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特開2023-38285判定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038285
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】判定装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230309BHJP
【FI】
G06T7/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006313
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2022150913の分割
【原出願日】2018-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】乘松 直人
(72)【発明者】
【氏名】小山 和紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
(72)【発明者】
【氏名】天野 克巳
(57)【要約】
【課題】計測装置が計測した計測点群に基づき植生の存在を的確に判定することが可能な判定装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置2は、空間を区切った領域であるボクセルごとに、1のボクセルに含まれる、ライダ30等の計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する。そして、サーバ装置2は、主成分分析の結果に基づき、計測点群が平面を形成する平面ボクセルBfを判定する。また、サーバ装置2は、主成分分析の結果に基づき、計測点群が柱状体を形成する柱状体ボクセルBpを判定する。そして、サーバ装置2は、計測点群を含むボクセルであって、平面ボクセルBf又は柱状体ボクセルBpのいずれにも該当しないボクセルを、植生を含むボクセルである植生ボクセルBvとして判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する算出手段と、
前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が所定の形状を形成する領域である第1領域を判定する第1判定手段と、
前記計測点群を含む領域であって、前記第1領域に該当しない領域を、植生を含む第3領域として判定する第3判定手段と、
を有する判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図の生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設置されたセンサの出力に基づき地図データを更新する技術が知られている。例えば、特許文献1には、計測した自車位置と地図データ上の走行位置との差分を表す誤差情報を位置情報と共にサーバに送信する車載装置と、受信された位置情報と誤差情報とを誤差データベースに格納し、誤差データベースに基づき位置情報ごとに更新の必要性を判定するサーバとを含む地図更新システムが開示されている。また、非特許文献1には、ライダなどから得られた計測点群を解析することで、木などの植生を構成する計測点群を認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-180980号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Fabrice Monnier, Bruno Vallet, Bahman Soheilian, TREES DETECTION FROM LASER POINT CLOUDS ACQUIRED IN DENSE URBAN AREAS BY A MOBILE MAPPING SYSTEM, [online], 2012, ISPRS Annals of the Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Sciences, [平成30年7月14日検索], インターネット〈URL:https://www.isprs-ann-photogramm-remote-sens-spatial-inf-sci.net/I-3/245/2012/isprsannals-I-3-245-2012.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の手法によれば、植生以外の特定の構造物の計測点群を検出した場合に、当該構造物の計測点群を、植生を構成する計測点群の候補から除外している。一方、非特許文献1に記載の手法では、垂直な平面を構成するビルなどの特定の構造物については検出できるものの、当該手法では補足しにくい構造物があり、このような構造物が存在する場合に、植生抽出の精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、計測装置が計測した計測点群に基づき植生の存在を的確に判定することが可能な判定装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、判定装置であって、空間を区切った領域ごとに、1の領域に含まれる計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する算出手段と、前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が所定の形状を形成する前記領域である第1領域を判定する第1判定手段と、前記計測点群を含む領域であって、前記第1領域に該当しない領域を、植生を含む第3領域として判定する第3判定手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】地図更新システムの概略構成である。
