(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038315
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】薬剤払出装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008854
(22)【出願日】2023-01-24
(62)【分割の表示】P 2022065807の分割
【原出願日】2018-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小池 教文
(72)【発明者】
【氏名】楯 秀将
(72)【発明者】
【氏名】大桃 慎一郎
(57)【要約】
【課題】薬剤の払出しを効率良く行う。
【解決手段】薬剤払出カセット(1)は、円盤状の第1回転体(12)と、第1回転体の外周側に配置された円環状の第2回転体であって、回転することにより薬剤を搬送する第2回転体(13)と、第2回転体により前記第2回転体上を搬送される薬剤が接触する第1変位部材(16A)及び第2変位部材(16B)と、を備える。第2回転体は、順送り動作と逆送り動作とを実行可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を払出口まで搬送することで、前記払出口から前記薬剤を払出す薬剤払出装置であって、
円盤状の第1回転体と、
前記第1回転体の外周側に配置された円環状の第2回転体であって、回転することにより前記薬剤を搬送する第2回転体と、
前記第2回転体により前記第2回転体上を搬送される前記薬剤が接触する変位部材と、を備え、
前記第2回転体は、前記薬剤を順送りする順送り動作と、前記薬剤を順送りする方向とは逆方向へ逆送りする逆送り動作と、を実行可能である、薬剤払出装置。
【請求項2】
前記第2回転体から送り出され、前記払出口を通過した薬剤を検知するセンサーを備える、請求項1に記載の薬剤払出装置。
【請求項3】
前記順送り動作時の前記第2回転体の動きは、前記逆送り動作時の前記第2回転体の動きよりも遅い、請求項1に記載の薬剤払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動条件の変更により、任意の種類の薬剤(例:錠剤、カプセル)を単位量毎に(例:1錠ずつ)払出可能な可変カセットの一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の可変カセットは、第1回転体、第2回転体、高さ規制体及び幅規制体を備える。可変カセットにおいて、投入された薬剤は、第1回転体の回転により第1回転体から第2回転体へと排出された後、第2回転体の回転により払出口に向けて搬送される。第2回転体上の薬剤は、高さ規制体及び幅規制体により、第2回転体上に周方向に1錠ずつ並んだ状態で払出口まで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
払出口の上流側(払出口へと薬剤をガイドする薬剤ガイド領域)は、薬剤が一錠ずつ並んだ状態で払出されるように、幅規制体と、幅規制体と対向する位置に配置された側壁部材とによって所定幅に規定されている。特許文献1では、側壁部材は固定部材である。そのため、薬剤の形状によっては、固定部材に薬剤が引っ掛かることで薬剤の搬送が妨げられたり、固定部材に薬剤が接触することにより薬剤が破損してしまったりする可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、薬剤の払出しを効率良く行うことが可能な薬剤払出装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る薬剤払出装置は、薬剤を払出口まで搬送することで、前記払出口から前記薬剤を払出す薬剤払出装置であって、円盤状の第1回転体と、前記第1回転体の外周側に配置された円環状の第2回転体であって、回転することにより前記薬剤を搬送する第2回転体と、前記第2回転体により前記第2回転体上を搬送される前記薬剤が接触する変位部材と、を備え、前記第2回転体は、前記薬剤を順送りする順送り動作と、前記薬剤を順送りする方向とは逆方向へ逆送りする逆送り動作と、を実行可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る薬剤払出装置によれば、薬剤の払出しを効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、モーターベースに薬剤払出カセットが取り付けられた状態を示す斜視図であり、(b)は、モーターベースの構成例を示す斜視図であり、(c)は、カウントセンサーの配置例を示す図である。
【
図2】薬剤払出カセットの構成例を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、カバー部を取り外した状態の薬剤払出カセットの構成例を示す斜視図であり、(b)は、当該状態の薬剤払出カセットの一部を示す平面図である。
【
図4】(a)は、第1回転体及び第2回転体の断面図であり、(b)は、第1回転体の周辺部の一例を示す図である。
【
図5】(a)は第2回転体の比較例を示す斜視図であり、(b)は第2回転体13の構成例を示す斜視図である。
【
図6】(a)及び(b)は、高さ規制体及び幅規制体の構成例を示す図である。
【
図7】(a)及び(b)は、払出口付近における分割錠剤の重なり防止について説明するための図である。
【
図8】(a)及び(b)は、移送高さおよび移送幅の調整例を説明するための図である。
【
図9】(a)は、ガイド部材の構成例を示す斜視図であり、(b)は、第1変位部材及び第2変位部材の構成例を示す平面図である。
【
図10】(a)及び(b)は、第1変位部材の断面形状がD形状である場合の分割錠剤の搬送例を説明するための図である。
【
図11】(a)~(c)は、第2回転体の動作例を説明するための図である。
【
図13】薬剤払出カセットおよびモーターベースの構成例を示すブロック図である。
【
図14】(a)及び(b)は、第2回転体の動作例を説明するための図である。
【
図15】(a)及び(b)は、第2回転体の動作例を説明するための図である。
【
図16】薬剤払出カセットにおける処理例を示すフローチャートである。
【
図17】変形例に係る薬剤払出カセットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本発明の一実施態様について、
図1~
図16を用いて以下に詳細に説明する。まず、モーターベース10に薬剤払出カセット1(薬剤払出装置)が取り付けられた状態について、
図1に基づき説明する。
図1の(a)は、モーターベース10に薬剤払出カセット1が取り付けられた状態を示す斜視図であり、(b)は、モーターベース10の構成例を示す斜視図であり、(c)は、カウントセンサー101の配置例を示す図である。
【0010】
図1の(a)に示すように、モーターベース10に薬剤払出カセット1が接続されることで、モーターベース10の制御を受けて薬剤払出カセット1による分割錠剤の払出処理が実現する。薬剤払出カセット1は、投入された分割錠剤を払出口17(
図1の(c)参照)まで順送りすることで、払出口17から当該分割錠剤を払出す部材である。モーターベース10は、薬剤払出カセット1が載置されると共に接続されることで、薬剤払出カセット1の動作を制御する部材である。
【0011】
薬剤払出カセット1が払出し対象とする薬剤は、服用できない薬剤容器に収容された薬剤(例:アンプルまたはバイアル)ではなく、服用できない薬剤容器等には収容されていない薬剤、又は、服用できない包装等が施されていない薬剤自体を指す。本明細書では、上記払出し対象とする薬剤は、分割された錠剤(例:略半分に分割された錠剤(半錠))(以降、分割錠剤と称す)であるものとして説明する。なお、薬剤払出カセット1は、分割されていない錠剤(1錠分の錠剤)又はカプセルを払出し対象としても構わないが、破損しやすい、又は割れやすい薬剤を取り扱う場合に有効に機能する。これらの点に関しては、以降の実施形態における薬剤払出カセットについても同様である。
【0012】
なお、本明細書では、駆動条件の変更により、任意の種類の薬剤を単位量毎に払出す薬剤払出カセットを例に挙げて説明する。つまり、例えば薬剤を分包する薬剤分包装置に、予め決められた種類の薬剤を払出す固定カセット、及び薬剤が手撒きされる手撒きユニット等と共に備えられる薬剤払出カセットを例に挙げて説明する。しかしながら、本明細書で説明する薬剤払出カセットの機能は、例えば、投入された複数の薬剤を順送りし、順送りされた薬剤の少なくとも一部をカウントして払出す薬剤払出装置にも適用できる。
【0013】
〔モーターベースの構成〕
モーターベース10は、
図1の(b)に示すように、カウントセンサー101、コネクタ102、駆動部材103~106を備える。
【0014】
カウントセンサー101は、
図1の(c)に示すように、薬剤払出カセット1の第2回転体13から送り出され、払出口17を通過(落下)した分割錠剤を検知するセンサーである。カウントセンサー101は、払出口17を通過した分割錠剤を検知することで、その個数をカウントする。カウントセンサー101は、第2回転体13から送り出された分割錠剤の通過経路上に対象物の検出範囲が形成されるように配置される(
