IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シグマエナジーの特許一覧

<>
  • 特開-充放電システム 図1
  • 特開-充放電システム 図2
  • 特開-充放電システム 図3
  • 特開-充放電システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038713
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】充放電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/30 20060101AFI20230310BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230310BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230310BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230310BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20230310BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H02J3/30
H02J15/00 A
H02J3/38
H02J3/46
H02P5/46 D
H02P9/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145582
(22)【出願日】2021-09-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】520032099
【氏名又は名称】株式会社シグマエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
【テーマコード(参考)】
5G066
5H572
5H590
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB01
5G066JB02
5H572AA20
5H572BB06
5H572CC05
5H572DD03
5H572EE01
5H572FF01
5H572GG02
5H572GG06
5H572HA08
5H572HB09
5H572HC01
5H572HC07
5H572JJ04
5H572LL07
5H572LL32
5H590AA21
5H590CA16
5H590CC05
5H590CC08
5H590CD03
5H590CE02
5H590EA15
5H590FA08
5H590FB02
5H590FC11
5H590HA06
5H590HA10
(57)【要約】
【課題】フライホイールを用いて充放電する誘導発電電動機を複数並列に備えた場合でも迅速に定格電圧まで上昇する。
【解決手段】スイッチング制御信号に基づいて交流電力の給電を制御する加速用インバータ11と、加速用インバータ11から給電された交流電力によって回転駆動される誘導発電電動機12と、誘導発電電動機12に連結されたフライホイール13と、をそれぞれ有する複数のフライホイール充放電部3,4を並列に設けた充放電システム1であって、複数のフライホイール充放電部3,4のそれぞれの誘導発電電動機12に給電される交流電力同士の間の電圧位相差Δθの絶対値(=|Δθ|=|θ-θ|)を低減するよう、それぞれの加速用インバータ11へのスイッチング制御信号を出力する加速用インバータ制御部8、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に基づいて交流電力の給電を制御するインバータと、前記インバータから給電された交流電力によって回転駆動される誘導発電電動機と、前記誘導発電電動機に連結されたフライホイールと、をそれぞれ有する複数のフライホイール充放電部を並列に設けた充放電システムであって、
前記複数のフライホイール充放電部のそれぞれの前記誘導発電電動機に給電される交流電力同士の間の電圧位相差の絶対値を低減するよう、それぞれの前記インバータへの前記制御信号を出力する信号制御部、
を有することを特徴とする充放電システム。
【請求項2】
前記信号制御部は、