図2】車載機及びサーバ装置のブロック構成を示す。
図3】ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
図4】ボクセルデータの生成処理に関するフローチャートである。
図5】植生判定処理の手順を示すフローチャートである。
図6】(A)平面を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。(B)隣接する候補ボクセルの配置例である。
図7】(A)壁面を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。(B)隣接する候補ボクセルの配置例である。
図8】(A)柱状体を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。(B)第1主成分の寄与率が所定値以上であって、第1主成分の分散が一様分布とは異なる分散であるボクセルの例を示す。
図9】(A)水平柱状体を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。(B)隣接する候補ボクセルの配置例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、判定装置は、空間を区切った領域ごとに、1の領域に含まれる計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する算出手段と、前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が平面を形成する前記領域である第1領域を判定する第1判定手段と、前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が柱状体を形成する前記領域である第2領域を判定する第2判定手段と、前記計測点群を含む領域であって、前記第1領域又は前記第2領域のいずれにも該当しない領域を、植生を含む第3領域として判定する第3判定手段と、を有する。「空間を区切った領域」とは、空間を所定の規則により分割した領域であり、例えば大きさが一定の直方体又は立方体である。また、「主成分」とは、主成分分析における主成分と同義であり、3次元空間の場合には分散が大きい順に第1主成分から第3主成分まで存在する。
【0010】
この態様によれば、判定装置は、空間を区切った領域ごとに、計測点群の主成分を算出することで、計測点群が平面及び柱状体をそれぞれ形成する領域を的確に判定する。これにより、判定装置は、植生を含む領域を的確に判定することができる。
【0011】
上記判定装置の一態様では、前記第1判定手段は、前記領域ごとの計測点群の第3主成分の分散に基づき、前記第1領域を判定する。この態様により、判定装置は、第1領域を的確に判定することができる。
【0012】
上記判定装置の他の一態様では、前記第2判定手段は、前記領域ごとの計測点群の第1主成分の寄与率及び分散に基づき、前記第2領域を判定する。この態様により、判定装置は、第2領域を的確に判定することができる。
【0013】
上記判定装置の他の一態様では、前記第1判定手段は、前記第3主成分の方向が鉛直方向に略一致する前記領域を、前記第1領域として判定する。この態様により、判定装置は、計測点群が地表面を形成する領域を第1領域として好適に判定することができる。
【0014】
上記判定装置の他の一態様では、前記第1判定手段は、前記第3主成分の方向が水平方向に略一致する前記領域を、前記第1領域として判定する。この態様により、判定装置は、計測点群が壁面を形成する隣接領域を第1領域として好適に判定することができる。
【0015】
上記判定装置の他の一態様では、前記第1判定手段は、前記第3主成分の方向が水平方向に略一致する前記領域であって、当該領域と前記第3主成分の方向が略一致又は略180°異なる領域と隣接する領域を、前記第1領域として判定する。この態様では、判定装置は、壁面は複数の領域にまたがって存在するという前提に基づき、計測点群が壁面を形成する領域を第1領域として的確に判定することができる。
【0016】
上記判定装置の他の一態様では、前記第2判定手段は、前記領域ごとの計測点群の第1主成分の方向が鉛直方向に略一致する領域を、前記第2領域として判定する。この態様により、判定装置は、計測点群が垂直柱状体(鉛直方向に延びた柱状体)を形成する領域を第2領域として好適に判定することができる。
【0017】
上記判定装置の他の一態様では、前記第2判定手段は、前記領域ごとの計測点群の第1主成分の方向が水平方向に略一致する領域を、前記第2領域として判定する。この態様により、判定装置は、計測点群が水平柱状体(水平方向に延びた柱状体)を形成する領域を第2領域として好適に判定することができる。
【0018】
上記判定装置の他の一態様では、前記第1判定手段は、前記第1主成分の方向が水平方向に略一致する前記領域であって、当該領域と前記第1主成分の方向が略一致又は略180°異なる領域と隣接する領域を、前記第2領域として判定する。この態様では、判定装置は、水平柱状体は複数の領域にまたがって存在するという前提に基づき、計測点群が水平柱状体を形成する隣接領域を第2領域として的確に判定することができる。
【0019】
