(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038428
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 6/00 20071001AFI20230310BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20230310BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B60K6/00
B62B3/00 B
B62B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145128
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木島 洸貴
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 紘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
【テーマコード(参考)】
3D050
3D235
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB01
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK06
3D235AA11
3D235AA21
3D235AA22
3D235BB32
3D235CC12
3D235CC31
3D235CC33
3D235DD13
3D235FF02
(57)【要約】
【課題】簡易的な構成により段差踏破を行うことが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両は、1つ又は複数の車輪を有する車体と、少なくとも1つの前記車輪に接続され、エネルギーを蓄積し、前記車輪の進行方向の前方の段差を踏破する際に前記エネルギーを開放するエネルギー蓄積開放機構と、開放された前記エネルギーにより発生する力を回転力として前記車輪に伝達する伝達機構とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の車輪を有する車体と、
少なくとも1つの前記車輪に接続され、エネルギーを蓄積し、前記車輪の進行方向の前方の段差を踏破する際に前記エネルギーを開放するエネルギー蓄積開放機構と、
開放された前記エネルギーにより発生する力を回転力として前記車輪に伝達する伝達機構と
を備える車両。
【請求項2】
前記車輪は、前記車体の進行方向の前側及び後側にそれぞれ配置され、
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車体の進行方向の前側に配置される前記車輪に接続される
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記エネルギーの蓄積及び開放を行うゼンマイを有するゼンマイ機構である
請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記ゼンマイに接続される回転軸部材を有し、
前記回転軸部材は、前記ゼンマイに前記エネルギーを蓄積する場合には所定の回転軸の軸回り方向のうち第1方向に回転し、前記ゼンマイに蓄積された前記エネルギーを開放する場合には前記回転軸の軸回り方向のうち前記第1方向とは反対の第2方向に回転し、
前記伝達機構は、前記回転軸部材と前記車輪との間で回転力を伝達する
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車体が前記進行方向の後方に移動する際の前記車輪の回転のエネルギーを蓄積する
請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車輪とは別個に前記回転軸部材に接続されたハンドルを回転させることで前記エネルギーを蓄積する
請求項4又は請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記エネルギー蓄積開放機構は、前記ゼンマイにエネルギーが蓄積された状態となった場合に、前記ゼンマイに対して前記回転軸部材を前記第2方向に空転させるクラッチ機構を有する
請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記伝達機構は、前記回転軸部材と一体で回転する第1スプロケットと、前記車輪と一体で回転する第2スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとの間に掛けられるチェーンと、を有する
