IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ MMIセミコンダクター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図1
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図2
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図3
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図4
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図5
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図6
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図7
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図8
  • 特開-耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038631
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
G01L9/00 303Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145447
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】永友 康貴
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE13
2F055FF38
2F055GG11
2F055HH11
(57)【要約】
【課題】耐塵埃/耐ノイズ構造を備え、且つ、リードの加工性が高いセンサ(例えば圧力センサ)を提供する。
【解決手段】センサ素子と、センサ素子を収容する筐体と、外部配線と接続されるリードフレームと、リードフレームとともにセンサ素子を囲む空間を形成するカバープレートと、外気導入孔を有し、カバープレートを非接触的に覆うように配置されるポートカバーと、を備えるセンサにおいて、カバープレートは複数箇所において筐体またはポートカバーに固定され、複数箇所のうち一箇所のみは導電性材料を有する接続部を介してリードフレームと電気的に接続されることによって所定電位に維持されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
凹部を有し、当該凹部に前記センサ素子を収容する筐体と、
外部配線と接続可能であり、前記センサ素子の電極が接続されるリードフレームと、
前記凹部の底面と対向するように配置されるカバープレートと、
外気導入孔を有し、前記カバープレートを覆うように配置されるポートカバーと、を備え、
前記カバープレートは複数箇所において前記筐体または前記ポートカバーに固定され、当該複数箇所のうち少なくとも一箇所以上は前記リードフレームと電気的に接続されることによって所定電位に維持されることを特徴とする、センサ。
【請求項2】
前記リードフレームは、前記筐体の前記凹部の底面において前記センサ素子が載置される平面部を有し、
前記カバープレートは、前記平面部と対向するように配置され、前記平面部とともに前記センサ素子を囲む空間を形成することを特徴とする、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記カバープレートの前記少なくとも一箇所以上は、導電性材料が充填された貫通孔を有する接続部を介して前記リードフレームに電気的に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記カバープレートは、少なくとも一部が金属で構成されており、前記センサ素子及び前記リードフレームの表面よりも高い位置に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記リードフレームは、平面視で前記筐体より内側に形成された部分であるインナーリードと、平面視で前記筐体より外側に形成された部分であるアウターリードを有し、前記接続部は、平面視で当該インナーリードと当該アウターリードを結ぶ線上に位置することを特徴とする、請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記インナーリード表面に対する前記接続部の貫通孔の深さによって、前記カバープレートの高さを調整できることを特徴とする、請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記接続部は、GNDもしくはVDDのいずれか一方の前記リードフレームに配置されることを特徴とする、請求項5または6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記接続部以外の箇所は、絶縁性の固定部を介するように、前記リードフレームの上部において前記筐体に固定されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記固定部は絶縁性材料が充填された有底または無底の穴部、あるいは導電性材料が充填された有底の穴部からなることを特徴とする、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記カバープレートは、前記外気導入孔から前記筐体の内部への流路が存在する態様で前記ポートカバーに一体成型されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記カバープレートは、複層基板からなることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐塵埃/耐ノイズ構造を有するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサとして、ダイアフラム等の感圧素子により検知されたひずみを、ピエゾ抵抗等により電気信号に変換することで圧力を検知する方式が知られている。