上記判定装置の他の一態様では、前記第1判定手段は、前記算出手段の算出結果に基づき決定される前記第1領域の候補となる複数の第1候補領域のうち、1の第1候補領域について、他の第1候補領域が隣接する場合に、当該1の第1候補領域を前記第1領域として判定し、前記第2判定手段は、前記算出手段の算出結果に基づき決定される前記第2領域の候補となる複数の第2候補領域のうち、1の第2候補領域について、他の第2候補領域が隣接する場合に、当該1の第2候補領域を前記第2領域として判定する。この態様により、判定装置は、第1領域及び第2領域の判定の正確性を好適に向上させることができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態によれば、判定装置が実行する制御方法であって、空間を区切った領域ごとに、1の領域に含まれる計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する算出工程と、前記算出工程での算出結果に基づき、前記計測点群が平面を形成する前記領域である第1領域を判定する第1判定工程と、前記算出工程での算出結果に基づき、前記計測点群が柱状体を形成する前記領域である第2領域を判定する第2判定工程と、前記計測点群を含む領域であって、前記第1領域又は前記第2領域のいずれにも該当しない領域を、植生を含む第3領域として判定する第3判定工程と、を有する。判定装置は、この制御方法を実行することで、植生を含む領域を的確に判定することができる。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行するプログラムであって、空間を区切った領域ごとに、1の領域に含まれる計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する算出手段と、前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が平面を形成する前記領域である第1領域を判定する第1判定手段と、前記算出手段の算出結果に基づき、前記計測点群が柱状体を形成する前記領域である第2領域を判定する第2判定手段と、前記計測点群を含む領域であって、前記第1領域又は前記第2領域のいずれにも該当しない領域を、植生を含む第3領域として判定する第3判定手段として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、植生を含む領域を的確に判定することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0023】
[地図更新システムの概要]
図1は、本実施例に係る地図更新システムの概略構成である。地図更新システムは、車両と共に移動する車載機1と、地図情報の配信を行うサーバ装置2と、を備える。なお、図1では、サーバ装置2と通信を行う車載機1及び車両が1組のみ表示されているが、実際には、異なる位置に複数の車載機1及び車両の組が存在する。
【0024】
車載機1は、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)などの外界センサ、ジャイロセンサや車速センサなどの内界センサと電気的に接続し、これらの出力に基づき、車載機1が搭載される車両の位置(「自車位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、車載機1は、自車位置の推定結果に基づき、設定された目的地への経路に沿って走行するように、車両の自動運転制御などを行う。車載機1は、ボクセルデータを含む地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。ボクセルデータは、3次元空間を複数の領域に分割した場合の各領域(「ボクセル」とも呼ぶ。)ごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータである。ボクセルデータは、各ボクセル内の静止構造物の計測された計測点の点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。
【0025】
車載機1は、ライダが出力する物体の表面の計測点を絶対座標系に変換した点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチングを行うことで、自車位置の推定を行う。また、車載機1は、上述の点群データを含む計測データ「D1」を、サーバ装置2へ送信する。また、車載機1は、サーバ装置2から地図DB10に関する更新データ「D2」を受信することで、地図DB10の更新を行う。
【0026】
サーバ装置2は、複数の車両に対応する車載機1とデータ通信を行う。サーバ装置2は、複数の車両に対応する車載機1に配信するための配信地図DB23を記憶し、配信地図DB23には各ボクセルに対応するボクセルデータが含まれている。サーバ装置2は、車載機1から受信する計測データD1を蓄積し、蓄積した計測データD1に基づきボクセルデータを生成し、生成したボクセルデータに基づき配信地図DB23を更新する。また、サーバ装置2は、生成したボクセルデータを含む更新データD2を車載機1へ送信する。サーバ装置2は、本発明における「判定装置」の一例である。
【0027】
[車載機の構成]
図2(A)は、車載機1の機能的構成を表すブロック図を示す。図2(A)に示すように、車載機1は、主に、通信部11と、記憶部12と、センサ部13と、入力部14と、制御部15と、出力部16とを有する。通信部11、記憶部12、センサ部13、入力部14、制御部15及び出力部16は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0028】
通信部11は、制御部15の制御に基づき、制御部15が生成した計測データD1をサーバ装置2へ送信したり、サーバ装置2から配信される更新データD2を受信したりする。また、通信部11は、車両を制御するための信号を車両に送信したり、車両の状態に関する信号を車両から受信したりする。
【0029】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、ボクセルデータを含む地図DB10を記憶する。
【0030】
センサ部13は、ライダ30と、カメラ31と、GPS受信機32と、ジャイロセンサ33と、速度センサ34とを含む。ライダ30は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データを生成する。この場合、ライダ30は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。ライダ30は、本発明における「計測装置」の一例である。