図1の(c)の「光軸」参照)。
【0015】
カウントセンサー101は、発光部から発せられた光を、発光部と対向する位置にある受光部が受光する(又は受光しない)ことで、検出範囲内の対象物の有無を特定する、所謂受光型のセンサーである。但し、カウントセンサー101は、発光部から発せられた光が対象物で反射し、当該反射した光を受光部で受光することで、検出範囲内の対象物の有無を特定する、所謂反射型のセンサーであってもよい。この場合、発光部と受光部とは並設される。
【0016】
コネクタ102は、薬剤払出カセット1のコネクタ(不図示)に接続されることで、薬剤払出カセット1に電力を供給する。駆動部材103及び104は、それぞれ、
図2に示す薬剤払出カセット1の第1回転体12を回転させる第1回転機構、及び第2回転体13を回転させる第2回転機構に接続され、第1回転機構及び第2回転機構に動力を供給する。駆動部材105及び106は、それぞれ、
図2に示す薬剤払出カセット1の高さ規制体14を移動させる高さ規制体移動機構、及び幅規制体15を移動させる幅規制体移動機構に接続され、高さ規制体移動機構及び幅規制体移動機構に動力を供給する。
【0017】
また、
図13に示すように、モーターベース10は、制御部50及び記憶部60を備えるが、これらの部材については後述する。
【0018】
なお、モーターベース10が制御部50及び記憶部60を備えるものとして説明するが、これに限られない。例えば、制御部50及び記憶部60は、モーターベース10及び薬剤払出カセット1とは別に設けられた、薬剤払出カセット1の動作を制御する制御装置によって実現されても構わない。この場合、制御装置は、モーターベース10に接続され、モーターベース10の動作を制御することで、薬剤払出カセット1の動作を制御する。
【0019】
また、薬剤払出カセット1及びモーターベース10は別機構となっているが、一体型であっても構わない。この場合、例えば、薬剤払出カセット1が、カウントセンサー101、制御部50及び記憶部60を備えていても構わない。
【0020】
〔薬剤払出カセットの構成〕
図2は、薬剤払出カセット1の構成例を示す斜視図である。
図3の(a)は、カバー部11を取り外した状態の薬剤払出カセット1の構成例を示す斜視図であり、(b)は、当該状態の薬剤払出カセット1の一部を示す平面図である。
【0021】
薬剤払出カセット1は、
図2及び
図3に示すように、主として、カバー部11、第1回転体12、第2回転体13、高さ規制体14、幅規制体15、及びガイド部材16を備える。
【0022】
薬剤払出カセット1では、分割錠剤は第1回転体12に投入される。その後、分割錠剤は、第1回転体12の回転により移動領域Ar1において第1回転体12から第2回転体13へと乗り移り、第2回転体13の回転により、第2回転体13上から払出口17へと落下する。また、第2回転体13上の分割錠剤は、高さ規制体14及び幅規制体15により1列に整列させられる。以下、各部材について詳細に説明する。
【0023】
<カバー部・払出口>
カバー部11は、薬剤払出カセット1の上部(分割錠剤の投入側)に設けられた筐体の一部であり、薬剤払出カセット1の内部を保護する。払出口17は、第2回転体13により搬送された分割錠剤が落下する開口部である。
【0024】
<第1回転体・第2回転体>
図4及び
図5もあわせて、第1回転体12及び第2回転体13について説明する。
図4の(a)は、第1回転体12及び第2回転体13の断面図であり、(b)は、第1回転体12の周辺部の一例を示す図である。
図5の(a)は第2回転体13の比較例を示す斜視図であり、(b)は第2回転体13の構成例を示す斜視図である。
【0025】
第1回転体12及び第2回転体13は、投入された分割錠剤を払出口17まで搬送する薬剤搬送機構として機能する。具体的には、第1回転体12及び第2回転体13は、順送りの場合、投入された分割錠剤を、払出口17へ向けて搬送する。逆送りの場合、第2回転体13は、第2回転体13上に載置された分割錠剤を、順送りする方向とは逆方向へ搬送する。つまり、第2回転体13は、分割錠剤を順送りする順送り動作と、分割錠剤を逆送りする逆送り動作とを切替え可能である。但し、第1回転体12についても第2回転体13と同様に、順送り動作と逆送り動作とを切替え可能であっても構わない。なお、順送りを正転、逆送りを逆転と称しても構わない。
【0026】
第1回転体12は、回転することにより、投入された分割錠剤を外周側(径方向外側)へ移動させる回転部材(内円盤、内輪)である。具体的には、
図2及び
図3に示すように、第1回転体12は、第1軸部12Aを中心として回転する円盤状の回転部材である。
【0027】
また、
図2、
図3の(a)及び
図4の(a)に示すように、仕切壁18が、第1回転体12の外周部に沿って立設している。これにより、投入された分割錠剤が第1回転体12に載置される。具体的には、投入された分割錠剤は、第1回転体12と仕切壁18とで区画された収容空間に収容される。
【0028】
図4の(a)に示すように、第1回転体12は、XY平面(例:薬剤払出カセット1の載置面)に対して傾斜するように配設されている。つまり、第1回転体12の第1軸部12Aは、Z軸方向(垂直方向)に対して所定角度傾斜するように配置されている。
【0029】
また、
図2~
図4に示すように、第1回転体12の上面には、当該上面における、投入された分割錠剤の転動を抑止するための複数の凸条部12Bが放射状に設けられている。第1回転体12に投入された分割錠剤は、第1回転体12の回転により発生する遠心力により外周部へと移動する。
【0030】
図4の(a)及び(b)に示すように、各凸条部12Bの周端部の側面12Cは、第2回転体13の分割錠剤が載置される表面と略平行となるような傾斜を有している。これにより、第1回転体12と第2回転体13との間での分割錠剤の移動時に、分割錠剤が破損してしまうことを防止できる。特に逆送り時に第2回転体13から第1回転体12へ分割錠剤が戻されるときに、分割錠剤が破損してしまうことを防止できる。
【0031】
一般に、錠剤は、破損しにくいように、その周囲に保護膜がコーティングされている。しかしながら、分割錠剤の場合、分割した表面に保護膜がコーティングされていない。そのため、分割錠剤は、分割されていない錠剤に比べ外部からの衝撃に弱く、破損しやすい。つまり、分割錠剤は、分割した表面から粉又は欠片が発生しやすい。そのため、分割錠剤を取り扱う薬剤払出カセット1において、側面12Cが上述のような傾斜を有していることは有用である。
【0032】
また、少なくとも移動領域Ar1及び対向領域Ar2において隙間が生じるように、第1回転体12及び第2回転体13の大きさ及び位置関係が規定されている。移動領域Ar1とは、分割錠剤が第1回転体12から第2回転体13に乗り移る領域である。対向領域Ar2とは、移動領域Ar1と対向する、仕切壁18の下部と近接する領域である。
【0033】
一般に、第1回転体12と第2回転体13との間には、第1回転体12が第2回転体13と接触しない程度の隙間が設けられている。しかしながら、移動領域Ar1において薬剤が乗り移ることを考慮して、積極的に隙間を設けるように第1回転体12及び第2回転体13を設計してはいない。薬剤払出カセット1のように分割錠剤を取り扱う場合、上述のように粉又は欠片が発生しやすい。そのため、積極的に隙間を設ける(少なくとも従来よりも大きく設ける)ことで、当該粉又は欠片を第1回転体12の下方へと落下させて回収することが可能になる。
【0034】
ここで例えば、分割錠剤(第1分割錠剤)を払出した後に、第1分割錠剤とは種類が異なる分割錠剤(第2分割錠剤)の払出しを行う場合を考える。隙間がない場合、隙間がある場合に比べ、第1回転体12及び第2回転体13上における、第1分割錠剤の粉又は欠片の残量が多くなる。そのため、隙間がない場合、隙間がある場合に比べ、第1分割錠剤の粉又は欠片が第2分割錠剤と共に払出されてしまう可能性が高い。払出対象の薬剤が他の薬剤の粉又は欠片と共に払出されることは、安全性の観点から好ましくない。そのため、分割錠剤を取り扱う薬剤払出カセット1において、隙間が設けられていることは有用である。但し、隙間は分割錠剤が落下しない程度の大きさに限定される。
【0035】
また、移動領域Ar1の下部には、隙間から落下した粉又は欠片を集積する集積部19(貯留部)が設けられている。集積部19を設けることで、例えば薬剤払出カセット1を分解して清掃するときに、集積された粉又は欠片を簡単に回収できる。そのため、薬剤払出カセット1の清掃の手間を低減できる。集積部19は取外し可能に移動領域Ar1の下部に設けられていても構わない。また、対向領域Ar2の下部に、集積部が設けられていても構わない。また、第2回転体13の内周部及び外周部の少なくともいずれかの下部に沿って集積部が設けられていても構わない。
【0036】
また、薬剤払出カセット1は、第1回転体12を回転させる第1回転機構を内蔵している。第1回転機構は、例えば、第1軸部12Aと、第1軸部12Aの第1回転軸を中心として第1軸部12Aを回転させる駆動部材(不図示)とによって実現される。第1回転機構の駆動部材にモーターベース10の駆動部材103が接続されることで、モーターベース10からの動力を受けて第1回転体12が回転する。なお、第1回転機構の駆動は、回転体制御部51(
