(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038722
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】カバーフィルム貼着装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230310BHJP
G02B 21/34 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
G01N1/28 U
G02B21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145592
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000148025
【氏名又は名称】サクラ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 昌久
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 大哉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 星之介
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052DA07
2G052FA10
2G052GA32
2G052HA19
2G052HC04
2G052JA04
2G052JA08
2H052AE09
(57)【要約】
【課題】カバーフィルムを引き回すことなく、スライドガラスを長時間にわたって空気に触れさせないようにできる。
【解決手段】カバーフィルム10が巻回されているホルダ11を保持するホルダ保持部Cと、ホルダ11から引き出されたカバーフィルム10を所定長さに切断する切断部40と、検体標本が貼り付けられているスライドガラス22を複数収納するバスケット21が透徹剤に浸漬される浸漬槽32と、所定長さに切断したカバーフィルム10を、バスケット21から取り出したスライドガラス22に貼着する封入部Bと、ホルダ保持部Cに保持されているホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の外径を撮像する撮像装置14と、撮像装置14によって撮像された巻回されているカバーフィルム10の外径に基づいて、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する制御部64と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なカバーフィルムが巻回されているホルダを保持するホルダ保持部と、
前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを所定長さに切断する切断部と、
透徹剤が貯留され、検体標本が貼り付けられているスライドガラスを複数収納するバスケットが透徹剤に浸漬される浸漬槽と、
所定長さに切断したカバーフィルムを、バスケットから取り出したスライドガラスに貼着して検体標本を封入する封入部と、
前記ホルダ保持部に保持されているホルダに巻回されているカバーフィルムの厚さを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された巻回されているカバーフィルムの厚さに基づいて、ホルダに巻回されているカバーフィルムの残り長さを算出する制御部と、を具備することを特徴とするカバーフィルム貼着装置。
【請求項2】
カバーフィルムに関する情報を表示する表示部を具備することを特徴とする請求項1記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項3】
前記制御部は、算出したカバーフィルムの残り長さを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項4】
報知部を具備し、
前記制御部は、前記表示部に算出したカバーフィルムの残り長さを表示させたときに、前記表示部に算出したカバーフィルムの残り長さを表示させたことを前記報知部によって報知することを特徴とする請求項3記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項5】
前記制御部は、
作業者が、前記ホルダ保持部にホルダを保持させたときに、カバーフィルムの残り長さを算出することを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項6】
前記制御部は、
バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に、カバーフィルムの残り長さを算出することを特徴とする請求項1~請求項5のうちのいずれか1項記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項7】
前記制御部は、
バスケットタイプ毎に収納されるスライドガラスの枚数と、1枚のスライドガラスに貼着するカバーフィルムの長さから、バスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さを算出し、