【0031】
入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部15へ供給する。出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0032】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。例えば、制御部15は、ライダ30の出力データを絶対座標系に変換した点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチングを行うことで、自車位置の推定を行う。また、制御部15は、通信部11がサーバ装置2から受信した更新データD2に基づき、地図DB10の更新を行う。
【0033】
また、制御部15は、ライダ30から出力される点群データに基づき生成した計測データD1を、通信部11によりサーバ装置2へ送信する。この場合、制御部15は、例えば、ライダ30から出力される計測点の点群データを、推定した自車位置及び車両に対するライダ30の位置並びに姿勢の情報に基づき絶対座標系に変換し、変換後の点群データを計測データD1に含めて通信部11によりサーバ装置2へ送信する。他の例では、制御部15は、ライダ30から出力される点群データ(所謂生データ)と、当該点群データを絶対座標系に変換するのに必要なデータ(上述の自車位置等)とを計測データD1に含めて通信部11によりサーバ装置2へ送信する。後者の例では、サーバ装置2は、計測データD1に基づき、絶対座標系により表された計測点の点群データを生成する。
【0034】
[サーバ装置の構成]
図2(B)は、サーバ装置2の概略構成を示す。図2(B)に示すように、サーバ装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部25とを有する。通信部21、記憶部22、及び制御部25は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0035】
通信部21は、制御部25の制御に基づき、車載機1と各種データの通信を行う。記憶部22は、サーバ装置2の動作を制御するためのプログラムを保存したり、サーバ装置2の動作に必要な情報を保持したりする。また、記憶部22は、配信地図DB23と、複数の車載機1から送信される計測データD1に基づく物体の計測点の点群データを記録する計測点群DB24とを記憶する。
【0036】
制御部25は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備え、サーバ装置2内の各構成要素に対して種々の制御を行う。本実施例では、制御部25は、車載機1から通信部21が受信する計測データD1を計測点群DB24に蓄積し、蓄積した計測データD1に基づきボクセルデータを生成する。この場合、制御部25は、ボクセルごとに、植生を含むボクセルであるか否かを判定し、その判定結果に基づき、後述する重み付け値及び植生フラグを生成してボクセルデータに含める。また、制御部25は、生成したボクセルデータに基づく更新データD2を通信部21により車載機1へ送信する。制御部25は、本発明における「算出手段」、「第1判定手段」、「第2判定手段」、「第3判定手段」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0037】
[NDTに基づくスキャンマッチング]
次に、本実施例におけるNDTに基づくスキャンマッチングについて説明する。
【0038】
まず、NDTに基づくスキャンマッチングに用いるボクセルデータについて説明する。図3は、ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
【0039】
ボクセルデータは、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含み、本実施例では、図3に示すように、ボクセルIDと、ボクセル座標と、平均ベクトルと、共分散行列と、重み付け値と、植生フラグとを含む。ここで、「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0040】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示し、任意のボクセル「n」内の任意の点「i」の座標をX(i)=[x(i)、y(i)、z(i)]と定義し、ボクセルn内での点群数を「N」とすると、ボクセルnでの平均ベクトル「μ」及び共分散行列「V」は、それぞれ以下の式(1)及び式(2)により表される。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
「重み付け値」は、対象のボクセルのボクセルデータ(特に平均ベクトル及び共分散行列)の信頼度に応じた値に設定され、スキャンマッチングにおいて設定される対象のボクセルに対する重み付けの値を表す。また、本実施例では、植生を含むボクセルであると判定されたボクセル(「植生ボクセルBv」とも呼ぶ。)に対する重み付け値は、他のボクセルに対する重み付け値よりも低く設定される。重み付け値は、本発明における「重み」の一例である。「植生フラグ」は、対象のボクセルが植生を含むボクセルであるか否かを示すフラグ情報である。
【0044】
次に、ボクセルデータを用いたNDTによるスキャンマッチングについて説明する。本実施例では、後述するように、車載機1は、NDTスキャンマッチングにより得られる評価関数の値(評価値)を、ボクセルデータに含まれる重み付け値を用いて重み付けして算出する。これにより、車載機1は、NDTスキャンマッチングに基づく位置推定精度を好適に向上させる。
【0045】
