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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038674
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】荷役車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/48 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
B60P1/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145528
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金澤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】岡根 一幸
(57)【要約】
【課題】傾斜センサの数を抑えつつ車台の傾斜角度を把握して車台に対するアームの旋回角を演算する。
【解決手段】車台と、前記車台に対して荷箱を支持するアームと、重力方向を基準とする前記アームの角度を検出する傾斜センサと、前記車台に対する前記アームの角度が所定角度であることを検出する検出器と、前記車台に対する前記アームの相対傾斜角を演算する制御装置とを備えた荷役車両であって、前記制御装置は、前記傾斜センサ及び前記検出器の出力を基に、前記車台に対して前記所定角度にある前記アームの傾動開始前の前記傾斜センサの出力を車台傾斜角として記憶し、前記アームの傾動開始後の前記傾斜センサの出力と前記車台傾斜角とを基に前記相対傾斜角を演算する荷役車両を提供する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と、
前記車台に対して荷箱を支持するアームと、
重力方向を基準とする前記アームの角度を検出する傾斜センサと、
前記車台に対して前記アームが所定角度にある状態を検出する検出器と、
前記車台に対する前記アームの相対傾斜角を演算する制御装置とを備えた荷役車両であって、
前記制御装置は、
前記傾斜センサ及び前記検出器の出力を基に、前記車台に対して前記所定角度にある前記アームの傾動開始前の前記傾斜センサの出力を車台傾斜角として記憶し、
前記アームの傾動開始後の前記傾斜センサの出力と前記車台傾斜角とを基に前記相対傾斜角を演算する
ことを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
請求項1の荷役車両において、
前記検出器は、前記車台に対して前記アームが0度にある状態を検出することを特徴とする荷役車両。
【請求項3】
請求項1又は2の荷役車両において、
前記制御装置は、前記アームを操作する操作装置の出力を基に前記アームの傾動開始前を判定することを特徴とする荷役車両。
【請求項4】
請求項3の荷役車両において、
前記制御装置は、前記操作装置の操作中断時と操作再開時の前記傾斜センサの各出力の差が許容値を超える場合は前記相対傾斜角の演算を無効とすることを特徴とする荷役車両。
【請求項5】
請求項4の荷役車両において、
前記操作中断時は、設定時間以上継続する操作中断における開始から前記設定時間が経過する時点であることを特徴とする荷役車両。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか1つの荷役車両において、
前記制御装置は、PTOがオフになった時点とその後最初にオンになった時点の前記傾斜センサの各出力の差を補正値として、前記車台傾斜角を補正することを特徴とする荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車台に対して荷箱を傾斜させることができる荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車台に対して荷箱を傾斜させることができる荷役車両として、いわゆるコンテナ荷役車両やダンプ車等がある。この種の荷役車両において、荷箱を傾斜させるアームに傾斜センサを設けたものがある(特許文献1等参照)。同文献の荷役車両においては、重力方向を基準とする角度を検出する傾斜センサを用いているため、水平面に対するアームの傾斜角が検出される。この場合、車台に対するアームの角度が同じてあっても、車台の角度(つまり車台が接地する地面の角度)によって傾斜センサの検出値が異なってくる。
【0003】
そのため、同文献では、重力方向を基準とする傾斜角を検出する傾斜センサを車台にも別途設け、これら2つの傾斜センサの検出値の差分を車台に対するアームの角度として計算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-215916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、車台に対するアームの相対傾斜角を演算するためにアームと車台の双方に傾斜センサを設けている。荷役車両が移動してコンテナの積み降ろし作業を行う度に車台とアームの傾斜センサの検出値から車台に対するアームの相対傾斜角を演算する構成であり、車台及びアームの双方の傾斜センサを要する。そのため部品コストの上昇や配線レイアウトの複雑化を招く。
【0006】
本発明の目的は、傾斜センサの数を抑えつつ車台の傾斜角度を把握して車台に対するアームの相対傾斜角を演算できる荷役車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車台と、前記車台に対して荷箱を支持するアームと、重力方向を基準とする前記アームの角度を検出する傾斜センサと、前記車台に対する前記アームの角度が所定角度であることを検出する検出器と、前記車台に対する前記アームの相対傾斜角を演算する制御装置とを備えた荷役車両であって、前記制御装置は、前記傾斜センサ及び前記検出器の出力を基に、前記車台に対して前記所定角度にある前記アームの傾動開始前の前記傾斜センサの出力を車台傾斜角として記憶し、前記アームの傾動開始後の前記傾斜センサの出力と前記車台傾斜角とを基に前記相対傾斜角を演算する荷役車両を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、傾斜センサの数を抑えつつ車台の傾斜角度を把握して車台に対するアームの相対傾斜角を演算できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る荷役車両の側面図
