(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038286
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】リチウム硫黄(Li-S)電池の電気化学的充放電のための方法及びその方法を使用するデバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20230309BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230309BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J15/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006461
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2021069622の分割
【原出願日】2015-04-14
(31)【優先権主張番号】61/979,823
(32)【優先日】2014-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザジーブ
(72)【発明者】
【氏名】チス キム
(72)【発明者】
【氏名】アブデルバスト ジェルフィ
(72)【発明者】
【氏名】ミュンフン チョ
(57)【要約】
【課題】Li-S電池またはセルの電気化学的充放電のための方法を提供すること
【解決手段】
本発明は、Li-S電池またはセルの電気化学的充放電のための方法であって、使用される電流のプロファイルを変動することによって、電池における活性物質の形態の制御を可能にし、それ故に、電池の容量及び寿命を改善する方法に関する。本発明は、本発明の充放電プロセスを含む、Li-S電池の生成方法にも関する。本発明に従うプロセスは、Li-S電池充放電デバイスを使用して実行することができる。本発明は、そのようなデバイスに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギー密度。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、カソードが硫黄系材料からなり、アノードがリチウム系材料からなる(Li-S)電気化学セル及び電池に関する。より具体的には、本発明は、プロセスを実行するための、Li-S電池及びデバイスの充放電プロセスに関する。さらに、本発明は、本発明に従う充放電プロセスを具体化する、Li-S電池を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
Li-S電池などの高エネルギー密度電池は、携帯用電子デバイスの使用が増大するにつれてますます需要が増えている。Li-S電池内の化学反応は、固相と可溶性中間体との間の相変化に伴い起こる変換反応に基づく。その一方で従来の電池では、化学反応は、境界明確な固体媒体内部で起こるインターカレーション反応に基づく。それ故に、Li-S電池におけるカソードは、重大な形態変化及び体積変化を受ける。これは、長期サイクルをもつLi-S電池の製造が所望される場合に、基本的な課題のうちの一つとなる。Li-S電池における簡素化した反応スキームは、次の通りである。
【化1】
【0003】
各ステップにおける化学反応は、次の通りである。
(I)S8(固体)+2Li++2e-→Li2S8(可溶性);0.25電子/S(209mAh/g)
(II)Li2S8(可溶性)+2Li++2e-→2Li2S4(可溶性);0.25電子/S(209mAh/g)
(III)Li2S4(可溶性)+2Li++2e-→2Li2S2(固体);0.5電子/S(418mAh/g)
(IV)Li2S2(固体)+2Li++2e-→2Li2S(固体);1電子/S(836mAh/g)
【0004】
前に概説した化学反応における固体生成物は、電子導電率及びリチウムイオン導電率の両方において高抵抗を示す。従って、これらの固体生成物の形態の制御は、Li-S電池の可逆性の決定において重要因子となる(Jianming Zhengらの「Controlled Nucleation and Growth Process of Li2S2/Li2S in Lithium-Sulfur Batteries」,Journal of Electrochemical Society2013,160(11),A1992-A1996)。さまざまな制御方策が、当業界において公知となっている。
【0005】
Li-S電池内の固体生成物の形態制御のために開発された一つの方策は、導電性マトリックス(通常、炭素系材料)内部に活性硫黄を閉じ込めることからなる。そのような導電性マトリックスは、例えば、メソポーラス炭素(X.Ji,L.F.Nazar,J.Mat.Chem.20(2010)9821-9826)、カーボンナノチューブ(CNTs)(G.Zheng,Q.Zhang,J.J.Cha,Y.Yang,W.Li,Z.W.Seh,Y.Cui,NanoLett.(2013)13,1265-1270)、またはグラフェン層(L.Ji,M.Rao,H.Zheng,L.Zhang
,Y.Li,W.Duan,J.Guo,E.J.Cairns,Y.Zhang,J.Am.Chem.Soc.133(2011)18522-18525)であっても良い。
【0006】
