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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038354
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】シート積載装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/38 20060101AFI20230309BHJP
   B65H 31/24 20060101ALI20230309BHJP
   B65H 33/08 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
B65H31/38
B65H31/24
B65H33/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010366
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2018229530の分割
【原出願日】2018-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 守
(57)【要約】
【課題】シート積載装置において、簡素な構成で、シートの貼り付きを低減する。
【解決手段】排出手段(73)によって第1積載部(74)に排出されたシート(S1,S2)は、鉛直方向において排出手段よりも下方に設けられた整合部材(79f)によって幅方向の位置を整合される。シート積載装置は、排出手段によって排出された第1シート(S1)を整合部材によって幅方向の目標位置に整合した後、整合部材が、幅方向に関して排出手段によって排出される第2シート(S2)の側端位置(Ys)より内側にある状態で、排出手段によって第2シートを排出し、その後、整合部材を第2シートの側端位置より外側に移動させてから、整合部材により第2シートを目標位置に整合する、第1整合動作を実行可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置によって画像を形成された画像形成済シートを積載するシート積載装置であって、
前記画像形成済シートを排出方向に排出する排出手段と、
前記排出手段によって排出された前記画像形成済シートが積載される第1積載部と、
鉛直方向において前記排出手段よりも下方に設けられ、前記排出方向と直交し、且つ前記排出手段により排出される前記画像形成済シートの面に沿った幅方向に移動可能であり、前記排出手段によって前記第1積載部に排出された前記画像形成済シートの前記排出方向に沿った側端に当接して前記第1積載部に排出された前記画像形成済シートの位置を整合する整合部材と、を備え、
前記排出手段が前記第1積載部に排出した第1画像形成済シートを前記整合部材が前記幅方向の目標位置に整合した後、前記排出手段が前記第1画像形成済シートに続いて排出する第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置した後、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの外側から、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合する第1整合動作と、
前記排出手段が前記第1積載部に排出した前記第1画像形成済シートを前記整合部材が前記幅方向の前記目標位置に整合した後、前記排出手段が前記第1画像形成済シートに続いて排出する前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置することなく、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの外側から、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合する第2整合動作と、を実行可能であり、
前記第1画像形成済シート及び前記第2画像形成済シートの画像比率が第1の値であるとき、前記第1整合動作を実行し、前記第1画像形成済シート及び前記第2画像形成済シートの画像比率が前記第1の値より小さい第2の値であるとき、前記第2整合動作を実行する、
ことを特徴とするシート積載装置。
【請求項2】
前記第1整合動作における前記目標位置に対応する前記整合部材の位置は、前記排出手段が排出する前記第2画像形成済シートの前記側端に対して、前記幅方向において前記第2画像形成済シートの内側であり、
前記第1整合動作において、前記第1画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合した後、前記整合部材が前記幅方向に移動していない状態で、前記排出手段が前記第2画像形成済シートを排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート積載装置。
【請求項3】
前記第1積載部に画像形成済シートが積載されていない場合において、前記排出手段が排出する前記第1画像形成済シートの前記側端に対して、前記幅方向において前記第1画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置した後、前記排出手段が排出した前記第1画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第1画像形成済シートの外側から、前記排出手段が排出した前記第1画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合する動作を実行可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート積載装置。
【請求項4】
前記第1積載部に画像形成済シートが積載されていない場合において、
前記排出手段が排出する前記第1画像形成済シートの前記側端に対して、前記幅方向において前記第1画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置する状態で、前記排出手段が前記第1画像形成済シートを排出し、その後、前記排出手段が排出した前記第1画像形成済シートの前記側端に対して、前記幅方向において前記第1画像形成済シートの外側に前記整合部材が移動してから、前記整合部材が前記第1画像形成済シートを前記目標位置に整合する動作を実行可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート積載装置。
【請求項5】
前記整合部材は、それぞれ前記幅方向に移動可能な一対の整合部材の一方である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート積載装置。
【請求項6】
前記第1積載部に積載され、前記一対の整合部材が整合した複数枚の前記画像形成済シートによって形成されるシート束に処理を施す処理手段と、
前記処理手段によって前記処理を施された前記シート束を排出するシート束排出手段と、
前記シート束排出手段によって排出された前記シート束が積載される第2積載部と、をさらに備え、
