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  • 特開-標的治療薬を含む併用療法 図1A
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  • 特開-標的治療薬を含む併用療法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038369
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】標的治療薬を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20230309BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/5025
A61K31/501
A61K47/54
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010971
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019570041の分割
【原出願日】2018-06-19
(31)【優先権主張番号】62/522,306
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503271718
【氏名又は名称】マドリガル ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Madrigal Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】イン、ウェイウェン
(72)【発明者】
【氏名】チムマナマダ、ディネシュ ユー.
(72)【発明者】
【氏名】プロイア、デイビッド
(57)【要約】
【課題】SDC-TRAP-0063および少なくとも1つのPARP阻害剤を含む医薬組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、結合部分にコンジュゲートしたエフェクタ部分を含む薬理学的化合物であって、結合部分がエフェクタ部分を目的の生物学的標的に指向させる薬理学的化合物を提供する。同様に、本発明は、化合物を含む組成物、キット、および方法(たとえば、治療、診断、および画像化)を提供する。化合物は、タンパク質と相互作用する結合部分とエフェクタ部分とを含むタンパク質相互作用結合部分-薬物コンジュゲート(SDC-TRAP)化合物として記載されている。たとえば、がんの治療を対象とする特定の実施形態において、SDC-TRAPは、エフェクタ部分としての細胞毒性剤にコンジュゲートしたHsp90阻害剤を含み得る。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩と、少なくとも1つのポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤を患者に投与することを含む、がんを治療する方法。
【請求項2】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が、週に1回投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が静脈内投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が、約25~約200mg/kgで投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が40mg/kgで投与される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が100mg/kgで投与される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記PARP阻害剤が、1日に1回で1週間に5日間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PARP阻害剤がタラゾパリブである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
タラゾパリブが経口投与される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
タラゾパリブが約0.3mg/kgで投与される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
PARP阻害剤がオラパリブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
オラパリブが経口投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オラパリブが約50mg/kgで投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
がんが、非小細胞肺がん、乳がん、および卵巣がんから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
患者がBRCA1変異体およびBRCA2変異体のうちの少なくとも一方である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
患者がBRCA1変異体およびBRCA2変異体のうちの少なくとも一方ではない、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合部分にコンジュゲートしたエフェクタ部分を含む薬理学的化合物であって、結合部分がエフェクタ部分を目的の生物学的標的に指向させる薬理学的化合物を含む併用療法に関する。併用療法は、がんなどの症状の化学療法の標的治療に使用できる。
【背景技術】
【0002】
化学療法は非常に進歩しているが、現在利用可能な治療薬および治療法は満足のいくものではなく、化学療法にて治療される疾患(たとえば、がん)と診断された患者の大部分の予後は不良である。多くの場合、化学療法の適用可能性および/または有効性、ならびに潜在的に毒性のある部分を使用する他の療法および診断は、望ましくない副作用によって制限されている。
【0003】
多くの疾患や障害は、特定の種類の細胞に特定のタンパク質が高レベルで存在することを特徴としている。場合によっては、これらの高レベルのタンパク質の存在は過剰発現によって引き起こされる。歴史的に、これらのタンパク質のいくつかは、治療用の分子にとって有用な標的であるか、疾患の検出のためのバイオマーカとして使用されてきた。有用な治療用標的として認識されているある種類の過剰発現細胞内タンパク質は、熱ショックタンパク質として知られている。
【0004】
熱ショックタンパク質(HSP)は、高温、および、紫外線、栄養欠乏、酸素欠乏のような他の環境ストレスに応じてアップレギュレートされるタンパク質の種類である。HSPには、他の細胞タンパク質(クライアントタンパク質と呼ばれる)のシャペロンとして機能し、適切なフォールディングと修復を促進し、誤って折り畳まれたクライアントタンパク質のリフォールディングを支援するなど、多くの既知の機能がある。HSPにはいくつかの既知のファミリーがあり、それぞれが独自のクライアントタンパク質のセットを有している。Hsp90は最も豊富なHSPファミリーの1つであり、ストレス状態にない細胞のタンパク質の約1~2%を占め、ストレス状態の細胞では約4~6%に増加する。
【0005】
Hsp90を阻害すると、ユビキチンプロテアソーム経路を介してそのクライアントタンパク質が分解される。他のシャペロンタンパク質とは異なり、Hsp90のクライアントタンパク質は、主にシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼまたは転写因子であり、そのクライアントタンパク質の多くはがんの進行に関与することが示されている。Hsp90は、突然変異解析によって正常な真核細胞の生存に必要であることが示されている。しかしながら、Hsp90は多くの腫瘍タイプで過剰発現しており、がん細胞の生存に重要な役割を果たしている可能性があり、がん細胞は正常細胞よりもHsp90の阻害に対してより感受性である可能性がある。たとえば、がん細胞は通常、フォールディングについてHsp90に依存する多数の変異および過剰発現腫瘍性タンパク質を有している。さらに、低酸素、栄養欠乏、アシドーシスなどにより腫瘍の環境は通常厳しいので、腫瘍細胞は生存のために特にHsp90に依存している可能性がある。さらに、Hsp90の阻害は、多くの腫瘍性タンパク質、ならびにホルモン受容体および転写因子の同時阻害を引き起こし、それは抗がん剤にとって魅力的な標的となる。上記を考慮すると、Hsp90は、ガネテスピブ、AUY-922、およびIPI-504のようなHsp90阻害剤(Hsp90i)化合物を含む、医薬品開発の魅力的な標的であった。同時に、早い段階では有望性を示したこれらの化合物のうちの特定のもの、たとえばゲルダナマイシンの前進は、それらの化合物の毒性プロファイルによって遅延することとなった。これまでに開発されたHsp90i化合物は、抗がん剤として大きな期待を示していると考えられているが、がん細胞におけるHsp90の遍在性を活用する他の方法は、これまで未開拓のままであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特定の疾患または障害に関連する細胞で過剰発現されるHsp90のようなタンパク質を選択的に標的とする治療用分子の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、SDC-TRAP-0063および少なくとも1つのPARP阻害剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物を作製および使用する方法も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SDC-TRAP-0063および少なくとも1つのPARP阻害剤を含む医薬組成物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、非小細胞肺がん(NSCLC)H460モデルにおけるタラゾパリブ、SDC-TRAP-0063、およびSDC-TRAP-0063とタラゾパリブとの組み合わせを用いた治療後の平均腫瘍体積の変化を示している。
図1B図1Bは、H460モデルにおけるタラゾパリブ、SDC-TRAP-0063、およびSDC-TRAP-0063とタラゾパリブとの組み合わせを用いた治療後の体重減少を示している。
図2図2は、卵巣PDXモデルにおけるオラパリブ、SDC-TRAP-0063、およびSDC-TRAP-0063とオラパリブとの組み合わせを用いた治療後の平均腫瘍体積の変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を、以下の図面および実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは例示の目的のみに使用されるものであり、限定されるものではない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0011】
本発明は、結合部分(binding moiety)にコンジュゲートしたエフェクタ部分(effector moiety)を含む分子であって、結合部分がエフェクタ部分を目的の生物学的標的に指向させる分子を提供する。本発明の分子は、所望の細胞、たとえばがん細胞内に本発明の分子を捕捉することにより、エフェクタ部分の選択的標的化を可能にする。これらの分子は、高濃度の細胞内タンパク質に選択的に結合するため、細胞内でトラップされる小分子薬物コンジュゲート(Small molecule Drug Conjugates that are TRAPped intracellularly、SDC-TRAP)として記載されている。本発明の分子を目的の細胞内にて捕捉させるために、SDC-TRAP分子の一部である結合部分は、標的細胞で過剰発現されるタンパク質と相互作用する。例示的な実施形態において、過剰発現されるタンパク質は特定の疾患または障害の特徴である。したがって、本発明は、本発明の分子を含む組成物、キット、および方法(たとえば、治療の、診断の、および画像化の方法)を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、SDC-TRAPにより、そうでなければ毒性および/または望ましくない全身への影響のために単独での投与には適さないエフェクタ分子の送達を可能にする。本明細書に記載の標的化送達分子(SDC-TRAP)を使用すると、現在の方法で投与するには毒性が強すぎるエフェクタ部分をより低いレベルで投与することができ、それにより毒性のエフェクタを亜毒性レベルで特定の罹患細胞に標的化することが可能になる。
【0013】
様々な例示的な態様および実施形態において、本発明は、がんを治療するための化合物を提供する。たとえば、SDC-TRAPは、Hsp90結合部分(すなわち、正常細胞と比較してがん細胞で過剰発現されるHsp90を標的とする)およびエフェクタ部分(たとえば、Hsp90結合部分は、細胞毒性剤にコンジュゲートされる(is conjugated)Hsp90阻害剤であり得る)を含み得る。上記のように、本発明は、Hsp90を標的とする結合部分および細胞毒性剤に関して本明細書に例示されている。本明細書で企図され、言及されまたは説明される他の結合部分は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0014】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAP分子は受動輸送によって細胞に入ることができる。SDC-TRAPが受動輸送によって細胞に入る能力は、SDC-TRAPの1つまたは複数の固有の化学的特性(たとえば、サイズ、重量、電荷、極性、疎水性など)の結果である可能性があり、SDC-TRAPの送達および/または作用を促進し得る。SDC-TRAPが受動輸送によって細胞に入る能力は機能的特性であり、その物理化学的特性とともに、SDC-TRAPを抗体薬物コンジュゲートのような他の標的分子と区別する。
【0015】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAP分子は能動輸送により細胞に入ることができる。SDC-TRAPが能動輸送によって細胞に入る能力は、SDC-TRAPの1つまたは複数の固有の化学的特性の結果であり、SDC-TRAPの送達および/または作用を促進し得る。SDC-TRAPの能動輸送の例には、たとえば、エンドサイトーシス、食作用、飲作用、およびエキソサイトーシスが含まれ得る。
【0016】
様々な態様および実施形態において、本発明は、約5000ダルトン未満(たとえば、約5000、2500、2000、1600、1550、1500、1450、1400、1350、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200未満など)の分子量を有するSDC-TRAPを提供する。同様に、様々な態様および実施形態において、本発明は、約2500ダルトン未満(たとえば、約2500、2000、1600、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100未満など)の分子量を有する結合部分、および/または約2500ダルトン未満(たとえば、約2500、2000、1600、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100未満など)の分子量を有するエフェクタ部分を提供する。SDC-TRAPの全体的な分子量、および結合部分、エフェクタ部分、および任意の連結部分の個々の重量は、SDC-TRAPの輸送に影響を与える可能性がある。様々な例において、より低い分子量がSDC-TRAPの送達および/または活性を促進できることが観察されている。
【0017】
様々な態様および実施形態において、本発明は、Hsp90結合部分およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、Hsp90結合部分およびエフェクタ部分はサイズがほぼ等しい(たとえば、Hsp90結合部分およびエフェクタ部分は、分子量において、約25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400未満などのダルトン差を有する)。様々な例において、分子量における差が低いとSDC-TRAPの送達および/または活性を促進できることが観察されている。
【0018】
様々な態様および実施形態において、本発明は、標的タンパク質と相互作用する結合部分(target protein-interacting binding moiety)を含むSDC-TRAPを提供する。標的タンパク質と相互作用する結合部分は、標的タンパク質の任意の1つまたは複数のドメインと選択的に相互作用することができる。たとえば、標的タンパク質がHsp90である場合、結合部分は、Hsp90のN末端ドメイン、Hsp90のC末端ドメイン、および/またはHsp90の中間ドメインと相互作用するHsp90結合部分であり得る。標的タンパク質の任意の1つまたは複数のドメインとの選択的相互作用は、標的組織および/または細胞内の分子標的の特異性および/または濃度を有利に高めることができる。
【0019】