算出したバスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さと、バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に算出したカバーフィルムの残り長さと、を比較し、
比較した結果を前記表示部に表示することを特徴とする請求項6記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項8】
前記制御部は、
バスケットタイプ毎に収納されるスライドガラスの枚数と、1枚のスライドガラスに貼着するカバーフィルムの長さから、バスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さを算出し、
算出したバスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さと、
バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に算出したカバーフィルムの残り長さと、を比較した結果、カバーフィルムの残り長さが、算出した必要なカバーフィルムの長さよりも少ない場合には、新たなホルダに交換するまでカバーフィルム貼着動作を実行させないように制御することを特徴とする請求項6又は請求項7記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項9】
長尺なカバーフィルムが巻回されているホルダを保持するホルダ保持部と、
前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを所定長さに切断する切断部と、
前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを引き回すことなく前記切断部に誘導する送りローラと、
透徹剤が貯留され、検体標本が貼り付けられているスライドガラスを複数収納するバスケットが透徹剤に浸漬される浸漬槽と、
所定長さに切断したカバーフィルムを、バスケットから取り出したスライドガラスに貼着して検体標本を封入する封入部と、を具備することを特徴とするカバーフィルム貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体標本が貼付されたスライドガラスにカバーフィルムを貼着するカバーフィルム貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病理検査において、生体材料を薄切した検体標本をスライドガラスに添付してから染色処理を施した後に、検体標本の保護のためにカバーフィルムをスライドガラス表面に貼着して顕微鏡にて観察することが行われている。
【0003】
特許文献1(特開2005-300323号公報)には、カバーフィルムをスライドガラス表面に貼着する装置が開示されている。
特許文献1のカバーフィルム貼着装置は、カバーフィルム貼着前のスライドガラスが複数枚収納されたバスケットと、バスケットからスライドガラスを取り出す取り出し装置とを備えている。
なお、カバーフィルム貼着前のスライドガラスが収納されたバスケットは、検体標本の乾燥防止のためにキシレン等の透徹剤に浸漬されている。
【0004】
バスケットから取り出されたスライドガラスには、封入剤又はあらかじめカバーフィルムに塗布された封入剤を溶かす溶剤が滴下される。
カバーフィルムは、巻回体から引き出され、カッターによって所定長さに切断される。切断された所定長さのカバーフィルムは、封入剤が滴下されたスライドガラスに押圧されて貼着される。
そして、カバーフィルムが貼着されたスライドガラスは、バスケットに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カバーフィルムは、円形のホルダに長尺なまま巻回されてカバーフィルム貼着装置に保持されている。カバーフィルム貼着装置は、ホルダから長尺なカバーフィルムを引き出してスライドガラスに貼着する分の所定長さに切断し、切断した所定長さのカバーフィルムをスライドガラスに貼着する。
【0007】
従来のカバーフィルム貼着装置においては、カバーフィルムをホルダから引き出してから貼着位置に至るまでに、バスケットに収納されるスライドガラスの最大枚数の全スライドガラスに貼着可能な長さ分だけ確保するよう、カバーフィルムを引き回して配置している。
この構成がいわゆる封入保障と呼ばれるものであり、ホルダに巻回されているカバーフィルムの残量が無くなった場合であっても引き回されているカバーフィルムの長さ分、つまり少なくとも現在貼着作業を行っているバスケットに収納されている全スライドガラスにはカバーフィルムを貼着できる。
このため、スライドガラスの検体標本が長時間空気に晒された状態で放置されることがなく、検体標本の損傷を回避することができる。
【0008】
上述したように、カバーフィルムを引き回して封入保障を図る従来の構成では、部品点数が増え、コスト高になるとともに、装置が大型化しているという課題がある。また、引き回し時にカバーフィルムに傷がついてしまったり、静電気が帯電してしまうなどのおそれもある。
また、ホルダ交換時や動作開始時などの、カバーフィルムが巻回されたホルダをセットする際には、作業者がカバーフィルムを引き回して配置する必要があり、作業者の手間がかかってしまうという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、カバーフィルムを引き回すことなく、スライドガラスを長時間にわたって空気に触れさせないようにできるカバーフィルム貼着装置を提供することにある。
