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特開2023-3859分娩検知装置、分娩検知方法及び分娩検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003859
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】分娩検知装置、分娩検知方法及び分娩検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/66 20170101AFI20230110BHJP
   G06T 7/254 20170101ALI20230110BHJP
【FI】
G06T7/66
G06T7/254 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105185
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】311001347
【氏名又は名称】ノーリツプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】面家 康孝
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA60
5L096FA69
5L096GA06
5L096GA51
5L096HA02
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】家畜の分娩の予兆を検知する精度の向上を図る。
【解決手段】本発明の一側面に係る分娩検知装置は、撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得し、取得された各撮像画像から家畜の重心位置を算出し、算出された重心位置の差分を各撮像画像間の移動量として算出し、各撮像画像間の差分画素数を算出し、算出された差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定し、第1閾値を超える場合、算出された重心位置の移動量が第2閾値を超えるか否かを更に判定し、第2閾値未満であるときは、差分画素数を旋回画素数として集計し、第2閾値を超えるときは、差分画素数を移動画素数として集計し、集計された旋回画素数及び移動画素数に基づいて、家畜に分娩の予兆があるか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得する画像取得部と、
取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出する位置算出部と、
前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出する移動量算出部と、
前記各撮像画像間の差分画素数を算出する差分画素数算出部と、
前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定し、前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合は、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを更に判定し、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときは、前記差分画素数を旋回画素数として集計し、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときは、前記差分画素数を移動画素数として集計する集計部と、
集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定する判定部と、
を備える、
分娩検知装置。
【請求項2】
前記判定することは、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数が閾値を超えるか否かに基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定することにより構成される、
請求項1に記載の分娩検知装置。
【請求項3】
前記判定することは、訓練済みの判定モデルを使用して、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数から前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定することにより構成される、
請求項1に記載の分娩検知装置。
【請求項4】
前記家畜は、牛及び馬のいずれかである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の分娩検知装置。
【請求項5】
前記撮像装置は、サーモグラフィカメラである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の分娩検知装置。
【請求項6】
前記撮像装置は、分娩房の4隅のうちのいずれかに所定の高さで設置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の分娩検知装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記分娩房における前記家畜の存在し得る範囲が前記撮像装置の撮像範囲内に納まるように配置され、
前記分娩房には、前記家畜が1頭のみ存在している、
請求項6に記載の分娩検知装置。
【請求項8】
前記撮像装置は、前記撮像装置の画角の中心が前記分娩房の中心に存在することにより、前記分娩房における前記家畜の存在し得る範囲が前記撮像装置の撮像範囲内に納まるように配置される、
請求項7に記載の分娩検知装置。
【請求項9】
コンピュータが、
撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得するステップと、
取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出するステップと、
前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出するステップと、
前記各撮像画像間の差分画素数を算出するステップと、
前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定するステップと、
前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合に、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを判定するステップと、
前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときに、前記差分画素数を旋回画素数として集計するステップと、
前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときに、前記差分画素数を移動画素数として集計するステップと、
集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定するステップと、
を実行する、
分娩検知方法。
【請求項10】
コンピュータに、
撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得するステップと、
取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出するステップと、
前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出するステップと、
前記各撮像画像間の差分画素数を算出するステップと、
前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定するステップと、
前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合に、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを判定するステップと、
前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときに、前記差分画素数を旋回画素数として集計するステップと、
前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときに、前記差分画素数を移動画素数として集計するステップと、
集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定するステップと、
を実行させるための、
分娩検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分娩検知装置、分娩検知方法及び分娩検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
牛、馬、羊、豚等の家畜の分娩の予兆を全て人手により検知するには、人的コストがかかる。また、人的要因による検知ミスが生じ得る。そこで、近年、カメラを利用して、家畜の分娩予兆の検知を自動化する技術の開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、家畜を撮影した画像を利用して、当該家畜の分娩の予兆を検知する方法が提案されている。具体的に、特許文献1では、得られた撮像画像から家畜の移動量を算出し、算出される家畜の移動量の増加に基づいて、家畜の分娩の予兆を検知することが提案されている。当該方法によれば、家畜の分娩予兆の検知を自動化することができ、その結果、家畜を監視するコストの低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/158698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者は、上記従来の分娩予兆の検知方法には、次のような問題点があることを見出した。すなわち、分娩の予兆として、家畜の行動量が増えることが知られている。しかしながら、その行動は、移動だけに限られない。予兆行動の他の一例として、分娩の予兆のある家畜は、旋回行動をとることがある。旋回行動は、ほぼその場で自転する行為である。そのため、旋回行動における並行移動の量は、それほど多くはないか、ほとんどない。上記従来の方法では、このような旋回行動は、移動量の少ない行為として認識されるため、旋回行動の増加による分娩の予兆を見落としてしまい、分娩の予兆を検知する精度が低くなってしまう可能性があるという問題点があった。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、家畜の分娩の予兆を検知する精度の向上を図るための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本発明の一側面に係る分娩検知装置は、撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得する画像取得部と、取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出する位置算出部と、前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出する移動量算出部と、前記各撮像画像間の差分画素数を算出する差分画素数算出部と、前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定し、前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合は、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを更に判定し、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときは、前記差分画素数を旋回画素数として集計し、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときは、前記差分画素数を移動画素数として集計する集計部と、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0009】
家畜が旋回行動をとると、撮像画像に写る家畜の領域は変動する。そのため、旋回行動時には、撮像画像において、ある程度の画素数の変化が生じる。当該構成では、この画素の変化を差分画素数により評価すると共に、家畜の重心位置の変化(移動量)を評価する。これにより、差分画素数が多い(第1閾値を超える)行動を家畜がとった場合に、重心位置の移動量に基づいて、家畜のとったその行動を移動行動か旋回行動かに振り分けることができる。したがって、当該構成では、家畜の移動行動の量と共に旋回行動の量も集計することができ、その結果、家畜に分娩の予兆があるか否かを判定するのに、家畜の移動行動の量だけでなく、上記従来方法では見落とされていた旋回行動の量も考慮することができる。そのため、当該構成によれば、家畜の分娩の予兆を検知する精度の向上を図ることができる。
【0010】
上記一側面に係る分娩検知装置において、前記判定することは、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数が閾値を超えるか否かに基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定することにより構成されてよい。当該構成によれば、簡易な方法で、家畜の分娩の予兆を検知することができる。
【0011】
上記一側面に係る分娩検知装置において、前記判定することは、訓練済みの判定モデルを使用して、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数から前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定することにより構成されてよい。当該構成によれば、機械学習の手法を採用する場面で、家畜の移動行動の量だけでなく、旋回行動の量(旋回画素数)を説明変数として採用することで、家畜の分娩の予兆を検知する精度の向上を図ることができる。
【0012】
上記一側面に係る分娩検知装置において、前記家畜は、牛及び馬のいずれかであってよい。当該構成によれば、牛及び馬のいずれかの分娩の予兆を検知する場面で、その検知精度の向上を図ることができる。
【0013】
上記一側面に係る分娩検知装置において、前記撮像装置は、サーモグラフィカメラであってよい。サーモグラフィカメラによれば、暗い場所でも、家畜の動きを容易に捕捉することができる。したがって、当該構成によれば、家畜の分娩の予兆を検知する際に明かりの影響を受け難くすることができる。
