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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038569
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】着脱機構及びレオロジー測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/14 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
G01N11/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145372
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521394738
【氏名又は名称】株式会社大菜技研
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173646
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 桂子
(72)【発明者】
【氏名】菜嶋 健司
(57)【要約】
【課題】回転式のレオロジー測定装置において、試料から受ける力を測定するためのロータや内筒を、装置本体の正確な位置に取り付けることができ、かつ、単純な操作で取り外すことができる着脱機構及びレオロジー測定装置を提供する。
【解決手段】装置本体に内筒などを取り付けるための着脱機構10を、内筒などの軸部が挿入される孔1aを備え該孔1aの内面に周方向に伸びる溝1bが形成されたハウジング部1と、ハウジング部1の孔1a内に軸方向に移動可能に配置されハウジング部1の溝部1bに相当する位置に貫通孔2aが形成された中空筒状のハーネス2と、ハーネス2の貫通孔2aに配置された球体3と、ハーネス2に対して軸部の挿入方向の力を付与する第1ばね材5と、ハーネス2内に軸方向に移動可能に配置され球体3の移動を規制するスペーサ4と、スペーサ4に対して軸部の挿入方向とは逆方向の力を付与する第2ばね材6で構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式のレオロジー測定装置本体にロータ又は内筒を取り付けるための着脱機構であって、
前記ロータ又は内筒の軸部が挿入される孔を備え、該孔内面に周方向に伸びる溝が形成されたハウジング部と、
前記ハウジング部の孔内に軸方向に移動可能に配置され、前記ハウジング部の溝部に相当する位置に1又は2以上の貫通孔が形成された中空筒状の第1筒部と、
前記第1筒部の貫通孔に配置された球体と、
前記第1筒部に対して前記軸部の挿入方向の力を付与する第1ばね材と、
前記第1筒部内に軸方向に移動可能に配置され、前記球体の移動を規制する第2筒部と、
前記第2筒部に対して前記軸部の挿入方向とは逆方向の力を付与する第2ばね材と、
を有する着脱機構。
【請求項2】
請求項1に記載の着脱機構を備えるレオロジー測定装置。
【請求項3】
内筒と外筒が同軸状に配置され、外筒が回転する外筒回転方式の共軸二重円筒型装置であって、
前記外筒を装置本体に取り付けるための接続部材を有し、
前記着脱機構は、前記接続部材内に設けられている請求項2に記載のレオロジー測定装置。
【請求項4】
前記内筒は、前記軸部と、該軸部の一端側に設けられた試料浸漬部とで構成され、
前記軸部には、前記球体と接触する小突起と、前記小突起よりも前記試料浸漬部側に前記ハウジング部の下端に接触して前記軸部の挿入を規制する係止突条が形成されている請求項3に記載のレオロジー測定装置。
【請求項5】
前記外筒の開口部に取り付けられる内筒ホルダを備え、
前記内筒ホルダは、一対の半円筒形状のホルダ片で構成されると共に、前記ホルダ片の内周面から連続して形成される保持突起を有し、
前記内筒の軸部には、前記試料浸漬部と前記係止突条の間に周方向に伸びる係合溝部が形成されており、