車両を想定したNDTによるスキャンマッチングは、道路平面(ここではxy座標とする)内の移動量及び車両の向きを要素とした推定パラメータP=[t、t、t、tψを推定することとなる。ここで、「t」は、x方向の移動量を示し、「t」は、y方向の移動量を示し、「t」は、z方向の移動量を示し、「tψ」は、ヨー角(ヨー方向の角度変化量)を示す。なお、ピッチ角、ロール角は、道路勾配や振動によって生じるものの、無視できる程度に小さい。
【0046】
ライダ2により得られた計測点を絶対座標系に変換した点群データに対して、マッチングさせるべきボクセルとの対応付けを行った場合に、対応するボクセルnでの任意の点の座標をX(i)=[x(i)、y(i)、z(i)]とする。そして、上述の推定パラメータPを用い、X(i)=[x(i)、y(i)、z(i)]を座標変換すると、変換後の座標「X′」は、以下の式(3)により表される。
【0047】
【数3】
そして、本実施例では、車載機1は、座標変換した点群と、ボクセルデータに含まれる平均ベクトルμと共分散行列Vとを用い、以下の式(4)により示されるボクセルnの評価関数値「E」を算出する。
【0048】
【数4】
ここで、「w」は、ボクセルnに対する重み付け値を示す。式(4)により、重み付け値wが大きいほど、評価関数Eは大きい値となる。
【0049】
また、車載機1は、式(4)により示されるボクセルごとの評価関数値(「個別評価関数値」とも呼ぶ。)の算出後、式(5)により示されるマッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数値「E」(「総合評価関数値」とも呼ぶ。)を算出する。
【0050】
【数5】
「M」は、マッチングの対象となるボクセルの数を示す。
【0051】
その後、車載機1は、ニュートン法などの任意の求根アルゴリズムにより総合評価関数値Eが最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、車載機1は、自律測位装置の出力等に基づき予測した自車位置「X」に対し、推定パラメータPを適用することで、高精度な自車位置「X」を推定する。
【0052】
このように、車載機1は、各ボクセルに対し、それぞれのボクセルデータ(平均ベクトル、共分散行列)に対して植生ボクセルBvか否かに応じた重み付け値を乗じている。これにより、植生ボクセルBvの評価関数Eが相対的に小さくなり、NDTマッチングによる位置推定精度が好適に向上する。
【0053】
[植生ボクセルの判定]
次に、サーバ装置2がボクセルデータの生成時に実行する植生ボクセルBvの判定処理について説明する。概略的には、サーバ装置2は、計測点群DB24に記録された計測点群に対してボクセルごとに主成分分析を行うことで平面又は柱状体の構造物を表すボクセルを判定し、平面又は柱状体のいずれの構造物にも該当しないボクセルを植生ボクセルBvとして判定する。
【0054】
(1)処理フロー
図4は、サーバ装置2が実行するボクセルデータの生成処理に関するフローチャートである。サーバ装置2は、図4に示すフローチャートの処理を、所定のタイミングにおいて実行する。
【0055】
まず、サーバ装置2は、計測点群DB24に記録された各計測点が属するボクセルを認識し、上述した式(1)及び式(2)に基づき、ボクセルごとに計測点の平均ベクトル及び共分散行列を算出する(ステップS101)。
【0056】
次に、サーバ装置2は、計測点を含む各ボクセルに対し、植生ボクセルBvであるか否かを判定する植生判定処理を実行する(ステップS102)。この植生判定処理の手順については図5のフローチャートを参照して後述する。
【0057】
そして、サーバ装置2は、ステップS102での判定結果に基づき、ボクセルごとに重み付け値及び植生フラグを設定する(ステップS103)。例えば、サーバ装置2は、植生ボクセルBvとそれ以外のボクセルとに対してそれぞれ付与すべき重み付け値及び植生フラグの値を示す設定情報を予め記憶しておく。そして、サーバ装置2は、上述の設定情報を参照し、ステップS103で植生ボクセルBvと判定されたボクセルと、植生ボクセルBv以外のボクセルとに対し、それぞれ異なる重み付け値及び植生フラグを付与する。
【0058】
なお、サーバ装置2は、図5のフローチャートの処理の前処理として、計測点群DB24に記録された計測点群から、動的物体を示す計測点群を除外する処理を実行してもよい。例えば、サーバ装置2は、歩行者や車両などの特定の動的物体を形成する計測点群を、形状や大きさ等に基づくパターンマッチングなどの処理に基づき特定し、特定した計測点群を計測点群DB24から削除する。
【0059】
図5は、図4のステップS102で実行する植生判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0060】
まず、サーバ装置2は、計測点群D24に記録された計測点群に対してボクセルごとに主成分分析を実行する(ステップS201)。具体的には、サーバ装置2は、図4のステップS101で算出したボクセルごとの共分散行列から第1~第3主成分に対応する3組の固有値及び固有ベクトルを算出する。ここで、固有値は、各主成分の分散(即ち大きさ)を示し、固有ベクトルは、各主成分の方向を表す。従って、サーバ装置2は、最も大きい固有値及びこれに対応する固有ベクトルが第1主成分に対応し、2番目に大きい固有値及びこれに対応する固有ベクトルが第2主成分に対応し、残りの固有値及び固有ベクトルが第3主成分にそれぞれ対応するとみなす。なお、第1~第3主成分は互いに直交している。
【0061】
そして、サーバ装置2は、ステップS201での主成分分析の結果に基づき、平面を形成するボクセル(「平面ボクセルBf」とも呼ぶ。)を抽出する(ステップS202)。この平面ボクセルBpの抽出方法の詳細については後述する。さらに、サーバ装置2は、ステップS201での主成分分析の結果に基づき、柱状体を形成するボクセル(「柱状体ボクセルBp」とも呼ぶ。)を抽出する(ステップS203)。この柱状体ボクセルBpの抽出方法の詳細については後述する。
【0062】