【0010】
本発明にかかるカバーフィルム貼着装置によれば、長尺なカバーフィルムが巻回されているホルダを保持するホルダ保持部と、前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを所定長さに切断する切断部と、透徹剤が貯留され、検体標本が貼り付けられているスライドガラスを複数収納するバスケットが透徹剤に浸漬される浸漬槽と、所定長さに切断したカバーフィルムを、バスケットから取り出したスライドガラスに貼着して検体標本を封入する封入部と、前記ホルダ保持部に保持されているホルダに巻回されているカバーフィルムの外径を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された巻回されているカバーフィルムの外径に基づいて、ホルダに巻回されているカバーフィルムの残り長さを算出する制御部と、を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、ホルダに巻回されているカバーフィルムの外径に基づいてホルダに巻回されているカバーフィルムの残り長さを算出するので、作業者はカバーフィルムの残り長さを知ることができるため、カバーフィルムの引き回しをして封入保障をしなくてもよい。
【0011】
また、カバーフィルムに関する情報を表示する表示部を具備してもよい。
【0012】
また、前記制御部は、算出したカバーフィルムの残り長さを前記表示部に表示させることを特徴としてもよい。
この構成によれば、作業者は表示部を見てカバーフィルムの残り長さを確認することができる。
【0013】
また、報知部を具備し、前記制御部は、前記表示部に算出したカバーフィルムの残り長さを表示させたときに、前記表示部に算出したカバーフィルムの残り長さを表示させたことを前記報知部によって報知することを特徴としてもよい。
この構成によれば、作業者は報知部からの報知によって表示部にカバーフィルムの残り長さが表示されたことを認識することができる。
【0014】
また、前記制御部は、作業者が、前記ホルダ保持部にホルダを保持させたときに、カバーフィルムの残り長さを算出することを特徴としてもよい。
この構成によれば、これからカバーフィルムの貼着動作を実行する際に使用可能なカバーフィルムの長さを把握することができる。
【0015】
また、前記制御部は、バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に、カバーフィルムの残り長さを算出することを特徴としてもよい。
この構成によれば、作業者は、ホルダに残っているカバーフィルムの長さと、次に封入を行うバスケットに収納されたスライドガラスの数とを比較して、ホルダに残っているカバーフィルムを使い続けるか、又は新しいホルダを装着し直すかを判断することができる。
【0016】
また、前記制御部は、バスケットタイプ毎に収納されるスライドガラスの枚数と、1枚のスライドガラスに貼着するカバーフィルムの長さから、バスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さを算出し、算出したバスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さと、バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に算出したカバーフィルムの残り長さと、を比較し、比較した結果を前記表示部に表示することを特徴としてもよい。
この構成によれば、作業者は、表示部の表示に基づいて、ホルダに残っているカバーフィルムを使い続けるか、又は新しいホルダを装着し直すかを判断することができる。
【0017】
また、前記制御部は、バスケットタイプ毎に収納されるスライドガラスの枚数と、1枚のスライドガラスに貼着するカバーフィルムの長さから、バスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さを算出し、算出したバスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さと、バスケット内の全てのスライドガラスへのカバーフィルム貼着終了時に算出したカバーフィルムの残り長さと、を比較した結果、カバーフィルムの残り長さが、算出した必要なカバーフィルムの長さよりも少ない場合には、新たなホルダに交換するまでカバーフィルム貼着動作を実行させないように制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、1バスケット分のスライドガラスへのカバーフィルムの貼着が無理な場合は、カバーフィルム貼着動作を実行させないようにして、スライドガラスを長時間にわたって空気に触れさせないようにできる。
【0018】
