(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038543
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】レーザ計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20230310BHJP
B23K 9/095 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
G01B11/00 B
B23K9/095 510E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145326
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
(72)【発明者】
【氏名】正川 仁彦
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA06
2F065CC15
2F065GG04
2F065LL28
2F065MM11
2F065MM15
(57)【要約】
【課題】簡素な構成にて、ワークと干渉することなく、突き合わせ溶接の開先形状とT字溶接や十字溶接のような溶接の開先形状との両方を計測可能なレーザ計測装置を提供する。
【解決手段】レーザ計測装置は、レーザ距離センサと、モータと、処理回路と、ケーシングと、を備える。前記ケーシングは、第1外面及び第2外面と、前記レーザ距離センサから出射されたレーザ光を前記ケーシングの内部から外部へ通過させる開口と、を含む。前記処理回路は、前記モータを制御して、前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光を前記第1開口領域から前記第2開口領域へ移動させるように構成されている。前記第1外面及び前記第2外面は、テーパ状に互いに傾斜している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する発光部を含むレーザ距離センサと、
前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光の照射角度を所定の軸線周りに変位させるモータと、
前記モータを制御するように構成された処理回路と、
前記レーザ距離センサ、前記モータ及び前記処理回路を収容するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、
前記レーザ光の照射角度の変位方向に沿って互いに並んだ第1外面及び第2外面と、
前記軸線の延在方向において前記第1外面に隣接する第1開口領域と、前記軸線の延在方向において前記第2外面に隣接して前記第1開口領域に接続された第2開口領域とを有する開口であって、前記レーザ距離センサから出射されたレーザ光を前記ケーシングの内部から外部へ通過させる開口と、を含み、
前記処理回路は、前記モータを制御して、前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光を前記第1開口領域から前記第2開口領域へ移動させるように構成され、
前記第1外面及び前記第2外面は、テーパ状に互いに傾斜している、レーザ計測装置。
【請求項2】
前記第1外面と前記第2外面とは、互いに直角に配置されている、請求項1に記載のレーザ計測装置。
【請求項3】
前記軸線は、前記第1外面を含む第1仮想平面と前記第2外面を含む第2仮想平面とのなす角を2等分する第3仮想平面上に位置する、請求項1又は2に記載のレーザ計測装置。
【請求項4】
前記レーザ距離センサを保持し、前記モータの駆動力によって前記軸線周りに回転する回転キャリアを更に備え、
前記軸線は、前記レーザ距離センサの中心に対して前記発光部に向かう方向にずれて配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【請求項5】
前記モータから前記レーザ距離センサまでの動力伝達経路に配置された減速機を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【請求項6】
前記開口は、前記軸線の延在方向における前記ケーシングの中心に対して前記延在方向の片側に配置されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【請求項7】
前記レーザ距離センサの検出動作と前記モータの駆動とを前記処理回路に指令する操作スイッチを更に備え、
前記操作スイッチは、前記ケーシングの外面に配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【請求項8】
前記レーザ距離センサと前記モータと前記処理回路とを支持し、前記ケーシング内に収容された支持フレームを更に備える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【請求項9】
前記ケーシングに着脱自在に取り付けられ、前記第1外面及び前記第2外面を覆うカバーを更に備え、