また、このような方式による感圧ユニットをパッケージングするとともに、パッケージに設けた外気導入孔を介して感圧素子を外気(圧力測定対象の気体又は大気圧取得用の外気)に曝す構造が公知となっている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、このような感圧ユニットを、圧力伝達媒体を兼ねたシリコーンオイル等で液封する構造も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185214号公報
【特許文献2】米国特許第10654709号明細書
【特許文献3】特許第6820247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び2において開示されているような圧力センサによると、感圧素子が外気導入孔から導入された外気に曝されることになるため、外気に含まれる塵埃、あるいはノイズによる悪影響を受けやすい構造となっている。また、圧力センサのリードには段差を設けるため、リードの加工性は高いことが望ましいが、例えば耐塵埃/耐ノイズの目的で感圧素子の上部にカバープレートを設け、当該カバープレートをリードに固定する場合、固定箇所が多いとリードの加工性が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、耐塵埃/耐ノイズ構造を備え、且つ、リードの加工性が高いセンサを提供することを最終的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
センサ素子と、
凹部を有し、当該凹部に前記センサ素子を収容する筐体と、
外部配線と接続可能であり、前記センサ素子の電極が接続されるリードフレームと、
前記凹部の底面と対向するように配置されるカバープレートと、
外気導入孔を有し、前記カバープレートを覆うように配置されるポートカバーと、を備え、
前記カバープレートは複数箇所において前記筐体または前記ポートカバーに固定され、当該複数箇所のうち少なくとも一箇所以上は前記リードフレームと電気的に接続されることによって所定電位に維持されることを特徴とする、センサである。
【0007】
本発明におけるカバープレートがリードフレームと電気的に接続される箇所を少なくとも一箇所以上とすることで、カバープレートの電位を特定のリードフレームの電位に維持することができ、且つ、リードフレームの加工性を向上することができる。リードフレーム上における接続箇所が少ないほど、リードフレームの変形が容易になるため、加工性を向上することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記リードフレームは、前記筐体の前記凹部の底面において前記センサ素子が載置される平面部を有し、前記カバープレートは、前記平面部と対向するように配置され、前記平面部とともに前記センサ素子を囲む空間を形成することを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、外気導入孔からセンサ内部に導入された気体がセンサ素子の表面に直接吹き付けることがなく、カバープレートを迂回する気流でパッケージ内を移動するため、塵埃による悪影響を低減することができる。また、外部からのノイズによる悪影響を低減することもできる。
【0009】
また、本発明においては、前記カバープレートの前記少なくとも一箇所以上は、導電性材料が充填された貫通孔を有する接続部を介して前記リードフレームに電気的に接続されることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、カバープレートをリードフレームにより安定的に接続させることができる。また、カバープレートを筐体の適切な位置に固定できるため、設計自由度を高めることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記カバープレートは、少なくとも一部が金属で構成されており、前記センサ素子及び前記リードフレームの表面よりも高い位置に配置されることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、カバープレートは導電性を有する。さらに、金属素材は熱伝導率がよいため、例えばセンサが急激な温度変化に晒され、結露が発生するような状況であっても、センサ素子ではなく、カバープレートに結露が生じるため、結露からセンサ素子を保護することができる。