前記内筒ホルダの前記保持突起が前記内筒の軸部の前記係合溝部に係合することで前記内筒が前記内筒ホルダに保持される請求項4に記載のレオロジー測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式粘度計や回転式レオメータ(粘弾性測定装置)などの回転式のレオロジー測定装置に用いられる着脱機構及びこの着脱機構を備えたレオロジー測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物質のレオロジー特性は粘度や粘弾性などによって評価することができる。物質の粘度や粘弾性の測定には、一般に回転式粘度計及び回転式レオメータ(粘弾性測定装置)などの回転式のレオロジー測定装置が用いられている。回転式レオロジー測定装置は、回転体の形状によって共軸二重円筒型、単一円筒型及びコーンプレート型などに分類され、更に、共軸二重円筒型レオロジー測定装置には、内筒(ロータ)が回転する内筒回転型と、外筒(有底円筒状の試料容器)が回転する外筒回転型がある。
【0003】
内筒回転型レオロジー測定装置は、例えば、試料が入れられる円筒状容器と、円筒状容器の内部に同軸状に配置されるロータと、ロータを回転させるためのトルクを発生させる駆動制御装置と、ロータの回転速度を測る測定部などで構成されている。一方、外筒回転型レオロジー測定装置は、例えば、同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構などで構成されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
これら共軸二重円筒型レオロジー測定装置は、流体及び流体様の物質の測定に適しており、測定対象の試料は内外の円筒の間隙に入れられ、そこで流動又は変形したときの力学的性質が測定される。通常、共軸二重円筒型レオロジー測定装置により液体状の試料の測定を行う場合は、先ず、外筒に所定量の試料を量り入れ、装置本体の所定位置に固定すると共に、所定の試料量に対応して設計された長さ及び形の内筒を装置本体の測定軸に取り付ける。次に、内筒又は外筒を移動し、内筒を外筒に入れられた試料に浸漬し、内筒と外筒が所定の位置関係となるよう調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-155906号公報
【特許文献2】特開2015-175841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の回転式レオロジー測定装置には、以下に示す問題点がある。共軸二重円筒型レオロジー測定装置では、内筒と外筒の間に充填された試料が固まってしまった場合、外筒に覆われた内筒と外筒とを分離できず、試料を取り出すことができなくなる。その場合、装置そのものが使用不能になる危険性もある。また、例えば自動サンプリング機能を搭載するといった技術発展には、測定軸への内筒(ロータ)の取り付けを手作業で行う方式の装置は不向きである。
【0007】
そこで、本発明は、回転式のレオロジー測定装置において、試料から受ける力を測定するためのロータや内筒を、装置本体の正確な位置に取り付けることができ、かつ、単純な操作で取り付け及び取り外しができる着脱機構及びレオロジー測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る着脱機構は、回転式のレオロジー測定装置本体にロータ又は内筒を取り付けるための着脱機構であって、前記ロータ又は内筒の軸部が挿入される孔を備え、該孔内面に周方向に伸びる溝が形成されたハウジング部と、前記ハウジング部の孔内に軸方向に移動可能に配置され、前記ハウジング部の溝部に相当する位置に1又は2以上の貫通孔が形成された中空筒状の第1筒部と、前記第1筒部の貫通孔に配置された球体と、前記第1筒部に対して前記軸部の挿入方向の力を付与する第1ばね材と、前記第1筒部内に軸方向に移動可能に配置され、前記球体の移動を規制する第2筒部と、前記第2筒部に対して前記軸部の挿入方向とは逆方向の力を付与する第2ばね材と、を有する。
【0009】
本発明に係るレオロジー測定装置は、前述した着脱機構を備えるものである。
本発明のレオロジー測定装置が、例えば内筒と外筒が同軸状に配置され、外筒が回転する外筒回転方式の共軸二重円筒型装置である場合、前記外筒を装置本体に取り付けるための接続部材を有し、前記着脱機構は前記接続部材内に設けられていてもよい。
