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特開2023-38451コンクリート結合材及びそれを用いたコンクリート
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  • 特開-コンクリート結合材及びそれを用いたコンクリート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038451
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】コンクリート結合材及びそれを用いたコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20230310BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 7/153 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 7/26 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20230310BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/10 Z
C04B18/08 Z
C04B22/06 Z
C04B22/14 B
C04B7/153
C04B7/26
C04B14/38 A
C04B14/42 Z
C04B16/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145185
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】717001145
【氏名又は名称】株式会社HPC沖縄
(72)【発明者】
【氏名】阿波根 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】今本 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西薗 博美
(72)【発明者】
【氏名】多田 修二
(72)【発明者】
【氏名】細矢 仁
(72)【発明者】
【氏名】深澤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】喜屋武 盛次
(72)【発明者】
【氏名】有賀 俊二
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB23
4G112PA17
4G112PA20
4G112PA24
4G112PA26
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB11
(57)【要約】
【課題】 セメントを全く使用しないので、セメント由来のCO2削減を完全に実現でき、且つ、強度を維持でき、収縮ひび割れ抵抗性を高めることのできるコンクリート結合材及びそれを用いたコンクリートを提供することを課題とする。
【解決手段】 高炉スラグと、バイオマス燃焼灰を含有し、該高炉スラグの含有量が、50質量%~90質量%であり、該バイオマス燃焼灰の含有量が、10質量%~50質量%であることを特徴とするコンクリート結合材とするものであり、その結合材を用いたコンクリートとするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグと、バイオマス燃焼灰を含有し、該高炉スラグの含有量が、50質量%~90質量%であり、該バイオマス燃焼灰の含有量が、10質量%~50質量%であることを特徴とするコンクリート結合材。
【請求項2】
フライアッシュが含有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート結合材。
【請求項3】
石膏を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコンクリート結合材。
【請求項4】
コンクリート用膨張剤を含有することを特徴とする請求項1~請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート結合材。
【請求項5】
前記の高炉スラグは微粉末のブレーン比表面積は、2500cm2/g~13000cm2/gであることを特徴とする請求項1~請求項4までのいずれか1項に記載のコンクリート結合材。
【請求項6】
前記のバイオマス燃焼灰は、木質バイオマス燃焼灰であることを特徴とする請求項1~請求項5までのいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項7】
前記の請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセメント結合材を用いたことを特徴とするコンクリート。
【請求項8】