図13参照)によって制御される。
【0037】
第2回転体13は、
図2~
図4に示すように、円環状の回転部材であり、第1回転体12の上側(+Z軸方向)に位置するように配設されている。第2回転体13は、第2回転体13の第2回転軸が±Z軸方向に延伸し、かつその上面がXY平面と略平行となるように水平配置されている。つまり、第2回転体13の第2回転軸は、第1回転体12の第1回転軸とは異なる方向に延伸している。
【0038】
また、第2回転体13は、第2回転軸の軸方向(+Z軸方向)から見ると、第1回転体12の外周に沿って配置されており、回転することにより、第2回転体13上に載置された分割錠剤を例えば払出口17へと搬送する回転部材(外円盤、外輪)である。
【0039】
第1回転体12及び第2回転体13は、順送り時には、投入された分割錠剤が払出口17へ向けて搬送されるように同一方向に回転する。移動領域Ar1にて第1回転体12から第2回転体13へと乗り移った分割錠剤の少なくとも一部は、払出口17まで順送りされ、残余の分割錠剤は、高さ規制体14、幅規制体15及びガイド部材16(第1変位部材16A及び第2変位部材16B)により、第1回転体12側へと落下させられる。
【0040】
薬剤払出カセット1は、第2回転体13を回転させる第2回転機構を内蔵している。第2回転機構は、例えば、第2回転体13の側面に沿って設けられたギア部材13A(
図5の(b)参照)によって実現される。ギア部材13Aにモーターベース10の駆動部材104が嵌合されることで、モーターベース10からの動力を受けて第2回転体13が回転する。なお、第2回転機構の駆動も、回転体制御部51によって制御される。
【0041】
また、
図5の(b)に示すように、薬剤払出カセット1では、第2回転体13の内周部及び外周部の全周に亘りリブを設けていない。上述の通り、分割錠剤は破損しやすい。
図5の(a)に示すように、第2回転体13の内周部にリブ130Aを設けた場合、第2回転体13から第1回転体12へ分割錠剤が戻されるときに、分割錠剤がリブ130Aに接触して破損する可能性がある。また、
図5の(a)に示すように、第2回転体13の外周部にリブ130Bを設けた場合、第2回転体13から払出口17へと分割錠剤が搬送されるときに、分割錠剤がリブ130Bに接触して破損する可能性がある。また、リブ130A又は130Bにより分割錠剤の搬送が妨げられた場合、当該分割錠剤に後続の分割錠剤が乗り上げてしまう可能性がある。これは、分割錠剤が、分割されていない錠剤のように丸みを帯びておらず、一部平面形状となった特殊な形状を有していることに起因する。
【0042】
薬剤払出カセット1では、第2回転体13の内周部及び外周部にリブを設けないことで、分割錠剤の破損を抑制し、かつ、第1回転体12又は払出口17へと搬送しやすくすることができる。また、第2回転体13の内周部及び外周部にリブを設けないことで、第2回転体13上の分割錠剤の粉又は欠片を、第2回転体13の内周縁又は外周縁からその下部(例えば貯留部)へ落下させやすくなる。
【0043】
<高さ規制体・幅規制体>
図6~
図8もあわせて、高さ規制体14及び幅規制体15について説明する。
図6の(a)及び(b)は、高さ規制体14及び幅規制体15の構成例を示す図である。
図7の(a)及び(b)は、払出口17付近における分割錠剤の重なり防止について説明するための図である。
図8の(a)及び(b)は、移送高さW1および移送幅W22の調整例を説明するための図である。
【0044】
高さ規制体14及び幅規制体15は、第1回転体12及び第2回転体13により順送りされた分割錠剤の通過をその分割錠剤の大きさに応じて規制するために分割錠剤の通過経路幅を規定し、かつ通過経路幅を変更すべく移動可能な規制体である。高さ規制体14及び幅規制体15は、第2回転体13上に、分割錠剤が一列に並んで払出口17へ搬送可能な、分割錠剤の通過経路Roを規定する。
【0045】
高さ規制体(高さガイド)14は、通過経路幅として、
図6の(a)に示す移送高さW1を規制するものである。幅規制体15は、通過経路幅として、
図3の(b)に示す移送幅W21及びW22を規制するものである。移送高さW1は、高さ規制体14の第1高さ規制部14Aの下面と第2回転体13の上面との間隔である。換言すれば、移送高さW1は、高さ規制体14の、通過経路Roの表面からの距離である。移送幅W21は、第2回転体13の内周部から、幅規制体15の第1壁面15S1までの間隔であり、移送幅W22は、ガイド部材16から、幅規制体15の第2壁面15S2までの間隔である。
【0046】
高さ規制体14は、
図6の(a)及び(b)に示すように、第1高さ規制部14A及び第2高さ規制部14Bを備える。第1高さ規制部14Aは、順送り時に、第2回転体13に載置された分割錠剤が高さ方向(+Z軸方向)に重なった状態で払出口17へ搬送されることを防止する部材である。第1高さ規制部14Aは、移動領域Ar1に対して、順送り時の薬剤移送方向下流側に、かつ第2回転体13の上方に位置するように配設されている。第1高さ規制部14Aは、
図6の(a)に示すように、第2回転体13の外周部から内周部にかけて、かつ、薬剤移送方向に沿って延伸している。
【0047】
高さ規制体14は、第2回転体13の上面において移送高さW1を規定するために、±Z軸方向に移動する。薬剤払出カセット1は、第1高さ規制部14Aの移動を制御する高さ規制体移動機構を内蔵している。高さ規制体移動機構は、例えば、ネジ部材14Cを備える。ネジ部材14Cは、
図6の(a)に示すように、高さ規制体14に形成されたネジ受け部と係合して設けられている。本実施形態では、ネジ部材14Cがモーターベース10の駆動部材105に接続されることで、モーターベース10からの動力を受けてネジ部材14Cが回転し、高さ規制体14が±Z軸方向に移動する。これにより、移送高さW1が、投入された分割錠剤の大きさに合わせて調整される。高さ規制体移動機構の駆動は、例えば規制体制御部52(
図13参照)により制御される。
【0048】
第2高さ規制部14Bは、第1高さ規制部14Aと同様、順送り時に、第2回転体13に載置された分割錠剤が高さ方向に重なった状態で払出口17へ搬送されることを防止する部材である。第2高さ規制部14Bは、払出口17に対して、順送り時の薬剤移送方向上流側に、かつ第2回転体13の上方に位置するように配設されている。つまり、第2高さ規制部14Bは、高さ規制体14の先端部に設けられている。また、
図7の(b)に示すように、第2高さ規制部14Bには、順送り時の薬剤移送方向に向かって若干高さが低くなるように段差14B1が形成されている。
【0049】
図7の(a)に示すように、順送り時に、ガイド部材16により分割錠剤MD1の搬送が妨げられた状態を考える。なお、
図7において、分割錠剤MD1、MD2及びMD3の形状は略同一形状であるが、分割錠剤MD1、MD2及びMD3の向きは互いに異なっている。そのため、
図7では、分割錠剤MD1、MD2及びMD3の形状が互いに異なっているように図示されている。
【0050】
分割錠剤MD1の搬送が妨げられた状態において順送りが続行されると、分割錠剤MD2は、分割錠剤MD3に押され、ガイド部材16で止まっている分割錠剤MD1に乗り上げてしまう可能性がある。
【0051】
分割錠剤MD1に分割錠剤MD2が乗り上げた状態で払出口17へ搬送された場合、払出口17から一度に2個の分割錠剤が払出される。一度に2個の分割錠剤が払出された場合、カウントセンサー101は、この2個の分割錠剤を1個の分割錠剤として誤カウントしてしまう可能性がある。第2高さ規制部14Bを設けることで、
図7の(b)に示すように、分割錠剤MD1上の分割錠剤MD2を段差14B1に接触させて落下させることができる。そのため、分割錠剤が積み重なった状態での払出しを防止できるので、上記のような誤カウントの発生を防止できる。
【0052】
幅規制体(幅ガイド)15は、
図3の(b)及び
図6の(a)に示すように、高さ規制体14とともに、移動領域Ar1に対して、順送り時の薬剤移送方向下流側に、かつ第2回転体13の上方に位置するように配設されている。幅規制体15は、
図3の(b)に示すように、第2回転体13の内周部の直径より大きい直径を有する第1壁面15S1(湾曲面)と、第1壁面15S1の、順送り時の薬剤移送方向下流側に位置する第2壁面15S2とを有する。幅規制体15が略±Y軸方向に移動することにより、移送幅W21及びW22を調整できる。第1壁面15S1の周方向の一部において最小の移送幅W21を形成可能なように、幅規制体15と第2回転体13との位置関係が規定される。
【0053】
幅規制体15は、第2回転体13の上面において移送幅W21及びW22を規定するために、略±Y軸方向に移動する。薬剤払出カセット1は、
図3の(a)に示すように、幅規制体15の移動を制御する幅規制体移動機構を内蔵している。幅規制体移動機構は、
図3の(a)に示すように、例えばネジ部材15A1及びピストン部15A2を備える。
【0054】