導電性マトリックス内部の硫黄の閉じ込めに基づく前述のさまざまな手法は、高エネルギー電池Li-Sが有望であることを裏付ける興味深い結果をもたらした。しかしながら、これらの電池に関連するなおも多くの欠点がある。第一に、硫黄の閉じ込めは、常に完全ではないし、永久的でもない。特定の数のサイクル後、可溶性硫黄は、マトリックス外部及び電解質内部に拡散する。第二に、セルの体積エネルギー密度が、複合炭素の超低密度の故に、従来のLi-ion電池に劣る。第三に、閉じ込めプロセスは、大規模には経済的に採算が合わず、商業化が困難である。
【0007】
Li-S電池内の固体生成物の形態制御のための他の方策は、セルに使用される電解質の性質に基づく。そのような手法は、例えば、U.S.7,019,494、U.S.7,646、U.S.2006-0208701、及びU.S.2005-0156575に開示されている。
【0008】
さらに、Li-S電池の充電及び/または放電に基づく他の方策が試まれてきた。そのようなプロセスは、例えば、Yu-Sheng Suらの「A Strategic Approach to Recharging Lithium-Sulphur Batteries for Long Cycle Life」、2013年12月18日に公開されたNature Communications、U.S.8,647,769に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】U.S.7,019,494
【特許文献2】U.S.7,646,171
【特許文献3】U.S.2006-0208701
【特許文献4】U.S.2005-0156575
【特許文献5】U.S.8,647,769
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】X.Ji,L.F.Nazar,J.Mat.Chem.20(2010)9821-9826
【非特許文献2】G.Zheng,Q.Zhang,J.J.Cha,Y.Yang,W.Li,Z.W.Seh,Y.Cui,NanoLett.(2013)13,1265-1270
【非特許文献3】L.Ji,M.Rao,H.Zheng,L.Zhang,Y.Li,W.Duan,J.Guo,E.J.Cairns,Y.Zhang,J.Am.Chem.Soc.133(2011)18522-18525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
Li-S電池の性能及び特性を改善するための方策を開発する要求がなおもある。
【0012】
本記述は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる多くの文献を参照する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、Li-S電池における活性物質の形態制御を可能にし、それ故に、電池
の容量及びライフサイクルが改善された充放電プロセスを開発した。本発明に従うプロセスは、制御プロセスにおけるツールとして使用される。
【0014】
より具体的には、本発明者らは、充放電プロセス中の、電池の容量及びライフサイクルの改善を可能にするのに使用される電流のプロファイルにおける変動を発見した。
【0015】
本発明に従うプロセスは、Li-S電池充放電デバイスを使用して実行することができる。本発明は、そのようなデバイスに関する。
【0016】
さらに、本発明に従うプロセスは、Li-S電池のための製造プロセス、特に、電池の形成及び/または熟成期において具現することができる。本発明は、そのような製造プロセスに関する。
【0017】
それ故に、本発明は、その態様に従う下記事項を提供する。
(1)パルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(2)充電ステップ、放電ステップまたは前記充電ステップ及び放電ステップ両方におけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(3)前記充電ステップのみにおけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(4)前記放電ステップのみにおけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(5)パルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(6)充電ステップ、放電ステップまたは前記充電ステップ及び放電ステップ両方における、パルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(7)前記充電ステップのみにおけるパルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(8)前記放電ステップのみにおけるパルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(9)Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流を提供するように適応した前記デバイス。
(10)Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流、定電流またはパルス電流と定電流との組み合わせを提供するように適応した前記デバイス。
(11)Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流及び定電流を断続的に提供するように適応した前記デバイス。
(12)前記電池の形成及び/または熟成のステップを含み、前記ステップは、パルス電流を使用する、Li-S電池を製造するためのプロセス。