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送台車(AGV;Auto Guided Vehicle)、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、宅配ロボット、パートナーロボット等の自走可能な車両に搭載される車輪には、走行路に存在する段差の乗り越え及び昇降を行う技術が用いられている。特許文献1には、走行輪の周方向に分割され走行輪の放射方向に出退開閉可能に支持された複数の分割部を、選択的に突出展開して段差に係合させることで、段差を乗り越える車輪の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両においては、簡易的な構成により段差踏破を行うことが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易的な構成により段差踏破を行うことが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両は、1つ又は複数の車輪を有する車体と、少なくとも1つの前記車輪に接続され、エネルギーを蓄積し、前記車輪の進行方向の前方の段差を踏破する際に前記エネルギーを開放するエネルギー蓄積開放機構と、開放された前記エネルギーにより発生する力を回転力として前記車輪に伝達する伝達機構とを備える。
【0007】
この構成によれば、エネルギー蓄積開放機構により車輪に回転力を与えて段差を踏破するため、段差を踏破する際に必要な推力を低減することができる。これにより、簡易的な構成により車両の段差踏破を行わせることができる。
【0008】
上記の車両において、前記車輪は、前記車体の進行方向の前側及び後側にそれぞれ配置され、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車体の進行方向の前側に配置される前記車輪に接続される。この構成により、車両の進行方向の後側の車輪のみに回転力を与えて車体を推進させる場合に比べて、車体の進行方向の前側において容易に段差の踏破が可能となる。
【0009】
上記の車両において、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記エネルギーの蓄積及び開放を行うゼンマイを有するゼンマイ機構である。この構成により、ゼンマイを用いた簡易的な構成により、エネルギーの蓄積及び開放が可能となる。
【0010】
上記の車両において、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記ゼンマイに接続される回転軸部材を有し、前記回転軸部材は、前記ゼンマイに前記エネルギーを蓄積する場合には所定の回転軸の軸回り方向のうち第1方向に回転し、前記ゼンマイに蓄積された前記エネルギーを開放する場合には前記回転軸の軸回り方向のうち前記第1方向とは反対の第2方向に回転し、前記伝達機構は、前記回転軸部材と前記車輪との間で回転力を伝達する。この構成により、ゼンマイによるエネルギーの蓄積及び開放を確実に行うことができる。
【0011】
上記の車両において、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車体が前記進行方向の後方に移動する際の前記車輪の回転のエネルギーを蓄積する。この構成により、エネルギー蓄積開放機構にエネルギーを容易に蓄積させることができる。
【0012】
上記の車両において、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記車輪とは別個に前記回転軸部材に接続されたハンドルを回転させることで前記エネルギーを蓄積する。この構成により、車輪を移動させることなく、エネルギー蓄積開放機構にエネルギーを容易に蓄積させることができる。
【0013】
上記の車両において、前記エネルギー蓄積開放機構は、前記ゼンマイにエネルギーが蓄積された状態となった場合に、前記ゼンマイに対して前記回転軸部材を前記第2方向に空転させるクラッチ機構を有する。この構成により、ゼンマイの巻き過ぎを防止することができる。
【0014】
上記の車両において、前記伝達機構は、前記回転軸部材と一体で回転する第1スプロケットと、前記車輪と一体で回転する第2スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとの間に掛けられるチェーンと、を有する。この構成により、エネルギー蓄積開放機構においてエネルギーの開放により回転軸部材を回転させる場合、第1スプロケット、チェーン、第2スプロケットを介して車輪に対して当該回転力を確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、簡易的な構成により車両の段差踏破を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、車両の一部の構成を拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、車輪が段差を乗り越える場合に作用する力、モーメントを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る車両100の一例を示す模式図である。
図1に示す車両100は、無人搬送台車、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、宅配ロボット、パートナーロボット等の自走可能な車両である。車両100は、車体10と、駆動輪21及び従動輪22を含む車輪20と、エネルギー蓄積開放機構30と、伝達機構40とを備える。
