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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038408
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】吸着搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20230310BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230310BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B65H5/06 D
B41J2/01 305
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B65H29/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145092
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】中野 正志
(72)【発明者】
【氏名】保科 敏和
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EC12
2C056EC31
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA44
3F049AA10
3F049CA32
3F049FC14
3F049FC22
3F049LA16
3F049LB10
3F049LB12
(57)【要約】
【課題】 反り、ゆがみや裏面に凹凸のある板状のワークであっても効率よく搬入したうえで吸着固定するとともに搬出することのできる吸着搬送装置を提供する。
【解決手段】 ワークを載置するためのテーブルと、ワークを吸着固定する吸着部と吸着部を上下に移動させる移動手段とを備える吸着手段と、ワークを搬送方向に搬送するローラーとローラーを上下に移動させる移動手段とを備える搬送手段と、吸着手段及び搬送手段の動作を制御する制御手段とを有し、制御手段は、ローラーによりワークを搬送する動作と、ローラーをテーブル表面の下方に移動させてワークを載置する動作と、吸着部をテーブル表面の上方に移動させてワークを吸着させた状態で吸着部をテーブル表面の下方に移動させてワークを固定する動作と、ワークの吸着の停止後、ローラーをテーブル表面の上方に移動させローラーによりワークを搬送方向下流へ搬出する動作とを順次行う、吸着搬送装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するための載置領域を備えるテーブルと、
前記載置領域に配置された第1の開口部と、
前記載置領域に配置された第2の開口部と、
前記ワークを吸着固定するための吸着部と、前記第1の開口部において、前記吸着部を上下に移動させる第1の移動手段とを備える吸着手段と、
前記ワークを搬送方向に搬送するためのローラーと、前記第2の開口部において前記ローラーを上下に移動させる第2の移動手段とを備える搬送手段と、
前記吸着手段及び前記搬送手段の動作を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ローラーにより前記ワークを前記載置領域に搬送するワーク搬入動作と、
前記ワーク搬入動作後、前記第2の移動手段により、前記ローラーを前記テーブル表面の下方に移動させて、前記ワークを前記載置領域に載置するワーク載置動作と、
前記ワーク載置動作後、前記第1の移動手段により、前記吸着部を前記テーブル表面の上方に移動させて、前記ワークに接触させて前記ワークを吸着させ、さらに前記ワークを吸着した状態で前記吸着部を前記テーブル表面の下方に移動させることにより、前記ワークを前記載置領域に固定するワーク固定動作と、
前記吸着部による前記ワークの吸着の停止後、前記第2の移動手段により前記ローラーを前記テーブル表面の上方に移動させ、前記ローラーにより、前記ワークを前記載置領域から前記搬送方向下流へ搬出するワーク搬出動作と、
を順次行う、吸着搬送装置。
【請求項2】
前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の前記搬送方向下流端部側に配置された、前記ワークを突き当てるための第1の突き当て手段と、前記第1の突き当て手段を上下に移動させるための第3の移動手段とを備える第1の突き当て部を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作時には、前記第3の移動手段により前記第1の突き当て手段を前記テーブル表面の上方に移動させ、前記ワーク搬出動作時には、前記第3の移動手段により前記第1の突き当て手段を前記テーブル表面の下方に移動させる、請求項1に記載の吸着搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作において、前記ワークが前記第1の突き当て手段に接触するより前に、前記ローラーの回転速度を下げる、請求項2に記載の吸着搬送装置。
【請求項4】
前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の前記搬送方向と略直交する方向の一方端部側に配置された、前記ワークを突き当てるための第2の突き当て手段と、前記第2の突き当て手段を上下に移動させるための第4の移動手段とを備える第2の突き当て部と、
前記載置領域の前記搬送方向と略直交する方向の前記一方の反対方向である他方端部側に配置された、前記ワークに接触させて前記ワークを前記他方から前記一方に移動させて前記第2の突き当て手段に押進させるための押進手段と、前記押進手段を上下に移動させるための第5の移動手段と、前記押進手段を前記搬送方向と略直交する方向へ移動させるための第6の移動手段とを備える押進部と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作を行う時には、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の上方に移動させ、かつ前記押進手段はさらに前記第6の移動手段により前記一方から前記他方に移動させ、