(13)前記電池の形成及び/または熟成のステップを含み、前記ステップは、パルス電流と定電流との組み合わせを使用する、Li-S電池を製造するためのプロセス。
(14)第一の期間に定電流を印加し、それに続く第二の期間に前記電流方向を反転して前記パルス電流を取得するところの、項目(1)~(8)のいずれか1つに記載のプロセス、項目(10)若しくは(11)に従うデバイス、または項目(12)若しくは(13)に従うプロセス。
(15)第一の期間に定電流を印加し、それに続く期間に中断して前記パルス電流を取得するところの、項目(1)~(8)のいずれか1つに記載のプロセス、項目(10)若しくは(11)に従うデバイス、または項目(12)若しくは(13)に従うプロセス。
(16)約0.1秒~約10時間続く第一の期間に定電流を印加し、それに続く約0.1秒~約10時間続く第二の期間に前記電流方向を反転して前記パルス電流を取得するところの、項目(1)~(8)のいずれか1つに記載のプロセス、項目(10)若しくは(
11)に従うデバイス、または項目(12)若しくは(13)に従うプロセス。
(17)約0.1秒~約10時間続く第一の期間に定電流を印加し、それに続く約0.1秒~約10時間続く期間に中断して前記パルス電流を取得するところの、項目(1)~(8)のいずれか1つに記載のプロセス、項目(10)若しくは(11)に従うデバイス、または項目(12)若しくは(13)に従うプロセス。
【0018】
本発明の他の目的、利点及び特徴は、添付図面を参照した単なる実施例として与えられる、その具体的な実施形態の以下の非制限的な記述を読むことによってより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】比較実施例1の電池と対比した実施例2の電池の放電を例証する。
【
図2】比較実施例1の電池と対比した実施例3の電池の放電を例証する。
【
図3】比較実施例1の電池と対比した実施例4の電池の放電を例証する。
【
図4】比較実施例1の電池と対比した実施例5の電池の放電を例証する。
【
図5】比較実施例1の電池と対比した実施例6の電池の放電を例証する。
【
図6】
図6aは、実施例8(比較実施例2)の電池の放電を例証する。
図6bは、比較実施例2の電池と対比した実施例9の電池の放電を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に使用されるような「パルス電流」という用語は、限られた期間における電流の印加、それに続く限られた期間における電流方向の反転または限られた期間における中断を意味する。
【0021】
本明細書に使用されるような「定電流」という用語は、重複する時間に関して制限のない、制限された電圧またはエネルギーの蓄積によって制御される電流の印加を意味する。
【0022】
本明細書に使用されるような「ハイブリッド電流」という用語は、同一の充電ステップまたは放電ステップ期間における、パルス電流と定電流との組み合わせの使用を意味する。
【0023】
本明細書に使用されるような「充電」という用語は、正極の酸化及び負極の還元期間における、正極から負極への電流束(正電流)を生成する電気化学反応を意味する。
【0024】
本明細書に使用されるような「放電」という用語は、正極の還元及び負極の酸化期間における、負極から正極への電流束(負電流)を生成する電気化学反応を意味する。
【0025】
本明細書に使用されるような「充放電」という用語は、電池の充電及び/または放電を意味する。
【0026】
本明細書に使用されるような「充電デバイス」という用語は、電池を充電するための電流を生成する電子デバイスを意味する。
【0027】
本発明者らは、Li-S電池における活性物質の形態制御を可能にする充放電プロセスを開発した。本発明に従うプロセスによって、電池の容量及びライフサイクルの改良が可能になる。プロセスは、Li-S電池における活性物質の形態制御のためのツールとして使用される。より具体的には、充放電プロセス中の、電池の容量及びライフサイクルの改善を可能にするのに使用される電流のプロファイルにおける変動を発見した。
【0028】
実際には、電気化学セルにおける反応速度(酸化または還元)を電流が示す限り、反応
速度論を、電流のプロファイルをプログラムすることによって直接に制御し得る。
【0029】
従来の再充電可能リチウム電池では、通常、反応が定速で起こるよう電池を充電するように電流が印加される。本発明は、パルス電流を使用するプロセスを提供する。このプロセスは、Li-S電池における活性硫黄の使用を促進する。パルス電流は、Li-S電池において反応が起こるにつれて徐々に緩和及びリバランシングを供与し、形成される固体生成物(S8、Li2S2、Li2S)の形態は、より抵抗性が小さくなる。実際には、緩和またはリバランシングによって、固体生成物と電解質における可溶性種との間の相互作用時間を増大することができる。
【0030】
本発明は、充電状態(SOC)の程度に応じてパルセーションのさまざまな振幅を組み合わせることによって充電時間を短縮できるという別の利点を示す。通常、高電流状態下で起こる望ましくない不可逆反応を防止するために、充電速度を制限することが必須である。パルス電流の印加によって、充電電流のより許容可能な限度がもたらされる。
【0031】
本発明の実施形態において、プロセスは、硫黄系カソード材料を使用する任意のタイプの電池に適用することができる。別の実施形態では、硫黄は、硫黄元素、有機硫黄、炭素硫黄成分または任意の他の類似の成分であっても良い。
【0032】
本発明の実施形態において、プロセスは、高容量カソード(>1mg_硫黄/cm2)及び/または粘性電解質(>10mPa・s)をもつセルにも適用して良い。
