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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038701
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230310BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145563
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 敦
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316BB11
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH08
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB13
5E338CC05
5E338CD02
5E338CD13
5E338EE11
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、並列する複数の配線パターン1aを含む第1導体層11と、第1導体層11を覆う第1絶縁層21と、第1絶縁層21における第1導体層11側と反対側に形成されている第2導体層12と、を備えている。第2導体層12は、平面視で複数の配線パターン1aと重なる被覆部1bと、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間隙に向かって被覆部1bから突出していて第1絶縁層21に埋設されている凸部1cと、を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数の配線パターンを含む第1導体層と、
前記第1導体層を覆う第1絶縁層と、
前記第1絶縁層における前記第1導体層側と反対側に形成されている第2導体層と、
を備える配線基板であって、
前記第2導体層は、
平面視で前記複数の配線パターンと重なる被覆部と、
前記複数の配線パターンを構成する配線パターン同士の間隙に向かって前記被覆部から突出していて前記第1絶縁層に埋設されている凸部と、
を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2導体層全体が前記第1絶縁層に埋設されている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記被覆部からの前記凸部の突出量は、前記複数の配線パターンと前記被覆部との間隔よりも大きい。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記凸部の先端が、前記複数の配線パターンを構成する配線パターン同士の間に挿入されている。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記凸部は、前記第1導体層に向かって先細りするテーパー形状を有している。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記第1絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体を含み、
前記ビア導体は、前記被覆部及び前記凸部と一体的に形成されている。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記被覆部及び前記凸部は、前記複数の配線パターンそれぞれを遮蔽するシールドを構成する。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記被覆部及び前記凸部は、前記配線基板の使用時にGND電位を有するべき導体である。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記第1導体層における前記第2導体層側と反対側に、前記第1導体層及び前記第1絶縁層と接している第2絶縁層を備えており、
前記第1絶縁層は光硬化性の樹脂を含み、
前記第2絶縁層は熱硬化性の樹脂を含んでいる。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記第1導体層における前記第2導体層側と反対側に、第2絶縁層を介して第3導体層を備えており、
前記第3導体層は、平面視で前記複数の配線パターンと重なっていて前記被覆部と電気的に接続されている導体パターンを含んでいる。
【請求項11】
並列する複数の配線パターンを含む第1導体層を形成することと、
前記第1導体層を覆う第1絶縁層を形成することと、
前記第1絶縁層における前記第1導体層側と反対側の表面に溝を形成することと、
前記第1絶縁層の前記表面に、前記複数の配線パターンと平面視で重なる面状パターンを含む第2導体層を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記溝は、前記複数の配線パターンを構成する配線パターン同士の間隙へと窪むように形成され、
前記第2導体層を形成することは、前記溝を導電体で充填することによって、前記面状パターンから前記間隙に向かって前記第1絶縁層内に突出する突起を形成することを含んでいる。
【請求項12】
請求項11記載の配線基板の製造方法であって、
前記溝を形成することは、前記溝を底面に有する凹部を前記第1絶縁層の前記表面に形成することを含み、
前記第2導体層を形成することは、前記凹部を導電体で充填することによって前記面状パターンを形成することを含んでいる。
【請求項13】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、
前記第2導体層を形成することは前記第1絶縁層の前記表面を覆うことを含み、
前記配線基板の製造方法は、さらに、前記第2導体層を研磨することによって前記第1絶縁層の前記表面を露出させることを含んでいる。
【請求項14】
請求項13記載の配線基板の製造方法であって
前記第2導体層を研磨することは、前記第2導体層に含まれる前記面状パターン以外の導体パターンと前記面状パターンとを電気的に分離することを含んでいる。
【請求項15】
請求項11記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記第1導体層の一部を前記第1絶縁層から露出させる貫通孔を前記第1絶縁層に形成することを含み、