【0019】
車体10は、例えば鋼製のフレームである。車体10は、ベース部11と、柱状部12と、駆動装置13と、を有する。ベース部11は、例えば荷物等を積載可能な荷台等である。ベース部11は、矩形の板状に形成される。柱状部12は、ベース部11の4つの角部から上方に向けて延びている。柱状部12の上端には、作業者が把持可能な取手部14が設けられる。駆動装置13は、ベース部11に支持され、駆動輪21を駆動する。駆動装置13は、例えばモータ等の駆動源13aと、駆動源13aの駆動力を駆動輪21に伝達する伝達機構13bとを有する。
【0020】
車輪20は、例えば車体10に1つ又は複数設けられる。本実施形態において、車輪20は、例えば2つの駆動輪21及び2つの従動輪22を有する。駆動輪21は、ベース部11の後側の2つの角部に取り付けられる。駆動輪21は、駆動装置13の駆動力により回転する。駆動輪21が回転することにより、車体10が推進される。従動輪22は、ベース部11の前側の2つの角部に取り付けられる。従動輪22は、駆動輪21の回転に伴って回転する。
【0021】
図2は、車両100の一部の構成を拡大して示す斜視図であり、従動輪22の1つ(進行方向の前方左側)に対応するエネルギー蓄積開放機構30及び伝達機構40の一例を示している。
図2に示すように、エネルギー蓄積開放機構30は、ベース部11に支持され、従動輪22に接続される。本実施形態において、エネルギー蓄積開放機構30は、いわゆるプルバック型のゼンマイ機構である。エネルギー蓄積開放機構30は、本体部31と、回転軸部材32とを有する。
【0022】
本体部31は、例えばゼンマイ33を収容する。ゼンマイ33が巻かれることにより、エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーが蓄積される。ゼンマイ33が開放されることにより、エネルギー蓄積開放機構30に蓄積されたエネルギーが開放される。ゼンマイ33は、クラッチ機構34を介して回転軸部材32に接続される。クラッチ機構34としては、例えばワンウェイクラッチ等を用いることができる。
【0023】
回転軸部材32は、回転軸AX1を中心として回転する。回転軸部材32は、ゼンマイ33が開放される場合には第1方向R1に回転する。回転軸部材32は、ゼンマイ33が巻かれる場合には第1方向R1とは逆方向の第2方向R2に回転する。また、クラッチ機構34は、ゼンマイ33にエネルギーが蓄積された状態となった場合には、ゼンマイ33に対して回転軸部材32を第2方向R2に空回りさせる。
【0024】
回転軸部材32は、本体部31に対して、回転軸AX1の両側から突出した構成となっている。回転軸部材32は、回転軸AX1の一方の端部が後述する第1スプロケット41に固定される。回転軸部材32は、回転軸AX1の他方の端部がハンドル35に固定される。
【0025】
ハンドル35は、例えば作業者が把持して第2方向R2に回転させることで、ゼンマイ33を巻くことが可能となっている。ハンドル35によりゼンマイ33が巻かれることにより、エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーが蓄積される。ハンドル35は、ゼンマイ33が開放される際、回転軸部材32の回転と一体で回転するようになっている。なお、ハンドル35を第2方向R2に回転させる際、ゼンマイ33にエネルギーが蓄積された状態となった場合には、上記したクラッチ機構34が、ゼンマイ33に対してハンドル35及び回転軸部材32を第2方向R2に空回りさせる。
【0026】
伝達機構40は、第1スプロケット41と、第2スプロケット42と、チェーン43とを有する。第1スプロケット41は、回転軸部材32に固定される。第1スプロケット41は、ゼンマイが開放される際、回転軸部材32と一体で第1方向R1に回転する。また、第1スプロケット41は、ゼンマイが巻かれる際、回転軸部材32と一体で第2方向R2に回転する。
【0027】
第2スプロケット42は、従動輪22に固定され、当該従動輪22と一体で車軸AX2を中心として回転する。第2スプロケット42は、従動輪22が前進する場合には第3方向R3に回転する。第2スプロケット42は、従動輪22が後退する場合には第4方向R4に回転する。
【0028】
チェーン43は、第1スプロケット41と第2スプロケット42との間に掛け渡され、第1スプロケット41と第2スプロケット42との間で回転力を伝達する。伝達機構40は、エネルギー蓄積開放機構30のエネルギー開放時において、進行方向の前方に移動する方向に従動輪22を回転させるように設けられる。
【0029】
次に、車両100の動作について説明する。
図3から
図5は、車両100の動作の一例を示す図である。
図3に示すように、車両100は、段差に到達せず、平地走行中である場合、駆動装置13の駆動により駆動輪21を回転させ、進行方向の前方に移動する。車両100が進行方向の前方に移動する場合、従動輪22は駆動輪21の回転に伴って第3方向R3に回転する。