様々な態様および実施形態において、本発明は、分子標的に対して高い親和性を有する結合部分を含むSDC-TRAPを提供する(たとえば、50、100、150、200、250、300、350、400nMまたはそれより高いK)。たとえば、結合部分がHsp90結合部分である場合、Hsp90結合部分は、50、100、150、200、250、300、350、400nMまたはそれより高いKを有し得る。分子標的に対して高い親和性を有する結合部分は、標的細胞および/または組織におけるSDC-TRAPの標的化を有利に改善する、および/または共鳴時間を有利に増加させることができる。
【0020】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分(たとえば、Hsp90結合部分)およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、対象に投与される場合、SDC-TRAPは血漿と比較して腫瘍細胞中で約2:1の比で存在する。比はより高くてもよく、たとえば、約5:1、10:1、25:1、50:1、75:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、またはそれ以上であってもよい。様々な態様および実施形態において、比は、投与から1、2、3、4、5、6、7、8、12、24、48、72時間またはそれ以上におけるものである。標的化の有効性は、血漿と比較した標的細胞および/または組織のSDC-TRAPの比に反映される。
【0021】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分(たとえば、Hsp90結合部分)およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAPは少なくとも24時間の間、標的細胞(たとえばがん)細胞に存在する。SDC-TRAPは、より長い間、たとえば、少なくとも48、72、96、または120時間、がん細胞に存在し得る。SDC-TRAPが所与の用量のSDC-TRAPの治療効果を増大させ、および/またはSDC-TRAPの投与間隔を増大させるために、SDC-TRAPがより長期間、標的細胞に存在することが有利であり得る。
【0022】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分(たとえば、Hsp90結合部分)およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、エフェクタ部分は少なくとも6時間にわたり放出される。エフェクタ部分は、より長い期間、たとえば、少なくとも12、24、48、72、96または120時間にわたり放出されてもよい。選択的な放出を使用して、エフェクタ部分の放出期間を制御、遅延、および/または延長することができ、したがって、特定の用量のSDC-TRAPの治療効果を高め、特定の用量のSDC-TRAPの望ましくない副作用を低減し、および/またはSDC-TRAPの投与間隔を広げることができる。
【0023】
様々な態様および実施形態において、本発明は、Hsp90結合部分およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、エフェクタ部分は標的(たとえば、がん)細胞内で選択的に放出される。選択的な放出は、たとえば、開裂可能な(cleavable)リンカー(たとえば、酵素的に開裂可能なリンカー)により達成され得る。選択的な放出は、望ましくない毒性および/または望ましくない副作用を減らすために使用できる。たとえば、SDC-TRAPは、エフェクタ部分が共役型では不活性(または比較的不活性)であるが、標的(たとえば、がん)細胞内で選択的に放出された後は活性(またはより活性)になるように設計できる。
【0024】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分(たとえば、Hsp90結合部分)およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、SDC-TRAPは、そうでなければ対象への投与に対して毒性または不適当となるエフェクタ部分の使用を可能にする。エフェクタ部分は、望ましくない毒性のために対象への投与に適さない可能性がある。そのような場合、選択的な放出のような戦略を使用して、望ましくない毒性に対処することができる。エフェクタ部分は、望ましくない標的化または標的化が欠如して、対象への投与に適さない可能性がある。標的化は、たとえば全身毒性を最小限に抑えながら、標的(たとえば、腫瘍)での局所毒性を最大限にすることにより、このような問題に対処できる。
【0025】
様々な態様および実施形態において、本発明は、結合部分(たとえば、Hsp90結合部分)およびエフェクタ部分を含むSDC-TRAPを提供し、結合部分は、単独で投与される場合の治療薬としては効果のない阻害剤(たとえば、Hsp90阻害剤)である。そのような場合、SDC-TRAPは、結合部分とエフェクタ部分との間の相加効果または相乗効果を促進し、それにより、有効性を有利に改善し、および/または治療の副作用を低減し得る。
【0026】
本発明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義する。さらに、パラメータの値または値の範囲が記載されている場合は常に、記載された値の中間の値および中間の範囲も本発明の一部であることを意図していることに留意されたい。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、使用される用語は特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0027】
定義
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書では、特に対照的に明確に示されない限り、その冠詞の文法上の対象の1つまたは複数(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0028】
「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない」という語句を意味するように本明細書では使用され、かつ前記と語句と互換的に使用される。
用語「または(or)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、用語「および/または」を意味するために本明細書で使用され、用語「および/または」と互換的に使用される。
【0029】
本明細書では、「のような(such as)」という用語は、語句「などであるが限定するものではない」を意味するために使用され、かつ当該語句と互換的に使用される。
本明細書で使用される場合、具体的に記載されるか、または文脈から明らかでない限り、用語「約(about)」は、当技術分野の通常の許容範囲内、たとえば平均の2標準偏差内にあるものとして理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内であるものと理解できる。文脈からそうでないことが明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修正することができる。
【0030】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の略記であると理解される。たとえば、1~50の範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または下位範囲が含まれると理解される。
【0031】
本明細書に記載される変数の任意の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一の基またはリストされた基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書に記載される変数または態様についての実施形態の引用は、任意の単一の実施形態としての、または任意の他の実施形態若しくはその一部との組み合わせとしての、その実施形態を含む。
【0032】
本明細書で提供される任意の組成物または方法は、本明細書中で提供される他の組成物および方法のうちのいずれか1つまたは複数と組み合わせることができる。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび、獣医学の対象を含む非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類などが含まれる。好ましい実施形態において、対象はヒトであり、患者と呼ばれる場合がある。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療(処置)する(treat)」、「治療(処置)すること(treating)」または「治療(処置)(treatment)」という用語は、好ましくは、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、疾患または状態の1つまたは複数の徴候または症状の緩和または改善、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定性(即ち、悪化していないこと)、疾患の状態の改善または緩和、進行の速度または進行時間の減少、および寛解(部分的または全体的)を含むがこれらに限定されない、有益または望ましい臨床結果を得るための行為を指す。「治療(処置)」は、治療しない状態で予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味する。治療は治癒をもたらす必要はない。
【0034】
「治療上有効な量」は、対象の疾患を治療するのに十分な量である。治療上有効な量は、1回以上の投与で投与することができる。
本明細書で使用される場合、「診断(diagnosing)」などは、疾患、障害または状態の兆候または症状のような少なくとも1つの指標の存在に基づく、疾患、障害、または状態を有する対象を同定するための観察、試験、または状況に基づく対象の状態の臨床的または他の評価を指す。典型的には、本発明の方法を使用する診断は、本明細書で提供される方法と併せて、疾患、障害、または状態の複数の指標に関する対象の観察を含む。診断方法は、疾患が存在するかどうかの指標を提供する。通常、単一の診断試験では、試験される対象の疾患状態に関する明確な結論を提供することはできない。
【0035】
「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」または「投与(administration)」という用語は、医薬組成物または薬剤を対象のシステムに、または対象の中または上の特定の領域に送達する任意の方法を含む。本発明の特定の実施形態において、薬剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、鼻腔内、経口、経皮、または粘膜投与される。好ましい実施形態において、薬剤は静脈内投与される。薬剤を投与することは、協力して作業する多くの人々によって実施され得る。薬剤を投与することは、たとえば、対象に投与される薬剤を処方すること、および/または直接または別の方法で指示を与えて、自己送達(たとえば経口送達、皮下送達、中心線を通る静脈内送達などによって)、あるいは、訓練を受けた専門家による送達(たとえば、静脈内送達、筋肉内送達、腫瘍内送達などによって)、のいずれかによって特定の薬剤を服用することが含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「生存」という用語は、疾患または状態(たとえばがん)について治療されている対象の生命の継続を指す。生存時間は、臨床試験へエントリーした時間、以前の治療計画の完了または失敗からの時間、診断からの時間など、任意のポイントから定義できる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「再発」という用語は、腫瘍の一次治療が施された対象における腫瘍またはがん性細胞の再成長を指す。腫瘍は元の部位または身体の別の部位に再発する場合がある。一実施形態において、再発する腫瘍は、対象が治療された元の腫瘍と同じ種類のものである。たとえば、対象に卵巣がん腫瘍があり、治療され、その後、別の卵巣がん腫瘍が発生した場合、その腫瘍は再発している。さらに、がんは、最初に発生したものとは異なる臓器または組織に再発するか、転移する可能性がある。
【0038】
本明細書で使用される場合、「同定する(identify)」または「選択する」という用語は、別のものよりも優先される選択肢を指す。言い換えれば、対象を同定する、または対象を選択することは、グループからその特定の対象を選択し、名称または他の際立った特徴によって同対象の同一性を確認するアクティブなステップを実行することである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「利益(benefit)」という用語は、有利または良好なもの、または利点を指す。同様に、本明細書で使用される場合、「恩恵をもたらすもの(benefiting)」という用語は、改善または利点をもたらすものを指す。たとえば、対象は、疾患または状態の少なくとも1つの兆候または症状の減少を示す場合、(たとえば、腫瘍縮小、腫瘍量の減少、転移の抑制または減少、生活の質の改善(「QOL」)、進行までの時間の遅れがある場合(「TTP」)、全生存期間の増加がある場合(「OS」)など)、または疾患の進行の遅延または停止がある場合(たとえば、腫瘍の成長または転移の停止、または腫瘍の成長または転移の速度の低下)、治療の恩恵を受けるであろう。利益には、生活の質の改善、または生存期間や無増悪生存期間の延長も含まれる。
【0040】
「がん」または「腫瘍」という用語は、当技術分野で周知であり、たとえば、制御されない増殖、不死、転移能、急速な成長および増殖率、細胞死/アポトーシスの減少、および特定の特徴的な形態学的特徴のようながんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の対象における存在を指す。がん細胞は多くの場合、固形腫瘍の形態にある。しかしながら、がんには、非固形腫瘍、たとえば血液腫瘍(たとえば白血病)も含まれ、がん細胞は骨髄に由来するものである。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、前悪性がんおよび悪性がんを含む。がんには、限定されるものではないが、聴神経腫、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(単球性、骨髄芽球性、腺がん、血管肉腫、星状細胞腫、骨髄単球性および前骨髄球性)、急性T細胞白血病、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、気管支がん、子宮頸がん、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛がん、慢性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺がん、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、増殖異常(異形成および化生)、胚性がん、子宮内膜がん、内皮肉腫、上衣腫、上皮がん、赤白血病、食道がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、本態性血小板血症、ユーイング腫瘍、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、生殖細胞精巣がん、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、原発性肝細胞がん(hepatoma)、肝細胞がん、ホルモン非感受性前立腺がん、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺がん、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン病)、膀胱、乳房、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、および子宮の悪性腫瘍および過剰増殖性障害、T細胞またはB細胞起源のリンパ性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、髄がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、乏突起膠腫、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭状腺がん、乳頭状がん、松果体、真性赤血球増加症、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮脂腺がん、セミノーマ、皮膚がん、小細胞肺がん、固形腫瘍(がん腫および肉腫)、小細胞肺がん、胃がん、扁平上皮がん、滑膜腫、汗腺がん、甲状腺がん、ウォルデンストロムのマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮がん、およびウィルムス腫瘍が含まれる。その他のがんには、原発がん、転移がん、中咽頭がん、下咽頭がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、小腸がん、尿路がん、腎臓がん、尿路上皮がん、女性生殖器がん、子宮がん、妊娠性絨毛性疾患、男性生殖器がん、精嚢がん、精巣がん、胚細胞腫瘍、内分泌腺腫瘍、甲状腺がん、副腎がん、下垂体がん、血管腫、骨および軟部組織から発生した肉腫、カポジ肉腫、神経がん、眼がん、髄膜がん、膠芽腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫、白血病のような造血器悪性腫瘍から生じる固形腫瘍、転移性黒色腫、再発性または持続性の卵巣上皮がん、卵管がん、原発性腹膜がん、消化管間質腫瘍、大腸がん、胃がん、黒色腫、多形性膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺がん、悪性神経膠腫、上皮性卵巣がん、原発性腹膜漿液性がん、転移性肝がん、神経内分泌がん、難治性悪性腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、HER2増幅乳がん、鼻咽頭がん、口腔がん、胆道、肝細胞がん、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)、非髄様甲状腺がん、再発多形性神経膠芽腫、中枢神経線維腫症1、CNSがん、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、唾液腺がん、粘膜黒色腫、先端/黒子黒色腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、進行転移がん、固形腫瘍、トリプルネガティブ乳がん、結腸直腸がん、肉腫、黒色腫、腎がん、子宮内膜がん、甲状腺がん、横紋筋肉腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、膠芽腫、胃腸間質腫瘍、マントル細胞リンパ腫、および難治性悪性腫瘍が含まれる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」は、触診または三次元を有する異常な成長として画像化法を使用して検出できる任意の病原性腫瘍として理解される。固形腫瘍は、白血病のような血液腫瘍と区別される。しかしながら、血液腫瘍の細胞は骨髄に由来し、したがって、がん細胞を産生する組織は低酸素状態になる可能性のある固形組織である。