【0033】
本発明に従うプロセスは、Li-S電池の充放電に使用される充電デバイスに実行して良い。本発明は、そのようなデバイスに関する。
【0034】
さらに、本発明に従うプロセスは、Li-S電池のための製造プロセスにおいて実行し得る。特に、本発明に従うプロセスは、形成及び/または熟成ステップにおいて実行し得る。
【実施例0035】
本発明は、下記の実施例によってさらに例証される。本発明は、これらの実施例によって限定されない。
【0036】
実施例1:(比較実施例1)
a)正極薄膜の調製
ポリエチレンオキサイドホモポリマー(PEO)(MM:5.000.000)を、アセトニトリルとトルエンとの混合液(体積比:8:2)中に、10%分子量濃度において溶解する。硫黄粉末(3g)、ケッチェンブラック(1g)、PEO溶液(4.49g)を、懸濁液を取得するために、自転公転撹拌機(Thinky Mixer ARE-250)を使用して共に混合する。例えば、約10000cPである、コーティングに適切な粘性に到達させるために、追加的な溶媒を混合液(アセトニトリル+トルエン、体積比:8:2)に追加する。そのように取得した懸濁液を使用して、炭素で覆われているアルミ箔におけるコーティングを形成する。コーティングの形成は、200μmギャップをもつ「ドクターブレード」を使用して実行する。硫黄の容量は、溶媒の蒸発後、約2mg/cm2である。
【0037】
b)セルアセンブリ
コインサイズを有するCR2032セルを、アノードとしてセパレータCelgard3501及びリチウムホイル(Hoshen、200μm)を使用して、ヘリウムガスで満たされたグローブボックス内部で組み立てる。次に、ジメトキシエタン(DME)と1
,3-ジオキソラン(DOX)との混合液(体積比:1:1)におけるリチウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)溶液の0.12mlを、セルに注入して液体電解質を形成する。
【0038】
c)形成
そのように構成したセルを、12時間25℃に保持し、その後、0.1Cの定電流を使用した充放電プロセスを、3回、25℃において1.6V~2.8Vにおいて行う。比較実施例1の電池の放電容量を、
図1~
図5に例証する。比較実施例1において取得した容量は、909mAhである。
【0039】
実施例2
連続電流の代わりにパルス電流を形成期(充電ステップ及び放電ステップ期間)に印加する。このパルス電流は、0.1C電流を60秒間印加し、それに続いて20秒間電流方向を反転するものとして特徴付けられる。これを
図1に例証する。このパルス電流の印加は、カットオフ電圧に達するまで繰り返される。他の実験条件は、実施例1と同一である。実施例2の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図1に例証する。実施例2では、容量が1034mAhに達する。これは、比較実施例1において取得した容量よりも14%高い。
【0040】
実施例3
連続電流の代わりにパルス電流を形成期(充電ステップ及び放電ステップ期間)に印加する。このパルス電流は、0.1C電流を60秒間印加し、それに続いて0.5C電流を4秒間反対方向に流すものとして特徴付けられる。これを
図2に例証する。このパルス電流の印加は、カットオフ電圧に達するまで繰り返される。他の実験条件は、実施例1と同一である。実施例3の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図2に例証する。実施例3では、容量が1036mAhに達する。これは、比較実施例1において取得した容量よりも14%高い。
【0041】
実施例4
0.1C電流を60秒間印加し、それに続いて放電ステップ期間のみに0.5C電流を4秒間反対方向に流し、充電ステップ期間には定電流を印加するものとして特徴付けられたパルス電流を印加する。他の実験条件は、実施例1と同一である。実施例4の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図3に例証する。実施例4では、容量が1048mAhに達する。これは、比較実施例1において取得した容量よりも15%高い。
【0042】
実施例5
0.1C電流を60秒間印加し、それに続いて充電ステップ期間のみに0.1C電流を20秒間反対方向に流し、放電ステップ期間には定電流を印加するものとして特徴付けられたパルス電流を印加する。他の実験条件は、実施例1と同一である。実施例5の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図4に例証する。実施例5では、容量が1008mAhに達する。これは、比較実施例1において取得した容量よりも11%高い。
【0043】
実施例6
パルス電流を、放電ステップの30%のみの期間に印加する。この実施例では、パルス電流と定電流との組み合わせ、すなわち、「ハイブリッド電流」を印加することを理解すべきである。他の実験条件は、実施例4と同一である。実施例6の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図5に例証する。実施例6では、容量が951mAhに達する。これは、比較実施例1において取得した容量よりも5%高い。
【0044】
実施例7(比較実施例2)
N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PY13TFSI)と、DMEと、DOXとの混合液(体積比:2:1:1)中のリチウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)0.5Mを、セルに注入して液体電解質を形成する。他の実験条件は、実施例1と同一である。実施例7(比較実施例2)の電池の放電容量を、比較実施例1と比較して
