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  • 特開-鉄道車両用試験装置および試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038424
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】鉄道車両用試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145123
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 鎮喜
(72)【発明者】
【氏名】小暮 浩史
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(57)【要約】
【課題】鉄道車両では一つの駆動装置で複数台の軸を駆動させ編成を組んで動作するため、複数の軸が連動した負荷試験装置が必要であり、また、鉄道特有の種々の外乱を模擬することも必要である。
【解決手段】鉄道車両用試験装置として、供試装置と継手を介して接続される負荷発電機および当該負荷発電機を制御する負荷制御器の組み合わせを複数台有し、負荷制御器は、試験対象とする鉄道車両の車体情報および走行条件に基づいて負荷発電機に対する制御指令を演算し、複数台の負荷制御器それぞれは、対応する負荷発電機を制御指令によって制御して鉄道車両の走行状態を模擬する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試装置と継手を介して接続される負荷発電機および当該負荷発電機を制御する負荷制御器の組み合わせを複数台有し、
前記負荷制御器は、試験対象とする鉄道車両の車体情報および走行条件に基づいて前記負荷発電機に対する制御指令を演算し、
前記複数台の前記負荷制御器それぞれは、対応する前記負荷発電機を前記制御指令によって制御して前記鉄道車両の走行状態を模擬する
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記負荷制御器は、前記車体情報および前記走行条件として、自らの内部に有するパラメータ情報を用いるか、または、当該パラメータ情報および外部から入力される供試制御情報を用いる
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記複数台の前記負荷制御器を統括して制御する統括制御装置を有し、
前記統括制御装置は、前記負荷制御器に替わって、前記車体情報および前記走行条件に基づいて前記制御指令を演算して、当該制御指令を前記負荷制御器それぞれに出力する
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記統括制御装置は、前記車体情報および前記走行条件として、自らの内部に有するパラメータ情報を用いるか、または、当該パラメータ情報および外部から入力される供試制御情報を用いる
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項5】
請求項3に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記統括制御装置は、前記鉄道車両が構成する編成に関する情報を演算する演算部を備え、前記車体情報、前記走行条件および前記編成に関する情報に基づいて前記制御指令を演算して、当該制御指令を前記負荷制御器それぞれに出力する
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記統括制御装置は、前記車体情報および前記走行条件並びに前記編成に関する情報を演算するための基礎データとして、自らの内部に有するパラメータ情報を用いるか、または、当該パラメータ情報および外部から入力される供試制御情報を用いる
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の鉄道車両用試験装置であって、
前記複数台の前記負荷制御器それぞれは、自らを前記複数台から除いた前記負荷制御器それぞれの前記車体情報および前記走行条件を相互に共有する
ことを特徴とする鉄道車両用試験装置。
【請求項8】
供試装置と継手を介して接続される負荷発電機を複数台組み合わせた鉄道車両用試験装置に対して、
試験の対象とする鉄道車両の車体情報および走行条件に基づいて前記負荷発電機に対する制御指令を演算し、
前記複数台の前記負荷発電機を前記制御指令によって制御して前記鉄道車両の走行状態を模擬する
ことを特徴とする鉄道車両用試験方法。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄道車両用試験方法であって、
前記鉄道車両が構成する編成に関する情報を演算し、
前記制御指令を、前記車体情報、前記走行条件および前記編成に関する情報に基づいて演算する