【0042】
「腫瘍組織」は、細胞、細胞外マトリックス、および固形腫瘍に関連する他の自然発生成分として理解される。
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、他のタンパク質、核酸、または調製物が得られる組織に関連づけられる化合物を実質的に含まない(たとえば、重量で50%、60%、70%、80%、90%以上)調製物を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象から単離された類似の体液、細胞、または組織の回収物(collection)を指す。「試料」という用語には、任意の体液(たとえば、尿、血清、血液、リンパ液、婦人科液、嚢胞液、腹水、眼液、および気管支洗浄および/または腹膜すすぎによって収集された液)、腹水、組織試料(腫瘍試料など)または対象の細胞が含まれる。他の対象試料には、涙滴、血清、脳脊髄液、糞便、喀痰および細胞抽出物が含まれる。一実施形態において、試料は対象から取り出される。特定の実施形態において、試料は尿または血清である。別の実施形態において、試料は腹水(ascites)を含まないか、腹水試料ではない。別の実施形態において、試料は腹水(peritoneal fluid)を含まないか、腹水ではない。一実施形態において、試料は細胞を含む。別の実施形態において、試料は細胞を含まない。通常、試料は分析の前に対象から取り除かれる。しかしながら、たとえば画像化やその他の検出方法を使用して、対象の腫瘍試料を分析できる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対照試料」という用語は、たとえば、がんに罹患していない健康な対象からの試料、評価されるべき対象より重症度が低いまたは進行が遅いがんを有する対象からの試料、他の種類のがんまたは疾患を有する対象からの試料、治療前の対象からの試料、非疾患組織の試料(たとえば、非腫瘍組織)、同じ試料起源および腫瘍部位の近くからの試料など、を含む、任意の臨床的に関連する比較試料を指す。対照試料は、キットとともに提供される精製した試料、タンパク質、および/または核酸であり得る。そのような対照試料は、たとえば希釈系列で希釈して、試験試料中の分析物の定量的測定を可能にする。対照試料には、1人または複数の対象から得られた試料が含まれる場合がある。対照試料は、評価される対象からより早い時点で作製された試料であってもよい。たとえば、対照試料は、がんの発症前、疾患の初期段階、または治療または治療の一部の投与前に評価されるべく、対象から採取された試料であり得る。対照試料はまた、がんの動物モデル、または動物モデルに由来する組織または細胞株からの試料であってもよい。たとえば、平均値、中央値、または最頻値を含む中心傾向の測定値など、適切な統計的測定値に基づいて、測定値の群で構成される対照試料のレベルを決定することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「取得すること」という用語は、本明細書では、製造すること、購入すること、または他の方法で所有されることと理解される。
本明細書で使用される場合、「同一(identical)」または「同一性(identity)」という用語は、アミノ酸または核酸配列に関して本明細書で使用され、比較配列の長さにわたって既知の遺伝子またはタンパク質配列に対して、少なくとも30%の同一性、より好ましくは40%、50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94の同一性、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を有する任意の遺伝子またはタンパク質配列を指す。配列全体で高レベルの同一性を有するタンパク質または核酸配列は、相同であると言える。「相同である(homologous)」タンパク質はまた、比較タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有し得る。一般的に、タンパク質の場合、比較配列の長さは少なくとも10のアミノ酸、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、175、200、250、または少なくとも300、またはそれ以上のアミノ酸であり得る。核酸の場合、比較配列の長さは一般に少なくとも25、50、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、または少なくとも850、またはそれ以上のヌクレオチドであり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「検出すること」、「検出」等は、試料中の特定の分析物の同定のために実施されるアッセイであると理解される。試料で検出される分析物または活性の量は、アッセイまたは方法の検出レベルにないか、検出レベルを下回る場合がある。
【0047】
「調整する(modulate)」または「調整(modulation)」という用語は、レベルのアップレギュレーション(つまり、活性化または刺激)、レベルのダウンレギュレーション(つまり、抑制または抑制)、または2つの組み合わせまたは別々のことを指す。「モジュレータ(modulator)」は、調整する化合物または分子であり、たとえば、アゴニスト、アンタゴニスト、アクチベータ、刺激剤、サプレッサ、または阻害剤であり得る。
【0048】
「発現」という用語は、本明細書では、ポリペプチドがDNAから生成されるプロセスを意味するために使用される。このプロセスには、遺伝子のmRNAへの転写と、このmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。使用される文脈に応じて、「発現」は、RNA、タンパク質、またはその両方の生産を参照し得る。
【0049】
用語「遺伝子の発現レベル」または「遺伝子発現レベル」とは、mRNAのレベル、ならびにpre-mRNAの新生転写産物、転写産物プロセシング中間体、成熟mRNAおよび分解産物、または細胞内の遺伝子によってコードされるタンパク質のレベル、を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「活性のレベル」は、定量的、半定量的、または定性的なアッセイにより決定されるタンパク質活性、典型的には酵素活性、の量として理解される。活性は通常、容易に検出可能な生成物、たとえば、着色生成物、蛍光生成物、または放射性生成物を生成する基質を使用して、アッセイで生成される生成物の量を監視することにより決定される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「対照と比較して変化した」試料または対象は、正常の、未処理の、または対照の試料由来の試料と統計的に異なるレベルで検出される分析物または診断上もしくは治療上の指標(たとえば、マーカ)のレベルを有するものと理解され、対照試料には、たとえば、培養中の細胞、1つまたは複数の実験動物、または一人または複数のヒト対象が含まれる。対照試料を選択および試験する方法は、当業者の能力の範囲内である。分析物は、細胞または生物によって特徴的に発現または産生される自然発生物質(たとえば、抗体、タンパク質)またはレポーター構築物によって産生される物質(たとえば、β-ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)であり得る。検出に使用される方法に応じて、変化の量と測定値は異なり得る。対照参照試料と比較した変化は、たとえばがんなどの疾患に関連する、または同疾患の診断に関連する1つまたは複数の徴候または症状の変化も含むことができる。統計的有意性の決定は、たとえば、陽性の結果を構成する平均からの標準偏差の数など、当業者の能力の範囲内である。
【0052】
「上昇した(Elevated)」または「より低い(lower)」とは、過去の正常な対照試料に基づいている正常の上限(「ULN」)または正常の下限(「LLN」)に対する患者のマーカ値を指す。対象に存在するマーカのレベルは治療の結果ではなく疾患の結果であるため、通常、疾患の発症前に患者から得られた対照試料は利用できない可能性が高い。実験室毎に絶対結果が異なる場合があるので、値はその実験室の通常値の上限(ULN)に関連して提示される。
【0053】
マーカの「正常な」発現レベルは、がんに罹患していない対象または患者の細胞におけるマーカの発現レベルである。一実施形態において、「正常な」発現レベルは、正常酸素条件下でのマーカの発現レベルを指す。
【0054】
マーカの「過剰発現」または「高レベルの発現」とは、発現を評価するために使用されるアッセイの標準誤差よりも大きい、そして好ましくは、対照試料(たとえば、マーカ関連疾患(即ち、がん)に罹患していない健康な対象からの試料)の発現レベルの少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、4、5、6、7、8、9、または10倍である、試験試料における発現レベルを指す。一実施形態において、マーカの発現は、いくつかの対照試料におけるマーカの平均発現レベルと比較される。
【0055】
マーカの「低レベルの発現」または「過少発現(under-expression)」とは、対照試料(たとえば、マーカ関連疾患(即ち、がん)に罹患していない健康な対象からの試料)の発現レベルの少なくとも0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1倍未満である試験試料の発現レベルを指す。一実施形態において、マーカの発現は、いくつかの対照試料におけるマーカの平均発現レベルと比較される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「結合すること(binding)」とは、非特異的な結合パートナー(たとえば、同族抗体を含むことが知られている試料に抗原を結合する)と比較して、特定の結合パートナーへの結合に対して少なくとも10以上、10以上、好ましくは10以上、好ましくは10以上、より好ましくは10以上の優先度を有すると理解される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「決定すること(Determining)」とは、誰かのまたは何らかの状態、たとえば特定の状態、バイオマーカ、疾患状態、または生理学的状態の存在、不在、レベル、または程度を確認するためのアッセイを実施する、または診断方法を使用するものとして理解される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「処方すること(Prescribing)」とは、対象への投与のための特定の1つまたは複数の薬剤を示すものとして理解される。
本明細書で使用される場合、「応答する」または「応答」という用語は、治療薬による治療に対して陽性の応答を有することと理解され、陽性の応答は、疾患または状態の少なくとも1つの徴候または症状の減少を有すると理解される(たとえば、腫瘍の縮小、腫瘍量の減少、転移の抑制または減少、生活の質(「QOL」)の改善、進行までの時間の遅延(「TTP」)、全生存期間の延長(「OS」)など)、または疾患の進行の遅延または停止(たとえば、腫瘍の成長または転移の停止、または腫瘍の成長または転移の速度の減速)として理解される。応答には、生活の質の改善、または生存時間の延長や無増悪生存も含まれる。
【0059】
「投与する」、「投与すること」、または「投与」という用語は、医薬組成物または薬剤を対象のシステムへ、または対象内または対象上の特定の領域へ送達する任意の方法を含み得る。本発明の特定の実施形態において、Hsp90阻害剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、鼻腔内、経口、経皮、または経粘膜で投与される。好ましい実施形態において、薬剤は静脈内投与される。投与は、協力して作業する多くの人々によって実施され得る。薬剤の投与には、たとえば、対象に投与される薬剤を処方すること、および/または直接または別の方法で指示を与えて、自己送達、たとえば経口送達、皮下送達、中心線を通る静脈内送達などによって特定の薬剤を服用すること;または、訓練を受けた専門家による送達、たとえば、静脈内送達、筋肉内送達、腫瘍内送達など、によって特定の薬剤を服用すること、のいずれかを含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「高濃度(high concentration)」という用語は、SDC-TRAPの結合部分の標的タンパク質への選択的結合により、本発明の標的細胞に蓄積するSDC-TRAPの濃度を指す。一実施形態において、濃度は、標的タンパク質を過剰発現しない類似の細胞、たとえば、非がん性肺細胞と比較した肺がん細胞よりも高い。別の実施形態において、濃度は、標的タンパク質を発現しない、または過剰発現しない細胞と比較して、標的細胞でより高い。例示的な実施形態において、高濃度は、本発明のSDC-TRAP分子によって標的化されていない細胞の1.5、2、3、4、5、10、15、20、50、100、1000倍以上である。
【0061】
「部分(moiety)」という用語は一般に、分子の一部を指し、これは分子内の官能基、官能基のセット、および/または特定の原子群であってもよく、それは、分子の特徴的な化学的、生物学的、および/または医薬的な特性を担うものである。
【0062】
用語「結合部分(binding moiety)」は、低分子量(たとえば、約2500、200、1600、800、700、600、500、400、300、200、または100などのダルトン未満)の有機化合物を指し、それらは、生物学的プロセスの治療薬またはレギュレーターとして機能し得る。結合部分には、タンパク質、核酸、または多糖類のような生体高分子に結合できる分子が含まれ、エフェクタとして働き、生体高分子の活性または機能を変化させる。結合部分は、細胞シグナル分子として、分子生物学のツールとして、薬の薬物として、農業の農薬として、そして他の多くの役割にて、さまざまな生物学的機能を有し得る。これらの化合物は、天然の(二次代謝産物など)または人工の(抗ウイルス薬など)ものであってもよく、それらは疾患(薬など)に対して有益な効果があるか、あるいは有害(催奇形物質や発がん物質など)である可能性がある。核酸、タンパク質、多糖類(澱粉やセルロースなど)のような生体高分子は結合部分ではない。とはいえ、それらの構成モノマー(それぞれ、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、アミノ酸、単糖)は、多くの場合そうであると見なされる。通常、小さなオリゴマーは、ジヌクレオチドのような結合部分、抗酸化剤グルタチオンのようなペプチド、およびスクロースのような二糖類とも見なされる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「タンパク質と相互作用する結合部分」または「結合部分」とは、所定の標的と相互作用する結合部分またはその一部を指す。相互作用は、標的に対するある程度の特異性および/または親和性によって実現される。一般に、特異性と親和性の両方があることが望ましいが、特定の場合、より高い特異性がより低い親和性を補い、より高い親和性がより低い特異性を補うことがある。親和性および特異性の要件は、標的の絶対濃度、標的の相対濃度(たとえば、がん細胞対正常細胞)、効力および毒性、投与経路、および/または標的細胞への拡散または輸送を含むが、これらに限定されないさまざまな要因に応じて異なる。標的は、目的とする分子および/または目的とする領域に局在化された分子であり得る。たとえば、標的は治療の標的とすることができ、および/または治療のために標的化される領域に局在化させることができる(たとえば、正常細胞と比較してがん性細胞で過剰発現されるタンパク質)。特定の一例では、標的はHsp90のようなシャペロニンタンパク質であり得、結合部分はHsp90結合部分(たとえば、治療上の部分、細胞毒性部分、または画像化部分)であり得る。優先的には、結合部分は、結合部分を含むコンジュゲートの細胞への、たとえば標的タンパク質を含む細胞への受動輸送を増強するか、適合させるか、実質的に減少させない。