前記第1整合動作における前記目標位置は、前記排出手段が排出する前記画像形成済シートの位置に対して前記幅方向の一方側にずれており、
前記第1整合動作によって前記一対の整合部材が整合した前記複数枚の前記画像形成済シートによって形成される前記シート束に対して前記処理手段が処理を施す場合、前記処理手段が前記処理を行うための位置に予め移動した後に、前記一対の整合部材が前記目標位置から前記幅方向の他方側に移動させた前記シート束に対して前記処理手段が前記処理を施す、
ことを特徴とする請求項5に記載のシート積載装置。
【請求項7】
シートに画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像を形成された画像形成済シートを積載する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート積載装置と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを積載するシート積載装置及びシートに画像を形成する画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式又はインクジェット方式等の画像形成部を備えた画像形成装置と、画像形成装置によって画像を形成されたシートに綴じ処理等の後処理を施して積載するシート積載装置とを含む画像形成システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
画像形成された直後のシートは、インクによって湿っていたり、トナーが十分に冷えていなかったりすることによって、他のシートやシート積載装置のトレイ等に対する摺動性が不十分である場合がある。このような事情でシートの貼り付きが生じると、シートが正常に排出されないことで、シートに対する処理が妨げられ、或いは積載されたシートの整列不良が生じる可能性がある。そこで、特許文献2では、インクジェット方式の印刷ユニットによって画像が印刷された用紙を後処理ユニットに搬送する中間ユニットに、用紙を乾燥させるための送風機を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-16970号公報
【特許文献2】特開2018-16068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の中間ユニットのように、シートを乾燥させるためのユニットを画像形成装置とシート積載装置との間に配置すると、装置の構成が複雑になって製造コストを増加させてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成で、シートの貼り付きを低減することが可能なシート積載装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、画像形成装置によって画像を形成された画像形成済シートを積載するシート積載装置であって、前記画像形成済シートを排出方向に排出する排出手段と、前記排出手段によって排出された前記画像形成済シートが積載される第1積載部と、鉛直方向において前記排出手段よりも下方に設けられ、前記排出方向と直交し、且つ前記排出手段により排出される前記画像形成済シートの面に沿った幅方向に移動可能であり、前記排出手段によって前記第1積載部に排出された前記画像形成済シートの前記排出方向に沿った側端に当接して前記第1積載部に排出された前記画像形成済シートの位置を整合する整合部材と、を備え、前記排出手段が前記第1積載部に排出した第1画像形成済シートを前記整合部材が前記幅方向の目標位置に整合した後、前記排出手段が前記第1画像形成済シートに続いて排出する第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置した後、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの外側から、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合する第1整合動作と、前記排出手段が前記第1積載部に排出した前記第1画像形成済シートを前記整合部材が前記幅方向の前記目標位置に整合した後、前記排出手段が前記第1画像形成済シートに続いて排出する前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの内側に前記整合部材が位置することなく、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートの前記側端に対して前記幅方向において前記第2画像形成済シートの外側から、前記排出手段が排出した前記第2画像形成済シートを前記整合部材が前記目標位置に整合する第2整合動作と、を実行可能であり、前記第1画像形成済シート及び前記第2画像形成済シートの画像比率が第1の値であるとき、前記第1整合動作を実行し、前記第1画像形成済シート及び前記第2画像形成済シートの画像比率が前記第1の値より小さい第2の値であるとき、前記第2整合動作を実行する、ことを特徴とするシート積載装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成で、シートの貼り付きを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る画像形成システムの概略図。
図2】本実施形態の後処理ユニットの概略図。
図3】本実施形態の制御構成を示すブロック図。
図4】本実施形態の後処理ユニットの動作を説明するための図。
図5】本実施形態の後処理動作の手順を示すフローチャート。
図6】本実施形態の幅整合部材の動作について説明するための図。
図7】本実施形態の幅整合部材の動作について説明するための図。
図8】本実施形態の幅整合部材の動作について説明するための図。
図9】本実施形態の幅整合部材の動作について説明するための図。
図10】本実施形態の幅整合部材の動作について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る画像形成システム100の全体構成を概略的に示している。同図に示すように、画像形成システム100は、画像形成装置101と、これに併設されるシート処理装置102とから構成される。画像形成装置101は、給送ユニット10と、画像形成ユニット20と、画像読取ユニット30とで構成される。シート処理装置102は、中継搬送ユニット60と後処理ユニット70とで構成される。
【0012】
[画像形成装置]
まず、画像形成装置101について説明する。画像形成装置101の給送ユニット10は、画像形成装置101の下部に設けられており、それぞれ異なるサイズの画像形成用シートを収納する複数のカセット機構10a,10b,10c,10d及び大容量カセット10eで構成され、例えば、ユーザなどの操作者が入力部86(図3)により指定したサイズのシートを給送経路P1に繰り出す。また、給送ユニット10は、手差しトレイ10fも含む。各カセット機構10a,10b,10c,10dは、装置ハウジング1から着脱可能に設置され、それぞれ内部のシートを1枚ずつ分離する分離機構と、シートを繰り出す給送機構とが内蔵されている。
【0013】