ピストン部15A2は、ピストン部15A2に沿って幅規制体15を移動させるものである。本実施形態では、ネジ部材15A1がモーターベース10の駆動部材106に接続されることで、モーターベース10からの動力を受けてネジ部材15A1が回転する。ピストン部15A2には、ネジ部材15A1の回転により生じた動力が伝達され、当該動力によってピストン部15A2に接続された幅規制体15が移動する。これにより、移送幅W21及びW22が、投入された分割錠剤の大きさに合わせて調整される。幅規制体移動機構の駆動は、例えば規制体制御部52により制御される。
【0055】
また、幅規制体15は、
図6の(b)に示すように、第2高さ規制部14Bが±Z軸方向に移動可能なように、第2高さ規制部14Bの一部を収容する開口部15Bを備える。開口部15Bが設けられることで、移送幅W22の変動に依らず、通過経路Ro上に第2高さ規制部14Bを配置できる。そのため、2つの分割錠剤が重なって搬送された場合であっても、第2高さ規制部14Bにより、上側の分割錠剤を確実に落下させることができる。
【0056】
(移送高さ及び移送幅の調整)
分割錠剤を払出す前処理として、移送高さW1、移送幅W21及びW22を調整するための処理が行われる。移送高さW1及び移送幅W22は、投入される分割錠剤の種類に基づき算出される。具体的には、投入される分割錠剤に関する薬剤データに含まれる、当該分割錠剤として分割される前の錠剤(略円形形状)の直径及び厚みに基づき、移送高さW1及び移送幅W22が算出される。この算出は、薬剤払出カセット1の上位システムで実行されても構わないし、薬剤払出カセット1の制御部50で実行されても構わない。
【0057】
移送高さW1及び移送幅W22の算出例について説明する。移送幅W22は、分割錠剤の厚み(B)に依らず、複数の分割錠剤が1列の状態で、払出口17まで搬送される程度の値に設定されればよい。
【0058】
この観点から、移送幅W22は、例えば分割錠剤の半径(A)の1倍より大きく2倍未満に設定される。なお、分割錠剤の半径としては、投入される分割錠剤に関する薬剤データに含まれる、分割錠剤として分割される前の錠剤の直径を2で除算した値が用いられる。
【0059】
分割錠剤の半径の1倍より大きく設定することで、寝た状態の分割錠剤を払出口17へと搬送できる。寝た状態とは、分割された表面が第2回転体13の表面と対向していない状態(分割錠剤が起立していない状態)を指す。また、分割錠剤の半径の2倍未満に設定することで、寝た状態の分割錠剤が2列に並んで搬送されることを防止できる。
【0060】
分割錠剤は、錠剤が略半分となるように均等に分割されるが、場合によっては、均等に分割されない可能性もある(例:1錠を4:6で分割)。この場合、大きく分割された方の分割錠剤も寝た状態で搬送できるようにするために、移送幅W22を分割錠剤の半径の1倍より大きく設定する必要がある。そのため、移送幅W22は、分割錠剤の半径の1倍より大きく設定される。
【0061】
また、
図8の(b)に示すように、分割錠剤の厚みが比較的厚い場合(所定の厚み以上である場合)、分割錠剤が起立した状態で移送幅W22の方向に複数並んで、第2回転体13上を搬送される可能性がある。この点を考慮すれば、分割錠剤の厚みが所定の厚み以上である場合、移送幅W22は、更に分割錠剤の厚みの2倍未満に設定されても構わない。移送幅W22を分割錠剤の厚みの2倍未満に設定することで、起立した状態の分割錠剤が移送幅W22の方向に複数に並んで搬送されることを防止できる。なお、上記所定の厚みは実験等を経て設定されていればよい。
図8の例では、分割錠剤の厚みの2倍が分割錠剤の半径の1.3倍以上である場合に、分割錠剤の厚みが所定の厚み以上であるとしている。
【0062】
また、移送幅W21は、比較的厚い分割錠剤を起立した状態で搬送できる程度の大きさに設定されても構わない。比較的厚い分割錠剤が起立した場合であっても、上述の移送幅W22の設定により、移送幅W22の通過経路Ro上において、移送幅W22の方向に複数の分割錠剤が並んでしまうことが無いためである。
【0063】
一方、
図8の(a)に示すように、分割錠剤の厚みが比較的薄い場合(所定の厚み未満である場合)には、分割錠剤が起立した状態で移送幅W22の方向に複数並んで、第2回転体13上を搬送される可能性は低い。そのため、分割錠剤の起立(つまり分割錠剤の厚み)を考慮して移送幅W22を設定しなくてもよい。
【0064】
図8の(a)及び(b)の例では、移送幅W22は、例えば、分割錠剤の半径の1.3倍(1.3A)となるように設定されている。
【0065】
また、移送高さW1は、分割錠剤の厚みが所定値未満である場合、分割錠剤の厚みの1倍より大きく、かつ当該厚みの2倍未満の値に設定される。つまりこの場合、移送高さW1は、分割錠剤の厚み方向の寸法に応じて設定される。また、移送高さW1は、分割錠剤の厚みが所定値以上である場合、分割錠剤の半径の1倍より大きく、かつ、分割錠剤の厚みの2倍未満の値に設定される。つまりこの場合、移送高さW1は、分割錠剤の厚み方向以外の方向(断面円形状の錠剤であれば半径)の寸法も考慮して設定される。
【0066】
上述のように、分割錠剤が比較的薄い場合には分割錠剤が起立した状態で搬送される可能性は低い。そのため、移送高さW1は、分割錠剤が起立した状態で第2回転体13上を搬送されることを考慮せずに、2つの分割錠剤が重なった状態で第2回転体13上を搬送されることを防止できる程度(1つの分割錠剤が確実に搬送される程度)の値に設定されればよい。
【0067】
例えば、
図8の(a)に示すように、分割錠剤の厚みの2倍が移送幅W22未満(
図8の例では、分割錠剤の半径の1.3倍未満)である場合、移送高さW1は、分割錠剤の厚みに1.1倍を乗じた値(1.1B)に設定される。
【0068】
但し、比較的薄い分割錠剤が仮に起立してしまった場合、分割錠剤は、移送幅W22の方向に複数に並んで搬送され、払出口17から払出されてしまうことになる。そのため、比較的薄い分割錠剤については寝た状態で払出口17へと搬送されることが好ましい。比較的薄い分割錠剤が起立した状態で払出されることも考慮して移送幅W22を設定すると、移送幅W22が小さくなりすぎて、寝た状態の分割錠剤を払出口17まで搬送できなくなってしまう。そのため、移送幅W22については、比較的薄い分割錠剤が起立する可能性は低いものとして(つまり、起立することを許容して)、上述のように設定される。比較的薄い分割錠剤が起立した状態で払出されることを確実に防止するために、分割錠剤の厚みが所定値未満である場合には、移送高さW1は、更に分割錠剤の半径未満に設定されても構わない。
【0069】
一方、分割錠剤が比較的厚い場合には分割錠剤が起立した状態で搬送される可能性がある。そのため、分割錠剤が起立した状態でも第2回転体13上を搬送されるように、移送高さW1は、分割錠剤の半径よりも大きい値に設定される。一方、2つの分割錠剤が上下方向に重なった状態で第2回転体13上を搬送されることを防止する必要があるため、移送高さW1は、分割錠剤の厚みの2倍未満の値に設定される。
【0070】
例えば、
図8の(b)に示すように、分割錠剤の厚みの2倍が移送幅W22以上(
図8の例では、分割錠剤の半径の1.3倍以上)である場合、移送高さW1は、分割錠剤の半径に1.1倍を乗じた値(1.1A)に設定される。
【0071】
一般的な薬剤払出カセットでは、薬剤が寝た状態で払出されることを想定して、移送高さW1を、薬剤の厚みの1倍より大きく、かつ2倍未満に設定し、移送幅W22を、薬剤の直径の1倍より大きく、かつ2倍未満に設定している。分割錠剤ではない場合、薬剤が寝た状態となりやすいためである。
【0072】
一方、薬剤払出カセット1は、分割錠剤を取り扱う。そのため、移送高さW1及び移送幅W22を、分割錠剤が起立した状態で払出される可能性も考慮して設定する必要がある。上述したように移送高さW1及び移送幅W22を設定することで、分割錠剤がどのような状態で第2回転体13上を搬送されても、少なくともガイド部材16から払出口17までの通過経路Ro上においては分割錠剤を1列に整列させることができる。
【0073】
そのため、薬剤払出カセット1は、寝た状態の分割錠剤だけでなく、起立した状態の分割錠剤でも1つずつ払出すことが可能となる。起立した状態の分割錠剤でも払出すことができるため、分割錠剤の払出し効率を向上させることができる。また、2つの分割錠剤が重なった状態で払出されることを防止できる。
【0074】
なお上記では、分割錠剤の厚み及び半径を用いた移送高さW1及び移送幅W22の算出例について説明したが、これに限らない。算出に用いられる分割錠剤の厚みとしては、分割錠剤の縦(直径)、横(半径)及び高さ(厚み)の寸法のうち最小寸法(短辺とも称する)を有する第1部分を用いればよい。また、算出に用いられる分割錠剤の半径としては、分割錠剤の縦、横及び高さの寸法のうち、2番目に小さい寸法を有する第2部分(中辺とも称する)を用いればよい。
【0075】
つまり、移送幅W22は、分割錠剤の第2部分の1倍より大きく、第2部分の2倍未満に設定されていればよい。分割錠剤の第1部分が所定の長さ以上(例:分割錠剤の厚みが所定の厚み以上)である場合には、移送幅W22は、更に分割錠剤の第1部分の2倍未満に設定されても構わない。
【0076】