そして、サーバ装置2は、計測点を含むボクセルのうち、平面ボクセルBfと柱状体ボクセルBpのいずれにも該当しない残余のボクセルを、植生ボクセルBvとして判定する(ステップS204)。ここで、植生ではない静的構造物は、その殆どが平面形状又は柱状体の形状から構成されており、出願人は、実験等においても、平面形状又は柱状体の形状を形成する計測点群のボクセルを除外したボクセルを植生ボクセルBvとみなすことで、植生ボクセルBvに対する良好な認識結果を得ている。
【0063】
なお、平面ボクセルBfは、本発明における「第1領域」の一例であり、柱状体ボクセルBpは、本発明における「第2領域」の一例であり、植生ボクセルBvは、本発明における「第3領域」の一例である。
【0064】
(2)平面ボクセルの抽出
次に、図5のステップS202で実行する平面ボクセルBfの抽出の具体的手法について説明する。本実施例では、サーバ装置2は、平面ボクセルBfを総合的に検出するための一般平面抽出処理に加えて、地表面を表すボクセルを個別に検出するための地表面抽出処理、及び壁面を表すボクセルを個別に検出するための壁面抽出処理をそれぞれ実行する。そして、サーバ装置2は、いずれかの処理において平面と判定されたボクセルを平面ボクセルBfとして認識する。
【0065】
(2-1)一般平面抽出処理
一般平面抽出処理では、サーバ装置2は、第3主成分の大きさ(即ち第3主成分の固有値が示す分散)が所定値以下のボクセルを、平面ボクセルBfの候補となるボクセル(「候補ボクセル」とも呼ぶ。)として選定する。そして、サーバ装置2は、隣接する周辺ボクセルに他の候補ボクセルが存在する候補ボクセルを、平面ボクセルBfとみなす。平面ボクセルBfの候補となる候補ボクセルは、本発明における「第1候補領域」の一例である。
【0066】
図6(A)は、一般平面抽出処理により候補ボクセルとみなされるボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。なお、以後において、x軸及びy軸は、水平面において直交する軸であり、z軸は水平面と直交する軸(即ち鉛直方向に延びる軸)であるものとする。
【0067】
図6(A)の例では、計測点群は、楕円形状を形成するように平面的に分布しており、サーバ装置2は、主成分分析により、楕円形状の長軸方向を第1主成分、短軸方向を第2主成分、厚さ方向を第3主成分として抽出する。そして、この場合、サーバ装置2は、第3主成分の大きさに対応する固有値が所定値以下であると判断し、対象のボクセルを候補ボクセルとみなす。上述の所定値は、対象のボクセル内の物体が平面である場合に取り得る第3主成分の固有値の上限値であり、例えば実験等に基づき定められる。
【0068】
図6(B)は、隣接する候補ボクセルの配置例である。サーバ装置2は、選定した各候補ボクセルに対し、対象の候補ボクセルを中心とする縦、横、高さそれぞれボクセル3個分の大きさの立方体領域内に存在するボクセルを周辺ボクセルとみなし、対象の候補ボクセル以外の他の候補ボクセルが周辺ボクセル内に存在するか否か判定する。そして、図6(B)の例では、斜め上方向に他の候補ボクセルが隣接して存在することから、サーバ装置2は、これらの候補ボクセルを平面ボクセルBfとみなす。
【0069】
一般に、平面形状を有する物体は、複数のボクセルに渡って存在することが想定される。以上を勘案し、サーバ装置2は、候補ボクセルが隣接して存在する場合に限り、これらの候補ベクトルを平面ボクセルBfとみなす。これにより、サーバ装置2は、平面形状の物体を有しないボクセルを候補ボクセルとして誤選定した場合でも、隣接する他の候補ボクセルの有無に基づき、誤選定した候補ボクセルを平面ボクセルBfとみなすのを好適に抑制することができる。
【0070】
(2-2)地表面抽出処理
サーバ装置2は、上述の一般平面抽出処理で抽出しきれない平面ボクセルBfを抽出するため、地表面抽出処理及び後述の壁面抽出処理を実行する。地表面抽出処理では、サーバ装置2は、第3主成分の方向とz軸とのなす角度が略0°又は略180°となるボクセルを候補ボクセルとして選定する。言い換えると、サーバ装置2は、第3主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが鉛直方向と略一致するボクセルを候補ボクセルとして選定する。
【0071】
一般に、地表面の計測点群の第3主成分の方向は、地表面の厚さ方向となり、鉛直方向と一致する。よって、サーバ装置2は、第3主成分に対応する固有ベクトルに基づき、地表面を構成するボクセルの候補となる候補ボクセルを好適に特定することができる。
【0072】
さらに、サーバ装置2は、選定した候補ボクセルの各々について、隣接する周辺ボクセル(図6(B)参照)内に他の候補ボクセルが存在するか否か判定し、当該他の候補ボクセルが存在する場合に、対象の候補ボクセル(及び当該他の候補ボクセル)を平面ボクセルBfとみなす。一般に、地表面は、複数のボクセルに渡って存在することが想定される。よって、サーバ装置2は、地表面を有しないボクセルを候補ボクセルとして誤って選定した場合でも、隣接する他の候補ボクセルの有無に基づき、平面ボクセルBfを適切に選定することができる。
【0073】
(2-3)壁面抽出処理
サーバ装置2は、壁面抽出処理として、第3主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが水平方向と略一致するボクセルを候補ボクセルとして選定する。一般に、壁面は、地面に対して垂直に設けられるため、壁面を形成する計測点群の第3主成分の方向は水平方向に略一致する。よって、サーバ装置2は、第3主成分に対応する固有ベクトルに基づき、壁面を構成するボクセルの候補となる候補ボクセルを好適に特定することができる。
【0074】