給送経路P1には、大容量カセット10eと、手差しトレイ10fとが接続されている。この大容量カセット10eと手差しトレイ10fとは、装置ハウジング1の一方側の側方(図1における右側)に設けられており、装置ハウジング1には各々に対応するシート供給口(給送開口)16,17が設けられている。大容量カセット10eは、大量に消費するサイズのシートを収納するオプションユニットで構成される。手差しトレイ10fは、分離給送が困難な厚紙シート、コーティングシート、フィルムシートなどの特殊シートを供給可能なように構成される。つまり、本実施形態において用いられるシートには、印刷用の普通紙以外の種々のシート材が含まれる。シート材の例としては、薄紙及び厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シートのようなプラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材が挙げられる。
【0014】
給送経路P1には、各カセット機構10a,10b,10c,10d及び大容量カセット10eから給送経路P1a,P1b,P1eを経由して供給されるシートを下流側に給送する搬送ローラ対11と、レジストレーションローラ対12とが設けられている。レジストレーションローラ対12は、給送経路P1の終端部に設けられ、シート先端(搬送方向の下流端)に当接することでシートの斜行を補正した後、画像形成ユニット20へ向けてシートを送り出す。また、手差しトレイ10fから供給されるシートは、給送経路P1fを経由してレジストレーションローラ対12に送られる。
【0015】
なお、各カセット機構10a,10b,10c,10d及び大容量カセット10eにはそれぞれ給送機構の例であるピックアップローラ13と分離機構の例である搬送ローラ対14とが設けられており、これらによってシートを1枚ずつ給送経路P1に供給する。装置ハウジング1内で手差しトレイ10fのシート供給口17の近傍には、搬送ローラ対15が設けられており、ユーザによって手差し供給されたシートをレジストレーションローラ対12に向けて搬送する。
【0016】
画像形成ユニット20は、カセット機構10aの上方で、搬送パスP2上に設けられており、例えばインクジェット方式の印刷ヘッドを有する画像形成部21を備えている。画像形成部21は搬送パスP2を挟んで搬送ベルト22と対向する位置に設けられている。画像形成部21は搬送パスP2に沿って搬送ベルト22に支持されて搬送されるシートにインクなどの液体を噴射することによりシートに液体を付着させて印刷する。本実施形態の画像形成部21は、シートの搬送方向と交差する方向(特に、搬送方向に直交する幅方向)の所定範囲に亘ってインクを同時に噴射可能なラインヘッドで構成されている。
【0017】
なお、本開示の画像形成部はインクジェット方式に限定されることはなく、例えば回転する感光ドラムと、その周囲に配置された、レーザ発光器やLED発光器などの発光器、現像器及びクリーナーと、を備えた電子写真ユニットとしてもよい。その場合、感光ドラムに発光器で光学的に潜像を形成し、この潜像に現像器を用いてトナーを付着させる。この感光ドラムに画像形成するタイミングに合わせて、搬送パスP2にシートを搬送し、転写チャージャーで感光ドラムから該シート上にトナー像を転写する。転写チャージャーのシート搬送方向下流側に配置されている定着ローラは、シートに転写されたトナー像に対して、ハロゲンヒータ等の熱源が発する熱を加えてトナーを溶融させる。その後、温度低下に伴ってトナーがシートに固着することにより、シートに定着した画像が得られる。
【0018】
画像形成ユニット20によって画像形成処理が施されたシートは、シート反転パスP3か、第1排出部40aに排出するための搬送パスP4か、中継搬送ユニット60に搬送するための搬送パスP5に搬送される。経路切換部23は、シートの搬送先に応じて不図示の切換部材が移動し、シートを搬送パス(P3,P4,P5)のいずれかに案内する。
【0019】
シート反転パスP3は、シートの表裏を反転させるための搬送パスで、両面印刷の際に使用したり、片面印刷でも、フェイスダウン(シートの印刷面を下に向けた状態)で後述する後処理ユニット70に搬送したりする場合に用いる。
【0020】
搬送パスP4はシートを第1排出部40aに排出するための搬送パスである。シートを第1排出部40aに排出する場合は、経路切換部23により搬送パスP2から搬送パスP4にシートが受け渡され、シートの印刷面(両面印刷の場合は2回目に印刷した面)が下方を向いたフェイスダウンの状態でシートがシート載置面(載置部)41に排出される。搬送パスP4は、略水平の搬送パスP2から経路切換部23を起点に上方に湾曲(円弧を描くように)しており、湾曲部の終端から装置ハウジング1に設けられたシート排出口24に向かうように形成されている。
【0021】
シートが中継搬送ユニット60に搬送される場合は、経路切換部23による経路の切り替えは行わず、シートは搬送パスP2に沿ってストレートに搬送される。なお、シートを中継搬送ユニット60に搬送する際に、フェイスアップ(シートの印刷面を上に向けた状態)で搬送する場合はシート反転パスP3による反転処理は行わずに、フェイスダウンで搬送する場合はシート反転パスP3を用いてシートの表裏を反転してから搬送する。
【0022】
画像読取ユニット30は、第1排出部40a及び搬送パスP4の上部に設けられており、原稿の画像を読み取る画像読取部33と、給送される原稿を載置する原稿給送トレイ31と画像読取部33で読取済みの原稿が排出される原稿排出トレイ32とで構成される。画像読取ユニット30は画像読取部33で読み取った原稿画像を画像データに光電変換して、電気信号として画像形成ユニットへ出力する。なお、原稿を載置するプラテンと、プラテンに沿って往復動するキャリッジと、キャリッジに設けられた画像読取部33とを用いて原稿の画像を読み取ってもよい。
【0023】
[シート処理装置]
次に、シート処理装置102について説明する。シート処理装置102の中継搬送ユニット60は、画像形成ユニット20で画像形成処理されたシートを後処理ユニット70に搬送するためのユニットで、経路切換部61を有している。経路切換部61は、シートを後処理ユニット70のスタックトレイ171に排出するための搬送パスP5と、シートを後処理ユニット70のユニットハウジング71上面のシート載置面71aに排出するための搬送パスP6と、で搬送パスを切り替える。搬送パスP5を通過するシートは排出ローラ62によって後処理ユニット70に向けて排出され、搬送パスP6を通過するシートは排出ローラ63によって後処理ユニット70のシート載置面71aに向けて排出される。後処理ユニット70のシート載置面71aは画像形成システム100の第2排出部40bを構成し、スタックトレイ171は画像形成システム100の第3排出部40cを構成する。
【0024】
シート処理装置102のシート排出先をスタックトレイ171とシート載置面71aとのどちらにするかは、シートに対して綴じ処理等の後処理を行うか否かで切り替える。本実施形態では、シート載置面71aに対してシートをストレートに排出するため、シートをフェイスダウンで排出したい場合は第1排出部40aに、フェイスアップで排出したい場合は第2排出部40bに排出するようにモード分けしてもよい。なお、搬送パスP6に設けられた排出ローラ63がシート搬送方向と直交する幅方向に移動可能に構成された場合は、第2排出部40bではシートを幅方向にシフトさせることでジョグ排出をすることができる。