本発明にかかるカバーフィルム貼着装置によれば、長尺なカバーフィルムが巻回されているホルダを保持するホルダ保持部と、前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを所定長さに切断する切断部と、前記ホルダから引き出されたカバーフィルムを引き回すことなく前記切断部に誘導する送りローラと、透徹剤が貯留され、検体標本が貼り付けられているスライドガラスを複数収納するバスケットが透徹剤に浸漬される浸漬槽と、所定長さに切断したカバーフィルムを、バスケットから取り出したスライドガラスに貼着して検体標本を封入する封入部と、を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、カバーフィルムを引き回さずに切断部で所定長さに切断するため、部品点数を減らしてコスト削減に寄与できるとともに、装置を小型化できる。また、引き回しを行わないので、カバーフィルムに傷がついてしまうことや静電気の帯電を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカバースリップ貼着装置によれば、カバーフィルムを引き回すことなく、スライドガラスを長時間にわたって空気に触れさせないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】カバーフィルムのホルダの外観構成を示す説明図である。
【
図2】カバーフィルム貼着装置の概略の内部構成を示す説明図である。
【
図3】ホルダと切断装置の構成を示す説明図である。
【
図4】カバーフィルム貼着装置の制御系を示すブロック図である。
【
図5】カバーフィルムの残り長さ算出の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図6】カバーフィルムの残り長さ算出の第2の実施形態のフローチャートである。
【
図7】カバーフィルムの残り長さ算出の第2の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まずカバーフィルムについて説明する。
図1に示すカバーフィルム10は、樹脂製のフィルムであって、リング状のホルダ11の周囲に巻回された状態で貼着装置内に装着される。カバーフィルム10の長さとしては、60~80m程度であって、巻回された状態から引き出され、所定長さにカットされたのちに使用される。
【0022】
次に、
図2に基づいてカバーフィルム貼着装置の概略構成について説明する。
カバーフィルム貼着装置30は、透徹剤が貯留された浸漬槽32を備えている。また、薄切された検体標本が貼付されている複数枚のスライドガラス22はバスケット21に収容されている。バスケット21は、薄切された検体標本が貼付されている複数枚のスライドガラス22が、底面部に対して直角となるように挿入されて収容される形状を有している。このバスケット21ごと浸漬槽32内に収納され、スライドガラス22は透徹剤に浸漬される。なお、バスケット21は、スライドガラス22の収納容量が異なるバスケットが存在する。以下、容量が異なるバスケットの種類をバスケットタイプと称する。
【0023】
カバーフィルム貼着装置30は、浸漬槽32からバスケット21を取り出す取り出しアーム34を備えている。取り出しアーム34は、先端にバスケット21を把持する把持部36が設けられており、水平方向に向かう回動軸35を中心として鉛直面内で回動して、バスケット21を浸漬槽32から取り出す。把持部36は、バスケット21を把持する際にバスケット21を押すことにより、浸漬槽32内に設けられているバスケットタイプ検出板66の下端部を押圧する。下端部を押圧されたバスケットタイプ検出板66の上端部は
図2の右から左方向に回動する。
バスケットタイプ検出板66の上方には、2つのバスケットタイプ検出センサ68、70が設けられている。2つのバスケットタイプ検出センサ68、70がバスケットタイプ検出板66の動きを検出してバスケットタイプを判別することができる。
取り出しアーム34は、鉛直面内で90度回転し、浸漬槽32から取り出したバスケット21におけるスライドガラス22が水平になる位置まで回動する。
【0024】
スライドガラス22が水平になる位置にまで回動したバスケット21は、上下方向に昇降する昇降台37に載置される。昇降台37はバスケット21を待機位置 (
図2の符号A)まで上昇させる。
待機位置においては、バスケット21からスライドガラス22を1枚ずつ押し出す押しエジェクタ38が設けられている。
【0025】
押しエジェクタ38は、バスケット21からスライドガラス22を押し出し、水平テーブル上の封入部Bまでスライドガラス22を移動させる。
この封入部Bにおいて、スライドガラス22にカバーフィルム10が貼着されスライドガラス22の検体標本が封入される。
【0026】
図3に示すように、カバーフィルム10は、上記のようにホルダ11の周囲に巻回されており、ホルダ11が装着される保持部Cに装着される。
カバーフィルム10は、ホルダ11側面から下方向に引き出され、ガイドローラ41と送りローラ46を経て、切断装置40に進入する。なお、切断装置40と保持部Cの配置によってはガイドローラ41を設けなくてもよい。
【0027】
切断装置40は、封入部Bに配置されるスライドガラス22に対して斜め上方から接近するような角度に位置しており、カバーフィルム10を所定長さに切断するカッター48と、所定長さに切断されたカバーフィルム10をスライドガラス22の上方に送り込む一対のカバーローラ50とが設けられている。
【0028】
また封入部Bには、封入剤を滴下する分注ノズル52が設けられている。分注ノズル52は図示しないポンプ及び配管に接続され、図示しないポンプ及び配管を介して溶剤ボトル55から封入剤を吸い上げる。分注ノズル52の先端部は、封入部Bに配置されたスライドガラス22の検体標本の上方に配置され、検体標本上面に封入剤を滴下させることができる。