また、カバープレートがセンサ素子及びリードフレームの表面よりも高い位置に配置されることによって、例えばセンサ素子及びリードフレームがワイヤーによって信号処理素子と接続している場合に、ワイヤーがカバープレートに接してショートするリスクを低減することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記リードフレームは、平面視で前記筐体より内側に形成された部分であるインナーリードと、平面視で前記筐体より外側に形成された部分であるアウターリードを有し、前記接続部は、平面視で当該インナーリードと当該アウターリードを結ぶ線上に位置することを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、カバープレートとリードフレームとをより短距離で確実に接続することができる。また、構造を簡易にすることができ、信頼性を高めることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記インナーリード表面に対する前記接続部の貫通孔の深さによって、前記カバープレートの高さを調整できることを特徴とする、センサとしてもよい。カバープレートの高さを調整することで、例えば外気導入孔から導入された気体の流路の体積を調整することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記接続部は、GNDもしくはVDDのいずれか一方の前記リードフレームに配置されることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、本発明におけるセンサが、上記の通り、所定電位に維持される。
【0014】
また、本発明においては、前記接続部以外の箇所は、絶縁性の固定部を介するように、前記リードフレームの上部において前記筐体に固定されることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、固定部は絶縁性を有するため、固定部においてショートするリスクを低減することが可能である。
【0015】
また、本発明においては、前記固定部は絶縁性材料が充填された有底または無底の穴部、あるいは導電性材料が充填された有底の穴部からなることを特徴とする、センサとしてもよい。固定部が有底の穴部である場合は、カバープレートは固定部を介してリードフレームと接続していないため、導電性材料が充填された場合であってもショートするリスクがない。そのため、固定部は絶縁性材料と導電性材料のいずれの材料が充填されてもよく
、材料の選択性が高くなる。固定部が無底の穴部である場合は、有底の穴部である場合と比較して、容易に形成できる。
【0016】
また、本発明においては、前記カバープレートは、前記外気導入孔から前記筐体の内部への流路が存在する態様で前記ポートカバーに一体成型されていることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、ポートカバーを筐体に取り付けるだけで、メタルカバーを筐体に対して固定することが可能である。また、外界からメタルプレートを迂回してセンサ素子に至る流路を確保することが可能である。
【0017】
また、本発明においては、前記カバープレートは、複層基板からなることを特徴とする、センサとしてもよい。これによれば、例えば導電性を有する層を中間層とすることで、導電性を有する層が外気に曝され、外気からの異物が付着することによる汚染や短絡の発生を抑制することができる。
【0018】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り互いに組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐塵埃/耐ノイズ構造を備え、且つ、リードの加工性が高いセンサを提供することが可能となる。また、当該センサにおいて、リードに対するカバープレートの接着箇所を少なくすることで、小型化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、本発明の実施例1に係る圧力センサの外観を示す上面図である。図1Bは、実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す第1の概略断面図である。図1Cは、実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す第2の概略断面図である。
図2図2は、実施例1に係る圧力センサ内に導入された気体の流れを示す説明図である。
図3図3A図3Bは、図1Cに示す構成の一部を拡大して示す説明図である。
図4図4は、本発明の実施例1に係る圧力センサの内部構造を示す透過上面図である。
図5図5Aは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第1の図である。図5Bは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第2の図である。図5Cは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第3の図である。図5Dは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第4の図である。図5Eは、本発明の実施例1に係る圧力センサの製造の流れを説明する第5の図である。
図6図6A図6Bは、本発明の実施例2に係る圧力センサの内部構造を示す透過上面図である。
図7図7Aは、本発明の実施例3に係る圧力センサの内部構造を示す概略断面図である。図7Bは、図7Aに示す構成の一部を拡大して示す説明図である。