図2】本発明の一実施形態に係る荷役車両の平面図
図3】本発明の一実施形態に係る荷役車両の背面図
図4図1の荷役車両に備えられた特装ユニットの斜視図
図5】本発明の一実施形態に係る荷役車両に備えられた駆動システムの模式図
図6】ダンプ傾斜角の説明図
図7】アーム旋回角の説明図
図8図1の荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図9図1の荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図10図1の荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図11図1の荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図12図1の荷役車両による標準コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図13図1の荷役車両に備えられた制御装置による車台に対するアームの相対傾斜角の演算手順を表すフローチャート
図14】本発明の一変形例に係る荷役車両の側面図
図15】本発明の一変形例に係る荷役車両の平面図
図16】本発明の一変形例に係る荷役車両の背面図
図17図14の荷役車両によるダンプ作業の様子を表す図
図18図14の荷役車両による専用コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図19図14の荷役車両による専用コンテナの積み込み作業の様子を表す図
図20図14の荷役車両による専用コンテナの積み込み作業の様子を表す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0011】
-荷役車両-
図1は本発明の一実施形態に係る荷役車両の側面図、図2は平面図、図3は背面図である。本願明細書では、図2における左、右、下、上を、荷役車両の前、後、左、右とする。また、車両1の車台3に対してコンテナ(荷箱)を積み込んだり降ろしたりする積降作業やダンプ作業を総称して「荷役作業」と記載する。
【0012】
図1図3に示した荷役車両は、車両1と特装ユニット10を含んで構成されている。車両1は自走車両であり、前部に運転室2を備え、この運転室2の後側に車台3を備えている。
【0013】
図4は特装ユニット10の斜視図である。同図においては、構成を見や易くするため、図1図3と異なり、ダンプフレームA2(後述)を立ち上げたダンプ姿勢の特装ユニット10を図示している。特装ユニット10は、荷役作業をするために車台3の上部に取り付けたユニットであり、図1図4に示したように、荷役装置A、コンテナ案内装置B、ロック装置C、ジャッキD、アダプタE等を備えている。
【0014】
コンテナ案内装置Bは、アダプタEを用いた積降作業の対象となる標準コンテナX(図10等)を支持しガイドする装置であり、特装ユニット10の後部に設けられている。ロック装置Cは、専用コンテナ(図18)を積載した際、積載した専用コンテナを固定する装置である。ジャッキDは、積降作業時に車台3の後部の沈み込みを抑制するための装置である。アダプタEは、標準コンテナXを車台3に積載するために標準コンテナXに装着する一種のアタッチメントである。このアダプタEは、不使用時にはベースフレームA1の前部に設けた支持ポストA11に固定される。荷役装置Aの構成について次に説明する。
【0015】
-荷役装置-
荷役装置Aは、コンテナを車台3上に引き上げたり車台3から降ろしたりする装置であり、ベースフレームA1、ダンプフレームA2(図2等)、積降アームA3、駆動部A4、ガイドローラA5を含んで構成されている。
【0016】
・ベースフレーム
ベースフレームA1は、荷役装置Aの基礎構造体である。このベースフレームA1は、水平な矩形状に構成されて前後に延び、車台3の上部に重ねて固定してある。
【0017】
・ダンプフレーム
ダンプフレームA2は、積載したコンテナの内容物をダンプ排出するために車台3上でコンテナをチルトアップさせるためのフレームである。このダンプフレームA2は、ベースフレームA1の後部に配置され、左右方向(車幅方向)に延びる軸A6を介してベースフレームA1の後端部に回動自在に連結されている。ダンプフレームA2の前後長は、ベースフレームA1の前後長よりも短い。
【0018】
・積降アーム
積降アームA3は、コンテナの積降作業用のアームであり、車台3に対してコンテナを支持する。この積降アームA3は、基部アームA7及びフックアームA8を含んで構成されている。基部アームA7は、直線的に前後に延びる筒状のアームであり、左右に延びる軸A9を介してダンプフレームA2の前部(先端部)に回動自在に連結され、車台3上で前後に回動する。フックアームA8は、後部が前後に延び前部が立ち上がるL字型のアームであり、後部が基部アームA7にスライド自在に挿入されている。フックアームA8の先端(上端)には、標準コンテナX(図10等)に掛けるフックFが設けられている。
【0019】
標準コンテナXは、ISO規格等の標準規格に沿って製作されたコンテナであり、例えば海上コンテナである。標準コンテナXは荷役車両による積降作業を想定して製作されておらず、通常はクレーンやフォークリフト等の別体の荷役機械で船やトレーラ、鉄道等の輸送手段に積載される。直方体状に形成された標準コンテナXには、各面に凹部を備えた隅金具が8つの角部にそれぞれ設けられている。
【0020】
なお、特に図示していないが、フックアームA8の起立部分の上部は下部に対して油圧シリンダ(不図示)により前後に回動自在に形成され、この回動軌道上でフックFの高さや前後位置等が変えられるように構成される場合がある。
【0021】
また、本実施形態では、基部アームA7に対してフックアームA8がスライドする構成を例示しているが、基部アームA7に対してフックアームA8がスライドする代わりに回動する構成とする場合もある。また、積降アームA3は、基部アームA7とフックアームA8に分割せず、一体のL字型のアームとして構成される場合もある。