ことを特徴とする鉄道車両用試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用駆動装置ための試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用モータドライブシステムを試験するために、負荷発電機を制御して電気慣性制御を行う自動車用ダイナモメータシステムや動力計が提案されている。これらは、自動車のドライブトレインやエンジン等を試験するための装置である。
【0003】
例えば、特許文献1では、ダイナモメータシステムで前輪・後輪を同期速度で回転する制御について提案されている。また、特許文献2では、動力計でタイヤ慣性や車体慣性を模擬した負荷制御により、実車の走行状態を模擬する制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6525076号公報
【特許文献2】特許第6737363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した公知技術は、自動車用の試験を行う試験装置のための技術であるため、鉄道用において、模擬をしたい車両内や編成を構成する車両間の車輪径、勾配や曲線などの走行抵抗、車輪単位での空転滑走、といった鉄道特有の種々の外乱を模擬していない。
【0006】
また、鉄道車両では、一つの駆動装置で複数台の軸を駆動させ、編成を組んで動作するため、複数の軸が様々に連動することになり、複数軸が連動した負荷試験装置が必要であるが、自動車用の試験装置では模擬がされていない。そのため、鉄道用駆動装置を正しく評価することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の鉄道車両用試験装置の一つは、供試装置と継手を介して接続される負荷発電機および当該負荷発電機を制御する負荷制御器の組み合わせを複数台有し、負荷制御器は、試験対象とする鉄道車両の車体情報および走行条件に基づいて負荷発電機に対する制御指令を演算し、複数台の負荷制御器それぞれは、対応する負荷発電機を制御指令によって制御して鉄道車両の走行状態を模擬するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の鉄道車両における走行路線の勾配、曲線、トンネル区間や明かり区間などの走行抵抗、レールの継ぎ目による負荷変動、車両内や編成を構成する車両間の車輪径および車両が空転や滑走挙動の車輪単位の変動など、鉄道車両への種々の外乱や挙動を忠実に考慮した鉄道車両用駆動装置のための試験装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る複数駆動源を有する鉄道車両用試験装置の全体構成を示す図である。
図2】実施例1の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
図3】負荷発電機のトルクと供試電動機のトルクとの関係を示す図である。
図4】実施例2の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
図5】実施例3の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
図6】実施例4の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
図7】実施例5の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
図8】実施例6の負荷駆動制御システムを構成する制御ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例1から6について説明する。なお、これら実施例1から6により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0011】
また、以下の説明では、車軸としては、4軸または2軸の例を示しているが、これに限定されるものではなく、5軸以上でも適用可能である。
【0012】
更に、以下の説明では、負荷機として、三相交流機とインバータとの組み合わせの例を示しているが、直流機とチョッパとでもよい、または、単相交流機とインバータとでもよい。他方、供試機についても、三相誘導電動機を例としているが、同期電動機、直流電動機およびエンジンのいずれかでもよい。
【実施例0013】
図1は、本発明の実施例1に係る複数駆動源を有する鉄道車両用試験装置の全体構成の一例を示す図である。鉄道車両用試験装置は、試験対象である供試駆動システム1と、この供試駆動システム1に対して負荷を与える負荷駆動システム2とから構成される。この試験装置としては、実車両の編成にできるだけ沿った形態に構成することが望ましい。
【0014】