【0025】
後処理ユニット70は、中継搬送ユニット60から受け取ったシートに対して綴じ処理等の後処理を施すユニットである。本実施形態の後処理ユニットは、搬送された複数のシートを部揃え集積してシート束を形成し、そのシート束に対して綴じ処理をするシート綴じ処理機構が搭載されている。
【0026】
なお、本実施形態では、画像形成装置101と後処理ユニット70との間に中継搬送ユニット60が介在する構成を説明するが、後処理ユニット70を画像形成装置101に直接連結してもよい。つまり、後処理ユニット70は、中継搬送ユニット60を組み合わされていない単独のユニットでもシート処理装置として機能させることができる。また、後処理ユニット70は、シートに処理を施す機能を有するか否かに関わらず、画像形成装置等から受け取ったシートを積載するシート積載装置の例でもある。
【0027】
図2を用いて、後処理ユニット70の構成を説明する。後処理ユニット70はユニットハウジング71内に、シート供給口72、搬送パスP5、排出ローラ73、処理トレイ74、シート搬入部材(75a、75b)、ステープル綴じ処理部76、シート端規制部材77、幅整合部材79、及び、束排出部材78が格納され、シート供給口72の反対側に上下動可能なスタックトレイ171が設けられている。排出ローラ73は本実施形態の排出手段であり、処理トレイ74は本実施形態の第1積載部であり、ステープル綴じ処理部76は本実施形態の処理手段であり、スタックトレイ171は本実施形態の第2積載部であり、束排出部材78は本実施形態のシート束排出手段である。
【0028】
シート搬入部材はパドル75aとローレットベルト75bとで構成され、処理トレイ74上のシート後端(排出ローラ73により搬送されるシートの搬送方向上流端)をシート端規制部材77に突き当てる方向にシートを搬送するための部材である。即ち、中継搬送ユニット60及びシート供給口72を介して画像形成装置101から受け取ったシートは、排出ローラ73により搬送され、処理トレイ74に載置される。この際、パドル75a及びローレットベルト75bにより、排出ローラ73による搬送方向と逆方向にシートを搬送し、シートの端部をシート端規制部材77に突き当てる。シート端規制部材77は、後述する束排出部材78によりシートの排出方向に関して、処理トレイ74の上流端部に位置し、処理トレイ74に載置されたシートの上流端部を規制可能である。パドル75a及びローレットベルト75bはそれぞれシートから離間した退避位置とシートに接触して回転する作動位置との間で移動可能に構成され、作動位置において図2における反時計回り方向に回転することでシートを搬送する。
【0029】
幅整合部材79は、鉛直方向に関して排出ローラ73より下方、かつ、排出ローラ73によるシートの搬送方向に関して排出ローラ73より下流に配置される。幅整合部材79は、後処理ユニット70におけるシート幅方向(排出ローラ73によるシートの搬送方向と交差する方向、本実施形態では直交する方向)にそれぞれ移動可能な一対の整合板で構成され、シート幅方向に関して、処理トレイ74に載置されたシートの端部位置を規制する。幅整合部材79は、シートの側端(シート幅方向の端縁)から離間した退避位置と、シート幅方向に関してシートを整合する際の目標位置に対応する整合位置(作動位置)との間で移動可能に構成される。幅整合部材79は、少なくとも一方の整合部材が、シートの側端に接触しながら退避位置から作動位置に移動することで、処理トレイ74に排出されたシートを目標位置に整合させる。
【0030】
なお、シートを整合する際の目標位置はシートのサイズや綴じ処理の有無等の条件によって異なり、これに応じて幅整合部材79の退避位置及び整合位置も変化する。また、必ずしも両側の整合部材が移動する必要はなく、いずれか一方の整合部材は後処理ユニット70の枠体に対して固定の規制部材で、他方の整合部材のみが移動して固定の規制部材に対してシート幅方向の整合動作を行うようにしてもよい。
【0031】
ステープル綴じ処理部76は、処理トレイ74上でシート搬送方向及びシート幅方向において整合・集積されたシート束に対して綴じ処理を行うものである。ステープル綴じ処理部76はシート幅方向において移動可能に構成され、シート束のコーナー部やシート端規制部材77に接触するシート端縁の所定の位置に綴じ処理が可能である。なお、本実施形態ではステープル針を用いた針綴じ機構を採用しているが、ステープル針を用いない針無し綴じ機構を採用してもよく、針綴じ機構と針無し綴じ機構とをそれぞれ後処理ユニット70のフロント側(画像形成システム100の正面側、図1の手前側)とリア側(図1の奥側)にそれぞれ設けて、ユーザの設定に応じて針綴じと針無し綴じとを切り替えるようにしてもよい。
【0032】
束排出部材78はシート束の後端縁を押し出すことで処理トレイ74上のシート束をスタックトレイ171に排出する。束排出部材78は、シート束が形成されるまでは処理トレイ74の下方に退避しており、処理トレイ74上でシート束が形成された後に(綴じ処理を行う場合は綴じ処理を行った後)ガイド部材78aに沿って移動することでシート束の後端縁に接触して、シート束をスタックトレイ171に向けて押し出すように構成されている。なお、束排出部材78は、上述のようにステープル処理されたシート束以外に、ステープル処理されていないシート束も排出可能である。
【0033】
図4(A)~(D)は、後処理ユニット70によるステープル綴じ処理の基本的な手順を示している。中継搬送ユニット60から後処理ユニット70に受け渡されたシートSは、排出ローラ73によって処理トレイ74に排出される(A)。すると、パドル75a及びローレットベルト75bが作動位置に下降してシートSに順に接触し、シートSをシート端規制部材77へ向けて移動させる(B、C)。シート端規制部材77に当接して搬送方向の位置を整合されたシートSは、幅整合部材79によってシート幅方向の位置を整合される。このような整合動作が1枚のシートSが排出される度に繰り返され、シート束を形成すべき枚数(束形成枚数)のシートが整合・集積された状態になると、ステープル綴じ処理部76がシート束の所定の位置を綴じる。その後、束排出部材78がシート束SBの後端縁に当接して、シート束SBをスタックトレイ171に押し出す(D)。
【0034】
なお、ここまで記載した排出ローラ73、処理トレイ74、シート搬入部材(75a、75b)、ステープル綴じ処理部76、シート端規制部材77、幅整合部材79、及び束排出部材78の構成の詳細は、例えば特開2015-16970号公報等に記載されており、針綴じのみならず、針無し綴じやパンチ(穴あけ)、折り処理等のさまざまな後処理ユニットを適用することが可能である。また、綴じ処理を行わずにシートをシート幅方向にシフトしてスタックトレイ171に排出することもでき、これも後処理に含めることができる。シートを幅方向にシフトさせる場合は、幅整合部材79で整合する位置を変更するか、排出ローラ73がシート幅方向にシフトする機構によりシートの排出位置を変更することで達成できる。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の後処理ユニット70(及び中継搬送ユニット60)は、画像形成装置101の側方で置台50の上に設置されている。置台50は設置部51と脚部52と開口53とで構成され、画像形成装置101の側方に設けられたフック部材54を開口53に引っかけることで固定する。設置部51は不図示のスライドレールが設けられており、後処理ユニット70は図1の左右方向にスライド移動可能に構成されている。後処理ユニット70(及び中継搬送ユニット60)が画像形成装置101から離間することで、シートが詰まった際のジャム解消処理を行うことができる。