前記第2導体層を形成することは、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体を前記貫通孔の内部に形成することを含んでいる。
【請求項16】
請求項11記載の配線基板の製造方法であって、
前記溝を形成することは、前記溝に対応する突出部を有する金型を、前記第1絶縁層の前記表面に押し付けることを含んでいる。
【請求項17】
請求項16記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記突起の形成の前に、前記溝の内面を削ることを含んでいる。
【請求項18】
請求項16記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1絶縁層を形成することは、光硬化性樹脂で前記第1導体層を覆うことを含み、
前記溝を形成することは、前記金型を介して前記光硬化性樹脂に光を照射することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁体層の一方の面に信号配線層を備えるプリント配線板が開示されている。信号配線層には、差動信号配線対と他の信号配線とが形成されており、さらに、差動信号配線対と他の信号配線との間に二本の接地配線が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-123520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、差動信号配線同士の間、及び、各信号配線と接地配線との間で短絡不良が生じたり、その短絡不良に対する懸念が、配線の高密度化及びプリント配線板の小型化を妨げたりすることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、並列する複数の配線パターンを含む第1導体層と、前記第1導体層を覆う第1絶縁層と、前記第1絶縁層における前記第1導体層側と反対側に形成されている第2導体層と、を備えている。そして、前記第2導体層は、平面視で前記複数の配線パターンと重なる被覆部と、前記複数の配線パターンを構成する配線パターン同士の間隙に向かって前記被覆部から突出していて前記第1絶縁層に埋設されている凸部と、を含んでいる。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、並列する複数の配線パターンを含む第1導体層を形成することと、前記第1導体層を覆う第1絶縁層を形成することと、前記第1絶縁層における前記第1導体層側と反対側の表面に溝を形成することと、前記第1絶縁層の前記表面に、前記複数の配線パターンと平面視で重なる面状パターンを含む第2導体層を形成することと、を含んでいる。そして、前記溝は、前記複数の配線パターンを構成する配線パターン同士の間隙へと窪むように形成され、前記第2導体層を形成することは、前記溝を導電体で充填することによって、前記面状パターンから前記間隙に向かって前記第1絶縁層内に突出する突起を形成することを含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、良好な品質で信号が伝送される配線パターンを、短絡不良を抑制しながら高密度に配置し得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1のII部の拡大図。
図3】本発明の一実施形態における複数の配線パターンと凸部との配置例を示す平面図。
図4】本発明の一実施形態における凸部の他の例を示す断面図。
図5】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図6A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図6B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図6C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図6D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図6E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図6F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図7】本発明の他の実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図8A】本発明の他の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
図8B】本発明の他の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図であり、図2は、図1のII部の拡大図である。図3には、図1の例の複数の配線パターン1a及び導体層12の凸部1cが、図2のIII-III線を通る切断面での断面図において示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、図1の配線基板100の積層構造、並びに配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面3a及び第2面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層及び導体層を含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32における第1面3a側の表面及び第2面3b側の表面それぞれに形成されている導体層31a及び導体層31bとを含んでいる。絶縁層32には、絶縁層32を貫通して導体層31aと導体層31bとを接続するスルーホール導体33が設けられている。
【0011】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。
【0012】
配線基板100は、コア基板3の第1面3aの上に、絶縁層(第2絶縁層)22、導体層(第1導体層)11、絶縁層(第1絶縁層)21、及び導体層(第2導体層)12を備えている。導体層11は絶縁層22の表面22a上に形成されている。絶縁層21は絶縁層22及び導体層11の上に積層されており、絶縁層22及び導体層11を覆っている。導体層12は、絶縁層21における絶縁層22及び導体層11側と反対側に形成されている。一方、絶縁層22は、表面22aにおいて導体層11及び絶縁層21と接している。すなわち配線基板100は、導体層11における導体層12側と反対側に、絶縁層22を備えると共に、絶縁層22を導体層11との間に介して導体層31aを備えている。コア基板3の第2面3b側には、2つの絶縁層23のそれぞれと2つの導体層13のそれぞれとが交互に積層されている。