前記ワーク載置動作終了後、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の下方に移動させ、
前記ワーク搬出動作を行う時には、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の上方に移動させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸着搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作後かつ前記ワーク載置動作前に、前記押進手段を前記第6の移動手段により前記他方から前記一方に移動させることで前記ワークを前記第2の突き当て手段へ押進させるワーク押進動作を行う、請求項4に記載の吸着搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
さらに、前記ワーク載置動作後に、前記ワーク押進動作を行う、請求項5に記載の吸着搬送装置。
【請求項7】
前記第2の移動手段は、前記ローラーを、前記搬送方向上流から下流に向かって円弧軌道で前記テーブル表面の上方から下方に移動させる機構を備え、
前記制御手段は、
前記ワーク載置動作において、前記ローラーを、前記第2の移動手段により、前記搬送方向上流から下流への円弧軌道を描きながら前記テーブル表面の下方に移動させることで、前記ワークを前記載置領域に載置する動作を行う、請求項1から請求項6に記載の吸着搬送装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記ワーク載置動作において、前記ローラーを前記第2の移動手段により前記テーブル表面の下方に移動させる際に、前記ローラーを回転させることを特徴とする、請求項1から請求項7に記載の吸着搬送装置。
【請求項9】
前記吸着部は、上方径大、下方径小の逆円錐形状に形成された弾性部材の内部に負圧を付与することで前記ワークを吸着固定する吸着パッドである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の吸着搬送装置。
【請求項10】
前記載置領域に固定された前記ワークの表面に対して、記録ヘッドにより活性光線硬化型インクを着弾させる処理と、着弾した前記活性光線硬化型インクに対して活性光線を照射する処理とを含む処理を行う処理手段と、
前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の外周領域における前記搬送方向上流側に配置された、前記活性光線の照射を阻害するための第1の遮光板と、前記第1の遮光板を上下に移動させるための第7の移動手段とを備える第1の遮光部と、
前記搬送方向下流側に配置された、前記活性光線の照射を阻害するための第2の遮光板と、前記第2の遮光板を上下に移動させるための第8の移動手段とを備える第2の遮光部と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作時には、前記第1の遮光板を、前記第7の移動手段により前記テーブル表面の下方に移動させ、
前記ワーク搬出動作時には、前記第2の遮光板を、前記第8の移動手段により、前記テーブル表面の下方に移動させる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸着搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状のワークの吸着保持と搬送とを実施する吸着搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブルに載置された板状のワークに対して、印刷等の所定の処理を施すために、処理を実施している間ワークが移動しないようにテーブル表面に固定する方法が種々知られており、例えば、ワークの裏面に負圧を付与して吸引することで、テーブル表面に固定する方法が知られている。
【0003】
ところで、ワークに鋼板、石膏ボード、木材など、性質上反りやゆがみがある場合や、ワーク裏面に凹凸がある場合は、ワークの裏面に負圧を付与しようとする際に、大気のリークにより負圧を適切に付与できず、テーブル表面への固定が充分にできない吸着不良が発生する場合があった。
【0004】
特に、ワークに対して実施される処理の中でも、インクを吐出するための複数のノズルを有するインクジェットヘッドを走査させながら被記録媒体たるワークの外表面に対してインクを吐出してワーク外表面への画像の記録を実施するインクジェット印刷を実施する場合、ワーク外表面とインクジェットヘッドを数mm単位で近接させる必要があるところ、ワークのテーブル表面への固定が十分でないと、ワークがインクジェットヘッドに接触してしまう可能性があった。このような、反りやゆがみがあるワークを吸着固定する技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-223650号公報
【特許文献2】実開昭63-64442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2には、テーブル表面に複数の吸着パッドが配置されており、吸着パッドを用いてワーク裏面を吸着して固定する方法が提案されている。
【0007】
ところで、複数のワークに対する処理を効率よく実施するためには、ワークを吸着固定するのみならず、効率よくワークを搬入して載置して固定を行い、処理が終了したら効率よくワークを搬出することが重要となる。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、反り、ゆがみや裏面に凹凸のある板状のワークであっても効率よく搬入したうえで吸着固定するとともに搬出することのできる吸着搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0010】