【0029】
カッター48によって所定長さに切断されたカバーフィルム10は、貼付ローラ54によってスライドガラス22に貼着される。
カバーフィルム10の貼着が完了したスライドガラス22は、戻しエジェクタ56によってバスケット21内の元の位置に収納されるように水平方向に移動させられる。
【0030】
1枚のスライドガラス22へのカバーフィルム10の貼着が完了すると、昇降台37が1枚のスライドガラス22の厚さ分だけバスケット21を上昇させる。そして、次の未貼着のスライドガラス22がバスケット21内から封入部Bへ押し出され、カバーフィルム10の貼着が行われる。
【0031】
バスケット21内のすべてのスライドガラス22へのカバーフィルム10の貼着が完了すると、昇降台37が上昇して、カバーフィルム貼着後のバスケット21を収納しておく収納部58内へバスケット21を収納させる。
【0032】
スライドガラス22からあふれた封入剤等は、封入部Bの下方に配置されている廃液トレー59に落下して集められ、廃液トレー59の下方に配置されている廃液ボトル60に貯留される。
【0033】
図4に制御系のブロック図を示す。
カバーフィルム貼着装置30は、全体動作を制御する制御部64が設けられている。制御部64は、CPU、メモリ等から構成されており、予め設定された制御プログラムに基づいて動作する。
保持部C近傍には、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の外径を撮影可能な撮像装置14が設けられている。撮像装置14は、例えばCCD又はCMOS等のイメージセンサを搭載したカメラモジュールを採用することができる。
撮像装置14は、制御部64に接続されており、撮像タイミングは制御部64からの指示によって実行され、撮像した画像データは制御部64に送信される。
【0034】
制御部64は、撮像装置14によって撮影されたホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の外径から残り長さを算出する機能を備えている。残り長さを算出する機能は、制御部64に対して予め設定された制御プログラムによって実現される。
【0035】
また、カバーフィルム貼着装置30には、LCD等の表示部16が設けられている。表示部16は、制御部64によって算出されたカバーフィルム10の残り長さ、制御部64によってカバーフィルム10の残り長さと1バスケット分のスライドガラス22の枚数分の長さとを比較した結果、等の情報を表示可能である。
【0036】
さらに、カバーフィルム貼着装置30には、スピーカ等の報知部18が設けられている。報知部18は、表示部16にカバーフィルム10の残り長さや、カバーフィルム10の残り長さと1バスケット分のスライドガラス22の枚数分の長さとを比較した結果等の情報が表示されたことを、例えばビープ音等の報知音を出力して作業者に知らせる。
なお、スピーカ等の報知部18が報知する音としては、制御部64によって算出されたカバーフィルム10の残り長さや、カバーフィルム10の残り長さと1バスケット分のスライドガラス22の枚数分の長さとを比較した結果を音声データで出力するようにしてもよい。音声データの場合、予め制御部64に音声データを記憶しておき、予め記憶された音声データを出力してもよいし、音声合成エンジンを搭載して音声合成した音声データを出力するようにしてもよい。
【0037】
以下、
図1に基づいて、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さの検出方法について説明する。
上述したように、制御部64は、撮像装置14によって撮影されたホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の厚さから残り長さを算出する機能を備えている。
また、制御部64には、カバーフィルム10の1枚の厚さt、ホルダ11の外径(カバーフィルム10の内径)dが予め記憶されているものとする。
【0038】
制御部64は、撮像装置14が撮影した画像データより、カバーフィルムの外径Dを測定する。そしてカバーフィルムの残り長さLを、
L=π(D2-d2)/4t
の式により算出する。
なお、上記式で求めたカバ―フィルムの長さは理論値であり、十分に硬く巻き付けた状態での計算式のため、場合によっては補正値を用いることもある。
また、カバーフィルムの残り長さLの算出方法は、上記式に限定するものではなく、他の式を使用してもよい。
【0039】
次に、カバーフィルム10の残り長さ算出時の制御について、複数の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
以下、
図5のフローチャートに基づいて説明する。本実施形態は、保持部Cにホルダ11が装着されたときに、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する実施形態である。
保持部Cにホルダ11が装着されたことを検出するための構成としては、保持部Cを開閉する扉25又は保持部Cには、扉25が閉じられたこと又はホルダ11が装着されたことを検出するためのセンサ24を設ける。センサ24としては、扉25が閉じられたこと又はホルダ11が装着されたことを検出するものであれば、光電式、近接式、マイクロスイッチ等、どのような方式のものであってもよい。
