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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038490
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/28 20060101AFI20230310BHJP
   C08K 5/1525 20060101ALI20230310BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20230310BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20230310BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230310BHJP
   C09J 123/28 20060101ALI20230310BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230310BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20230310BHJP
【FI】
C08L23/28
C08K5/1525
C09D123/28
C09D7/48
C09D5/00 D
C09J123/28
C09J11/06
C09D11/106
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145250
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕生
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅規
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰高
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BB241
4J002EL056
4J002FD036
4J002GH00
4J002GH01
4J002GJ01
4J038CB171
4J038GA02
4J038JA64
4J038KA02
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA09
4J038NA03
4J038PC08
4J039AD04
4J039BC03
4J039BE24
4J039EA34
4J039FA02
4J040DA181
4J040GA10
4J040HB36
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA29
4J040KA38
4J040LA07
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】経時安定性に優れた塩素化ポリオレフィン樹脂の樹脂組成物の提供。
【解決手段】塩素化ポリオレフィン樹脂、及びオキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリオレフィン樹脂、及び
オキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が、塩素化ポリオレフィン樹脂100重量%に対して、15重量%~45重量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が、2,000~250,000である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む塗料。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含むインキ。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物を含むプライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、引張強さ、引裂強さ、衝撃強さ等の機械的性質や、耐水性、耐薬品性に優れている上、軽量かつ安価であり、成形し易いといった多くの優れた性質も有していることから、シート、フィルム、成形物等様々な用途に用いられている。しかし、ポリオレフィン樹脂は、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂に比べ、非極性かつ結晶性が良好であるため、塗装性や接着性に劣るという欠点を有している。
【0003】
一方、ポリオレフィン樹脂を塩素化して得られる塩素化ポリオレフィン樹脂は、非極性樹脂基材に対する塗装性や接着性に優れる。しかし、塩素化ポリオレフィン樹脂は、樹脂分子内で起こる脱塩酸により、pHの低下、粘度の低下、着色の発生等、経時的に品質が低下することが知られている。これまでに、エポキシ化合物や単官能のオキセタン化合物を安定化剤として使用して経時安定性を向上させる試みがなされているものの(特許文献1)、その効果は十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4420314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、経時安定性に優れた塩素化ポリオレフィン樹脂の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、従来のエポキシ化合物や単官能のオキセタン化合物の代わりに、オキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物を用いることにより、意外にも、塩素化ポリオレフィン樹脂の経時安定性をより向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
したがって、本発明は、以下を提供する。
[1] 塩素化ポリオレフィン樹脂、及び
オキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物
を含む樹脂組成物。
[2] 塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率が、塩素化ポリオレフィン樹脂100重量%に対して、15重量%~45重量%である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が、2,000~250,000である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 酸化防止剤をさらに含む、上記[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5] 酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤を含む、上記[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物を有効成分とする塗料。
[7] 上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物を有効成分とするインキ。
[8] 上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物を有効成分とする接着剤。
[9] 上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物を有効成分とするプライマー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、経時安定性に優れた塩素化ポリオレフィン樹脂の樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、塩素化ポリオレフィン樹脂、及びオキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物を含む樹脂組成物を提供する。
【0010】
(1.塩素化ポリオレフィン樹脂)
本発明の樹脂組成物は、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む。塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の少なくとも一部を塩素化して得られる樹脂である。