前記内筒は、前記軸部と、該軸部の一端側に設けられた試料浸漬部とで構成され、前記軸部には、前記球体と接触する小突起と、前記小突起よりも前記試料浸漬部側に前記ハウジング部の下端に接触して前記軸部の挿入を規制する係止突条が形成されていてもよい。
その場合、前記外筒の開口部に取り付けられる内筒ホルダを備え、前記内筒ホルダは、一対の半円筒形状のホルダ片で構成されると共に、前記ホルダ片の内周面から連続して形成される保持突起を有し、前記内筒の軸部には、前記試料浸漬部と前記係止突条の間に周方向に伸びる係合溝部が形成されており、前記内筒ホルダの前記保持突起が前記内筒の軸部の前記係合溝部に係合することで前記内筒が前記内筒ホルダに保持されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータや内筒の軸を着脱機構の孔に挿入するだけでこれらを保持して所定位置に配置することができ、また、引き抜くという単純な操作でロータや内筒を装置本体から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の着脱機構の構成を示す断面図である。
図2図1に示す着脱機構の主要部材を示す分解断面図である。
図3】内筒が固定されていないときの主要部材の状態を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態のレオロジー測定装置において接続部材に外筒を接続した状態を示す断面図である。
図5図4に示す内筒ハンガー22の構造を示す断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態のレオロジー測定装置で用いる内筒の構造例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、外筒回転方式の共軸二重円筒型レオロジー測定装置に設けられ、装置本体に内筒を取り付けるための着脱機構について説明する。図1は本実施形態の着脱機構の構成を示す断面図である。また、図2図1に示す着脱機構10の主要部材を示す分解断面図であり、図3は内筒が固定されていないときの主要部材の状態を示す図である。
【0014】
図1図3に示すように、本実施形態の着脱機構10は、ハウジング部1内に中空筒状のハーネス2と、1又は2以上の球体3と、球体3の移動を規制するスペーサ4と、ハーネス2に力を付与する第1ばね材5と、スペーサ4に力を付与する第2ばね材6を少なくとも備え、必要に応じて蓋7などが設けられる。
【0015】
[ハウジング部1]
ハウジング部1は、例えば金属などで形成されており、内筒の軸部が挿入される孔1aを備え、その内面には周方向に伸びる溝1bが形成されている。また、ハウジング部1の孔1aは、例えば段階的に径が縮小又は拡大する構成となっており、内筒を固定するための留め孔1cなどが設けられている。この構成により、内筒の取り付け位置の精度を高めることができる。
【0016】
[ハーネス2・球体3]
ハーネス2は、金属などからなる中空筒状の部材(第1筒部)であり、ハウジング部1の孔1a内に軸方向に移動可能に配置されている。また、ハーネス2には、ハウジング部1の溝1bに相当する位置に、1以上の貫通孔2aが形成されており、各貫通孔2aには金属などからなる球体3が保持されている。
【0017】
貫通孔2aは、球体3が脱落せず、かつ、ハウジング部1内のハーネス2の位置に応じて球体3の一部が内側及び外側のいずれかに常に突出する形状及び大きさであればよい。また、ハーネス2には、少なくとも1個の貫通孔2aが形成され、少なくとも1個の球体3が保持されていればよいが、動作安定性の観点から等間隔で3個の貫通孔2aが形成され、各貫通孔2aに1個ずつ、合計で3個の球体3が保持されていることが好ましい。なお、貫通孔2a及び球体3の数は3個に限定されるものではなく、第1ばね材5による負荷などに応じて適宜設定することができ、例えば第1ばね材5による負荷が大きいときは、貫通孔2a及び球体3の数を3個よりも多くすることが好ましい。
【0018】
[スペーサ4]
スペーサ4は、球体3の移動を規制する中空筒状の部材(第2筒部)であり、ハーネス2内に軸方向に移動可能に配置されている。具体的には、スペーサ4が下方に移動すると、スペーサ4によってハーネス2の貫通孔2aが内側から塞がれ、球体3が内側に突出しないように(外側に突出するように)することができる。このスペーサ4は、例えばハウジング部1やハーネス2と同じ素材で形成することができる。