【0014】
分娩の予兆が表れる可能性のある家畜は、分娩房で飼育されてよい。この場合に、上記一側面に係る分娩検知装置において、前記撮像装置は、分娩房の4隅のうちのいずれかに所定の高さで設置されてよい。撮像装置の撮像範囲外に家畜が移動すると、家畜の写る撮像画像が得られなくなるため、家畜の監視に不備が生じてしまう。当該構成によれば、撮像装置の撮像範囲に死角が生じ難くし、これにより、撮像装置の撮像範囲外に家畜が移動し難くすることができる。その結果、撮像範囲外に家畜が移動することに起因して家畜の監視に不備が生じる確率を低減することができる。
【0015】
上記一側面に係る分娩検知装置において、前記撮像装置は、前記分娩房における前記家畜の存在し得る範囲が前記撮像装置の撮像範囲内に納まるように配置されてよく、前記分娩房には、前記家畜が1頭のみ存在していてよい。配置の一例として、前記撮像装置は、前記撮像装置の画角の中心が前記分娩房の中心に存在することにより、前記分娩房における前記家畜の存在し得る範囲が前記撮像装置の撮像範囲内に納まるように配置されてよい。これらの構成によれば、撮像装置の撮像範囲外に家畜が移動するのを防止することができる。加えて、分娩房に存在する家畜の数が1頭であるため、家畜の重心位置を算出する処理が複雑になるのを防止することができる。したがって、これらの構成によれば、家畜の分娩の予兆を検知する処理を容易にし、かつ検知する精度の更なる向上を図ることができる。
【0016】
また、上記各形態に係る分娩検知装置の別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成要素の全部又はその一部を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。
【0017】
例えば、本発明の一側面に係る分娩検知方法は、コンピュータが、撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得するステップと、取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出するステップと、前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出するステップと、前記各撮像画像間の差分画素数を算出するステップと、前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定するステップと、前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合に、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを判定するステップと、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときに、前記差分画素数を旋回画素数として集計するステップと、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときに、前記差分画素数を移動画素数として集計するステップと、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定するステップと、を実行する、情報処理方法である。
【0018】
また、例えば、本発明の一側面に係る分娩検知プログラムは、コンピュータに、撮像装置により家畜を連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像を取得するステップと、取得された前記各撮像画像から家畜の重心位置を算出するステップと、前記各撮像画像間で、算出された前記重心位置の差分を移動量として算出するステップと、前記各撮像画像間の差分画素数を算出するステップと、前記各撮像画像間で算出された前記差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定するステップと、前記差分画素数が前記第1閾値を超える場合に、前記各撮像画像間で算出された前記重心位置の前記移動量が第2閾値を超えるか否かを判定するステップと、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値未満であるときに、前記差分画素数を旋回画素数として集計するステップと、前記重心位置の前記移動量が前記第2閾値を超えるときに、前記差分画素数を移動画素数として集計するステップと、集計された前記旋回画素数及び前記移動画素数に基づいて、前記家畜に分娩の予兆があるか否かを判定するステップと、を実行させるための、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、家畜の分娩の予兆を検知する精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明が適用される場面の一例を模式的に示す。
図2図2は、実施の形態に係る分娩検知装置のハードウェア構成の一例を模式的に示す。
図3A図3Aは、実施の形態に係る家畜の分娩房の一例を模式的に示す平面図である。
図3B図3Bは、実施の形態に係る家畜の分娩房の一例を模式的に示す側面図である。
図4図4は、実施の形態に係る分娩検知装置のソフトウェア構成の一例を模式的に示す。
図5図5は、実施の形態に係る分娩検知装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、訓練済みの判定モデルを使用して、分娩の予兆を検知する過程の一例を模式的に示す。
図7図7は、分娩の予兆の検知に使用可能な訓練済みの判定モデルを生成する過程の一例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
【0022】
§1 適用例
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る分娩検知装置1は、家畜Dの行動を撮像装置Sにより監視し、家畜Dの分娩の予兆を検知するように構成されるコンピュータである。
【0023】
まず、本実施形態に係る分娩検知装置1は、撮像装置Sにより家畜Dを連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像3を取得する。次に、分娩検知装置1は、取得された各撮像画像3から家畜Dの重心位置を算出する。続いて、分娩検知装置1は、各撮像画像3間で、算出された重心位置の差分を家畜Dの移動量として算出する。また、分娩検知装置1は、各撮像画像3間の差分画素数を算出する。
【0024】
分娩検知装置1は、各撮像画像3間で算出された差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定する。第1閾値は、家畜Dの移動行動及び旋回行動を検出するように適宜与えられてよい。差分画素数が第1閾値を超える場合、分娩検知装置1は、各撮像画像3間で算出された重心位置の移動量(第1閾値を超える差分画素数が算出された撮像画像3間で算出された重心位置の移動量)が第2閾値を超えるか否かを更に判定する。第2閾値は、家畜Dの移動行動及び旋回行動を区別するように適宜与えられてよい。重心位置の移動量が第2閾値未満であるときは、分娩検知装置1は、対応する差分画素数を旋回画素数として集計する。他方、重心位置の移動量が第2閾値を超えるときは、分娩検知装置1は、対応する差分画素数を移動画素数として集計する。そして、分娩検知装置1は、集計された旋回画素数及び移動画素数に基づいて、家畜Dにおいて分娩の予兆があるか否かを判定する。