【0011】
(1-1.ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、オレフィン(α-オレフィン)重合体である。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
【0012】
ポリオレフィン樹脂は、1種単独のオレフィン(α-オレフィン)の重合体であってもよく、2種以上のオレフィン(α-オレフィン)の共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、ポリオレフィン樹脂はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0013】
ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材への十分な付着性を発現させるという観点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。
【0014】
ここで、「ポリプロピレン」とは、構成単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。「エチレン-プロピレン共重合体」とは、構成単位としてエチレン由来の構成単位及びプロピレン由来の構成単位を含む共重合体を表す。「プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、構成単位としてプロピレン由来の構成単位及びブテン由来の構成単位を含む共重合体を表す。「エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、構成単位としてエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位及びブテン由来の構成単位を含む共重合体を表す。樹脂本来の性能を著しく損なわない量である限り、これらの(共)重合体は、構成単位として他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。
【0015】
ポリオレフィン樹脂は、全構成単位100mol%中、プロピレン由来の構成単位を50mol%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、構成単位にプロピレンを含む非極性樹脂基材に対する付着性を保持し得る。
【0016】
エチレン-プロピレン共重合体又はプロピレン-1-ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、好ましくは、全構成単位100mol%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位が3~50mol%であり、プロピレン由来の構成単位が50~97mol%である。
【0017】
ポリオレフィン樹脂の融点の下限は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が50℃以上であると、塩素化して得られる塩素化ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。そのため、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、インキとして用いる際、印刷中のブロッキングを抑制し得る。
【0018】
ポリオレフィン樹脂の融点の上限は、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が150℃以下であると、塩素化して得られる塩素化ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、塗膜が硬くなりすぎることを抑制し得る。そのため、塗膜が適度な柔軟性を発揮し得る。
【0019】
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは60,000以上、特に好ましくは100,000以上である。塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の上限は、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下、特に好ましくは250,000以下である。重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いるGPCにより測定できる。
【0020】
(1-2.塩素化)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂に対する塩素ガスの吹込みなど公知の方法により、ポリオレフィン樹脂を塩素化して得られる樹脂である。
【0021】
塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率(塩素化度)は、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量を100重量%に対して、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましく、33重量%以下が特に好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素化度(塩素含有率)の下限は、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量を100重量%に対して、15重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、25重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましい。これにより、極性を一定以下に抑えることができ、ポリオレフィン基材などの非極性基材に対し充分な接着性を得ることができる。塩素化度はJIS-K7229に準じて測定し得る。すなわち、塩素含有樹脂を酸素雰囲気下で燃焼させ、発生した気体塩素を水で吸収し、滴定により定量する「酸素フラスコ燃焼法」を用いて測定できる。
【0022】
(1-3.酸成分による変性)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、一実施形態において、さらに酸成分で変性されていてもよい。酸成分としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体が挙げられる。当該誘導体としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸無水物、α,β-不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0023】
α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
塩素化ポリオレフィン樹脂における酸成分の総グラフト重量(変性度)は、原料の未変性のポリオレフィン樹脂の重量を100重量%とした場合、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0重量%以上、1重量%以上であり得る。グラフト重量(重量%)は、例えば、アルカリ滴定法又はフーリエ変換赤外分光法により求めることができる。
【0025】
(1-4.塩素化ポリオレフィン樹脂の特徴)
塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上、特に好ましくは50,000以上である。塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の上限は、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。
【0026】
(1-5.塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を塩素化することにより製造することができる。
【0027】
したがって、塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法は、(a)ポリオレフィン樹脂を準備する工程、(b)塩素化する工程を、この順で含み得る。塩素化ポリオレフィン樹脂が、酸成分でさらに変性されている場合には、工程(a)後の任意の時点で、(c)酸成分で変性する工程を含み得る。工程(c)は、工程(a)後任意の時点で行うことができるが、工程(b)よりも先に行うことが好ましい。
