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  • 特開-人工呼吸器用フィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038419
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】人工呼吸器用フィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230310BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
A61M16/00 380
B01D53/04 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145114
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】穐田 貴士
(72)【発明者】
【氏名】包 理
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博史
(72)【発明者】
【氏名】北 博志
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA03
4D012CA20
4D012CB13
4D012CG01
4D012CG03
4D012CH01
4D012CH10
(57)【要約】
【課題】排気側で一酸化窒素を好適に除去することができる人工呼吸器用フィルタを提供する。
【解決手段】患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と排気回路とを有する人工呼吸器回路の排気回路に配置され、一酸化窒素を除去するフィルタ10であって、吸気口21と、排気口22と、を有する筐体20と、筐体20内の吸気口側に配置され、一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材30と、筐体20内の第一ろ材30よりも排気口側に配置され、二酸化窒素を除去する第二ろ材40と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と、前記患者から排出された空気を外部に排出する排気回路と、を有する人工呼吸器回路の前記排気回路に配置され、前記一酸化窒素を除去するフィルタであって、
吸気口と、排気口と、を有する筐体と、
前記筐体内の前記吸気口側に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材と、
前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材と、を有する、人工呼吸器用フィルタ。
【請求項2】
前記第一ろ材および前記第二ろ材の少なくとも一方は、粒状であり、
前記第一ろ材と前記第二ろ材との間に配置され、前記第一ろ材と前記第二ろ材とを通気可能に仕切る仕切部材をさらに備える、請求項1記載の人工呼吸器用フィルタ。
【請求項3】
前記第一ろ材および前記第二ろ材の少なくとも一方は、粒状であり、
前記第一ろ材の粉塵が前記吸気口から漏れること、および前記第二ろ材の粉塵が前記排気口から漏れることを防止する漏れ防止部材をさらに備える、請求項1または2記載の人工呼吸器用フィルタ。
【請求項4】
前記筐体は、前記吸気口が鉛直上方向に開口し、前記排気口が鉛直下方向に開口する、請求項1から3のいずれか一項記載の人工呼吸器用フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化窒素を除去する人工呼吸器用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一酸化窒素ガスを患者に供給する人工呼吸器が知られている(例えば特許文献1参照。)。一酸化窒素は、血管を拡張し、肺高血圧を改善して血液の酸素供給を改善する作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-114482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者に供給される一酸化窒素ガスの一部は、患者に吸引されることなく排気側に流れる場合がある。一酸化窒素そのものや、一酸化窒素が酸化することにより生成される二酸化窒素などの窒素酸化物は、大気汚染物質である。このため、窒素酸化物が排気側から流れ出てしまうと、狭い病室の環境汚染や、そこで働く医療従事者の健康が脅かされる懸念がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、排気側で一酸化窒素を好適に除去することができる人工呼吸器用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る人工呼吸器用フィルタは、上述した課題を解決するために、患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と排気回路とを有する人工呼吸器回路の前記排気回路に配置され、前記一酸化窒素を除去するフィルタであって、吸気口と、排気口と、を有する筐体と、前記筐体内の前記吸気口側に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材と、前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る人工呼吸器用フィルタにおいては、排気側で一酸化窒素を好適に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の人工呼吸器用フィルタを有する人工呼吸器回路の説明図。