【0022】
・駆動部
駆動部A4は、積降アームA3を駆動するものである。この駆動部A4は、基部アームA7を回動させる左右一対のリフトシリンダA10の他、フックアームA8を基部アームA7に対してスライドさせるスライドシリンダA12(図5)やこれらシリンダを駆動する油圧回路G1(図5)を備えている。リフトシリンダA10及びスライドシリンダA12は、共に油圧シリンダである。リフトシリンダA10の基端はベースフレームA1に、リフトシリンダA10の先端は基部アームA7の後部にそれぞれ回動自在に連結されている。スライドシリンダA12は、基部アームA7の内部に収容されており、基端が基部アームA7に、先端がフックアームA8に連結されている。
【0023】
・ガイドローラ
上記のガイドローラA5は、専用コンテナ(図18)をガイドするためのローラであり、ダンプフレームA2を支持する軸A6の左右両端に設けられている。「専用コンテナ」とは、荷役車両による積降作業を想定して製作されたコンテナであり、アダプタEを用いずに積降作業ができるように構成されている。これらガイドローラA5は、コンテナ案内装置Bによる標準コンテナXの案内面(積載された標準コンテナXの下面)よりも低位置に配置されており、積降作業時を含めて標準コンテナXに干渉しないようになっている。
【0024】
なお、本実施形態の荷役車両においては、積降作業時には、ダンプフレームA2が水平姿勢のまま積降アームA3のみが前後に回動し、ダンプ作業時には、積降アームA3と一体となってダンプフレームA2が回動する。この動作を可能とするために、ダンプフレームA2に対して積降アームA3をロックしたりロックを解除したりするダンプロック装置(不図示)が設けられている。
【0025】
ダンプロック装置は、ロックピンやこれに係脱可能なロック用フック等からなる。ロックピンはダンプフレームA2の先端部に設けられており、ロック用フックは積降アームA3の基部アームA7の両側面に回動自在に設けられている。ロックピンに対するロック用フックの係脱は、基部アームA7に対するフックアームA8のスライド動作が利用される。例えばロック用フックはロックピンに係止される方向にバネ等の力を受けており、フックアームA8が後端付近までスライドすると、フックアームA8に作動ロッドが押されてロック用フックがロックピンから外れる構成とすることができる。
【0026】
この場合、フックアームA8が後端付近まで後退すると積降アームA3とダンプフレームA2とのロックが解除され、リフトシリンダA10の伸縮によってダンプフレームA2に対して積降アームA3が前後に回動する。反対にフックアームA8が前進すると、積降アームA3とダンプフレームA2とがロックされ、この状態でリフトシリンダA10が伸縮すると、積降アームA3と共にダンプフレームA2がチルトアップ及びチルトダウンする。このようなダンプロック装置の構成については、特許第5284541号公報等に記載されている。
【0027】
-駆動システム-
図5は本発明の本実施形態に係る荷役車両に備えられた駆動システムの模式図である。同図に示したように、荷役車両には、リフトシリンダA10及びスライドシリンダA12を駆動する油圧回路G1や制御装置G2、各種のセンサが備わっている。制御装置G2については後述する。
【0028】
・油圧回路
油圧回路G1は、油圧ポンプやコントロールバルブ(例えば電磁駆動式の方向切換弁)等を含んで構成されている。例えばPTO(Power Take Off)で取り出したエンジン動力で油圧ポンプが駆動され、コントロールバルブを介して油圧ポンプの吐出油が供給されることでリフトシリンダA10及びスライドシリンダA12が伸縮する。
【0029】
・センサ
図5に示したように、荷役車両には、傾斜センサS1及びリフト縮センサS2が設けられている。
【0030】
傾斜センサS1は、重力方向を基準とする積降アームA3の傾斜角度(例えば水平面に対する傾斜角度)を検出するセンサであり、積降アームA3に設けられている。この傾斜センサS1には、例えばジャイロスコープやIMU(慣性計測装置)を用いることができる。その他にも、振り子式又はフロート式の傾斜センサ(吊るした錘や液面に対する傾きを検出するセンサ)や加速度センサ等を傾斜センサS1として用いることができる。傾斜センサS1によって、重力方向を基準とする積降アームA3の角度が検出されて制御装置G2(図5)に出力される。なお、積降アームA3における傾斜センサS1の設置部位は基部アームA7及びフックアームA8のいずれでも良いが、外筒を構成する基部アームA7の例えば外壁面か、基部アームA7に対して常時露出するフックアームA8の前部の外壁面が好ましい。
【0031】
リフト縮センサS2は、車台3に対して積降アームA3が所定角度にある状態を検出する検出器である。このリフト縮センサS2には、例えばリフトシリンダA10が所定の長さ(本実施形態では最縮状態、つまり車台3に対して積降アームA3が0度にある状態)にあることを検出するセンサ(リミットスイッチ等)を用いることができる。車台3に対して積降アームA3が所定角度にある状態を検出する上では、車台3に対する積降アームA3の角度を検出する角度計を用いることもできる。
【0032】
・制御装置
制御装置G2は車載コンピュータの一種であり、例えばCPUやメモリを備えている。制御装置G2は、操作装置Hの操作に応じてコントロールバルブを駆動する指令信号を出力し、コントロールバルブで作動油の供給方向を切り換えることでリフトシリンダA10及びスライドシリンダA12を伸縮させ、積降アームA3の動作を制御する。
【0033】
制御装置G2のメモリには、積降アームA3の制御に関するプログラムの他、車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角の演算に関するプログラムが格納されている。制御装置G2には、前述した傾斜センサS1やリフト縮センサS2の出力信号の他、リモコン等の操作装置Hからの操作信号、PTOスイッチPのオンオフ信号が入力される。PTOスイッチPはPTOをオンオフするスイッチであり、PTOスイッチPでPTOをオンにすると油圧回路G1にエンジン動力が伝達され、PTOスイッチPでPTOをオフにすると油圧回路G1へのエンジン動力の伝達が遮断される。制御装置G2が積降アームA3の相対傾斜角の演算の基礎に用いる傾斜センサ(重力方向を基準とする角度を計測するセンサ)は、単一の傾斜センサS1のみである。つまり、車台3にIMU等の傾斜センサは設けられていない。