前記カバーは、前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光が前記開口のうち前記第1開口領域と前記第2開口領域との間の部分を通過する場合における前記レーザ光に直交する外底面を有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレーザ計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の板材同士を溶接して溶接継手を製作する際、溶接の前段階で、各板材の組合せが設計通りの形状をなすように各板材を配置し、開先形状を設計通りの形状にすることが要求される。特許文献1には、溶接対象の開先形状をレーザ光を用いたレーザ変位計によって検出するレーザ計測装置が開示されている。特許文献1の装置では、レーザ変位計が溶接線に交差する方向に走査するので、同一平面上に配置された板材同士を溶接する突き合わせ溶接の場合には、開先形状を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、T字溶接継手や十字溶接継手のように、一対の板材の一方がレーザ変位計に向かって突出して配置される場合には、走査するレーザ変位計が板材と干渉して計測できない。また、特許文献1の装置では、レーザ変位計が直線的に走査するため、走査構造が大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るレーザ計測装置は、レーザ光を出射するレーザ距離センサと、前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光の照射角度を所定の軸線周りに変位させるモータと、前記モータを制御するように構成された処理回路と、前記レーザ距離センサ、前記モータ及び前記処理回路を収容するケーシングと、を備える。前記ケーシングは、前記レーザ光の照射角度の変位方向に沿って互いに並んだ第1外面及び第2外面と、前記軸線の延在方向において前記第1外面に隣接する第1開口領域と、前記軸線の延在方向において前記第2外面に隣接して前記第1開口領域に接続された第2開口領域とを有する開口であって、前記レーザ距離センサから出射されたレーザ光を前記ケーシングの内部から外部へ通過させる開口と、を含む。前記処理回路は、前記モータを制御して、前記レーザ距離センサから出射されるレーザ光を前記第1開口領域から前記第2開口領域へ移動させるように構成される。前記第1外面及び前記第2外面は、テーパ状に互いに傾斜している。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、簡素な構成にて、ワークと干渉することなく、突き合わせ溶接の開先形状とT字溶接や十字溶接のような溶接の開先形状との両方を計測可能なレーザ計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ計測システムのブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1のレーザ計測装置をカバー離脱状態で一方向から見た斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1のレーザ計測装置をカバー離脱状態で他方向から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3Aのレーザ計測装置による突き合わせ溶接の開先形状の計測を説明する断面図である。
【
図7】
図7は、
図2Aのレーザ計測装置によるT字溶接の開先形状の計測を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、
図3Aのレーザ計測装置による突き合わせ溶接の開先形状の計測の別の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、本実施形態では、溶接前段階の開先形状を計測対象とした例を説明するが、開先以外の形状、例えば隅肉溶接の脚長やのど厚を計測対象としてもよい。
図1は、実施形態に係るレーザ計測システム1のブロック図である。
図1に示すように、レーザ計測システム1は、レーザ計測装置2及びデータ処理装置3を備える。レーザ計測装置2は、溶接前のワークの開先形状をレーザ計測する。レーザ計測装置2は、作業者によって持ち運ばれて計測対象に設置される。
【0009】
データ処理装置3は、レーザ計測装置2が計測したデータを無線で受信する。データ処理装置3は、受信したデータを演算処理して開先形状を特定し、特定された開先形状の良否を判定することで、開先形状を診断する。データ処理装置3は、例えば、パーソナルコンピュータに所定の診断プログラムをインストールすることで実現され得る。
【0010】
レーザ計測装置2は、レーザ距離センサ11、回転キャリア12、モータ13、減速機14、磁気センサ15、処理回路基板16、電源スイッチ18、操作スイッチ19及び光源20を備える。
【0011】
レーザ距離センサ11は、レーザ光を出射する発光部11aと、レーザ距離センサ11から出射されたレーザ光がワークに反射した反射光を受光する受光部11bとを含む。本実施形態では、受光部11bは、発光部11aと略同じ箇所に配置されている。
【0012】
回転キャリア12は、発光部11a及び受光部11bを露出させた状態で、レーザ距離センサ11を保持する。即ち、回転キャリア12は、発光部11aからのレーザ光Lの出射経路と受光部11bへの反射光の入射経路とが通過する開口を含む。回転キャリア12は、所定の軸線C周りに回転可能に支持されている。回転キャリア12は、ホルダ12a、シャフト12b及び磁石12cを含む。ホルダ12aは、レーザ距離センサ11を保持する。シャフト12bは、ホルダ12aから突出して後述の減速機14に連結されている。軸線Cは、シャフト12bの軸心を通っている。磁石12cは、ホルダ12aの外面のうち軸線Cが延びる方向に向いた面に配置されている。