【0019】
[第1ばね材5、第2ばね材6]
第1ばね材5は、ハウジング部1の孔1a内に、例えばハーネス2の下端と接するように配置され、ハーネス2に対して内筒の軸部が挿入される方向、即ち上向きの力を付与する。一方、第2のばね材6は、ハーネス2内に配置され、スペーサ4に対して、第1ばね材5とは逆の下向きの力を付与する。例えば図1に示す構成では、スペーサ4の外周に突起が設けられており、第2のばね材6は、ハーネス2とスペーサ4との間で、かつ、スペーサ4の突起よりも上側に配置され、この突起部分に第2のばね材6から力が付与される。
【0020】
[動作]
次に、本実施形態の着脱機構10の動作、即ち、本実施形態の着脱機構10を介して、外筒回転方式の共軸二重円筒型レオロジー測定装置の本体に内筒を取り付ける方法について説明する。本実施形態の着脱機構では、前述したハウジング部1の構造、ハウジング部1内に配置されたハーネス2、球体3及びスペーサ4、そして第1ばね材5及び第2ばね材6の力を利用して、内筒を所定位置に固定する。
【0021】
本実施形態の着脱機構は、内筒が固定されていない状態では、図3に示すように、ハーネス2はハウジング部1の下方に位置し、ハーネス2に保持されている球体3は外側に突出し、ハウジング1の内壁に形成された溝1bに嵌まっている。一方、内筒が挿入されると、図1に示すように、内筒の軸部によりスペーサ4が押し上げられ、ハーネス2がハウジング部1の上方に移動する。それに伴い、球体3が溝1bから脱出して内側に突出する。そして、球体3により内筒の軸部が捉えられ、ハーネス2を介してばねの力で内筒が所定の位置まで押し上げられ、固定される。
【0022】
また、内筒を外す際は、例えば内筒により球体3がハウジング部1の溝1bの位置まで押し下げられる。これにより、球体3は内側ではなく外側に突出するようになるため、内筒の軸部が開放されると共に、ばねの力によってスペーサ4を押し下げてハーネス2の貫通孔2aを塞ぎ、球体3が内側に突出しないようにする。これにより、次の内筒を固定することが可能となる。
【0023】
以上詳述したように、本実施形態の着脱機構は、バネの力を利用して内筒を所定位置に固定すると共に、内筒の取り外し操作時には、球体により内筒の移動を取り付け時と逆動作に安定して誘導することができるため、内筒の軸を着脱機構の孔に挿入するだけでこれらを保持して所定位置に配置することができ、また、引き抜くという単純な操作で内筒を装置本体から取り外すことができる。なお、本実施形態の着脱機構では、外筒回転方式の共軸二重円筒型レオロジー測定装置本体に内筒を取り付ける場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒の代わりにロータを取り付けることも可能であり、その場合も同様の効果が得られる。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るレオロジー測定装置について説明する。本実施形態のレオロジー装置は、物質の粘度や粘弾性などを測定する回転式レオロジー測定装置であり、少なくとも、装置本体と、内筒若しくはロータと、前述した第1の実施形態の着脱機構10とを備え、この着脱機構10を介して装置本体に内筒又はロータが取り付けられる。
【0025】
本実施形態のレオロジー測定装置の装置本体には、例えば、内筒若しくはロータ又は外筒を回転させるモータと、モータの動作を制御する制御部と、内筒又はロータに加わる応力を測定する検出器などが設けられている。また、本実施形態のレオロジー測定装置が共軸二重円筒型の場合、装置本体には外筒を取り付けるための接続部材が設けられ、この接続部材を介して装置本体に試料容器である外筒が取り付けられる。
【0026】
[接続部材21、外筒20]
図4は接続部材に外筒を接続した状態を示す断面図である。図4に示すように、接続部材21は中空状となっており、その内部に前述した第1の実施形態の着脱機構10(図示せず)が配設されている。また、外筒20は、ガラスや金属からなる有底円筒状の容器であり、内筒(図示せず)は外筒20内に同軸状に配置され、内筒と外筒20の間に測定対象の試料が充填される。そして、外筒20は、例えばナットなどの固定部材23を用いて、接続部材21に固定される。