【0034】
車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角には、ダンプ角θtilt(図6)やアーム旋回角θarm(図7)が含まれる。ダンプ角θtiltは、ダンプフレームA2と積降アームA3とが一体となって傾斜する際の車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角である(図4も参照)。アーム旋回角θarmは、ダンプフレームA2に対して積降アームA3が折れ曲がって傾斜する際の車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角である(図9も参照)。本実施形態において、ダンプ角θtilt及びアーム旋回角θarmは、操作装置Hからの信号を基に(操作信号が後述する積降作業の操作信号かダンプ作業の操作信号かで)区別されて演算される。
【0035】
-積降作業-
標準コンテナXを車台3に積み込む場合、荷役車両を標準コンテナXの前方の所定位置に停車させ、まず図1図3の状態において手作業でアダプタEと支持ポストA11との連結を解く。次にジャッキDを下ろすと共に、操作装置Hで所定の操作をしてフックアームA8を前進させ、図8に示したようにアダプタEにフックFを掛ける。フックFがアダプタEに掛かったら、アダプタEと共にフックアームA8を後退させ、操作装置Hで積降作業用の降ろしボタンの操作をする。これにより前述したダンプロック装置のロックが解除され、図9に示したようにリフトシリンダA10が伸びて積降アームA3が後方に回動する。このようにして車両後方に持ち出したアダプタEを図10に示したように標準コンテナXの前面に装着する。
【0036】
アダプタEの装着作業が完了したら、操作装置Hで積降作業用の引き上げボタンの操作をして積降アームA3を前方に回動させ、図11に示したように標準コンテナXを車台3上に引き上げる。積降アームA3の動作に伴って標準コンテナXは後端下部を支点に前側が持ち上がり、更に積降アームA3が前方に回動することで車両と標準コンテナXが相対的に近付く。その際、標準コンテナXは重量があり下部にローラも付いていないため、車両の方が後退して標準コンテナXの下側に入り込み、標準コンテナXの下面の左右がコンテナ案内装置Bで受けられる。その後更に積降アームA3が前方に回動することで、標準コンテナXはコンテナ案内装置Bにガイドされながら車台3の上部に引き上げられる。積降アームA3が水平に倒伏したらフックアームA8を前進させ、図12に示したように支持ポストA11のスタンドにアダプタEを載せる。最後にコンテナ案内装置Bに備わったロック装置で標準コンテナXをコンテナ案内装置Bに対して固定して、標準コンテナXの積載作業を完了する。
【0037】
標準コンテナXを車台3から下ろす荷降ろし作業は、以上のコンテナ積載作業と逆の手順で行うことができる。
【0038】
なお、制御装置G2のメモリには、積降作業時における減速開始角度が格納されている。積降作業時の減速開始角度には、コンテナが地面に着くアーム旋回角θarmより若干小さく設定した第1の値、コンテナが車台3に着床する際のアーム旋回角θarmより若干大きく設定した第2の値が含まれる。アーム旋回(コンテナ降ろし)動作の際、アーム旋回角θarmが第1の値以上であれば、制御装置G2はアーム旋回速度を減速させてコンテナが地面に着床する際の衝撃を緩和する。反対にアーム旋回(コンテナ積込)動作の際、アーム旋回角θarmが第2の値以下であれば、制御装置G2はアーム旋回速度を減速させてコンテナが車台3に着床する際の衝撃を緩和する。
【0039】
-ダンプ作業-
また、ダンプ作業をする場合、例えば操作装置Hでダンプ作業用のダンプ上げボタンの操作をすると、前述したダンプロック装置がロックされ、図4に示したようにリフトシリンダA10が伸びて積降アームA3と共にダンプフレームA2が後方に起立する。これによりコンテナの内容物がダンプ排出される。その後、操作装置Hでダンプ作業用のダンプ下げボタンの操作をすると、リフトシリンダA10が縮んで積降アームA3と共にダンプフレームA2が図8に示したように倒伏する。
【0040】
なお、制御装置G2のメモリには、ダンプ作業時における減速開始角度が格納されている。ダンプ作業時の減速開始角度には、フルダンプ時のダンプ角θtilt(θtiltの最大値)より若干小さく設定した第3の値、及びコンテナが車台3に着床する際のダンプ角θtiltより若干大きく設定した第4の値が含まれる。ダンプ(上げ)動作の際、ダンプ角θtiltが第3の値以上であれば、制御装置G2はコンテナの傾斜速度を減速させてリフトシリンダA10のストローク端に至る際の衝撃を緩和する。反対にダンプ(下げ)動作の際、ダンプ角θtiltが第4の値以下であれば、制御装置G2はコンテナの傾斜速度を減速させてコンテナ着床時の衝撃を緩和する。
【0041】
-アームの相対傾斜角演算-
図13は制御装置G2による車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角の演算手順を表すフローチャートである。制御装置G2は、通電時に図13のフローを短いサイクルタイム(例えば0.1s)で繰り返し実行する。図13では、積降アームA3の相対傾斜角として、アーム旋回角θarm(図7)を演算する例を説明するが、ダンプ角θtiltの演算手順も同様である。
【0042】
・START
図13のフローを開始すると、制御装置G2はまず、リアルタイムに入力される傾斜センサS1、リフト縮センサS2、操作装置H及びPTOスイッチPの信号を入力し、メモリに記録する。
【0043】
・ステップS01
続くステップS01において、制御装置G2は、現在のリフト縮センサS2の信号を基に、現在のリフトシリンダA10が最縮状態(所定長さ)にあるかを判定する。リフト縮センサS2の信号がオンでリフトシリンダA10が最縮状態にある(本実施形態では車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角が0である)場合、制御装置G2は、ステップS01からステップS02に手順を移す。リフト縮センサS2の信号がオフでリフトシリンダA10が最縮から伸びた状態にある(本実施形態では車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角が0より大きい)場合、制御装置G2は、ステップS01からステップS04に手順を移す。