【0013】
モータ13は、レーザ距離センサ11から出射されるレーザ光Lの照射角度を軸線C周りに変位させるために駆動する。減速機14は、モータ13からレーザ距離センサ11までの動力伝達経路に介在している。減速機14がモータ13の回転動力を減速して回転キャリア12に伝達することで、回転キャリア12が軸線C周りに回転し、回転キャリア12に保持されたレーザ距離センサ11が揺動する。
【0014】
磁気センサ15は、回転キャリア12の磁石12cに隙間をあけて対向している。磁気センサ15及び磁石12cは、磁気エンコーダとして機能する。磁気センサ15は、磁石12cの磁力を利用して回転キャリア12の回転角度を検出する。
【0015】
処理回路基板16は、センサインタフェース回路31、モータ制御回路32、中央処理回路33、無線通信機34及び電源回路35を含む。センサインタフェース回路31は、レーザ距離センサ11及び磁気センサ15に電気的に接続されている。モータ制御回路32は、モータ13に電気的に接続されている。中央処理回路33は、センサインタフェース回路31を介してレーザ距離センサ11の検出動作を制御する。中央処理回路33は、モータ制御回路32を介してモータ13の回転動作を制御する。
【0016】
中央処理回路33は、レーザ距離センサ11の検出信号である電流値又は電圧値を高さデータに変換する。中央処理回路33は、モータ13の回転角に基づいてワーク上のレーザ光の反射位置座標すなわち検査位置座標を特定する。中央処理回路33は、当該高さデータを当該検査位置座標に関連付ける。即ち、中央処理回路33は、計測データとして、高さデータ及び検査位置座標のセットを出力する。
【0017】
無線通信機34は、中央処理回路33が出力した計測データをデータ処理装置3に無線送信する。なお、無線通信機34は、処理回路基板16に搭載されずに処理回路基板16から離れていてもよい。処理回路基板16は、無線通信機34の代わりに有線通信インターフェースを含んでもよく、中央処理回路33が出力した計測データは有線通信でデータ処理装置3に送信されてもよい。
【0018】
電源回路35は、センサインタフェース回路31、モータ制御回路32、中央処理回路33及び無線通信機34に電力を供給する。電源回路35は、処理回路基板16に搭載されずに処理回路基板16から離れていてもよい。
【0019】
二次電池17は、レーザ計測装置2から取り外して充電可能である。二次電池17は、レーザ計測装置2に搭載された状態で処理回路基板16に電気的に接続される。二次電池17は、電源回路35に電力を供給する。なお、二次電池17の代わりに充電ケーブルを使って給電されてもよい。
【0020】
電源スイッチ18は、電源回路35に電気的に接続されている。電源スイッチ18は、作業者によって操作される。電源スイッチ18がON操作されるとレーザ計測装置2の電源がONとなり、電源スイッチ18がOFF操作されるとレーザ計測装置2の電源がOFFとなる。
【0021】
操作スイッチ19は、中央処理回路33に電気的に接続されている。操作スイッチ19は、作業者によって操作される。操作スイッチ19が操作されると、中央処理回路33は、センサインタフェース回路31を介してレーザ距離センサ11に検出動作を開始させ、かつ、モータ制御回路32を介してモータ13に回転動作を開始させる。操作スイッチ19が操作されて所定の計測動作が終了した後は、レーザ距離センサ11及びモータ13は停止する。
【0022】
光源20は、例えばLEDとし得る。光源20は、例えば、中央処理回路33に電気的に接続されている。中央処理回路33は、レーザ距離センサ11及びモータ13の動作中と、レーザ距離センサ11及びモータ13の停止中との間で、光源20の表示態様を異ならせる。例えば、中央処理回路33は、レーザ距離センサ11及びモータ13の動作中に光源20を点滅させ、レーザ距離センサ11及びモータ13の停止中に光源20を点灯させる。なお、光源20は、センサインタフェース回路31に接続されてレーザ距離センサ11の動作及び停止に連動して点滅及び点灯してもよいし、モータ制御回路32に接続されてモータ13の動作及び停止に連動して点滅及び点灯してもよい。
【0023】
図2Aは、
図1のレーザ計測装置2をカバー離脱状態で一方向から見た斜視図である。
図2Bは、
図1のレーザ計測装置2をカバー離脱状態で他方向から見た斜視図である。
図2A及びBに示すように、以下の説明では、回転キャリア12の回転の軸線C(
図1及び7参照)の延在方向をX方向とし、第1外面42bと第2外面42cとが並ぶ方向をY方向とし、X方向及びY方向の各々に直交する方向をZ方向とする。レーザ計測装置2は、ケーシング22を備える。
【0024】
ケーシング22は、ハンドル41、テーパ外面42、開口43、電池レセプタ44等を備える。ケーシング22は、例えば非導電性樹脂である。ケーシング22は、一対のケーシング要素に二分割されており、互いにY方向に合体した一対のケーシング要素がケーシング22を構成している。
【0025】