鉄筋に代えて連続繊維補強線材を用いたことを特徴とする請求項7項に記載のコンクリート。
【請求項9】
前記の請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセメント結合材を用いたことを特徴とするプレストレストコンクリート。
【請求項10】
緊張材が連続繊維補強線材であることを特徴とする請求項9項に記載のコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 コンクリート結合材に関するものに関し、特にセメントを使用しない結合材及びそれを用いたコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の排出量を低減することは、地球温暖化対策の緊急の課題となっており、日本政府は、地球温暖化対策推進本部で、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とすることを目標に掲げています。
【0003】
コンクリートの原材料として使用されているセメントの製造には、1トン製造するに当たり758KgのCO2を排出するとされ、CO2排出量の大きい材料であるとされている。
【0004】
これは、セメントの生産過程で、燃焼エネルギーを得るために化石燃料を多量に使用することに加え、石灰石の脱炭酸反応(CaCO3→CaO+CO2)が生じることによるとされている。
【0005】
コンクリートに由来するCO2の発生量を抑制するために、コンクリート結合材を構成するセメント材料として、従来、広く用いられてきたポルトランドセメントに代えて、鉄鋼産業の副産物である高炉スラグを適量ポルトランドセメントと混合した結合材を用いることにより、CO2発生量を大幅に抑制することができることが知られている(特開2013-203635号公報)。
【0006】
製鋼スラグには未反応のCaO(フリーライム)が含まれており、これがCO2に起因する炭酸イオンと反応してCaCO3を生成する。
【0007】
高炉スラグを用いたコンクリート(以下、「高炉セメントコンクリート」と言う)は、 上記の通り、CO2低減に大きく寄与することから、RC造建築構造物への適用が期待されている。
【0008】
しかしながら、高炉セメントコンクリートは、コンクリート結合材を構成するセメント材料として普通ポルトランドセメントを用いたコンクリート(以下、「普通コンクリート」と言う)に比べて、中性化抵抗性や収縮ひび割れ抵抗性が劣るとされており、長期にわたり湿潤環境下となる地下躯体等への適用にほぼ限定されているというのが現状であった。
【0009】
高炉セメントコンクリートの収縮ひび割れ抵抗性は、普通コンクリートに比べ、特に高温時に低下する傾向が指摘されている。
【0010】
その大きな要因の一つとして、高炉セメントコンクリートは、高温時に自己収縮ひずみが大きくなること等が挙げられており、高炉セメントコンクリートは普通コンクリート比べて、ゲル水の生成量が多い、即ち、水和に必要な水分が多いことも指摘されている。
【0011】
水和に多くの水分を消費するため、コンクリート内部が乾燥状態となり、自己収縮ひずみが増大し、その結果、収縮ひび割れ抵抗性が低下しているとされている。
【0012】
また、高炉セメントコンクリートは硬化初期の養生の影響を鋭敏に受けることが一般的に知られている。
【0013】
また、高炉セメントコンクリートの物性を改良して、高炉セメントコンクリートの強度や 耐久性を向上させることを企図する試みとして、石膏と炭酸カルシウムとを添加した高炉セメントコンクリート用のセメント組成物(特開平5-116996号公報)が開示されている。
【0014】
また、そのような組成からなるセメント組成物において、更に、炭酸カルシウムと石膏との配合比を、炭酸カルシウムの配合比の方が相対的に大きくなるようにした高炉セメントコンクリート用のセメント組成物(国際公開第2007/046297号)等も開示されている。
【0015】
また、石膏が炭酸カルシウムの含有量の1.6倍以上とすることで優れた収縮ひび割れ抵抗性を有する高炉セメントコンクリート用のコンクリート結合材(特開2016-23105号公報)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2013-203635号公報
【特許文献2】特開平5-116996号公報
【特許文献3】国際公開第2007/046297号
【特許文献4】特開2016-23105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の特許文献1では、高炉セメントコンクリート特有の問題である、中性化抵抗性や収縮ひび割れ抵抗性が劣る問題がある。
【0018】
特許文献2、3では、セメントが20%以上含まれており、セメント由来のCO2が達成されていない。耐硫酸塩性の向上や蒸気養生を前提としたコンクリートの高強度化を目的としているものであり、収縮ひび割れ抵抗性の向上させる手段については、不十分である。