【0064】
「エフェクタ部分(effector moiety)」という用語は、標的におよび/または標的の近位に作用する分子またはその部分を指す。様々な好ましい実施形態において、エフェクタ部分は結合部分またはその一部である。効果には、限定されるものではないが、治療効果、画像化効果、および/または細胞毒性効果が含まれる。分子レベルまたは細胞レベルでの効果には、標的の活性の促進または阻害、標的の標識化、および/または細胞死が含まれるが、これらに限定されない。優先的に、エフェクタ部分は、標的を含む細胞へのエフェクタ部分を含むコンジュゲートの受動輸送を増強するか、適合させるか、実質的に減少させないものであろう。異なるエフェクタ部分を一緒に使用することができ、本発明に従う治療薬は、2つ以上のエフェクタ部分を含むことができる(たとえば、本発明に従う単一の治療薬中に2つ以上の異なる(または同一の)エフェクタ部分、異なるエフェクタ部分を含む本発明に従う2つ以上の異なる治療薬)。
【0065】
いくつかの実施形態において、エフェクタ部分は、ペプチジル-プロリルイソメラーゼリガンド;ラパマイシン、シクロスポリンA;ステロイドホルモン受容体リガンド、抗有糸分裂剤、アクチン結合剤、カンプトテシン、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、白金含有化合物、メトホルミン、HDAC阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤;ナイトロジェンマスタード;5-フルオロウラシル(5-FU)およびその誘導体、またはそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、エフェクタ部分は、FK506;ラパマイシン、シクロスポリンA、エストロゲン、プロゲスチン、テストステロン、タキサン類、コルヒチン、コルセミド、ノカドゾール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、サイトカラシン、ラトランキュリン、ファロイジン、レナリドマイド、ポマリドミド、SN-38、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、メトホルミン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ベンダムスチン、メルファラン;5-フルオロウラシル(5-FU)、ベドチンおよびDM1、またはそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。
【0067】
「細胞内に捕捉される小分子薬物コンジュゲート」または「細胞内に捕捉される結合部分薬物コンジュゲート」または「SDC-TRAP」という用語は、互いに結合した、または互いに結合したかのように作用する結合部分およびエフェクタ部分を指す。結合部分およびエフェクタ部分は、本質的に任意の化学的または物理的な力を介して直接(たとえば、結合部分とエフェクタ部分を同じ分子上の2つの部分、または両方の機能を有する単一の部分と見なす)、または中間体(たとえば、リンカー)を介して、結合され得る。たとえば、結合部分およびエフェクタ部分は、1つまたは複数の共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性効果、双極子-双極子力、イオン-双極子力、双極子-誘起双極子力、瞬間双極子-誘起双極子および/またはそれらの組み合わせによって結合され得る。優先的に、SDC-TRAPは、標的を含む細胞への受動的および/または能動的輸送が可能であろう。さらに、本発明のSDC-TRAP分子は、結合部分にコンジュゲートした複数のエフェクタ分子を含んでもよい。
【0068】
結合部分、エフェクタ部分、および/またはSDC-TRAPの文脈にて本明細書で使用される場合、「リンカー」または「連結部分(linking moiety)」という用語は、2つの他の部分(たとえば、結合部分およびエフェクタ部分)を結合する化学部分を指す。リンカーは、結合部分およびエフェクタ部分と共有結合できる。リンカーは、開裂可能なリンカー、たとえば酵素的に開裂可能なリンカーを含むことができる。リンカーは、ジスルフィド、カルバマート、アミド、エステル、および/またはエーテルリンカーを含むことができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「リガンド」とは、生体分子と複合体を形成できる物質(たとえば、結合部分)である。リガンドおよび/またはリガンド-生体分子複合体の形成は、治療効果、細胞毒性効果、および/または画像化効果のような生物学的または化学的効果を有し得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」とは、不活性または完全に活性ではない形態で投与され、その後代謝プロセスを介して活性薬理作用物質(すなわち、薬物)に変換される薬理学的物質である。プロドラッグは、目的の薬物の吸収、分布、代謝、および/または排泄の方法を改善するために使用できる。プロドラッグを使用して、目的の薬物がその意図した標的ではない細胞またはプロセスとどのように選択的に相互作用するかを改善することもできる(たとえば、目的の薬物、たとえば化学療法薬の悪影響または意図しない効果を低減するために)。
【0071】
語句「Hsp90リガンドまたはそのプロドラッグ」は、一般に、Hsp90に結合し、場合によってはHsp90に作用する分子、およびその不活性型(すなわち、プロドラッグ)を指す。Hsp90リガンドは、「Hsp90阻害剤」であり得、これは、Hsp90と直接相互作用すること、または、たとえばHsp90の少なくとも1つのクライアントタンパク質の発現および適切なフォールディングが阻害されるようにHsp90/CDC37複合体の形成を回避すること、のいずれかによってHsp90の活性を低減する治療薬として理解される。「Hsp90」には、質量が約90キロダルトンの熱ショックタンパク質ファミリーの各メンバーが含まれる。たとえば、ヒトでは、高度に保存されたHsp90ファミリーは、サイトゾルHsp90αおよびHps90βアイソフォーム、ならびに小胞体に見られるGRP94、およびミトコンドリア基質に見られるHSP75/TRAP1を含む。本明細書で使用される場合、Hsp90阻害剤には、限定されるものではないが、ガネテスピブ、ゲルダナマイシン(タネスピマイシン)、たとえばIPI-493、マクベシン、トリプテリン、タネスピマイシン、たとえば17-AAG(アルベスピマイシン)、KF-55823、ラディシコール、KF-58333、KF-58332、17-DMAG、IPI-504、BIIB-021、BIIB-028、PU-H64、PU-H71、PU-DZ8、PU-HZ151、SNX-2112、SNX-2321、SNX-5422、SNX-7081、SNX-8891、SNX-0723、SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387、NSC-113497、PF-3823863、PF-4470296、EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274、VER-50589、KW-2478、BHI-001、AUY-922、EMD-614684、EMD-683671、XL-888、VER-51047、KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305、MPC-3100、CH-5164840、PU-DZ13、PU-HZ151、PU-DZ13、VER-82576、VER-82160、VER-82576、VER-82160、NXD-30001、NVP-HSP990、SST-0201CL1、SST-0115AA1、SST-0221AA1、SST-0223AA1、ノボビオシン(C末端Hsp90i、ヘルビンマイシンA、ラディシコール、CCT018059、PU-H71、またはセラストロール、が含まれる。
【0072】
「治療的部分」という用語は、疾患の治療または生物の健康の改善に使用されるか、そうでなければ治癒力を示す分子、化合物、またはそのフラグメントを指す(たとえば、医薬品、薬物など)。治療的部分は、疾患、たとえばがんに対する特異的作用に使用される天然または合成起源の化学物質、またはそのフラグメントであり得る。がんを治療するために使用される治療薬は、化学療法薬と呼ばれる場合がある。本明細書に記載されるように、治療的部分は優先的に小分子である。例示的な小分子治療薬には、800ダルトン、700ダルトン、600ダルトン、500ダルトン、400ダルトン、または300ダルトン未満のものが含まれる。
【0073】
「細胞毒性部分」という用語は、細胞に対して毒性または有毒な効果を有する、または細胞を殺す分子、化合物、またはそのフラグメントを指す。化学療法および放射線療法は細胞毒性療法の一種である。細胞毒性部分で細胞を処理すると、さまざまな結果が得られる-細胞は壊死を受けたり、活発な成長と分裂を停止したり、制御された細胞死(つまりアポトーシス)の遺伝的プログラムを活性化したりする。細胞毒性部分の例には、限定されるものではないが、SN-38、ベンダムスチン、VDA、ドキソルビシン、ペメトレキセド、ボリノスタット、レナリドマイド、イリノテカン、ガネテスピブ、ドセタキセル、17-AAG、5-FU、アビラテロン、クリゾチニブ、KW-2189、BUMB2、DC1、CC-1065、アドゼレシン、またはそれらのフラグメントが含まれる。
【0074】
「画像化部分(imaging moiety)」という用語は、臨床および/または研究目的のために細胞、組織、および/または生物(またはその一部またはその機能)の画像を作成するまたは測定を行うために使用される技術および/またはプロセスを促進する分子、化合物、またはそのフラグメントを指す。画像化部分は、たとえば、放射および/または電磁エネルギー、核エネルギー、および/または機械的(たとえば超音波のような音響)エネルギーとの相互作用を通じて信号を生成することができる。画像化部分は、たとえば、さまざまな放射線学、核医学、内視鏡検査、サーモグラフィー、写真、分光法、顕微鏡法で使用できる。
【0075】
「医薬コンジュゲート(Pharmaceutical conjugate)」とは、エフェクタ部分に関連する結合部分(たとえば、Hsp90を標的とする部分)を含む天然に存在しない分子を指し、これらの2つの成分は、直接的に、または連結基を介して互いに共有結合していてもよい。
【0076】
「薬物(drug)」という用語は、あらゆる生物学的プロセスに影響を与えるあらゆる活性剤を指す。この用途の目的のために薬物と見なされる活性薬剤は、薬理学的活性を示す薬剤である。薬物の例には、病状の予防、診断、緩和、治療または治癒に使用される活性薬剤が含まれる。
【0077】
「薬理学的活性」とは、表現型の変化、たとえば細胞死、細胞増殖などをもたらすように生物学的プロセスを調節または変更する活性を意味する。
「薬物動態特性」とは、生物または宿主における活性薬剤の性質を記述するパラメータを意味する。
【0078】
「半減期」とは、投与された薬物の半分が生物学的プロセス、たとえば代謝、排泄などを通じて除去される時間を意味する。
「効能(efficacy)」という用語は、意図された目的に対する特定の活性薬剤の有効性、すなわち、所定の活性薬剤がその所望の薬理効果を引き起こす能力を指す。
【0079】
細胞内に捕捉された結合部分-エフェクタ部分薬物コンジュゲート(SDC-TRAPs)
本発明は、SDC-TRAP、ならびにSDC-TRAPの組成物、キット、およびその使用方法を提供する。SDC-TRAPには、エフェクタ部分(たとえば、薬物または造影剤のような薬理学的薬剤)にコンジュゲートされた結合部分(たとえば、リガンドのような結合部分)が含まれる。これらの2つの部分は、リンカー、たとえば共有結合した連結基によって結合できる。SDC-TRAPは、種々の治療用、画像化用、診断用、および/または研究用の用途に有用である。がん治療の例示的な一例では、SDC-TRAPは、Hsp90のリガンド、または治療剤もしくは細胞毒性剤のようなエフェクタ部分に関連する阻害剤のようなHsp90結合部分の医薬コンジュゲートであり得る。
【0080】
様々な実施形態において、SDC-TRAPはさらに、結合部分(たとえば、標的とする部分)とエフェクタ部分が異なることを特徴とすることができ、その結果、医薬コンジュゲートは、2つの異なる部分の結合により生成されるヘテロ二量体化合物とみなされ得る。機能の面では、SDC-TRAP分子には標的化機能とエフェクタ機能とがある(たとえば、治療、画像化、診断)。これらの機能は、異なっている(または、場合によっては同じである)可能性のある、対応する化学部分によって提供される。SDC-TRAPは、任意の1つまたは複数のエフェクタ部分にコンジュゲートされた任意の1つまたは複数の結合部分を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物または方法は、1つまたは複数の異なる種類のSDC-TRAPで具現化される2つ以上の結合部分および/または2つ以上のエフェクタ部分の組み合わせ(たとえば、併用療法および/または多標的療法)を含むことができる。
【0081】
様々な実施形態において、SDC-TRAPは、目的とする標的細胞に受動的に拡散および/または能動的に輸送される能力によってさらに特徴付けられる。SDC-TRAPの拡散および/または輸送特性は、少なくとも部分的に、SDC-TRAPのイオン特性、極性特性、および/または疎水特性に由来する。好ましい実施形態において、SDC-TRAPは、主として受動拡散により細胞に入る。SDC-TRAPの拡散特性および/または輸送特性は、少なくとも部分的に、SDC-TRAPの分子量、結合部分、エフェクタ部分、および/または結合部分とエフェクタ部分の間の重量の類似性に由来し得る。SDC-TRAPは、たとえば、抗体-薬物コンジュゲート(「ADC」)と比較して小さいことが望ましい。たとえば、SDC-TRAPの分子量は、約5000、2500、2000、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500または400ダルトン未満であり得る。結合部分およびエフェクタ部分はそれぞれ、約1000、900、800、700、600、500、400、300、または200ダルトン未満であり得る。結合部分およびエフェクタ部分は、サイズがほぼ等しくてもよい(たとえば、重量における差が400、350、300、250、200、150、100、または50ダルトン未満である)。
【0082】
SDC-TRAPによるエフェクタ分子の送達は、たとえば、結合部分とその標的との会合(association)によってSDC-TRAPが長時間にわたって所望の標的に局在化できるため、同じエフェクタ部分を含む非標的薬物の投与と比較して、より大きな効力をもたらす。そのような局在化は、エフェクタ部分を標的細胞および/または組織において長期間にわたって活性化および/または放出させることができる。この共鳴時間は、リンカー部分を意図的に設計することにより選択できる。対照的に、インビボでの単独の薬物の投与は、それが細胞内に移動した場合、細胞内に「アンカー」がないために、所定の標的細胞および/または組織においてより短い共鳴時間を有する傾向にある。
【0083】
SDC-TRAPは、部分的には標的とする部分を含み、サイズが比較的小さいため、標的細胞に効率的に取り込まれたり内在化したりする可能性がある。逆に、限られた抗原発現および分子の抗体部分の比較的非効率的な内在化メカニズムに対処しなければならないADCでは、取り込みまたは内在化は比較的非効率的である。Hsp90は、SDC-TRAPと従来のADCとの相違を示すわかりやすい例である。比較として、患者の腫瘍における放射性標識モノクローナル抗体の局在化率は低く、注入された用量/腫瘍gの0.003~0.08%のオーダーである。対照的に、マウス腫瘍異種移植片のSDC-TRAPでは、はるかに高い蓄積率(15~20%注入量/腫瘍g)が測定されている。
【0084】
本発明に従うSDC-TRAP医薬コンジュゲートは、標的薬物の技術水準を大きく上回る進歩を示すことができる。SDC-TRAPは、多くの治療、画像化、および診断用途に幅広く応用されている。上記のように、SDC-TRAPはADCと比較して有利に小さく、固形腫瘍への浸透を促進し、正常組織からのより迅速なクリアランスを可能にする(たとえば、毒性の低減)。SDC-TRAPの設計(たとえば、構造と特性の関係)は、当業者の理解の範囲内の方法と理論を使用して確立でき、そして、標的療法の併用の画像化診断も、関与されるより単純な化学を考慮して、容易に提供できる。