【0013】
導体層12及び絶縁層21の上にはソルダーレジスト5が形成されている。それぞれ外側の導体層13及び絶縁層23の上にもソルダーレジスト5が形成されている。各ソルダーレジスト5には、導体層12の一部又は導体層13の一部を露出させる開口が設けられている。ソルダーレジスト5は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などで形成される。
【0014】
配線基板100は、さらに、各絶縁層を介して隣接する導体層同士をそれぞれ接続するビア導体41~43を備えている。ビア導体41は、絶縁層21を貫通して導体層11と導体層12とを接続している。ビア導体42は、絶縁層22を貫通して導体層11と導体層31aとを接続している。ビア導体43は、絶縁層23を貫通して、導体層13同士を接続するか、導体層13と導体層31bとを接続している。
【0015】
絶縁層21~23及び絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO2)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0016】
絶縁層21~23は、先に例示の熱硬化性樹脂の他に、光硬化性の樹脂によって形成されていてもよい。特に絶縁層21は、後述されるように、光硬化性樹脂を含んでいてもよい。絶縁層21が光硬化性樹脂を含んでいる場合に絶縁層22が熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0017】
導体層11~13及び導体層31a、31b、並びに、スルーホール導体33及びビア導体41~43は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され得る。これら各導体層、並びに、スルーホール導体33及び各ビア導体は、図1では簡略化されて一層で描かれているが、2以上の膜体を含む多層構造を有し得る。例えば、導体層31a、31bは、金属箔、無電解めっき膜、及び電解めっき膜からなる3層構造を有し得る。また導体層11~13、スルーホール導体33、及びビア導体41~43それぞれも、例えば3層構造や、図2に示されるように2層構造を有し得る。図1の例では、ビア導体41は導体層12と一体的に形成されており、ビア導体42は導体層11と一体的に形成されている。同様に、各ビア導体43は各導体層13と一体的に形成されており、スルーホール導体33は導体層31a及び導体層31bと一体的に形成されている。
【0018】
導体層11~13、及び導体層31a、31bは、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。図1図3に示されるように、導体層11は、少なくとも、並列する複数の配線パターン1aを含んでいる。複数の配線パターン1aに含まれる各配線パターンは、互いの間に間隔を空けて配置されていて互いに略平行に延びている。
【0019】
一方、導体層12は、平面視で導体層11の複数の配線パターン1aと重なる被覆部1bを含んでいる。被覆部1bは、絶縁層21における導体層12側の表面21aを含む平面に沿って広がっている。従って、被覆部1bは、絶縁層21の表面21aと略平行に、複数の配線パターン1aを覆うように四方に広がっている。すなわち、被覆部1bは、一定の大きさの面積、好ましくは、複数の配線パターン1aが配置されている領域よりも大きな面積を有するように設けられている。そのため、被覆部1bが有する導体抵抗は、比較的低く、例えば各配線パターン1aなどの他の導体パターンが有する導体抵抗よりも低いと推察される。従って被覆部1bは、低インピーダンスで電位変動の少ない良好なGNDプレーン又は電源プレーンとして機能すると考えられる。なお「平面視」は、実施形態の配線基板をその厚さ方向に沿う視線で見ることを意味している。
【0020】
図1図3の例では導体層12全体が絶縁層21に埋設されている。従って被覆部1bも絶縁層21に埋設されている。図1図3の例において被覆部1bにおける導体層11と反対側の表面(すなわち導体層12における導体層11と反対側の表面)は、絶縁層21の表面21aと略面一である。
【0021】
導体層12は、さらに、被覆部1bから突出していて絶縁層21に埋設されている凸部1cを含んでいる。図1図3の例の導体層12は複数の凸部1cを含んでいる。凸部1cは、被覆部1bから導体層11に向かって延びている。具体的には、各凸部1cは、図1及び図2に示されるように、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間隙に向かって延びている。また図3に示されるように、複数の凸部1cは平面視において並列している。すなわち各凸部1cは、被覆部1bに沿って、且つ複数の配線パターン1aを構成する各配線パターンに沿って延びている。また各凸部1cは、互いの間に間隔を空けて配置されていて互いに略平行に延びている。
【0022】
このように本実施形態では、導体層11の上に絶縁層21を介して形成されている導体層12が、導体層11に含まれる複数の配線パターン1aの各配線パターン同士の間の部分に延びている凸部1cを含んでいる。凸部1cは複数の配線パターン1aを覆っている導体層12の被覆部1bと接続している。被覆部1bは、前述したように一定の面積を有するように広がっているので比較的低いインピーダンス及び安定した電位を有し得る。従って被覆部1bは、導体層12側の外部から伝播してくる電磁波から複数の配線パターン1aを遮蔽する電磁シールドとして機能し得る。すなわち、被覆部1bによって複数の配線パターン1aそれぞれにおけるノイズが抑制される。
【0023】
さらに、凸部1cが複数の配線パターン1aそれぞれの間に向けて延びているため、各凸部1cが、複数の配線パターン1aのうちの隣接する配線パターン同士の間に電磁的に介在する。そのため、低インピーダンスの被覆部1bに接続されている各凸部1cは、複数の配線パターン1aのうちの隣接する配線パターン同士の間の電磁シールドとして機能すると考えられる。
【0024】
このように本実施形態では、導体層12の被覆部1b及び凸部1cは、導体層11の複数の配線パターン1aそれぞれを、その周囲の電磁界から遮蔽し得る。すなわち、被覆部1b及び凸部1cは、複数の配線パターン1aそれぞれを遮蔽する電磁シールドを構成し得る。従って、本実施形態では、複数の配線パターン1aそれぞれにおいて、外来の電磁波(外来ノイズ)によるノイズの生起が抑制されると考えられる。また、複数の配線パターン1aそれぞれにおいて、隣接する配線パターンが生成する電磁界によるノイズの生起も抑制されると考えられる。複数の配線パターン1aそれぞれにおいて、良好な品質で信号が伝送されると考えられる。