【0019】
特許文献4では、収縮ひび割れ抵抗性に優れた高炉セメントコンクリートの開発であり、結合材は、ポルトランドセメント、高炉スラグ、炭酸カルシウム、石膏とからなるものであり、セメントが含まれており、セメント由来のCO2削減は不十分である。
【0020】
本発明は、セメントを全く使用しないので、セメント由来のCO2削減を完全に実現でき、且つ、強度を維持でき、収縮ひび割れ抵抗性を高めることのできるコンクリート結合材及びそれを用いたコンクリートを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、高炉スラグと、バイオマス燃焼灰を含有し、該高炉スラグの含有量が、50質量%~90質量%であり、該バイオマス燃焼灰の含有量が、10質量%~50質量%であることを特徴とするコンクリート結合材である。
【0022】
該高炉スラグは、粉末状の高炉スラグ粉末を好ましく用いることができる。この高炉スラグ粉末は、高炉で銑鉄を製造する際に副生する高炉スラグを溶融状態で水冷・破砕して得られる水砕スラグを粉末状にしたものを使用することができる 。JIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」で規定される高炉スラグ微粉末4000が好ましい。
【0023】
バイオマス燃焼灰は、草木類を燃焼した際に生じるもので、主灰、ボイラー灰、サイクロン灰、バグフィルター灰等である。焼却設備で得られる箇所によって主灰、ボイラー灰、サイクロン灰、バグフィルター灰に区分される。原料は、間伐材、林地残材、樹皮、おが屑、バーク、稲わら、建築廃材、製材端材、木くず、紙くず、繊維くず、木質チップ、PKS(パームヤシ殻)などが使用されている。
【0024】
セメントに代えて高炉スラグを使用し、刺激剤としてバイオマス燃焼灰を混合するものである。
【0025】
高炉スラグ微粉末は、SiO2、Al23の鎖状結合による高石灰アルミノシリケートガラス質のため強い潜在水硬性を発揮する。この潜在水硬性により、水と反応するとCa2+が溶出し、その表面に透過性の悪い不定形のケイ酸アルミニウム水和物の膜を形成する。この膜が高炉スラグ粒子への水の浸透および粒子からのイオンの溶出を抑制するため水和は進行しなくなる。
【0026】
しかし、Ca(OH)2およびNaOHを含んでいるポルトランドセメントのようなアルカリ性刺激剤を用いると、コンクリート中の間隙水がpH12以上の強アルカリ性となり、高炉スラグ微粉末にOHを吸着させガラス構造が破壊されることからSiO2、Al23、CaOおよびMgOが溶出し、カルシウムシリケート水和物やカルシウムアルミネート水和物を生成して硬化する。
【0027】
従って、セメントを使用せず、高炉スラグ微粉末を使用してコンクリート結合材とする場合には、アルカリ刺激剤を添加する必要がある。
【0028】
バイオマス燃焼灰は、原料により異なるが、pHは、木材燃焼灰で12以上、パーム椰子殻燃焼灰で13以上となっており、強アルカリ性である。
【0029】
バイオマス燃焼灰の強アルカリ性刺激により、高炉スラグ微粉末のSiO2、Al23の鎖状結合によるガラス質が破壊され、SiO2、Al23、CaOおよびMgOが溶出し、カルシウムシリケート水和物やカルシウムアルミネート水和物を生成して硬化するものである。
【0030】
また、高炉スラグ微粉末の含有量を45%程度より多くすると、セメントの硬化が遅くなり、コンクリート打設後1~3日の初期材齢の強度が低くなるため、コンクリート工事に支障をきたす事が知られている。このため材齢初期にエトリンガイトの生成量を増加させて結晶成長を促進させることが有効とされ、石膏を刺激剤として添加することが試みられている。
【0031】
これは、初期強度に有効なエトリンガイトの生成を促進するために必要な硫酸イオンが高炉スラグ微粉末には少なく(0.8%程度)、石膏(硫酸カルシウム)には多く含まれている(25%以上)ためです。バイオマス燃焼灰には、硫酸イオンが3~6%程度含まれています。
【0032】
このため、バイオマス燃焼灰を25%以上添加することにより、エトリンガイトの生成を促進し、材齢初期の強度を強化することができます。
【0033】
請求項2では、フライアッシュが含有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート結合材である。
【0034】
該フライアッシュは、「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されるフライアッシュI種、II種、III種およびIV種や、これらの粉砕物等が挙げられる。
【0035】
コンクリート結合材の100質量部に対する、フライアッシュの配合量は、好ましくは5~40質量部、より好ましくは10~35質量部、さらに好ましくは15~30質量部、特に好ましくは18~25質量部である。該量が5質量部以上であれば、前養生時間が短い場合であっても、コンクリートの初期強度発現性をより向上させることができる。