【0044】
・ステップS02
ステップS02に手順を移すと、制御装置G2は、メモリに記憶した操作装置Hの信号を基に、現在がリフトシリンダA10の最縮状態からの伸長開始時点であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、操作装置Hの積降作業用の降ろしボタンの操作に伴う現在の操作信号がオンで、1サイクルタイム前(例えば0.1s前)の操作信号がオフであるかを判定する。現在がリフトシリンダA10の最縮状態からの伸長開始時点である場合、制御装置G2は、ステップS02からステップS03に手順を移す。現在がリフトシリンダA10の最縮状態からの伸長開始時点でない場合、制御装置G2は、ステップS01からステップS21に手順を移す。
【0045】
・ステップS03
ステップS03に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtを車台傾斜角θ1としてメモリに記憶(登録)し、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0046】
・ステップS04
リフトシリンダA10が最縮から伸び始めるとステップS01の判定が満たされなくなり、制御装置G2は、ステップS01からステップS04に手順を移す。ステップS04において、制御装置G2は、現在のサイクルと1つ前のサイクルの各スタート時にメモリに記憶したPTOスイッチPの信号を基に、現在がPTOのオンからオフに切り換わった時点であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、PTOスイッチPの現在の操作信号がオフで、1サイクルタイム前の操作信号がオンであったかを判定する。現在がPTOのオフに切り換わった時点である場合、制御装置G2は、ステップS04からステップS18に手順を移す。現在がPTOのオフに切り換わった時点でない場合、制御装置G2は、ステップS04からステップS05に手順を移す。
【0047】
・ステップS05
ステップS05に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルと1つ前のサイクルの各スタート時にメモリに記憶したPTOスイッチPの信号を基に、現在がPTOのオフからオンに切り換わった時点であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、PTOスイッチPの現在の操作信号がオンで、1サイクルタイム前の操作信号がオフであったかを判定する。現在がPTOのオンに切り換わった時点である場合、制御装置G2は、ステップS05からステップS19に手順を移す。現在がPTOのオンに切り換わった時点でない場合、制御装置G2は、ステップS05からステップS06に手順を移す。
【0048】
・ステップS06
ステップS06に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルと1つ前のサイクルの各スタート時にメモリに記憶した操作装置Hの信号を基に、現在が積降操作のオンからオフに切り換わった時点(操作中断の開始時点)であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、積降作業に関する現在の操作信号がオフで、1サイクルタイム前の操作信号がオンであったかを判定する。現在が積降操作のオンからオフに切り換わった時点である場合、制御装置G2は、ステップS06からステップS11に手順を移す。現在が積降操作のオンからオフに切り換わった時点でない場合、制御装置G2は、ステップS06からステップS07に手順を移す。
【0049】
・ステップS07
ステップS07に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルと1つ前のサイクルの各スタート時にメモリに記憶した操作装置Hの信号を基に、現在が積降操作のオフからオンに切り換わった時点(操作再開時点)であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、積降作業に関する現在の操作信号がオンで、1サイクルタイム前の操作信号がオフであったかを判定する。現在が積降操作のオフからオンに切り換わった時点である場合、制御装置G2は、ステップS07からステップS14に手順を移す。現在が積降操作のオフからオンに切り換わった時点でない場合、制御装置G2は、ステップS07からステップS08に手順を移す。
【0050】
・ステップS08
ステップS08に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶したPTOスイッチPと操作装置Hの信号を基に、PTOがオンでかつ積降操作がオンであるかを判定する。PTOがオンでかつ積降操作がオンである場合、制御装置G2は、ステップS08からステップS09に手順を移す。PTO及び積降操作の少なくとも一方がオフである場合、制御装置G2は、ステップS08からステップS12に手順を移す。
【0051】
・ステップS09
ステップS09に手順を移すと、制御装置G2は、メモリを参照して積降アームA3の相対傾斜角の演算を無効とする演算無効設定(後述)の登録があるかを判定する。積降アームA3の相対傾斜角の演算が無効である場合、制御装置G2は、アーム旋回角θarmを演算することなく現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。積降アームA3の相対傾斜角の演算が有効である場合、制御装置G2は、ステップS09からステップS10に手順を移す。
【0052】
・ステップS10
ステップS10に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtと現在登録されている車台傾斜角θ1との差分からアーム旋回角θarmを演算する。そして、制御装置G2は、演算したアーム旋回角θarmをメモリに記憶し、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0053】