【0025】
加えて本実施形態では、複数の配線パターン1aそれぞれの間の電磁シールドとして機能する凸部1cは、複数の配線パターン1aを含む導体層11に含まれずに、導体層12に形成されている。すなわち、凸部1c及び複数の配線パターン1aは、互いに異なる導体層に形成されている。
【0026】
例えば前述した特許文献1の開示のように信号配線と接地配線とが同一の導体層(信号配線層)に形成されると、その導体層の形成において信号配線と接地配線とが分離される際に両配線間にめっき膜などの導電体が残って短絡不良が生じることがある。例えば電界めっきによる信号配線及び接地配線の形成時に給電層として用いられた金属膜(シード層)がエッチングにより除去される際に、その金属膜が完全に除去されずに残ることがある。そして、このような導電体の残存による短絡不良のリスク回避のために、信号配線と接地配線との狭ピッチ化による配線の高密度化が制限されたり、その結果配線基板の小型化が制限されたりすることがある。
【0027】
これに対して本実施形態では、前述したように、複数の配線パターン1aそれぞれに対するシールドとなり得る凸部1cと、各凸部1cによって遮蔽され得る複数の配線パターン1aとは、互いに異なる導体層に形成されている。従って、各配線パターン1aと各凸部1cとの間で、導電体の残存などによる短絡不良は生じ難いと考えられる。そのため、平面視において、複数の配線パターン1aそれぞれと複数の凸部1cそれぞれとを、例えば、特許文献1の信号配線と接地配線との間隔よりも、平面視において近接させて配置できることがある。配線の高密度化が実現され、配線基板の小型化が促進されることがある。
【0028】
前述したように電磁シールドを構成し得る導体層12の被覆部1b及び凸部1cは、好ましくは、電源のような安定電位の供給源の出力や、GND(接地)電極などに接続される。すなわち被覆部1b及び凸部1cは、例えば配線基板100の使用時に電源電位を有するべき導体であってもよい。被覆部1b及び凸部1cは、特に好ましくはGND電極に接続される。従って被覆部1b及び凸部1cは、配線基板100の使用時にGND電位を有するべき導体であってもよい。さらに、導体層12全体が、配線基板100の使用時にGND電位を有するべき導体であってもよい。
【0029】
図1及び図2に示されるように、導体層11と導体層12とはビア導体41によって接続されている。ビア導体41は複数の凸部1cが配置されている領域の両側にも設けられている。複数の凸部1cの両側に設けられているビア導体41は、被覆部1bに接続されており、被覆部1bと導体層11の導体パッド11aとを接続している。導体パッド11aは、絶縁層22を貫通するビア導体42の所謂ビアパッドであって、ビア導体42によって導体層31aと接続されている。
【0030】
複数の凸部1cの両側に設けられているビア導体41は、被覆部1b及び凸部1cと一体的に形成されている。そのため、被覆部1bが導体層11及び導体層31aを介して電源の出力やGND電極(図示せず)などに接続される場合、被覆部1b及び凸部1cから電源の出力やGND電極までが小さな導体抵抗を有する経路で結ばれる。従って、被覆部1bや凸部1cが良好な電磁シールドを形成し得ると考えられる。
【0031】
さらに図1及び図2の例では、導体層31aは、平面視で複数の配線パターン1aと重なっている導体パターン310を含んでいる。導体パターン310も、被覆部1bと同様に、一定の大きさの面積、好ましくは、複数の配線パターン1aが配置されている領域よりも大きな面積を有するように設けられている。そのため、導体パターン310も、低インピーダンスで電位変動の少ない良好なGNDプレーン又は電源プレーンとして機能すると考えられる。すなわち導体パターン310は、導体層31aよりも絶縁層32側で生じる電磁界の変化から複数の配線パターン1aを遮蔽する電磁シールドとして機能し得る。
【0032】
しかも、図1及び図2の例の導体パターン310は、ビア導体42、導体パッド11a、及びビア導体41を介して被覆部1bと電気的に接続されている。すなわち、複数の配線パターン1a全体が、電気的に接続された導電体で囲まれるか、少なくとも挟まれている。従って、複数の配線パターン1aにおけるノイズの生起が一層抑制されると考えられる。
【0033】
図2に示されるように、複数の配線パターン1aを含む導体層11、並びに、被覆部1b及び凸部1cを含む導体層12は、2層構造を有していて、それぞれ金属膜10a及び金属膜10a上に形成されためっき膜10bを含んでいる。めっき膜10bは例えば電解めっき膜である。金属膜10aは、めっき膜10bが電解めっきによって形成されるときに給電層として用いられる無電解めっき膜又はスパッタリング膜などの膜体である。導体層12の被覆部1bは、絶縁層21の表面21aに形成されている凹部1bb内に形成されている。各凸部1cは、凹部1bbの底面に形成されている溝1d内に形成されている。金属膜10aが、凹部1bb及び溝1dの内壁面及び底面に沿って形成されており、凹部1bb及び溝1dの内部のうちの金属膜10aに占められていない領域がめっき膜10bで充填されている。
【0034】
図2の例において、導体層12の被覆部1bからの凸部1cの突出量Eは、複数の配線パターン1aと被覆部1bとの間隔Gよりも大きく、従って被覆部1bと複数の配線パターン1aそれぞれとの間の絶縁層21の厚さよりも大きい。すなわち、被覆部1bにおける導体層11側の表面と凸部1cの先端との距離(配線基板100の厚さ方向に沿う凸部1cの長さ)は、被覆部1bと複数の配線パターン1aそれぞれとの距離よりも長い。そのため、凸部1cの先端が、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間に挿入されている。その結果、複数の配線パターン1aのうちの隣接する配線パターン同士が対向している空間においても、各凸部1cが少なくとも部分的に介在している。すなわち、平面視だけでなく図1及び図2のような断面図においても、複数の配線パターン1aのうちの隣接する配線パターン同士の間に各凸部1cが介在している。従って、各凸部1cによる複数の配線パターン1aそれぞれへの高いシールド効果が得られると考えられる。
【0035】