前記複数のフライホイール充放電部のうちの所定の1つにおける交流電力の電圧位相を基準位相とし、他の前記フライホイール充放電部における交流電力の電圧位相と前記基準位相との間の電圧位相差の絶対値を低減するよう前記制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の充放電システム。
【請求項3】
前記信号制御部は、
前記他のフライホイール充放電部において対応する電圧位相差に基づいた前記誘導発電電動機の加速制御を行うよう前記制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項2記載の充放電システム。
【請求項4】
前記信号制御部は、
前記他のフライホイール充放電部にそれぞれ対応する前記誘導発電電動機への速度指令又は速度偏差に対して、前記基準位相から当該フライホイール充放電部における電圧位相を差し引いた電圧位相差に所定のゲインを乗じた補正値を加算する
ことを特徴とする請求項3記載の充放電システム。
【請求項5】
前記信号制御部は、
それぞれの電圧位相差の絶対値が略50°以内となるよう前記制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の充放電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールと誘導発電電動機により交流電力の充放電を行う充放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フライホイールに蓄積した機械エネルギー(回転エネルギー)を電気エネルギーに変換することで自立的に発電する直流大電流発生装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54-10921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出力電圧を迅速に上昇させることを目的として上記従来技術のようなフライホイール発電機を複数台並列接続しそれぞれ自立的に発電させた場合、その全体の出力電圧は定格電圧まで上昇することが困難であり、もしくは非現実的なほど長い時間が必要となっていた。
【0005】
本発明の目的は、フライホイールを用いて充放電する誘導発電電動機を複数並列に備えた場合でも迅速に定格電圧まで上昇できる充放電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、制御信号に基づいて交流電力の給電を制御するインバータと、前記インバータから給電された交流電力によって回転駆動される誘導発電電動機と、前記誘導発電電動機に連結されたフライホイールと、をそれぞれ有する複数のフライホイール充放電部を並列に設けた充放電システムであって、前記複数のフライホイール充放電部のそれぞれの前記誘導発電電動機に給電される交流電力同士の間の電圧位相差の絶対値を低減するよう、それぞれの前記インバータへの前記制御信号を出力する信号制御部、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フライホイールを用いて充放電する誘導発電電動機を複数並列に備えた場合でも迅速に定格電圧まで上昇できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における充放電システムの概略的な回路構成の一例を表す図である。
図2】電圧位相差低減制御を行わない場合の電動機回転数と発電電圧の変化の一例を表すタイムチャートである。
図3】電圧位相差の絶対値に対する定格電圧到達時間の変化の一例を表す図である。
図4】実施形態における加速用インバータ制御部の制御ブロックの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<充放電システムの概略構成>
図1は、本実施形態の充放電システムの概略的な回路構成の一例を表している。この充放電システム1は、外部の商用交流電源2から給電される3相交流電力を2つの並列接続されたフライホイール充放電部3,4にそれぞれ充電させ、その後に各フライホイール充放電部3,4から放電させた電力をまとめて1つの電力負荷部100に出力する。図1において、充放電システム1は、主電源スイッチGSと、第1フライホイール充放電部3と、第2フライホイール充放電部4と、主電圧計5と、主整流器6と、主平滑コンデンサ7と、放電開始スイッチS4と、加速用インバータ制御部8を有している。
【0011】
主電源スイッチGSは、商用交流電源2から当該充放電システム1に対する3相交流電力の給電と停止を切り替えるスイッチである。
【0012】