すなわち、本発明において、吸着搬送装置は、ワークを載置するための載置領域を備えるテーブルと、
前記載置領域に配置された第1の開口部と、
前記載置領域に配置された第2の開口部と、
前記ワークを吸着固定するための吸着部と、前記第1の開口部において、前記吸着部を上下に移動させる第1の移動手段とを備える吸着手段と、
前記ワークを搬送方向に搬送するためのローラーと、前記第2の開口部において前記ローラーを上下に移動させる第2の移動手段とを備える搬送手段と、
前記吸着手段及び前記搬送手段の動作を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ローラーにより前記ワークを前記載置領域に搬送するワーク搬入動作と、
前記ワーク搬入動作後、前記第2の移動手段により、前記ローラーを前記テーブル表面の下方に移動させて、前記ワークを前記載置領域に載置するワーク載置動作と、
前記ワーク載置動作後、前記第1の移動手段により、前記吸着部を前記テーブル表面の上方に移動させて、前記ワークに接触させて前記ワークを吸着させ、さらに前記ワークを吸着した状態で前記吸着部を前記テーブル表面の下方に移動させることにより、前記ワークを前記載置領域に固定するワーク固定動作と、
前記吸着部による前記ワークの吸着の停止後、前記第2の移動手段により前記ローラーを前記テーブル表面の上方に移動させ、前記ローラーにより、前記ワークを前記載置領域から前記搬送方向下流へ搬出するワーク搬出動作と、
を順次行う、吸着搬送装置である。
【0011】
また、前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の前記搬送方向下流端部側に配置された、前記ワークを突き当てるための第1の突き当て手段と、前記第1の突き当て手段を上下に移動させるための第3の移動手段とを備える第1の突き当て部を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作時には、前記第3の移動手段により前記第1の突き当て手段を前記テーブル表面の上方に移動させ、前記ワーク搬出動作時には、前記第3の移動手段により前記第1の突き当て手段を前記テーブル表面の下方に移動させる、吸着搬送装置とすることもできる。
【0012】
また、前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作において、前記ワークが前記第1の突き当て手段に接触するより前に、前記ローラーの回転速度を下げる、吸着搬送装置とすることもできる。
【0013】
また、前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の前記搬送方向と略直交する方向の一方端部側に配置された、前記ワークを突き当てるための第2の突き当て手段と、前記第2の突き当て手段を上下に移動させるための第4の移動手段とを備える第2の突き当て部と、
前記載置領域の前記搬送方向と略直交する方向の前記一方の反対方向である他方端部側に配置された、前記ワークに接触させて前記ワークを前記他方から前記一方に移動させて前記第2の突き当て手段に押進させるための押進手段と、前記押進手段を上下に移動させるための第5の移動手段と、前記押進手段を前記搬送方向と略直交する方向へ移動させるための第6の移動手段とを備える押進部と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作を行う時には、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の上方に移動させ、かつ前記押進手段はさらに前記第6の移動手段により前記一方から前記他方に移動させ、
前記ワーク載置動作終了後、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の下方に移動させ、
前記ワーク搬出動作を行う時には、前記第2の突き当て手段は前記第4の移動手段により、前記押進手段は前記第5の移動手段により、各々前記テーブル表面の上方に移動させる吸着搬送装置とすることもできる。
【0014】
また、前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作後かつ前記ワーク載置動作前に、前記押進手段を前記第6の移動手段により前記他方から前記一方に移動させることで前記ワークを前記第2の突き当て手段へ押進させるワーク押進動作を行う、吸着搬送装置とすることもできる。
【0015】
また、前記制御手段は、
さらに、前記ワーク載置動作後に、前記ワーク押進動作を行う、吸着搬送装置とすることもできる。
【0016】
また、前記第2の移動手段は、前記ローラーを、前記搬送方向上流から下流に向かって円弧軌道で前記テーブル表面の上方から下方に移動させる機構を備え、
前記制御手段は、
前記ワーク載置動作において、前記ローラーを、前記第2の移動手段により、前記搬送方向上流から下流への円弧軌道を描きながら前記テーブル表面の下方に移動させることで、前記ワークを前記載置領域に載置する動作を行う、吸着搬送装置とすることもできる。
【0017】
また、前記制御手段は、
前記ワーク載置動作において、前記ローラーを前記第2の移動手段により前記テーブル表面の下方に移動させる際に、前記ローラーを回転させることを特徴とする、吸着搬送装置とすることもできる。
【0018】
また、前記吸着部は、上方径大、下方径小の逆円錐形状に形成された弾性部材の内部に負圧を付与することで前記ワークを吸着固定する吸着パッドである吸着搬送装置とすることもできる。
【0019】
また、前記載置領域に固定された前記ワークの表面に対して、記録ヘッドにより活性光線硬化型インクを着弾させる処理と、着弾した前記活性光線硬化型インクに対して活性光線を照射する処理とを含む処理を行う処理手段と、