【0027】
[内筒ハンガー22、内筒30]
外筒20の開口端部には、内筒を保持するための内筒ハンガーが設置されている。図5は内筒ハンガー22の構造を示す断面図であり、図6は内筒の構造例を示す側面図である。内筒ハンガー22は、内筒30を保持すると共に、内筒30及び外筒20の両方に接触して外筒20に加えられた力を内筒30に伝えるものであり、例えば図5に示すように、半円筒形状の2つの同一形状部材で構成されている。このように、内筒ハンガー22を分割可能な構造とすることで、取り付け及び取り外しが容易になる。
【0028】
一方、図6に示すように、内筒30は、試料と接触する試料浸漬部35と、試料と接触しない軸部36で構成されている。試料浸漬部35は、軸部36よりも大きな径を有する円柱状部材である。なお、図6には試料浸漬部35の先端部分が先細りの円錐形状になっているものを示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒30の試料浸漬部35は、先端まで同径の円柱形状、又は、先端部分が半球状になっていてもよい。
【0029】
内筒30に加える力の方向は、回転軸に平行な方向、即ち上下方向のみである。そこで、本実施形態のレオロジー測定装置では、内筒30の軸部36に周方向に張り出す2段突起34を設けると共に、内筒ハンガー22の内壁に内筒30の2段突起34に勘合する突起部22aを設けている。そして、内筒ハンガー22に内筒30の軸部36が挿入されると、内筒ハンガー22の突起部22aが内筒30の軸部36の2段突起34に嵌まり、内筒30が内筒ハンガー22との間に例えば0.5mm程度の間隔をあけて、内筒ハンガー22につり下げられた状態で保持される。
【0030】
2段突起34及び突起部22aの形状は、特に限定されるものではないが、例えば内筒ハンガー22の突起部22aを断面三角形状、即ち先端になるに従い薄くなる形状とし、内筒20の2段突起34の嵌合部34aを断面逆三角形状とすることができる。これにより、外筒20と内筒30の軸心を一致させることができ、装置本体への取り付け動作を安定して行うことが可能となる。
【0031】
また、2段突起34の大きさ(直径)を、ハウジング部1の孔1aよりも大きくし、その上面34がハウジング部1の下端と接触するようにしてもよい。これにより、着脱機構10への軸部36の挿入が規制されるため、取り付け動作時に内筒30が内筒ハンガー22と接触しないよう、内筒30の軸位置を決定することができる。なお、内筒30の軸位置決め用の突起は、内筒ハンガー22と嵌合するための突起とは別に設けてもよい。
【0032】
更に、内筒30の軸部36には、内筒ハンガー22の構造に対応する2段突起34の他に、着脱機構10の構成に対応し、球体3に接触する小突起状の球体接触部32と、軸心を合わせるために孔1a内に挿入されるインロー部31などが設けられている。なお、図5及び図6には、内筒30に2段突起34を設けた場合を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、内筒ハンガー22の内壁に2段突起を設け、内筒の軸部の突起が内筒ハンガーの2段突起に嵌合する構成にしてもよい。
【0033】
[動作]
次に、本実施形態のレオロジー測定装置の動作、即ち、本実施形態のレオロジー測定装置を用いて物質の粘度や粘弾性を測定する方法について、外筒が回転するタイプの共軸二重円筒型レオロジー測定装置を例に説明する。本実施形態のレオロジー装置でレオロジー測定を行う場合、先ず、内筒ハンガー22を用いて、外筒20内に内筒30を同軸状に配置する。具体的には、外筒20内に設置された内筒ハンガーの22の内壁の突起部22aを、内筒30の軸部36の2段突起34に嵌合させることにより、内筒ハンガー22につり下げられた状態で内筒30を保持する。
【0034】
次に、外筒20と内筒30の間に測定対象の試料を充填し、内筒30の軸部36を着脱機構10に挿入すると共に、固定部材23を用いて外筒20を接続部材21に固定する。これにより、内筒ハンガー22につり下げられた内筒30が、内筒ハンガー22によって押し上げられ、その軸部36が着脱機構10内の上方に移動する。