【0085】
本発明のSDC-TRAPは、標的タンパク質が過剰発現される標的細胞へのSDC-TRAPの選択的標的化を特徴とする。これにより、非標的細胞と比較して、標的細胞のSDC-TRAP分子の細胞内濃度が高くなる。同様に、本発明のSDC-TRAPは、非標的細胞における低濃度のSDC-TRAPによって特徴付けられる。
【0086】
例示的な一実施形態は、キレート剤に連結されたHsp90結合部分のコンジュゲート(すなわち、InまたはGdのような金属のエフェクタ部分、そのコンジュゲートは同コンジュゲートが標的とする細胞/組織の造影剤として機能し得る)を含む。別の例示的な実施形態は、化学療法剤(すなわち、エフェクタ部分、たとえばSN-38)に連結されたHsp90結合部分のコンジュゲートを含む。代替的に、例示的なSDC-TRAPが企図され、放射標識ハロゲンを担持するHsp90を標的とする部分(たとえば、ヨウ素同位体など)は、コンジュゲートによって標的化される細胞/組織を画像化するのに役立ち、エフェクタ部分は、標的化された細胞/組織を治療するための薬物であり得る。したがって、治療の進行は、治療されている組織を画像化し、標識されたコンジュゲートの有無について画像を検討することにより決定され得る。そのような実施形態は、本質的に任意のがんまたは他の化学療法標的に容易に適応可能である。特定の細胞もしくは組織を標的とするために使用される分子標的(たとえば、結合部分と相互作用するもの)は、標的細胞もしくは組織におけるそれらの存在および/または標的細胞もしくは組織における相対的な豊富さに基づいて選択することができる(たとえば、疾患関連細胞と正常細胞)。
【0087】
本発明のSDC-TRAP分子は、新しい種類の薬物を表す。SDC-TRAPの特定の利点の1つは、細胞内の結合部分の分子標的の相対的な過剰発現または存在のために、標的細胞にエフェクタ部分(たとえば、化学療法薬)を選択的に送達するように設計できることである。結合部分が分子標的に結合した後、エフェクタ部分はその後利用可能になり(たとえば、結合部分とエフェクタ部分を結合するリンカー部分の開裂により)、細胞に作用する。したがって、SDC-TRAPは、当技術分野で現在使用されている戦略、たとえばHPMAコポリマー-Hsp90iコンジュゲート、Hsp90iプロドラッグ、ナノ粒子-Hsp90iコンジュゲート、またはミセル法を使用してHsp90阻害剤を細胞に送達するメカニズム、とは異なるメカニズムを採用している。
【0088】
SDC-TRAPは、次の式でも説明できる:
結合部分-L-E
ここで、「結合部分」は、結合部分と相互作用するタンパク質であり、Lは共役または連結部分(結合または連結基など)であり、かつEはエフェクタ部分である。これらの要素については、以下のさらなる例示的な実施例の文脈において説明する。しかしながら、各要素の特徴については個別に説明するが、SDC-TRAPの設計と選択には、各要素の特徴の相互作用や累積効果(たとえば、拡散、結合、効果など)が含まれる場合がある。
【0089】
本発明のSDC-TRAP分子が標的細胞に入ると、エフェクタ分子はSDC-TRAPから放出される。一実施形態において、エフェクタ分子は、SDC-TRAPから放出されるまで活性を持たない。したがって、SDC-TRAP分子が標的細胞に入ると、遊離SDC-TRAP分子と結合SDC-TRAP分子の間に平衡が存在する。一実施形態において、エフェクタ部分は、SDC-TRAPが標的タンパク質と会合していない場合にのみSDC-TRAPから放出される。たとえば、SDC-TRAP分子が結合していない場合、細胞内酵素はリンカー領域にアクセスでき、それによりエフェクタ部分を解放できる。あるいは、遊離SDC-TRAP分子が、たとえば、結合部分とエフェクタ部分をつなぐ結合またはリンカーの加水分解を通じてエフェクタ分子を放出できる場合がある。
【0090】
したがって、エフェクタ分子の放出速度および放出されるエフェクタ分子の量は、異なる親和性で標的タンパク質に結合する結合部分を使用することにより制御することができる。たとえば、より低い親和性で標的タンパク質に結合する結合部分は遊離し、非結合細胞内SDC-TRAPの濃度が高くなり、その結果、遊離エフェクタ分子の濃度が高くなる。したがって、少なくとも1つの実施形態において、不可逆的に結合する結合部分は、本発明の特定の態様、たとえば、エフェクタ分子放出が遊離した細胞内SDC-TRAP分子に基づく実施形態と適合しない。
【0091】
一実施形態において、SDC-TRAPは、たとえば、結合部分またはエフェクタ分子単独と比較した場合、たとえば、好ましい安全性プロファイルを有する。安全性プロファイルが向上した理由の1つは、標的細胞に侵入しないSDC-TRAP分子の急速なクリアランスである。
【0092】
いくつかの例示的なSDC-TRAP分子が実施例に記載されている。具体的には、SDC-TRAP分子の効能を実証するために、多くのHsp90固有のSDC-TRAP分子が説明および使用されている。
【0093】
結合部分
結合部分の主な役割は、SDC-TRAPがそのペイロード、即ち、エフェクタ部分を標的細胞または組織の中または上の分子標的に結合することによりその標的に確実に送達することである。この点において、結合部分が標的にも影響を与える(たとえば、Hsp90を標的とする部分の場合、Hsp90iが行うことが知られている方式でHsp90を阻害する、すなわち、薬理活性を示すかまたはその機能を妨害する)必要はないが、いくつかの実施形態において、結合部分は標的に対して影響を及ぼす。したがって、様々な実施形態において、SDC-TRAPの活性は、標的細胞に薬理学的効果を及ぼすエフェクタ部分のみによるものであり、これは、標的細胞を標的とすることにより良好に促進されている。他の実施形態において、SDC-TRAPの活性は、部分的に結合部分に起因する、即ち、結合部分は標的化を超える効果を有し得る。
【0094】
結合部分の分子標的は、たとえば、脂質などの複数の生体分子の複合体または構造の一部であってもなくてもよく、複合体または構造はリポタンパク質、脂質二重層などを含んでもよい。しかしながら、多くの実施形態において、結合部分が結合する分子標的は遊離しているであろう(たとえば、細胞質球状タンパク質および/または巨大分子集合体または凝集体の一部ではない)。本発明は、高い生理活性の位置(たとえば、腫瘍学的プロセスにおけるHsp90)における分子標的の選択的高存在を活用することができる。たとえば、薬物標的が細胞内薬物標的である場合、対応する分子標的(たとえば、Hsp90)が細胞内に存在し得る。同様に、薬物標的が細胞外薬物標的である場合、対応する分子標的(たとえば、Hsp90)は、細胞外にあるか、標的の細胞もしくは組織の細胞外細胞膜の近位にあるか、または細胞外細胞膜に会合していてもよい。
【0095】
様々な実施形態において、結合部分は、標的細胞もしくは組織に影響を及ぼし得る(たとえば、実際にHsp90を阻害するHsp90を標的とする部分の場合、たとえばHsp90i)。そのような実施形態において、結合部分の薬理学的活性は、エフェクタ部分の薬理学的活性に寄与し、補完し、または増強する。そのような実施形態は、併用療法と標的化の利益の両方を実現する単一のSDC-TRAPの投与によって実施できる治療を提供することにより、併用療法(たとえば、Hsp90iとガネテスピブまたはクリゾチニブのような第2の薬物とのがん併用療法)の利点を超えるものとなる。そのようなSDC-TRAPの他の例には、Hsp90i(ガネテスピブなど)とドセタキセルまたはパクリタキセル(たとえばNSCLCにおける);BEZ235(たとえば、黒色腫、前立腺および/またはNSCLCにおける);テムシロリムス(たとえば、腎細胞がん(RCC)、結腸、乳房、および/またはNSCLCにおける);PLX4032(たとえば、黒色腫における);シスプラチン(たとえば、結腸、乳がん);AZD8055(たとえば、NSCLCにおける);およびクリゾチニブ(たとえば、ALKNSCLC)といった第2の抗がん剤とのコンジュゲートが含まれる。
【0096】
結合部分とエフェクタ部分を慎重に選択することにより、さまざまな医薬活性を実現できる。たとえば、結腸がんなどの固形腫瘍の治療には、カペシタビンやゲムシタビンのような代謝拮抗薬の高連続用量が他の薬物との組み合わせで必要になる傾向がある。たとえば、HER2分解アッセイにより決定されるように、Hsp90に対するより低い結合親和性または阻害活性を有するHsp90を標的とする部分を有するコンジュゲートは、このニーズを満たすように設計することができる。そのようなコンジュゲートは、比較的頻繁に投与され得るコンジュゲートの高用量を提供するために、5-FUのような強力で効能のある代謝拮抗物質であるエフェクタ部分を含むことができる。そのようなアプローチは、本発明のSDC-TRAPの血漿安定性およびHsp90を標的とする部分を使用して代謝拮抗薬を目的の細胞または組織に送達する能力により、腫瘍に高用量の代謝拮抗薬フラグメントを提供するという目的を達成するだけでなく、薬物を単独で投与する場合の毒性も低下させる。
【0097】
SCLCまたは結腸直腸がんのような固形腫瘍をトポテカンまたはイリノテカンのような薬物で治療する実施形態において、低用量の薬物のみを投与してもよい。これらの薬物は非常に高い固有の活性があるため、SDC-TRAPは、標的組織でこのような薬物の低用量を提供するように設計する必要がある。このシナリオでは、たとえば、Hsp90に対する結合親和性または阻害活性が高いHsp90を標的とする部分(たとえば、HER2分解アッセイで決定されるような)は、薬物の存在を組織中に非常に高いレベルに十分維持して、低い投与量により、十分な薬物が到達して所望とされる標的組織により保持されることを確実にすることが可能である。
【0098】
結合部分の分子標的がHsp90である様々な例示的な実施形態において、結合部分は、例えば、Hsp90を結合するトリアゾール/レゾルシノールベースの化合物、またはHsp90を結合するレゾルシノールアミドベースの化合物など(たとえば、ガネテスピブまたはその互変異性体/誘導体/類似体、AUY-922またはその互変異性体/誘導体/類似体、あるいはAT-13387またはその互変異性体/誘導体/類似体)のHsp90を標的とする部分であり得る。
【0099】
別の実施形態において、結合部分は、有利には、式(I)のHsp90結合化合物であってよく、
【0100】
【化1】
【0101】
式中、
は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミドまたはスルホンアミドであってよく;Rはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよく、Rが6員環のアリールまたはヘテロアリールである場合、Rはトリアゾール環の接続点に関して3位および4位で置換され、これを通じてリンカーLが付着され;かつRはSH、OH、-CONHR、アリールまたはヘテロアリールであってよく、ここで、Rが6員環のアリールまたはヘテロアリールである場合、Rは3または4位で置換されている。
【0102】
別の実施形態において、結合部分は、有利には、式(II)のHsp90結合化合物であってよく、
【0103】
【化2】
【0104】
式中、
は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド、スルホンアミドであってよく、Rは、任選択で置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよい。そのような化合物の例には、5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-N-(2-モルホリノエチル)-4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドおよび5-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-4-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドが含まれる。
【0105】
別の実施形態において、結合部分は、有利には、式(III)のHsp90結合化合物であってよく、
【0106】
【化3】
【0107】
式中、
X、Y、およびZは独立して、CH、N、OまたはS(適切な置換を備え、かつ環の対応する原子の原子価および芳香族性を満たすもの)であってよく;Rは、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミドまたはスルホンアミドであってよく;Rは、置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよく、ここでリンカーLは直接、またはこれらの環から伸びた置換部に連結され;Rは、SH、OH、NRおよびCONHRであってよく、これにエフェクタ部分が連結されてもよく;RおよびRは独立して、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってよく;かつ、Rは、エフェクタ部分が接続されうる最低1つの官能基を有している、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってよい。そのような化合物の例には、AUY-922:
【0108】
【化4】
【0109】
が含まれる。
別の実施形態において、結合部分は、有利には、式(IV)のHsp90結合化合物であってよく、
【0110】
【化5】
【0111】
式中、
は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミドまたはスルホンアミドであってよく;RおよびRは独立して、任意選択でヒドロキシ、ハロゲン、C-Cアルコキシ、アミノ、モノおよびジC-Cアルキルアミノのうち1以上で置換されたC-Cヒドロカルビル基;5~12員環のアリール若しくはヘテロアリール基であるか;または、RおよびRは、それらが付着している窒素原子と一緒に4~8員環の単環式複素環基を形成し、そのうち最大5個までの環構成要素がO、NおよびSから選択される。そのような化合物の例には、AT-13387:
【0112】
【化6】
【0113】
が含まれる。
特定の実施形態において、生物学的利用能または医薬コンジュゲートの送達を増強するために、結合部分はHsp90結合化合物のプロドラッグであってもよい。
【0114】
適切なHsp90を標的とする部分の具体例には、ゲルダナマイシン、たとえばIPI-493、
【0115】
【化7】
【0116】
マクベシン、トリプテリン、タンスピマイシン、たとえば17-AAG
【0117】
【化8】
【0118】
、KF-55823
【0119】
【化9】
【0120】
、ラディシコール、KF-58333
【0121】
【化10】
【0122】
、KF-58332
【0123】
【化11】
【0124】
、17-DMAG
【0125】
【化12】
【0126】
、IPI-504、
【0127】
【化13】
【0128】
、BIIB-021
【0129】
【化14】
【0130】
、BIIB-028、PU-H64
【0131】
【化15】
【0132】
、PU-H71
【0133】
【化16】
【0134】
、PU-DZ8
【0135】
【化17】
【0136】
、PU-HZ151
【0137】
【化18】
【0138】
、SNX-2112
【0139】
【化19】
【0140】
、SNX-2321
【0141】
【化20】
【0142】
、SNX-5422
【0143】
【化21】
【0144】
、SNX-7081
【0145】
【化22】
【0146】
、SNX-8891、SNX-0723
【0147】
【化23】
【0148】
、SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387
【0149】
【化24】
【0150】
、NSC-113497
【0151】
【化25】
【0152】
、PF-3823863
【0153】
【化26】
【0154】
、PF-4470296
【0155】
【化27】
【0156】
、EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274
【0157】
【化28】
【0158】
、VER-50589
【0159】
【化29】
【0160】
、KW-2478
【0161】
【化30】
【0162】
、BHI-001、AUY-922
【0163】
【化31】
【0164】
、EMD-614684
【0165】
【化32】
【0166】
、EMD-683671、XL-888、VER-51047
【0167】
【化33】
【0168】
、KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305
【0169】
【化34】
【0170】
、MPC-3100
【0171】
【化35】
【0172】
、CH-5164840
【0173】
【化36】
【0174】
、PU-DZ13
【0175】
【化37】
【0176】
、PU-HZ151
【0177】
【化38】
【0178】
、PU-DZ13
【0179】
【化39】
【0180】
、VER-82576
【0181】
【化40】
【0182】
、VER-82160
【0183】
【化41】
【0184】
、VER-82576
【0185】
【化42】
【0186】
、VER-82160
【0187】
【化43】
【0188】
、NXD-30001