また図1及び図2の例では、導体層12の凸部1cは、被覆部1b側よりも複数の配線パターン1a側において小さい幅Wを有している。すなわち、凸部1cは、導体層12側から導体層11側に向かって先細りするテーパー形状を有している。そのため、凸部1cの位置がずれても、凸部1cと配線パターン1aとが接触し難く短絡不良が生じ難いと考えられる。
【0036】
導体層12の凸部1cの突出量Eは、被覆部1bと、複数の配線パターン1a及び絶縁層22の表面22aとの間隔に応じた任意の大きさを有し得る。例えば、凸部1cの突出量Eは、複数の配線パターン1aと被覆部1bとの間隔Gよりも大きく、絶縁層22の表面22aと被覆部1bとの間隔G1の90%以下であってもよい。また、凸部1cが複数の配線パターン1aの表面よりも絶縁層22側に入り込んでいる部分の長さDは、例えば、複数の配線パターン1aの厚さの80%以下である。長さDは、複数の配線パターン1aの厚さの40%以上、80%以下であってもよい。複数の配線パターン1aへのシールド作用を有する凸部1cの形成が容易であると考えられる。
【0037】
また、凸部1cにおける導体層11側の先端部の幅Wは、複数の配線パターン1aそれぞれ同士の間隔の30%以上、70%以下であってもよい。複数の配線パターン1aへのシールド作用を有する凸部1cと配線パターン1aとの短絡不良が生じ難いと考えられる。
【0038】
図3に示されるように、平面視において、複数の配線パターン1aと複数の凸部1cとは、並列していて同一方向(Y方向)に沿って延びている。そして、複数の配線パターン1aのそれぞれと複数の凸部1cのそれぞれとは、平面視における所定の方向(Y方向と直交するX方向)において交互に配置されている。すなわち、複数の配線パターン1aの全ての隣接する配線パターンが、互いの間に少なくとも複数の凸部1cそれぞれの幅以上の間隔を空けて配置される。従って、複数の配線パターン1aの全ての隣接する配線パターン間で短絡不良が生じ難いと考えられる。
【0039】
また、全ての隣接する配線パターン1a同士の間に複数の凸部1cそれぞれが介在しているので、複数の配線パターン1aの全ての配線パターンにおいて、複数の凸部1cそれぞれによる隣接する配線パターンからのシールド作用が得られると考えられる。加えて、Y方向において、複数の凸部1cそれぞれの長さは複数の配線パターン1aそれぞれの長さよりも長く、複数の凸部1cそれぞれのY方向における両端は、複数の配線パターン1aそれぞれのY方向における両端よりも突出している。従って、各配線パターン1aのためのシールドとして各凸部1cが有効に作用すると考えられる。
【0040】
前述したように、図1図3の例では、凸部1cの先端が、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間に挿入されている。しかし、実施形態の配線基板では、凸部1cの先端は、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間に必ずしも挿入されない。
【0041】
例えば図4に示される複数の凸部1cの他の例(凸部1ca及び凸部1cb)のように、被覆部1bからの複数の凸部1cの突出量E1、E2は、複数の配線パターン1aと被覆部1bとの間隔Gと略同じでもよく、間隔Gよりも短くてもよい。図4の例では、凸部1caの突出量E1は、複数の配線パターン1aと被覆部1bとの間隔Gと略同じである。また、凸部1cbの突出量E2は、複数の配線パターン1aと被覆部1bとの間隔Gよりも小さい。従って、凸部1ca及び凸部1cbの先端は、いずれも、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間に挿入されていない。
【0042】
しかし、図4の例の凸部1ca及び凸部1cbも、複数の配線パターン1aそれぞれが形成する磁界に関与し得る。そのため複数の配線パターン1aそれぞれにおいて、凸部1ca及び凸部1cbが設けられていないときと比べて、隣接する配線パターンがもたらす磁界の変化が影響し難いことがある。すなわち凸部1ca及び/又は凸部1cbのシールド作用が得られることがある。従って、本実施形態の配線基板では、凸部1cの先端は、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間に挿入されていなくてもよい。
【0043】
図5には、本実施形態の配線基板の他の例である配線基板101が示されている。配線基板101では、被覆部1b及び凸部1cを含む導体層12、及び絶縁層21の上に、さらに絶縁層24が積層されている。そして絶縁層24の上に導体層14が形成され、絶縁層24及び導体層14を覆うソルダーレジスト5が形成されている。絶縁層24には、絶縁層24を貫通して導体層12と導体層14とを接続するビア導体44が形成されている。被覆部1bは配線基板101の最外層の導体層である導体層14とビア導体44によって接続されている。なお、コア基板3の第2面3b側では、3つの導体層13と3つの絶縁層23のそれぞれとが交互に積層されている。図5の例のように、実施形態の配線基板において被覆部1b及び凸部1cを含む導体層(第2導体層)12は、実施形態の配線基板の最外層の導体層ではなく、内層の導体層であってもよい。
【0044】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、図1の配線基板100を例に用いて図6A図6Fを参照して説明される。
【0045】
図6Aに示されるように、コア基板3が用意される。例えば、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔を含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意される。そして、貫通孔の形成及びパネルめっきに続くサブトラクティブ法を用いたパターニングによって、所望の導体パターンを有する導体層(第3導体層)31a及び導体層31bと、スルーホール導体33とが形成される。図6Aの例では、導体層31aは、後工程で導体層(第1導体層)11に形成される複数の配線パターン1aと平面視で重なる導体パターン310を有するように形成される。
【0046】
そして、コア基板3の第1面3a上に絶縁層(第2絶縁層)22が形成され、第2面3b上に絶縁層23が形成される。絶縁層22及び絶縁層23の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、絶縁層22及び絶縁層23が形成される。フェノール樹脂やBT樹脂などのエポキシ樹脂以外の任意の樹脂を積層することによって絶縁層22及び絶縁層23が形成されてもよい。各絶縁層には、ビア導体42又はビア導体43を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0047】