【0028】
工程(b)における塩素化は、原料となる樹脂を予めクロロホルムなどの塩素系溶媒に溶解してから行ってもよい。塩素化は、例えば、原料となる樹脂の溶液のような反応系への塩素ガスの吹き込みにより行う。塩素ガスの吹き込みの際の圧力は制限されず、常圧でも加圧下でもよい。塩素ガスの吹き込みの際の温度は特に制限されないが、例えば、50~140℃である。塩素ガスの吹き込みの際の圧力は特に制限されないが、例えば、0.1MPa~0.5MPaである。
【0029】
塩素ガスの吹き込みは、紫外線の照射下で行ってもよいし、ラジカル反応開始剤の存在下で行ってもよいが、ラジカル反応開始剤の存在下で行うことが好ましい。
【0030】
ラジカル反応開始剤としては、例えば、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合反応開始剤であり得、例えば、有機過酸化物系化合物及びアゾニトリル類が挙げられる。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルm-トリルパーオキサイド、ジ(m-トリル)ベンゾイル、ジラウリルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシオクトエート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。アゾニトリル類としては、例えば、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0031】
工程(b)におけるラジカル反応開始剤の使用量は、原料の樹脂100重量%に対して、好ましくは0.001重量%~1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.1重量%である。
【0032】
工程(c)は、例えば、酸成分をグラフト共重合によりポリオレフィン鎖に導入する方法を用いることができる。グラフト共重合は、特に限定されるものではなく、溶融法、溶液法などの公知の方法を用いて行うことができる。溶融法による場合、操作が簡単である上、より短時間で反応させることができる。溶液法による場合、副反応が少なくより均一なグラフト重合物が得られる。
【0033】
工程(c)を溶融法により行う場合、例えば、ラジカル反応開始剤の存在下で原料の樹脂を加熱融解(加熱溶融)して反応させる。加熱融解の温度は、融点以上であればよく、融点以上300℃以下であることが好ましい。加熱融解の際には、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などの機器を使用することができる。
【0034】
工程(c)を溶融法により行う場合、押出機を用いて行うこと(押出変性で行うこと)が好ましい。押出変性の方法としては、例えば、原料の樹脂を配合し、押出機(例えば、同方向多軸押出機、二軸押出機)の供給部に供給し押出機内で原料混合、溶融混練、反応、及び脱揮冷却の各工程を順次行い、先端ダイスから出てくる樹脂を冷却(例えば水槽に浸漬)して、(メタ)アクリル変性成分で変性されたポリオレフィン樹脂を得る方法が挙げられる。反応の進行は、バレルの各部位の温度、スクリュー回転数を調整して調整できる。
【0035】
工程(c)を溶液法により行う場合、例えば、原料の樹脂を疎水性溶剤に溶解させた後、ラジカル反応開始剤の存在下に加熱撹拌して反応させる。反応の際の温度は、100~180℃が好ましい。工程(c)後、系内の疎水性溶剤は、減圧下で留去してもよいし、押出機を用いて疎水性溶剤を取り除いてもよい。
【0036】
工程(c)を溶液法により行う場合に使用する疎水性溶剤としては、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;又はn-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n-オクタン、エチルシクロヘキサン、n-ノナン、n-デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤等の炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0037】
(2.オキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物)
本発明の樹脂組成物は、オキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物(以下「多官能オキセタン化合物」と略す場合がある)を含む。
【0038】
多官能オキセタン化合物は、好適な実施形態において、一般式(I):
【0039】
【化1】
【0040】
(一般式(I)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す。)
で表される基を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物を含む。多官能オキセタン化合物は、一般式(I)で表される基を、1分子内に、2、3、4、5、又は6個有することが好ましく、2、3、又は4個有することがより好ましく、2、又は3個有することがさらに好ましく、2個有することが特に好ましい。
【0041】
炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、ネオヘキシル基、tert-ヘキシル基等が挙げられる。Rは、炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、又はエチル基であることが特に好ましい。
【0042】
多官能オキセタン化合物は、より好適な実施形態において、一般式(II):
【0043】
【化2】
【0044】
(一般式(II)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す。Xは、水素原子、炭素原子及び酸素原子から選ばれる原子で構成され且つ炭素原子及び酸素原子の合計数が2~100である2価の基を示す。nは、0、又は1を示す。)
で表されるオキセタン化合物を含む。Xは、炭素原子及び酸素原子の合計数が2~50である2価の基であることが好ましく、炭素原子及び酸素原子の合計数が2~30である2価の基であることがより好ましい。また、Xは、水素原子及び炭素原子から選ばれる原子で構成された2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0045】
多官能オキセタン化合物の分子量は、1,500以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましく、600以下であることが特に好ましい。多官能オキセタン化合物の分子量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば200以上等とし得る。
【0046】
多官能オキセタン化合物の具体例としては、ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル]エーテル、ビス[(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル]エーテル、ビス[(オキセタン-3-イル)メチル]エーテル、1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、1,3-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、2-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ビフェニル、4,4’-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ビフェニル、2,2’-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ビフェニル、1,1,1-トリス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]プロパン、1,2-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]エタン、1,2-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロパン、1,4-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ブタン、1,6-ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ヘキサン、ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル]イソフタレート等が挙げられる。
