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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038330
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】医薬品組成物及び化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/545 20150101AFI20230309BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K35/545
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P17/02
A61P17/14
A61P43/00 107
A61K8/98
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q7/00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009392
(22)【出願日】2023-01-25
(62)【分割の表示】P 2019229254の分割
【原出願日】2018-04-25
(31)【優先権主張番号】62/500,117
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515238909
【氏名又は名称】田邊 剛士
(71)【出願人】
【識別番号】517123221
【氏名又は名称】アイ ピース,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛士
(72)【発明者】
【氏名】伊達 朗
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健太
(57)【要約】
【課題】iPS細胞等の幹細胞の培地を有効活用した医薬品組成物を提供する。
【解決手段】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、医薬品組成物が提供される。医
薬品組成物において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、医薬品組成物又は医薬品組成物
原料。
【請求項2】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項1に記載の医薬品組成物又は医薬品組成物
原料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医薬品組成物又は医薬品組成物原料を含む、皮膚のシミ、しわ
及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤。
【請求項4】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、化粧品組成物又は化粧品組成物
原料。
【請求項5】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項4に記載の化粧品組成物又は化粧品組成物
原料。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の化粧品組成物又は化粧品組成物原料を含む、皮膚のシミ、しわ
及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤。
【請求項7】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、コラーゲン産生促進剤又はコラ
ーゲン産生促進剤原料。
【請求項8】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項7に記載のコラーゲン産生促進剤又はコラ
ーゲン産生促進剤原料。
【請求項9】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、ヒアルロン酸産生促進剤又はヒ
アルロン酸産生促進剤原料。
【請求項10】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項9に記載のヒアルロン酸産生促進剤又はヒ
アルロン酸産生促進剤原料。
【請求項11】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、創傷治療剤又は創傷治療剤原料
【請求項12】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項11に記載の創傷治療剤又は創傷治療剤原
料。
【請求項13】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、表皮細胞増殖促進剤又は表皮細
胞増殖促進剤原料。
【請求項14】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項13に記載の表皮細胞増殖促進剤又は表皮
細胞増殖促進剤原料。
【請求項15】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、発毛剤又は発毛剤原料。
【請求項16】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項15に記載の発毛剤又は発毛剤原料。
【請求項17】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、育毛剤又は育毛剤原料。
【請求項18】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項17に記載の育毛剤又は育毛剤原料。
【請求項19】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、毛乳頭細胞の活性化剤又は毛乳
頭細胞の活性化剤原料。
【請求項20】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項19に記載の毛乳頭細胞の活性化剤又は毛
乳頭細胞の活性化剤原料。
【請求項21】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、線維芽細胞成長因子ファミリー
産生促進剤又は線維芽細胞成長因子ファミリー産生促進剤原料。
【請求項22】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項21に記載の線維芽細胞成長因子ファミリ
ー産生促進剤又は線維芽細胞成長因子ファミリー産生促進剤原料。
【請求項23】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、血管内皮細胞増殖因子産生促進
剤又は血管内皮細胞増殖因子産生促進剤原料。
【請求項24】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項23に記載の血管内皮細胞増殖因子産生促
進剤又は血管内皮細胞増殖因子産生促進剤原料。
【請求項25】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、細胞をストレスから保護する細
胞保護剤又は細胞保護剤原料。
【請求項26】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項25に記載の細胞保護剤又は細胞保護剤原
料。
【請求項27】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、ストレスを受けた細胞の生存率
を向上させるにする細胞生存率向上剤又は細胞生存率向上剤原料。
【請求項28】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項27に記載の細胞生存率向上剤又は細胞生
存率向上剤原料。
【請求項29】
幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、核酸、タンパク質、タンパク質
複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生体膜からなる群から選択される少なくとも
1つの生体物質をストレスから保護する生体物質保護剤又は生体物質保護剤原料。
【請求項30】
前記幹細胞が、多能性幹細胞である、請求項29に記載の生体物質保護剤又は生体物質
保護剤原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品組成物及び化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胚性幹細胞(ES細胞)は、ヒトやマウスの初期胚から樹立された幹細胞である。ES
細胞は、生体に存在する全ての細胞へと分化できる多能性を有する。現在、ヒトES細胞
は、パーキンソン病、若年性糖尿病、及び白血病等、多くの疾患に対する細胞移植療法に
利用可能である。しかし、ES細胞の移植には障害もある。特に、ES細胞の移植は、不
成功な臓器移植に続いて起こる拒絶反応と同様の免疫拒絶反応を惹起しうる。また、ヒト
胚を破壊して樹立されるES細胞の利用に対しては、倫理的見地から批判や反対意見が多
い。
【0003】
このような背景の状況の下、京都大学の山中伸弥教授は、4種の遺伝子:Oct3/4
、Klf4、c-Myc、及びSox2を体細胞に導入することにより、誘導多能性幹細
胞(iPS細胞)を樹立することに成功した。これにより、山中教授は、2012年のノ
ーベル生理学・医学賞を受賞した(例えば、特許文献1参照。)。iPS細胞は、拒絶反
応や倫理的問題のない理想的な多能性細胞である。したがって、iPS細胞は、細胞移植