そして絶縁層22の表面22aの上に導体層11が形成される。絶縁層23の上には導体層13が形成される。導体層11は、並列する複数の配線パターン1aを含むように形成される。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、並列する複数の配線パターン1aを含む導体層(第1導体層)11を形成することを含んでいる。
【0048】
導体層11及び導体層13は、それぞれ、例えばセミアディティブ法によって形成される。すなわち、導体層11及び導体層13それぞれの下地となる絶縁層22及び絶縁層23の表面、及び貫通孔4a内に無電解めっきやスパッタリングによって金属膜が形成される。その金属膜を給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによってめっき膜が形成される。導体層11の形成時のパターンめっきには、複数の配線パターン1aや導体パッド11a、11bなどに対応する開口を有するめっきレジストが用いられる。
【0049】
その後、金属膜の不要部分が例えばエッチングなどで除去される。その結果、少なくとも配線パターン1aを含む導体層11及び所定の導体パターンを含む導体層13が形成される。貫通孔4a内にはビア導体42又はビア導体43が形成される。図6Aの例では、導体層11は、導体パッド11a、11bも含むように形成されている。導体パッド11a、11bは、ビア導体42のビアパッドである。導体層11及び導体層13、並びに各ビア導体は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
【0050】
図6Bに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、導体層11を覆う絶縁層(第1絶縁層)21を形成することを含んでいる。図6Bの例では、コア基板3の第2面3b側には、さらに、導体層13を覆う絶縁層23が形成されている。しかし、導体層13を覆う絶縁層23は、コア基板3の第1面3a側への導体層12(図6F参照)の形成後に形成されてもよい。
【0051】
絶縁層21、及び導体層13上に形成される絶縁層23は、前述した絶縁層22の形成方法と同様に、例えば、フィルム状若しくはシート状に成形されたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の積層及び熱圧着によって形成されてもよい。しかし、絶縁層21は、光硬化性樹脂を絶縁層22及び導体層11上に積層することによって形成されてもよい。すなわち、絶縁層21を形成することは、光硬化性樹脂で導体層11を覆うことを含んでいてもよい。
【0052】
光硬化性樹脂としては、例えば、光によって重合体自体に化学的又は構造的な変化が生じる、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、及びアクリル樹脂などが例示される。また光硬化性樹脂は、光増感剤などの添加によって感光性を付加されたエポキシ樹脂やBT樹脂であってもよい。光硬化性樹脂は、例えば、半硬化状態でシート状若しくはフィルム状に成形された上で、絶縁層22及び導体層11の上に積層される。或いは、液状の光感光性樹脂が、絶縁層22及び導体層11上に塗布されて半硬化状態まで硬化されてもよい。図6C及び図6Dには、光硬化性樹脂が絶縁層21に用いられている例が示されている。
【0053】
図6Cに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層21における導体層11側と反対側の表面21aに溝1dを形成することを含んでいる。図6Cの例では、平面視で並列する複数の溝1dが形成されている。溝1dは、導体層11の複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間隙へと窪むように形成される。溝1dは、複数の配線パターン1aと平面視で略平行に形成される。
【0054】
図6Cの例では、複数の溝1dと共に、凹部1bbが絶縁層21の表面21aに形成されている。溝1dは、具体的には凹部1bbの底面1bcに形成されている。このように本実施形態の配線基板の製造方法において溝1dを形成することは、溝1dを底面1bcに有する凹部1bbを絶縁層21の表面21aに形成することを含んでいてもよい。底面1bcに複数の溝1dを有する凹部1bbは、複数の配線パターン1aと平面視で重なるように形成される。図6Cの例では、凹部1bbは、導体層11の導体パッド11aとも平面視で重なるように形成されている。
【0055】
さらに、図6Cの例の絶縁層21の表面21aには、凹部1bb以外にも、凹部40が設けられており、凹部40の一部は、導体層11の導体パッド11bと平面視で重なるように形成されている。導体パッド11bと重なる凹部40の底面には窪み40aが形成されている。凹部1bbの底面1bcにおける導体パッド11aと重なる領域にも窪み40aが形成されている。
【0056】
複数の溝1d、凹部1bb、凹部40、及び窪み40aは、任意の方法で形成され得る。例えば図6Cに示されるように、各溝1d、凹部1bb、凹部40、及び窪み40aに対応する突出部M1を有する金型Mで半硬化状態の絶縁層21を押圧することによって、複数の溝1dが形成されてもよい。すなわち、本実施形態の配線基板の製造方法において溝1dを形成することは、溝1dに対応する突出部M1を有する金型Mを絶縁層21の表面21aに押し付けることを含んでいてもよい。突出部M1を絶縁層21内にめり込ませることによって、各溝1d、凹部1bb、凹部40、及び窪み40aが絶縁層21の表面21aに形成される。
【0057】
光硬化性樹脂が絶縁層21に用いられている場合は、金型Mの押圧の後、例えば、紫外光などの適切な波長の光が絶縁層21に照射される。絶縁層21への光の照射は、金型Mを絶縁層21から離間させてから行われてもよく、絶縁層21に金型Mを押し当てた状態で行われてもよい。すなわち、金型M越しに、絶縁層21の光硬化性樹脂に光が照射されてもよい。その場合、金型Mの突出部M1の形状に忠実な各溝1d、凹部1bb、凹部40、及び窪み40aが形成されると考えられる。このように本実施形態の配線基板の製造方法において溝1dを形成することは、金型Mを介して光硬化性樹脂に光を照射することを含んでいてもよい。
【0058】
金型Mを介して絶縁層21に光が照射される場合、光透過性の材料を用いて形成されている金型Mが用いられる。金型Mに用いられる光透過性の材料としては、ガラス、並びに、アクリル、ポリカーボネート、及びポリスチレンなどの光透過性樹脂が例示される。