前記吸着搬送装置は、さらに、前記載置領域の外周領域における前記搬送方向上流側に配置された、前記活性光線の照射を阻害するための第1の遮光板と、前記第1の遮光板を上下に移動させるための第7の移動手段とを備える第1の遮光部と、
前記搬送方向下流側に配置された、前記活性光線の照射を阻害するための第2の遮光板と、前記第2の遮光板を上下に移動させるための第8の移動手段とを備える第2の遮光部と、
を有し、
前記制御手段は、
前記ワーク搬入動作時には、前記第1の遮光板を、前記第7の移動手段により前記テーブル表面の下方に移動させ、
前記ワーク搬出動作時には、前記第2の遮光板を、前記第8の移動手段により、前記テーブル表面の下方に移動させる吸着搬送装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記の構成とすることで、上記課題を解決し、反り、ゆがみや裏面に凹凸のある板状のワークであっても効率よく搬入したうえで吸着固定するとともに搬出することのできる吸着搬送装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態にかかる吸着搬送装置の一例を示す斜視図である。
図2】吸着機構の一例を示す正面図である。
図3】搬送機構の一例を示す側面図である。
図4】搬送機構の上下駆動の動作を説明する概要図である。
図5】第1の突き当て部と第2の突き当て部の一例を示す正面図である。
図6】押進部の一例を示す側面図である。
図7】本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用されたインクジェット印刷装置の一例を示す概略斜視図である。
図8】本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用された活性光線硬化型インクを用いたインクジェット印刷装置の動作例を説明するフローチャートである。
図9】ワークが載せられた搬送機構を下降させてワークをテーブルに着陸させる様子を示す模式図である。
図10】本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用されたインクジェット印刷装置のブロック図である。
図11】ワークが第1の突き当て部に接触するまで搬送された際のワークの状態と押進部によるワークの押進状況の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかる実施形態について、図1から図11を適宜参照して説明する。
【0023】
まず、本実施形態にかかる吸着搬送装置の概要について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態にかかる吸着搬送装置の一例を示す斜視図である。吸着搬送装置1は、ワーク76を載置するための破線で図示された載置領域77を有するテーブル11と、テーブル11に配置された複数の第1の開口部12と第2の開口部13と、複数の第1の開口部の全部または一部に配置された複数の吸着機構14と、複数の第2の開口部13の全部または一部に配置された複数の搬送機構15と、載置領域77の搬送方向下流端部側に配置された第1の突き当て部16と、載置領域77の搬送方向と略直交する方向の一方端部側に配置された第2の突き当て部17と、載置領域77の搬送方向と略直交する方向の一方の反対方向である他方端部側に配置された押進部18とを有している。
【0025】
テーブル11は、板状のワーク76を載置するために平坦な板状の形状となっている。また、後述のように、ワーク76は、その裏側から、複数の吸着機構14の吸着部21によって吸着され、吸着されたワーク76は、吸着部21をテーブル11の表面上方から下方へ移動させることによって、テーブル11の表面まで移動して、テーブル11の表面を基準として固定されることから、テーブル11の表面は、平滑で、かつワーク76の固定に耐えられる剛性を有することが好ましい。また、テーブル11の表面にはワーク76を載置するための点線で示す載置領域77が設けられており、図1の例であれば、テーブル11の全面にわたりワーク76が載置されることから、テーブル11の表面全面が載置領域77となっている。
【0026】
また、テーブル11には、吸着機構14を配置するための第1の開口部12と、搬送機構15を配置するための第2の開口部13とが、各々複数配置されている。図1の例であれば、第1の開口部12は正方形状に、第2の開口部13は搬送方向上流から下流方向にのびる矩形状に、各々テーブル11の表面(上方)から裏面(下方)へ連通するように複数配置されているが、第1の開口部12は吸着機構14の吸着部21が、また第2の開口部13は搬送機構15のローラー31が、テーブル11の上方から下方に上下移動可能に形成されていればよい。
【0027】
複数の第1の開口部12の一部または全部には、複数の吸着機構14が配置されている。図1の例では、搬送方向上流から下流に、また、搬送方向と略直交する方向の一方端部から他方端部にわたり、各々所定の間隔を空けて複数の第1の開口部12が並んで配置されており、第1の開口部12の各々に、複数の吸着機構14が配置されている。
【0028】
図2は、吸着機構の一例を示す正面図である。図2に示す吸着機構14は、ワーク76裏面に接触し、負圧を付与して吸引する部分である吸着部21と、吸着機構14を、第1の開口部12において、テーブル11の上方から下方に移動させるための上下駆動機構22により構成されている。
【0029】
吸着部21は、裏面が凹凸を有するなど平滑ではないワーク76であってもその裏面の形状に追従して密着させることで、吸着部21内部への大気のリークによる吸着不良を防ぐように、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の弾性を有する素材を適用した吸着パッドが、吸着されるワーク76の性質等に応じて適宜用いられる。また、吸着部21には、エアーを吸引することで吸着部21に負圧を付与できる図示しない負圧ポンプ等の負圧付与部材が接続される。さらに、吸着部21に接触したワーク76裏面に対し効率的に負圧を付与して吸着できるように、吸着部21は、上方径大、下方径小の逆円錐形状に形成されている。なお、吸着部21の構成は上記に限られるものでは無く、ワーク76の性質に応じて異なる形状としたり、吸着部21に電磁石等の吸着パッドと異なる手段を用いたりすることもできる。