【0047】
本発明の樹脂組成物中における多官能オキセタン化合物の含有率は、特に限定されるものではないが、塩素化ポリオレフィン樹脂100重量%に対し、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましく15重量%以下、なお一層好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下であり、一方で下限は、より優れた安定性を確保する観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂100重量%に対し、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、なお一層好ましくは1重量%以上、特に好ましくは3重量%以上である。
【0048】
(3.酸化防止剤)
本発明の樹脂組成物は、より経時安定性を向上させる観点から、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤は、ポリエチレン鎖の酸化を防止する機能を有する成分であれば特に限定されないが、ラジカル捕捉剤としての機能を有する化合物を好適に使用できる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤を含むことが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことが特に好ましい。
【0049】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール〔別称:2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール〕、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオンネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロピオン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-アルキル(C7-C9、分枝)エステル、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル,α,α’,α”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤の分子量は、2,000以下であることが好ましく、1,500以下であることがより好ましく、1,200以下であることがさらに好ましく、500以下であることが特に好ましい。酸化防止剤の分子量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば100以上等とし得る。
【0051】
本発明の樹脂組成物中における酸化防止剤の含有率は、特に限定されるものではないが、塩素化ポリオレフィン樹脂100重量%に対し、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましく5重量%以下、なお一層好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下であり、一方で下限は、例えば0重量%以上、0.0001重量%以上であり、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、なお一層好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。
【0052】
(4.樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、塩素化ポリオレフィン樹脂、及び多官能オキセタン化合物を含み、さらに酸化防止剤を含んでいることが好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、樹脂溶液、水系分散体、固形物等の形態が挙げられ、用途など必要に応じて適宜選択できる。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、塩素化ポリオレフィン樹脂、多官能オキセタン化合物、及び酸化防止剤に加えて、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
【0055】
(4-1.その他の成分)
その他の成分としては、例えば、溶剤、硬化剤、接着成分、安定化剤、塩基性物質、乳化剤、架橋剤、希釈剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等が挙げられ、用途に応じて適宜選択できる。
【0056】
-溶剤-
溶剤は、疎水性溶剤及び親水性溶剤のいずれでもよい。
【0057】
疎水性溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤;ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0058】
親水性溶剤としては、例えば、水;エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコール系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エチル-ヘキサノール等の脂肪族アルコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤が挙げられる。溶剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
-硬化剤-
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、又はそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤、これらの2以上の組み合わせが挙げられる。硬化剤の含有量は、酸性分で変性された塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量により適宜選択すればよい。硬化剤を用いる場合、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用してもよい。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
-接着成分-
接着成分としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分が挙げられる。接着成分は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
-安定化剤-
安定化剤としては、例えば、エポキシ系安定剤等のエポキシ環を含む化合物(エポキシ系安定剤)が挙げられる。エポキシ系安定剤としては、例えば、エポキシ当量が100から500程度であり、一分子中にエポキシ基を1個以上含むエポキシ化合物が挙げられる。より詳細には、以下の化合物が挙げられる:天然の不飽和基を有する植物油を過酢酸等の過酸でエポキシ化したエポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油;オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の不飽和脂肪酸をエポキシ化したエポキシ化脂肪酸エステル類;エポキシ化テトラヒドロフタレートに代表されるエポキシ化脂環式化合物;ビスフェノールAや多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合した、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレンオキサイドグリシジルエーテル等に代表されるモノエポキシ化合物類。安定化剤は、エポキシ環を含まない化合物でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の安定剤として使用されている、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の金属石鹸類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート等の有機金属化合物類;ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