療法への利用が期待されている。一方、iPS細胞の培養に用いた培地を、医薬品組成物
に再利用したとの報告がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4183742号公報
【特許文献2】特開2016-128396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らが検証したところ、特許文献2に記載の培養方法では、iPS細胞
は分化してしまうため、実際にはiPS細胞ではなく分化した細胞を培養した培地が再利
用されているものと考えられる。本発明は、iPS細胞等の幹細胞の培地を有効活用した
医薬品組成物及び化粧品組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の末、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が、医薬
品あるいは化粧品の有効成分になることを見出した。
【0007】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、医薬品
組成物又は医薬品組成物原料が提供される。換言すれば、医薬品組成物又は医薬品組成物
原料に用いられるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供される。
医薬品組成物又は医薬品組成物原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。
多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい
。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0008】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む医薬品組
成物を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非
ヒト動物あるいは植物であってもよい。
【0009】
本発明の態様によれば、上記の医薬品組成物を含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのい
ずれかの形成防止及び改善剤が提供される。また、本発明の態様によれば、上記の医薬品
組成物を含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤を対象に投
与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非ヒト動物であっ
てもよい。
【0010】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、化粧品
組成物又は化粧品組成物原料が提供される。換言すれば、化粧品又は化粧品組成物原料に
用いるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供される。化粧品組成
物又は化粧品組成物原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細
胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲ
ル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0011】
本発明の態様によれば、上記の化粧品組成物を含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのい
ずれかの形成防止及び改善剤が提供される。また、本発明の態様によれば、上記の化粧品
組成物を含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤を対象に投
与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非ヒト動物であっ
てもよい。
【0012】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、コラー
ゲン産生促進剤又はコラーゲン産生促進剤原料が提供される。換言すれば、コラーゲン産
生の促進に用いるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供される。
コラーゲン産生促進剤又はコラーゲン産生促進剤原料において、幹細胞が、多能性幹細胞
であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細
胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいても
よい。
【0013】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含むコラーゲ
ン産生促進剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒ
ト又は非ヒト動物であってもよい。
【0014】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、ヒアル
ロン酸産生促進剤又はヒアルロン酸産生促進剤原料が提供される。換言すれば、ヒアルロ
ン酸産生の促進に用いるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供さ
れる。ヒアルロン酸産生促進剤又はヒアルロン酸産生促進剤原料において、幹細胞が、多
能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞
は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含
んでいてもよい。
【0015】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含むヒアルロ
ン酸産生促進剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、
ヒト又は非ヒト動物であってもよい。
【0016】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、創傷治
療剤又は創傷治療剤原料が提供される。換言すれば、創傷の治療に用いるための、幹細胞
を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供される。創傷治療剤又は創傷治療剤原料に
おいて、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であって
もよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培
地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0017】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む創傷治療
剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非ヒ
ト動物であってもよい。
【0018】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、表皮細
胞増殖促進剤又は表皮細胞増殖促進剤原料が提供される。換言すれば、表皮細胞の増殖の
促進に用いるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供される。表皮
細胞増殖促進剤又は表皮細胞増殖促進剤原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であって
もよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であっ
てもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0019】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む表皮細胞
増殖促進剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト
又は非ヒト動物であってもよい。
【0020】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、発毛剤
又は発毛剤原料が提供される。換言すれば、発毛に用いるための、幹細胞を未分化状態で
維持培養した培地の上清が提供される。発毛剤又は発毛剤原料において、幹細胞が、多能
性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は
、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含ん
でいてもよい。
【0021】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む発毛剤を
対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非ヒト動
物であってもよい。
【0022】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、毛乳頭
細胞の活性化剤又は毛乳頭細胞の活性化剤原料が提供される。換言すれば、毛乳頭細胞の
活性化剤又は毛乳頭細胞の活性化剤原料として用いるための、幹細胞を未分化状態で維持
培養した培地の上清が提供される。毛乳頭細胞の活性化剤又は毛乳頭細胞の活性化剤原料