【0030】
また、吸着機構14には、さらに、吸着部21をテーブル11の上方に突出させて吸着部21をワーク76裏面に接触させる動作や、吸着したワーク76をテーブル11表面まで牽引する動作や、テーブル11の下方に退避させる動作を実施できるように、上下駆動可能なサーボモーター、エアシリンダー等による上下駆動機構22が接続され、吸着部21を上下に移動可能に構成している。吸着部21に電磁石等の吸着パッドと異なる手段を用いる場合には、上下駆動機構22を省略する構成や、吸着機構14を配置するための第1の開口部12を省略してテーブル11の外表面に吸着機構14を埋設するような構成も想定される。
【0031】
このように、吸着機構14は、上記の形状の吸着部21を有することで、ワーク76裏面に凹凸がある場合であっても、ワーク76の裏面と吸着部21が接する部分を確実に吸着することができ、かつ上下駆動機構22が設けられた複数の吸着部21を用いてワーク76の裏面の全体を均一に吸着することで、鋼板、石膏ボード、木材など、性質上反りやゆがみがあるワーク76であっても、反りやゆがみに応じて吸引部21を接触させ吸着させることができ、ワーク76をテーブル11の表面まで牽引して、反りやゆがみを矯正しつつテーブル11の表面の載置領域77に固定することができる。なお、吸着機構14の配置位置は図1の例に限られるものではなく、ワーク76の裏面を均一に吸着し、テーブル11の表面に固定することができるように、複数配置されていればよい。また、配置された第1の開口部12の全てに吸着機構14を配置する必要はなく、載置するワーク76に応じて一部の第1の開口部12において吸着機構14の配置を省略したり別の機構をさらに配置したりすることも可能である。
【0032】
さらに、複数の第2の開口部13の一部または全部には、複数の搬送機構15が配置されている。図1の例では、搬送方向上流から下流に、また、搬送方向と略直交する方向の一方端部から他方端部にわたり、各々所定の間隔を空けて複数の第2の開口部13が並んで配置されており、第2の開口部13の各々に、複数の搬送機構15が配置されている。
【0033】
図3は、搬送機構の一例を示す側面図である。図3の例では、搬送機構15は、ワーク76の裏側に接触させ、自身の回転によりワーク76を搬送方向上流から下流へ搬送するためのローラー31と、ローラー31を第2の開口部13において、テーブル11の上方から下方に移動させるための上下駆動機構32により構成されている。ローラー31は、図示しないモーターやベルト等による適宜の回転駆動機構を有しており、ローラー31を搬送方向上流から下流の方向へ回転させて、ワーク76を搬送させることができる。またローラー31には、さらに、ローラー31をテーブル11の上方に突出させてワーク76裏面に接触させる動作や、ローラー31をテーブル11の下方に退避させる動作などを実施できるように、上下駆動可能なサーボモーター、エアシリンダー、駆動ベルト等による上下駆動機構32が接続され、ローラー31を上下移動可能に構成されている。
【0034】
ローラー31に接続される上下駆動機構32は、テーブル11の表面と略直交する方向に上下駆動する機構でもよいが、本実施形態において使用される上下駆動機構32においては、ローラー31が、搬送方向上流から下流への円弧軌道を描く上下駆動をするように構成されている。図3の例では、ローラー31が、回転軸34を中心に搬送方向への円弧軌道を描きながらローラー31を回動させることができるよう構成された第1支持部材33により支持されている。さらに、回転軸34に関して、第1支持部材33のローラー31が設けられた端部と反対側の端部には、上下駆動機構32の駆動により搬送方向に移動することができる第2支持部材35が接続されている。
【0035】
図4は、搬送機構の上下駆動の動作を説明する概要図である。図4に示すように、ローラー31は、第2支持部材35が上下駆動機構32の駆動により搬送方向上流へ移動するに伴い、第1支持部材33に支持されたローラー31が、回転軸34を中心に、搬送方向上流から下流へ倒れるようにテーブル11の上方から下方へ、ローラー31が円弧軌道を描いて下降している。このように構成することで、ローラー31に接触して載置されているワーク76を後述の第1の突き当て部16に押し当てる軌道を取りながら、ワーク76をテーブル11の表面に着地させることができ、ワーク76を載置して固定する際の載置位置決め精度向上を図る効果を発揮できる。
【0036】
なお、搬送機構15の配置位置は図1の例に限られるものではなく、ワーク76を搬送方向上流から下流に搬送できるように複数配置されていればよい。また、配置された第2の開口部13の全てに搬送機構15を配置する必要はなく、一部の第2の開口部13では搬送機構15の配置を省略したり別の機構をさらに配置したりすることも可能である。
【0037】
さらに、図1の例ではテーブル11の載置領域77の前記搬送方向下流端部側には、搬送機構15により搬送方向上流から下流に搬送されてきたワーク76に接触させて受け止めるための上下移動可能な第1の突き当て部16と、載置領域77の前記搬送方向と略直交する方向の一方端部側には、後述の押進部18の駆動により押進されたワーク76に接触させて受け止めるための上下移動可能な第2の突き当て部17とが配置される。図1の例では、第1の突き当て部16と、第2の突き当て部17は、各々2個ずつ配置される例を示しているが、ワーク76を突き当てて固定することが出来る構成であればよい。
【0038】