【0036】
後処理ユニット70が設置部51の先端側へ移動した際は、置台50に対して反時計回り方向に力がかかるが、脚部52がフック部材54と画像形成装置101の側面部1cに支えられるため、置台50が倒れることはない。
【0037】
[排出構成]
本実施形態では、画像形成システム100によって処理されたシートを排出する排出部が複数設けられている。第1排出部40aは、上述した通り、画像形成部21によって画像形成処理されたシートをフェイスダウンでストレート排出するか、シート反転パスP3でシートの表裏を反転してフェイスアップで排出するための排出部である。第1排出部40aは画像形成装置101の所謂胴内排出部であって、装置ハウジング1の立ち面1a、天井面1b及び載置面41で区画された空間で構成される。
【0038】
第2排出部40bは、後処理ユニット70のユニットハウジング上面(71a)を用いた排出部で、画像形成部21によって画像形成処理されたシートをフェイスアップでストレート排出するか、シート反転パスP3でシートの表裏を反転してフェイスダウンで排出する。つまり、第1排出部40aと第2排出部40bとはユーザの設定によってどちらにも排出可能にされるが、生産性を考えると、フェイスダウンの場合は第1排出部40aへ、フェイスアップの場合は第2排出部40bへ排出することが望ましい。
【0039】
また、画像形成部21による画像形成処理によってシートに付着するインクの量によって(例えば、後述の画像比率に関する情報に基づいて)第1排出部40aに排出するか第2排出部40b排出するかを振り分けることも可能である。例えば、画像比率が低い場合はシートに付着したインクを乾燥させる必要が無いので、上述の通りフェイスダウンの場合は第1排出部40aへ、フェイスアップの場合は第2排出部40bへそのまま排出する。しかし、画像比率が高い場合はシートに付着したインクを乾燥させる必要があるため、一旦シート反転パスP3にシートを搬送して排出までの時間を稼ぐことでシートを乾燥させる。シートをシート反転パスP3で搬送した後は第1排出部40aへはフェイスアップのシートが排出され、第2排出部40bへはフェイスダウンのシートが排出される。なお、シート反転パスP3にファン等の乾燥部材を設けるとより乾燥効果を高めることができる。
【0040】
第3排出部40cは後処理ユニット70のスタックトレイ171で、後処理ユニット70で後処理されたシートが排出される。このスタックトレイ171は昇降可能に構成されており、シート積載量に応じて昇降する。また、本実施形態の後処理ユニット70はシートを幅方向にシフトさせる機構を有しているため、ステープル綴じ処理をしなくてもスタックトレイ171上でシートを幅方向にシフトさせた状態で排出させることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、画像比率に関する情報に基づいて後処理ユニット70による後述の処理が行われる。しかし、例えば、後処理ユニット70による処理に適した範囲の限度を超えた高い画像比率の画像が形成されたシート(例えば、濃い色の全面ベタ画像等が印刷されたシート)は、第1排出部40aか第2排出部40bに排出されるようにしてもよい。また、後処理ユニット70で後処理を行う場合はストレート排出に比べて生産性が落ちてしまう。よって、生産性重視のモードの場合も第1排出部40aか第2排出部40bに排出するようにしてもよい。
【0042】
[制御構成]
図3は、本実施形態の画像形成システム100の制御構成を示した図である。画像形成装置101とシート処理装置102とはそれぞれ制御CPU81,87を有しており、相互に情報をやりとりすることができる。画像形成装置101の第1制御CPU81は、画像形成制御部82と、第1駆動制御部83と、読取制御部84と第1信号制御部85に接続されている。読取制御部84は、画像読取ユニット30の画像読取部33が読み取った画像データを取得し、印刷データとして第1制御CPU81に送る。第1制御CPU81は読取制御部84から受け取った印刷データを画像形成制御部82に送り、画像形成制御部82は画像形成部21を制御して画像形成処理を行わせる。また、第1制御CPU81は第1信号制御部85に接続された各種センサからの入力情報(シート端部の検知等)に応じて第1駆動制御部に命令を出し、シートを搬送するローラの駆動モータ(搬送駆動モータ)や切換部材駆動部を制御してシートを搬送させる。また、第1制御CPU81は、ユーザからの印刷モード、排出モード、後処理モード等の情報を入力する入力部86と接続されており、入力された情報に応じて各制御部を制御し、またシート処理装置102の第2制御CPU87にモード情報を送信する。
【0043】
入力部86からは「画像形成モード」と「後処理モード」の設定を行う。画像形成モードはカラー・モノクロ印刷、両面・片面印刷などのモード設定と、シートサイズ、シート種類(シートの坪量、材質等)、プリントアウト部数、拡大・縮小印刷、などの画像形成条件を設定する。また「後処理モード」は、例えば「プリントアウトモード」「ステープル綴じ処理モード」「エコ綴じ処理モード」「ジョグ仕分けモード」などに設定する。なお図示の装置には「マニュアル綴じモード」が設けられ、このモードは画像形成装置101の第1制御CPU81とは別にオフラインでシート束の綴じ処理動作を実行する。
【0044】
シート処理装置102の第2制御CPU87は後処理ユニット70に設けられており、この第2制御CPU87で後処理ユニット70だけでなく中継搬送ユニット60の動作も制御する。第2制御CPU87は、第2駆動制御部88と第2信号制御部89とに接続されており、第2制御CPU87は第2信号制御部89に接続された各種センサからの入力情報(シート端部の検知等)に応じて第2駆動制御部88に命令を出し、シート処理装置102の動作を制御する。第2駆動制御部88は、第2制御CPU87の命令に基づき、シートを搬送するローラを駆動する搬送駆動モータM1や、中継搬送ユニット60の経路切換部61に配置された切換部材を駆動する切換部材駆動部M2を制御してシートを搬送させる。また、第2駆動制御部88は、ステープル綴じ処理部76を駆動するステープル駆動部M3、幅整合部材79を駆動する幅整合駆動部M4、並びにパドル75a及びローレットベルト75bを駆動する掻込み駆動部M5とも接続されており、これらの駆動部を制御することで後処理ユニット70に後処理動作を実行させる。
【0045】
また、第1制御CPU81は第2制御CPU87に後処理モードとシート枚数情報(束形成枚数)、部数情報及び画像形成するシートのシート属性情報(シートのサイズや材質等の情報)などのデータを転送する。これに加えて、第1制御CPU81は画像形成処理を終了する都度、ジョブ終了信号を第2制御CPU87に転送する。また、本実施形態では、印刷情報、特にシートの画像比率に関する情報(例えば、インクの吐出量)を第1制御CPU81が第2制御CPU87に転送する。印刷情報は、シートの画像比率に関する情報の他に、画像読取ユニット30で読み取った画像情報、もしくはその画像情報から算出したインク吐出量等が含まれる。