において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であっ
てもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。
培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0023】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む毛乳頭細
胞を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又は非ヒ
ト動物であってもよい。
【0024】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、線維芽
細胞成長因子(FGF)ファミリー産生促進剤又はFGFファミリー産生促進剤原料が提
供される。換言すれば、FGFファミリーの産生の促進に用いるための、幹細胞を未分化
状態で維持培養した培地の上清が提供される。FGFファミリーの例としては、FGF-
2及びFGF-7である。FGFファミリー産生促進剤又はFGFファミリー産生促進剤
原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞で
あってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよ
い。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0025】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含むFGF産
生促進剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト又
は非ヒト動物であってもよい。
【0026】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、血管内
皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤又はVEGF産生促進剤原料が提供される。換言
すれば、VEGFの産生の促進に用いるための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地
の上清が提供される。VEGF産生促進剤又はVEGF産生促進剤原料において、幹細胞
が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性
幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガ
ムを含んでいてもよい。
【0027】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含むVEGF
産生促進剤を対象に投与又は塗布することを含む、治療方法が提供される。対象が、ヒト
又は非ヒト動物であってもよい。
【0028】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、細胞を
ストレスから保護する細胞保護剤又は細胞保護剤原料が提供される。換言すれば、細胞を
ストレスから保護するための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供され
る。細胞保護剤又は細胞保護剤原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。
多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい
。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0029】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、ストレ
スを受けた細胞の生存率を向上させる細胞生存率向上剤又は細胞生存率向上剤原料が提供
される。換言すれば、ストレスを受けた細胞の生存率を向上させるための、幹細胞を未分
化状態で維持培養した培地の上清が提供される。細胞生存率向上剤又は細胞生存率向上剤
原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞で
あってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞であってもよい。培地がゲル培地であってもよ
い。培地がジェランガムを含んでいてもよい。
【0030】
本発明の態様によれば、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む、核酸、
タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生体膜からなる群か
ら選択される少なくとも1つの生体物質をストレスから保護する生体物質保護剤又は生体
物質保護剤原料が提供される。換言すれば、核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポ
タンパク質、リボソーム、及び生体膜からなる群から選択される少なくとも1つの生体物
質をストレスから保護するための、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清が提供
される。生体物質保護剤又は生体物質保護剤原料において、幹細胞が、多能性幹細胞であ
ってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞であってもよい。多能性幹細胞は、ES細胞で
あってもよい。培地がゲル培地であってもよい。培地がジェランガムを含んでいてもよい
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、幹細胞の培地を有効活用した医薬品組成物及び化粧品組成物を提供可
能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例4に係る線維芽細胞の増殖性試験の結果を示すグラフである。
図2】実施例4に係る線維芽細胞の増殖性試験の結果を示すグラフである。
図3】実施例5に係る線維芽細胞によるコラーゲン産生試験の結果を示すグラフである。
図4】実施例5に係る線維芽細胞によるコラーゲン産生試験の結果を示すグラフである。
図5】実施例5に係る線維芽細胞によるヒアルロン酸産生試験の結果を示すグラフである。
図6】実施例6に係る表皮細胞の遊走能試験の結果を示す写真である。
図7】実施例6に係る表皮細胞の遊走能試験の結果を示すグラフである。
図8】実施例7に係る毛乳頭細胞の増殖性試験の結果を示すグラフである。
図9】実施例8に係る毛乳頭細胞によるFGF-7産生試験の結果を示すグラフである。
図10】実施例8に係る毛乳頭細胞によるVEGF産生試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお以下の示す実施の形態は、こ
の発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の
技術的思想は構成部材の組み合わせ等を下記のものに特定するものではない。この発明の
技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0034】
実施形態に係る医薬品組成物、医薬品組成物原料、化粧品組成物、及び化粧品組成物原
料のそれぞれは、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清を含む。幹細胞は、例え
ば、人工多能性幹(iPS)細胞、及び胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞である
。幹細胞は、接着培養されてもよいし、浮遊培養されてもよい。
【0035】
幹細胞用培地としては、例えば、TeSR2(STEMCELL Technolog
ies)等のヒトES/iPS培地を使用可能である。ただし、幹細胞用培地は、これに
限定されず、種々の幹細胞培地が使用可能である。例えばPrimate ES Cel
l Medium、Reprostem、ReproFF、ReproFF2、Repr
oXF(Reprocell)、mTeSR1、TeSRE8、ReproTeSR(S
TEMCELL Technologies)、PluriSTEM(登録商標)Hum
an ES/iPS Medium(Merck)、NutriStem (登録商標)
XF/FF Culture Medium for Human iPS and E
S Cells、Pluriton reprogramming medium(St
emgent)、PluriSTEM(登録商標)、Stemfit AK02N、St
emfit AK03(Ajinomoto)、ESC-Sure(登録商標)seru
m and feeder free medium for hESC/iPS(Ap
plied StemCell)、L7(登録商標)hPSC Culture Sys
tem (LONZA)、及びPrimate ES Cell Medium (Re
proCELL)等を利用してもよい。
【0036】
あるいは、幹細胞用培地としては、代替血清、L-グルタミン、非必須アミノ酸溶液、
2-メルカプトエタノール、及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加されたダルベッ
コ改変イーグル培地/ハムF-12(DMEM/F12)であってもよい。幹細胞用培地
は、basic fibroblast growth factor(bFGF)等の
成長因子を含んでいてもよい。
【0037】
幹細胞が浮遊培養される場合、ゲル培地が用いられる。ゲル培地は、例えば、幹細胞用