【0059】
絶縁層21への光の照射によって、光硬化性樹脂で形成されている絶縁層21が、本来の硬度を有するように本硬化する。金型M越しに絶縁層21に光が照射された場合は、その照射後に金型Mが絶縁層21から離間される。
【0060】
図6Cの例では、金型Mを用いて形成される複数の溝1d、凹部1bb及び凹部40は、最終的に有するべき深さよりも浅く形成されている。また、各窪み40aは、導体パッド11a又は導体パッド11bまで達しておらず、導体パッド11a又は導体パッド11bを露出させていない。
【0061】
そのため、図6Dに示されるように、各溝1d、凹部1bb及び凹部40それぞれが最終的に有するべき深さを有するまで、各溝1d、凹部1bb及び凹部40の深さが深められる。また、導体パッド11a、11bを露出させる貫通孔4aが形成されるまで、各窪み40a(図6C参照)の深さが深められる。例えば、各溝1d、凹部1bb、凹部40、及び各窪み40aの内面(内壁面及び底面)が削られる。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、導体層11の一部である導体パッド11a、11bを絶縁層21から露出させる貫通孔4aを絶縁層21に形成することを含み得る。また本実施形態の配線基板の製造方法は、溝1dの内面を削ることを含み得る。溝1dなどの内面は、後述される溝1d内への突起(凸部1c、図6E参照)の形成の前に削られる。
【0062】
溝1dなどが金型を用いて形成される場合、絶縁層21のうちの溝1dなどの周囲の部分は圧縮されているため、残留応力によって後にクラックや変形が生じたり、めっき金属との密着性が不足したりすることがある。そのため、絶縁層21のうちの溝1dなどの周囲の圧縮されている部分が除去されてもよい。そしてその結果、各溝1dや凹部1bbなどが、金型による形成時からさらに深掘りされてもよい。各溝1dや凹部1bbなどは、例えば、イオンエッチングなどのスパッタリングやブラスト加工によってそれぞれの深さを深められる。
【0063】
なお、複数の溝1d、凹部1bb、及び凹部40などは、先に本硬化された状態の絶縁層21にレーザー光を照射することによって形成されてもよい。例えば、エキシマレーザーなどのUVレーザーが用いられてもよく、炭酸ガスレーザー、又はYAGレーザーなどが用いられてもよい。これら複数種のレーザーが組み合わせて用いられてもよい。また、複数の溝1d、凹部1bb、及び凹部40などは、本硬化状態の絶縁層21への適切な開口を有するマスクを用いたブラスト加工によって、金型を用いずに形成されてもよい。
【0064】
その後、絶縁層21の露出面が、金属との密着強度を高めるべく粗化されてもよい。絶縁層21の露出面の粗化は、例えば、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理によって行われる。
【0065】
図6Eに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、絶縁層21の表面21aに導体層(第2導体層)12を形成することを含んでいる。導体層12は、導体層11の複数の配線パターン1aと平面視で重なる面状パターン(被覆部)1bを含むように形成される。面状パターン1bは、凹部1bb内に充填された導電体で形成される。このように導体層12を形成することは、面状パターン1bを形成すべく、絶縁層21の凹部1bbを導電体で充填することを含み得る。
【0066】
図6Eに示されるように導体層12は、さらに、溝1d内に充填された導電体からなる突起(凸部)1cも含んでいる。すなわち導体層12を形成することは、溝1dを導電体で充填することによって、面状パターン1bから絶縁層21内に突出する突起1cを形成することを含んでいる。突起1cは、複数の配線パターン1aを構成する配線パターン同士の間隙に向かって面状パターン1bから突出している。そのため、各突起1cは、複数の配線パターン1aそれぞれの電磁シールドを構成し得る。
【0067】
図6Eの例では、絶縁層21の表面21aの凹部40内には導体パッド12aが形成されている。また貫通孔4aの内部にビア導体41が形成されている。ビア導体41によって、導体層11と導体層12とが接続される。例えば導体層12の面状パターン1bと導体層11の導体パッド11aとが接続される。このように導体層12を形成することは、さらに、導体層11と導体層12とを接続するビア導体41を貫通孔4aの内部に形成することを含んでいる。
【0068】
図6Eの例の導体層12の一部は、絶縁層21の表面21aに形成されている凹部1bb及び凹部40の内部、並びに凹部1bbの底面1bcの溝1dの内部に形成されている。すなわち、一部が絶縁層21内に埋め込まれている導体層12が形成されている。導体層12は、さらに絶縁層21の表面21a上にも形成されており、導体層12は表面21aを覆っている。このように、導体層12を形成することは絶縁層21の表面21aを覆うことを含み得る。絶縁層21の表面21aを覆うまで導体層12が形成されるので、導体層12の形成時に厳密な厚さの制御は求められず、容易に導体層12が形成され得ることがある。
【0069】
導体層12の形成では、凹部1bb、凹部40、溝1d、及び貫通孔4aそれぞれの内面上、並びに絶縁層21の表面21a上に、無電解めっきやスパッタリングなどによって金属膜が形成され、この金属膜を給電層として用いる電解めっきによって金属膜上にめっき膜が形成される。その結果、導体層12及びビア導体41が形成される。図6Eに示されるように、導体層12は、絶縁層21と反対側の表面に、溝1dなどに応じた凹凸を備えることがある。
【0070】
図6Eの例のように、導体層12が、一旦、絶縁層21の表面21a上にも形成される場合、導体層12のうちの絶縁層21の表面21a上の部分が、図6Fに示されるように除去される。例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やブラスト加工によって、導体層12における表面21a上の部分が除去される。その結果、表面21aが露出する。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、導体層12を研磨することによって絶縁層21の表面21aを露出させることを含んでいてもよい。
【0071】
また図6Fの例では、表面21a上の導体層12の研磨によって、導体層12の面状パターン1bと導体パッド12aとが物理的及び電気的に分離される。このように、本実施形態の配線基板の製造方法において導体層12の表面を研磨することは、例えば導体パッド12aのような導体層12に含まれる面状パターン1b以外の導体パターンと面状パターン1bとを電気的に分離することを含んでいてもよい。導体層12に所定の導電路が形成される。