図2】人工呼吸器用フィルタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る人工呼吸器用フィルタの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の人工呼吸器用フィルタ10を有する人工呼吸器回路1の説明図である。
【0011】
図2は、人工呼吸器用フィルタ10の断面図である。
【0012】
以下の説明において、「上」、「下」、「右」および「左」は、図2における定義に従う。なお、上は、鉛直上方向に略一致し、下は、鉛直下方向に略一致するものとする。
【0013】
人工呼吸器回路1は、吸気回路2と、排気回路3と、を有する。吸気回路2は、患者4に関して一次側であり、患者4に一酸化窒素5を吸入させる。吸気回路2は、人工呼吸器6に送り込まれる空気に一酸化窒素5を投与する一酸化窒素投与装置7と、空気を加温加湿する加温加湿器8と、を有する。排気回路3は、患者4に関して二次側であり、患者4から排出された空気を外部に排出する。排気回路3には、患者4に使用されず、呼気として吐き出された一酸化窒素5を含有する空気も流れる。人工呼吸器用フィルタ10(以下、単に「フィルタ10」という。)は、この一酸化窒素5を除去するために、人工呼吸器回路1の排気回路3に配置される。
【0014】
フィルタ10は、筐体20と、第一ろ材30と、第二ろ材40と、仕切部材50と、漏れ防止部材60と、を有する。
【0015】
筐体20は、耐酸性を有する材料(例えば合成樹脂)からなる中空の部材である。筐体20は、上下端部の径が小さくなるようにすぼまった円筒形状を有する。筐体20は、例えば直径6cm程度、長さ(高さ)11cm程度である。筐体20は、吸気口21と、排気口22と、を有する。吸気口21は、上方に開口し、排気回路3の患者4からの排気である空気が流れるホース9の一端に接続されて、この空気を筐体20に導く。排気口22は、下方に開口し、筐体20内を流れた空気を、外部に接続されるホース9の一端に導く。
【0016】
筐体20は、コーキング材などで気密性を有するように接着されることにより一体化された、上部材25および下部材26の、2つの部材からなる。上部材25と下部材26の境界27は、吸気口21近傍であって、第一ろ材30を収容する領域や、図2に示すように第一ろ材30を収容する領域よりも上側に配置される。
【0017】
第一ろ材30は、筐体20内の吸気口21側に配置され、一酸化窒素5を吸着し除去する。具体的には、第一ろ材30は、添着剤(例えば酸化剤としての過マンガン酸カリウム)が基材(例えば活性アルミナや活性炭)に添着された吸着剤31であり、ペレット形状や破砕形状などの複数の粒状を有する部材の集合体である。第一ろ材30は、一酸化窒素5を酸化して、二酸化窒素を生成する。
【0018】
第二ろ材40は、筐体20内の第一ろ材30よりも排気口22側に配置され、二酸化窒素を吸着し除去する。具体的には、第二ろ材40は、二酸化窒素を分解する添着剤(例えば炭酸カリウム)が基材(例えば活性炭)に添着された吸着剤41であり、ペレット形状や破砕形状などの複数の粒状を有する部材の集合体である。第二ろ材40は、二酸化窒素を分解し、水および二酸化炭素などを生成する。もしくは、第二ろ材40は、基材で二酸化窒素を物理的に吸着することによって、通流する空気を無害化する。
【0019】
仕切部材50は、第一ろ材30と第二ろ材40との間に配置され、第一ろ材30と第二ろ材40とを通気可能に仕切る。仕切部材50は、例えば耐酸性を有する材料(例えば合成樹脂)からなる、通気孔51が形成された網目状などの部材である。通気孔51は、粒状の吸着剤31、41が通過しないような寸法を有することで、第一ろ材30と第二ろ材40とが混ざり合うことを防止する。
【0020】
漏れ防止部材60は、フィルタ10内を空気が通る際などに、第一ろ材30の粉塵が吸気口21から漏れること、および第二ろ材40の粉塵が排気口22から漏れることを防止する。漏れ防止部材60は、第一ろ材30および第二ろ材40の粉塵が吸気口21および排気口22から漏れ出ないように捕集可能な部材(例えば不織布)からなる。
【0021】
このようなフィルタ10は、人工呼吸器6の排気回路3に配置されることで、治療に用いられることなく排気側へ流れる一酸化窒素5を、好適に除去することができる。これにより、フィルタ10は、病室の環境汚染や医療従事者への健康被害を低減することができる。
【0022】
また、フィルタ10は、一酸化窒素5および二酸化窒素を除去する2つのろ材が、1つの筐体20内に収容されることにより小型化されるため、別個のろ材を排気回路3に設ける場合に比べて、取扱性に優れている。また、フィルタ10は、仕切部材50を有することにより、2つの異なる吸着剤31、41(ろ材)が撹拌されることが低減でき、一酸化窒素5および二酸化窒素の吸着性能を低減させることを防止できる。
【0023】
さらにまた、フィルタ10は、漏れ防止部材60を有するため、吸着剤31、41の粉塵が空気の通流により漏れ出すことを防止できる。このため、フィルタ10を人工呼吸器回路1に設けることによる病室や医療従事者へ与える悪影響を低減することができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0025】
例えば、第一ろ材30と第二ろ材40とが上下方向に配置される例を説明したが、これに限らず水平方向に配置されていてもよい。
【0026】
第一ろ材30および第二ろ材40が複数の粒状の部材からなる例を説明したが、粒状以外にも一体に凝結されたような形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 人工呼吸器回路
2 吸気回路
3 排気回路
4 患者
5 一酸化窒素
6 人工呼吸器
7 一酸化窒素投与装置
8 加温加湿器
9 ホース
10 人工呼吸器用フィルタ(フィルタ)
20 筐体
21 吸気口
22 排気口
25 上部材
26 下部材
27 境界
30 第一ろ材
31 吸着剤
40 第二ろ材
41 吸着剤
50 仕切部材
51 通気孔
60 漏れ防止部材
図1
図2