【0062】
また、エポキシ環を含まない安定化剤でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の安定化剤として使用されている、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の金属石鹸類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート等の有機金属化合物類;ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。安定化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
-塩基性物質-
溶剤として、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はエステル系溶剤を使用する場合には、樹脂組成物は塩基性物質を含むことが好ましい。これにより、pHを適切に調節し、溶剤への樹脂の分散性及び保存安定性をより高めることができる。塩基性物質としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン、ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられ、好ましくはアンモニア、トリエチルアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン、ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。塩基性物質は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
-希釈剤-
溶剤として疎水性溶剤を使用する場合、樹脂組成物は、希釈剤を含むことが好ましい。これにより、保存安定性が向上し得る。希釈剤としては、例えば、アルコール、プロピレン系グリコールエーテルが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。プロピレン系グリコールエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテルが挙げられる。希釈剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
-架橋剤-
溶剤として疎水性溶剤を使用する場合、組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、組成物中に存在する、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の基と反応し、架橋構造を形成し得る化合物であればよく、水溶性の架橋剤、及び、架橋剤の水分散体(何らかの方法で水に分散されている状態の架橋剤)のいずれでもよい。架橋剤としては、例えば、ブロックイソシアネート化合物、脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物、アミノ樹脂などが挙げられる。架橋剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
-乳化剤-
溶剤として親水性溶剤を用いる場合には、組成物は乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤としては例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられ、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0067】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンである。
【0068】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩である。乳化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
(4-2.樹脂組成物の用途及び特徴)
本発明の樹脂組成物の固形物のpHは、2超え9以下であることが好ましく、2超え8以下であることがより好ましく、2.5以上7以下であることがさらに好ましく、3以上7以下であることがなお一層好ましく、3.5以上7以下であることが特に好ましい。本発明の樹脂組成物は、保管安定性に優れるため、その固形物は、40℃1カ月保管後であってもpH2を上回る水準を維持することができる。固形物のpHは、例えば、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物(固形分30重量%トルエン溶液)のガードナー色数計により測定した色数は、好ましくは4未満であり、本発明の樹脂組成物は、保管安定性に優れるため、保管開始時に色数4未満の樹脂組成物を40℃1カ月保管後した場合であっても4未満の水準を維持することができる。色数は、例えば、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0071】
本発明の樹脂組成物の固形物の25℃における粘度は、好ましくは100mPa・s~500mPa・s、より好ましくは150mPa・s~300mPa・s、特に好ましくは170mPa・s~200mPa・sである。本発明の樹脂組成物は、保管安定性に優れるため、その固形物の40℃1カ月保管後の25℃における粘度(mPa・s)の低下率を、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満に抑えることができる。なお、粘度(mPa・s)の低下率は、樹脂組成物の固形物の40℃1カ月保管後の粘度(mPa・s)の値の保管前の粘度(mPa・s)の値に対する低下割合(%)として算出される。粘度は、例えば、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、保管安定性に優れるため、樹脂組成物の固形物の50℃2カ月保管後における樹脂組成物に含まれる塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)の減少量を、好ましくは30,000未満、より好ましくは25,000未満、特に好ましくは20,000未満に抑えることができる。また、樹脂組成物の固形物の50℃2カ月保管後における樹脂組成物に含まれる塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)の減少率を、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満、特に好ましくは20%未満に抑えることができる。なお、重量平均分子量(Mw)の減少量及び減少率は、樹脂組成物の固形物の50℃2カ月保管後における塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)の値の保管前の重量平均分子量(Mw)の値に対する減少量又は減少割合(%)として算出される。重量平均分子量(Mw)は、例えば、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、プライマー、接着剤、塗料又はインキに使用することができる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、塩素化ポリプロピレン樹脂の溶液を、多官能オキセタン化合物の溶液と混合することで製造することができ、本発明の樹脂組成物の固形物は、混合した後に溶剤を除去することにより製造することができる。混合する過程においては、撹拌してもよく、必要に応じて加熱等による温度調整を行ってもよい。