培地に脱アシル化ジェランガム等のジェランガムを終濃度が0.5重量%から0.001
重量%、0.1重量%から0.005重量%、あるいは0.05重量%から0.01重量
%となるよう添加することにより調製される。なお、本開示においては、ジェランガムと
は、脱アシル化ジェランガムを含むものとする。
【0038】
ゲル培地は、ヒアルロン酸、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラ
ギーナン、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン
、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸、
及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物を含んでいても
よい。また、ゲル培地は、メチルセルロース、並びにリゾホスファチジン酸及びスフィン
ゴシン-1-リン酸等の脂質を含んでいてもよい。これらの物質を含むことにより、細胞
同士の凝集がより抑制される。
【0039】
あるいは、ゲル培地は、poly(glycerol monomethacrylate) (PGMA)、poly(2-hydroxypr
opyl methacrylate) (PHPMA)、Poly (N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)、amine termin
ated、carboxylic acid terminated、maleimide terminated、N-hydroxysuccinimide (NH
S) ester terminated、triethoxysilane terminated、Poly (N-isopropylacrylamide-co-
acrylamide)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-acrylic acid)、Poly (N-isopropylacry
lamide-co-butylacrylate)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid)、Poly
(N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid-co-octadecyl acrylate)、及びN-Isopro
pylacrylamideから選択される少なくの温度感受性ゲルを含んでいてもよい。
【0040】
ゲル培地には、例えば、ROCK阻害剤を終濃度が1000μmol/L以上0.1μ
mol/L以下、100μmol/L以上1μmol/L以下、あるいは5μmol/L
以上20μmol/L以下となるよう、添加してもよい。ROCK阻害剤をゲル培地に添
加することにより、幹細胞によるコロニー形成が促進される。
【0041】
ゲル培地は、例えば、bFGF等の成長因子を含まなくともよい。あるいは、ゲル培地
は、bFGF等の成長因子を、400μg/L以下、100μg/L以下、40μg/L
以下、あるいは10μg/L以下の低濃度で含んでいてもよい。
【0042】
また、ゲル培地は、TGF-βを含まないか、TGF-βを600ng/L以下、30
0ng/L以下、あるいは100ng/L以下の低濃度で含んでいてもよい。
【0043】
例えば、幹細胞は、浮遊培養される前に、シングルセルに分解され、シングルセルに分
解された幹細胞が、ゲル培地に入れられる。ゲル培地は、撹拌されない。シングルセルは
、クローナリティ及び未分化の状態を保ったまま増殖し、ゲル培地中でコロニーを形成す
る。幹細胞が未分化の状態を保っているか否かは、細胞が未分化マーカーを発現している
か否かを検査することにより、確認することが可能である。
【0044】
幹細胞を維持培養する際の温度は、例えば37℃である。幹細胞を維持培養する際の二
酸化炭素の濃度は、例えば5%である。幹細胞を維持培養する期間は、例えば、1日以上
90日以下、2日以上60日以下、5日以上30日以下、あるいは7日以上21日以下で
ある。幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上清は、ろ過及び遠心等により、幹細胞
を除去されていてもよい。
【0045】
実施形態に係る医薬品組成物は、皮膚塗布組成物であってもよい。実施形態に係る医薬
品組成物は、皮膚疾患治療剤であってもよい。実施形態に係る皮膚疾患治療剤で治療可能
な疾患の例としては、尋常性ざ瘡、尋常性乾癬、ケロイド、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、
アトピー性皮膚炎、アトピー性乾燥皮膚炎、皮膚粗鬆症(dermatoporosis
)、光線性弾性線維症、日光性角化症、眼瞼下垂症、円形脱毛症、頭髪脱毛症、睫毛貧毛
症、肝斑、老人性色素班、汗疹、そばかす、遅発性両側性太田母班、脂漏性角化症、早老
症による皮膚疾患、及び単純疱疹等が挙げられる。
【0046】
実施形態に係る化粧品組成物で改善又は解消可能な状態の例としては、しみ、そばかす
、しわ、たるみ、きしみ、肌のはりの低下、くすみ、敏感肌、乾燥肌、及び薄毛等が挙げ
られる。が挙げられる。実施形態に係る化粧品組成物の効果としては、肌を整える、肌の
キメを整える、皮膚をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ、肌をひきしめる、皮膚にうるおい
を与える、皮膚の水分及び油分を補い保つ、皮膚の柔軟性を保つ、皮膚を保護する、皮膚
の乾燥を防ぐ、肌を柔らげる、肌にはりを与える、肌にツヤを与える、肌を滑らかにする
、しみを目立たなくさせる、しわを抑制する及び肌を明るくする等が挙げられる。さらに
、実施形態に係る化粧品組成物の頭皮あるいは毛髪に関する効果としては、頭皮を健やか
に保つ、育毛、薄毛の予防、かゆみの予防、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、病後又は
産後の脱毛の予防、及び養毛等が挙げられる。
【0047】
実施形態に係る医薬品組成物は、創傷治療剤、表皮細胞増殖促進剤、表皮ターンオーバ
ー促進剤、発毛剤、育毛剤、及び睫毛貧毛症治療薬であってもよい。実施形態に係る医薬
品組成物及び化粧品組成物は、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、発毛剤
、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー産生促進剤、及び血管内皮細胞増殖因子(V
EGF)産生促進剤であってもよい。
【0048】
毛髪の成長においては毛根の毛母細胞が分裂し、そこから生じた細胞が毛髪を構成して
いく。一方、毛髪の成長には毛周期と呼ばれる周期があり、成長期、退行期、及び休止期
を繰り返す。毛乳頭細胞は増殖因子の産生と放出を通じて、毛包上皮幹細胞の増殖及び分
化に影響を及ぼし、毛周期を制御している。毛乳頭細胞や毛母細胞の活性化が毛成長のメ
カニズムに寄与するといわれている。また、毛周期に応じて毛包では活発に血管のリモデ
リングが行われるが、このときの血管新生に問題があると、毛髪形成のための栄養や酸素
の供給が不十分になる。毛包血管網からの血流の不足は男性型脱毛症(AGA)の病態に
関与するといわれている。
【0049】
毛乳頭細胞の遺伝子と発毛及び毛成長については、以下のようなことが知られている。
すなわち、乳頭細胞が毛母細胞に対して分泌する増殖因子としては、FGF-7及びIG
F-1等が知られている。これら遺伝子には毛包成長を維持する作用がある。血管内皮成
長因子(VEGF)は毛乳頭細胞より分泌されて毛包血管の増生に関わり、またオートク
ラインに毛乳頭細胞を増殖させる効果があるが、成長期から退行期へ移行するにしたがい
、発現量は減少する。VEGF遺伝子はAGA(男性型脱毛症)の毛組織で発現が低下し
ている。VEGFBはVEGFが作用する受容体であるVEGFR-1に競合して結合す
る。VEGFBは血管内皮細胞の増殖や透過性亢進活性を持つが、毛包での効果は不明で
ある。
【0050】
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物は、毛乳頭に直接作用し、発毛促進因子
であるFGF-7の産生量を高めて発毛を促進することで毛周期の成長期を長くさせ、細
く弱い毛から太くて強い毛に育てる効果、血管内皮成長因子(VEGF)を高め、毛乳頭
細胞より分泌されて毛包血管の増生に関わり、またオートクラインに毛乳頭細胞を増殖さ
せる効果がある。
【0051】
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物が育毛剤又は発毛剤として用いられる場
合、ミノキシジル、センブリ、パントテニルエチルエーテル、トコフェロール酢酸エステ
ル、グリチルリチン酸二カリウム、及びアデノシン等の他の有効成分を含んでいてもよい
【0052】
実施形態に係る創傷治療剤で治療可能な創傷の例としては、熱傷、擦過創、裂傷、挫傷
、縫合創、褥瘡、及び皮膚欠損創等が挙げられる。
【0053】
実施形態に係る医薬品組成物又は化粧品組成物は、幹細胞を未分化状態で維持培養した
培地の上清を含む、細胞をストレスから保護する細胞保護剤であってもよい。また、実施
形態に係る医薬品組成物又は化粧品組成物は、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の
上清を含む、ストレスを受けた細胞を安定化し、例えば生存率を向上させる細胞生存率向
上剤であってもよい。ストレスを受けた細胞は、例えば線維芽細胞、表皮細胞、及び毛乳
頭細胞であるが、これらの細胞に限定されず、いかなる細胞でもよい。あるいは、実施形
態に係る医薬品組成物又は化粧品組成物は、幹細胞を未分化状態で維持培養した培地の上