供試駆動システム1は、供試インバータ11、供試制御器12および供試電動機13から構成される。供試インバータ11は、電力源の架線もしくは設備の直流電源から直流電力が供給され、直流-交流電力変換した交流電力により供試電動機13を駆動する。この際、供試電動機13を駆動する力であるトルクは、供試制御器12によって演算される。
【0015】
供試電動機13それぞれは、継手14およびシャフト15を介して、負荷駆動システム2のそれぞれの負荷発電機21に接続される。
【0016】
ここで、図1では、例示的に供試電動機13および負荷発電機21をそれぞれ4台としているが、4台に限定されるものではない。また、複数台の供試電動機13は、それぞれ同じ種類の電動機に限定されるものではなく、それぞれ異なる種類の電動機が混在しても構わない。この点は、複数台の負荷発電機21についても、同様である。
【0017】
負荷駆動システム2は、負荷発電機21、負荷インバータ22、負荷制御器23および負荷統括制御装置24から構成される。
【0018】
負荷インバータ22の方も、電力源の架線もしくは設備の直流電源から直流電力が供給され、直流-交流電力変換した交流電力により負荷発電機21を駆動する。この際、負荷発電機21を駆動する力であるトルクは、負荷制御器23により制御される。このトルク発生のためのトルク指令は、負荷統括制御装置24により演算される。
【0019】
図2は、実施例1の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。負荷駆動制御システム31は、負荷統括制御装置24と負荷制御器23とから構成される。図2では、負荷制御器23が2台の場合を示すが、試験対象に応じて適宜2台以上とすればよい。この点は、実施例2から6における負荷制御器23の台数についても同様である。
【0020】
負荷統括制御装置24は、車両モデル51を有し、この車両モデル51は、車両や走行状態を表す車両パラメータを内部に有する。この車両パラメータを用いて、車両の走行条件や走行状態に応じたトルク指令または速度指令を演算し、負荷制御器23へ出力する。
【0021】
図3は、負荷発電機21のトルク(図3で点線で示す負荷トルク)と供試電動機13のトルク(図3で実線で示す供試トルク)との関係を示す図である。
試験対象である供試電動機13のトルク出力に対して、対抗するように負荷発電機21のトルクを出力する。双方の差分が車両の加速もしくは減速のトルクとなる(例えば、図3に示す、双方の差分による加速トルク)。
【0022】
実際の車両については、同一の供試トルクで動作した場合においても、車体の重量や乗客の荷重により車両の加速度が異なる。よって、負荷統括制御装置24は、車両モデル51を用いて車両パラメータに応じて得られる加速度を演算し、これらの加速度を再現するトルクを演算することで、車両や走行路線の状態を模擬した試験を実現する。
【0023】
以上のように、負荷制御器23が出力する指令がトルクとなり車両の挙動を模擬する方法について説明した。また、速度等の電動機を制御するパラメータであれば、車両の挙動を模擬することが可能であり、実施例1では速度指令として記した場合が該当する。
【実施例0024】
図4は、実施例2の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。実施例1の負荷駆動制御システム31と異なる点は、車両モデル51が、指令演算を車両パラメータのみならず外部から入力される供試制御情報も用いて演算する点である。ここで、供試制御情報とは、供試駆動システム1に係わる情報であって、例えば、供試トルク、供試機の速度情報などが挙げられる。
【0025】
負荷統括制御装置24が有する車両モデル51は、車両の走行条件や走行状態を模擬するための車両パラメータを内部に有する。この車両モデル51は、車両パラメータと外部から入力された供試制御情報とに基づき、負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を演算する。
【0026】
負荷統括制御装置24は、この演算された負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を負荷制御器23へ出力する。
【実施例0027】
図5は、実施例3の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。負荷統括制御装置24は、車両モデル51と編成モデル61とを有する。
【0028】
編成モデル61は、編成両数や各車両の位置等の編成に関するデータを有し、編成モデル61の内部に有するこれらデータを用いて、編成の状態を演算し編成パラメータとする。また、編成モデル61は、演算したこの編成パラメータを車両モデル51に伝達する。
【0029】
車両モデル51は、編成パラメータに基づき負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を演算する。
【0030】