・ステップS11
積降アームA3の動作中にその動作を一時停止する場合、操作装置Hによる積降操作は中断される。この場合、手順はステップS06に導かれ、ステップS06の判定が満たされてステップS11に移行することになる。ステップS11に手順を移すと、制御装置G2は、操作オフ時間tの計時を開始し、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。操作オフ時間tは、積降操作のない状態の継続時間である。
【0054】
・ステップS12
操作オフ時間tの計時が開始されてPTOがオンで積降操作がオフの状態が継続する間、手順はステップS12に導かれ、制御装置G2は、現在の操作オフ時間tが既定の設定時間t0(例えば2s)になったかを判定する。現在の操作オフ時間tが設定時間t0である場合、制御装置G2は、ステップS12からステップS13に手順を移す。現在の操作オフ時間tがまだ設定時間t0に満たない場合、又は既に設定時間t0を超えている場合には、制御装置G2は、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0055】
・ステップS13
ステップS13に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtを操作オフ時傾斜角θ2としてメモリに記憶(登録)した後、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0056】
・ステップS14
操作オフ時間tの計時が開始されてPTOがオンで積降操作が再開された時点で、手順はステップS07からステップS14に導かれ、制御装置G2は、操作オフ時傾斜角θ2の登録があるか(又は操作オフ時間tが設定時間t0を超えているか)を判定する。制御装置G2は、操作オフ時傾斜角θ2の登録がある場合はステップS14からステップS15に、操作オフ時傾斜角θ2の登録がない場合はステップS14からステップS15,S16をバイパスしてステップS17に手順を移す。
【0057】
・ステップS15
ステップS15に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtと操作オフ時傾斜角θ2との差分(絶対値)を演算し、差分が既定の許容値θaを越えているかを判定する。操作オフ中に操作オフ時傾斜角θ2が変化して差分が許容値θaを超える場合、制御装置G2は、ステップS15からステップS16に手順を移す。差分が許容値θa以下である場合、制御装置G2は、ステップS15からステップS16をバイパスしてステップS17に手順を移す。
【0058】
・ステップS16
ステップS16に手順を移すと、制御装置G2は、アーム旋回角θarmの演算を無効にする演算無効設定(フラグ等)をメモリに記憶(登録)し、ステップS17に手順を移す。
【0059】
・ステップS17
ステップS17に手順を移すと、制御装置G2は、操作オフ時間tをリセットし、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0060】
・ステップS18
リフトシリンダA10が最縮よりも伸びた状態で一旦積降操作を止めてPTOをオフにした時点で、手順はステップS04からステップS18に移行することになる。ステップS18に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtをPTOオフ時傾斜角θ3としてメモリに記憶(登録)し、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。以降、PTOがオフである間、典型的にはステップS01,S04-S08,S12をループする。なお、この間はPTOがオフであるため積降操作もオフとなるが、操作オフ時間tが計時されるのは、PTOがオンである場合のみであるため、PTOがオフの状態で計時されることはない。従って、ステップS12からステップS13に手順が移行して操作オフ時傾斜角θ2が登録されることもない。
【0061】
・ステップS19
その後、PTOがオンにした時点で、手順はステップS05からステップS19に導かれ、制御装置G2は、PTOオフ時傾斜角θ3の登録があるかを判定する。制御装置G2は、PTOオフ時傾斜角θ3の登録がある場合はステップS19からステップS20に、PTOオフ時傾斜角θ3の登録がない場合は現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0062】
・ステップS20
ステップS20に手順を移すと、制御装置G2は、現在のサイクルのスタート時にメモリに記憶した傾斜センサS1の出力値θtとPTOオフ時傾斜角θ3の差分を演算し、この差分を補正値として車台傾斜角θ1に加算する。PTOオフの間に車台傾斜角θ1が変化する場合、その変化量はθtとθ3の差分に相当するため、この差分を加算することで車台傾斜角θ1が補正される。制御装置G2は、メモリに登録されている車台傾斜角θ1を補正後の値に更新し、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0063】
・ステップS21
その後、操作装置Hの引き上げボタンを連続して操作し、リフトシリンダA10が最縮の状態まで収縮して積降アームA3が車台3に着床すると、手順はステップS02からステップS21に導かれる。ステップS21において、制御装置G2は、メモリに記憶した操作装置Hの信号を基に、現在がリフトシリンダA10の最縮状態に収縮した瞬間であるのかを判定する。具体的には、メモリの記憶データを基に、操作装置Hの積降作業用の引き上げボタンの操作に伴う現在の操作信号がオフで、1サイクルタイム前(例えば0.1s前)の操作信号がオンであるかを判定する。現在がリフトシリンダA10の最縮状態に収縮した時点である場合、制御装置G2は、ステップS21からステップS22-S25に手順を移す。現在がリフトシリンダA10の最縮状態に収縮した時点でない場合(つまり、1サイクル以上前から最縮状態である場合)、制御装置G2は、ステップS21からステップS22-S25をバイパスして現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。