センサ24は、扉25が開けられた後に閉じられたこと又はホルダ11が保持部Cに装着されたことを検出した場合には、検出信号を制御部64へ出力する(ステップS100)。
【0040】
制御部64は、センサ24からの検出信号を受けて保持部Cにホルダ11が装着されたことを認識すると、撮像装置14に対してホルダ11に巻回されたカバーフィルム10の外径が分かる画像データを取得するように制御信号を出力する。
撮像装置14は、ホルダ11に巻回されたカバーフィルム10を撮像して画像データを制御部64に送信する(ステップS102)。
【0041】
制御部64は、受信した画像データに基づいて、巻回されたカバーフィルム10の外径を計測する。
さらに、制御部64は、計測した巻回されたカバーフィルム10の外径と、予め記憶されているカバーフィルム10の1枚の厚さと、ホルダ11の外径とに基づいて、上述した式によりホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する(ステップS104)。
【0042】
制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さを表示部16に表示する(ステップS106)。
作業者は、表示部16に表示されたカバーフィルム10の残り長さを見て、これから貼着作業を行う予定のバスケットに収納されているスライドガラス22の枚数分のカバーフィルム10が確保されているかどうかを判断できる。
【0043】
また、制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さを表示部16に表示するとともに、報知部18から作業者の注意を引くためのビープ音等を出力するように制御してもよい。これにより、作業者は、表示部16にカバーフィルム10の残り長さが表示されたことを認識することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、
図6のフローチャートに基づいて説明する。本実施形態は、バスケット21内のすべてのスライドガラス22に対してカバーフィルム10の貼着(封入)動作が完了した場合に、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する実施形態である。
制御部64は、バスケット21内のすべてのスライドガラス22へのカバーフィルム10の貼着が完了したことを検出すると(ステップS200)、昇降台37を上昇させて、カバーフィルム貼着後のバスケット21を収納しておく収納部58内へバスケット21を収納させるとともに、撮像装置14に対してホルダ11に巻回されたカバーフィルム10の外径が分かる画像データを取得するように制御信号を出力する。
撮像装置14は、ホルダ11に巻回されたカバーフィルム10を撮像して画像データを制御部64に送信する(ステップS202)。
【0045】
制御部64は、受信した画像データに基づいて、巻回されたカバーフィルム10の外径を計測する。
さらに、制御部64は、計測した巻回されたカバーフィルム10の外径と、予め記憶されているカバーフィルム10の1枚の厚さと、ホルダ11の外径とに基づいて、上述した式によりホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する(ステップS204)。
【0046】
制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さを表示部16に表示する(ステップS206)。作業者は、表示部16に表示されたカバーフィルム10の残り長さを見て、これから貼着作業を行う予定の次のバスケットに収納されているスライドガラス22の枚数分のカバーフィルム10が確保されているかどうかを判断できる。
【0047】
また、制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さを表示部16に表示するとともに、報知部18から作業者の注意を引くためのビープ音等を出力するように制御してもよい。これにより、作業者は、表示部16にカバーフィルム10の残り長さが表示されたことを認識することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
以下、
図7のフローチャートに基づいて説明する。本実施形態は、バスケット21内のすべてのスライドガラス22に対してカバーフィルム10の貼着(封入)動作が完了した場合に、ホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さと、次に貼着予定のバスケット21内の全てのスライドガラス22に必要なカバーフィルムの長さとを比較して、比較結果を表示する実施形態である。
【0049】
本実施形態では、制御部64は、バスケットタイプ毎に収納されるスライドガラスの枚数と、1枚のスライドガラスに貼着するカバーフィルムの長さから、バスケットタイプ別に1バスケット分のスライドガラスに必要なカバーフィルムの長さを算出する。
そして、制御部64は、バスケット21内のすべてのスライドガラス22へのカバーフィルム10の貼着が完了したことを検出すると(ステップS300)、昇降台37を上昇させて、カバーフィルム貼着後のバスケット21を収納しておく収納部58内へバスケット21を収納させるとともに、撮像装置14に対してホルダ11に巻回されたカバーフィルム10の外径が分かる画像データを取得するように制御信号を出力する。