負荷統括制御装置24は、演算された負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を負荷制御器23へ出力する。
【0031】
ここで、図5では、2台の車両モデル51を示しているが、例えば、上側の車両モデル51が、車両編成の1両目に対応し、編成モデル61から1両目に関する編成パラメータ1を受け取り、1両目の1つ目の車軸に対応する1番上の負荷制御器23へトルク指令1または速度指令1を、1両目の2つ目の車軸に対応する上から2番目の負荷制御器23へトルク指令2または速度指令2を、それぞれ出力することになる。
【0032】
また、下側の車両モデル51が、車両編成の2両目に対応し、編成モデル61から2両目に関する編成パラメータ2を受け取り、2両目の1つ目の車軸に対応する下から2番目の負荷制御器23へトルク指令3または速度指令3を、2両目の2つ目の車軸に対応する1番下の負荷制御器23へトルク指令4または速度指令4を、それぞれ出力することになる。
【実施例0033】
図6は、実施例4の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。実施例3の負荷駆動制御システム31と異なる点は、編成モデル61が外部から入力された供試制御情報も用いて編成状態の演算をする点である。
【0034】
負荷統括制御装置24は、実施例3と同様、車両モデル51と編成モデル61とを有する。
【0035】
編成モデル61は、編成両数や各車体の位置等の編成のデータを有している。編成モデル61は、外部からの供試トルク等の供試制御情報に基づいて、編成の状態を演算し、演算した編成パラメータを車両モデル51に伝達する。また、編成モデル61は、全車軸の状態を観測し、各車軸での連動したパラメータ演算を行う。
【0036】
車両モデル51は、編成の情報と供試制御情報に基づき、各々の車両の走行条件や走行状態を模擬した負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を演算する。
【0037】
負荷統括制御装置24は、演算された負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を負荷制御器23へ出力する。
【0038】
ここで、図6に示す2台の車両モデル51も、先の図5に示す実施例3の車両モデル51と同様の入出力態様であるが、編成モデル61には、例えば、負荷制御器23それぞれに対応した供試制御情報が入力される。
【0039】
以上のとおり、実施例4では編成モデルを加えることによって、編成の挙動と編成における車両間の干渉を模擬することが可能となる。
【実施例0040】
図7は、実施例5の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。実施例1の負荷駆動制御システム31と異なる点は、負荷統括制御装置24を備えることなく、負荷制御器23の間で情報の伝達を行い、制御情報を共有する点である。
【0041】
負荷駆動制御システム31は、複数の負荷制御器23から構成される。負荷制御器23それぞれは、車両モデル51を有する。
【0042】
負荷制御器23は、互いに他の負荷制御器23からの負荷発電機制御指令および車両モデル51の情報に基づいて、車両の状態を模擬する負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を演算する。
【実施例0043】
図8は、実施例6の負荷駆動制御システム31を構成する制御ブロックを示す図である。実施例5の負荷駆動制御システム31と異なる点は、車両モデル51が外部から入力された供試制御情報も用いて演算する点である。
【0044】
負荷駆動制御システム31は、複数の負荷制御器23から構成され、それぞれの負荷制御器23は、車両モデル51を有する。
【0045】
負荷制御器23は、互いに他の負荷制御器23からの車両モデル51の情報と外部からの供試制御情報とに基づいて、自らの車両モデル51により車両の状態を模擬する負荷発電機制御指令(トルク指令または速度指令)を演算する。
【0046】
次に、車両モデル51が有する車両パラメータについて説明する。
実施例1から実施例6における車両モデル51が有する車両パラメータとして、例えば、以下の9つの項目を設定することができる。車両パラメータは、車両や走行状態を表す情報として、以下の9つの項目に示すように、編成中の各車両の状態や路線(走行路線)の状態を表す情報である。
【0047】
(1)車輪と路面との摩擦力
車両パラメータとして、車輪と路面との摩擦力を設定する場合、車両の走行路線における区間、車両にかかる重量、編成内や車両内での車軸の位置等の情報に基づいて、この摩擦力を決定する。
【0048】
車輪と路面との摩擦力が大きいほど、トルク指令の値を大きくする。この際、走行している区間の位置情報は、速度と経過時間とから算出する。算出された区間の位置情報に基づいて現在の摩擦力の値を決定する。