2つのフライホイール充放電部3,4は、この例においていずれも構成や容量等の仕様が同じものであり、互いに電気的に並列接続されて商用交流電源2から給電された電力の充電とその放電を切り換えて行う。なお、2つのフライホイール充放電部3,4は、仕様が異なるものであってもよい。また、各フライホイール充放電部3,4の詳細な構成については後述する。
【0013】
主電圧計5は、上記2つのフライホイール充放電部3,4からまとめて放電された交流電力の電圧を計測する電圧計である。
【0014】
主整流器6は、公知のダイオードブリッジで構成され、上記2つのフライホイール充放電部3,4からまとめて放電された交流電力を直流電力に整流する。
【0015】
主平滑コンデンサ7は、上記主整流器6で整流された直流電力を平滑化して電力負荷部100に出力するコンデンサである。放電開始スイッチS4は、主平滑コンデンサ7と電力負荷部100との間の接続と切断を切り換える。なお図示する例では、電力負荷部100として例えばがん治療用の放射線治療機器に用いられる医療用加速器コイルを適用した場合を示している。
【0016】
加速用インバータ制御部8は、CPU、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリなどを備えたコンピュータで構成されており、上記2つのフライホイール充放電部3,4にそれぞれ備えられている後述の加速用インバータに対して、それらの駆動制御を行うためのスイッチング制御信号を出力する。なお、この加速用インバータ制御部8が各請求項記載の信号制御部に相当し、スイッチング制御信号が各請求項記載の制御信号に相当する。
【0017】
<フライホイール充放電部の詳細構成>
2つのフライホイール充放電部3,4は、それぞれ加速用インバータ11と、誘導発電電動機12と、フライホイール13と、発電用コンデンサ14と、第1スイッチS1と、第2スイッチS2と、第3スイッチS3とを有している。
【0018】
加速用インバータ11は、上記の主電源スイッチGSを介して商用交流電源2から給電された規定の3相交流電力を、さらに任意の周波数及び波形にある3相交流電力に電力変換するインバータである。特に詳細に図示しないが、この加速用インバータ11の内部には給電された交流電力を直流電力に変換する別途の整流平滑部と、例えば6つの半導体スイッチング素子をフルブリッジ接続したスイッチング回路を備えている。それらの半導体スイッチング素子が、それぞれ上記加速用インバータ制御部8から出力されたスイッチング制御信号に基づいてスイッチング制御されることで、いわゆるPWM制御による上述した電力変換を行う。なお、この加速用インバータ11が、各請求項記載のインバータに相当する。
【0019】
誘導発電電動機12は、誘導型の構成にある回転電機であって、その回転軸にはイナーシャ(慣性モーメント)の大きいフライホイール13が機械的に連結されている。このため誘導発電電動機12は、上記加速用インバータ11から3相交流電力が給電されることでフライホイール13を軸回転駆動する電動機として機能し、逆にフライホイール13から軸回転駆動されることで発電用コンデンサ14を接続していれば3相交流電力を発電する発電機として機能する。つまりこの誘導発電電動機12は、電気エネルギーとフライホイール13の回転運動エネルギーの相互変換を行う。なお、誘導発電電動機12は後述のエンコーダによってその回転位置が検出され、また後述の電圧センサによって通電する交流電圧の瞬時位相角度が検出される。
【0020】
発電用コンデンサ14は、誘導発電電動機12を自立した発電機として動作させるためのコンデンサである。
【0021】
誘導発電電動機12の配線は、加速用インバータ11側に接続される給電経路と外部出力側に接続される出力経路とに分岐しており、第1スイッチS1は給電経路上で、第2スイッチS2は出力経路上でそれぞれ接続と切断を切り換える。第3スイッチS3は、出力経路に対する発電用コンデンサ14の接続と切断を切り換える。
【0022】
<充放電システムの充放電シーケンスと出力電圧の上昇について>
以上の構成にある充放電システム1においては、各フライホイール充放電部3,4それぞれの第1スイッチS1を接続し、それぞれの第2スイッチS2と第3スイッチS3を切断した状態とすることで各フライホイール充放電部3,4が充電状態となる。その上で主電源スイッチGSを接続することで、商用交流電源2から各加速用インバータ11に3相交流電力が給電され、さらに各加速用インバータ11が各誘導発電電動機12に所定の周波数及び波形にある3相交流電力を給電する。このとき、加速用インバータ制御部8からのスイッチング制御により各加速用インバータ11が交流給電電力の周波数指令を上げることで、各誘導発電電動機12は対応する増速シーケンスでフライホイール13を加速駆動させ、円滑にその回転運動エネルギーを蓄積させる(つまり電気エネルギーを充電させる)。