図5は、第1の突き当て部と第2の突き当て部の一例を示す正面図である。本実施形態においては、第1の突き当て部16と第2の突き当て部17とは各々同じ構成を採用しており、ワーク76を接触させて載置位置を固定するための棒状のピン51(ピン53)と、ピン51(ピン53)を上下駆動させるためのサーボモーター、エアシリンダー等による上下駆動機構52により構成されている。なお、以下の説明の便宜のため、第1の突き当て部を構成するピン及び上下駆動機構をピン51及び上下駆動機構52と各々称し、第2の突き当て部を構成するピン及び上下駆動機構をピン53及び上下駆動機構54と各々称するものとする。ピン51(ピン53)は、ワーク76を接触させる必要がある場合は、上下駆動機構52(上下駆動機構54)の駆動により、テーブル11の表面から突出され、ワーク76に対して処理を実施する際などは、テーブル11の表面より下方に退避させることが出来る。ワーク76を第1の突き当て部16のピン51と第2の突き当て部17のピン53とに接触させることで、ワーク76のテーブル11上での載置位置を決定することができる。
【0039】
さらに、載置領域77の搬送方向と略直交する方向の前記一方の反対方向である他方端部側には、上下移動可能にかつ前記他方から前記一方への移動可能な、ワーク76を前記第2の突き当て部17に押進させ接触させるための押進部18が配置される。図1の例では、押進部18が2個配置される例を示しているが、ワーク76を第2の突き当て部17まで、前記他方から前記一方へ、略平行に移動させて均一に突き当てることが出来る構成であればよい。
【0040】
図6は、押進部の一例を示す側面図である。図6の例では、押進部18は、ワーク76を接触させるための棒状のピン61と、ピン61を上下駆動させるためのサーボモーター、エアシリンダー等による上下駆動機構62と、ピン61を前記他方から前記一方へ移動させて第2の突き当て部17に押進させるためのサーボモーター、エアシリンダー等による押進駆動機構63とにより構成されている。ピン61は、ワーク76を接触させる必要がある場合は、上下駆動機構62の駆動により、テーブル11の表面から突出され、ワーク76に対して処理を実施する際などは、テーブル11の表面より下方に退避させることが出来る。また、押進駆動機構63の駆動により、ワーク76を第2の突き当て部17のピン53まで押進させて突き当てることで、ワーク76の載置位置を意図する位置に決定することができる。
【0041】
以上が、本実施形態にかかる吸着搬送装置の構成例の説明となる。なお、上記で説明した吸着搬送装置を構成する部材の各々は、適宜同等の機能を有する部材に置き換えることが可能である。
【0042】
上記の通り、本実施例に係る吸着搬送装置を適用することで、ワーク76の搬送搬出と、吸着固定されたワーク76に対して適宜の処理の実施がなされる。ワーク76に対する処理の例としては、印刷、カッティング等任意のものが想定されるが、処理の一例として、紫外線等の活性光線硬化型インクを用いたインクジェット印刷をワーク76に対して実施する例を説明する。インクジェット印刷処理を実施する際には、印刷画質の確保のためには後述のインクジェットヘッドとワーク76との距離をなるべく近づける必要があるところ、反りやゆがみのある板状ワーク76の場合は近づけすぎることでワーク76がインクジェットヘッドに接触してインクジェットヘッドを破損する可能性が高くなるため、かかるワーク76を確実に固定できる本実施形態に係る吸着搬送装置を適用することが特に有効となる。
【0043】
図7は、本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用されたインクジェット印刷装置の一例を示す概略斜視図である。上記で説明した吸着搬送装置1の上方には、被記録媒体たるワーク76の表面に対して活性光線硬化型インクを吐出して付与するインクジェット印刷処理を実施するための複数ノズルを有するインクジェットヘッド71と、ワーク76の表面に付与されたインクに対して活性光線を照射するための活性光線照射装置72が搭載されたキャリッジ73が配置され、キャリッジ73には図示しない搬送方向上流又は下流の方向(X方向)に移動させるためのX軸駆動手段が接続されている。また、吸着搬送装置1には、さらに、吸着搬送装置1を前記一方方向又は前記他方方向(Y方向)に移動させるためのY軸駆動手段が接続されている。本実施形態においては、X軸駆動手段とY軸駆動手段の駆動により、吸着搬送装置1に載置されたワーク76と、キャリッジ73とを相対的に移動させつつ、インクジェットヘッド71によるインクの吐出や、活性光線照射装置72による活性光線照射を各々実施することでインクジェット印刷処理を実施する。なお、インクジェット印刷処理において使用されるインクが活性光線硬化型インクでない場合は、活性光線照射装置72の搭載を省略してもよい。
【0044】
また、吸着搬送装置1には、活性光線がインクジェットヘッド71のノズルが配置されている面へ照射されることを防ぐために活性光線の照射を阻害するための遮光板74がテーブル11の載置領域77の外周領域に、複数配置されている。さらに、複数の遮光板74のうち、ワーク76の搬送時と吸着固定時に遮光板74の上方を通過する可能性のあるもの(本実施形態では、搬送方向上流側、搬送方向下流側及び前記他方側に配置された遮光板74の各々)には、さらにワーク76の搬送時には遮光板74へのワーク76の接触を回避する動作を実施し、インクジェット印刷処理の実施時には、活性光線の照射を確実に阻害できる位置に移動させる動作を実施することができるように、サーボモーター、エアシリンダー等による上下駆動機構75が接続されている。なお、インクジェット印刷処理において使用されるインクが活性光線硬化型インクでない場合は、遮光板74の配置を省略してもよい。
【0045】