【0025】
以上のとおり、本実施形態では、家畜Dの行動に伴う画像の変化を差分画素数により評価すると共に、家畜Dの重心位置の移動量を評価する。これにより、差分画素数の多い行動を家畜Dがとった場合に、重心位置の移動量に基づいて、家畜Dのとったその行動を移動行動か旋回行動かに振り分けることができる。したがって、本実施形態では、家畜Dの移動行動の量と共に旋回行動の量も集計することができ、その結果、家畜Dの分娩予兆の判定に、家畜Dの移動行動の量だけでなく、旋回行動の量も考慮することができる。よって、本実施形態によれば、家畜Dの分娩の予兆を検知する精度の向上を図ることができる。
【0026】
なお、家畜Dは、分娩の予兆として移動行動及び旋回行動をとり得る動物であれば、その種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例として、家畜Dは、牛及び馬のいずれかであってよい。また、撮像装置Sの撮像範囲内で飼育する家畜Dの数は、任意であってよい。一例として、撮像装置Sの撮像範囲内で複数の家畜Dが飼育されてもよい。ただし、撮像画像3内に写る家畜Dの画像解析を容易にする観点から、撮像装置Sの撮像範囲内で飼育する家畜Dの数は、一頭のみであることが好ましい。
【0027】
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態に係る分娩検知装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る分娩検知装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16、及びドライブ17が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図2では、通信インタフェース及び外部インタフェースを「通信I/F」及び「外部I/F」と記載している。
【0028】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラム及び各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。
【0029】
記憶部12は、メモリの一例であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。本実施形態では、記憶部12は、分娩検知プログラム81等の各種情報を記憶する。
【0030】
分娩検知プログラム81は、家畜Dの分娩の予兆検知に関する後述の情報処理(図5)を分娩検知装置1に実行させるためのプログラムである。分娩検知プログラム81は、当該情報処理の一連の命令を含む。詳細は後述する。
【0031】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。分娩検知装置1は、通信インタフェース13を利用して、他の情報処理装置との間で、ネットワークを介したデータ通信を実行することができる。
【0032】
外部インタフェース14は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート等であり、外部装置と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース14の種類及び数は任意に選択されてよい。
【0033】
本実施形態では、撮像装置Sは、通信インタフェース13又は外部インタフェース14を介して分娩検知装置1に接続されてよい。撮像装置Sは、家畜Dを観測可能であれば、その種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例では、撮像装置Sは、一般的なRGBカメラ、深度カメラ(深度センサ)、ステレオカメラ等であってよい。他の一例では、撮像装置Sは、サーモグラフィカメラであってよい。サーモグラフィカメラによれば、暗い場所でも、家畜Dの動きを容易に捕捉することができる。そのため、サーモグラフィカメラを撮像装置Sとして採用することで、家畜Dの分娩の予兆を検知する際に、明かりの影響を受け難くすることができる。
【0034】
入力装置15は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。また、出力装置16は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。ユーザ等のオペレータは、入力装置15及び出力装置16を利用することで、分娩検知装置1を操作することができる。なお、入力装置15及び出力装置16は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により、一体的に構成されてもよい。
【0035】
ドライブ17は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むためのドライブ装置である。記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が、記憶されたプログラム等の各種情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。上記分娩検知プログラム81は、記憶媒体91に記憶されていてもよい。分娩検知装置1は、記憶媒体91から、上記分娩検知プログラム81を取得してもよい。なお、図2では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限られなくてもよく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。ドライブ17の種類は、記憶媒体91の種類に応じて任意に選択されてよい。
【0036】
なお、分娩検知装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)等で構成されてよい。記憶部12は、制御部11に含まれるRAM及びROMにより構成されてもよい。通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16及びドライブ17の少なくともいずれかは省略されてもよい。分娩検知装置1は、撮像装置Sを備えていてもよい。分娩検知装置1は、複数台のコンピュータで構成されてもよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。また、分娩検知装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、汎用のPC(Personal Computer)、携帯端末(例えば、スマートフォン)、タブレットPC、マイクロコンピュータ等であってよい。
【0037】
[家畜の飼育状況の一例]
図3A及び図3Bは、本実施形態に係る家畜Dの分娩房5の一例を模式的に示す平面図及び側面図である。飼育方法の一例として、分娩の予兆が表れる可能性のある家畜Dは、図示されるとおり、分娩房5において飼育されてよい。
【0038】
図3A及び図3Bに示される一例では、分娩房5は、平面視において矩形状に形成されている。分娩房5の幅5W及び奥行き5Dは任意であってよい。一例として、幅5W及び奥行き5Dはそれぞれ、3m~5mであってよい。分娩房5の平面視における面積は、9m2~25m2であってよい。