【0023】
そして、各フライホイール13の回転速度が定格速度に達した場合、つまり定格エネルギーを蓄積した際には、各第1スイッチS1と主電源スイッチGSを順に切断することで充電シーケンスを終了する。そして、第2スイッチS2と第3スイッチS3を接続することで各フライホイール充放電部3,4が放電準備状態となり、各誘導発電電動機12は電圧上昇を開始する。発電電圧が定格電圧に到達した後に放電開始スイッチS4を接続することで、フライホイール13の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、すなわち各フライホイール充放電部3,4がそれぞれ3相交流電力を放電出力する放電シーケンスを開始する。
【0024】
しかし本実施形態の例のように、複数のフライホイール充放電部3,4を並列に接続した構成でそれぞれの放電電力をまとめて出力した場合には、図2中の破線曲線で示すように放電シーケンス実行時におけるその全体の放電電圧(つまり上記主電圧計5の計測電圧)を定格電圧(100%)まで上昇させることが困難な場合がある。特に、本実施形態の例のように電力負荷部100として適用した医療用加速器コイルはその直流給電電圧を非常に高い電圧まで迅速に上昇して給電する必要があるが、そのために複数のフライホイール充放電部3,4を並列に接続して放電容量を増大させても定格電圧までの上昇に非現実的なほどの長い時間が必要となって並列接続した構成の意味がなくなってしまう。
【0025】
これに対して本願発明者の検討によれば、並列接続された複数のフライホイール充放電部3,4がそれぞれ自立的に放電(発電)しても、図中のt=0におけるそれぞれの3交流電圧同士の間における位相差が大きい場合には互いの交流電圧が相殺し合ってしまい、それが実効的な出力電圧を定格電圧まで上昇させることを困難にさせる原因となっていることが新たに知見された。さらなる詳細な検証によれば、図3に示すように、放電電圧を定格電圧まで上昇するのに必要な時間(図中の「buildup time」)を実用的な範囲に収めるためには、2つの交流放電電圧のそれぞれの瞬時位相角度θ、θの間の差、つまり電位位相差の絶対値(=|θ-θ|)を略50°以内まで低減させる必要があることも知見された。なお、図3(b)は、図3(a)中のA部を拡大して示した図である。
【0026】
以上に対して本実施形態の例の充放電システム1では、複数のフライホイール充放電部3,4を同時に充電する充電シーケンス中において、各誘導発電電動機12に給電される交流電力同士の間の電圧位相差Δθの絶対値(|θ-θ|)を低減するよう、加速用インバータ制御部8が各加速用インバータ11へのスイッチング制御信号を出力する。つまり、各誘導発電電動機12同士の間における位相同期制御を行う。これにより、その後の放電シーケンス中においても各フライホイール充放電部3,4が放電する交流電力同士の間の電圧位相差Δθの絶対値が同等に低い状態のまま互いの相殺度合いも低減させることができるため、それらをまとめた出力電圧を定格電圧まで迅速に上昇させることが可能となる(図2中の実線曲線参照)。以下、このための加速用インバータ制御部8における制御構成について順次詳細に説明する。
【0027】
<加速用インバータ制御部における制御構成の一例>
本実施形態による各加速用インバータ11の給電制御を実現するための加速用インバータ制御部8における制御ブロックの一例を図4に示す。図示する制御ブロックでは、商用交流電源2、加速用インバータ11、誘導発電電動機12、エンコーダ35、電圧センサ36、及びフライホイール13などの一部の構成要素を除いて伝達関数形式で表記しており、加速用インバータ制御部8がソフトウェア的に備えるものである。この図4において、加速用インバータ制御部8は、第1フライホイール充放電部3と第2フライホイール充放電部4のそれぞれに対応した系統の制御を行う第1制御部21及び第2制御部22と、位相比較回路23と、ゲインKを有している。なお本実施形態の例では、第1フライホイール充放電部3に関連する系統をマスタ系統とし、第2フライホイール充放電部4に関連する系統をスレーブ系統とする。
【0028】