図8図8Aは、本発明の実施例4に係るカバープレートの最外層を示す上面図である。図8Bは、実施例4に係るカバープレートの最外層及び中間層を示す上面図及び透過上面図である。
図9図9Aは、本発明の実施例5に係る圧力センサの外観を示す透過上面図である。図9Bは、実施例5に係るポートカバー部に一体成型したカバープレートを示す側面図である。図9Cは、本発明の実施例5に係る圧力センサの内部構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔適用例〕
以下に本発明の適用例の概要について一部の図面を用いて説明する。本発明は図1A図1B図1Cに示すような圧力センサに適用することができる。図1Aは、適用例に係る圧力センサ1の外観を示す上面図である。図1Bは、図1Aに示す圧力センサ1のAA断面を示す概略断面図である。図1Cは、図1Aに示す圧力センサ1のBB断面を示す概略断面図である。なお、図1Aにおいては、外部配線との接続端子であるリード33のアウターリード33aの部分が省略されている。
【0022】
図1A図1B図1Cに示すように、圧力センサ1はケース部30及びポートカバー部40からなるパッケージ内に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップ10及びMEMSセンサチップ10とワイヤー71で接続されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)20とを収容した構成となっている。ASIC20は、圧力センサ1に必須ではなく、センササイズを小さくしたり低コストにしたりしたい場合にはMEMSセンサチップ10のみが含まれる形態でもよい。ASIC20には、電源回路、信号調整回路及びアナログデジタル変換回路等が内蔵されており、ASIC20とMEMSセンサチップ10と同一パッケージ内に含まれると、信号や電源の取り扱いのし易さや低ノイズ化の観点で優位である。ここで、本適用例におけるMEMSセンサチップ10及びケース部30は、それぞれ本発明におけるセンサ素子及び筐体に相当する。
【0023】
MEMSセンサチップ10には、圧力基準室11や、ダイアフラム12や、ダイアフラム12の周縁に沿って設けられた複数のピエゾ抵抗素子13(図1A図1B図1Cにおいては省略)を含む。ピエゾ抵抗素子13は、ダイアフラム12が、圧力基準室11内の圧力と外部の圧力の差によって変形した場合に、この変形に応じた電気信号を発生可能なセンサの一形態である。本適用例では、ダイアフラム12の周縁に沿って等間隔に4つのピエゾ抵抗素子13が設けられる。なお、これに限らずMEMSセンサチップ10は求められる精度に応じて任意の数のピエゾ抵抗素子13を備える構成であってもよい。
【0024】
圧力基準室11は、ケース部30に設けられる基準圧導入孔31と連通しており、基準圧導入孔31から基準圧力となる外気が導入される。一方、ポートカバー部40に設けられた導圧孔41からは、圧力測定対象となる気体がパッケージ内部に導入される。即ち、本適用例に係る圧力センサ1は、基準圧導入孔31から導入される外気を基準圧力とした差圧センサである。ここで、本適用例における導圧孔41は、本発明における外気導入孔に相当する。
【0025】
ここで、図1B図1Cに示すように、導圧孔41とMEMSセンサチップ10の表面(即ち、ピエゾ抵抗素子13の設けられる側)とは、対向する位置関係に配置されているものの、両者を遮る位置にカバープレート50が設けられている。なお、図1Cにおいて、点線(a)及び点線(b)で囲った部分は、カバープレート50がケース部30に固定される箇所を含む。詳細は以下、図3A図3Bにおいて説明する。ここで、カバープレート50は例えば導電性の金属素材により形成される板状部材である。なお、カバープレート50はMEMSセンサチップ10及びASIC20の全体を覆う構成となっているが、MEMSセンサチップ10表面のピエゾ抵抗素子13を含む領域をカバーできてさえいれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ASIC20を覆わないような構成とすることも可能である。
【0026】
このように、本適用例に係る圧力センサ1は、カバープレート50を備えていることにより、導圧孔41から圧力センサ1内部に導入された気体はMEMSセンサチップ10及びASIC20の表面に直接吹き付けることがなく、カバープレート50を迂回する気流でパッケージ内を移動する。図2に、導圧孔41から導入された気体の流れを白矢印で示
す。導圧孔41から流入した気体は、カバープレート50とポートカバー部40の狭い空間を通り、ついでカバープレート50の側面とケース部30の側壁の間を通り、MEMSセンサチップ10及びASIC20に到達する。迂回し、狭い空間を通ることで気体に含まれる塵埃がMEMSセンサチップ10に付着する可能性が低くなる。また、カバープレート50を備えていることにより、外部からのノイズによる悪影響を低減することもできる。
【0027】