【0039】
本実施形態では、1台の撮像装置Sが、平面視における分娩房5の4隅のうちのいずれかに所定の高さ5Hで設置される。一例として、所定の高さ5Hは、家畜Dを上方から監視するため、家畜Dの上端よりも高くなるように決定されてよい。具体例として、所定の高さ5Hは、床から2.5m~3mであってよい。分娩房5の4隅のうちのいずれかに撮像装置Sを配置することで、撮像装置Sの撮像範囲に死角が生じ難くすることができる。これにより、撮像装置Sの撮像範囲外に家畜Dが移動し難くすることができる。その結果、分娩房5内で家畜Dが撮像範囲外に移動することに起因して家畜Dの監視に不備が生じてしまう確率を低減することができる。
【0040】
撮像装置Sの向きは、家畜Dを観測可能なように、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。また、分娩房5内に存在する家畜Dの数は任意であってよい。一例では、撮像装置Sは、分娩房5における家畜Dの存在し得る範囲が撮像装置Sの撮像範囲内に納まるように配置されてよく、分娩房5には、家畜Dが1頭のみ存在していてよい。家畜Dの少なくとも一部が撮像装置Sの撮像範囲内に入るのであれば、「分娩房5における家畜Dの存在し得る範囲が撮像装置Sの撮像範囲内に納まる」ことは、分娩房5の一部が撮像装置Sの撮像範囲から外れることを含んでもよい。好ましくは、撮像装置Sは、撮像装置Sの画角の中心が分娩房5の中心に存在することにより、分娩房5における家畜Dの存在し得る範囲が撮像装置Sの撮像範囲内に納まるように配置されてよい。これらの監視方法によれば、撮像装置Sの撮像範囲外に家畜Dが移動することを防止することができる。加えて、分娩房5内に存在する家畜Dの数が1頭であるため、家畜Dを検出する処理が複雑になるのを防止することができる。したがって、これらの監視方法によれば、家畜Dの分娩予兆を検知する処理を容易にし、かつ検知する精度の更なる向上を図ることができる。
【0041】
なお、分娩房5の形状は、図3A及び図3Bの例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。他の一例として、分娩房5の平面視における形状は、正方形、その他の平行四辺形、円形、楕円形、三角形、他の多角形又はこれらの組み合わせにより構成されてよい。分娩房5の各角は、丸みを帯びていてもよいし、或いは正確に90度でなくてもよい。分娩房5が四角形以外の形状に構成される場合、分娩房5の4隅は、分娩房5の形状を四角形と見立てる(適当な四角形を分娩房内で形成する)ことで特定されてよい。
【0042】
[ソフトウェア構成]
図4は、本実施形態に係る分娩検知装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。分娩検知装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された分娩検知プログラム81をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された分娩検知プログラム81に含まれる命令をCPUにより実行し、各構成要素を制御する。これにより、図4に示されるとおり、本実施形態に係る分娩検知装置1は、画像取得部111、位置算出部112、移動量算出部113、差分画素数算出部114、集計部115、判定部116、及び出力部117をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。
【0043】
画像取得部111は、撮像装置Sにより家畜Dを連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像3を取得するように構成される。位置算出部112は、取得された各撮像画像3から家畜Dの重心位置を算出するように構成される。移動量算出部113は、各撮像画像3間で、算出された家畜Dの重心位置の差分を家畜Dの移動量として算出するように構成される。差分画素数算出部114は、各撮像画像3間の差分画素数を算出するように構成される。
【0044】
集計部115は、各撮像画像3間で算出された差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定し、差分画素数が第1閾値を超える場合は、各撮像画像3間で算出された重心位置の移動量が第2閾値を超えるか否かを更に判定し、重心位置の移動量が第2閾値未満であるときは、差分画素数を旋回画素数として集計し、重心位置の移動量が前記第2閾値を超えるときは、差分画素数を移動画素数として集計するように構成される。判定部116は、集計された旋回画素数及び移動画素数に基づいて、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定するように構成される。出力部117は、家畜Dの分娩予兆の判定結果を出力するように構成される。
【0045】
分娩検知装置1の各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、本実施形態では、分娩検知装置1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUによって実現される例について説明している。しかしながら、上記ソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。すなわち、上記各モジュールは、ハードウェアモジュールとして実現されてもよい。また、分娩検知装置1のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0046】
§3 動作例
図5は、本実施形態に係る分娩検知装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の処理手順は、分娩検知方法の一例である。ただし、以下の処理手順は、一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。また、以下の処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0047】
(ステップS101)
ステップS101では、制御部11は、画像取得部111として動作し、撮像装置Sにより家畜Dを連続的に撮像することで生成された複数の撮像画像3を取得する。
【0048】
一例では、撮像装置Sは、通信インタフェース13又は外部インタフェース14を介して分娩検知装置1に接続されてよく、制御部11は、撮像装置Sから直接的に複数の撮像画像3を取得してもよい。他の一例では、制御部11は、例えば、ネットワーク、記憶媒体91、外部記憶装置等を介して撮像装置Sから間接的に複数の撮像画像3を取得してもよい。外部記憶装置は、通信インタフェース13又は外部インタフェース14を介して分娩検知装置1に接続されてよい。
【0049】
複数の撮像画像3は、一定時間の間、家畜Dを所定周期毎に撮像することで生成されてよい。一定時間及び所定周期は、家畜Dの分娩の予兆を検知可能に適宜与えられてよい。一例として、一定時間は、数分程度(例えば、10分)であってよく、所定周期は、数ミリ秒~数秒程度(例えば、1秒)であってよい。複数の撮像画像3を取得すると、制御部11は、次のステップS102に処理を進める。
【0050】
(ステップS102)