【0035】
このとき、球体3はハーネス2の溝1bに収まっているため、内筒30の軸部36の球体接触部32は、球体3よりも上方まで移動できる。球体3がある部分を通過した球体接触部32によりスペーサ4が押し上げられ、ハーネス2がハウジング部1の上方に移動し、球体3が溝1bから脱出して内側に突出する。そして、球体3により内筒30の軸部36が捉えられ、ハーネス2を介してばねの力で内筒30の球体接触部32を所定の位置まで押し上げて固定する。このとき、内筒30は内筒ハンガー22と接触しない高さに調整されている。この状態で、例えば外筒20を回転させ、試料の粘度測定や粘弾性測定を行う。
【0036】
測定終了後は、固定部材23を外して、外筒20を押し下げる。このとき、外筒20に付与された下向きの力が内筒ハンガー22を介して、内筒30に伝わり、内筒30も下方向に移動し、球体3がハウジング部1の溝1bの位置まで押し下げられる。これにより、球体3は内側ではなく外側に突出するようになるため、内筒30の軸部36が開放されると共に、ばねの力によってスペーサ4を押し下げてハーネス2の貫通孔2aを塞ぎ、球体3が内側に突出しないようになる。
【0037】
一般的な共軸二重円筒型レオロジー測定装置では、外筒が内筒を覆う構造であるため、内筒が予め装置本体に取り付けられている必要があり、予め外筒に入れられた試料と内筒が接する状態を作り出せるのは測定を行う位置(以下、「測定位置」という。)のみである。また、測定の終了後においても、試料が入った外筒と内筒が分離されるのは同じ測定位置で行われることになる。その場合、特別な注意を払う必要がある試料を測定する際は、測定装置を含めた状態で管理する必要があるという問題がある。具体的には、感染性に対する注意が必要な血液を測定する場合は、測定装置ごと管理する必要がある。
【0038】
これに対して、本実施形態のレオロジー測定装置では、内筒ハンガー22を介して外筒20から内筒30に力が伝わるため、外筒20と内筒30を同時に取り付け又は取り外すことが可能となる。これにより、内筒30と外筒20の間に試料が充填された状態で、取り扱うことが可能となり、管理も容易になる。
【0039】
また、内筒及び外筒を保持する部分が上方に位置するレオロジー測定装置では、試料が測定中又は装置本体に取り付けた状態で固まってしまったとき、試料を取り出すことができなくなる場合がある。これに対して、本実施形態のレオロジー測定装置では、外筒から一定以上の力を与えると内筒を外すことができるため、試料が固着した場合でも、内筒を外すことができる。
【0040】
更に、本実施形態のレオロジー測定装置では、内筒が内筒ハンガーに吊り下げられ、内筒と外筒が組み合わされている状態のときは、試料が充填されている部分は内筒と内筒ハンガーによって蓋がされているため、試料の蒸発を抑えることが可能であり、長期間間欠的に測定を行う計測に好適である。更にまた、本実施形態のレオロジー測定装置は、内筒をアダプター内に配置した内筒ハンガーに吊り下げておき、正確な位置で内筒の軸部を挿入するだけで内筒を保持でき、また、引き抜くだけの単純な操作で試料が充填された外筒と内筒を装置から分離できるため、自動測定への適用性が高い。
【0041】
なお、前述した実施形態では、トルクを測定する内筒軸と回転駆動する外筒軸の双方が上方に位置している装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特に内筒の着脱機構は構造上の制約はなく、多くの回転粘度計で採用されている外筒軸側が下方に配置されている回転粘度計にも利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ハウジング部
1a 孔
1b 溝
1c 留め孔
2 ハーネス
2a 貫通孔
3 球体
4 スペーサ
5、6 ばね材
7 蓋
10 着脱機構
20 外筒
21 接続部材
22 内筒ハンガー
23 固定部材
30 内筒
31 インロー部
32 球体接触部
33 上面
34 2段突起
34a 嵌合部
35 試料浸漬部
36 軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6