清を含む、核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生
体膜からなる群から選択される少なくとも1つの生体物質をストレスから保護する生体物
質保護剤であってもよい。ここで、生体膜は、細胞膜を含む。
【0054】
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物は、幹細胞を未分化状態で維持培養した
培地の上清を有効量含む。ここで、有効量とは、医薬品組成物あるいは化粧品組成物とし
て効用を発揮可能な量をいう。有効量は、患者の年齢、対象疾患、他の成功成分の有無、
及び他の配合物の量に応じて、適宜設定される。
【0055】
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物は、製剤上許容される担体、賦形剤、崩
壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、及び生理食塩水等
を含んでいてもよい。賦形剤の例としては、乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニ
トール、及び白糖が挙げられる。崩壊剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、及
び炭酸カルシウムが挙げられる。緩衝剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び酢酸
塩が挙げられる。乳化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、及びトラ
ガントが挙げられる。
【0056】
懸濁剤の例としては、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びラ
ウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。無痛化剤の例としては、ベンジルアルコール、クロ
ロブタノール、及びソルビトールが挙げられる。安定剤の例としては、プロピレングリコ
ール、及びアスコルビン酸が挙げられる。保存剤の例としては、フェノール、塩化ベンザ
ルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びメチルパラベンが挙げられる
。防腐剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、及びクロロブタノ
ールが挙げられる。
【0057】
また、実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物には、水、アルコール、界面活性
剤(カチオン、アニオン、ノニオン、及び両性界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、1
,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ペンタンジオー
ル、ポリクオタニウム、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸塩、核酸類、単糖類、及
び少糖等、並びにそれらの誘導体等)、増粘剤(多糖類、ポリアクリル酸塩、カルボキシ
ビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、ア
ルギン酸、カラギーナン、キサンタンガム、及びメチルセルロース等、並びにそれらの誘
導体等)、ワックス、ワセリン、炭化水素飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、及びシリコン油等
、並びにそれらの誘導体、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、及びトリオクタン
酸グリセリル等のトリグリセライド類、ステアリン酸イソプロピル等のエステル油類、天
然油脂類(オリブ油、椿油、アボガド油、アーモンド油、カカオ脂、月見草油、ブドウ種
子油、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、スクワラン、オレンジラフ
ィー油、ラノリン、及びセラミド等)、防腐剤(オキシ安息香酸誘導体、デヒドロ酢酸塩
、感光素、ソルビン酸、及びフェノキシエタノール等、並びにそれらの誘導体等)、殺菌
剤(イオウ、トリクロカルバアニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、及びヒノキチオ
ール等、並びにそれらの誘導体等)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、及びメトキシ
ケイ皮酸等、並びにそれらの誘導体等)、抗炎症剤(アラントイン、ビサボロール、ε-
アミノカプロン酸、アセチルファネシルシスティン、及びグリチルリチン酸等、並びにそ
れらの誘導体等)、抗酸化剤(トコフェロール、BHA、BHT、及びアスタキサンチン
等、並びにそれらの誘導体等)、キレート剤(エデト酸、及びヒドロキシエタンジホスホ
ン酸等、並びにそれらの誘導体等)、動植物エキス(アシタバ、アロエ、エイジツ、オウ
ゴン、オウバク、海藻、カリン、カミツレ、甘草、キウイ、キュウリ、クワ、シラカバ、
トウキ、ニンニク、ボタン、ホップ、マロニエ、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、
ミルク、各種ペプタイド、プラセンタ、ローヤルゼリー、ユーグレナエキス、加水分解ユ
ーグレナエキス、及びユーグレナ油等、並びにこれらの含有成分精製物又は発酵物等)、
pH調整剤(無機酸、無機酸塩、有機酸、及び有機酸塩等、並びにそれらの誘導体等)、
ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD類、ユビキノン、及
びニコチン酸アミド等、並びにそれらの誘導体等)、酵母、麹菌及び乳酸菌の発酵液、ガ
ラクトミセス培養液、美白剤(トラネキサム酸、トラネキサム酸セチル塩酸塩、4-n-
ブチルレゾルシノール、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、カンゾウフラボノイド、ナイ
アシンアミド、及びビタミンC誘導体等)、セラミド・セラミド誘導体、抗シワ剤(レチ
ノール、及びレチナール、並びにそれらの誘導体、ニコチン酸アミド、及びオリゴぺプチ
ド等、並びにそれらの誘導体等、好中球エラスターゼ阻害、並びにMMP-1及びMMP
-2阻害作用のある天然及び合成成分等)、酸化チタン、タルク、マイカ、シリカ、酸化
亜鉛、酸化鉄、シリコン、及びこれらを加工処理した粉体類等を、実施形態に係る医薬品
組成物及び化粧品組成物の目的を達成する範囲内で配合することができる。
【0058】
なお、実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物に添加可能な成分は、上記に限ら
れるものではなく、医薬品組成物及び化粧品組成物に用い得る成分であれば自由に選択が
可能である。実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物をハップ剤として用いる場合
、上記成分に加えて、基剤(カオリン、及びベントナイト等)、ゲル化剤(ポリアクリル
酸塩、及びポリビニルアルコール等)を目的を達成する範囲内で配合することができる。
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物を入浴剤として用いる場合、硫酸塩、炭酸
水素塩、ホウ酸塩、色素、及び保湿剤を目的を達成する範囲内で適宜配合し、パウダータ
イプ、液剤タイプに調製してもよい。
【0059】
実施形態に係る医薬品組成物及び化粧品組成物は、当該技術分野において周知慣用され
ている方法によって製造可能である。
【実施例0060】
(実施例1:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
5mLのL-グルタミン(25030-081、Invitrogen)、5mLの非
必須アミノ酸溶液(11140-050、Invitrogen)、1mLの2-メルカ
プトエタノール(21985-023、Invitrogen)、2.5mLのペニシリ
ン/ストレプトマイシン(15140-122、Invitrogen)にDMEM/F
12(10565-018、Invitrogen)、及び代替血清(KSR:Knoc
kOut Serum Replacement、登録商標、10828028、Inv
itrogen)を加えて、全量が500mLの培地を作製した。当該培地に、0.2m
Lの10μg/mL bFGF(basic fibroblast growth f
actor、R and D)を添加し、幹細胞用培地とした。幹細胞用培地におけるb
FGFの濃度は、4ng/mLであった。
【0061】
上記のように作製した幹細胞用培地を用いて、接着培養用シャーレ上のフィーダー細胞
上で、ヒトiPS細胞を接着維持培養した。ヒトiPS細胞は、1週間ごとに継代した。
継代の際には、ヒトiPS細胞を、0.25%トリプシン、0.1mg/mLのコラゲナ
ーゼIV、1mmol/LのCaCl2、及び20%のKSRを含む剥離溶液で処理した
【0062】
上記の通り維持培養されたヒトiPS細胞を、ES細胞解離液(TrypLE Sel
ect、登録商標、ThermoFisher)を用いて、接着培養用シャーレから剥が
した。剥がしたヒトiPS細胞を、ラミニン(ニッピ)でコートしたディッシュ上に播種
した。その後、10μmol/LのROCK阻害剤を添加したTeSR2培地(Stem
cell)を用いて、ヒトiPS細胞を1週間培養した。培地交換は、毎日行った。
【0063】