【0046】
ここで、「画像比率(印字率)」とは、シートの画像形成可能な全領域の面積に対して画像が形成される領域の面積の比率である。例えば、シートに対して画像形成部21が画像形成可能な全領域に最大濃度の画像を形成する全面ベタ画像は、画像比率100%である。インクジェット方式の画像形成装置の場合、画像比率が高いと、そのシートに形成する画像に使用するインクの量も多くなる。なお、以下の説明において、画像比率に基づく動作の制御に用いられる、画像比率に関する情報の種類は特に限定されない。画像比率に関する情報の例としては、インクジェット方式におけるインクの吐出量を積算したカウント値、電子写真方式において画素毎のドットの有無を指定する信号を積算したカウント値(ビデオカウント値)が挙げられる。
【0047】
[画像比率とシートの貼り付き]
ところで、インクジェット方式の画像形成ユニット20によって画像形成処理された直後のシートはインクで湿っているため、他のシートやトレイ等に対する摺動性が不十分である場合がある。このようなシートが排出ローラ73によって排出される際に、後処理ユニット70の処理トレイ74又はスタックトレイ171に既に積載されているシートや、処理トレイ74又はスタックトレイ171の表面にシートが貼り付いて正常に排出されない場合がある。例えば、排出ローラ73によって排出される後続シートの先端が、処理トレイ74に積載されている先行シートの先端に届く前に先行シートと後続シートの貼り付きが生じると、後続シートが変形してシワがよった状態となってステープル綴じ処理部76の動作を妨げたり、先行シートと後続シートの位置がずれて整列不良となったりする可能性がある。
【0048】
通常、シートが湿っているほどシートの摺動性は低下するため、このようなシートの貼り付きはシートの画像比率が高いほど生じやすくなる。また、このようなシートの貼り付きはインクジェット方式の画像形成装置に限らず、例えば電子写真方式の画像形成装置でも発生し得る。電子写真方式の場合、定着ローラによって加熱されたトナーの温度が十分に低下していない状態でシートが積載されると、トナーが接着剤として働いてシート同士の貼り付きが生じたり、一部のトナーが他のシートに転移してシートの汚れの原因となったりする可能性がある。
【0049】
[後処理動作の手順]
そこで、本実施形態では、シートの画像比率が高い場合に、幅整合部材75が排出ローラ73によって排出されるシートの側端位置より内側にある状態でシートの排出を行うことでシートの貼り付きを低減する。以下、本実施形態における後処理動作の手順について、図6図10を参照しながら図5のフローチャートに沿って説明する。なお、ここでは後処理動作のモードとして「ステープル綴じ処理モード」が選択されているものとする。また、フローチャートの各工程は、本実施形態の制御手段である第2制御CPU87が、シート処理装置に搭載された記憶装置から制御プログラムを読み出して実行することによって処理されるものとする。
【0050】
画像形成システム100に対して、ステープル綴じ処理の指令を含む画像形成ジョブが投入されると、画像形成装置101の第1制御CPU81はシート処理装置102の第2制御CPU87に対して当該ジョブに関する情報(ジョブ情報)を転送する。これにより、シート処理装置102は後処理動作に関する情報を取得する(S01)。ここで転送される情報には、上述した通り、後処理モード、シート枚数情報(束形成枚数)、部数情報、画像形成するシートのサイズ及び種類、並びにシートの画像比率に関する情報が含まれる。
【0051】
取得したジョブ情報において「ステープル綴じ処理モード」が選択されているとき、第2制御CPU87は、綴じ処理(S15)を実行する前に、ステープル綴じ処理部76を予め綴じ位置に対応する所定位置へ移動させる(S02)。このような処理を行う理由は後述する。
【0052】
次に、取得したジョブ情報の内、シートの画像比率に関する情報を参照することで、シートの画像比率が予め定められた閾値以上であるか否かが判定される(S03)。本実施形態では、1部のシート束全体に対して、S04~S15の動作(貼り付き防止モード)又はS21~S36の動作(通常モード)を選択する。そのため、例えば、シート束を構成する各シートの画像比率を閾値と比較し、いずれかのシートの画像比率が閾値以上であった場合にS03の判定結果を「Y」とし、すべてのシートの画像比率が閾値未満であったときにS03の判定結果を「N」とする。
【0053】
画像比率の閾値は、例えば最大濃度のベタ塗画像を形成するためのインク吐出量を100%として、70%とする。この数値に限らず、例えば閾値を60%としてもよく、又は80%としてもよい。また、複数枚のシートの画像比率について判断する方法は上述したものに限らない。例えば、処理トレイ74の上で重なり合う2枚のシートについて、互いに対向するシート面の画像比率の平均を求めて、いずれかのシートの組についての画像比率の平均が閾値以上であるときに、複数枚のシートの画像比率が閾値以上であると判断してもよい。
【0054】
(貼り付き防止モード)
貼り付き防止モードでステープル綴じを実行するとき(S03:Y)、まず、フロント側及びリア側の整合板79f,79rが、シート幅方向におけるシート排出位置Xs,Ysの内側の位置X1,Y1に移動させられる(S04、図6(A)参照)。ただし、フロント側の整合板79fは、幅整合部材79の内、画像形成システム100の正面側に位置する整合板であり、リア側の整合板79rは画像形成システム100の背面側に位置する整合板である。また、シート排出位置Xs,Ysとは、排出ローラ73によって排出されつつあるシートの側端の位置を指す。
【0055】
後処理ユニット70が画像形成装置101によって画像形成された1枚目のシートS1を受け取ると、排出ローラ73はシートS1を搬送方向D1に搬送して処理トレイ74に排出する(S05)。このとき、1枚目のシートS1はフロント側及びリア側の整合板79f,79rの上面を滑るようにして排出されるため、整合板79f,79rを退避させた状態でシートS1を排出する場合に比べて、処理トレイ74及びスタックトレイ171に対する接触面積が小さくなり、接触圧も低減される。また、スタックトレイ171に別のシート束が積載されている場合、積載されているシート束の最上位のシートに対する1枚目のシートS1の接触圧も低減される。従って、1枚目のシートS1とトレイ又はシートとの貼り付きが生じることなく、シートS1は円滑に排出される。
【0056】
1枚目のシートS1が処理トレイ74に排出された後、リア側の整合板79rは整合位置Xaへ、フロント側の整合板79fは退避位置Y2へ移動させられる(S06、図6(B)参照)。整合位置Xa及び退避位置Y2は、シート幅方向に関してシート排出位置Xs,Ysより外側にある。整合板79f,79rの移動により、シートS1の側部が整合板79f,79rの上面から落下し、シートS1はシート幅方向における全域に亘って処理トレイ74に支持された状態となる。
【0057】