【0064】
・ステップS22-S25
ステップS22-S25に手順を移すと、制御装置G2は、車台傾斜角θ1、操作オフ時傾斜角θ2、PTOオフ時傾斜角θ3、及び演算無効設定を、登録があるものは全てクリアし、現在のサイクルを終了して手順をスタートに戻す。車台傾斜角θ1のクリア(ステップS22)、操作オフ時傾斜角θ2のクリア(ステップS23)、PTOオフ時傾斜角θ3のクリア(ステップS24)、演算無効設定のクリア(ステップS25)の実行順序は、順不同(又は同時)で構わない。
【0065】
以上の通り、制御装置G2は、車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角を演算する際、積降アームA3の操作機会毎に相対傾斜角を演算するための基準となる車台傾斜角θ1を設定し、メモリに記憶(登録)する(ステップS03)。車台傾斜角θ1としては、傾斜センサS1及びリフト縮センサS2の信号を基に、車台3に対して所定角度(上記実施形態では0°)にある積降アームA3の傾動開始前の傾斜センサS1の出力値θtが記憶される。本実施形態では、傾動開始前の出力値θtとして傾動開始時点の出力値θtを記憶するが、例えば積降アームA3の傾動開始前のスライドシリンダA12の動作中の出力値θtを記憶しても良い。車台3に対して積降アームA3が所定角度にある状態は、リフト縮センサS2の出力がオンであることで判定できる(ステップS01)。積降アームA3の傾動開始前であることは、積降アームA3を操作する操作装置Hの操作信号(降ろしボタン又はダンプ上げボタンの操作に伴う出力信号)を基に判定することができる(ステップS02)。こうして車台傾斜角θ1を記憶したら、制御装置G2は、後続する操作に伴って変化する積降アームA3の相対傾斜角を、積降アームA3の傾動開始後の傾斜センサS1の出力と車台傾斜角θ1とを基に(つまり両者の差分から)演算する(ステップS10)。
【0066】
但し、制御装置G2は、操作装置Hの操作中断時とその後の操作再開時の傾斜センサS1の各出力の差(θ2-θt)が許容値θaを超える場合は相対傾斜角の演算を無効とする(ステップS15,S16)。本実施形態では、操作中断時は操作の中断開始時ではなく、所定時間(例えば2s)以上継続する操作中断を前提とし、その操作中断における開始から所定時間(2s)が経過する時点に操作オフ時傾斜角θ2を設定する(ステップS12,S13)。
【0067】
また、制御装置G2は、リフト縮センサS2がオフである間にPTOがオフになった場合、PTOがオフになった時点とその後最初にオンになった時点の傾斜センサS1の各出力の差(θt-θ3)を補正値として車台傾斜角θ1を補正する(ステップS20)。
【0068】
-効果-
(1)上記の通り、本実施形態では、積降作業やダンプ作業を始める際、車台3に対して所定角度にある積降アームA3の傾動開始前の傾斜センサS1の出力値θtが車台傾斜角θ1として記憶される。このように作業開始時の傾斜センサS1の出力値θt(車台傾斜角θ1)と積降アームA3の傾動開始後の傾斜センサS1の出力値θtとの差分をとることで、車台3に傾斜センサがなくても車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角が演算できる。仮に、基準となる車台傾斜角θ1として作業前から登録済みの値を用いる場合、登録時と作業開始時とで車台3の傾斜角が異なる場合、積降アームA3の相対傾斜角の演算に誤差が生じる。その点、本実施形態の場合、作業開始時に車台傾斜角θ1が計測されるので、精度良く積降アームA3の相対傾斜角を演算することができる。
【0069】
従って、傾斜センサの数を抑えつつも、車台傾斜角θ1を把握して車台3に対する積降アームA3の相対傾斜角旋回角を演算できる。傾斜センサS1の数量が抑えられるので、荷役車両の製造コストが抑えられ、配線レイアウトの複雑化も抑制できる。
【0070】
(2)車台傾斜角θ1を設定するタイミングの条件判定に要するリフト縮センサS2としてリフトシリンダA10の所定長さを検出するリミットスイッチを用いることができる。このリミットスイッチは荷役車両に一般に備わっている場合が多く、既存機器を有効活用できうることも、製造コストの抑制や構成の簡素化に貢献する。
【0071】
(3)ユーザによっては、例えばコンテナ脱着時の車両の位置調整のためにPTOをオンにしたまま積降アームA3の操作を中断して荷役車両を移動させる場合がある。この場合、操作中断の前後で傾斜センサS1の出力値のずれ(つまり車台3の傾斜角の変化)が許容値θaを超える場合がある。積降アームA3の操作を開始してから、操作を中断してジャッキDを使用する場合も、操作中断の前後で傾斜センサS1の出力値に許容値θaを超えるずれが生じ得る。これらの場合、操作再開後の積降アームA3の相対傾斜角の精度が低下する。
【0072】
そこで、本実施形態では、操作装置HによるリフトシリンダA10の操作の中断時の傾斜センサS1の出力値(操作オフ時傾斜角θ2)と操作再開時の傾斜センサS1の出力値θtの差が許容値θaを超える場合は、積降アームA3の相対傾斜角の演算を無効とする。言い換えれば、操作中断の前後で傾斜センサS1の出力値にずれが生じても、そのずれが許容値θa以内であれば、操作再開後も継続して相対傾斜角を演算することができる。
【0073】
(4)積降アームA3の操作停止時は慣性で積降アームA3の制動が僅かに遅れたり、積降アームA3や車台3の撓みの影響から積降アームA3の静止に若干の時間を要したりする場合がある。
【0074】
そこで、本実施形態では、操作オフ時傾斜角θ2を登録する際、操作中断時(操作を止めた時点)ではなく、操作中断が設定時間t0(例えば2s)だけ継続した時点の傾斜センサS1の出力値θtを登録することとした。操作を止めてから設定時間t0だけ待って操作オフ時傾斜角θ2を測定することで、適正に静止した後の傾斜センサS1の出力値を登録することができ、操作中断の前後の傾斜センサS1のずれを高精度に検出することができる。
【0075】
また、コンテナ積み込み時にフックFの位置を微調整するために、操作装置Hを小刻みに操作するいわゆるインチングを行うことがある。この場合、設定時間t0の保留時間が確保されることで、インチングの際に短周期で繰り返される操作装置Hのボタンのオンオフの度に傾斜センサS1の出力値が登録されることを避け、制御装置G2の処理負担を軽減することができる。インチングのように小刻みに積降アームA3を動かす場合、極短い操作中断の前後で傾斜センサS1の出力値にずれが生じる可能性は低く、制御装置G2の処理負担を軽減するメリットが大きい。