以上のように、本適用例に係る圧力センサ1によれば、導圧孔41とMEMSセンサチップ10の表面とが、対向する位置関係で配置された場合であっても、塵埃やノイズの悪影響を抑制することができる。即ち、カバープレート50が設けられることにより、導圧孔41がどこの位置にあったとしても、カバープレート50により迂回した流路となるため、導圧孔41の配置を塵埃やノイズの悪影響を考えずに自由にレイアウトすることが可能になる。また、カバープレート50を金属素材により形成することにより、圧力センサ1が急激な温度変化に晒され、結露が発生するような状況であっても、MEMSセンサチップ10ではなく、カバープレート50に結露が生じるため、結露からMEMSセンサチップ10を保護することができる。金属素材は熱伝導率がよく、樹脂で形成されたケース部30よりも先に結露が発生するためである。
【0028】
図3Aは、図1Cに示す点線(a)で囲った部分を拡大して示す説明図である。図3Aに示すカバープレート50の一端は、固定部63aによってケース部30に固定されている。固定部63aの穴部はケース部30上に形成されるが、有底であり、リード33まで貫通していない。すなわち、図3Aに示すカバープレート50の一端はリード33に電気的に接続していない。図3A図3Bに示すように、側面視において、固定部63aの穴部の深さは接続部64の穴部の深さと比較して浅い。対して、図3Bは、図1Cに示す点線(b)で囲った部分を拡大して示す説明図である。図3Bに示すカバープレート50の他端は、接続部64によってケース部30に固定されている。また、接続部64の穴部は無底であり、ケース部30上からリード33まで貫通している。また、接続部64は導電性材料を有するため、図3Bに示すカバープレート50の他端はリード33に電気的に接続している。なお、カバープレート50がリード33に電気的に接続している部分は、接続部64の一箇所のみである。
【0029】
図3Bに示すカバープレート50の他端と電気的に接続しているリード33は、さらにGNDまたはVDDに接地している。本発明における、所定電位に維持される状態とは、このようにカバープレート50が任意の箇所(図3Bに示すカバープレート50の他端の配置はあくまで一例であり、接続部64もその位置を限定するものではない)において、接続部64及びリード33を介してGNDまたはVDDに接地している状態を示す。
【0030】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例1に係る圧力センサ1について、図面(上記の適用例で一旦説明した図も含む)を用いてより詳細に説明する。なお、本発明に係る圧力センサは、以下の構成に限定する趣旨のものではない。また、以下の各実施例では、センサの一例として圧力センサを例示するが、これに限定する趣旨のものではなく、他の種類のセンサであってもよい。
【0031】
<圧力センサの構成>
ここで、図1の説明に戻る。実施例1に係る圧力センサ1は、図1A図1B図1Cに示すように、ケース部30及びポートカバー部40からなる矩形のパッケージ内に、MEMSセンサチップ10及びASIC20を収容した構成となっている。即ち、適用例において説明した圧力センサ1と同様の構成を有するため、適用例において説明した内容については、詳細な説明は省略する。また、本明細書では同一の構成要素については同一の
符号を用いて説明を行う。
【0032】
MEMSセンサチップ10及びASIC20は、図1B図1Cにおいて側面視でケース部30の凹部の底面におけるリード平面32上にダイボンド樹脂60によって固定され、載置される。MEMSセンサチップ10及びASIC20は、ダイボンド樹脂60によって固定されたリード平面32とともに、カバープレート50によって囲まれた空間に収容されている。ここで、本実施例におけるリード平面32は、本発明における平面部に相当する。
【0033】
また、図1Bに示すように、ポートカバー部40は、カバーボンド樹脂62によってケース部30に固定され、カバープレート50を覆うように配置される。
【0034】
図4は、本発明の実施例1に係る圧力センサ1の内部構造を示す透過上面図である。詳細には、圧力センサ1のポートカバー部40及びカバープレート50を透過させた状態の上面図である。MEMSセンサチップ10は、表面側にダイアフラム12の周縁に沿って設けられた複数のピエゾ抵抗素子13、及び複数の電極パッド14を備えている。また、ASIC20もその表面側に複数の電極パッド21を備えており、MEMSセンサチップ10の電極パッド14とASIC20の電極パッド21の一部が導電性のワイヤー71で接続される。
【0035】
図4において、リード33は、平面視でケース部30の外側にはみ出したアウターリード33a(詳細には平面視でカバーボンド樹脂62の外側に位置するアウターリード33a)と、平面視でケース部30の内側に位置するインナーリード33b(詳細には平面視でカバーボンド樹脂62の内側に位置するインナーリード33b)を有する。ASIC20の電極パッド21は、外部配線との接続端子となるインナーリード33bや、ダイパッド及びインナーリード33bを兼ねるリード平面32とワイヤー71で接続されている。カバープレート50は、この電極パッド21がインナーリード33bやリード平面32とワイヤー71で接続されている面よりも高い位置に配置される(さらに言及すると、カバープレート50は、MEMSセンサチップ10及びASIC20の表面よりも高い位置に配置される)。なお、ワイヤー71と各電極との接続はワイヤーボンディングによって行われる。ここで、本実施例におけるリード平面32及びリード33は、本発明におけるリードフレームに相当する。なお、外部配線と接続可能に構成されていれば、必ずしもリード平面32及びリード33を用いる必要はない。
【0036】