ステップS102では、制御部11は、位置算出部112として動作し、取得された各撮像画像3から家畜Dの重心位置を算出する。
【0051】
家畜Dの重心位置は、任意の画像処理により算出されてよい。一例として、パターンマッチング、訓練済みモデルを使用したセグメンテーション等の方法により、各撮像画像3から家畜Dの写る領域が抽出されてよい。また、家畜Dの写る領域を抽出する際、各撮像画像3を二値化してもよい。そして、抽出された家畜Dの写る領域から重心位置が算出されてよい。各撮像画像3における家畜Dの重心位置を算出すると、制御部11は、次のステップS103に処理を進める。
【0052】
(ステップS103)
ステップS103では、制御部11は、移動量算出部113として動作し、各撮像画像3間で、算出された重心位置の差分を移動量として算出する。
【0053】
複数の撮像画像3は、時系列に並んでいる。典型的には、制御部11は、複数の撮像画像3のうち時系列で隣接する撮像画像間で、算出された重心位置の差分を移動量として算出してよい。具体例として、時間が早いものから順に、撮像画像3_1、撮像画像3_2、及び撮像画像3_3の3枚の画像が時系列に並んでいると仮定する。制御部11は、各撮像画像(3_1、3_2)(3_2、3_3)間で、重心位置の差分を算出してよい。ただし、時系列で前後の画像間で差分を算出する方法であれば、移動量を算出する方法は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。各撮像画像3間における家畜Dの移動量を算出すると、制御部11は、次のステップS104に処理を進める。
【0054】
(ステップS104)
ステップS104では、制御部11は、差分画素数算出部114として動作し、各撮像画像3間の差分画素数を算出する。
【0055】
一例として、制御部11は、各撮像画像3間で画像の差分を取ることで、画素値に差が生じている画素を抽出し、抽出された画素をカウントする。これにより、制御部11は、各撮像画像3間の差分画素数を算出してよい。「差が生じている」と判定する画素値の差分量(閾値)は、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。
【0056】
差分画素数を算出する対象となる撮像画像3のペアは、重心位置の差分(移動量)を算出する対象となる撮像画像3のペアと同様であってよい。すなわち、典型的には、制御部11は、複数の撮像画像3のうち時系列で隣接する撮像画像間で、差分画素数を算出してよい。上記具体例では、制御部11は、各撮像画像(3_1、3_2)(3_2、3_3)間で、差分画素数を算出してよい。ただし、時系列で前後の画像間で差分を算出する方法であれば、差分画素数を算出する方法は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。各撮像画像3間における差分画素数を算出すると、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。
【0057】
(ステップS105)
ステップS105では、制御部11は、集計部115として動作し、対象の撮像画像3間で算出された差分画素数が第1閾値を超えるか否かを判定する。一例として、最初にステップS105以降の処理を実行する場合、対象の撮像画像3のペアは、時系列で最も時間の早い撮像画像3のペアであってよい。当該判定の処理が完了すると、制御部11は、次のステップS106に処理を進める。なお、本実施形態では、ステップS105から後述のステップS111までの処理は、集計部115としての動作である。
【0058】
(ステップS106)
ステップS106では、制御部11は、ステップS105の処理による判定結果に応じて、処理の分岐先を決定する。差分画素数が第1閾値を超える場合、制御部11は、次のステップS107に処理を進める。一方、差分画素数が第1閾値未満である場合、制御部11は、ステップS107~ステップS110の処理を省略し、ステップS111に処理を進める。
【0059】
なお、差分画素数が第1閾値と等しい場合、処理の分岐先は、ステップS107及びステップS111のいずれであってもよい。すなわち、差分画素数が第1閾値と等しいケースは、差分画素数が第1閾値を超える第1ケース及び差分画素数が第1閾値未満である第2ケースのいずれに振り分けられてもよい。
【0060】
(ステップS107及びステップS108)
ステップS107では、制御部11は、対象の撮像画像3間で算出された重心位置の移動量が第2閾値を超えるか否かを判定する。ステップS108では、制御部11は、ステップS107の処理による判定結果に応じて、処理の分岐先を決定する。移動量が第2閾値未満である場合、制御部11は、次のステップS109に処理を進める。一方、移動量が第2閾値を超える場合、制御部11は、次のステップS110に処理を進める。なお、移動量が第2閾値と等しい場合、処理の分岐先は、ステップS109及びステップS110のいずれであってもよい。すなわち、移動量が第2閾値と等しいケースは、移動量が第2閾値を超える第1ケース及び移動量が第2閾値未満である第2ケースのいずれに振り分けられてもよい。
【0061】
(ステップS109及びステップS110)
ステップS109では、制御部11は、対象の撮像画像3間で算出された差分画素数を旋回画素数として集計する。一方、ステップS110では、制御部11は、対象の撮像画像3間で算出された差分画素数を移動画素数として集計する。いずれかのステップで差分画素数の集計が完了すると、制御部11は、ステップS111に処理を進める。
【0062】
(ステップS111)
ステップS111では、制御部11は、ステップS105からステップS110までの集計処理を終了するか否かを判定する。当該集計処理を適用する撮像画像3のペアが残っている場合、制御部11は、当該集計処理を終了しないと判定し、ステップS105に処理を戻して、残りの撮像画像3のペアのいずれかについて、当該集計処理を実行する。一方、当該集計処理を適用する撮像画像3のペアが残っていない場合、制御部11は、当該集計処理を終了すると判定し、次のステップS112に処理を進める。
【0063】
本実施形態では、上記移動量及び差分画素数を算出した撮像画像3のペアが、ステップS105からステップS110までの集計処理を実行する対象である。制御部11は、ステップS111の条件分岐により、上記移動量及び差分画素数を算出した全ての撮像画像3のペアについて完了するまで、当該集計処理の実行を繰り返す。これにより、制御部11は、各撮像画像3間について、集計処理を実行することができる。
【0064】
処理を実行する順序は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例として、制御部11は、時系列で最も時間の早い撮像画像3のペアから順に、ステップS105からステップS110までの集計処理を実行してよい。上記具体例では、制御部11は、制御部11は、撮像画像(3_1、3_2)のペアについて、ステップS105からステップS110までの集計処理を実行してよい。その後、制御部11は、ステップS111の処理により、ステップS105に処理を戻し、次の撮像画像(3_2、3_3)のペアについて、ステップS105からステップS110までの集計処理を実行してよい。全てのペアについて、当該集計処理が完了すると、制御部11は、次のステップS112に処理を進める。
【0065】
(ステップS112)