次に、パドル75a及びローレットベルト75bが作動位置に下降してシートS1に順に接触して、シートS1を排出ローラ73の搬送方向D1とは反対の方向D2に移動させる(S07、図7(A)参照)。これにより、シートS1がシート端規制部材77に当接し、搬送方向の位置が整合される。さらに、フロント側の整合板79fが、シートS1の側端に接触しながら整合位置Yaまで移動することで、シートS1のシート幅方向の位置が整合される(S08、図7(B)参照)。
【0058】
貼り付き防止モードにおいては、1枚目のシートS1に対する整合動作が終わった後もフロント側の整合板79fを退避させずに、排出ローラ73に2枚目のシートS2を排出させる(S09、図8(A)参照)。つまり、2枚目のシートS2が排出される時点で、フロント側の整合板79fはシート排出位置Ysより内側の整合位置Yaに留まっている。その結果、2枚目のシートS2はフロント側の整合板79fの上面を滑るようにして排出されることになり、整合板79fを退避させた状態でシートS2を排出する場合に比べて、シートS1に対する接触面積が小さくなり、接触圧も低減される。従って、シート同士の貼り付きが生じることなく、シートS2は円滑に排出される。
【0059】
次に、フロント側の整合板79fは退避位置Y2へ移動させられる(S10、図8(B)参照)。これにより、シートS2の側部が整合板79fの上面から落下する。その後、パドル75a及びローレットベルト75bによって搬送方向の位置が整合される。(S11、図9(A)参照)。さらに、フロント側の整合板79fが、シートS2の側端に接触しながら整合位置Yaまで移動することで、シートS2のシート幅方向の位置が整合される(S12、図9(B)参照)。
【0060】
S09~S12の動作は、3枚目以降のシートに対しても繰り返し実行される。このとき、排出ローラ73から排出される後続シートが、シート排出位置Ysより内側に位置するフロント側の整合板79fの上面を滑るようにして排出されるため、後続シートは処理トレイ74に既に積載されている先行シートに貼り付くことなく円滑に排出される。
【0061】
シート束を形成すべき枚数(束形成枚数)のシートが処理トレイ74の上に整合・集積された状態になると(S13:Y)、フロント側及びリア側の整合板79f,79rが共にフロント側へ移動することで、シート束SBを整合動作の目標位置から綴じ処理を行うための位置(綴じ位置)へとシフトさせる(S14、図10(A)参照)。そして、ステープル綴じ処理部76がシート束SBの所定の位置を綴じた後(S15)、束排出部材78によってシート束SBがスタックトレイ171に排出される(S16、図10(B)参照)。
【0062】
ここで、上記S2における『所定位置』とは、S15の綴じ処理においてシート束SBの綴じるべき部位に対応するステープル綴じ処理部76の位置を指す。従って、貼り付き防止モードでシート束SBのフロント側のコーナー部C1(図10(A))を綴じるとき、S2の実行により、ステープル綴じ処理部76はシート束SBが綴じ位置にある場合のコーナー部C1に対応する位置まで予め移動させられる。そして、シート排出位置よりリア側にずれた目標位置に整合・集積されたシート束がS14のシフト動作によって綴じ位置に移動すると、ステープル綴じ処理部76による綴じ処理が行われる。
【0063】
本実施形態に対する参考例として、シート排出位置よりリア側にずれた目標位置に整合・集積されたシート束SBの、リア側のコーナー部C2(図10(A))を綴じる場合について説明する。この場合、図10(A)の破線に示すように、コーナー部C2に対応する位置にあるステープル綴じ処理部76は、目標位置にあるシート束SBと干渉してしまう。これを避けるために、シート束SBの整合・集積が終わるまではステープル綴じ処理部76をシート束SBに干渉しない位置(例えば、一点鎖線の位置)に退避させておき、シート束SBを目標位置からフロント側にシフトさせた後に、ステープル綴じ処理部76を回動させてコーナー部C2に対する綴じ処理を行うことが考えられる。しかしながら、この方法では、シート束SBの整合・集積が終わってからシート束SBをスタックトレイ171に排出するまでの間に、ステープル綴じ処理部76の回動を待機する期間が発生する。
【0064】
これに対し、本実施形態では、貼り付き防止モードを実行する場合にはシート束SBのフロント側のコーナー部C1を綴じるように設定し、これに対応する位置にステープル綴じ処理部76を予め移動させておく。シート処理装置102の第2制御CPU87は、必要であれば、綴じる部位がフロント側のコーナー部C1となるように画像形成の方向や両面印刷の順序を調整するための情報を画像形成装置101に送るものとする。これにより、シート束SBの整合・集積が終わってからシート束SBをスタックトレイ171に排出するまでの間に、ステープル綴じ処理部76を改めて回動させる動作が発生しないため、後処理ユニット70の処理効率を向上させることができる。
【0065】
なお、図5に示す制御例では1枚目のシートの排出前にステープル綴じ処理部76を所定位置に移動させるものとして説明したが、S14のシフト動作が終わるまでにステープル綴じ処理部76の移動が行われていればよい。そのため、ステープル綴じ処理部76の移動を、S04~S13によるシート束の整合・集積と並行して行ってもよい。
【0066】
また、S14のシフト動作を省略し、シート束SBが整合動作の目標位置にある状態のままでフロント側のコーナー部C1を綴じるようにしても、上記参考例に比べて後処理ユニット70の処理効率を向上可能である。ただし、ステープル綴じ処理部76は後処理ユニット70の枠体に固定されたレールの上を移動するように構成されており、通常モードで綴じ処理を行う位置に加えて貼り付き防止モードの整合位置でも綴じ処理を実行できるようにするためには、レールの分岐箇所を増やす等の対処が必要となる。これに対し、本実施形態によれば、S14のシフト動作による移動後のシート束SBの位置を、通常モードの整合位置と一致するように設定することで、ステープル綴じ処理部76を移動させるための構成を複雑にすることなく、処理効率の向上という効果が得られる。
【0067】
(通常モード)
通常モードでステープル綴じを実行するとき(S03:N)、サイズによってシートの整合方法が変更される。つまり、シート幅がA4であるとき(S21:Y)、即ちシート幅方向の長さがA4の長辺に等しいときは、シート幅方向におけるシートの中央位置を基準とした整合動作が行われ、シート幅がA4以外であるときは(S21:N)、フロント側の整合板79fを基準とした整合動作が行われる。
【0068】
シート幅がA4であるとき(S21:Y)、まず、フロント側及びリア側の整合板79f,79rは、シート幅方向におけるシート排出位置Xs,Ysの外側に退避させられる(S22)。後処理ユニット70が画像形成装置101によって画像形成されたシートを受け取ると、排出ローラ73がシートを処理トレイ74に排出する(S23)。その後、パドル75a及びローレットベルト75bによって搬送方向の位置が整合され(S24)、さらに、両側の整合板79f,79rが退避位置から整合位置に移動することで、シートのシート幅方向の位置が整合される(S25)。以上の動作は1枚のシートが排出される度に繰り返し実行され、束形成枚数のシートが処理トレイ74の上に整合・集積された状態になると(S26:Y)、ステープル綴じ処理部76によって綴じ処理が行われ(S15)、束排出部材78によってシート束SBがスタックトレイ171に排出される(S16)。