【0072】
導体層12の形成後、コア基板3の第2面3b側の2つの絶縁層23のうちの外側の絶縁層23の上にさらに導体層13が、例えば導体層11などの形成方法と同様の方法で形成される。なお、前述したように、外側の絶縁層23は、図6Fに示される導体層12の形成及び研磨後に形成されてもよく、その後、その絶縁層23の上に導体層13が形成されてもよい。
【0073】
そして、図1に示されるように、ソルダーレジスト5が絶縁層21及び導体層12の上に形成される。コア基板3の第2面3b側の最表層の絶縁層23及び導体層13の上にもソルダーレジスト5が形成される。各ソルダーレジスト5は、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを塗布したり噴霧したりフィルム状態で積層したりすることによって形成される。そして、例えば露光及び現像、又はレーザー加工などによって、導体層12の一部又は導体層13の一部を露出させる開口が各ソルダーレジスト5に形成される。各ソルダーレジスト5の開口内に露出する導体層12及び導体層13それぞれの一部には、無電解めっきなどによるニッケル、パラジウム、金などの金属の析出や、耐熱性有機物の塗布などによって表面処理層(図示せず)が形成されてもよい。以上の工程を経ることによって図1の例の配線基板100が完成する。
【0074】
図7には、他の実施形態の配線基板の一例である配線基板102が示されている。配線基板102によって例示される実施形態は、主に導体層12(第2導体層)の被覆部1bが、絶縁層21(第1絶縁層)内に埋め込まれずにその表面21a上に形成されている点で、図1の配線基板100によって例示される一実施形態と異なる。導体層11(第1導体層)の導体パッド11bに接続されている導体パッド12aも絶縁層21の表面21a上に形成されている。
【0075】
すなわち、導体層12は、複数の凸部1cを除いて絶縁層21の表面21a上に形成されている。複数の凸部1cだけが絶縁層21に埋め込まれている。実施形態の配線基板では、配線基板102のように、凸部1c以外の導体層12の導体パターンが絶縁層21の表面21a上に形成されていてもよい。実施形態の配線基板の製造が容易なことがある。なお、配線基板102は、被覆部1bなどの形成位置を除いて図1に例示の配線基板100と同様の構成要素で構成されていて同様の構造を有している。配線基板102において図1に示される配線基板100の構成要素と同様の構成要素には、図1に付されている符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、繰り返しとなる説明は省略される。
【0076】
図8A及び図8Bを参照して、図7に例示の配線基板102の製造方法が説明される。主に、図6A図6Fを参照して先に説明された一実施形態の配線基板の製造方法と異なる部分が説明される。
【0077】
先に参照された図6Bに示される状態まで製造工程が進められた後、図8Aに示されるように、金型Maが半硬化状態の絶縁層21に押圧される。金型Maは、絶縁層21に形成されるべき複数の溝1d及び窪み40aに対応する突出部Ma1を有している。しかし金型Ma1は、先に参照された図6Cに示される凹部1bb及び凹部40に対応する形状を有していない。そのため、絶縁層21の表面21aには、図6Cに例示の凹部1bb及び凹部40は形成されない。例えば溝1dは図6Cに示される凹部1bbの底面ではなく絶縁層21の表面21aに直接形成される。その後、紫外光などの照射によって絶縁層21が本硬化される。
【0078】
先に図6Dを参照して説明された溝1dの深掘り、及び窪み40aの深掘りによる貫通孔4aの形成の後、図8Bに示されるように、溝1d内に導体層12の凸部1cが形成され、貫通孔4a内にビア導体41が形成される。また、導体層12の被覆部1b及び導体パッド12aなどが絶縁層21の表面21a上に形成される。すなわち、導体層12における凸部1c以外の部分が表面21a上に形成される。図8Bの例では、コア基板3の第2面3b側の2つの導体層13のうちの外側の導体層13も、導体層12と共に形成される。
【0079】
導体層12及び導体層13は、前述した導体層11の形成方法と同様に、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。すなわち、溝1d及び貫通孔4aの内面上、並びに絶縁層21の表面21a上に例えば無電解めっきなどによって金属膜(図示せず)が形成され、被覆部1bや導体パッド12aなどに対応する開口R1を有するめっきレジストRがこの金属膜上に形成される。そして、この金属膜を給電層として用いるパターンめっきによって、導体層12の被覆部1b、凸部1c、及び導体パッド12a、並びにビア導体41が形成される。
【0080】
その後、めっきレジストRが適切な溶剤を用いて除去され、めっきレジストRの除去によって露出する給電層(金属膜)が除去される。そして、ソルダーレジスト5(図7参照)が両面に形成されることによって配線基板102が完成する。
【0081】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。導体層11、導体層12、及びこれら両導体層の間に介在する絶縁層21は、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。導体層11は凸部1cを1つだけ含んでいてもよい。
【0082】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば各導体層はフルアディティブ法によって形成されてもよい。また各絶縁層は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
100~102 配線基板
11 導体層(第1導体層)
12 導体層(第2導体層)
1a 複数の配線パターン
1b 被覆部(面状パターン)
1bb 凹部
1bc 凹部の底面
1c 凸部(突起)
1d 溝
21 絶縁層(第1絶縁層)
21a 絶縁層の表面
22 絶縁層(第2絶縁層)
31a 導体層(第3導体層)
310 導体パターン
4a 貫通孔
41~44 ビア導体
E、E1、E2 被覆部からの凸部の突出量
G 複数の配線パターンと被覆部との間隔
M、Ma 金型
M1、Ma1 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8A
図8B