ステップS112では、制御部11は、判定部116として動作し、集計された旋回画素数及び移動画素数に基づいて、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定する。分娩予兆の判定において、旋回画素数及び移動画素数を用いる方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。以下に、2つの方法を例示する。
【0066】
(A)第1の方法
第1の方法では、制御部11は、旋回画素数及び移動画素数を閾値と比較する。すなわち、制御部11は、集計された旋回画素数及び移動画素数が閾値を超えるか否かに基づいて、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定する。
【0067】
比較方法の一例として、制御部11は、旋回画素数が第3閾値を超え、かつ移動画素数が第4閾値を超えるか否かを判定してよい。第3閾値及び第4閾値はそれぞれ、分娩予兆を判定可能に適宜与えられてよい。第3閾値及び第4閾値は、互いに同じであってもよいし、或いは互いに異なっていてもよい。旋回画素数が第3閾値を超え、かつ移動画素数が第4閾値を超える場合は、制御部11は、家畜Dに分娩の予兆があると判定してよい。一方、旋回画素数が第3閾値未満である、又は移動画素数が第4閾値未満である場合、制御部11は、家畜Dに分娩の予兆がないと判定してよい。第1の方法によれば、簡易な方法で、家畜Dの分娩の予兆を検知することができる。
【0068】
なお、旋回画素数が第3閾値と等しいケースは、旋回画素数が第3閾値を超える第1ケース及び旋回画素数が第3未満である第2ケースのいずれに振り分けられてよい。同様に、移動画素数が第4閾値と等しいケースは、移動画素数が第4閾値を超える第1ケース及び移動画素数が第4閾値未満である第2ケースのいずれに振り分けられてよい。
【0069】
(B)第2の方法
図6は、訓練済みの判定モデル6を使用して、家畜Dの分娩の予兆を検知する過程の一例を模式的に例示する。図6に示されるとおり、第2の方法では、制御部11は、訓練済みの判定モデル6を使用して、集計された旋回画素数及び移動画素数から家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定する。つまり、集計された旋回画素数及び移動画素数は、訓練済みの判定モデル6の説明変数として用いられる。
【0070】
判定モデル6は、推論結果(すなわち、分娩の予兆があるか否かの判定結果)を導出する演算に使用される1つ以上の演算パラメータを備える機械学習モデルにより構成される。上記旋回画素数及び移動画素数から分娩予兆を判定する処理を実行可能であれば、機械学習モデルの種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例として、判定モデル6は、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン、回帰モデル、決定木モデル等により構成されてよい。
【0071】
図7は、分娩の予兆検知に使用可能な訓練済みの判定モデル6を生成する過程の一例を模式的に示す。機械学習における判定モデル6の訓練には、複数の学習データセット7が使用される。各学習データセット7は、訓練データ71、及び正解ラベル72の組み合わせにより構成される。訓練データ71は、学習用の旋回画素数及び移動画素数を含むように構成される。正解ラベル72は、対応する訓練データ71により示される状況において家畜Dに分娩の予兆があるか否かの真値を含むように構成される。
【0072】
判定モデル6を訓練することは、各学習データセット7を使用して、訓練データ71から対応する正解ラベル72の真値を導き出すように演算パラメータの値を調整(最適化)することにより構成される。この機械学習の方法は、採用される機械学習モデルの種類に応じて適宜選択されてよい。一例として、機械学習の方法には、誤差逆伝播法、最適化問題を解く、回帰分析を実行する、ランダムフォレスト等の方法が採用されてよい。機械学習には、任意のコンピュータ(以下、モデル生成装置とも称する)が用いられてよい。一例では、モデル生成装置は、分娩検知装置1であってよい。他の一例では、モデル生成装置は、分娩検知装置1以外の他のコンピュータであってよい。
【0073】
図6及び図7の一例では、判定モデル6は、ニューラルネットワークにより構成されている。ニューラルネットワークを判定モデル6の構成に採用する場合、典型的には、判定モデル6は、入力層、1つ以上の中間層(隠れ層)、及び出力層を備えるように構成される。各層には、例えば、全結合層等の任意種類の層が採用されてよい。判定モデル6に含まれる層の数、各層のノード(ニューロン)の数、及びノードの接続関係は実施の形態に応じて適宜決定されてよい。各ノード間の結合の重み、各ノードの閾値等が、上記演算パラメータの一例である。
【0074】
ニューラルネットワークを採用する場合における訓練処理の一例として、モデル生成装置は、各学習データセット7の訓練データ71を判定モデル6に入力し、判定モデル6の順伝播の演算処理を実行する。モデル生成装置は、この順伝播の演算結果として、各学習データセット7の訓練データ71(学習用の旋回画素数及び移動画素数)に基づいて家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定した結果に対応する出力値を取得する。モデル生成装置は、取得された出力値と対応する正解ラベル72により示される真値との間の誤差を算出し、算出された誤差の勾配を更に算出する。続いて、モデル生成装置は、誤差逆伝播法により、算出された誤差の勾配を逆伝播することで、判定モデル6の演算パラメータの値の誤差を算出する。そして、モデル生成装置は、算出された誤差に基づいて、演算パラメータの値を更新する。
【0075】
この一連の更新処理により、モデル生成装置は、各学習データセット7について、判定結果(出力値)と真値との間の誤差の和が小さくなるように、判定モデル6のパラメータの値を調整する。このパラメータの値の調整は、例えば、規定回数実行する、算出される誤差の和が閾値以下になる等の所定の条件を満たすまで繰り返されてよい。また、例えば、損失関数、学習率等の機械学習の条件は、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。この機械学習の処理により、旋回画素数及び移動画素数に基づいて家畜Dの分娩予兆を判定する能力を獲得した訓練済みの判定モデル6を生成することができる。
【0076】
上記機械学習により生成された訓練済みの判定モデル6は、学習結果データ125として保存されてよい。訓練済みの判定モデル6の演算を実行するための情報を保持可能であれば、学習結果データ125の構成は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例として、学習結果データ125は、判定モデル6の構成(例えば、ニューラルネットワークの構造等)及び機械学習により調整された演算パラメータの値を示す情報を含むように構成されてよい。
【0077】
学習結果データ125は、任意の記憶領域に保存されてよい。学習結果データ125の保存先は、例えば、制御部11内のRAM、記憶部12、外部記憶装置、記憶メディア、他のコンピュータの記憶部又はこれらの組み合わせであってよい。記憶メディアは、例えば、CD、DVD、フラッシュメモリ等であってよい。外部記憶装置は、例えば、NAS(Network Attached Storage)等のデータサーバであってよい。或いは、外部記憶装置は、コンピュータに直接的に接続された外付けの記憶装置であってもよい。