図7(A)は、壁面を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。図7(A)に示すように、この場合、第3主成分の方向とz軸とのなす角度が略90度となっている。言い換えると、第3主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが水平方向と略一致している。よって、この場合、サーバ装置2は、第3主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが水平方向と略一致していることから、対象のボクセルを候補ボクセルとして選定する。
【0075】
また、サーバ装置2は、選定した候補ボクセルのうち、第3主成分の向きが同一又は180°異なる他の候補ボクセルが周辺ボクセル内に存在する候補ボクセルを、平面ボクセルBfとして選定する。一般に、壁面は、複数のボクセルにまたがって存在し、かつ、各ボクセル内の壁面の法線は平行となることが想定される。よって、サーバ装置2は、このように平面ボクセルBfを選定することで、平面ボクセルBfの誤選定を好適に抑制することができる。
【0076】
図7(B)は、隣接する候補ボクセルの配置例である。サーバ装置2は、選定した各候補ボクセルに対し、対象の候補ボクセルを中心とする縦、横、高さそれぞれボクセル3個分の大きさの立方体領域内に存在する周辺ボクセル内において、第3主成分の向きが同一又は180度異なる他の候補ボクセルの存否を判定する。そして、図6(B)の例では、斜め方向において、第3主成分の向きが同一又は180度異なる他の候補ボクセルが隣接して存在することから、サーバ装置2は、これらの候補ボクセルを平面ボクセルBfとみなす。
【0077】
(3)柱状体ボクセルの抽出
次に、図5のステップS203で実行する柱状体ボクセルBpの抽出の具体的手法について説明する。本実施例では、サーバ装置2は、柱状体ボクセルBpを総合的に検出するための一般柱状体抽出処理に加えて、鉛直方向に延びた柱状体である垂直柱状体を表すボクセルを個別に検出するための垂直柱状体抽出処理、及び水平方向に延びた柱状体である水平柱状体を表すボクセルを個別に検出するための水平柱状体抽出処理をそれぞれ実行する。そして、サーバ装置2は、いずれかの処理において柱状体と判定されたボクセルを柱状体ボクセルBpとして認識する。以後の説明において、「候補ボクセル」とは、柱状体ボクセルBpの候補となるボクセルを指すものとする。柱状体ボクセルBpの候補となる候補ボクセルは、本発明における「第2候補領域」の一例である。
【0078】
(3-1)一般柱状体抽出処理
一般柱状体抽出処理では、サーバ装置2は、第1主成分の寄与率が所定値以上であって、かつ、第1主成分の分散が一様分布に近い分散であるボクセルを、候補ボクセルとして抽出する。
【0079】
図8(A)は、柱状体を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。この場合、サーバ装置2は、例えば、第1~第3主成分の固有値の総和に対する第1主成分の固有値の割合を、第1主成分の寄与率として算出する。また、サーバ装置2は、例えば、第1主成分の分散が一様分布に近い分散であるか否かを、第1主成分の固有値が、「(b-a)/12」と所定値以内の差であるか否かにより判定する。なお、上述の「b-a」は、第1主成分を座標軸とした座標における計測点群の最大値と最小値との差を指す。そして、サーバ装置2は、図8(A)に示すボクセル内の計測点群に関し、第1主成分の寄与率が所定値以上であって、かつ、第1主成分の分散が一様分布に近い分散であると判断し、図8(A)に示すボクセルを候補ボクセルとして選定する。上述の所定値は、対象のボクセル内の物体が柱状体である場合に取り得る第1主成分の寄与率の下限値であり、例えば実験等に基づき定められる。
【0080】
図8(B)は、一般柱状体抽出処理において候補ボクセルと判定されないボクセルの例を示す。図8(B)に示すボクセル内の計測点群は、第1主成分の方向において一様分布とは異なる分布をしており、その結果、第1主成分の分散は、一様分布とは異なる分散値となっている。このように、サーバ装置2は、第1主成分の寄与率に関する条件に加えて、第1主成分の分散に関する条件を設けることで、図8(B)に示されるようなボクセルを候補ボクセルとして選定するのを好適に防ぐことができる。
【0081】
また、サーバ装置2は、選定した候補ボクセルの各々について、隣接する周辺ボクセル内に他の候補ボクセルが存在するか否か判定し、当該他の候補ボクセルが存在する場合に、対象の候補ボクセル(及び当該他の候補ボクセル)を柱状体ボクセルBpとみなす。一般に、柱状体は、複数のボクセルに渡って存在することが想定される。よって、サーバ装置2は、柱状体を有しないボクセルを候補ボクセルとして誤って選定した場合でも、隣接する他の候補ボクセルの有無に基づき、柱状体ボクセルBpの誤選定を好適に抑制する。
【0082】
(3-2)垂直柱状体抽出処理
サーバ装置2は、上述の一般柱状体抽出処理で抽出しきれない柱状体ボクセルBpを抽出するため、垂直柱状体抽出処理及び後述の水平柱状体抽出処理を実行する。垂直柱状体抽出処理では、サーバ装置2は、第1主成分の方向とz軸とのなす角が略0°又は略180°となるボクセルを候補ボクセルとして選定する。言い換えると、サーバ装置2は、第1主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが鉛直方向に略一致するボクセルを候補ボクセルとして選定する。
【0083】
一般に、垂直柱状体の計測点群の第1主成分の方向は、地表面に対して垂直であり、鉛直方向に一致する。よって、サーバ装置2は、第1主成分に対応する固有ベクトルに基づき、垂直柱状体を構成するボクセルの候補となる候補ボクセルを好適に特定することができる。
【0084】
さらに、サーバ装置2は、選定した候補ボクセルの各々について、隣接する周辺ボクセル(図6(B)参照)内に他の候補ボクセルが存在するか否か判定し、当該他の候補ボクセルが存在する場合に、対象の候補ボクセル(及び当該他の候補ボクセル)を柱状体ボクセルBpとみなす。一般に、垂直柱状体は、複数のボクセルに渡って存在することが想定される。よって、サーバ装置2は、垂直柱状体を有しないボクセルを候補ボクセルとして誤って選定した場合でも、隣接する他の候補ボクセルの有無に基づき、柱状体ボクセルBpを適切に選定することができる。