また、移送高さW1は、分割錠剤の第1部分が所定値未満(例:第1部分×2<移送幅W22、つまり第1部分<移送幅W22/2)である場合、第1部分の1倍より大きく、かつ第1部分の2倍未満の値に設定されていればよい。また、移送高さW1は、分割錠剤の第1部分が所定値以上(例:第1部分×2≧移送幅W22、つまり第1部分≧移送幅W22/2)である場合、分割錠剤の第2部分の1倍より大きく、かつ、第1部分の2倍未満の値に設定されていればよい。
【0077】
また、上記の例では、分割錠剤の厚みの2倍が移送幅W22(分割錠剤の半径の1.3倍)と同一である場合、
図8の(b)の設定方法により移送高さW1が設定されるが、
図8の(a)に示す設定方法により移送高さW1が設定されても構わない。
【0078】
<ガイド部材>
図9~
図12もあわせて、ガイド部材16について説明する。
図9の(a)は、ガイド部材16の構成例を示す斜視図であり、(b)は、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bの構成例を示す平面図である。
図10(a)及び(b)は、第1変位部材16Aの断面形状がD形状である場合の分割錠剤の搬送例を説明するための図である。
図11の(a)~(c)は、第2回転体13の動作例を説明するための図である。
図12は、比較例としてのガイド部材160の構成例を示す斜視図である。
【0079】
図9の(a)に示すように、薬剤払出カセット1は、払出口17の近傍に、払出口17に接続された、第2回転体13により形成される分割錠剤の通過経路Roの一部を規定し、かつ、払出口17へと分割錠剤をガイドするガイド部材16を備える。ガイド部材16は、
図3の(b)に示すように、幅規制体15の第2壁面15S2と対向する位置に立設され、第2壁面15S2と共に、通過経路Roの一部を規定する。ガイド部材16が規定する通過経路Roは、第1壁面15S1を通過した分割錠剤が払出口17へとガイドされる、第2回転体13上の端部領域(薬剤ガイド領域)ともいえる。
【0080】
ガイド部材16は、第1変位部材16A、第2変位部材16B、固定部材16C、及び支持部材16Dを備える。
【0081】
(固定部材)
固定部材16Cは、第2回転体13上に設置された非変位部材であり、通過経路Roの側壁を規定する側壁部材(第1側壁部材)である。なお、幅規制体15もまた、当該側壁を規定する側壁部材(第2側壁部材)といえる。
【0082】
(支持部材)
支持部材16Dは、固定部材16Cから上流側に延伸しており、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを、支持部材16Dの下方に吊下げるように支持する。
【0083】
(変位部材)
第1変位部材16A及び第2変位部材16Bは、支持部材16Dから吊下げられていることにより、第2回転体13により搬送される分割錠剤が接触することにより変位すると共に、分割錠剤に対してその変位を打ち消す向きに働く力を及ぼす。これにより、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bは、分割錠剤の向き又は位置を調整して所定幅(移送幅W22)に規定された下流側(薬剤ガイド領域)への分割錠剤の搬送を補助する。
【0084】
第1変位部材16A及び第2変位部材16Bの変位(揺動)により、分割錠剤に与えられる衝撃を吸収できる。そのため、分割錠剤の破損を防止できる。また、上記力が分割錠剤に与えられることで、分割錠剤の向き(姿勢)を矯正できる。また、固定部材16Cによって分割錠剤の搬送が妨げられないように、分割錠剤の位置も矯正できる。そのため、固定部材16Cにおける分割錠剤の詰まり発生を抑制できる。
【0085】
具体的には、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bは、固定部材16Cの上流側に配置されている。これにより、順送りされてきた分割錠剤を固定部材16Cに接触させる前に、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bに接触させることができる。そのため、固定部材16Cへの接触による分割錠剤の破損を防止できる。
【0086】
また、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bは、分割錠剤が固定部材16Cの一端(上流側の一端)に接触することを抑制するように、分割錠剤の向き又は位置を変化させる。このように向き又は位置を変化させることで、固定部材16Cの一端への接触による分割錠剤の破損を防止しつつ、当該一端における分割錠剤の詰まり発生を抑制できる。
【0087】
また、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bという2つの変位部材を設けていることで、段階的に分割錠剤の向き又は位置を変化させることができる。そのため、上記分割錠剤の詰まり発生を効率良く抑制できる。
【0088】
上述のように分割錠剤は破損しやすい。そのため、分割錠剤を取り扱う薬剤払出カセット1において、ガイド部材16に第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを設け、分割錠剤の破損を防止しつつ、分割錠剤を払出口17へ搬送できるようにすることは有益である。
【0089】
また、分割錠剤は、丸みを帯びた錠剤と異なり、特殊な形状(分割された表面を含む形状)を有する。そのため、分割された表面の角部が幅規制体15及び固定部材16Cに接触することで、分割錠剤の搬送が妨げられ、分割錠剤が詰まりやすい。そのため、この観点からも、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを設けることは有益である。
【0090】
また、
図9の(a)に示すように、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bは、払出口17側から見て、固定部材16C、第1変位部材16A、及び第2変位部材16Bの順に配置されるように、固定部材16Cに接続されている。つまり、薬剤払出カセット1は、変位部材として、第1変位部材16Aと、第1変位部材16Aよりも上流側に(払出口17から遠い位置に)配置された第2変位部材16Bと、を備える。
【0091】
図9の(b)に示すように、第1変位部材16Aの、順送り時に分割錠剤が接触する接触面16AS1(上流側の接触面)は、分割錠剤の移動を妨げない形状である。この場合、順送り時に第1変位部材16Aに分割錠剤が接触したときの、分割錠剤の破損を防止できる。また、第1変位部材16Aの、逆送り時に分割錠剤が接触する接触面16AS2(下流側の接触面)もまた、分割錠剤の移動を妨げない形状である。この場合、逆送り時に第1変位部材16Aに分割錠剤が接触したときの、分割錠剤の破損を防止できる。
【0092】
本実施形態では、接触面16AS1及び16AS2が共に曲面形状であり、第1変位部材16Aの断面形状は円形状である。しかしながら、第1変位部材16Aは、少なくとも接触面16AS1及び16AS2が分割錠剤の移動を妨げない形状であればどのような形状(例:多角形状)であっても構わない。但し、第1変位部材16Aの断面形状が円形状である場合、分割錠剤の破損を防止する第1変位部材16Aを容易に製造できる。
【0093】
ここで、接触面16AS1及び16AS2のいずれかが上記の形状ではない場合(つまり分割錠剤の移動の妨げとなる表面形状(例:平面形状)である場合)を考える。この場合、分割された表面の角部が接触面16AS1又は16AS2に引っ掛かりやすくなるため、分割錠剤の搬送が妨げられやすくなる。
【0094】
図10の(a)に示すように接触面16AS2が平面形状である場合に、
図10の(b)に示すように、逆送り時に、固定部材16Cと接触面16AS2との間に分割錠剤MDが嵌まり込みやすくなる。この場合、第2回転体13の順送り動作及び逆送り動作だけで、当該分割錠剤の嵌まり込みを解消することは困難となる。
【0095】
この観点から言えば、第1変位部材16Aの形状は、少なくとも接触面16AS1及び16AS2が分割錠剤の移動を妨げない形状であることが好ましい。例えば、接触面16AS1及び16AS2が、円弧形状、又は、多角形状であっても内角が比較的大きい形状(例:内角が少なくとも90°より大きい形状)であることが好ましい。
【0096】
また、第1変位部材16Aと固定部材16Cとの間隔W3が、分割錠剤が嵌まり込まない程度の大きさとなるように、第1変位部材16Aと固定部材16Cとの位置関係が規定される。分割錠剤が嵌まり込むような位置関係の場合、例えば順送り時に、分割された表面の角部が固定部材16Cに接触しやすくなり、分割錠剤の移動が妨げられやすくなる。また、第1変位部材16Aを回転軸として分割錠剤が回動し、第1回転体12側へと落下してしまう可能性がある。これらの問題を生じさせないために、上記のように位置関係が規定される。
【0097】
また、第2変位部材16Bの、分割錠剤を順送りしたときに当該分割錠剤が接触する接触面16BS1(上流側の接触面)は、分割錠剤の移動を妨げない形状である。この場合、順送り時に第2変位部材16Bに分割錠剤が接触したときの、分割錠剤の破損を防止できる。