また、カバープレート50は、図3にも示す通り、固定部63a及び接続部64の二箇所においてケース部30に固定されている。さらに、図3に示す通り、カバープレート50がリード33に電気的に接続している部分は、接続部64の一箇所のみである。カバープレート50が固定部63a及び接続部64の二箇所においてケース部30に固定されていることで、ある程度の固定強度を維持しつつ、圧力センサ1の小型化を図ることができる。また、カバープレート50がリード33に電気的に接続している部分が接続部64の一箇所のみであることで、リード33の加工性が向上し、例えばリード33に段差を設けることが容易になる。さらに、カバープレート50を、MEMSセンサチップ10のGNDまたはVDDとのみ接続することができ、他の電位の電極との短絡を防止できる。さらに、カバープレート50の電位をGNDまたはVDDとすることができ、MEMSセンサチップ10及びASIC20のシールド効果を高めてノイズ耐性を高めることが可能となる。また、固定部63a及び接続部64は、いずれも平面視でアウターリード33aとインナーリード33bを結ぶ線上(接続部64に関しては、厳密には平面視でアウターリード33aとダイパッド及びインナーリード33bを兼ねるリード平面32を結ぶ線上)に位置する。
【0037】
<圧力センサの製造フロー>
なお、以下では、図5A乃至図5Eに基づいて、本実施例に係る圧力センサ1の製造の流れを説明する。図5Aは、圧力センサ1の製造フローにおいて、リード平面32及びリード33と、基準圧導入孔31を備えるケース部30とを結合した状態を示す概略断面図である。このような状態のリード平面32に、ダイボンド樹脂60を用いて、MEMSセンサチップ10及びASIC20を実装(ダイボンディング)するとともに、電極パッド14、電極パッド21、リード平面32、及びインナーリード33bに対してワイヤー71によるワイヤーボンディングを行い、これらを接続する(図5B)。
【0038】
その後、固定部63a及び接続部64によってカバープレート50をケース部30に固定する(図5C)。さらに、ケース部30の上端近傍にカバーボンド樹脂62を塗布し(図5D)、カバーボンド樹脂62により、導圧孔41を備えるポートカバー部40をケース部30に結合させるとともに、パッケージを封止する(図5E)。なお、カバーボンド樹脂62は、気体の漏気を防ぐためにポートカバー部40とケース部30を完全に封止する必要がある。そして、リード平面32及びリード33を個片化することにより、圧力センサ1チップが完成する。
【0039】
〔実施例2〕
次に、図6A図6Bを用いて、本発明の実施例2に係る圧力センサ2について説明する。圧力センサ2は、実施例1の圧力センサ1と多くの構成を共通にしているため、そのような構成については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。また、圧力センサ2に示す構成を実施例1の圧力センサ1に適用することが可能である。
【0040】
<圧力センサの構成>
図6A図6Bは、本発明の実施例2に係る圧力センサ2の内部構造を示す透過上面図である。実施例1の図4に示す圧力センサ1における固定部63aの穴部の数より、図6Aに示す圧力センサ2における固定部63aの穴部の数の方が多い(以下、図6Aに示す全ての固定部63aを「島状の固定部」という)。また、実施例1の図4に示す圧力センサ1における固定部63aの穴部の面積より、図6Bに示す圧力センサ2における固定部63bの穴部の面積の方が広い(以下、図6Bに示す全ての固定部63bを「線状の固定部」という)。図6Bにおいて、接続部64は線状の固定部上に形成されている。
【0041】
島状の固定部の穴部の開口部の面積及び線状の固定部の穴部の開口部の面積はいずれも、図4に示す固定部63aの開口部の面積より大きい。すなわち、実施例2に係る圧力センサ2においては、実施例1に係る圧力センサ1と比較して、カバープレート50のケース部30に対する固定強度が高い。
【0042】
図6A図6Bを比較すると、島状の固定部の穴部の開口部の面積は、線状の固定部の穴部の開口部の面積より小さい。すなわち、圧力センサ2の製造において、カバープレート50のケース部30に対する固定に要するコストを低減することを優先する場合は島状の固定部を採用することが望ましく、カバープレート50のケース部30に対する固定強度を高くすることを優先する場合は線状の固定部を採用することが望ましい。
【0043】
〔実施例3〕
次に、図7A図7Bを用いて、本発明の実施例3に係る圧力センサ3について説明する。圧力センサ3は、実施例1の圧力センサ1と多くの構成を共通にしているため、そのような構成については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。また、圧力センサ3に示す構成を実施例1及び2の圧力センサ1、2に適用することが可能である。
【0044】
<圧力センサの構成>
図7Aは、本発明の実施例3に係る圧力センサ3の内部構造を示す概略断面図である。カバープレート50が接続部64の一箇所のみを介してリード33に電気的に接続している点は、実施例1の圧力センサ1及び実施例2の圧力センサ2と同様である。図7Bは、図7Aに示す点線(c)で囲った部分を拡大して示す説明図である。カバープレート50は、固定部63cによってケース部30に固定され、固定部63cの穴部は無底であり、ケース部30上からリード33まで貫通している。これによって、実施例1の圧力センサ1における固定部63aと比較して、固定強度を高くすることができる。なお、固定部63cを介してカバープレート50がリード33に電気的に接続し、ショート不良によって圧力センサ3が損傷することを防止するため、固定部63cは絶縁性材料を有することが必須である。