第1制御部21は、減算器31と、速度制御部32と、PWM制御部33と、速度変換部34を有している。
【0029】
減算器31は、特に図示しない上位制御装置より入力された速度指令fから後述する速度検出値fFBを減算し、それらの間の速度偏差Δfを出力する。なお、速度指令fは誘導発電電動機12を駆動する際の交流給電電力の周波数を指定する指令であり、上位制御装置は充電シーケンスにおいて誘導発電電動機12及びフライホイール13の停止状態(f=0)から次第に加速して定格速度100%の回転速度まで増速させるよう速度指令fを変動出力する。またこの例では、この速度指令fは、当該加速用インバータ制御部8における制御ブロックに入力される際には実質的に周波数(Hz)から回転角速度(ω)の単位に変換されて入力され、上記速度偏差Δfや速度検出値fFBもまた同等に回転角速度の単位での偏差や検出値として扱われるものとする(特に図示せず)。
【0030】
速度制御部32は、入力された上記速度偏差Δfに対し例えばPI制御を行うことでトルク指令を生成する。
【0031】
PWM制御部33は、上記トルク指令に基づくデューティ比でのPWM制御により加速用インバータ11をスイッチング制御するようスイッチング制御信号を出力する。
【0032】
また誘導発電電動機12には回転位置検出器であるエンコーダ35が備えられており(上記図1では図示省略)、このエンコーダ35が誘導発電電動機12(フライホイール13)の回転位置を位置検出値として検出する。速度変換部34は、この位置検出値を誘導発電電動機12の速度検出値fFBに変換して上記減算器31に出力する。この速度変換部34は、いわゆる微分器(s)で構成すればよい。
【0033】
また誘導発電電動機12には電圧センサ36が備えられており(上記図1では図示省略)、この電圧センサ36が当該誘導発電電動機12に通電する交流電圧の瞬時位相角度θを検出する。
【0034】
以上のフィードバックループを構成する制御ブロックにより、第1制御部21は、上位制御装置から入力された速度指令fに追従させるよう誘導発電電動機12をフィードバック制御できる。
【0035】
第2制御部22は、上記第1制御部21と制御ブロックの構成がほぼ同じであるが、速度偏差Δfに対して後述する速度補正値を加算する加算器37を備えている点で相違している。
【0036】
位相比較回路23は、マスタ系統の電圧センサ36で検出された瞬時位相角度を基準位相θとし、この基準位相θからスレーブ系統の電圧センサ36で検出された交流電圧の瞬時位相角度θを差し引いた電圧位相差Δθ(=θ-θ)を逐次算出する。そして、この電圧位相差Δθに適宜設定されたゲインKを乗算して速度補正値とし、上記第2制御部22の加算器37を介して速度偏差Δfに加算される。つまり第2制御部22においては、誘導発電電動機12の回転速度を速度指令fに追従させるためのフィードバック制御とともに、マスタ系統とスレーブ系統の間の電圧位相差Δθ(=θ-θ)に基づいて速度偏差Δfを補正するフィードフォワード制御も併せて行われる。
【0037】
以上の加速用インバータ制御部8の制御構成によれば、マスタ系統における誘導発電電動機12及びフライホイール13は上位制御装置からの速度指令fにそのまま追従して加速制御される。その一方、スレーブ系統における誘導発電電動機12及びフライホイール13は、電圧位相差Δθが正値で大きいほど、つまりスレーブ系統がマスタ系統より電圧位相が遅れているほど加速するよう駆動制御される。また、電圧位相差Δθが負値で小さいほど、つまりスレーブ系統がマスタ系統より電圧位相が進んでいるほど減速するよう駆動制御される。
【0038】
以上により、充電シーケンスにおいては、マスタ系統とスレーブ系統の間の電圧位相差Δθの絶対値が低減されるよう、スレーブ系統における誘導発電電動機12及びフライホイール13の回転速度が調整され、最終的には各系統間の電圧位相が略同期に近い状態でそれぞれ定格速度100%に達し、充電シーケンスを終了する。これにより、そのまま放電シーケンスを開始した際には、各フライホイール充放電部3,4が放電する交流電力同士で互いに相殺する度合いを低減させた状態となり、それらをまとめた出力電圧を定格電圧まで迅速に上昇させることが可能となる。
【0039】
なお、以上において、マスタ系統における第1フライホイール充放電部3が各請求項記載の所定の1つのフライホイール充放電部に相当し、スレーブ系統における第2フライホイール充放電部4が各請求項記載の他のフライホイール充放電部に相当し、ゲインKが各請求項記載の所定のゲインに相当し、速度補正値が各請求項記載の補正値に相当する。