【0098】
一方、第2変位部材16Bは、第1変位部材16Aに接触した分割錠剤を逆送りしたときに、当該分割錠剤が接触することで当該分割錠剤の移動を抑制する抑制面16BS2(下流側の接触面)を備える。
【0099】
図11の(a)に示すように、分割錠剤がガイド部材16に引っ掛かるような状態で搬送されてきた場合であっても、第1変位部材16Aに分割錠剤MDが接触することで、その向き又は位置が矯正される。これにより、ガイド部材16での引っ掛かりの発生を抑制できるので、薬剤払出カセット1は効率良く分割錠剤MDを払出すことができる。なお、第2変位部材16Bも同様の効果を奏する。つまり、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを設けることで、2段階で分割錠剤MDの向き又は位置を矯正できる。
【0100】
しかしながら、分割錠剤MD11の向き又は位置によっては、
図11の(b)に示すように、順送り時に、第1変位部材16Aにより分割錠剤MD11の向き又は位置を矯正しきれず、分割錠剤MD11が固定部材16Cに引っ掛かってしまう場合もある。この場合、分割錠剤MD12の移動は、分割錠剤MD11に妨げられてしまう。
【0101】
この状態において、第2回転体13は逆送り動作を行った場合、
図11の(c)に示すように、分割錠剤MD11を第2変位部材16Bの抑制面16BS2に引っ掛けつつ、分割錠剤MD12については第1高さ規制部14Aの方向に移動させることができる。つまり、分割錠剤MD11及びMD12の間隔を広げることができる。
【0102】
この状態において、再度第2回転体13が順送り動作を行った場合、
図11の(a)に示すように、分割錠剤MD12が接触していない状態で、分割錠剤MD11を第1変位部材16Aに接触させることができるため、分割錠剤MD11の向き又は位置を矯正できる。
【0103】
また、分割錠剤MD11の向き又は位置は、逆送り時に第2変位部材16Bに引っ掛かったときに、固定部材16Cに引っ掛かってしまったときとは異なる向き又は位置に変更される可能性が高い。そのため、第1変位部材16Aに分割錠剤MD11を再度接触させることで、分割錠剤MD11の向き又は位置を、通過経路Roを通過できる程度に矯正できる可能性が高まる。
【0104】
また、本実施形態では、
図9の(b)に示すように、第2変位部材16Bの断面形状は、抑制面16BS2が平面形状であり、かつ接触面16BS1が曲面形状であるD形状である。第2変位部材16Bの形状はこれに限らず、少なくとも接触面16BS1及び抑制面16BS2が上述したような形状であればどのような形状であっても構わない。第2変位部材16Bの断面形状が略D形状である場合、順送り時に分割錠剤の破損を防止し、かつ逆送り時に分割錠剤の移動を一時的に抑制する第2変位部材16Bを容易に製造できる。
【0105】
但し、抑制面16BS2が曲面形状であっても(つまり第2変位部材16Bの断面形状が円形状であっても)構わない。この場合、抑制面16BS2が平面形状である場合よりも、逆送り時の分割錠剤の移動の抑制力は低下するが、当該移動を抑制することは可能である。
【0106】
ここで、ガイド部材16が第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを備えていない場合を考える。例えば、
図12に示すように、ガイド部材16に代えてガイド部材160が設けられている場合を考える。ガイド部材160は、ガイド部材160での分割錠剤の引っ掛かりを防止すべく、順送り時に分割錠剤が接触する接触部分160Aが傾斜を有している。
【0107】
ガイド部材160は固定されているため、分割錠剤の向きを変更しにくい。上述の通り、分割錠剤は特殊な形状を有しているため、接触部分160Aに引っ掛かりやすく、また乗り上がりやすい。分割錠剤が接触部分160Aに乗り上がった場合には、後続の分割錠剤上に落ちてしまい、2つの分割錠剤が重なった状態で払出口17から払出されてしまう可能性がある。さらに、接触部分160Aへの接触により、分割錠剤が破損しやすい。
【0108】
ガイド部材16が第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを備えることで、分割錠剤の向き又は位置を矯正しやすくなるため、分割錠剤の引っ掛かりを抑制できる。また、上記のような固定部材16Cへの乗り上げも生じないため、当該乗り上げにより2つの分割錠剤が重なることを防止できる。さらに、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bにより、分割錠剤の破損を防止できる。
【0109】
従って、ガイド部材16を設けることで、分割錠剤への負荷を抑制しつつ、分割錠剤の詰まりを抑制できる。そのため、分割錠剤を効率良く払出すことができる。また、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを設け、かつ、第2回転体13の順送り動作及び逆送り動作の切替えといった単純な構成で、これらの効果を奏することができる。
【0110】
(変形例)
本実施形態では、ガイド部材16は、変位部材として、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bを含むものとして説明するが、変位部材の数は2つに限定されない。例えば、変位部材が1つであっても構わない。この場合であっても、分割錠剤の破損を抑制しつつ、分割錠剤の詰まりを抑制できる。但し、変位部材を1つだけ設ける場合、分割錠剤の向き又は位置の矯正、及び分割錠剤の搬送を効率良く行う観点から言えば、第1変位部材16Aを設けることが好ましい。
【0111】
〔モーターベース(制御部・記憶部)の構成〕
図13~
図15に基づき、モーターベース10の制御部50及び記憶部60について説明する。
図13は、薬剤払出カセット1およびモーターベース10の構成例を示すブロック図である。
図14の(a)及び(b)、並びに
図15(a)及び(b)は、第2回転体13の動作例を説明するための図である。
【0112】
モーターベース10は、
図13に示すように、上述した構成の他、制御部50及び記憶部60を備えている。制御部50は、モーターベース10及び薬剤払出カセット1の各部を統括的に制御する。制御部50の機能は、記憶部60に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。記憶部60は、制御部50が実行する各種のプログラム、及び当該プログラムによって使用されるデータを格納する。
【0113】
制御部50は、主として、回転体制御部51、規制体制御部52、及び計時部53を備えている。
【0114】
回転体制御部51は、駆動部材103の駆動を制御することで、第1回転機構を駆動させる。これにより、第1回転体12の回転を制御する。また、回転体制御部51は、駆動部材104の駆動を制御することで、第2回転機構を駆動させる。これにより、第2回転体13の回転を制御する。回転体制御部51は、例えば、第1回転体12及び第2回転体13の回転方向及び回転速度を制御する。
【0115】
回転体制御部51は、第1回転体12及び第2回転体13を独立して制御する。回転体制御部51は、第1回転体12については、例えば、分割錠剤の払出処理中、常時順送り方向に、かつ一定速度で回転させる。一方、第2回転体13については、順送り動作と逆送り動作とを切替える。また、第2回転体13の、順送り時の回転速度、及び逆送り時の回転速度は、個別に設定される。例えば、順送り時の回転速度、及び逆送り時の回転速度は、それぞれ複数段階(例:7段階)に設定可能である。また、順送り時の回転速度は、分割錠剤の大きさ(分割錠剤の直径)に応じて設定される。例えば、順送り時の回転速度は、分割錠剤の大きさが大きくなるほど大きくなるように設定される。
【0116】
回転体制御部51は、カウントセンサー101が分割錠剤を所定時間(第1所定時間)検知しなかった場合、順送り動作を一時的に逆送り動作に切替える。この場合、第2回転体13は、第1距離分逆送りされる。つまり、第2回転体13は、通過経路Ro上の分割錠剤を第1距離分逆送りさせる。このときの切替え動作を、第1切替え動作(逆転動作1)と称する。
【0117】
具体的には、
図11の(b)に示すように、固定部材16Cにおいて分割錠剤MD11の移動が妨げられた場合、払出口17からの分割錠剤MD11の払出しが停止する。この停止状態が第1所定時間継続した場合、回転体制御部51は、固定部材16Cにおいて分割錠剤MD11の移動が妨げられていると判定し、順送り動作を一時的に逆送り動作に切替え、第2回転体13を第1距離分逆送りする。
【0118】
第1距離は、第1変位部材16Aから第2変位部材16Bまでの距離に対応する距離である。本実施形態では、回転体制御部51は、例えば、第2回転体13を、第2回転軸の周りを約15°回転させることで、第1距離分の逆送り動作を実現する。また、第1所定時間としては、順送り時の第2回転体13の回転速度が最も低速である場合に、第1変位部材16A付近に存在する分割錠剤が払出口17から払出されるのに十分な時間が設定される。
【0119】