ハンドル41は、作業者が手で把持できるバーを有する。ハンドル41は、省略されてもよい。レーザ計測装置2は、ロボットアームに保持されてロボットによって操作されてもよい。ケーシング22は、Z方向におけるハンドル41の反対側に配置されたテーパ外面42を有する。テーパ外面42は、先端面42a、第1外面42b及び第2外面42cを有する。先端面42aは、Y方向において第1外面42bと第2外面42cとに挟まれている。第1外面42b及び第2外面42cの各々は、平坦面である。先端面42aは、平坦面でも円弧面でもよい。第1外面42b及び第2外面42cには、金属板46が貼り付けられている。なお、第1外面42b及び第2外面42c自体が金属であってもよい。
【0026】
第1外面42b及び第2外面42cは、テーパ状に互いに傾斜している。例えば、テーパ外面42のテーパ角すなわち第1外面42bと第2外面42cとのなす角は、90°である。第1外面42bと第2外面42cとのなす角は、90°に限られず他の角度にしてもよい。例えば、ケーシング22のテーパ外面42のテーパ角を鋭角として、90°のテーパ角を有するテーパ外面を含むカバーがケーシング22に取り付けられるようにしてもよい。先端面42aは、省略されてもよく、第1外面42bと第2外面42cとが互いに直接的に隣接してもよい。
【0027】
開口43は、ケーシング22の内部を外部に連通させる。開口43は、レーザ距離センサ11(
図1及び
図4(A)参照)から出射されるレーザ光Lを、ケーシング22の内部から外部に向けて通過させる。開口43は、テーパ外面42に対して軸線方向Xに隣接している。開口43は、例えば、テーパ外面42の切欠きである。開口43は、軸線方向Xにおけるケーシング22の中心に対して軸線方向Xの片側に配置されている。開口43は、Y方向においてテーパ外面42の全体にわたって延びている。
【0028】
開口43は、先端開口領域43a、第1開口領域43b及び第2開口領域43cを有する。先端開口領域43aは、Y方向において第1開口領域43bと第2開口領域43cとに挟まれている。先端開口領域43aは、軸線方向Xにおいて先端面42aに隣接している。第1開口領域43bは、X方向において第1外面42bに隣接している。第2開口領域43cは、X方向において第2外面42cに隣接している。第1開口領域43b、先端開口領域43a及び第2開口領域43cは、この順で互いに接続されて1つの開口43を構成している。先端面42aが省略される場合には、先端開口領域43aも省略され、第1開口領域43bと第2開口領域43cとが互いに直接的に接続されて1つの開口を構成することになる。
【0029】
電池レセプタ44は、ケーシング22に外面が窪んでなる凹所である。電池レセプタ44には、ケーシング22の外部から二次電池17が着脱自在に挿入される。ケーシング22の外面には、電源スイッチ18が配置されている。ケーシング22の外面には、操作スイッチ19が配置されている。操作スイッチ19は、電源スイッチ18よりもハンドル41に近い。操作スイッチ19は、光源20を内蔵している。なお、光源20は、操作スイッチ19に内蔵されずに、操作スイッチ19から離れた位置でケーシング22の外面に配置されてもよい。
【0030】
図3Aは、
図2Aのレーザ計測装置2のカバー装着状態での斜視図である。
図3Bは、
図2Aのレーザ計測装置2のカバー装着状態での斜視図である。
図3A及びBに示すように、カバー24は、テーパ外面42を覆うようにケーシング22に着脱自在に装着される。二次電池17、電源スイッチ18、操作スイッチ19、光源20及びハンドル41は、ケーシング22のうちカバー24が装着される領域の外側にある。カバー24は、例えば、上壁が省略されたボックスのような凹形状を有する。
【0031】
カバー24は、外底面52、第1側面53及び第2側面54を有する。外底面52は、Z方向に直交し、先端面42aに対向している。外底面52は、Y方向において第1側面53と第2側面54との間にある。第1側面53は、Y方向において第1外面42bに対向している。第2側面54は、Y方向において第2外面42cに対向している。
【0032】
カバー24は、開口55を有する。開口55は、カバー24の内部を外部に連通させる。開口55は、ケーシング22の開口43に対向している。開口55は、外底面52、第1側面53及び第2側面54に対してX方向に隣接している。本実施形態では、開口55は、外底面52、第1側面53及び第2側面54の切欠きである。開口55は、レーザ距離センサ11(
図1及び
図4A参照)から出射されて開口43を通過したレーザ光Lを、カバー24の内部から外部に向けて通過させる。外底面52は、レーザ距離センサ11から出射されるレーザ光Lが先端開口領域43a(
図2A参照)を通過する場合におけるレーザ光Lに直交する面である。
【0033】
カバー24は、ケーシング22にカバー24を係止するリテーナ51を有する。本実施形態では、リテーナ51は、ケーシング22の金属板46に磁力で吸着する磁石である。なお、リテーナ51は、ケーシング22に対してカバー24を機械的に係止する構造であってもよく、例えば、フック又は爪等でもよい。
【0034】
図4Aは、
図2Aのレーザ計測装置2を一方向から見た断面斜視図である。
図4Bは、
図2Aのレーザ計測装置2を他方向から見た断面斜視図である。
図4A及びBに示すように、ケーシング22には、レーザ距離センサ11、回転キャリア12、モータ13、減速機14、磁気センサ15、処理回路基板16、支持フレーム23及びコネクタ45が収容されている。
【0035】
回転キャリア12は、ホルダ12a、シャフト12b及び磁石12cを有する。ホルダ12aは、レーザ距離センサ11を固定的に保持する。ホルダ12aは、レーザ距離センサ11の発光部11a(
