(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038435
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】土中蓄熱工法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/35 20060101AFI20230310BHJP
E02D 31/14 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
E02D27/35
E02D31/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145149
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521394439
【氏名又は名称】株式会社番匠伊藤組
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(57)【要約】
【課題】遮水シートを用いることなく地盤の凍上を抑制することが可能な土中蓄熱工法を提供する。
【解決手段】土中蓄熱工法であって、不凍液を加温し、凍結抑制領域に埋設されたパイプPに加温した不凍液を循環させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中蓄熱工法であって、
不凍液を加温し、
凍結抑制領域に埋設されたパイプに加温した不凍液を循環させる。
【請求項2】
請求項1に記載の土中蓄熱工法であって、
前記凍結抑制領域の凍結開始タイミングよりも前に不凍液を循環させる。
【請求項3】
請求項2に記載の土中蓄熱工法であって、
前記凍結開始タイミングは、前記凍結抑制領域における過去の気温情報から決定される。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の土中蓄熱工法であって、
不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合に加温する。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の土中蓄熱工法であって、
前記凍結抑制領域の土中に保護砂層を設け、前記保護砂層内又は前記保護砂層よりも下層に前記パイプを埋設する。
【請求項6】
請求項5に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層は、少なくとも100mmの深さを有するように設けられている。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層の下端に前記パイプが埋設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、土中蓄熱工法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されているように、地盤の凍上を防止する凍上防止方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、置換工法、断熱工法、土質改良法、薬剤工法、遮水工法といった凍上防止方法の課題を解決するため、遮水シートを用いた凍上防止方法を提案している。
【0005】
本開示は、遮水シートを用いることなく地盤の凍上を抑制することが可能な土中蓄熱工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、土中蓄熱工法であって、不凍液を加温し、凍結抑制領域に埋設されたパイプに加温した不凍液を循環させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、遮水シートを用いることなく地盤の凍上を抑制することが可能な土中蓄熱工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
本実施形態に係る土中蓄熱工法は、凍結抑制領域に埋設されたパイプに加温した不凍液を循環させるものである。例えば、冬期に土壌の凍上が問題となるような地域において、家畜を収容する建物を建てて春に引き渡すような場合、引き渡した後には家畜等が収容されて熱源も稼働するため建物内部の温度が上昇して凍上が問題とならなくなる。この場合でも、引き渡し前には凍上を抑制する必要がある。従来から凍上防止方法は様々なものが提案されているが、本実施形態に係る土中蓄熱工法は一時的な凍上抑制を目的としているため、より簡便な工法であることが求められる。
【0011】
このような背景に鑑みて、本実施形態に係る土中蓄熱工法は、不凍液を加温し、凍結抑制領域に埋設されたパイプに加温した不凍液を循環させるものである。不凍液の加温は公知のボイラーが用いられる。不凍液の循環には公知のポンプが用いられる。ボイラーによって加温された不凍液は、パイプに送り出される。パイプは循環経路を形成しており、凍結抑制領域の凍上を抑制できるように配置されている。
【0012】
ボイラーによって加温した不凍液を循環させるのは凍上が懸念される時期になる。一例としては、前年の日平均気温が零度以下となる日を基準として、不凍液の加温循環タイミングを決めることができる。また、ポンプを駆動して不凍液は常時循環させ、不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合にボイラーを稼働させて加温してもよい。不凍液の温度は、様々な方法によって測定したり推定したりすることができる。例えば、土中の温度を測定し、その測定温度から不凍液の温度を推定することができる。例えば、ボイラーに設置された水温センサで不凍液の温度を測定することができる。例えば、土中の温度測定結果と水温センサにおける温度測定結果とを組み合わせて、不凍液の温度を推定したり測定したりすることができる。