【0040】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の充放電システム1においては、加速用インバータ制御部8が、複数のフライホイール充放電部3,4のそれぞれの誘導発電電動機12に給電される交流電力同士の間の電圧位相差Δθの絶対値(=|Δθ|=|θ-θ|)を低減するよう、それぞれの加速用インバータ11へのスイッチング制御信号を出力する。
【0041】
これにより、放電シーケンス中においても各フライホイール充放電部3,4が放電する交流電力同士の間の電圧位相差Δθの絶対値が同等に低くなり互いの相殺度合いも低減させることができるため、それらをまとめた出力電圧を定格電圧まで迅速に上昇させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では特に、加速用インバータ制御部8は、複数のフライホイール充放電部3,4のうちの所定の1つであるマスタ系統における交流電圧の瞬時位相角度を基準位相θとし、他のスレーブ系統における交流電圧の瞬時位相角度θと基準位相θとの間の電圧位相差Δθの絶対値を低減するようスイッチン制御信号を出力する。
【0043】
これにより、充電シーケンスにおいては、マスタ系統を基準として他のスレーブ系統との間の電圧位相差Δθの絶対値が低減されるよう、スレーブ系統における誘導発電電動機12及びフライホイール13の回転速度が調整され、最終的には各系統間の電圧位相が略同期に近い状態でそれぞれ定格速度100%に達し、充電シーケンスを終了できる。
【0044】
なお、上記実施形態の例では、フライホイール充放電部を2つしか設けていないため、一方をマスタ系統とすることで他方のスレーブ系統が1つだけとなっていたがこれに限られない。例えば、特に図示しないが、フライホイール充放電部を3つ以上設けた場合にはスレーブ系統の数が2つ以上となり、それらの間の電圧位相差Δθの低減調整が煩雑になりやすい。これに対して上述したように1つのマスタ系統における基準位相θを基準として、他の各スレーブ系統ごとに個別に位相比較回路23を設けてそれぞれ共通する基準位相θとの間の電圧位相差Δθ(=θ-θ)を算出し速度補正値を生成すればよい。これにより、最終的には各系統間の電圧位相を略同期に近い状態として充電シーケンスを終了できる。
【0045】
また、本実施形態では特に、加速用インバータ制御部8は、スレーブ系統のフライホイール充放電部4において対応する電圧位相差Δθに基づいた誘導発電電動機12の加速制御を行うようスイッチング制御信号を出力する。これにより、比較的簡易な制御構成によって円滑にマスタ系統とスレーブ系統との間の電圧位相差Δθの低減が可能となる。
【0046】
また、本実施形態では特に、加速用インバータ制御部8は、スレーブ系統に対応する誘導発電電動機12への速度偏差Δfに対して、マスタ系統の基準位相θから当該スレーブ系統のフライホイール充放電部4における瞬時位相角度θを差し引いた電圧位相差Δθ(=θ-θ)に所定のゲインKを乗じた速度補正値を加算する。
【0047】
これにより、スレーブ系統においては、誘導発電電動機12の回転速度を速度指令fに追従させるためのフィードバック制御とともに、マスタ系統とスレーブ系統の間の電圧位相差Δθに基づいて速度偏差Δfを補正するフィードフォワード制御も併せて行うことができ、具体的かつ有効な位相同期制御を実現できる。なお、速度補正値を加算して補正する対象は速度偏差Δfに限られず、他にもゲインKの値を適宜調整した上で速度補正値を速度指令fに対し直接加算して補正しても同等の効果を発揮できる。
【0048】
また、本実施形態では特に、加速用インバータ制御部8は、電圧位相差Δθの絶対値が略50°以内となるようスイッチング制御信号を出力することが望ましい。これにより、全体の放電電圧を定格電圧まで上昇するのに必要な時間を実用的な範囲に収めることができる。
【0049】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0050】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 充放電システム
3 第1フライホイール充放電部
4 第2フライホイール充放電部
8 加速用インバータ制御部(信号制御部に相当)
11 加速用インバータ(インバータに相当)
12 誘導発電電動機
13 フライホイール
21 第1制御部
22 第2制御部
23 位相比較回路
100 電力負荷部
図1
図2
図3
図4