その後、培地を幹細胞用培地に置換し、二日後に幹細胞用培地の上清を回収した。回収
した幹細胞用培地の上清を1500回転で5分遠心し、培地の上清を再度回収した後に3
000回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ
過した。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例1に係る上清溶液とした。
【0064】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4
、及びTRA 1-60が陽性であることを確認した。
【0065】
(実施例2:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
実施例1と同様にヒトiPS細胞を維持培養した。その後、実施例1と同様に、ヒトi
PS細胞を接着培養用シャーレから剥がし、シングルセルまで分割した。次に、ジェラン
ガム及び10μmol/LのROCK阻害剤(Selleck)を添加してゲル化した幹
細胞用培地にヒトiPS細胞を播種し、ヒトiPS細胞を21日間浮遊培養した。その間
、二日に一度、ゲル化した幹細胞用培地を培養器に補充した。
【0066】
その後、ヒトiPS細胞が懸濁しているゲル化幹細胞用培地をメッシュフィルターでろ
過し、細胞塊を除去した。さらに、ろ過されたゲル化幹細胞用培地を1500回転で5分
遠心して細胞及びゲルを沈殿させ、遠心後の幹細胞用培地の上清を再度回収した後に30
00回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ過
した。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例2に係る上清溶液とした。
【0067】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4
、及びTRA 1-60が陽性であることを確認した。
【0068】
(実施例3:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
実施例1と同様にヒトiPS細胞を維持培養した。その後、実施例1と同様に、ヒトi
PS細胞を接着培養用シャーレから剥がし、シングルセルまで分割した。次に、ジェラン
ガム、及び100μmol/LのROCK阻害剤(Selleck)を添加してゲル化し
た幹細胞用培地にヒトiPS細胞を播種し、ヒトiPS細胞を14日間浮遊培養した。そ
の間、二日に一度、ゲル化した幹細胞用培地を培養器に補充した。
【0069】
その後、ヒトiPS細胞が懸濁しているゲル化幹細胞用培地をメッシュフィルターでろ
過し、細胞塊を除去した。さらに、ろ過されたゲル化幹細胞用培地を1500回転で遠心
して細胞及びゲルを沈殿させ、遠心後の幹細胞用培地の上清を再度回収した後に3000
回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ過した
。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例3に係る上清溶液とした。
【0070】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4
、及びTRA 1-60が陽性であることを確認した。
【0071】
(比較例:分化した細胞を培養した培地の上清の調製)
特開2016-128396号公報に記載の実施例に準じてヒトiPS細胞を培養した
。すなわち、実施例1と同じ幹細胞用培地を用いて、接着培養用シャーレ上のフィーダー
細胞上で、ヒトiPS細胞を接着維持培養した。ヒトiPS細胞は、1週間ごとに継代し
た。継代の際には、ヒトiPS細胞を、0.25%トリプシン、0.1mg/mLのコラ
ゲナーゼIV、1mmol/LのCaCl2、及び20%のKSRを含む剥離溶液で処理
した。
【0072】
上記の通り培養されたヒトiPS細胞を、ES細胞解離液(TrypLE Selec
t、登録商標、ThermoFisher)を用いて、接着培養用シャーレから剥がした
。剥がしたヒトiPS細胞を、非接着培養用シャーレに入れたゲル化していないヒトiP
S細胞中で1週間浮遊培養した。この結果、胚様体(EB)が形成された。形成された胚
様体を接着培養用シャーレ上に播種し、10%FBSを含有するDMEM中で1週間成長
(outgrowth)させた。
【0073】
次に、細胞を0.05%トリプシン-EDTA溶液を用いて接着培養用シャーレから剥
がし、シングルセルまで分割された細胞を新たな接着培養用シャーレに播種した。その後
、培地として10%FBSを含有するDMEMを用い、細胞を一週間培養した。
【0074】
細胞が70%から80%以上コンフルエントになったことを確認した後に、培地を無血
清培地(FBSを含まないDMEM)に置換し、2日間培養後、培地の上清を回収した。
回収した培地の上清を1500回転で5分遠心し、培地の上清を再度回収した後に300
0回転で3分遠心し、培地の上清を再度回収したものを比較例に係る上清溶液とした。
【0075】
また、培養された細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4、及びTR
A 1-60が陰性であり、分化した細胞であることが確認された。
【0076】
(実施例4:線維芽細胞の増殖性試験)
増殖培地Aとして、10%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン添加DME
M培地を用意した。次に、成人由来正常ヒト線維芽細胞(KF-4109、Strain
No.01035、クラボウ)を、濃度が5×103細胞/0.1mL/ウェルとなる
よう増殖培地Aで懸濁し、96ウェルプレートに播種して、CO2インキュベーター内(
5%CO2、37℃)で1日間培養した。
【0077】
試験培地Aとして、1%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン添加DMEM
培地を用意した。次に、実施例1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、試験培
地Aと、を、体積比で、10.00:90.00となるよう混合し、濃度が10.00v
/v%の実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Aを得た。一部のウェル内の増殖
培地Aを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Aのそれぞれに置換した。
【0078】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、1%FBS及び1%ペニシリ
ン-ストレプトマイシンを添加していないDMEM培地(無添加試験培地A)に置換した
。また、陰性コントロールとして、DMEM/F12と、試験培地Aと、を、体積比で、
10.00:90.00となるよう混合して得られた希釈試験培地Aに、一部のウェルの
増殖培地Aを置換した。
【0079】
置換された培地で、1日間及び3日間、線維芽細胞を培養し、生細胞数測定試薬SF(
Cat.No.07553-15、ナカライテスク)及びプレートリーダー(Vario
skan MicroPlate Reader、Thermo Scientific
)を用いて、WST-8法で生細胞数測定を行った。結果を図1及び図2に示す。濃度が
10.00v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培
地A、希釈試験培地A、及び比較例に係る上清添加培地Aを用いた場合と比較して、線維
芽細胞が優位に増殖したことが確認された。また、幹細胞の培地の上清が、細胞の生存率
の上昇に有効であることが示唆された。さらに、継代時のシャーレからの剥離の際、ある
いはシングルセルに分割される際には、細胞には、圧力等の物理的ストレスと、剥離剤に
より化学的なストレスが加えられる。しかし、これらのストレスを受けた細胞が、実施例
に係る上清添加培地によって増殖したことから、実施例に係る上清添加培地が、細胞が受
けたストレスを緩和し、細胞をストレスから保護し、細胞を安定化し、生存率を向上させ
ることが示唆された。これらの結果から、実施例に係る上清添加培地が、細胞に含まれる
核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生体膜を保護
することが示唆された。ここで、生体膜は、細胞膜を含む。
【0080】
(実施例5:線維芽細胞によるI型コラーゲン及びヒアルロン酸産生試験)
実施例4と同様に、増殖培地Aで成人由来正常ヒト線維芽細胞を1日間培養した。その
後、濃度が1.00v/v%、10.00v/v%又は100.0v/v%である以外は
、実施例4と同様に、一部のウェル内の増殖培地Aを、実施例1から3及び比較例に係る
上清添加培地Aのそれぞれに置換した。
【0081】
陽性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを置換しなかった。陰性コントロ
ールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、無添加試験培地Aに置換した。また、陰性コ
ントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、実施例4と同様に調整した希釈試験培
地Aに置換した。
【0082】
培地を交換した後、3日間、線維芽細胞を培養し、培地の上清を回収し、-80℃で保
存した。その後、培地の上清を解凍し、培地の上清のI型コラーゲン濃度を、ヒトコラー
ゲンタイプ1 ELISA kit(Cat.No.EC1-E105)で測定した。ま
た、培地の上清のヒアルロン酸濃度を、DueSet Hyaluronan(Cat.
