横軸
は時間を、縦軸はひずみエネルギーを示す。開始時は竿は水平状態にあるため、魚を動か
すのに重要な役割を果たす。図示のように、竿Bでは、開始直後はひずみエネルギーが一
気に増加するが、竿が起き上がってくるに従って、ひずみエネルギーを解放していく様子
が示されている。竿Bでは、節間の剛性のつながりが悪いため、一時的に魚の寄せが止ま
ってしまう。他方で、図示のように、竿Aは開始直後はひずみエネルギーの蓄積は大きく
ないが、ひずみエネルギーの蓄積と解放のバランスがよいため、魚は安定して寄ってくる
こととなる。
【0050】
図5、6から、竿Bは、終了まで元節のエネルギー蓄積が多いのに比べ、竿Aではその
エネルギーが徐々に減少するため、魚が手前に寄ってくるに伴い、竿先の方がより魚の寄
せの役割を担うよう移行していくことが分かる。
【0051】
本発明の一実施形態による評価方法により、釣竿のひずみエネルギーの動的なデータを
用いることで、釣竿の現実の使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な性
能評価が可能となる。
【0052】
次に、図7、8を参照して、釣竿の使用態様が釣竿のへらの取込み動作である場合のひ
ずみエネルギーの時間変化及び人の支持力の変化それぞれを示す。図7において、竿A、
竿Bそれぞれについて、横軸は時間を、縦軸はひずみエネルギーを示す。時間は取込み開
始から終了までを15分割して示している。図8において、竿A、竿Bそれぞれについて
、横軸は時間を、縦軸は人の支持力を示す。同様に、時間は取込み開始から終了までを1
5分割して示している。
【0053】
これらの図をみると、竿Bでは、ひずみエネルギーの蓄積及び解放がスムーズに行われ
ておらず、人の支持力の変化が大きいことが分かる。他方で、竿Aでは、ひずみエネルギ
ーの蓄積及び解放が動作全体に亘り効率的に行われており、人の支持力も竿Bの凡そ90
%程度で安定的に推移していることが分かる。このように、竿Bに比べて竿Aの方がより
早く取込み動作を行うことができ、また、人への負荷も少ないことが分かる。
【0054】
本発明の一実施形態による評価方法により、釣竿のひずみエネルギーの動的なデータを
用いることで、釣竿の現実の使用状態や動き等に応じた、釣竿のより客観的かつ正確な性
能評価が可能となる。
【0055】
ここで、本発明の一実施形態による釣竿の性能評価は、合わせの動作、すなわち穂先の
ブレ収束、穂先の反応速度の評価にも用いることができる。また、本発明の一実施形態に
よる釣竿の性能評価は、仕掛け、ルアー等の操作性能の評価にも用いることができる。さ
らに、本発明の一実施形態による釣竿の性能評価は、感度、すなわち魚の魚信、ルアーの
動き仕掛けの評価にも用いることができる。
【0056】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説
明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、
材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に
説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態に
おいて説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 計測システム
8 マーキング
10 釣竿
20 錘
30 計測カメラ
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿を使用した際の、釣竿の竿先から竿尻に至る各位置の座標に基づく曲率と剛性を検出し、
該釣竿を使用した際の、該釣竿の速度と加速度とを検出し、
前記曲率と前記剛性と前記速度と前記加速度とに基づき、該釣竿を使用した際の、釣竿の竿先から竿尻に至る各位置におけるひずみエネルギーを算出し、
前記各位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき釣竿を評価することを特徴とする釣竿評価方法。
【請求項2】
前記各位置におけるひずみエネルギーの変化は、釣竿の使用状態や動きに応じた動的な変化である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記各位置におけるひずみエネルギーの算出は、該各位置におけるひずみエネルギーの動的な時系列データの抽出である、請求項に記載の評価方法。
【請求項4】
前記釣竿を使用した際の、前記各位置における曲率は、釣竿の使用状態や動きに応じて動的に変化する、請求項1に記載の評価方法。
【請求項5】
前記各位置におけるひずみエネルギーの変化に加えて前記釣竿の使用態様に基づき、釣竿の性能を評価する、請求項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記ひずみエネルギーの変化に対する前記釣竿を保持する釣り人への負荷を算出し、該
負荷を用いて釣竿を評価する、請求項に記載の評価方法。
【請求項7】
前記ひずみエネルギーの変化は、前記釣竿の各位置におけるひずみエネルギーの蓄積及
び解放である、請求項に記載の評価方法。
【請求項8】
釣竿の一部の位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき、釣竿を評価する、請求項
に記載の評価方法。
【請求項9】
該釣竿を使用した際の、該釣竿の速度と加速度とを検出し、
釣竿を使用した際の、釣竿の竿先から竿尻に至る各位置の座標に基づく曲率と剛性を検出し、
前記速度と前記加速度と前記曲率と前記剛性に基づき、該釣竿を使用した際の、該釣竿の竿先から竿尻に至る各位置におけるひずみエネルギーを算出し、
前記各位置におけるひずみエネルギーの変化に基づき釣竿を評価することを特徴とする釣竿評価方法。
【請求項10】
各位置にマーキングが施された釣竿と、錘と、該マーキングを捉えるカメラとを少なくと、該釣竿を保持する保持装置とを含む、釣竿性能評価のための計測システムであって、
前記釣竿を使用した際の該釣竿の動作に応じて、前記カメラにより前記マーキングを捉えることで、前記釣竿の前記各位置における、座標と速度と加速度と曲率と剛性とを検出し、
該座標と該速度と該加速度と該曲率と該剛性とに基づき前記釣竿のひずみエネルギーを算出し、
算出されたひずみエネルギーの変化に基づき釣竿を評価することを特徴とする計測システム。