図10は、本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用されたインクジェット印刷装置のブロック図である。吸着搬送装置及びインクジェット印刷部分は、いずれも制御パソコン101とコントローラー102による各種制御手段により制御されている。コントローラー102には、各々の制御ドライバ103~制御ドライバ107を介して、吸着機構14、搬送機構15、第1の突き当て部16、第2の突き当て部17、押進部18に接続されており、制御パソコン101の指令に応じて、コントローラー102の制御により、各々の上下駆動機構の動作や、吸着部21の吸着動作、ローラー31の回転動作、等を実施している。さらに、インクジェットヘッド71は制御ボード104の制御により、制御パソコン101の指令により、任意の画像データに応じたインク吐出を実施し、活性光線照射装置72は制御ドライバ108を介して、制御パソコン101の指令に応じて活性光線の照射を実施する。また、遮光板74に接続された上下駆動機構75も、コントローラー102に接続され、制御ドライバ109を介して、制御パソコン101の指令に応じて、コントローラー102の制御により、上下駆動を実施する。また、図示しない上記のX軸駆動手段やY軸駆動手段も、同様にドライバを介して、制御パソコン101の指令に応じて、コントローラー102の制御により、X方向への駆動やY方向への駆動を実施する。
【0046】
以下、図7で説明したインクジェット印刷装置の例を用いて、本実施形態に係る吸着搬送装置によるワーク76の搬入からワーク76の吸着固定、ワーク76への処理の実施からワーク76の搬出までの動作シーケンス例を説明する。
【0047】
図8は、本実施形態にかかる吸着搬送装置が適用された活性光線硬化型インクを用いたインクジェット印刷装置の動作例を説明するフローチャートである。図8のフローチャートは、フロー81のワーク受け入れ動作、フロー82のワーク搬入動作、フロー83のワーク載置動作、フロー84のワーク固定動作、フロー85のワーク処理準備動作、フロー86のワーク処理動作、フロー87のワーク搬出動作により構成される。
【0048】
まず、フロー81によって、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ103~107及び109を介して、吸着機構14の吸着部21を前記テーブル表面より下方に移動させる動作を実施して、搬入時にワーク76が吸着機構14に接触しないよう退避させ、搬送機構15のローラー31、第1の突き当て部16のピン51と第2の突き当て部17のピン53及び押進部18のピン61をテーブル11表面より上方に移動させる動作を実施して、搬入されたワーク76をローラー31に載せつつ搬入されたワーク76を第1の突き当て部16のピン51及び第2の突き当て部17のピン53並びに押進部18のピン61にて接触させて受け止めることができるようにし、押進部18をさらに一方から他方に移動させる動作を実施してワーク76が受け入れられる空間を確保し、搬送方向上流側及び前記他方側に配置された遮光板74をテーブル11表面より下方に移動させることでワーク76の搬送時にワーク76が遮光板74に接触することを回避する、ワーク受け入れ動作を実施する。
【0049】
次に、フロー82によって、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ104を介して、ワーク76が搬送方向上流から下流の第1の突き当て部16のピン51に接触するまでの間、搬送機構15のローラー31を回転させることで、前記ワーク76をテーブル11に搬入するワーク搬入動作を実施する。ここで、例えばレーザーセンサー等により、搬送されるワーク76の位置を監視し、ワーク76が第1の突き当て部のピン51に接触する直前に、ローラー31の回転速度を、ワーク76の搬送時より遅くすることで、ワーク76が第1の突き当て部16のピン51に接触する際の衝撃を緩和し、ワーク76に打痕等の損傷が発生することを防ぐことができる。
【0050】
次に、フロー83によって、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ104及び107を介して、押進部18のピン61を前記他方から前記一方に移動させてワーク76を第2の突き当て部17のピン53へ押進させることでワーク76の載置位置を修正する1回目の押進動作と、搬送機構15のローラー31をテーブル11表面より下方に移動させることで、ワーク76をテーブル11の表面に着陸させる動作と、押進部18のピン61を前記他方から前記一方に再度移動させて前記ワーク76を前記第2の突き当て部に押進させることで、ワーク76の載置位置を再度修正する2回目の押進動作とにより、ワーク76を載置領域77に載置するワーク載置動作を実施する。
【0051】
ここで、フロー83のワーク載置動作において、搬送機構15のローラー31をテーブル11表面より下方に移動させることで、ワーク76をテーブル11の表面に着陸させる動作を実施する際に、ローラー31を搬送方向上流から下流に回転させる動作を併せて実施することが、ワーク76の位置決め精度向上のため有効である。図9は、ワークが載せられた搬送機構を下降させてワーク76をテーブルに着陸させる様子を示す模式図である。ワーク76が搬送機構15のローラー31の降下に応じてテーブル11の表面に着陸させた際の振動等の影響により、ワーク76が搬送方向下流の第1の突き当て部16のピン51に接触した状態から離れてしまい、ワーク76の載置位置がずれてしまうことが想定される。また、フロー82においてワーク76を搬入する際に、ワーク76が第1の突き当て部16のピン51に接触した衝撃などの要因でワーク76が第1の突き当て部16のピン51から搬送方向上流側へずれることで第1の突き当て部16から離れてしまい、ワーク76の載置位置がずれてしまうことも想定される。特に、本実施形態におけるインクジェット印刷処理のような位置精度が要求される処理をワーク76に対して実施する場合には、ワーク76の載置位置の位置決め精度が特に重要となる。そこで、図9で示すように、搬送機構15のローラー31をテーブル11表面より下方に移動させることで、ワーク76をテーブル11の表面に着陸させる動作を実施する際にローラー31を搬送方向上流から下流に回転させる動作を併せて実施する。これにより、ワーク76が下降している間、ワーク76が第1の突き当て部16のピン51に接触する方向である搬送方向下流側への軌道を取るため、ワーク76をテーブル11に着陸させる際にワーク76が第1の突き当て部16のピン51から離れてしまうことを防ぎ、高度の位置決め精度を実現することができる。さらに、図9で示すように、ローラー31を回転させる動作と、図4を用いて説明した、ローラー31を搬送方向上流から下流への円弧軌道の上下移動をするように構成することを組み合わせることで、ワーク76の更なる位置決め精度向上を図ることができる。