No.DY3614、R&D Systems)を用いて測定した。結果を図3図4
図5に示す。
【0083】
図3及び図4において、右側の補正されたバーは、線維芽細胞を培養する前から元々培
地に含まれていたコラーゲンの量を除く補正をされたデータを示している。左側の生デー
タのバーは、補正前のデータを示している。図3に示すように、濃度が1.0v/v%の
実施例1に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培地A、増殖培地A、希釈試験
培地A、及び比較例に係る上清添加培地Aを用いた場合と比較して、I型コラーゲンの産
生量が優位に増加していた。図4に示すように、濃度が1.0v/v%及び100.0v
/v%の実施例3に係る上清添加培地Aを用いた場合、増殖培地Aを用いた場合と比較し
て、I型コラーゲンの産生量が顕著に増加していた。したがって、幹細胞の培地の上清が
、コラーゲンの産生を促進し、皮膚のシワ及びたるみ形成防止、及び改善に有効であるこ
とが示唆された。
【0084】
図5において、右側の補正されたバーは、線維芽細胞を培養する前から元々培地に含ま
れていたヒアルロン酸の量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバ
ーは、補正前のデータを示している。濃度が10.0v/v%及び100.0v/v%の
実施例1から3に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培地A、希釈試験培地A
、及び比較例に係る上清添加培地Aと比較して、ヒアルロン酸の産生量が顕著に増加して
いた。したがって、幹細胞の培地の上清が、ヒアルロン酸の産生を促進し、ヒアルロン酸
の減少によるシワ及びたるみの形成防止、及び改善に有効であることが示唆された。
【0085】
(実施例6:表皮細胞の遊走性試験)
増殖培地Bとして、増殖添加剤(10μg/mLのインスリン、0.1ng/mLのh
EGF、0.67μg/mLのハイドロコーチゾン、4μL/mLのウシ脳下垂体抽出液
BPE)及び抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイシン、50ng/mLのアンフォテリ
シン)を含む500mLの表皮細胞培地(HuMedia-KG2、クラボウ)を用意し
た。
【0086】
成人由来正常ヒト表皮細胞を10μg/mLのMitomycin C(Cat.No
.20898-21、Nacalai tesque)で2時間処理し、細胞分裂を停止
させた。次に、ヒト表皮細胞を、濃度が4×104細胞/0.1mL/ウェルとなるよう
増殖培地Bで懸濁し、細胞の遊走能を測定するキット(Oris Cell Migra
tion Assay、登録商標)のコラーゲンコート済みプレートに播種して、CO2
インキュベーター内(5%CO2、37℃)で1日間培養し、プレート上のストッパーで
塞がれていないストッパーの外縁部に表皮細胞を定着させた。その後、ストッパーをプレ
ート上から撤去した。
【0087】
試験培地Bとして、500mLの表皮細胞培地に抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイ
シン及び50nm/mLのアンフォテリシン)を添加した培地を用意した。次に、実施例
1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、試験培地Bと、を、体積比で、10.
0:90.0、1.0:99.0となるよう混合し、実施例1から3及び比較例に係る上
清添加培地Bを得た。一部のプレート上の増殖培地Bを、実施例1から3及び比較例に係
る上清添加培地Bのそれぞれに置換した。
【0088】
一部のプレート上の増殖培地Bを、陰性コントロールとして、増殖添加剤を添加してい
ない表皮細胞培地(無添加試験培地B)に置換した。また、陰性コントロールとして、D
MEM/F12と、試験培地Bと、を、体積比で、10.0:90.0、1.0:99.
0となるよう混合して得られた希釈試験培地Bに、一部のプレート上の増殖培地Bを置換
した。
【0089】
創傷治癒の過程では、傷に向かって表皮細胞が遊走して創傷が収縮する。本実施例にお
いては、ストッパーで塞がれていたところに表皮細胞が遊走したか否かを、プレートリー
ダーを用いて分析した。具体的には、培地を置換してから23時間後、生細胞染色試薬(
Calcein AM、Cat.NO.341-07901、DOJINDO)で表皮細
胞を染色し、プレートリーダー(Varioskan MicroPlate Read
er、Thermo Scientific)を用いて、波長485nmの励起光に対す
る波長538nmの蛍光を測定した。
【0090】
結果を図6及び図7に示す。濃度が1.0v/v%及び10.0v/v%の実施例1か
ら3に係る上清添加培地Bを用いた場合、無添加試験培地B、希釈試験培地B、及び比較
例に係る上清添加培地Bと比較して、表皮細胞の遊走能の有意な促進効果が認められた。
したがって、幹細胞の培地の上清が、創傷治癒に有効であることが示された。また、幹細
胞の培地の上清が、例えば、紫外線暴露による皮膚損傷で生じる皮膚表層のしみ及び不均
一な肌色の形成の防止及び改善に有効であることが示唆された。また、幹細胞の培地の上
清が、細胞を安定化し、生存率の上昇に有効であることが示唆された。さらに、継代時の
シャーレからの剥離の際、あるいはシングルセルに分割される際には、細胞には、圧力等
の物理的ストレスと、剥離剤により化学的なストレスが加えられる。しかし、これらのス
トレスを受けた細胞が、実施例に係る上清添加培地によって増殖したことから、実施例に
係る上清添加培地が細胞が受けたストレスを緩和し、細胞をストレスから保護し、細胞を
安定化し、生存率を向上させることが示唆された。これらの結果から、実施例に係る上清
添加培地が、細胞に含まれる核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リ
ボソーム、及び生体膜を保護することが示唆された。ここで、生体膜は、細胞膜を含む。
【0091】
(実施例7:毛乳頭細胞の増殖性試験)
増殖培地Cとして、専用添加剤(牛胎児血清、インスリン・トランスフェリン・トリヨ
ードサイロニン混液、牛下垂体抽出液、サイプロテロンアセテート)添加済みの毛乳頭細
胞専用培地(Cat.No.TMTPGM-250、TOYOBO)を用意した。次に、
正常ヒト毛乳頭細胞(Cat.No.CA60205a、Lot.No.2868、TO
YOBO)を、濃度が1.2×104細胞/0.3mL/ウェルとなるよう増殖培地Cで
懸濁し、typeIコラーゲンコート48ウェルプレートに播種して、CO2インキュベ
ーター内(5%CO2、37℃)で1日間培養した。
【0092】
実施例1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、添加剤を添加していない毛乳
頭細胞専用培地(無添加試験培地C)と、を、体積比で30.0:70.0となるよう混
合し、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Cを得た。一部のウェル内の増殖培
地Cを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Cのそれぞれに置換した。
【0093】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、添加剤を添加していない毛乳
頭細胞専用培地(無添加試験培地C)に置換した。また、陰性コントロールとして、DM
EM/F12と、無添加試験培地Cと、を、体積比で30.0:70.0となるよう混合
して得られた希釈試験培地Cに、一部のウェルの増殖培地Cを置換した。
【0094】
置換された培地で、3日間、毛乳頭細胞を培養し、WST-8法で生細胞数測定を行っ
た。結果を図8に示す。濃度が30.0v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地C