【0069】
シート幅がA4以外であるとき(S21:N)、フロント側の整合板79fが整合位置に移動させられ(S31)、リア側の整合板79rは、シート排出位置Xsの外側に退避させられる(S32)。後処理ユニット70が画像形成装置101によって画像形成されたシートを受け取ると、排出ローラ73がシートを処理トレイ74に排出する(S33)。その後、パドル75a及びローレットベルト75bによって搬送方向の位置が整合され(S34)、さらに、リア側の整合板79rが退避位置から整合位置に移動することで、シートのシート幅方向の位置が整合される(S35)。以上の動作は1枚のシートが排出される度に繰り返し実行され、束形成枚数のシートが処理トレイ74の上に整合・集積された状態になると(S36:Y)、ステープル綴じ処理部76によって綴じ処理が行われ(S15)、束排出部材78によってシート束SBがスタックトレイ171に排出される(S16)。
【0070】
以上の通常モードでは、各整合板79f,79rが排出ローラ73によって排出されるシートから退避した位置にあるため、排出ローラ73によって排出されるシートは、処理トレイ74に既に積載されているシートに摺接しながら移動する。しかし、通常モードが実行されるのはシートの画像比率が低い場合であるため、シートの貼り付きが生じる可能性は低い。また、通常モードでは、シートの整合・集積が完了した後、シート束をシート幅方向にシフトさせる動作(S14)を行わずに、綴じ処理及びスタックトレイ171への排出を行うため、貼り付き防止モードに比べて、ジョブの投入から最初のシート束が排出されるまでの時間が短いという利点がある。
【0071】
(本実施形態のまとめ)
以上説明した通り、後処理ユニット70は、処理トレイ74に排出されたシートを整合部材の例であるフロント側の整合板79fによって幅方向の目標位置に整合した後、整合板79fがシート排出位置の内側にある状態で、排出ローラ73によってシートを排出し、その後、整合板79fをシートの側端位置より外側に移動させてから、整合板79fによりシートを目標位置に整合する動作(S09~S12)を行う。言い換えると、本実施形態のシート積載装置は、第1積載部に排出された第1シートを整合部材によって幅方向の目標位置に整合した後、整合部材が、幅方向に関して排出手段によって排出される第2シートの側端位置より内側にある状態で、排出手段によって第2シートを排出し、その後、整合部材を第2シートの側端位置より外側に移動させてから、整合部材により第2シートを目標位置に整合する、第1整合動作を行う。
【0072】
これにより、第2シートは第1積載部に既に積載されている第1シートに貼り付くことなく円滑に排出される。つまり、本実施形態の構成により、シートを乾燥させるためのユニットを画像形成装置とシート積載装置との間に配置することなく、簡素な構成でシートの貼り付きを低減することができる。
【0073】
また、本実施形態のシート積載装置は、整合部材が排出手段によって排出される第2シートの側端位置より外側にある状態で第2シートの排出を行い、その後、整合部材により第2シートを整合する、第2整合動作(S22~S25又はS32~S35)を実行可能であり、シートの画像比率が高い場合に第2整合動作を実行するようにしている。つまり、シートの画像比率(上記実施形態の場合、シート束を構成する各シートの画像比率の最大値)が第1の値である場合に第1整合動作が実行され、シートの画像比率が第1の値より小さい第2の値である場合に第2整合動作が実行されるようにしている。これにより、シートの貼り付きが懸念されるような画像比率の高いシートを積載する場合は第1整合動作によってシートの貼り付きを低減すると共に、シートの貼り付きが生じる可能性が低い画像比率の低いシートを積載する場合は第2整合動作によってシート積載装置の動作を効率化することができる。
【0074】
(変形例)
図5に示した制御例では、貼り付き防止モードにおける整合動作の目標位置がシート排出位置よりリア側にシフトしており、整合部材の例であるフロント側の整合板79fを往復移動させることでシートを整合するものとして説明した。これに代えて、又はこのような動作モードと選択可能な他の動作モードとして、目標位置をシート排出位置よりフロント側にシフトさせ、整合部材の他の例であるリア側の整合板79rを往復移動させることでシートを整合するようにしてもよい。つまり、整合動作の目標位置がシート排出位置に対して幅方向の一方側にずれており、シート束の整合後にシート束を幅方向の他方側にシフトさせる場合の一方側、他方側は限定されない。また、図5に示した制御例では、1つのシート束を単位として貼り付き防止モードと通常モードとを切換えるものとして説明したが、シート毎に動作モードを切換えてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、専ら画像比率に関する情報に基づいて貼り付き防止モードと通常モードとを切換えるものとして説明したが、シートの摺動性に影響を与える他の要因を勘案してモードを切換えてもよい。例えば、シートの摺動性を低下させる可能性がある要因として、(1)シートサイズ(排出ローラ73の搬送方向におけるシート長さ)が大きいこと、(2)シートの単位面積当たりの重さ(紙の場合、坪量)が大きいこと、(3)画像形成システム100の設置場所の周囲の空間の相対湿度(環境湿度)が高くインクが乾きにくいこと、が挙げられる。この内、シートサイズや重さについてはジョブ情報として取得可能であり、画像形成システム100の環境湿度に関する情報は、例えば、画像形成装置101に設置された温度及び湿度を測定するための環境センサによって取得することができる。
【0076】
なお、上記実施形態において第2制御CPU87が実行する処理の一部を、画像形成装置101の第1制御CPU81等、整合部材や第1積載部が搭載された筐体とは別の筐体に搭載されたプロセッサーが担うようにしてもよい。特に、画像形成装置101の第1制御CPU81が、画像比率に関する情報に基づいてシート処理装置102に貼り付き防止モードを実行させるか通常モードを実行させるかを判断して第2制御CPU87に指令を送信し、画像比率に関する情報そのものは第2制御CPU87に送らない形態であってもよい。そのような形態における「シート積載装置」とは、シートを積載するための機械的構成(処理トレイ74、幅整合部材79等)を備えた装置本体と、この装置本体に電気的に接続され、装置本体を作動させるための制御回路を構成する要素(プロセッサー、記憶装置等)とを備えたものを指す。
【0077】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0078】
21…画像形成部/70…シート積載装置(後処理ユニット)/73…排出手段(排出ローラ)/74…第1積載部(処理トレイ)/76…処理手段(ステープル綴じ処理部)/78…シート束排出手段(束排出部材)/79f,79r…整合部材(整合板)/100…画像形成システム/101…画像形成装置/171…第2積載部(スタックトレイ)/S09~S12…第1整合動作/S22~S25、S32~S35…第2整合動作
図1
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図10