【0076】
(5)積降アームA3の操作途中で荷役車両を走行させ、荷役車両を移動させる場合がある。この場合、移動前後の地面の勾配が異なると、作業開始時に登録された車台傾斜角θ1が移動後の現実の値と乖離し、車台傾斜角θ1をそのまま用いると移動後の積降アームA3の相対傾斜角が正確に把握できなくなる。
【0077】
そこで、本実施形態では、PTOがオフになった時点の傾斜センサS1の出力値θtをPTOオフ時傾斜角θ3として登録し、その後最初にPTOがオンになった時点の傾斜センサS1の出力値θtの差を補正値として、登録済みの車台傾斜角θ1を補正する。通常はPTOをオフにして荷役車両を移動させるので、このように車台傾斜角θ1を補正することで、移動後も積降アームA3の相対傾斜角を正確に演算することができる。
【0078】
(6)本実施形態では、コンテナの積降作業とダンプ作業の双方を実行可能な荷役車両を対象とするところ、操作装置Hの信号を基に両作業について積降アームA3の相対傾斜角(ダンプ角θtilt、アーム旋回角θarm)を区別して演算できる。ダンプ角θtilt、アーム旋回角θarmを区別して演算することができるので、コンテナの積降作業とダンプ作業について適切に情報を把握し管理することができる。
【0079】
-変形例-
以上においては、コンテナの積降機能とダンプ機能を備えた荷役車両を適用対象とした場合を例示して説明したが、アームが車台に対して傾斜する荷役車両であれば本発明は適用可能であり、積降機能とダンプ機能のいずれか一方の機能は省略可能である。つまり、ダンプ車のように荷箱の積降機能を持たずダンプ機能のみを持つ荷役車両や、ダンプ機能を持たずコンテナの積降機能のみを持つタイプのコンテナ荷役車両にも本発明は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。ダンプ車の場合、荷箱(ベッセル)を支持するアームの他、荷箱やその底面の桁に傾斜センサS1を設置することができる。
【0080】
また、車台傾斜角θ1として、車台3に対して積降アームA3が0°のときの傾斜センサS1の出力値θtを登録する例を説明したが、荷役車両によっては例えばリフトシリンダA10が最縮状態で車台に対して積降アームが傾斜した構成もあり得る。このような場合、車台3に対して積降アームA3が所定角度(例えば10°や20°)傾斜した状態のときの傾斜センサS1の出力値θtを車台傾斜角θ1として登録する構成としても良い。
【0081】
また、標準コンテナXと専用コンテナの双方を車台3に積載可能な荷役車両を適用対象として例示したが、標準コンテナ専用の荷役車両にも専用コンテナ専用の荷役車両にも本発明は適用可能である。いずれのタイプの荷役車両に適用した場合でも、本発明により同様の効果を得ることができる。図14図20に本発明の荷役装置の一変形例として専用コンテナ専用の荷役車両を示す。
【0082】
図14は一変形例に係る荷役車両の側面図、図15は平面図、図16は背面図である。図14図16図1図3に対応している。この変形例において上記実施形態と同様の又は対応する要素については、図14図16において既出図面と同符号を付して説明を省略する。図14図16に示したように、変形例に係る荷役車両が上記実施形態に係る荷役車両と異なる点は、コンテナ案内装置B、アダプタE、支持ポストA11が備わっていない点である。また、専用コンテナYには、ローラY1が後端下部に、フックFを掛ける係止部材Y2が前面に設けられている。
【0083】
図17図14の荷役車両によるダンプ作業の様子を表す図、図18図20図14の荷役車両による専用コンテナの積み込み作業の様子を表す図である。図18図20図11図12に対応している。
【0084】
図14図16に示した荷役装置でダンプ作業をする場合、例えば操作装置Hでダンプ上げ操作をすると、前述したダンプロック装置がロックされ、図17に示したようにリフトシリンダA10が伸びて積降アームA3と共にダンプフレームA2が後方に起立する。これによりコンテナの内容物がダンプ排出される。その後、操作装置Hでダンプ作業用のダンプ下げボタンの操作をすると、リフトシリンダA10が縮んで積降アームA3と共にダンプフレームA2が倒伏する。
【0085】
専用コンテナYを車台3に積み込む場合、荷役車両を専用コンテナYの前方の所定位置に停車させ、ジャッキDを下ろすと共に、操作装置Hで降ろし操作をして積降アームA3を後方に回動させ、図18に示したように専用コンテナYにフックFを掛ける。専用コンテナYにフックFを掛けたら、操作装置Hで引き上げ操作をして積降アームA3を前方に回動させ、専用コンテナYを車台3上に引き上げる。積降アームA3の動作に伴って専用コンテナYはローラY1を支点に前側が持ち上がり、ローラY1で地面を所定距離走行して図19に示したようにガイドローラA5で受けられる。その後更に積降アームA3が前方に回動することで、専用コンテナYはコンテナ案内装置Bにガイドされながら図20に示したように車台3の上部に引き上げられる。積降アームA3が水平に倒伏したら、フックアームA8を前進させて専用コンテナYを固定し、専用コンテナYの積載作業を完了する。専用コンテナYを車台3から下ろす荷降ろし作業は、以上と逆の手順で行うことができる。
【0086】
このような専用コンテナ専用の荷役装置を対象とした場合も、本発明は上記実施形態と同様に適用でき、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0087】
3…車台、A3…積降アーム(アーム)、A10…リフトシリンダ、G2…制御装置、S1…傾斜センサ、S2…リフト縮センサ(検出器)、θ1…車台傾斜角、θ2…操作オフ時傾斜角(操作中断時の傾斜センサの出力)、θ3…PTOオフ時傾斜角(PTOがオフになった時点の傾斜センサの出力)、θarm…アーム旋回角(車台に対するアームの相対傾斜角)、θt…傾斜センサの出力、θtilt…ダンプ角(車台に対するアームの相対傾斜角)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20