【0085】
(3-3)水平柱状体抽出処理
サーバ装置2は、水平柱状体抽出処理として、第1主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが水平方向と略一致するボクセルを候補ボクセルとして選定する。一般に、水平柱状体は、水平方向に延在するため、水平柱状体を形成する計測点群の第1主成分の方向は水平方向に略一致する。よって、サーバ装置2は、第1主成分に対応する固有ベクトルに基づき、水平柱状体を構成するボクセルの候補となる候補ボクセルを好適に特定することができる。
【0086】
図9(A)は、水平柱状体を含むボクセル内の計測点群の分布を概略的に示す。図9(A)に示すように、この場合、第1主成分の方向とz軸とのなす角度が略90°となっている。言い換えると、第1主成分に対応する固有ベクトルが示す向きが水平方向と略一致している。よって、サーバ装置2は、図9(A)に示すボクセルを候補ボクセルとして選定する。
【0087】
また、サーバ装置2は、選定した各候補ボクセルに対し、第1主成分の向きが同一又は180°異なる他の候補ボクセルが周辺ボクセル内に存在するか否か判定し、当該他の候補ボクセルが存在する場合には、対象の候補ベクトル(及び当該他の候補ボクセル)を柱状体ボクセルBpとみなす。
【0088】
図9(B)は、隣接する候補ボクセルの配置例である。サーバ装置2は、選定した各候補ボクセルに対し、対象の候補ボクセルを中心とする縦、横、高さそれぞれボクセル3個分の大きさの立方体領域内に存在する周辺ボクセル内において、第1主成分の向きが同一又は180度異なる他の候補ボクセルの存否を判定する。そして、図9(B)の例では、x軸方向において、第1主成分の向きが略同一又は略180°異なる他の候補ボクセルが隣接して存在することから、サーバ装置2は、これらの候補ボクセルを柱状体ボクセルBpとみなす。一般に、水平柱状体は、複数のボクセルに渡って存在し、かつ、各ボクセル内の水平柱状体は同一の向きに延在することが想定される。よって、サーバ装置2は、上述の判定に基づき柱状体ボクセルBpを選定することで、水平柱状体を有しないボクセルを候補ボクセルとして誤って選定した場合でも、柱状体ボクセルBpを的確に選定することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施例に係るサーバ装置2は、空間を区切った領域であるボクセルごとに、1のボクセルに含まれる、ライダ30等の計測装置が計測した物体の表面の計測点群の主成分を算出する。そして、サーバ装置2は、主成分分析の結果に基づき、計測点群が平面を形成する平面ボクセルBfを判定する。また、サーバ装置2は、主成分分析の結果に基づき、計測点群が柱状体を形成する柱状体ボクセルBpを判定する。そして、サーバ装置2は、計測点群を含むボクセルであって、平面ボクセルBf又は柱状体ボクセルBpのいずれにも該当しないボクセルを、植生を含むボクセルである植生ボクセルBvとして判定する。これにより、サーバ装置2は、植生ボクセルBvを的確に判定し、ボクセルデータの重み付け値や植生フラグを適切に設定することができる。
【0090】
[変形例]
以下、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施例に適用してもよい。
【0091】
(変形例1)
車載機1は、サーバ装置2に代えて、植生判定処理を実行してもよい。この場合、車載機1は、例えば、ライダ30が出力する計測点を絶対座標系に変換した点群データに対して、図4のステップS101の処理及び図5に示す植生判定処理を実行することで、植生ボクセルBvを判定する。そして、車載機1は、判定した植生ボクセルBvの情報を計測データD1に含めてサーバ装置2へ送信する。この場合、サーバ装置2は、車載機1から受信した計測データD1に基づきボクセルデータの重み付け値や植生フラグの生成及び更新を行うことができる。本変形例では、車載機1は、本発明における「判定装置」の一例である。
【0092】
また、さらに別の例では、車載機1は、サーバ装置2に代えて、図4に示すボクセルデータ生成処理の全体を実行してもよい。この場合、まず、車載機1は、ライダ30が出力する計測点を絶対座標系に変換した点群データに対して、図4のステップS101の処理及び図5に示す植生判定処理を実行することで、植生ボクセルBvを判定する。そして、車載機1は、植生判定処理の判定結果に基づき、図4のステップS103に相当する処理であるボクセルデータの重み付け値や植生フラグの生成及び更新を行う。
【0093】
(変形例2)
ボクセルデータは、図3に示すように、平均ベクトルと共分散行列とを含むデータ構造に限定されない。例えば、ボクセルデータは、平均ベクトルと共分散行列を算出する際に用いられる計測整備車両の計測データを絶対座標系に変換した点群データをそのまま含んでいてもよい。この場合、車載機1は、NDTによるスキャンマッチングに限定されず、ICP(Iterative Closest Point)などの他のスキャンマッチングを適用して自車位置推定を行ってもよい。
【0094】
(変形例3)
車載機1に相当する機能が車両に内蔵されていてもよい。この場合、車両の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)は、車両のメモリに記憶されたプログラムを実行することで、車載機1の制御部15に相当する処理を実行する。
【符号の説明】
【0095】
1 車載機
2 サーバ装置
10 地図DB
23 配信地図DB
24 計測点群DB
11、21 通信部
12、22 記憶部
15、25 制御部
13 センサ部
14 入力部
16 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9