【0036】
請求項3では、石膏を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコンクリート結合材である。
【0037】
石膏は、硫酸カルシウムと水からなる鉱物である。化学組成上では以下の3種類に分類される。結晶の形態によって、性質や名称が変化する。
【0038】
1)二水石膏(CaSO4・2H2O)…硫酸カルシウム二水和物と称され、通常「石膏」というと、二水石膏のことを指す。
2)半水石膏(CaSO4・1/2H2O)…硫酸カルシウム半水和物と称される。
3)無水石膏(CaSO4)…硫酸カルシウム無水物と称される。
【0039】
コンクリート結合材の100質量部に対する、石膏の配合量は、石膏の無水物換算での含有量が、5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0040】
請求項4では、コンクリート用膨張剤を含有することを特徴とする請求項1~請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート結合材である。
【0041】
該コンクリート用膨張剤は、コンクリート用として使用されている膨張材であればいずれの膨張材を使用しても良く、コンクリート結合材に対して1~30kg/m3が好ましい。さらに好ましくは、10~25kg/m3であり、さらに好ましくは、15~25Kg/m3である。膨張材が30Kg以上の場合には、大幅に強度が低下する可能性が有り、好ましくない。
【0042】
請求項5では、前記の高炉スラグは微粉末のブレーン比表面積は、2500cm2/g~13000cm2/gであることを特徴とする請求項1~請求項4までのいずれか1項に記載のコンクリート結合材である。
【0043】
該高炉スラグとしては、打ち込む場合の流動性、作業性等を考慮すれば、粉末度が2500cm2/g以上13000cm2/g以下のものが好ましく、3000cm2/g以上7000cm2/g以下のものがより好ましい。
【0044】
請求項6では、前記のバイオマス燃焼灰は、木質バイオマス燃焼灰であることを特徴とする請求項1~請求項5までのいずれか1項に記載のセメント組成物である。
【0045】
該木質バイオマス燃焼灰は、原料が間伐材、林地残材、樹皮、おが屑、バーク、稲わら、建築廃木材、製材端材、木くず、紙くず、木質チップ、PKS(パームヤシ殻)などの燃焼灰である。
【0046】
請求項7では、前記の請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセメント結合材を用いたことを特徴とするコンクリートである。
【0047】
上記のセメント結合材を用いたコンクリートとすることにより、セメントを使用しないコンクリートを実現でき、セメント由来のCO2削減を完全に実現できる。
【0048】
請求項8では、鉄筋に代えて連続繊維補強線材を用いたことを特徴とする請求項7項に記載のコンクリートである。
【0049】
該連続繊維補強線材は、線状の連続繊維補強材であり、連続的に線状に成形された強化繊維補強材によるPC緊張材である。連続繊維補強材は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維などをエポキシ樹脂などでバインドしたものの総称である。
【0050】
該強化繊維補強材は、軽量、高強度、高弾性、耐食性、非電導、非磁性など、鉄筋よりも優れた比物性(引張強度、弾性率)と鉄筋にはない優れた耐食、電磁気的特性とを有しているものである。
【0051】
線状とは、丸形、矩形、異形(リブ、インデンテッド表面)ロッド、組紐状ロッド、撚り線状ストランド、格子状等、概して線形形状またはその形状単位からの2次元または3次元組立て形状を意味するものである。
【0052】
上記の結合材を鉄筋コンクリートの原材料に使用すると、コンクリートの炭酸化による中性化により、pHが11以下となり、鉄筋表面の不動態皮膜が破壊され、発錆し、体積膨張し、コンクリートにひび割れが発生するが、連続繊維補強線材は優れた耐食性を有する材料であるため、コンクリートの爆裂などの恐れがなく、信頼性の高いコンクリートとなる。
【0053】
請求項9では、前記の請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセメント結合材を用いたことを特徴とするプレストレストコンクリートである。
【0054】
プレストレストコンクリートは、機械的特性(圧縮強度、曲げ強度等) に優れるセメント系材料に緊張材によるプレストレスを導入してなるコンクリートである。
【0055】
プレテンション方式の場合は、プレストレスを導入する緊張材として高張力鋼材(PC鋼材)を使用し、PC鋼線や2~3本撚りPC鋼撚り線をロングライン方式または型枠定着方式によって緊張しながらコンクリートを打設し、養生硬化後にこれらのPC鋼線を切断してプレストレストコンクリートを製造するものである。
【0056】