図5参照)を開口43に向けて露出させる形状を有する。シャフト12bは、ホルダ12aから減速機14に向けて軸線方向Xに突出している。シャフト12bの軸心線が、回転キャリア12の回転中心線となる軸線Cと一致している。軸線Cは、減速機14の出力軸の軸線と一致している。シャフト12bは、減速機14の出力軸と結合されている。
【0036】
減速機14は、レーザ距離センサ11及び回転キャリア12に対して軸線方向Xに並んでいる。モータ13は、減速機14に対して高さ方向Zに隣接している。モータ13及び減速機14は、レーザ距離センサ11に対して軸線方向Xに並んでいるので、ケーシング22が軸線方向Xに大きくなり、第1外面42b及び第2外面42cの面積が軸線方向Xに広くなっている。
【0037】
減速機14は、モータ13からレーザ距離センサ11までの動力伝達経路に介在している。減速機14は、モータ13の回転動力を減速してシャフト12bに伝達する。モータ13が回転することで、回転キャリア12が軸線C周りに回転し、回転キャリア12に保持されたレーザ距離センサ11が軸線C周りに揺動する。これにより、レーザ距離センサ11から出射されるレーザ光Lの照射角度は、軸線C周りに変位する。レーザ距離センサ11の揺動によって、レーザ光Lが開口43のうち第1開口領域43b(
図2A参照)から第2開口領域43c(
図2A参照)まで移動する。
【0038】
磁石12cは、ホルダ12aの外面のうちシャフト12bと反対側の面に取り付けられている。磁石12cは、回転キャリア12の回転とともに軸線C周りに回転する。磁気センサ15は、軸線方向Xにおいて磁石12cに対向している。処理回路基板16は、レーザ距離センサ11に対して高さ方向Zに並べられている。処理回路基板16は、レーザ距離センサ11よりもテーパ外面42から離れて配置されている。
【0039】
レーザ距離センサ11、回転キャリア12、モータ13、減速機14及び磁気センサ15は、支持フレーム23に固定されて支持フレーム23によって支持されている。本実施形態では、処理回路基板16は、ケーシング22に支持されている。なお、処理回路基板16は、支持フレーム23に固定されて支持フレーム23によって支持されてもよい。
【0040】
処理回路基板16は、高さ方向Zにおいて電池レセプタ44とレーザ距離センサ11との間に配置されている。即ち、処理回路基板16に搭載された無線通信機34(
図1参照)は、レーザ距離センサ11を基準として開口43とは反対側に配置されている。ケーシング22のうち処理回路基板16を覆う部分は非導電性樹脂である。本実施形態では、ケーシング22の全体が非導電性樹脂である。
【0041】
電池レセプタ44は、ケーシング22の外面からケーシング22の内部に向けて軸線方向Xに延びている。電池レセプタ44は、有底の電池収容空間を画定している。電池レセプタ44には、電池レセプタ44に挿入された二次電池17の端子と導通するコネクタ45が配置されている。コネクタ45は、処理回路基板16に電気的に接続されている。
【0042】
図5は、
図4Aの軸線C等の位置を説明する模式図である。
図5に示すように、ケーシング22の第1外面42bと第2外面42cとは、互いに直角に配置されている。軸線Cは、第1外面42bを含む第1仮想平面V1と第2外面42cを含む第2仮想平面V2とのなす角を2等分する第3仮想平面V3上に位置する。
図5では、軸線Cは紙面奥行方向に延びている。ケーシング22の中心を示すケーシング中心Q1と、レーザ距離センサ11の中心を示すセンサ中心Q2と、レーザ距離センサ11の発光部11aにおけるレーザ光Lの出射原点を示すレーザ原点Q3とは、第3仮想平面V3上に位置している。
【0043】
軸線Cは、センサ中心Q2に対して発光部11aに向かう方向にずれて配置されている。軸線Cは、センサ中心Q2よりも発光部11aに近い。本実施形態では、レーザ原点Q3は、軸線C上に位置している。これにより、レーザ距離センサ11が軸線C周りに揺動しても、レーザ原点Q3は軸線C上に維持される。なお、レーザ原点Q3は、軸線Cからずれていてもよい。
【0044】
図6は、
図3Aのレーザ計測装置2による突き合わせ溶接の開先形状の計測を説明する断面図である。
図6に示すように、ワークW1は、金属製の一対の板材P1,P2を同一平面上で互いに突き合わせてなる。ワークW1は、第1板材P1と第2板材P2の間に開先G1を有する。ワークW1は、突き合わせ溶接の前段階のものである。ワークW1の裏面のうち開先G1に対応する部分には、第1板材P1と第2板材P2とに跨ぐように裏当金が配置され得る。なお、開先形状は片開先形状を例示したが、V形、U形等のような他の形状であってもよい。
【0045】
突き合わせ溶接が適用される開先G1の場合には、作業者は、レーザ計測装置2においてケーシング22にカバー24を装着する。カバー24のリテーナ51である磁石が、ケーシング22の金属板46に磁力で吸着されることで、カバー24が安定して位置決めされる。
【0046】
作業者は、レーザ計測装置2のハンドル41を把持し、カバー24の外底面52がワークW1の表面に当接するようにレーザ計測装置2をワークW1に載せる。その際、作業者は、軸線Cが開先G1の延在方向に沿うようにレーザ計測装置2を配置する。開口55は、カバー24の外底面52のY方向の全体に延びており、レーザ光Lは、外底面52のY方向の全体にわたって変位するため、作業者は、レーザ計測装置2が開先G1を覆うようにレーザ計測装置2を配置すればよい。
【0047】