【0189】
【化44】
【0190】
、NVP-HSP990
【0191】
【化45】
【0192】
、SST-0201CL1
【0193】
【化46】
【0194】
、SST-0115AA1
【0195】
【化47】
【0196】
、SST-0221AA1
【0197】
【化48】
【0198】
、SST-0223AA1
【0199】
【化49】
【0200】
、ノボビオシン(C末端Hsp90i)、またはその互変異性体/誘導体/類似体を含む。他のHsp90を標的とする部分の選択は、当業者の理解の範囲内であろう。同様に、他の分子標的および/または他の用途に適した結合部分の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0201】
さらに、Hsp90を標的とする部分を使用して、炎症の治療用のSDC-TRAP分子を構築できる。たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0280032号明細書の表5、6、および7に示される化合物、若しくは同明細書中の任意の化学式の化合物、あるいはその互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート(clathrates)、水和物、多形体またはプロドラッグを含む結合部分は、Hsp90の活性を阻害し、それによりHsp90クライアントタンパク質の分解を引き起こす。これらの化合物のうち任意のものがエフェクタ分子と結合してSDC-TRAPを形成する。グルココルチコイド受容体はHsp90のクライアントタンパク質であり、コルチゾールのようなグルココルチコイドリガンドに結合することが可能な立体配座にあるときにHsp90に結合する。グルココルチコイドがGRに結合すると、受容体はHsp90と解離し、核に移行し、核において遺伝子発現を変調し、炎症誘発性サイトカイン産生のような炎症反応を低減する。したがって、グルココルチコイドは、免疫抑制を必要とする患者と、炎症性および自己免疫性の障害の患者に投与することができる。残念ながら、グルココルチコイドは炎症の緩和に効果的ではあるが、骨粗鬆症、筋肉消耗症、高血圧症、インスリン抵抗性、体幹部肥満および脂肪の再分布、ならびに創傷修復の阻害など、多くの重篤な副作用がある。Hsp90の阻害はGR活性の変化を引き起こし、それはグルココルチコイドにおいて見られるものと同様の炎症反応の低減をもたらす。しかしながら、炎症を軽減するメカニズムはグルココルチコイドのメカニズムとは異なるため、グルココルチコイド治療の副作用の一部またはすべてが軽減または排除されることが予想される。
【0202】
エフェクタ部分
エフェクタ部分は、結合部分にコンジュゲートされ得る、したがってコンジュゲートされた状態で、同結合部分の分子標的に送達され得る任意の治療薬または画像化剤であってよい。エフェクタ分子は、場合によっては、コンジュゲート用の連結部分を必要とすることがある(たとえば、結合部分に直接コンジュゲートさせることはできない)。同様に、エフェクタ分子は、場合によっては、SDC-TRAPがなおも標的に影響を与えることができる限り、結合部分および/またはSDC-TRAPが標的に到達する能力を妨害または低下させることが可能性である。しかしながら、好ましい実施形態において、エフェクタ部分は容易にコンジュゲート可能であり、標的への送達および標的への効果にとって利益になりうる。
【0203】
様々な実施形態において、エフェクタ部分を介したSDC-TRAPは、単純な受動拡散以外の細胞浸透の方法を有することができる。そのような例は、エフェクタ部分として葉酸拮抗薬またはそのフラグメント(たとえば、テモゾラミド、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、エストラムスチン、またはクロロメチン)を含むSDC-TRAPである。この場合、結合部分(たとえば、Hsp90阻害剤)とペメトレキセド(またはその葉酸認識フラグメント)のコンジュゲートは、受動拡散ではなく葉酸受容体媒介エンドサイトーシスを受ける可能性がある。標的細胞に入ると、SDC-TRAPはその結合部分(たとえば、Hsp90阻害剤)を介して分子標的(たとえば、Hsp90タンパク質)に結合することができる。
【0204】
以下により詳細に説明するように、エフェクタ部分は、その標的に結合する結合部分の能力に実質的に悪影響を与えることなく、修飾され得る、および/または結合部分への共有結合に関与し得る領域を含むことができる。エフェクタ部分は、結合部分にコンジュゲートされる一方で、本質的に活性を保持する医薬分子またはその誘導体であり得る。他の点では良好かつ望ましい活性を備えた薬物が、(例えば該薬物の標的に到達する前のインビボでの不十分な生物学的利用能または望ましからぬ副作用が原因で)従来の様式で投与すことが困難であると判明する可能性があることは認識されるであろう-そのような薬物は、本発明のSDC-TRAPの中のエフェクタ部分として使用するために「復活させる(reclaimed)」ことが可能である。
【0205】
エフェクタ部分の例には、ペプチジル-プロリルイソメラーゼリガンド、たとえば、FK506;ラパマイシン、シクロスポリンAなど;ステロイドホルモン受容体リガンド、たとえば、エストロゲン、プロゲスチン、テストステロンのような天然に存在するステロイドホルモン、ならびにそれらの合成誘導体および模倣物;細胞骨格タンパク質に結合する結合部分、たとえば抗有糸分裂剤、たとえばタキサン、コルヒチン、コルセミド、ノカドゾール、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなど、アクチン結合剤、たとえばサイトカラシン、ラトランキュリン、ファロイジンなど;レナリドマイド、ポマリドマイド、SN-38
【0206】
【化50】
【0207】
を含むカンプトテシン、トポテカン、コンブレタスタチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビンカアルカロイド、白金含有化合物、メトホルミン、HDAC阻害剤(たとえば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))、メトトレキサート、ペメトレキセート、ラルチトレキセドのようなチミジル酸シンターゼ阻害剤;ベンダムスチンやメルファランのようなナイトロジェンマスタード;5-フルオロウラシル(5-FU)およびその誘導体、ならびに、ベドチンおよびDM1のようなADC薬物で使用される薬剤、あるいはそれらの互変異性体/誘導体/類似体、が含まれる。
【0208】
エフェクタ部分は、コンビナトリアルな手段により生成された化合物のライブラリ、すなわち化合物多様性コンビナトリアルライブラリ(compound diversity combinatorial library)を含む、天然に存在する分子または合成分子のライブラリから得られてもよい。そのようなライブラリから得られる場合、使用されるエフェクタ部分は、その活性についての適切なスクリーニングアッセイにおいていくつかの望ましい活性を実証済みであろう。他の実施形態において、医薬コンジュゲートは複数のエフェクタ部分を含み、医薬品化学者により高い柔軟性を提供することが企図される。結合部分(たとえば、Hsp90を標的とする部分)に連結されるエフェクタ部分の数は、一般に、結合部分(例えばHsp90を標的とする部分)上の部位、および/またはエフェクタ部分に連結するために利用可能な任意の連結部分、の数;立体化学上の考慮事項、例えば結合部分(例えばHsp90を標的とする部分)に実際に連結可能なエフェクタ部分の数;ならびに、薬剤コンジュゲートが分子標的(例えばHsp90タンパク質)に結合する能力が保存されること、によってのみ制限されることになろう。
【0209】
エフェクタ部分の由来となりうる具体的な薬物には、精神薬理学的作用薬、例えば中枢神経抑制薬、例えば全身麻酔薬(バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ステロイド、シクロヘキサノン誘導体、および種々の作用薬)、催眠鎮静薬(ベンゾジアゼピン、バルビツレート、ピペリジンジオンおよびトリオン、キナゾリン誘導体、カルバマート、アルデヒドおよび誘導体、アミド、非環式ウレイド、ベンザゼピンおよび関連薬、フェノチアジンなど)、中枢性随意筋緊張修飾薬(central voluntary muscle
tone modifying drug)(抗痙攣薬、例えばヒダントイン、バルビツレート、オキサゾリジンジオン、スクシンイミド、アシルウレイド、グルタルイミド、ベンゾジアゼピン、第二級および第三級アルコール、ジベンザゼピン誘導体、バルプロ酸および誘導体、GABA類似体など)、鎮痛剤(モルヒネおよび誘導体、オリパビン誘導体、モルフィナン誘導体、フェニルピペリジン、2,6-メタン-3-ベンザゾカイン(benzazocaine)誘導体、ジフェニルプロピルアミンおよび同配体、サリチラート、p-アミノフェノール誘導体、5-ピラゾロン誘導体、アリール酢酸誘導体、フェナマートおよび同配体など)ならびに鎮吐薬(抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、抗ドーパミン作動薬など);中枢神経興奮薬、例えば蘇生薬(呼吸興奮薬、痙攣誘発刺激剤、精神運動興奮薬)、麻薬拮抗薬(モルヒネ誘導体、オリパビン誘導体、2,6-メタン-3-ベンゾキサシン(benzoxacine)誘導体、モルフィナン誘導体)向知性薬;精神薬理学的/向精神薬、例えば抗不安鎮静薬(ベンゾジアゼピン、プロパンジオールカルバマート)抗精神病薬(フェノチアジン誘導体、チオキサンチン(thioxanthine)誘導体、その他の三環式化合物、ブチロフェノン誘導体および同配体、ジフェニルブチルアミン誘導体、置換ベンズアミド、アリールピペラジン誘導体、インドール誘導体など)、抗うつ薬(三環式化合物、MAO阻害薬など);気道用の薬物(respiratory tract drug)、例えば中枢性鎮咳薬(アヘンアルカロイドおよびその誘導体);免疫抑制薬;薬力学作用薬、例えば末梢神経用の薬物、例えば局所麻酔薬(エステル誘導体、アミド誘導体);シナプス接合部または神経効果器接合部で作用する薬物(例えばコリン作用薬、コリン作用性効果遮断薬、神経筋遮断薬、アドレナリン作用薬、抗アドレナリン作用薬;平滑筋作用薬、例えば鎮痙薬(抗コリン作用薬、筋向性鎮痙薬)、血管拡張薬、平滑筋刺激剤;ヒスタミンおよび抗ヒスタミン薬、例えばヒスタミンおよびその誘導体(ベタゾール)、抗ヒスタミン薬(Hアンタゴニスト、Hアンタゴニスト)、ヒスタミン代謝薬物;心血管薬、例えば強心薬(植物抽出物、ブテノリド、ペンタジエノリド(pentadienolid)、マメ科生物種由来のアルカロイド、イオノフォア、-アドレナリン受容体刺激剤など)、抗不整脈薬、降圧薬、抗高脂血薬(クロフィブリン酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ホルモンおよび類似体、抗生物質、サリチル酸および誘導体)、静脈瘤抑制薬、止血薬;化学療法剤、例えば抗感染症薬、例えば外部寄生生物撲滅薬(塩素化炭化水素、ピレシン(pyrethin)、硫化化合物)、駆虫薬、抗原虫剤、抗マラリア剤、抗アメーバ薬、抗リースクマニア薬(antileiscmanial drug)、抗トリコモナス薬、抗トリパノゾーマ薬、スルホンアミド、抗マイコバクテリア薬、抗ウイルス化学療法薬など、および細胞増殖抑止剤、すなわち抗新生物薬または細胞毒性薬、例えばアルキル化薬、例えば塩酸メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、Mustargen(登録商標)、HN2)、シクロホスファミド(Cytovan、Endoxana)、イホスファミド(IFEX)、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、メルファラン(フェニルアラニンマスタード、L-サルコリシン、Alkeran(登録商標)、L-PAM)、ブスルファン(Myleran(登録商標))、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、カルマスティン(BiCNU、BCNU)、ロムスチン(CeeNU、CCNU)、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))など;植物アルカロイド、例えばビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標)、Velbe(登録商標))、パクリタキセル(Taxol(登録商標))など;代謝拮抗薬、例えばメトトレキセート(MTX)、メルカプトプリン(Purinethol(登録商標)、6-MP)、チオグアニン(6-TG)、フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(Cytosar-U(登録商標)、Ara-C)、アザシチジン(Mylosar、5-AZA))など;抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメゲン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(デュアノマイシン(duanomycin)、Cerubidine(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ピカマイシン(Picamycin)(ミトラマイシン、Mithracin(登録商標))、マイトマイシン(Mutamycin(登録商標))など、およびその他の抗細胞増殖剤、例えばヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、プロカルバジン(Mutalane)、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、アスパラギナーゼ(Elspar(登録商標))エトポシド(VePesid(登録商標)、VP-16-213)、アムサルクリン(Amsarcrine)(AMSA、m-AMSA)、ミトタン(Lysodren(登録商標))、またはミトキサントロン(Novatrone(登録商標))など;抗炎症剤;抗生物質、例えば:アミノグリコシド系、例えばアミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベリマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、ホルチミシン、ゲンタマイシン、イセパミシン、カナマイシン、ミクロノムシン(micronomcin)、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン;アンフェニコール系、例えばアジダンフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、およびテイマフェニコール(theimaphenicol);アンサマイシン系、例えばリファミド、リファンピン、リファマイシン、リファペンチン、リファキシミン;β-ラクタム系、例えばカルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、セフパマイシン(cehpamycin)、モノバクタム、オキサフェム(oxaphem)、ペニシリン;リンコサミド系、例えばクリナマイシン(clinamycin)、リンコマイシン;マクロライド系、例えばクラリスロマイシン、ジルスロマイシン(dirthromycin)、エリスロマイシンなど;ポリペプチド系、例えばアンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシンなど;テトラサイクリン系、例えばアピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリンなど;合成抗細菌剤、例えば2,4-ジアミノピリミジン、ニトロフラン、キノロンおよびその類似体、スルホンアミド、スルホン;抗真菌剤、例えば:ポリエン系、例えばアムホテリシンB、カンジシジン、デルモスタチン(dermostatin(登録商標))、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ナイスタチン、ペチロシン、ペリマイシン;合成抗真菌剤、例えばアリルアミン系、例えばブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン;イミダゾール系、例えばビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾールなど、チオカルバマート系、例えばトルシクラート、トリアゾール系、例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール;駆虫薬、例えば:アレコリン、アスピジン、アスピジノール、ジクロロフェン、エンベリン、コシン、ナフタレン、ニクロサミド、ペレチエリン、キナクリン、アラントラクトン、アモカルジン、アモスカナート、アスカリドール、ベフェニウム、ビトスカナート、四塩化炭素、カルバクロール、シクロベンダゾール、ジエチルカルバマジン、など;抗マラリア剤、例えば:アセダプソン、アモジアキン、アルテーター、アルテメーター、アルテミシニン、アルテスナート、アトバコン、ベベリン、ベルベリン、シラータ、クロルグアニド、クロロキン、クロルプロガウニル(chlorprogaunil)、キナ、シンコニジン、シンコニン、シクログアニル、ゲンチオピクリン、ハロファントリン、水酸化クロロキン、塩酸メフロキン、3-メチルアルサセチン、パマキン、プラスモシド、プリマキン、ピリメタミン、キナクリン、キニジン、キニーネ、キノシド、キノリン、ヒ酸二ナトリウム;ならびに抗原虫薬、例えば:アクラニル(acranil)、チニダゾール、イプロニダゾール、エチルスチバミン、ペンタミジン、アセタルゾン、アミニトロゾール、アニソマイシン、ニフラテル、チニダゾール、ベンジダゾール(benzidazole)、スラミンなど、が含まれる。