【0030】
図4に示すように、車両100が段差50に到達した場合、使用者は、従動輪22が第4方向R4に回転するように車両100を後退させる。これにより、第2スプロケット42がエネルギー開放時とは逆方向の第4方向R4に回転する。第2スプロケット42の回転により、チェーン43を介して第1スプロケット41がエネルギー開放時とは逆方向の第2方向R2に回転する。第1スプロケット41の回転により、回転軸部材32が第2方向R2に回転する。回転軸部材32の回転により、エネルギー蓄積開放機構30は、本体部31に収容されるゼンマイ33が巻かれ、エネルギーが蓄積された状態となる。
【0031】
また、ゼンマイ33に所定以上のトルクが加えられる場合、クラッチ機構34により、回転軸部材32がゼンマイ33に対して第2方向R2に空転するため、ゼンマイ33の巻き過ぎが防止される。なお、使用者は、ハンドル35を第2方向R2に回転させることで、エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーを蓄積してもよい。
【0032】
エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーを蓄積した状態で、車両100の従動輪22を前方に移動させる。エネルギー蓄積開放機構30では、本体部31に収容されるゼンマイが開放されることにより、回転軸部材32が第1方向R1に回転する。回転軸部材32の回転により、第1スプロケット41が一体で第1方向R1に回転する。第1スプロケット41の回転により、チェーン43を介して第2スプロケット42が第3方向R3に回転する。第2スプロケット42の回転により、従動輪22が第2スプロケット42と一体で第3方向R3に回転する。このように、エネルギー蓄積開放機構30のエネルギーを開放することで、従動輪22に回転力が付与される。この回転力により、
図5に示すように、従動輪22が段差50に容易に乗り上げることができる。
【0033】
図6は、車輪20が段差50を乗り越える場合に作用する力、モーメントを模式的に示す図である。
図6では、質量mの車両100の車輪20が接触角度θで段差50に差し掛かる場合を例に挙げて説明する。この場合、車輪20に対して作用する力及びモーメントは、以下の式1から式3により示される。ただし、f
pは、車輪20を水平方向に移動させる推進力を示す。f
aは、車輪20の回転により当該車輪20が段差50の角部から受ける摩擦力を示す。Nは、車輪20が段差50の角部から受ける垂直抗力を示す。Gは、車両100に働く重力加速度を示す。rは、車輪20の半径を示す。Mは、ゼンマイ33の出力を示す。
【0034】
fp+facosθ=Nsinθ (式1:水平方向の力のつり合い)
G=Ncosθ+fasinθ (式2:鉛直方向の力のつり合い)
M=fa・r (式3:車軸の軸回り方向のモーメントのつり合い)
【0035】
上記の式1から式3により、段差50を踏破するための車輪20の推進力は、以下の式4で示される。
【0036】
fp=Gtanθ-(M/r)(1/cosθ) (式4)
【0037】
式4に示されるように、エネルギー蓄積開放機構30のエネルギーにより従動輪22に回転力を付与することにより、段差50を踏破するための推進力fpは、駆動輪21による駆動のみの場合(M=0の場合)に比べて、(M/r)(1/cosθ)に相当する力が低減される。
【0038】
例えば、質量90[kg]の4輪の車両100が接触角度θ=60°で段差50に差し掛かる場合、車輪半径をr=0.1[m]、車輪の分担荷重を90×1/4=22.5[kgf]、ゼンマイのトルクをM=4.8[N・m]とすると、
fp=90÷4×g×tan60°-(4.8/0.1)(1/cos60°)
=382-96
=286
となる。
【0039】
したがって、駆動輪21による駆動のみの場合(fp=382)に比べて、25%程度の推進力が低減されることになる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る車両100は、1つ又は複数の車輪20を有する車体10と、少なくとも1つの車輪20に接続され、エネルギーを蓄積し、車輪20の進行方向の前方の段差を踏破する際に前記エネルギーを開放するエネルギー蓄積開放機構30と、開放された前記エネルギーにより発生する力を回転力として車輪20に伝達する伝達機構40とを備える。一例として、本実施形態に係る車両100は、駆動装置13を有する車体10と、車体10に設けられ、駆動装置13の駆動力により回転する駆動輪21と、車体10に設けられ、駆動輪21とは異なる従動輪22と、従動輪22に接続され、エネルギーを蓄積し、従動輪22の進行方向の前方の段差50を踏破する際にエネルギーを開放するエネルギー蓄積開放機構30と、開放されたエネルギーにより発生する力を回転力として従動輪22に伝達する伝達機構40とを備える。
【0041】
この構成によれば、駆動輪21の駆動装置13とは別個に設けられたエネルギー蓄積開放機構30により従動輪22にトルク(回転力)を与えて段差50を踏破するため、段差50を踏破する際に必要な推力を低減することができる。これにより、簡易的な構成により車両100の段差踏破を行わせることができる。