レーザ距離センサ11の発光部11aが出射するレーザ光Lは、開口43,55を通過してワークW1に到達する。レーザ光Lの照射角度は、レーザ距離センサ11の軸線C周りの揺動によって、レーザ光Lが開先G1を横断するように変位する。なお、カバー24は、金属製のワークW1に対して安定的に位置決めされるように、外底面52に磁力を付与する磁石を備えてもよい。
【0048】
図7は、
図2Aのレーザ計測装置2によるT字溶接の開先形状の計測を説明する断面図である。
図7に示すように、ワークW2は、金属製の一対の板材P3,P4を直交配置したT字形状を有する。ワークW2は、第1板材P3と第2板材P4の間に開先G2を有する。ワークW2は、T字溶接の前段階のものである。ワークW2の裏面のうち開先G2に対応する部分には、第1板材P3と第2板材P4とに跨ぐように裏当金が配置され得る。
【0049】
T字溶接や十字溶接のような溶接が適用される開先G2の場合には、作業者は、レーザ計測装置2においてケーシング22からカバー24を取り外す。作業者は、カバー24の無いレーザ計測装置2のハンドル41を把持してレーザ計測装置2をワークW2に当てる。その際、作業者は、ケーシング22の第1外面42bを第1板材P3の表面に当接させ、ケーシング22の第2外面42cを第2板材P4の表面に当接させる。これにより、軸線Cが開先G2の延在方向に沿うようにレーザ計測装置2が配置され、ケーシング22が第1板材P3と第2板材P4とに挟まれた状態でレーザ計測装置2が位置決めされる。レーザ距離センサ11の発光部11aが出射するレーザ光Lは、開口43を通過してワークW2に到達する。レーザ光Lの照射角度は、レーザ距離センサ11の軸線C周りの揺動によって、レーザ光Lが開先G2を横断するように変位する。
【0050】
図8は、
図3Aのレーザ計測装置2による突き合わせ溶接の開先形状の計測の別の例を説明する断面図である。
図8に示すように、突き合わせ溶接が適用される開先G1の場合に、
図6の態様の代わりにカバー24(
図6参照)を使わずにレーザ計測装置2による計測を実施してもよい。
【0051】
作業者は、カバー24(
図6参照)の無いレーザ計測装置2のハンドル41を把持してレーザ計測装置2をワークW1に載せる。その際、作業者は、ケーシング22の第1外面42bを第1板材P1の表面に当接させる。レーザ距離センサ11の発光部11aが出射するレーザ光Lは、開口43を通過してワークW1に到達する。レーザ光Lの照射角度は、レーザ距離センサ11の軸線C周りの揺動によって、レーザ光Lが開先G1を横断するように変位する。
【0052】
なお、
図8の例では、レーザ計測装置2は、ケーシング22に対するカバー24の装着を検知する装着センサを備えてもよい。当該装着センサは、カバー24の装着を、磁気的に検出してもよいし、機械的に検出してもよいし、電気的に検出してもよい。処理回路基板16の中央処理回路33(
図1参照)は、当該装着センサによってカバー24の装着が検知されない場合、カバー24の装着が検知される場合に比べ、レーザ光Lの照射角度の変位範囲を増加させるように構成されてもよい。
図8の例では、ケーシング22は、第1外面42bから外方に突出可能なポジショナを備えてもよい。作業者は、当該ポジショナをワークW1の開先G1に突き当てることにより、レーザ計測装置2をワークW1に対して位置決めしてもよい。
【0053】
図9は、
図6の計測の原理を説明する模式図である。
図9に示すように、
図6の計測態様では、レーザ原点Q3からワークW1に下した垂線VLは、ケーシング中心Q1とセンサ中心Q2とを結ぶ線と一致する。即ち、垂線VLは、第3仮想平面V3(
図5参照)上に位置する。
図9中の「h0」は、センサ中心Q2に対するレーザ原点Q3のズレ量であり、予め決められた定数である。なお、本実施形態(
図5)では、ズレ量h0がゼロである。
図9中の「H」は、レーザ距離センサ11が検出するレーザ原点Q3からワークW1までの距離である。
【0054】
図9中の「θ」は、垂線VLに対するレーザ光Lの揺動角度である。x座標は、ワークW1の表面に沿ったレーザ光Lの移動方向の座標である。y座標は、ワークW1の表面に直交してワークW1の表面から裏面に向かう方向の座標である。xy座標(x,y)の原点(0,0)は、ワークW1の表面上の垂線VLが交わる点である。
【0055】
中央処理回路33(
図1参照)は、以下の数式(1)(2)に対し、レーザ距離センサ11から得られる距離Hと、モータ13の回転角に基づいて算出される揺動角度θと、を入力することで、ワークW1の表面のうちレーザ光Lが当たった点のxy座標(x,y)を計測データとして算出する。
【0056】
x=(h0+H)・sinθ ・・・・・(1)
y=(h0+H)・cosθ ・・・・・(2)
【0057】
図10は、
図7の計測の原理を説明する模式図である。
図10に示すように、
図7の計測態様では、
図10中の「h0」「H」は、
図9と同様である。
図9中の「θ」は、レーザ原点Q3から第2板材P4に下した垂線VLに対するレーザ光Lの揺動角度である。x座標は、第2板材P4の表面に沿ったレーザ光Lの移動方向の座標である。y座標は、第2板材P4の表面に直交して第2板材P4の表面から裏面に向かう方向の座標である。xy座標(x,y)の原点(0,0)は、第2板材P4の表面上の垂線VLが交わる点である。
【0058】
中央処理回路33(
図1参照)は、以下の数式(3)(4)、数式(5)(6)又は数式(7)(8)に対し、レーザ距離センサ11から得られる距離Hと、モータ13の回転角に基づいて算出される揺動角度θと、を入力することで、ワークW2の表面のうちレーザ光Lが当たった点のxy座標(x,y)を計測データとして算出する。