【0210】
コンジュゲーションおよび連結部分
本発明の結合部分およびエフェクタ部分は、たとえば、リンカーまたは連結部分Lを介してコンジュゲートすることができ、ここでLは結合または連結基のいずれかであり得る。たとえば、様々な実施形態において、結合部分とエフェクタ部分は直接結合されるか、単一分子の一部である。あるいは、連結部分は、結合部分とエフェクタ部分との間の共有結合による付着を提供することができる。連結部分は、直接結合の場合と同様に、結合部分とエフェクタ部分との間、および/またはSDC-TRAPとその分子標的との間、に所望の構造的関係を達成することができる。連結部分は、たとえば、結合部分の標的化およびエフェクタ部分の生物活性に関して不活性であり得る。
【0211】
本明細書に記載の親和性、特異性、および/または選択性アッセイを使用して、適切な連結部分を特定することができる。連結部分はサイズに基づいて選択されてもよく、たとえば、上記したサイズ特性を備えたSDC-TRAPを提供することができる。様々な実施形態において、連結部分は、既知の化学リンカーから選択または誘導され得る。連結部分は、薬物またはリガンド部分に共有結合することができる反応性官能基をいずれかの末端で終端するスペーサ基を含むことができる。目的とするスペーサ基には、脂肪族および不飽和炭化水素鎖、ヘテロ原子を含むスペーサであって、酸素(ポリエチレングリコールのようなエーテル)または窒素(ポリアミン)、ペプチド、炭水化物、ヘテロ原子を含み得る可能性のある環式または非環式の系が含まれるスペーサが含まれる。スペーサ基は、金属イオンの存在が2つ以上のリガンドを配位して錯体を形成するように、金属に結合するリガンドから構成されてもよい。特定のスペーサ要素には、1,4-ジアミノヘキサン、キシリレンジアミン、テレフタル酸、3,6-ジオキサオクタン二酸、エチレンジアミン-N,N-二酢酸、1,1’-エチレンビス(5-オキソ-3-ピロリジンカルボン酸)、4,4’-エチレンジピペリジン、が含まれる。潜在的な反応性官能基には、求核性官能基(アミン、アルコール、チオール、ヒドラジド)、求電子性官能基(アルデヒド、エステル、ビニルケトン、エポキシド、イソシアネート、マレイミド)、ジスルフィド結合を形成するかまたは金属に結合する付加環化反応が可能な官能基、が含まれる。特定の例には、第一級および第二級アミン、ヒドロキサム酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネート、オキシカルボニルイミダゾール、ニトロフェニルエステル、トリフルオロエチルエステル、グリシジルエーテル、ビニルスルホン、およびマレイミドが含まれる。SDC-TRAPで使用できる特定の連結部分には、ジスルフィドおよび安定なチオエーテル部分が含まれる。
【0212】
様々な実施形態において、連結部分は開裂可能であり、たとえば酵素的に開裂可能である。SDC-TRAPがインターナライズされた後、開裂可能なリンカーを使用して、標的細胞内のエフェクタ部分を放出することができる。連結部分の開裂のし易さは、エフェクタ分子の送達を制御するために使用することができる。たとえば、連結部分は、標的細胞におけるエフェクタ部分の長期間または持続的な放出を経時的に提供するように選択可能である(たとえば、カルバマート連結部分は、カペシタビンまたはイリノテカンのような他のカルバマートプロドラッグを開裂するために使用される同じ細胞プロセスを介してカルボキシルエステラーゼによる酵素的開裂を受けることができる)。これらおよび様々な他の実施形態において、連結部分は、良好な標的特異性および低い全身毒性を確保するのに十分な安定性を示すことができるが、SDC-TRAPの効力および効能を低下させるほど強くはない安定性、を示し得る。
【0213】
例示的なリンカーは、米国特許第6,214,345号明細書(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb))、米国特許出願公開第2003/0096743号明細書および米国特許出願公開第2003/0130189号明細書(いずれもシアトル・ジェネティクス(Seattle Genetics))、デグロート(de Groot)ら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、1999年、第42巻、p.5277;デグロート(de Groot)ら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、2000年、第43巻、p.3093;デグロート(de Groot)ら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、2001年、第66巻、p.8815;国際公開第02/083180号(シンタルガ(Syntarga));カール(Carl)ら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー・レター(J.Med.Chem.Lett.)、1981年、第24巻、p.479;デュボウィク(Dubowchik)ら、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg and Med.Chem.Lett.)、1998年、第8巻、p.3347およびドロニカ(Doronina)ら、バイオコンジュゲート・ケミストリー(BioConjug Chem.)、2006年;ドロニカ(Doronina)ら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotech)、2003年に記載されている。
【0214】
一実施形態において、SDC-TRAPは、結合部分としてガネテスピブまたはその互変異性体、およびエフェクタ部分としてSN-38またはそのフラグメント/誘導体/類似体を含む。1つの非限定的な例は、SDC-TRAP-0063である。SDC-TRAP-0063という用語には、以下の構造を有する化合物:
【0215】
【化51】
【0216】
またはその互変異性体
【0217】
【化52】
【0218】
が含まれる。
標的および対応するSDC-TRAPの同定および選択
本発明は、結合部分にコンジュゲートしたエフェクタ部分を含む広範な種類の薬理学的化合物であって、結合部分がエフェクタ部分を目的の生物学的標的に指向させる薬理学的化合物を提供する。細胞毒性剤であるエフェクタ部分にコンジュゲートしたHsp90阻害剤である結合部分を使用してがんを治療することは本発明の例示的な1つの例であるが、SDC-TRAPはその組成および用途に関して基本的により広範である。
【0219】
様々な実施形態において、生物学的標的を対象とする広範な種類のSDC-TRAP薬理学的化合物は、以下の特性を有する:
生物学的標的(目的とする細胞および/または組織の標的、たとえば腫瘍)はエフェクタ部分によって有効であるべきであり、かつエフェクタ部分は生物学的標的(たとえば腫瘍に対する化学療法剤)について既知または開発されているべきである;生物学的標的は、結合部分と特異的に相互作用する分子標的(たとえば、生物学的標的で特有に表れている、特異的に結合することが可能な生体分子)と関連付けられるべきであり、かつ、結合部分は、分子標的(たとえば、生体分子のリガンド)について既知または開発されているべきである;そして、エフェクタ部分および結合部分は、カップリングを受け入れやすく、カップリング後にそれぞれの活性を本質的に保持するべきである。さらに、コンジュゲートは分子標的に到達して相互作用することが可能であるべきであり、そして、臨床用途では対象への投与に適しているべきである(たとえば、対象は治療上有効な量に耐えることができる)。
【0220】
種々の症状/疾患状態に対する治療用の分子標的(つまり、結合部分に結合するパートナー)の例を以下の表に示す。所定の分子標的に基づいて適切な結合部分を選択することができ、かつ/または所定の症状/疾患に基づいて適切なエフェクタ部分を選択することができる。場合によっては、FDAで承認された治療薬をエフェクタ部分として使用できる(即ち、FDA承認の治療薬が本明細書に記載のエフェクタ部分、たとえば抗体ではなく結合部分である場合)。
【0221】
【表1-1】
【0222】
【表1-2】
【0223】
【表1-3】
【0224】
【表1-4】
【0225】
【表1-5】
【0226】
【表1-6】
【0227】
【表1-7】
【0228】
【表1-8】
【0229】
【表1-9】
【0230】
【表1-10】
【0231】
種々の症状/疾患状態に対する画像化の/診断上の分子標的(つまり、結合部分に結合するパートナー)の例を以下の表に示す。所定の分子標的に基づいて適切な結合部分を選択することができ、かつ/または所定の症状/疾患に基づいて適切なエフェクタ部分を選択することができる。場合によっては、FDAで承認された画像化剤/診断薬をエフェクタ部分として使用できる(つまり、FDA承認の画像化剤/診断薬が本明細書に記載のエフェクタ部分、たとえば抗体ではなく結合部分である場合)。
【0232】
【表2】
【0233】
医薬コンジュゲートの製造方法
本発明の医薬コンジュゲート、すなわちSDC-TRAPは、任意の便利な方法論を使用して調製することができる。合理的なアプローチでは、医薬コンジュゲートは、個々の成分、結合部分、場合によってはリンカー、およびエフェクタ部分から構築される。成分は、当該技術分野で知られているように、官能基を介して互いに共有結合されていてもよく、そのような官能基は、成分上に存在するか、または1つまたは複数のステップ、たとえば酸化反応、還元反応、開裂反応など、を用いて成分上に導入されてもよい。成分を共に共有結合させて医薬コンジュゲートを生成する際に使用できる官能基には、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アミノなどが含まれる。共有結合を提供するように修飾された異なる成分の特定の部分は、その成分の所望の結合活性に実質的に悪影響を与えないように選択され、たとえば、エフェクタ部分の場合、標的結合活性に影響を与えない領域が、十分な量の所望の薬物活性が維持されるように修飾されるであろう。必要かつ/または望まれる場合、当該技術分野で知られているように、成分上の特定の部分はブロッキング基を使用して保護することができる。たとえば、グリーン(Green)およびウッツ(Wuts)、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、1991年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0234】
代替的に、既知の組み合わせ法を使用して医薬コンジュゲートを製造し、薬物動態プロファイルを有する二機能性分子の同定についてスクリーニングできる潜在的な医薬コンジュゲートの大きなライブラリを製造することができる。代替的に、医薬コンジュゲートは、医薬品化学ならびに標的とする部分および薬物の既知の構造活性相関を使用して生成されてもよい。特に、このアプローチは、2つの部分をどこでリンカーに結合するかに関する洞察を提供するであろう。
【0235】
SDC-TRAP分子を調製するためのいくつかの例示的な方法は、実施例に記載されている。当業者に理解されるように、実施例に記載される例示的な方法は、他のSDC-TRAP分子を作製するために修飾することができる。
【0236】
使用方法、医薬調製物、およびキット
医薬コンジュゲートは、宿主の症状(たとえば疾患状態など)の治療に用途を見出す。これらの方法では、有効量の医薬コンジュゲートが宿主に投与され、ここで「有効量」とは、所望の結果、たとえば疾患状態またはそれに関連する症状の改善をもたらすのに十分な用量を意味する。多くの実施形態において、有効量となるように宿主に投与される必要がある医薬コンジュゲートの形態の薬物の量は、遊離薬物形態で投与されなければならないものとは異なる。量の差は変更することができ、多くの実施形態において、2倍から10倍の範囲であってもよい。特定の実施形態において、たとえば、結果としての調節された薬物動態特性が、対照の遊離薬物と比較して増強された活性をもたらす場合、有効量である薬物の量は、対応する遊離薬物の投与において必要とされる量よりも少なく、その量は、投与される遊離薬物の量の2分の1、通常は約4分の1、より通常には約10分の1であってもよい。
【0237】
医薬コンジュゲートは、所望の結果をもたらすことができる任意の便利な手段を使用して宿主に投与することができる。したがって、医薬コンジュゲートは、治療上の投与のために、様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、本発明の医薬コンジュゲートは、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて医薬組成物に製剤化することができ、固体、半固体、液体または気体の形態、たとえば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、エアロゾルのような調製物に製剤化することができる。したがって、医薬コンジュゲートの投与は、経口、頬側、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内の投与等を含む様々な方法で達成することができる。
【0238】
医薬の剤形において、医薬コンジュゲートは単独で、または他の医薬的に活性な化合物と組み合わせて投与され得る。
いくつかの実施形態において、本願のSDC-TRAPは、少なくとも1つのポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤と組み合わせることができる。一部のがんはBRCA1レベルが高く、PARP阻害に対して反応しない。DNA損傷効果を有するSDC-TRAPのHSP90阻害剤またはエフェクタ部分は、細胞をPARP阻害に対して感受性にする可能性がある。
【0239】
PARP阻害剤の非限定的な例には、タラゾパリブ(BMN-673)またはオラパリブ(AZD-2281)が含まれ得る。
【0240】
【化53】
【0241】
いくつかの実施形態において、SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩、および少なくとも1つのPARP阻害剤を含む医薬組成物が患者に提供される。
いくつかの実施形態において、SDC-TRAP-0063および少なくとも1つのPARP阻害剤を含む併用療法が患者に提供される。本明細書で使用される場合、併用療法は、治療中に患者がより多くの活性剤(すなわち、SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤)を受けることを意味する。SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤は、同時に、連続的に、または任意の順序で投与され得る。SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤は、異なる投与量で、異なる投与頻度で、または異なる経路を介して、いずれでも適切な方で投与することができる。
【0242】
一例では、SDC-TRAP-0063は、i.v.(静脈内)を介して毎週1回、患者に投与され得る。PARP阻害薬であるタラゾパリブまたはオラパリブは、同じ患者に週5日経口投与される。SDC-TRAP-0063は、25~200mg/kgの間、たとえば、40mg/kgまたは100mg/kg、投与されてもよい。タラゾパリブは0.3mg/kgで投与されてもよい。オラパリブは50mg/kgで投与されてもよい。
【0243】
いくつかの実施形態において、患者はがんを患っている。いくつかの実施形態において、がんは、乳がん、非小細胞肺がん(大細胞肺がん)、または卵巣がんから選択される。いくつかの実施形態において、がんはBRCA1および/またはBRCA2変異体である。いくつかの実施形態において、がんはBRCA1および/またはBRCA2変異体ではない。いくつかの実施形態において、患者は高レベルのBRCA1および/またはBRCA2を有する。
【0244】
本明細書で使用される場合、「同時に投与される」という用語は特に限定されず、SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤が実質的に同時に、たとえば混合物としてまたは直後の順序で投与されることを意味する。
【0245】
本明細書で使用される場合、「連続的に投与される」という用語は、特に限定されず、SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤が特定の時間に同時に投与されるのではなく、次々に、または投与と投与の間が特定の時間間隔で、グループで投与されることを意味する。時間間隔は、SDC-TRAPおよび少なくとも1つのPARP阻害剤のそれぞれの投与間で同じでも異なっていてもよく、たとえば、2分~96時間、1日~7日、または1週間、2週間、または3週間の範囲から選択してもよい。一般に、投与と投与との間の時間間隔は、数分~数時間の範囲、たとえば2分~72時間、30分~24時間、または1時間~12時間の範囲であり得る。さらなる例には、24~96時間、12~36時間、8~24時間、および6~12時間の範囲の時間間隔が含まれる。