【実施例0075】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において用いられる単位「部」は「重量部」を意味する。下記の説明における温度条件は、特に具体的な温度条件の指定が無い場合、常温(25℃)下であり、圧力条件は、特に具体的な圧力条件の指定が無い場合、常圧(760mmHg)下である。
【0076】
[実施例1]
メルトマスフローレイトが40g/10分(JIS K-7210に準じて測定)で融点が148℃で重量平均分子量(Mw)が200,000のポリプロピレン1,000kgを、グラスライニングされた反応釜に投入し、7,500Lのクロロホルムを加えた。釜内をゲージ圧で0.4MPaまで空気で加圧し、温度115℃で十分に溶解させた。その後、tert-ブチルパーオキシオクトエート(ラジカル反応開始剤)750gを加え、上記釜内圧力を0.35MPaに維持しながら塩素ガスを吹き込み、塩素含有率33重量%、重量平均分子量100,000の塩素化ポリプロピレン樹脂のクロロホルム溶液を得た。
【0077】
得られた反応液を固形分20~30重量%まで濃縮し、クロロホルムに溶かしたエーテル型2官能オキセタン化合物(成分名:ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル]エーテル)(対塩素化ポリプロピレン樹脂4重量%)を加え、反応溶媒を減圧留去するためのベント口を設置したベント付2軸押出機でクロロホルムを除去し、塩素化ポリオレフィン樹脂をストランド状に押出して水で冷却した。その後、水冷式ペレタイザーでペレット化し、塩素含有率32重量%、重量平均分子量90,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。なお、塩素含有率は、JIS-K7229に基づいて測定した。
【0078】
[実施例2]
フェノール系酸化防止剤(成分名:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール)を対塩素化ポリプロピレン樹脂1重量%加えた以外は、実施例1と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量92,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0079】
[実施例3]
エーテル型2官能オキセタン化合物の代わりに芳香族型2官能オキセタン化合物(下記式(III)で表される化合物(n=1:80~85%、n=2:10~15%、n=3:5%未満)、主成分名:1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン(n=1))を使用した以外は、実施例1と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量92,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0080】
【化3】
【0081】
[実施例4]
フェノール系酸化防止剤(成分名:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール)を対塩素化ポリプロピレン樹脂1重量%加えた以外は、実施例3と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量91,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0082】
[比較例1]
エーテル型2官能オキセタン化合物の代わりに水酸基型1官能オキセタン化合物(成分名:3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量91,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0083】
[比較例2]
エーテル型2官能オキセタン化合物の代わりにエーテル型1官能オキセタン化合物(成分名:3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量88,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0084】
[比較例3]
フェノール系酸化防止剤(成分名:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール)を対塩素化ポリプロピレン樹脂1重量%加えた以外は、比較例2と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量90,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0085】
[比較例4]
エーテル型2官能オキセタン化合物の代わりにエポキシ化合物(成分名:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塩素含有率32重量%、重量平均分子量91,000の塩素化ポリオレフィン樹脂の固形の樹脂組成物を得た。
【0086】
[安定性試験]
実施例及び比較例で得られた塩素化ポリオレフィンの樹脂組成物をポリエチレン製の袋に採り、ポリエチレン袋内部にpH試験紙(東洋濾紙株式会社製)をセロハンテープで貼り付け、ポリエチレン袋の口を結んだ。次に、サンプルを40℃の送風乾燥機に入れ1カ月間保管し、一方で、別のサンプルを50℃の送風乾燥機に入れ2カ月間保管した。
【0087】
試験開始時と40℃で1カ月保管後の樹脂組成物についてそれぞれpH、色数、及び粘度を下記の方法にて測定し、評価した。また、試験開始時と50℃で2カ月保管後の樹脂組成物について塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)を下記の方法にて測定し、評価した。
【0088】
(pHの測定及び評価)
ポリエチレン袋内部に設置したpH試験紙から試験開始時と40℃で1カ月保管後のpHを確認した。1カ月保管後の樹脂組成物のpHが2を上回る場合を「A」、2以下の場合を「B」と評価した。
【0089】
(色数の評価)
試験開始時と40℃で1カ月保管後の樹脂組成物について、それぞれ固形分30重量%になるようにトルエンに溶解させ、ガードナー色数計にて色数を測定した。1カ月保管後の樹脂組成物のトルエン溶液の色数が4未満の場合を「A」、4以上の場合を「B」と評価した。
【0090】
(粘度(mPa・s)の測定及び評価)
試験開始時と40℃で1カ月保管後の樹脂組成物について、ガラス瓶に入れた樹脂組成物を25℃の恒温槽に6時間以上浸漬して調温した後、B型粘度計にて粘度測定を行った。1カ月保管後の樹脂組成物の粘度の低下率が10%未満の場合を「A」、10%以上の場合を「B」と評価した。
【0091】
(重量平均分子量(Mw)の測定及び評価)
試験開始時と50℃で2カ月保管後の樹脂組成物に含まれる塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)を、GPCにより、下記条件に従い測定した。
装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK-gel G-6000 HXL,G-5000 HXL,G-4000 HXL,G-3000 HXL,G-2000 HXL(東ソー株式会社製)
溶離液:THF
流速:1mL/分
温度:ポンプオーブン、カラムオーブン40℃
注入量:100μL
標準物質:ポリスチレン EasiCal PS-1(Agilent Technology社製)
【0092】
2カ月保管後の塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の低下率が25%未満の場合を「A」、25%以上の場合を「B」と評価した。
【0093】
オキセタン化合物と混合する前の塩素化ポリプロピレン樹脂及び原料のポリプロピレン樹脂についても同様に測定した。
【0094】
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び塩素含有率、使用したオキセタン化合物、及びその他の添加剤、並びに安定性試験における測定結果と評価結果を、以下の表1にまとめる。
【0095】
【表1】
【0096】
上記の結果より、塩素化ポリオレフィン樹脂、及びオキセタン構造を1分子内に2個以上有するオキセタン化合物を含む樹脂組成物では、より経時安定性に優れることがわかる。