【0052】
また、フロー83において、1回目の押進動作と2回目の押進動作を実施する趣旨は次の通りである。図11は、ワークが第1の突き当て部に接触するまで搬送された際のワークの状態と押進部によるワークの押進状況の一例を示す模式図である。図1の吸着搬送装置のように第2の突き当て部17のピン53が搬送方向上流と搬送方向下流に2つ設けられた例において、ワーク76が搬送方向上流から下流の第1の突き当て部16のピン51に接触するまで搬送される際に、図11(a)の例のように、ワーク76の搬送方向上流側が前記の一方方向に傾いて搬入されることがあり得る。このような場合に、押進部18による押進動作を実施した際には、ワーク76が傾いて押進されることで、搬送方向下流側の第2の突き当て部17のピン53に最初に接触し、搬送方向下流側の第2の突き当て部17のピン53を中心に、搬送方向上流側の第2の突き当て部17のピン53に接触するまでの間ワーク76の搬送方向上流側が図11(a)に示すように回動する動作をとることがある。このような動作をすることで、押進動作が完了した際には、第1の突き当て部16のピン51まで搬送されたワーク76が、図11(b)に示すように第1の突き当て部16のピン51から離れてしまうことがある。そこで、上記のようにワーク76を搬送方向下流への軌道をとらせながら、搬送機構15のローラー31をテーブル11表面より下方に移動させてワーク76をテーブル11の表面に着陸させる動作を実施する前に、1回目の押進動作を実施することで、傾いて搬送されたワーク76が1回目の押進動作により、第1の突き当て部16のピン51に接触した状態から離れてしまったとしても、ワーク76をテーブル11の表面に着陸させる動作を実施する際に、再度ワーク76を第1の突き当て部16のピン51に接触させる軌道をとることができ、押進動作の際に発生したかかるワーク76のずれを解消することができる。そして、ワーク76がテーブル11の表面に着陸したあとで、さらに2回目の押進動作を実施することで、より確実にワーク76の位置決めをすることができる。
【0053】
次に、フロー84によって、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ104を介して、吸着機構14の吸着部21をテーブル表面より上方に移動させて、ここまでの動作を経て位置決めがなされたワーク76の裏面に接触させて吸着する動作と、ワーク76を吸着した状態で、吸着部21を下方に移動させてワーク76をテーブル11の載置領域77に固定する動作とを順次行うことで、ワーク76をテーブル11に固定するワーク固定動作を実施する。
【0054】
次に、フロー85において、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ105~107及び109を介して、第1の突き当て部16のピン51及び第2の突き当て部17のピン53並びに押進部18のピン61をテーブル11表面より下方に移動させることで、処理の動作の妨げとなることを回避し、搬送方向上流側及び前記他方側に配置された遮光板74をテーブル11表面より上方に移動させることで、活性光線の照射を阻害するのに適した位置に移動させる、ワーク処理準備動作を実施する。なお、フロー81からフロー85までの間の動作においては、搬送方向上下流側の遮光板74は、ワーク76の搬入等の妨げにならないため、フロー85の段階でテーブル11表面より上方に移動してあれば、フロー85より前の段階ではテーブル11表面より上方に移動させたままでも、適宜下方に移動させておいてもよい。
【0055】
次に、フロー86において、ワーク76に対して実施すべき適宜の処理が実施される。本実施形態における活性光線硬化型インクを用いたインクジェット印刷処理の例であれば、X軸駆動手段とY軸駆動手段の駆動により、吸着搬送装置1に載置されたワーク76と、キャリッジ73とを相対的に移動させつつ、制御PC101の指令に基づく制御ボード110の制御とドライバ108を介したコントローラー102の制御により、インクジェットヘッド71によるインクの吐出や、活性光線照射装置72による活性光線照射を各々実施することでインクジェット印刷処理を実施する。
【0056】
そして、フロー86におけるワーク76への処理が完了した後、フロー87において、制御PC101の指令に基づき、コントローラー102の制御により、ドライバ103~107を介して、吸着機構14によるワーク76の吸着動作を停止する動作と、搬送機構15のローラー31をテーブル11の上方に移動させる動作と、第2の突き当て部17のピン53と及び押進部18のピン61とをテーブル11表面より上方に移動させることでワーク76の搬出時の搬送のガイドとする動作と、ローラー31を回転させてワーク76を搬送方向下流へ搬出する動作を実施する実施するワーク搬出動作を実施する。
【0057】
以上の過程を経て、本実施形態に係る吸着搬送装置によるワーク76を搬入し、ワーク76を載置精度よく吸着固定したうえで、ワーク76への処理を実施してワーク76を搬出するまでの動作を効率よく実現することができた。
【符号の説明】
【0058】
1 吸着搬送装置
11 テーブル
12 第1の開口部
13 第2の開口部
14 吸着機構
15 搬送機構
16 第1の突き当て部
17 第2の突き当て部
18 押進部
21 吸着部
22 上下駆動機構
31 ローラー
32 上下駆動機構
51 ピン
52 上下駆動機構
53 ピン
54 上下駆動機構
61 ピン
62 上下駆動機構
63 押進駆動機構
71 インクジェットヘッド
72 活性光線照射装置
73 キャリッジ
74 遮光板
75 上下駆動機構
76 ワーク
77 載置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11