を用いた場合、無添加試験培地C及び希釈試験培地Cを用いた場合と比較して、毛乳頭細
胞が優位に増殖したことが確認された。したがって、幹細胞の培地の上清が、薄毛の治療
、脱毛の予防、毛生促進、及び発毛促進等の育毛及び発毛効果を有することが示唆された
【0095】
(実施例8:毛乳頭細胞によるFGF-7及びVEGF産生試験)
実施例7と同様に、増殖培地Cで正常ヒト毛乳頭細胞を1日間培養した。その後、濃度
が0.3v/v%、30.0v/v%、又は100.0v/v%である以外は、実施例7
と同様に、一部のウェル内の増殖培地Cを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培
地Cのそれぞれに置換した。
【0096】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、無添加試験培地C及び希釈試
験培地Cのそれぞれに置換した。また、参考コントロールとして、一部のウェルの増殖培
地Cを、毛乳頭細胞専用培地に100μmol/Lのアデノシンを添加したアデノシン添
加培地、及び毛乳頭細胞専用培地に30μmol/Lのミノキシジルを添加したアデノシ
ン添加培地のそれぞれに置換した。また、ミノキシジルのビヒクル・コントロールとして
、一部のウェルの増殖培地Cを、毛乳頭細胞専用培地に0.1%DMSOを添加したDM
SO添加培地に置換した。
【0097】
培地を交換した後、3日間、毛乳頭細胞を培養し、培地の上清を回収し、-80℃で保
存した。その後、培地の上清を解凍し、培地の上清の線維芽細胞成長因子7(FGF-7
)濃度を、FGF-7 Human ELISA kit(Cat.No.ab1005
19、abcam)で測定した。また、培地の上清の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)
濃度をHuman VEGF Quantikine ELISA(Cat.No.DV
E00、R&D Systems)で測定した。結果を図9及び図10に示す。
【0098】
図9において、右側の補正されたバーは、毛乳頭細胞を培養する前から元々培地に含ま
れていたFGF-7の量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバー
は、補正前のデータを示している。濃度が0.3v/v%の実施例1から3に係る上清添
加培地Cを用いた場合、無添加試験培地C、希釈試験培地C、及び比較例に係る上清添加
培地Cを用いた場合と比較して、FGF-7の産生量が有意に増加したのが確認された。
【0099】
図10において、右側の補正されたバーは、毛乳頭細胞を培養する前から元々培地に含
まれていたVEGFの量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバー
は、補正前のデータを示している。濃度が30.0v/v%及び100.0v/v%の実
施例1から3に係る上清添加培地Cを用いた場合、希釈試験培地C及び比較例に係る上清
添加培地Cを用いた場合と比較して、VEGFの産生量が有意に増加したのが確認された
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地(アクチビンAを含む培地を除く。)の上清を調製することを含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤の製造方法。
【請求項2】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、コラーゲン産生促進剤の製造方法。
【請求項3】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、ヒアルロン酸産生促進剤の製造方法。
【請求項4】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地(アクチビンAを含む培地を除く。)の上清を調製することを含む、創傷治療剤の製造方法。
【請求項5】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、表皮細胞増殖促進剤の製造方法。
【請求項6】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、発毛剤の製造方法。
【請求項7】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、育毛剤の製造方法。
【請求項8】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、毛乳頭細胞の活性化剤の製造方法。
【請求項9】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、線維芽細胞成長因子ファミリー産生促進剤の製造方法。
【請求項10】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、血管内皮細胞増殖因子産生促進剤の製造方法。
【請求項11】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、線維芽細胞及び表皮細胞をストレスから保護する細胞保護剤の製造方法。
【請求項12】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して浮遊培養した培地の上清を調製することを含む、ストレスを受けた線維芽細胞及び表皮細胞の生存率を向上させる細胞生存率向上剤の製造方法。
【請求項13】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地(アクチビンAを含む培地を除く。)の上清を調製することを含む、皮膚のシミ、しわ及びたるみのいずれかの形成防止及び改善剤の製造方法。
【請求項14】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、コラーゲン産生促進剤の製造方法。
【請求項15】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、ヒアルロン酸産生促進剤の製造方法。
【請求項16】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地(アクチビンAを含む培地を除く。)の上清を調製することを含む、創傷治療剤の製造方法。
【請求項17】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、表皮細胞増殖促進剤の製造方法。
【請求項18】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、発毛剤の製造方法。
【請求項19】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、育毛剤の製造方法。
【請求項20】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、毛乳頭細胞の活性化剤の製造方法。
【請求項21】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、線維芽細胞成長因子ファミリー産生促進剤の製造方法。
【請求項22】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、血管内皮細胞増殖因子産生促進剤の製造方法。
【請求項23】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、線維芽細胞及び表皮細胞をストレスから保護する細胞保護剤の製造方法。
【請求項24】
iPS細胞をNANOG、OCT3/4、及びTRA 1-60が陽性である未分化状態を維持して接着培養した培地の上清を調製することを含む、ストレスを受けた線維芽細胞及び表皮細胞の生存率を向上させる細胞生存率向上剤の製造方法。