【0013】
図1を参照しながら、本実施形態に係る土中蓄熱工法について説明を続ける。凍結抑制領域である屋内には、表面側から順に、土間表面10、土砂層12、保護砂層14、地盤層16が設けられている。土間表面10は、コンクリートの表面層である。土砂層12は、土砂及び石を含む層である。
【0014】
保護砂層14は、地盤層16にパイプPを配置し、その上に200mm程度の砂層として形成されている。パイプPに加温された不凍液が流れると、パイプPの周辺では土壌の凍結が回避される。図示されているように、凍結領域Fは、建物外部では地表面まで達して凍上状態となっている。凍結領域Fは、パイプPの周辺では保護砂層14に到達しないようになっているが、隣接するパイプPの間では保護砂層14内に到達している。保護砂層14は、凍結領域Fが侵入してきても更に土砂層12及び土間表面10を持ち上げようとする力を発生させないように、砂の可塑的な性状で分散させている。このような分散性能を発揮させるため、保護砂層14は、100mmから300mm程度の厚さとすることが好ましい。
【0015】
パイプPの埋設位置は、土間表面10から650mm程度となっている。パイプPの埋設位置は、設置地域の凍結深度に応じて適宜設定される。例えば、標準的な凍結深度が1200mmとされている地域の場合、異常気象年も考慮して凍結深度を1300mmと設定し、中間深度の650mmをパイプPの埋設位置とする。地表面近くにパイプPを埋設すると、熱が土間表面10から放熱されてしまい熱を帯びた層が薄くなってしまうため、凍結深度に応じた位置にパイプPを配置することが好ましい。
【0016】
上記説明したように、本実施形態に係る土中蓄熱工法は、不凍液を加温し、凍結抑制領域に埋設されたパイプに加温した不凍液を循環させる。
【0017】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、凍結抑制領域の凍結開始タイミングよりも前に不凍液を循環させる。
【0018】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、凍結開始タイミングは、凍結抑制領域における過去の気温情報から決定される。
【0019】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合に加温する。
【0020】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、凍結抑制領域の土中に保護砂層を設け、保護砂層内又は保護砂層よりも下層にパイプを埋設する。
【0021】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、保護砂層は、少なくとも100mmの深さを有するように設けられている。
【0022】
本実施形態に係る土中蓄熱工法では、保護砂層の下端にパイプが埋設されている。
【0023】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0024】
P:パイプ
F:凍結領域
10:土間表面
12:土砂層
14:保護砂層
16:地盤層
【手続補正書】
【提出日】2022-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中蓄熱工法であって、
凍結抑制領域に埋設されたパイプに不凍液を循環させ、
水温センサで不凍液の温度を測定し、
その測定の結果、不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合に不凍液を加温する。
【請求項2】
土中蓄熱工法であって、
凍結抑制領域の土中に砂のみからなる保護砂層を設け、前記保護砂層内又は前記保護砂層よりも下層に前記パイプを埋設し、
前記パイプに加温した不凍液を循環させる。
【請求項3】
請求項2に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層は、少なくとも100mmの深さを有するように設けられている。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層の下端に前記パイプが埋設されている。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の土中蓄熱工法であって、
前記パイプに不凍液を循環させ、
水温センサで不凍液の温度を測定し、
その測定の結果、不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合に不凍液を加温する。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中蓄熱工法であって、
凍結抑制領域に埋設されたパイプに不凍液を循環させ、
水温センサで不凍液の温度を測定し、
その測定の結果、不凍液の温度が設定温度よりも低くなると見込まれた場合又は不凍液の温度が設定温度よりも低くなった場合に不凍液を加温する。
【請求項2】
請求項1に記載の土中蓄熱工法であって、
凍結抑制領域の土中に砂のみからなる保護砂層を設け、前記保護砂層内又は前記保護砂層よりも下層に前記パイプを埋設し、
前記パイプに加温した不凍液を循環させる。
【請求項3】
請求項2に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層は、少なくとも100mmの深さを有するように設けられている。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の土中蓄熱工法であって、
前記保護砂層の下端に前記パイプが埋設されている。