図11の(b)に示すように、固定部材16Cにおいて分割錠剤MD11の移動が妨げられた後、第1所定時間が経過すると、第1切替え動作が実行され、分割錠剤MD11及びD12は逆送りされる。第1距離が上記のように規定されているため、第1切替え動作が実行されると、
図14の(a)に示すように、分割錠剤MD11は、第2変位部材16Bによってその移動が妨げられる。一方、分割錠剤MD12は、第2変位部材16Bを超えて、第1高さ規制部14Aの方まで移動する。つまり、分割錠剤MD11及びMD12の間隔を広げることができる。
【0120】
なお、逆送り時の回転速度は、比較的大きく設定されている。そのため、分割錠剤MD12がたとえ第2変位部材16Bに接触したとしても、分割錠剤MD12は、第1高さ規制部14Aの方まで移動できる。分割錠剤MD11については、上記のように第1距離が規定されているため、第2変位部材16Bの近傍まで移動したときには逆送り方向への回転速度は小さくなっている。そのため、分割錠剤MD11は、第2変位部材16Bによって逆送り方向への移動が妨げられる。
【0121】
その後、再び第2回転体13を順送りさせると、分割錠剤MD11に分割錠剤MD12が接触していない状態で、分割錠剤MD11を第1変位部材16Aに接触させることができる。そのため、
図11の(a)に示すように、分割錠剤MD11の向き又は位置が矯正され、分割錠剤MD11を払出口17から払出すことが可能となる。
【0122】
また、回転体制御部51は、カウントセンサー101が分割錠剤をさらに所定時間(第2所定時間)検知しなかった場合、順送り動作を一時的に逆送り動作に切替える。この場合、第2回転体13は、第1距離よりも長い第2距離分逆送りされる。つまり、第2回転体13は、通過経路Ro上の分割錠剤を第2距離分逆送りさせる。このときの切替え動作を、第2切替え動作(逆転動作2)と称する。
【0123】
具体的には、第1切替え動作後に、分割錠剤MD11を第1変位部材16Aに再度接触させたとしても、分割錠剤MD11が再度固定部材16Cに引っ掛かってしまう場合もある。このような状態が発生した場合、第1所定時間に加え第2所定時間分、分割錠剤MD11の払出しが停止した状態となる。この停止状態が第1所定時間及び第2所定時間継続した場合、回転体制御部51は、固定部材16Cにおいて分割錠剤MD11の移動が妨げられ続けていると判定し、順送り動作を一時的に逆送り動作に切替え、第2回転体13を第2距離分逆送りする。
【0124】
第2距離は、第1変位部材16Aから第2変位部材16Bまでの距離よりも長い距離である。また、上述の通り、逆送り時の回転速度は比較的大きく設定されている。そのため、
図14の(b)に示すように、分割錠剤MD12だけでなく分割錠剤MD11も、第2変位部材16Bに接触したとしても、第2変位部材16Bを超えて、第1高さ規制部14Aの方まで移動できる。本実施形態では、回転体制御部51は、例えば、第2回転体13を、第2回転軸の周りを約30°~50°回転させることで、第2距離分の逆送り動作を実現する。この回転角度は、逆送り時の第2回転体13の回転速度に基づき設定される。つまり、この回転角度は、第2回転体13を、第1距離も長い第2距離分逆送りさせる程度に設定される。
【0125】
固定部材16Cにおいて分割錠剤MD11の移動が妨げられた後、さらに第2所定時間が経過すると、第2切替え動作が実行され、分割錠剤MD11及びD12は逆送りされる。第2距離が上記のように規定されているため、第2切替え動作が実行されると、
図14の(b)に示すように、分割錠剤MD11及びMD12は、第2変位部材16Bを超えて、第1高さ規制部14Aの方まで移動する。つまり、順送り動作に再度切替えたときに、分割錠剤MD11及びMD12をともに第2変位部材16B及び第1変位部材16Aに接触させることで、その向き又は位置を矯正できる。そのため、第2切替え動作を行った場合、第1切替え動作時よりも、固定部材16Cによってその移動が妨げられないように、分割錠剤MD11の向き又は位置を矯正できる可能性が高まる。
【0126】
なお、本実施形態では、第1切替え動作後にカウントセンサー101が分割錠剤を検知できなかった場合に、第2切替え動作が行われるものとして説明するが、これに限られない。第1切替え動作を数回実行した後に、第2切替え動作が実行されても構わない。
【0127】
また、回転体制御部51は、カウントセンサー101が分割錠剤を第1所定時間内に検知した場合も、順送り動作を一時的に逆送り動作に切替える。この場合、第2回転体13は、第3距離分逆送りされる。つまり、第2回転体13は、通過経路Ro上の分割錠剤を第3距離分逆送りさせる。このときの切替え動作を、第3切替え動作(逆転動作3)と称する。
【0128】
図15の(a)に示すように、分割錠剤MD11及びMD12が連続して払出口17から払出される場合を考える。この場合、分割錠剤MD11が払出口17から払出された後も、そのまま順送り動作が続行された場合、分割錠剤MD11に続けて分割錠剤MD12も払出口17から払出される可能性がある。この場合、カウントセンサー101は、分割錠剤MD11及びMD12を1つの分割錠剤として誤カウントしてしまう可能性がある。
【0129】
回転体制御部51は、カウントセンサー101から分割錠剤MD11をカウントした旨の検出結果を取得すると、第3切替え動作を実行する。これにより、第2回転体13は一時的に逆送りとなるため、
図15の(b)に示すように、分割錠剤MD11と分割錠剤MD12との落下間隔を広げることができる。それゆえ、上述した誤カウントを防止できる。
【0130】
なお、第3距離は、実験等を経て、上述の誤カウントが発生しない程度の距離に設定されていればよい。本実施形態では、回転体制御部51は、例えば、第2回転体13を、第2回転軸の周りを約5°回転させることで、第3距離分の逆送り動作を実現する。
【0131】
規制体制御部52は、駆動部材105の駆動を制御することで、高さ規制体移動機構を駆動させる。これにより、高さ規制体14の±Z軸方向への移動を制御する。また、規制体制御部52は、駆動部材106の駆動を制御することで、幅規制体移動機構を駆動させる。これにより、幅規制体15の、ピストン部15A2が延伸する方向への移動を制御する。上述したように、規制体制御部52は、分割錠剤の払出処理の前処理として、移送高さW1、移送幅W21及びW22を調整するときに、高さ規制体14及び幅規制体15の移動を制御する。また、規制体制御部52は、高さ規制体14及び幅規制体15の移動を独立して制御する。
【0132】
計時部53は、第1所定時間又は第2所定時間を計測する。計時部53は、例えば、カウントセンサー101が分割錠剤を検知してからの時間を計測する。また、計時部53は、第1所定時間、又は第2所定時間を計測した場合に、これらの時間が経過したことを回転体制御部51に通知する。
【0133】
〔薬剤払出カセットにおける処理〕
次に、
図16に基づいて、薬剤払出カセット1における処理例について説明する。
図16は、薬剤払出カセット1における処理例を示すフローチャートである。本実施形態では、第2回転体13の回転速度は、段階1(最低速)~段階7(最高速)の7段階に設定可能となっている。
【0134】
分割錠剤が第1回転体12(内輪)に投入された後、分割錠剤の払出処理が開始されると、規制体制御部52は、高さ規制体14及び幅規制体15を制御することで、移送高さW1と移送幅W21及びW22とを調整する。その後、回転体制御部51は、第1回転体12を回転させることにより、第1回転体12から第2回転体13(外輪)へ分割錠剤を乗り移らせる、分割錠剤のかき上げ動作を開始する(S1)。
【0135】
その後、回転体制御部51は、第2回転体13を順送りさせる(S2)。回転速度は、投入された分割錠剤の大きさに基づき、例えば段階1~段階3のいずれかに設定される。またこのとき、計時部53は、第1所定時間(例:2秒)の計時を開始する。
【0136】
回転体制御部51は、計時部53が計時を開始してから第1所定時間以内に、カウントセンサー101が分割錠剤を検知し、その検知結果を取得した場合、第3切替え動作(逆転動作3)を実行する。つまり、回転体制御部51は、第2回転体13を第3距離分(例:5°分)逆送りさせる(S3)。また、計時部53は、第1所定時間の計時をリセットした後、再度第1所定時間の計時を開始する。なお、本実施形態では、逆送り時の回転速度は、一律に段階7に設定されている。
【0137】
つまり、回転体制御部51は、第1所定時間内にカウントセンサー101から検知結果を取得している間は、S2及びS3の処理を繰り返す。このS2及びS3の処理は、固定部材16Cでの詰まりが生じていないときの払出し動作である通常払出し動作とも称される。
【0138】
一方、回転体制御部51は、計時部53が計時を開始してから第1所定時間以内に、カウントセンサー101から検知結果を取得しなかった場合(計時部53から第1所定時間経過の通知を取得した場合)、第1切替え動作(逆転動作1)を実行する。つまり、回転体制御部51は、第2回転体13を第1距離分(例:15°分)逆送りさせる(S4)。回転体制御部51は、S4の処理後、第2回転体13を再度順送りにする(S5)。また、計時部53は、順送り開始時に、第1所定時間の計時をリセットすると共に、第2所定時間(例:4秒)の計時を開始する。