【0045】
〔実施例4〕
次に、図8A図8Bを用いて、本発明の実施例4に係るカバープレート50aについて説明する。カバープレート50aは、実施例1乃至3の圧力センサ1、2、3に適用することが可能である(すなわち、カバープレート50の代わりに用いることが可能である)。
【0046】
<カバープレートの構成>
図8Aは、本発明の実施例4に係るカバープレート50aの最外層を示す上面図である。実施例1において、カバープレート50が導電性の金属素材により形成される板状部材であることを例示したが、全面が導電性の金属素材により形成される必要はなく、図8Aに示すように、カバープレート50aは、導電膜51が接続部64と電気的に接続していれば絶縁膜52を含んでいてもよい。図8Bは、実施例4に係るカバープレート50aの最外層及び中間層を示す上面図及び透過上面図である。図8Bにおける上側の図が、接続部64を除いて絶縁膜52のみから形成される最外層であり、図8Bにおける下側の図が、導電膜51が接続部64と電気的に接続している箇所を含んで絶縁膜52から形成される中間層である。図8Bには、プリント基板としてのカバープレート50aを示す。実施例1乃至3に示す圧力センサ1、2、3に対して、図8Aに示すカバープレート50aと図8Bに示すカバープレート50aのいずれを適用してもよい。
【0047】
〔実施例5〕
次に、図9A図9B図9Cを用いて、本発明の実施例5に係る圧力センサ4について説明する。圧力センサ4は、実施例1の圧力センサ1と多くの構成を共通にしているため、そのような構成については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。また、圧力センサ4に示す構成を実施例1乃至3の圧力センサ1、2、3に適用することが可能である。また、実施例4のカバープレート50aは、圧力センサ4に適用することが可能である。
【0048】
<圧力センサの構成>
図9Aは、本発明の実施例5に係る圧力センサ4の外観を示す透過上面図である。図9Aに示すように、平面視でカバープレート50bの面積はポートカバー部40aの面積と比較して小さい(図9Aにおいて、カバープレート50bの上にポートカバー部40aが覆い被さっている)。図9Bは、図9Aに示す圧力センサ4のうち、ポートカバー部40a及びカバープレート50bに係る側面図である。図9Bに示す通り、カバープレート50bはポートカバー部40aに一体成型されている。側面視でカバープレート50bは、図9Bにおけるポートカバー部40aの右側において密着して固定されており、ポートカバー部40aの左側においてはポートカバー部40aとカバープレート50bの間に空間が生じている。逆に、カバープレート50bは、ポートカバー部40aの左側において密着して固定されており、ポートカバー部40aの右側においてポートカバー部40aとカバープレート50bの間に空間が生じていてもよい。図9Cは、図9Aに示す圧力センサ
4のCC断面を示す概略断面図である。導圧孔41aから流入した気体は、カバープレート50bとポートカバー部40aの狭い空間を通るが、その狭い空間は図9C図9Bでもよい)における左側においてのみ形成されている。このため、流入した気体は分岐して二方向にカバープレート50bを迂回することなく、一方向にカバープレート50bを迂回して流れやすい。
【0049】
圧力センサ4の製造フローにおいて、ポートカバー部40aをカバープレート50bに一体成型することで、カバープレート50bを固定部63a、63b、63cによってケース部30に固定しなくても、ポートカバー部40aをカバーボンド樹脂62によってケース部30に固定すれば十分な固定強度を得ることができる。また、実装工数を削減することも可能である。
【0050】
<付記1>
センサ素子(10)と、
凹部を有し、当該凹部に前記センサ素子を収容する筐体(30)と、
外部配線と接続可能であり、前記センサ素子の電極が接続されるリードフレーム(32、33)と、
前記凹部の底面と対向するように配置されるカバープレート(50、50a、50b)と、
外気導入孔(41、41a)を有し、前記カバープレートを覆うように配置されるポートカバー(40、40a)と、を備え、
前記カバープレートは複数箇所(63a、63b、63c、64)において前記筐体または前記ポートカバーに固定され、当該複数箇所のうち一箇所は前記リードフレームと電気的に接続されることによって所定電位に維持されることを特徴とする、センサ。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3、4 :圧力センサ
10 :MEMSセンサチップ
11 :圧力基準室
12 :ダイアフラム
13 :ピエゾ抵抗素子
14、21 :電極パッド
20 :ASIC
30 :ケース部
31 :基準圧導入孔
32 :リード平面
33 :リード
33a :アウターリード
33b :インナーリード
40、40a :ポートカバー部
41、41a :導圧孔
50、50a、50b :カバープレート
51 :導電膜
52 :絶縁膜
60 :ダイボンド樹脂
62 :カバーボンド樹脂
63a、63b、63c :固定部
64 :接続部
71 :ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9