【0059】
[-45°≦θ≦45°のとき]
x=(h0+H)・sin(45°-θ) ・・・・・(3)
y=(h0+H)・cos(45°-θ) ・・・・・(4)
[45°<θ<90°のとき]
x=(h0+H)・sin(θ-45°) ・・・・・(5)
y=(h0+H)・cos(θ-45°) ・・・・・(6)
[-90°<θ<-45°のとき]
x=(h0+H)・sin(45°+θ) ・・・・・(7)
y=(h0+H)・cos(45°+θ) ・・・・・(8)
【0060】
図11は、
図8の計測の原理を説明する模式図である。
図11に示すように、
図8の計測態様では、
図11中の「h0」「H」は、
図9及び10と同様である。
図9中の「θ」は、レーザ原点Q3から第2板材P2に下した垂線VLに対するレーザ光Lの揺動角度である。x座標は、ワークW1の表面に沿ったレーザ光Lの移動方向の座標である。y座標は、ワークW1の表面に直交してワークW1の表面から裏面に向かう方向の座標である。xy座標(x,y)の原点(0,0)は、ワークW1の表面上の垂線VLが交わる点である。
【0061】
中央処理回路33(
図1参照)は、以下の数式(9)(10)又は数式(11)(12)に対し、レーザ距離センサ11から得られる距離Hと、モータ13の回転角に基づいて算出される揺動角度θと、を入力することで、ワークW1の表面のうちレーザ光Lが当たった点のxy座標(x,y)を計測データとして算出する。
【0062】
[-45°≦θ≦45°のとき]
x=(h0+H)・sin(45°+θ) ・・・・・(9)
y=(h0+H)・cos(45°+θ) ・・・・・(10)
[-90°<θ<-45°又は45°<θ<90°のとき]
x=(h0+H)・sin(45°+θ) ・・・・・(11)
y=-(h0+H)・cos(45°+θ) ・・・・・(12)
【0063】
図12Aは、
図9又は
図11の計測データを示すグラフである。
図12Bは、
図12Aの計測データのデータ処理装置3による処理を説明するグラフである。
図12A及びBは、突き合わせ溶接が適用される開先G1の例を示している。
図12Aに示すように、データ処理装置3は、レーザ計測装置2の無線通信機34から中央処理回路33が算出した計測データであるxy座標の点列データDを受信する。
図12Bに示すように、データ処理装置3は、
図12Aの点列データに対して以下の手順で線分化する。
【0064】
(i)データ処理装置3は、点列データDのx座標の一端から順番に4点のデータを評価区間として読み込み、評価区間に1点ずつデータを加えていき、点データが1点加わるごとに評価区間内の点列に対して最小二乗法によって補間線を求める。(ii)データ処理装置3は、補間線と評価区間の点群との間の統計学上の分散が所定の閾値を超えたら、最後に加えた1点を評価区間から除外した状態での補間線を、ワーク表面を示す形状線M1として決定する。
【0065】
次に、データ処理装置3は、直前に評価区間から除外された点を新たな始点として、前記(i)(ii)の処理を繰り返し、形状線M2,M3を決定する。データ処理装置3は、この処理が点列データの他端まで到達したら、最後の点を含めた評価区間内の点列に対して最小二乗法によって補間線を算出し、その算出された補間線を、ワーク表面を示す形状線M4として決定する。
【0066】
データ処理装置3は、形状線M1のy座標と形状線M4のy座標との差を目違い量Eとみなし、目違い量Eが所定の許容限界値未満であるか否かを判定する。目違い量Eが許容限界値未満でないと判定されると、データ処理装置3は、目違いが発生したと判定して異常を示す診断結果を出力する。
【0067】
データ処理装置3は、形状線M2のx方向長さをルートギャップRGとみなし、ルートギャップRGが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。ルートギャップRGが許容範囲内にないと判定されると、データ処理装置3は、開先G1のルートギャップが不適切であると判定して異常を示す診断結果を出力する。
【0068】
データ処理装置3は、形状線M3の角度を開先角度αとみなし、開先角度αが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。開先角度αが許容範囲内にないと判定されると、データ処理装置3は、開先G1の傾斜面が不適切であると判定して異常を示す診断結果を出力する。
【0069】
データ処理装置3は、目違い量Eが許容限界値未満であると判定され、ルートギャップRGが許容範囲内にあると判定され、かつ、開先角度αが許容範囲内にあると判定されると、開先G1の形状が適切であると判断して正常を示す診断結果を出力する。
【0070】
図13Aは、
図10の計測データを示すグラフである。
図13Bは、
図13Aの計測データのデータ処理装置3による処理を説明するグラフである。
図13A及びBは、T字溶接が適用される開先G2の例を示している。データ処理装置3は、
図12A及びBの場合と同様に、
図13Aに示された点列データDに基づいて
図13Bに示された形状線N1-N4を決定する。
【0071】
データ処理装置3は、形状線N2のx方向長さをルートギャップRGとみなし、ルートギャップRGが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。ルートギャップRGが許容範囲内にないと判定されると、データ処理装置3は、開先G2のルートギャップが不適切であると判定して異常を示す診断結果を出力する。