【0049】
これにより、各車軸の摩擦力の変化を区間ごとに、または、車両の空転滑走等の現象、を模擬することができる。
【0050】
(2)車輪径
車両パラメータとして、車輪径を設定する場合、編成や車両内での車軸の位置と各車軸の車輪径の大きさを設定する。台車間の車輪径差、車両間の車両径差、編成間の車輪径差等の各車輪の位置関係によって影響度を変化させ、トルク指令への影響を変化させる。
【0051】
これにより、各車軸の車輪径を模擬し、車軸間で車輪径差が生じた際の現象を模擬することができる。
【0052】
(3)空制ブレーキ力
車両パラメータとして、空制ブレーキ力を設定する場合、空制ブレーキ力が大きいほどトルク指令の値を大きくする。この時、車両モデルは、各速度域での空制ブレーキ力の大きさや編成内での軸とコンプレッサ等との距離の情報を有する。
【0053】
これにより、ブレーキが印加されるタイミングや印加された際のブレーキ力の強さを模擬することができる。
【0054】
(4)車軸にかかる重量
車両パラメータとして、車軸にかかる重量を設定する場合、車種ごとの車体重量、編成内の各車両の乗車率や各駅間での乗車率の変動等のデータを、車両モデルが有し、各車軸にかかる車両の重量を変化させる。車軸にかかる重量が大きいほど、トルク指令の値を大きくする。
【0055】
これにより、各車軸にかかる重量を模擬し、乗車率の変化による重量の変化、編成内での車両の重量の偏りを模擬することができる。
【0056】
(5)勾配抵抗
車両パラメータとして、勾配抵抗を設定する場合、車両モデル51は、走行路線内における勾配の位置、勾配の大きさ、車体重量および各車両の乗車率のデータを有し、これらのデータから勾配抵抗の値を決定する。勾配抵抗が大きいほど、トルク指令の値を大きくする。この際、走行している区間の位置情報は、速度と経過時間とから算出する。算出された区間の位置情報に基づいて、現在の勾配抵抗の値を決定する。
【0057】
これにより、各車軸の勾配抵抗を模擬し、勾配区間の車両の走行状態や勾配区間での起動を模擬することができる。
【0058】
(6)曲線抵抗
車両パラメータとして、曲線抵抗を設定する場合、車両モデル51は、走行路線内における曲線の位置、曲線半径、車体の重量および各車両の乗車率のデータを有し、これらのデータから曲線抵抗の値を決定する。曲線抵抗が大きいほど、トルク指令の値を大きくする。この際、走行している区間の位置情報は、速度と経過時間とから算出する。算出された区間の位置情報に基づいて、現在の曲線抵抗の値を決定する。
【0059】
これにより、各車軸の曲線抵抗を模擬し、曲線区間の車両の走行状態を模擬することができる。
【0060】
(7)レール継ぎ目の抵抗
車両パラメータとして、レール継ぎ目の抵抗を設定する場合、車両モデル51は、走行路線内におけるレールの長さと継ぎ目間の情報、車両重量の情報を有し、レール継ぎ目による抵抗が生じるタイミングを決定する。
【0061】
レール継ぎ目の抵抗は、レール継ぎ目を通過するタイミングで、トルク指令値を大きくすることで模擬する。この時、車両の位置やレール継ぎ目の抵抗がかかるタイミングは、速度と経過時間とから演算する。
【0062】
(8)トンネル走行抵抗
車両パラメータとして、トンネル走行抵抗を設定する場合、車両モデル51は、走行路線内におけるトンネルの位置情報、試験する車体の速度とトンネル走行抵抗との関係を有し、これらのデータからトンネル走行抵抗を決定する。この時、トンネル走行抵抗が大きいほど、トルク指令を大きくする。
【0063】
これにより、各車軸のトンネル走行抵抗を模擬し、トンネル区間の車両の走行状態を模擬することができる。
【0064】
(9)出発抵抗
車両パラメータとして、出発抵抗を設定する場合、車両モデル51は、走行路線内における車両重量、乗車率、路面の状態による静止摩擦力の情報を有し、出発抵抗の大きさを決定する。この時、出発抵抗が大きいほど指令値を大きくすることで、出発抵抗を模擬する。
【0065】
これにより、起動時において、車軸にかかる出発抵抗を模擬することができる。
【0066】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
また、車両パラメータとして設定することができる上述した9つの項目は、単独で設定するだけでなく、それぞれを組み合わせて設定することも、勿論可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:供試駆動システム、2:負荷駆動システム、11:供試インバータ、
12:供試制御器、13:供試電動機、14:継手、15:シャフト、
21:負荷発電機、22:負荷インバータ、23:負荷制御器、
24:負荷統括制御装置、31:負荷駆動制御システム、51:車両モデル、
61:編成モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8