上記のセメント結合材を用いたプレストレスとコンクリートとすることにより、セメントを使用しないのでセメント由来のCO2削減を完全に実現したプレストレストコンクリートを実現できる。
【0057】
請求項10では、緊張材が連続繊維補強線材であることを特徴とする請求項9項に記載のコンクリートである。
【0058】
プレストレストコンクリートにおいて、緊張材を連続繊維補強線材とすることにより、優れた耐食性を実現できると共に、バイオマス燃焼灰を使用しており、硫酸イオンが3~6%程度含まれており、エトリンガイトの生成を促進するため、コンクリートの膨張効果による緊張材のグリップ力が強化され、曲げ強度、曲げ靱性を高めることができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明は以下の効果を奏する。
1)高炉スラグと、バイオマス燃焼灰を含有したコンクリート結合材とすることにより、セメントを使用しないコンクリートを実現できる。
【0060】
2)高炉スラグと、バイオマス燃焼灰を含有したコンクリート結合材とすることにより、セメント由来のCO2を完全に削減できる。
【0061】
3)前記のコンクリート結合材にフライアッシュが含有されていることにより、コンクリートの初期強度発現性を向上させることができる。
【0062】
4)前記のコンクリート結合材に石膏を含有することにより、初期材齢の強度の低下を防止できる。
【0063】
5)高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、2500cm2/g~13000cm2/gとすることにより、流動性、作業性を向上させることができる。
【0064】
6)前記のバイオマス燃焼灰を木質バイオマス燃焼灰とすることにより、初期材齢における強度発現性を向上させることができる。
【0065】
7)前記のコンクリート結合材を用いると、CO2を大幅に削減できるカーボンネガティブ骨材が実現でき、そのカーボンネガティブ骨材を用いてコンクリートを製造すると、CO2を大幅に削減できるコンクリートを実現できる。
【0066】
8)前記のコンクリート結合材を用いた鉄筋コンクリートの鉄筋に変え、連続繊維補強線材を用いることにより、炭酸化処理により中性化されたコンクリートにおいても、腐食による膨張やひび割れ、爆裂などの問題が解消される。
【0067】
9)前記のコンクリート結合材を用いてプレストレストコンクリートを製造すると、CO2を大幅に削減できるプレストレストコンクリートを実現できる。
【0068】
10)前記のコンクリート結合材を用いたプレストレストコンクリートの緊張材が連続繊維補強線材とすると、炭酸化処理により中性化されたコンクリートにおいても、腐食による膨張やひび割れ、爆裂などの問題が解消され、更に、バイオマス燃焼灰のエトリンガイト促進効果により、緊張材のグリップ力が強化され、曲げ強度、曲げ靱性の高い、プレストレストコンクリートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明によるコンクリート結合材を用いたコンクリートの強度試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明の一つの実施の形態について説明する。
【0071】
本実施例のコンクリートは、高炉スラグ微粉末とバイオマス燃焼灰を結合材として用い、セメントを使用しないコンクリートである。
【0072】
以下にコンクリートの配合を示す。(単位kg/m3)
【0073】
高炉スラグ微粉末 :437.5(70%)
バイオマス燃焼灰 :187.5(30%)
水 :175
細骨材 :1627
混和剤:減水剤 : 7.50
【0074】
上記の配合のコンクリートを打設し、コンクリート硬化体を製作した。コンクリート硬化体のサイズは、長さ50cm×幅50cm×厚さ50mmとした。
【0075】
材齢25日において、強度試験を行った。図1に本発明によるコンクリート結合材を用いたコンクリートの強度試験を示す。(1)に試験前の試験体、(2)に試験後の試験体を示す。
【0076】
試験結果は以下の通りである。
材齢 25日
最大荷重 79.2 Kg
強度 40.4N/mm2
【0077】
コンクリート硬化体について、材齢28日において、目視で確認した。
1)表面のひび割れはなかった。
2)白化現象もなかった。
3)表面が緻密になっていた。
【0078】
以上説明したように、本発明によるコンクリート結合材を用いたコンクリートは、セメントを全く使用せず、高炉スラグとバイオマス燃焼灰による結合材とすることにより、セメント由来のCO2削減を完全に実現でき、且つ、強度を維持でき、収縮ひび割れのないコンクリートが実現できるものである。
また、CO2削減と共に、バイオマス燃焼灰の膨張効果により、緊張材のグリップ力を強化した曲げ強度と曲げ靱性を高めたプレストレストコンクリートを実現できるものである。
【符号の説明】
【0079】
1 試験装置
2 試験体
図1