【0072】
データ処理装置3は、形状線N3の角度を開先角度αとみなし、開先角度αが所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。開先角度αが許容範囲内にないと判定されると、データ処理装置3は、開先G2の傾斜面が不適切であると判定して異常を示す診断結果を出力する。
【0073】
以上に説明した構成によれば、T字溶接や十字溶接のような溶接が適用される開先形状を有するワークW2の場合、ケーシング22の開口43が開先G2に臨むように第1外面42b及び第2外面42cをワークW2に当てれば(
図7参照)、ワークW2との干渉なしに、レーザ距離センサ11が揺動して開先G2の形状を計測できる。
【0074】
突き合わせ溶接が適用される開先形状を有するワークW1の場合、カバー24を使って計測してもカバー24を使わずに計測してもよい。カバー24をケーシング22に取り付け、カバー24の開口55が開先G1に臨むように外底面52をワークW1の表面に載せれば(
図6参照)、レーザ距離センサ11が揺動して開先G1の形状を計測できる。更に、カバー24を使って計測すると、レーザ光Lの照射角度の変位範囲を小さくしても良好に計測でき、計測時間を短縮できる。他方、カバー24をケーシング22から取り外し、ケーシング22の開口43が開先G1に臨むように第1外面42bをワークW1の表面に載せれば(
図7参照)、レーザ距離センサ11が揺動して開先G1の形状を計測できる。
【0075】
従って、簡素な構成のレーザ計測装置2によって、突き合わせ溶接が適用される開先G1と、T字溶接や十字溶接のような溶接が適用される開先G2と、の両方の開先形状を計測できる。
【0076】
第1外面42bと第2外面42cとが互いに直角に配置されることで、T字溶接や十字溶接のような溶接が適用されるワークW2に対し、ケーシング22の第1外面42b及び第2外面42cを押し当ててレーザ計測装置2を容易に位置決めできる。従って、安定した状態で開先形状を計測でき、操作性の良いレーザ計測装置2を提供できる。
【0077】
軸線Cは、第1外面42bを含む第1仮想平面V1と前記第2外面42cを含む第2仮想平面V2とのなす角を2等分する第3仮想平面V3上に位置することで、レーザ計測装置2をコンパクトにすることができる。
【0078】
軸線Cは、レーザ距離センサ11のセンサ中心Q2に対して発光部11aに向かう方向にずれて配置されることで、レーザ距離センサ11の可動範囲を小さくしながらレーザ光Lの照射範囲を拡げることができる。
【0079】
モータ13からレーザ距離センサ11までの動力伝達経路に減速機14が配置されることで、レーザ距離センサ11の単位回転角あたりのモータ13の回転角が増加し、モータ13の回転角を精度良く検出できるとともに、モータ13を小型化できる。
【0080】
ケーシング22の開口43は、軸線方向Xにおけるケーシング22の中心に対して軸線方向Xの片側に配置されることで、ケーシング22の大型化を防ぎながらも第1外面42b及び第2外面42cを広くできる。よって、ワークW1,W2に対する第1外面42b又は第2外面42cの当接面積を大きくすることができ、安定した状態で計測できる。
【0081】
レーザ距離センサ11の検出動作とモータ13の駆動とを中央処理回路33に指令する操作スイッチ19が、ケーシング22の外面に配置されることで、作業者がレーザ計測装置2をワークW1,W2に設置して直ぐに操作スイッチ19を操作して計測を開始できる。従って、操作性の良いレーザ計測装置2を提供することができる。
【0082】
無線通信機34がレーザ距離センサ11を基準として開口43とは反対側に配置され、ケーシング22のうち少なくとも無線通信機34を覆う部分は非導電性樹脂であることで、レーザ計測装置2からデータ処理装置3に向けた計測データの送信に無線通信を使うことができる。従って、配線が不要となり、操作性の良いレーザ計測装置2を提供できる。
【0083】
回転キャリア12、モータ13、減速機14、磁気センサ15及び処理回路基板16が1つの支持フレーム23に支持されることで、ケーシング22の寸法やデザインが変更されても支持フレーム23を変更しないことで、ケーシング22内の構造変更を不要にできる。よって、レーザ計測装置2の外観変更の自由度を高めることができる。
【0084】
本明細書で開示する処理要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0085】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 レーザ計測システム
2 レーザ計測装置
3 データ処理装置
11 レーザ距離センサ
11a 発光部
12 回転キャリア
13 モータ
14 減速機
16 回路基板
19 操作スイッチ
20 光源
22 ケーシング
23 支持フレーム
24 カバー
33 中央処理回路
34 無線通信機
42 テーパ外面
42a 先端面
42b 第1外面
42c 第2外面
43 開口
43a 先端開口領域
43b 第1開口領域
43c 第2開口領域
52 外底面
55 開口
C 軸線
G1,G2 開先
L レーザ光
P1,P3 第1板材
P2,P4 第2板材
Q2 センサ中心
Q3 レーザ原点
W1,W2 ワーク
V1 第1仮想平面
V2 第2仮想平面
V3 第3仮想平面