【0246】
SDC-TRAPと少なくとも1つのPARP阻害剤のモル比は特に制限されるものではない。たとえば、SDC-TRAPおよび1つのPARP阻害剤が組成物中で組み合わせられる場合、それらのモル比は1:500~500:1、または1:100~100:1、または1:50~50:1、または1:20~20:1、または1:5~5:1、または1:1の範囲であり得る。SDC-TRAPと2つ以上の他の活性薬剤が組成物中で組み合わされる場合、同様のモル比が適用される。SDC-TRAPは、組成物の、約1%~10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~40%、または約40%~50%、または約50%~60%、または約60%~70%、または約70%~80%、または約80%~90%、または約90%~99%の所定のモル重量パーセントで含まれる。
【0247】
主題の方法は、様々な異なる疾患状態の治療に用途を見出す。特定の実施形態において、特に興味深いのは、所望の活性を有する活性剤または薬物が以前に特定されているが、その活性剤または薬物が所望の親和性および/または特異性でその標的に結合しない疾患状態での主題の方法の使用である。そのような活性薬剤または薬物を用いて、主題の方法を使用して、その標的に対する薬剤の結合親和性および/または特異性を高めることができる。
【0248】
主題の二機能性化合物を用いて治療可能な具体的な疾患状態は、医薬コンジュゲートに存在する可能性のある薬物部分の種類と同じくらい多様である。したがって、疾患状態には、腫瘍性疾患のような細胞増殖性疾患、自己免疫疾患、中枢神経系または神経変性性の疾患、心血管疾患、ホルモン異常疾患、感染症等が含まれる。
【0249】
治療とは、宿主を苦しめる疾患状態に関連する症状の少なくとも改善を意味し、その改善とは、広義の意味で使用され、少なくとも、治療中の病的状態に関連する症状のパラメータの大きさの減少、例えば、炎症やそれに伴う痛みのような治療中の病的状態に関連する症状の減少、を指す。したがって、治療には、病的状態または少なくとも該状態に関連した症状が完全に阻害されて、例えば発生が防止されるかまたは停止される、例えば終結されて、宿主がもはやその病的状態に苦しむことがないか、または少なくともその病的状態を特徴づける症状に苦しむことがないようになっている状況も含まれる。
【0250】
本発明の使用方法は、疾患の厳密な治療を超えて拡大する。たとえば、本発明は、対象を診断し、治療の対象を選択し、臨床試験に参加する対象を選択し、疾患の進行を監視し、治療の効果を監視し、対象が治療を中止すべきかまたは継続すべきかを判断し、対象が臨床的エンドポイントに到達したかどうかを判断し、疾患の再発を判断するための、臨床上のまたは研究上の設定における使用を含んでいる。本発明はまた、効果的な相互作用部分および/またはエフェクタ部分および/またはこれらの組み合わせを同定するため、有効な投薬量および投薬スケジュールを同定するため、有効な投与経路を同定するため、ならびに適切な標的(例えば特定の治療に反応しやすい疾患)を同定するため、の研究を行なう際の使用も含んでいる。
【0251】
様々な宿主が主題の方法に従って治療可能である。一般的に、このような宿主は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、肉食動物(たとえば、イヌおよびネコ)、げっ歯類(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長類(たとえば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳類のクラスに属する生物を表すためにこれらの用語が広く使用される。多くの実施形態において、宿主はヒトであろう。
【0252】
本発明は、少なくとも1つのSDC-TRAPと、治療上有効な量の少なくとも1つのSDC-TRAPを対象に投与し、それによって対象を治療するための説明書と、を含む、それを必要とする対象を治療するためのキットを提供する。本発明はまた、少なくとも1つのSDC-TRAPと、有効量の少なくとも1つのSDC-TRAPを対象に投与し、それにより対象を画像化、診断、および/または選択する説明書と、を含む、対象を画像化、診断、および/または選択するためのキットを提供する。
【0253】
通常、経口または注射可能な用量で、多くの場合保存時に安定な製剤にて、単位用量の医薬コンジュゲートを備えたキットが提供される。そのようなキットには、単位用量を含む容器に加えて、目的とする病的状態の治療における薬物の使用および付随する利益を説明する情報添付文書が含まれるであろう。好ましい化合物および単位用量は、本明細書において上述したものである。
【0254】
本発明はまた、特定のタンパク質の存在または過剰発現に基づく治療のために治療すべき対象が選択される疾患または障害の治療方法を提供する。たとえば、対象は、通常より高レベルのHsp90の存在に基づいて、がんの治療のために選択されてもよい。この場合、対象には、Hsp90に選択的に結合する結合部分を含むSDC-TRAPが投与される。
【0255】
本発明は、式(I)~(LXXII)のいずれか1つにより表される化合物、またはその任意の実施形態、あるいは、米国特許出願公開2010/0280032号明細書に開示されている表5、6、または7に示される化合物の有効量を対象に投与することを含む、対象における炎症性障害を治療または予防する方法を提供する。一実施形態において、炎症性障害を治療または予防するために、化合物または結合部分またはSDC-TRAPをヒトに投与することができる。別の実施形態において、炎症性障害は、移植拒絶反応、皮膚移植片拒絶反応、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎および骨吸収増大に関連した骨疾患;炎症性腸疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病;喘息、成人型呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性気道疾患;角膜ジストロフィー、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎;歯肉炎、歯根膜炎;結核;ハンセン病;尿毒症の合併症、糸球体腎炎、ネフローゼ;硬化性皮膚炎、乾癬、湿疹;神経系の慢性脱髄性疾患、多発性硬化症、AIDS関連の神経変性、アルツハイマー病、感染性脳膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性の脳炎;自己免疫疾患、免疫複合体性血管炎、全身性のループスおよびエリテマトーデス;全身性エリテマトーデス(SLE);心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、子癇前症;慢性肝不全、脳および脊髄の損傷、からなる群から選択される。別の実施形態において、SDC-TRAP、または米国特許出願公開2010/0280032号明細書に開示されている表5、6、または7に示されている化合物は、追加の治療薬とともに投与される。別の実施形態において、追加の治療薬は抗炎症薬であってもよい。
【0256】
一実施形態において、対象に投与されるが標的細胞に進入しないSDC-TRAPは、身体から急速に除去される。この実施形態において、標的細胞に進入しないSDC-TRAPは、SDC-TRAPの成分、SDC-TRAPの分解生成物またはSDC-TRAP分子による毒性を低減するために迅速に除去される。クリアランス率は、SDC-TRAP分子の血漿濃度を時間の関数として測定することにより決定できる。
【0257】
同様に、受動拡散により非標的細胞に進入するSDC-TRAP分子は、非標的細胞または組織から迅速に出て、対象から排除されるか、または続いて標的細胞または組織に進入して保持される。たとえば、腫瘍細胞を治療することを目的とし、たとえばHsp90を過剰発現する腫瘍細胞を標的とするSDC-TRAPは、Hsp90を過剰発現する腫瘍細胞に選択的に蓄積するであろう。したがって、正常な肺組織、心臓、腎臓等の非腫瘍組織中には、この例示的なSDC-TRAPは非常に低レベルで存在することになる。一実施形態において、本発明のSDC-TRAP分子の安全性は、非標的組織において蓄積がないことによって決定することができる。逆に、本発明のSDC-TRAP分子の安全性は、標的細胞および/または組織における選択的な蓄積によって決定することができる。
【実施例0258】
以下の実施例は、以下に簡潔に概説され、その後順に議論されるが、それらは限定することを目的とはせず例示を目的として提示されている。
実施例1:H460モデルでタラゾパリブと組み合わせたSDC-TRAP-0063の研究
【0259】
【化54】
【0260】
((S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’4’6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル 4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)またはその互変異性体。
【0261】
NCI-H460ヒト大細胞肺がん(LCLC)(非小細胞肺がん(NSCLC)とも呼ばれる)異種移植モデルは、BRCA1が高レベルであり、したがってPARP阻害の影響を受けない可能性があるため、使用した。SDC-TRAP-0063は、結合部分としてのガネテスピブとエフェクタ部分としてのSN-38とを含み、これらはDNA損傷効果によりがん細胞をPARP阻害剤に対して感受性にする可能性がある。
【0262】
この試験では、各試験群はH460異種移植片を担持している8匹のSCIDマウスを含んでいた。各群は、ビヒクル(週に1回)、タラゾパリブ(0.3mg/kg、1日1回、週に4~5日)、SDC-TRAP-0063(100mg/kg、週に1回)、またはSDC-TRAP-0063(100mg/kg、週に1回)およびタラゾパリブ(0.3mg/kg、週に5日)の併用療法、を受けた。
【0263】
SDC-TRAP-0063治療群は、8、10、15、17、22、および23日目に投与した。
タラゾパリブ治療群は、8、9、10、11、14、15、16、17、18、22、23、24、25日目に投与した。
【0264】
併用療法群は、8、15、22日目にSDC-TRAP-0063で、7、8、9、10、11、14、15、16、17、18、21、22、23、24および25日目にタラゾパリブで処置した。
【0265】
腫瘍体積を21日間追跡し、結果を図1Aに示した。SDC-TRAP-0063とタラゾパリブとを組み合わせることにより、単剤での治療と比較して効能が大幅に向上した。
【0266】
平均体重変化も21日間追跡し、タラゾパリブ、SDC-TRAP-0063、およびSDC-TRAP-0063とタラゾパリブとの組み合わせで処置した群の結果を図1Bに示した。各群で体重減少を観察し、ビヒクル処置群においてさえ観察した。
【0267】
実施例2.PDXモデルにおけるオラパリブと組み合わせたSDC-TRAP-0063の研究
この試験では、PDXモデル(高悪性度漿液性卵巣がん、OV5311)をBRCA1およびBRCA2変異マウスで使用した。各群は3匹のマウスを有し、ビヒクル、オラパリブ(50mg/kg、1日1回で週5日、4回繰り返す)、SDC-TRAP-0063(40mg/kg、週1回、4回繰り返す)または、SDC-TRAP-0063(40mg/kg、週1回、4回繰り返す)とオラパリブ(50mg/kg、1日1回、週5日、4回繰り返す)との組み合わせで、処置した。
【0268】
腫瘍体積を追跡し、結果を図2に示した。SDC-TRAP-0063とオラパリブとの組み合わせを受けた群は、単剤での処置よりも優れた効能を示した。
本発明の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付した特許請求の範囲に記載されているものである。
【0269】
特許請求の範囲において、「a」、「an」、「the」のような冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1つまたは複数を意味し得る。グループの1つまたは複数のメンバー間に「または(or)」を含む請求項または説明は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、グループのメンバー1つ、複数、またはすべてが、特定の製品またはプロセスに存在している、採用されている、または関連している場合に満たされたと見なされる。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、特定の製品またはプロセスに存在するか、採用されるか、そうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、グループのメンバーの複数、またはすべてが、特定の製品またはプロセスに存在している、採用されている、またはそうでなければ関連している実施形態を含む。
【0270】
「含む(comprising)」という用語は、開かれていることを意図しており、さらなる要素またはステップを含むことを許容するが、必要とはしないことにも留意されたい。本明細書で「含む(comprising)」という用語が使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語もしたがって包含され、開示される。
【0271】
範囲が指定されている場合、端点が含まれる。さらに、文脈および当業者の理解から別段の指示またはそうでないことが明白でない限り、範囲として表される値は、本明細書の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値または下位範囲を、文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1までとすることができることを理解されたい。
【0272】
加えて、先行技術に含まれる本発明の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外されることが本明細書で明示的に示されていなくても、それらは除外されてもよい。本発明の組成物の特定の実施形態は、先行技術の存在に関係するかどうかに関係なく、何らかの理由で、1つまたは複数の請求項から除外することができる。
【0273】
引用に明示的に記載されていない場合でも、引用されたすべての情報源、たとえば、参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、および本明細書に引用された技術は、参照により本出願に組み込まれる。引用された情報源と本願の記述が矛盾する場合、本願の記載が優先されるものとする。
【0274】
セクションおよび表の見出しは、限定することを意図したものではない。
図1A
図1B
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0274
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0274】
セクションおよび表の見出しは、限定することを意図したものではない。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩と、少なくとも1つのポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤を患者に投与することを含む、がんを治療する方法。
[付記2]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が、週に1回投与される、付記1記載の方法。
[付記3]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が静脈内投与される、付記1記載の方法。
[付記4]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が、約25~約200mg/kgで投与される、付記1記載の方法。
[付記5]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が40mg/kgで投与される、付記4記載の方法。
[付記6]
SDC-TRAP-0063、その互変異性体、またはその塩が100mg/kgで投与される、付記4記載の方法。
[付記7]
前記PARP阻害剤が、1日に1回で1週間に5日間投与される、付記1に記載の方法。
[付記8]
前記PARP阻害剤がタラゾパリブである、付記1に記載の方法。
[付記9]
タラゾパリブが経口投与される、付記8記載の方法。
[付記10]
タラゾパリブが約0.3mg/kgで投与される、付記8記載の方法。
[付記11]
PARP阻害剤がオラパリブである、付記1に記載の方法。
[付記12]
オラパリブが経口投与される、付記11に記載の方法。
[付記13]
オラパリブが約50mg/kgで投与される、付記11に記載の方法。
[付記14]
がんが、非小細胞肺がん、乳がん、および卵巣がんから選択される、付記1記載の方法。
[付記15]
患者がBRCA1変異体およびBRCA2変異体のうちの少なくとも一方である、付記1記載の方法。
[付記16]
患者がBRCA1変異体およびBRCA2変異体のうちの少なくとも一方ではない、付記1記載の方法。