図6aに例証する。比較実施例2において取得した容量は、288mAhである。
【0045】
実施例8
連続電流の代わりにパルス電流を形成期に印加する。このパルス電流は、0.1C電流を1時間印加し、それに続いて2時間中断するものとして特徴付けられる。このパルス電流の印加に続く中断は、カットオフ電圧に達するまで繰り返される。他の実験条件は、実施例7と同一である。実施例8の電池の放電容量を、実施例7(比較実施例2)と比較して
図6bに例証する。実施例8では、容量が458mAhに達する。これは、比較実施例2において取得した容量よりも59%高い。
【0046】
実施例9
連続電流の代わりにパルス電流を形成期に印加する。このパルス電流は、0.1C電流を6時間印加し、それに続いて6時間中断するものとして特徴付けられる。このパルス電流の印加に続く中断は、カットオフ電圧に達するまで繰り返される。他の条件は、実施例7と同一である。実施例9の電池の放電容量を、実施例7(比較実施例2)と比較して
図6cに例証する。実施例9では、容量が816mAhに達する。これは、比較実施例2において取得した容量よりも183%高い。
【0047】
以下の表1は、実施例1~9におけるさまざまな実験条件を示す。
【表1】
【0048】
本発明の実施形態において、セルにおける電解質は、前述の実施例に記述するように液状である。電解質は、実施例7~9に記述するようにイオン液体であっても良い。当業者に理解されるように、他のタイプの電解質も使用することができる。
【0049】
本発明の実施形態では、電流の振幅に関して制限はない。
【0050】
特許請求の範囲の範囲は、実施例に説明される好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての記述と一致する広範な解釈として与えられるべきである。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、例えば、以下が提供される。
(項1)
パルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項2)
充電ステップ、放電ステップまたは前記充電ステップ及び放電ステップ両方におけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項3)
前記充電ステップのみにおけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項4)
前記放電ステップのみにおけるパルス電流の使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項5)
パルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項6)
充電ステップ、放電ステップまたは前記充電ステップ及び放電ステップ両方における、パルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項7)
前記充電ステップのみにおけるパルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項8)
前記放電ステップのみにおけるパルス電流と定電流との組み合わせの使用を含む、Li-S電池またはセルの充放電のためのプロセス。
(項9)
Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流を提供するように適応した前記デバイス。
(項10)
Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流、定電流またはパルス電流と定電流との組み合わせを提供するように適応した前記デバイス。
(項11)
Li-S電池またはセルの充放電のためのデバイスであって、パルス電流及び定電流を断続的に提供するように適応した前記デバイス。
(項12)
前記電池の形成及び/または熟成のステップであって、パルス電流を使用する前記ステップを含む、Li-S電池を製造するためのプロセス.
(項13)
前記電池の形成及び/または熟成のステップであって、パルス電流と定電流との組み合わせを使用する前記ステップを含む、Li-S電池を製造するためのプロセス。
(項14)
第一の期間に定電流を印加し、それに続く第二の期間に前記電流方向を反転して前記パルス電流を取得するところの、上記項1~8のいずれか1つに記載のプロセス、上記項10若しくは11に従うデバイス、または上記項12若しくは13に従うプロセス。
(項15)
第一の期間に定電流を印加し、それに続く期間に中断して前記パルス電流を取得するところの、上記項1~8のいずれか1つに記載のプロセス、上記項10若しくは11に従うデバイス、または上記項12若しくは13に従うプロセス。
(項16)
約0.1秒~約10時間続く第一の期間に定電流を印加し、それに続く約0.1秒~約10時間続く第二の期間に前記電流方向を反転して前記パルス電流を取得するところの、上記項1~8のいずれか1つに記載のプロセス、上記項10若しくは11に従うデバイス、または上記項12若しくは13に従うプロセス。
(項17)
約0.1秒~約10時間続く第一の期間に定電流を印加し、それに続く約0.1秒~約10時間続く期間に中断して前記パルス電流を取得するところの、上記項1~8のいずれか1つに記載のプロセス、上記項10若しくは11に従うデバイス、または上記項12若しくは13に従うプロセス。