【0078】
学習結果データ125は、訓練済みの判定モデル6をコンピュータ上で使用可能な状態に設定するために適宜参照されてよい。訓練済みの判定モデル6が他のコンピュータにより生成される場合、学習結果データ125は、任意の方法及び任意のタイミングで、分娩検知装置1に提供されてよい。一例として、学習結果データ125は、ネットワーク、記憶媒体91等を介して、分娩検知装置1に提供されてよい。他の一例として、学習結果データ125は、分娩検知装置1に予め組み込まれてよい。学習結果データ125は、分娩検知装置1の記憶部12に格納されてよい。
【0079】
図6に戻り、第2の方法を採用する場合、判定部116は、学習結果データ125を保持することで、訓練済みの判定モデル6を備える。ステップS112では、制御部11は、学習結果データ125を参照して、訓練済みの判定モデル6の設定を行う。そして、制御部11は、集計された旋回画素数及び移動画素数を訓練済みの判定モデル6に入力し、訓練済みの判定モデル6の演算処理を実行する。この演算処理を実行した結果として、制御部11は、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定した結果に対応する出力値を訓練済みの判定モデル6から取得する。
【0080】
(C)小括
制御部11は、上記2つの方法の少なくともいずれかを採用することで、集計された旋回画素数及び移動画素数に基づいて、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定することができる。分娩予兆の判定が完了すると、制御部11は、次のステップS113に処理を進める。
【0081】
なお、分娩予兆の判定に用いる情報は、集計された旋回画素数及び移動画素数に限られなくてよい。分娩予兆の判定には、旋回画素数及び移動画素数以外の他の情報が更に用いられてよい。この場合、制御部11は、ステップS113の処理を実行する前までに当該他の情報を更に取得する。ステップS113では、制御部11は、当該他の情報を更に用いて、家畜Dに分娩の予兆があるか否かを判定する。判定方法として上記第2の方法を採用する場合、各学習データセット7の訓練データ71は、学習用の他の情報を更に含むように構成される。
【0082】
(ステップS113)
図5に戻り、ステップS113では、制御部11は、出力部117として動作し、家畜Dの分娩予兆の判定結果を出力する。
【0083】
判定結果の出力先及び出力する情報の内容はそれぞれ、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、制御部11は、ステップS112により得られた判定結果をそのまま出力してよい。また、制御部11は、得られた判定結果に基づいて、何らかの情報処理を実行してもよい。そして、制御部11は、その情報処理を実行した結果を、判定結果に関する情報として出力してもよい。一例として、家畜Dに分娩の予兆があると判定された場合に、制御部11は、そのことを知らせるための通知情報を生成し、生成された通知情報を出力してよい。出力先は、例えば、出力装置16、他のコンピュータ(例えば、飼育員、獣医師等の端末)の出力装置等であってよい。出力形式は、例えば、画面出力、音声出力、印刷等であってよい。
【0084】
なお、一例では、分娩の予兆があると判定した場合、及び分娩の予兆がないと判定した場合の両方のケースで、ステップS113の出力処理が実行されてよい。他の一例では、分娩の予兆があると判定した場合に限り、ステップS113の出力処理が実行されてよく、分娩の予兆がないと判定した場合には、当該出力処理は、省略されてよい。
【0085】
判定結果に関する情報の出力が完了すると、制御部11は、本動作例に係る処理手順を終了する。制御部11は、任意の期間及び任意のタイミングで、ステップS101からステップS113までの一連の情報処理を繰り返し実行してよい。これにより、分娩検知装置1は、家畜Dの分娩の予兆を継続的にモニタリングすることができる。
【0086】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態では、ステップS101~ステップS112の処理において、家畜Dの行動に伴う画像の変化を差分画素数により評価すると共に、家畜Dの重心位置の移動量を評価する。これにより、差分画素数の多い行動を家畜Dがとった場合に、重心位置の移動量に基づいて、家畜Dのとったその行動を移動行動か旋回行動かに振り分けることができる。したがって、本実施形態では、家畜Dの移動行動の量と共に旋回行動の量も集計することができ、その結果、ステップS112における家畜Dの分娩予兆の判定処理に、家畜Dの移動行動の量だけでなく、旋回行動の量も考慮することができる。よって、本実施形態によれば、家畜Dの分娩の予兆を検知する精度の向上を図ることができる。
【0087】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0088】
上記実施形態では、一頭の家畜Dが、分娩房5において飼育される。しかしながら、家畜Dの飼育する環境は、このような例に限定されなくてよい。他の一例では、1つの分娩房5において、複数の家畜Dが飼育されてよい。更に他の一例では、1頭以上の家畜Dは、分娩房5以外の場所で飼育されてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、撮像装置Sは、分娩房5の4隅のいずれかに配置されてよい。しかしながら、撮像装置Sが家畜Dを撮像可能であれば、撮像装置Sの配置は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。他の一例では、撮像装置Sは、分娩房5のいずれかの辺に配置されてよい。分娩房5以外の場所で家畜Dが飼育される場合、撮像装置Sは、家畜Dを撮像可能な場所に適宜配置されてよい。
【0090】
また、上記実施形態において、図5に示される処理手順における各ステップの順序は、依存関係が存在しない限り任意に変更されてよい。他の一例では、ステップS104の処理は、ステップS102又はステップS103の処理よりも前に実行されてよい。ステップS102~ステップS104の処理順序は、任意に決定されてよい。
【0091】
また、上記実施形態において、ステップS111による繰り返しの単位は、図5の例に限定されなくてよい。すなわち、ステップS111の戻り先は、ステップS105に限られなくてよい。他の一例では、繰り返しの単位は、ステップS102~ステップS110であってよい。すなわち、制御部11は、撮像画像3のペア毎に、ステップS102~ステップS110の処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…分娩検知装置、
11…制御部、12…記憶部、13…通信インタフェース、
14…外部インタフェース、
15…入力装置、16…出力装置、17…ドライブ、
81…分娩検知プログラム、91…記憶媒体、
111…画像取得部、112…移動算出部、
113…移動量算出部、114…差分画素数算出部、
115…集計部、116…判定部、117…出力部、
3…撮像画像、5…分娩房、
S…撮像装置、D…家畜
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7