【0139】
その後、回転体制御部51は、第2所定時間以内に、カウントセンサー101から検知結果を取得した場合、固定部材16Cでの詰まりが解消されたものとして、S3の処理に移行する。つまり、通常払出し動作に復帰する。
【0140】
一方、回転体制御部51は、第2所定時間以内に、カウントセンサー101から検知結果を取得しなかった場合(計時部53から第2所定時間経過の通知を取得した場合)、第2切替え動作(逆転動作2)を実行する。つまり、回転体制御部51は、第2回転体13を第2距離分(例:30°~50°分)逆送りさせる(S6)。その後、S5の処理に戻る。またこのとき、計時部53は、第2所定時間の計時をリセットすると共に、第2所定時間の計時を開始する。
【0141】
つまり、回転体制御部51は、第2所定時間以内にカウントセンサー101から検知結果を取得していない間は、S5及びS6の処理を繰り返す。このS5及びS6の処理は、固定部材16Cで詰まった分割錠剤を第2変位部材16Bの手前まで戻した後、当該分割錠剤の再度の払出しを実行する復帰動作とも称される。
【0142】
規制体制御部52は、S6の処理を所定回数(例:5回)実行し、S5の処理後の第2所定時間以内にカウントセンサー101から検知結果を取得しなかった場合には、高さ規制体14及び幅規制体15を初期位置に戻す。初期位置とは、移送高さW1、移送幅W21及びW22が最大値を取る位置であって、高さ規制体14及び幅規制体15が全開となる位置を指す。その後、回転体制御部51は、所定時間逆送り動作を行い、第2回転体13上の分割錠剤を第1回転体12に戻す(S7)。ここでの所定時間は、第2回転体13上の分割錠剤が第1回転体12に戻されるのに十分な時間に設定されていればよい。またこのとき、計時部53は、第2所定時間の計時をリセットする。
【0143】
その後、S1と同様、規制体制御部52は、高さ規制体14及び幅規制体15を制御することで、移送高さW1と移送幅W21及びW22とを調整する。また、回転体制御部51は、第1回転体12を回転させることにより、分割錠剤のかき上げ動作を開始する(S8)。なお、S7及びS8の処理は、分割錠剤の払出処理をリセットするリセット動作とも称される。
【0144】
その後、S5及びS6と同様、復帰動作が実行される(S9及びS10)。回転体制御部51は、S9の順送り開始後、第2所定時間以内に、カウントセンサー101から検知結果を取得した場合、S3の処理に移行する。つまり、通常払出し動作に復帰する。一方、S9及びS10の処理が所定回数(例:2回)実行された後は、S7の処理を行った後、本処理を終了する。これ以上の復帰動作を行っても分割錠剤を効率良く払出せない可能性が高いためである。
【0145】
以上の処理により、薬剤払出カセット1は、分割錠剤を効率良く払出すことができる。
【0146】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。以降の実施形態についても同様である。
【0147】
図17は、薬剤払出カセット1の変形例である薬剤払出カセット1Aの構成例を示す図である。
図17に示すように、薬剤払出カセット1Aは、薬剤払出カセット1と同様、第1回転体12、第2回転体13、高さ規制体14及び幅規制体15を備える。但し、薬剤払出カセット1Aでは、払出口17から落下した分割錠剤MDを、払出口17Aまで搬送する搬送部材31を備える。また、薬剤払出カセット1Aでは、薬剤払出カセット1のように、ガイド部材16(少なくとも第1変位部材16A及び第2変位部材16B)が第2回転体13上に設けられていない。
【0148】
搬送部材31は、払出口17の下部において、分割錠剤の払出数量をカウントするための払出口17Aまで延伸する帯状の部材である。つまり、払出口17Aの近傍にカウントセンサー(不図示)が設けられる。本実施形態では、搬送部材31は、±X軸方向に延伸している。搬送部材31は、例えばベルトコンベアで実現されても構わない。
【0149】
第2回転体13上において、分割錠剤MDは、高さ規制体14及び幅規制体15により1列に整列される。その状態で、分割錠剤MDは、払出口17から1つずつ搬送部材31へと落下する。搬送部材31に落下した分割錠剤MDは、払出口17Aまで搬送部材31により搬送される。
【0150】
また、搬送部材31には、払出口17から落下した分割錠剤MDの、払出口17A以外の箇所での落下を防止するための側壁部31Aが設けられている。側壁部31Aは、搬送部材31の、第1変位部材16A及び第2変位部材16Bが設けられた側とは反対側に設けられている。第2回転体13と搬送部材31との相対位置は、払出口17から落下した分割錠剤MDが、側壁部31A側に沿って搬送部材31上を搬送されるように規定される。
【0151】
また本実施形態では、制御部50は、搬送部材31の順送り動作及び逆送り動作を制御する。制御部50は、実施形態1の回転体制御部51による第2回転体13の制御と同様に、搬送部材31の動作を制御する。つまり、搬送部材31は、分割錠剤MDを順送り又は逆送りする薬剤搬送機構として機能する。
【0152】
なお、第2回転体13については、分割錠剤の大きさに応じた回転速度で順送り動作が実行され、例えば、搬送部材31に対して逆送り動作が行われたタイミングで、一時的に順送り動作を停止するか、又は第3切替え動作を実行しても構わない。
【0153】
また、薬剤払出カセットは、薬剤払出カセット1及び1Aに限られない。払出口17又は17Aの近傍に変位部材(第1変位部材16A及び/又は第2変位部材16B)が設けられていれば、その他の部材はどのような部材で実現されていても構わない。例えば、薬剤払出カセットは、第1回転体12が所定の傾きを有しておらず、第1回転体12及び第2回転体13の高さが略同一であっても構わない。また、第1回転体12及び第2回転体13が一体となっていても構わない。さらに、薬剤払出カセットは、回転体を備えず、分割錠剤が投入される投入部分から払出口まで帯状の搬送部材で実現されても構わない。
【0154】
〔実施形態3〕
実施形態1で述べたように、投入される分割錠剤に関する薬剤データに含まれる、当該分割錠剤の直径に基づき、移送高さW1及び移送幅W22が算出され、当該算出結果に基づき、高さ規制体14及び幅規制体15の位置が調整される。そのため、薬剤払出カセット1は、複数種類の分割錠剤を払出すことが可能である。つまり、薬剤払出カセット1は、任意の分割錠剤の払出専用の薬剤払出カセットとしてではなく、複数種類の分割錠剤を払出すことが可能な薬剤払出カセットとして機能する。
【0155】
このような薬剤払出カセットの主要な構成は以下の通りである。つまり、本実施形態の薬剤払出カセットは、
投入された薬剤を払出口まで順送りすることで、前記払出口から前記薬剤を払出す薬剤払出カセットであって、
前記薬剤は、錠剤を分割した分割錠剤であり、
順送りする分割錠剤の通過をその大きさに応じて規制するために分割錠剤の通過経路幅を規定し、かつ前記通過経路幅を変更すべく移動可能な規制体を備え、
前記規制体は、前記通過経路幅が、投入される分割錠剤に関する薬剤データに含まれる、当該分割錠剤の大きさに基づき算出された値となるように移動する構成である。
【0156】
〔ソフトウェアによる実現例〕
モーターベース10の制御ブロック(特に制御部50)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0157】
後者の場合、モーターベース10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0158】
〔本開示の一態様に係る別表現〕
本発明の一態様に係る薬剤払出装置は、薬剤を払出口まで搬送することで、前記払出口から前記薬剤を払出す薬剤払出装置であって、前記薬剤を搬送する薬剤搬送機構と、前記薬剤搬送機構により搬送される前記薬剤が接触することにより変位すると共に、前記薬剤に対して前記変位を打ち消す向きに働く力を及ぼすことにより、前記薬剤の向き又は位置を調整して所定幅に規定された下流側への前記薬剤の搬送を補助する変位部材と、を備える。
【0159】
本発明の一態様に係る薬剤払出装置は、薬剤を払出口まで搬送することで、前記払出口から前記薬剤を払出す薬剤払出装置であって、回転することにより前記薬剤を搬送する回転部材と、前記回転部材により前記回転部材上を搬送される前記薬剤が接触することにより、前記回転部材の回転中心側へと変位する変位部材と、を備える。
【0160】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1、1A 薬剤払出カセット(薬剤払出装置)
12 第1回転体(薬剤搬送機構)
13 第2回転体(薬剤搬送機構)
14 高さ規制体
16A 第1変位部材(変位部材)
16B 第2変位部材(変位部材)
16C 固定部材(側壁部材)
16AS1、16AS2 接触面
16BS2 抑制面
16BS1 接触面
17、17A 払出口
101 カウントセンサー(センサー)
A 分割錠剤の半径(薬剤の半径)
B 分割錠剤の厚み(薬剤の厚み)
MD、MD1~3、MD11、MD12 分割錠剤(薬剤)
Ro 通過経路
W1 移送高さ(通過経路幅)