【0042】
本実施形態に係る車両100において、車輪20は、車体10の進行方向の前側及び後側にそれぞれ配置され、エネルギー蓄積開放機構30は、車体10の進行方向の前側に配置される車輪20に接続される。一例として、本実施形態に係る車両100において、従動輪22は、車体10の進行方向の前側に配置され、駆動輪21は、車体10の進行方向の後側に配置される。この構成により、車両100の進行方向の後側の駆動輪21のみに回転力を与えて車体10を推進させる場合に比べて、車体10の進行方向の前側において容易に段差50の踏破が可能となる。
【0043】
本実施形態に係る車両100において、エネルギー蓄積開放機構30は、エネルギーの蓄積及び開放を行うゼンマイ33を有するゼンマイ機構である。この構成により、ゼンマイ33を用いた簡易的な構成により、エネルギーの蓄積及び開放が可能となる。
【0044】
本実施形態に係る車両100において、エネルギー蓄積開放機構30は、ゼンマイ33に接続される回転軸部材32を有し、回転軸部材32は、ゼンマイ33にエネルギーを蓄積する場合には所定の回転軸AX1の軸回り方向のうち第1方向R1に回転し、ゼンマイ33に蓄積されたエネルギーを開放する場合には回転軸AX1の軸回り方向のうち第1方向R1とは反対の第2方向R2に回転し、伝達機構40は、回転軸部材32と従動輪22との間で回転力を伝達する。この構成により、ゼンマイ33によるエネルギーの蓄積及び開放を確実に行うことができる。
【0045】
本実施形態に係る車両100において、エネルギー蓄積開放機構30は、車体10が進行方向の後方に移動する際の従動輪22の回転のエネルギーを蓄積する。この構成により、エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーを容易に蓄積させることができる。
【0046】
本実施形態に係る車両100において、エネルギー蓄積開放機構30は、従動輪22とは別個に回転軸部材32に接続されたハンドル35を回転させることでエネルギーを蓄積する。この構成により、従動輪22を移動させることなく、エネルギー蓄積開放機構30にエネルギーを容易に蓄積させることができる。
【0047】
本実施形態に係る車両100において、エネルギー蓄積開放機構30は、ゼンマイ33にエネルギーが蓄積された状態となった場合には、ゼンマイ33に対して回転軸部材32を第2方向R2に空転させるクラッチ機構34を有する。この構成により、ゼンマイ33の巻き過ぎを防止することができる。
【0048】
本実施形態に係る車両100において、伝達機構40は、回転軸部材32と一体で回転する第1スプロケット41と、従動輪22と一体で回転する第2スプロケット42と、第1スプロケット41と第2スプロケット42との間に掛けられるチェーン43と、を有する。この構成により、エネルギー蓄積開放機構30においてエネルギーの開放により回転軸部材32を回転させる場合、第1スプロケット41、チェーン43、第2スプロケット42を介して従動輪22に対して当該回転力を確実に伝達することができる。
【0049】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、エネルギー蓄積開放機構30として、ゼンマイ33を有するゼンマイ機構を例に挙げて説明したが、これに限定されない。エネルギー蓄積開放機構30は、ゼンマイ機構とは異なる構成であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、第1スプロケット41と回転軸部材32とが第1方向R1及び第2方向R2の両方向に一体で回転する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。第1スプロケット41は、例えば第1方向R1には力を伝達し、第2方向R2には力を伝達しないトルクダイオードを介して回転軸部材32に接続された構成であってもよい。この場合、回転軸部材32から第1スプロケット41には力が伝達されるが、第1スプロケット41を第2方向R2に回転させる場合には回転軸部材32に力が伝達されず、ゼンマイ33にエネルギーが蓄積されないことになる。この構成では、従動輪22を後退させる第4方向R4に回転させてもゼンマイ33にエネルギーが蓄積されないため、エネルギーの蓄積を考慮することなく所望のタイミングで従動輪22を第4方向R4に回転させることができる。なお、この構成では、ハンドル35を第2方向R2に回転させることで、ゼンマイ33にエネルギーを蓄積させることができる。
【符号の説明】
【0051】
θ 接触角度
R1 第1方向
R2 第2方向
R3 第3方向
R4 第4方向
AX1 回転軸
AX2 車軸
10 車体
11 ベース部
12 柱状部
13 駆動装置
14 取手部
20 車輪
21 駆動輪
22 従動輪
30 エネルギー蓄積開放機構
31 本体部
32 回転軸部材
33 ゼンマイ
34 クラッチ機構
35 ハンドル
40 伝達機構
41 第1スプロケット
42 第2スプロケット
43 チェーン
50 段差
100 車両