撮像装置14は、ホルダ11に巻回されたカバーフィルム10を撮像して画像データを制御部64に送信する(ステップS302)。
【0050】
制御部64は、受信した画像データに基づいて、巻回されたカバーフィルム10の外径を計測する。
さらに、制御部64は、計測した巻回されたカバーフィルム10の外径と、予め記憶されているカバーフィルム10の1枚の厚さと、ホルダ11の外径とに基づいて、上述した式によりホルダ11に巻回されているカバーフィルム10の残り長さを算出する(ステップS304)。
【0051】
制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さと、次に貼着予定のバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さとを比較する(ステップS306)。
制御部64は、比較した結果、カバーフィルム10の残り長さがバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さよりも長い場合、カバーフィルムの残り長さがバスケット1つ分のスライドガラス22の貼着に足りることを表示部16に表示する(ステップS308)。
【0052】
なお、制御部64は、カバーフィルムの残り長さがバスケット1つ分のスライドガラス22よりもどの程度長いのか、その差分を表示部16に表示してもよい。
または、制御部64は、単にカバーフィルムの残り長さと、バスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さとを表示部16に表示し、カバーフィルムの残り長さがバスケット1つ分のスライドガラス22よりもどの程度長いかの判断は作業者に委ねてもよい。
【0053】
制御部64は、比較した結果、カバーフィルム10の残り長さがバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さよりも短い場合、カバーフィルムの残り長さがバスケット1つ分のスライドガラス22の貼着に足りないことを表示部16に表示する(ステップS310)。
また、制御部64は、カバーフィルム10の残り長さがバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さよりも短い場合には、作業者が新たなホルダ11に交換するまで貼着作業を実行できないよう制御することができる。このように、作業者が新たなホルダ11に交換するまで貼着作業を実行できないようにすることで、バスケット21内のスライドガラス22の全ての貼着が完了する前にカバーフィルムが無くなることを防ぎ、スライドガラス22が長時間空気に晒されることを防止できる。
【0054】
具体的には、作業者が貼着作業を実行しようとして操作スイッチ(図示せず)を操作しても、制御部64は、貼着動作を実行しない(ステップS312)。
そして、上述したセンサ24が、カバーフィルム10が無くなったホルダ11を保持部Cから取り外した後に、新たなホルダ11が保持部Cに装着されたこと又は扉25が閉じられたことを検出した場合には、制御部64はホルダ11が交換されたものと判断し(ステップS314)、制御部64は、貼着動作を実行可能とする(ステップS316)。
このとき、制御部64は、「ホルダを交換しない限り貼着動作が実行できないこと」、及び「貼着動作が実行可能になったこと」は、その都度表示部18に表示して作業者にアピールすることが好ましい。
【0055】
また、制御部64は、算出したカバーフィルム10の残り長さと、次に貼着予定のバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さとを比較した結果を表示部16に表示するとともに、報知部18から作業者の注意を引くためのビープ音等を出力するように制御してもよい。これにより、作業者は、表示部16にカバーフィルム10の残り長さと、次に貼着予定のバスケット21内の全てのスライドガラス22の封入に必要なカバーフィルムの長さとの比較結果が表示されたことを認識することができる。
【0056】
なお、制御部64は、上述した第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態のうちのいずれかを実行してもよいし、第1の実施形態及び第2の実施形態の双方を実行してもよいし、第1の実施形態及び第3の実施形態の双方を実行してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 カバーフィルム
11 ホルダ
14 撮像装置
16 表示部
18 報知部
21 バスケット
22 スライドガラス
24 センサ
25 扉
30 カバーフィルム貼着装置
32 浸漬槽
34 取り出しアーム
35 回動軸
36 把持部
37 昇降台
38 エジェクタ
40 切断装置
41 ガイドローラ
46 送りローラ
48 カッター
50 カバーローラ
52 分注ノズル
54 貼付ローラ
55 溶剤ボトル
56 エジェクタ
58 収納部
59 廃液トレー
60 廃液ボトル
64 制御部
66 バスケットタイプ検出板
68 バスケットタイプ検出センサ
70 バスケットタイプ検出センサ
A 待機位置
B 封入部
C 保持部