(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038735
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】車載用コネクタユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20230310BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H01R13/52 D
H01R13/52 301H
H01R13/52 301F
H01R13/52 302E
B60R16/02 621J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145609
(22)【出願日】2021-09-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】李 騰
(72)【発明者】
【氏名】中村 和伸
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 直樹
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087LL04
5E087LL12
5E087LL14
5E087LL17
5E087QQ01
5E087QQ04
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】被水に耐えうる構造であって、安価に構成することができる車載用コネクタユニットを提供する。
【解決手段】車室側と車体側を隔てる隔壁に取り付けられる車載用コネクタユニットは、筒状部41と、筒状部41の前端に位置する前面板部42とを有するケース40と、筒状部41に収納された回路基板50と、回路基板50に搭載されて車室側の電子機器のコネクタと接続されるインタフェースコネクタ60と、筒状部41の後端を塞ぐ後面カバー70と、後面カバー70に保持されて車体側のハーネスコネクタと接続される内部コネクタ80とを備える。前面板部42にはインタフェースコネクタ60が車室側に臨む開口43と、筒状部41の内部空間に通じる排水穴46が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側と車体側を隔てる隔壁に取り付けられる車載用コネクタユニットであって、
筒状部と、前記筒状部の前端に位置する前面板部とを有するケースと、
前記筒状部に収納された回路基板と、
前記回路基板に搭載されて車室側の電子機器のコネクタと接続されるインタフェースコネクタと、
前記筒状部の後端を塞ぐ後面カバーと、
前記後面カバーに保持されて車体側のハーネスコネクタと接続される内部コネクタとを備え、
前記前面板部には前記インタフェースコネクタが車室側に臨む開口と、前記筒状部の内部空間に通じる排水穴が設けられていることを特徴とする車載用コネクタユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用コネクタユニットにおいて、
前記内部コネクタのハウジングは前記後面カバーと一体形成されており、
前記内部コネクタの端子が前記ハウジングから車体側に突出している部分には樹脂ポッティングが施され、
前記筒状部の後端と前記後面カバーとの間にはゴムシールが配置されていることを特徴とする車載用コネクタユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載用コネクタユニットにおいて、
前記開口を蓋するゴムキャップを具備することを特徴とする車載用コネクタユニット。
【請求項4】
請求項1から3までの何れかに記載の車載用コネクタユニットにおいて、
前記回路基板には防湿コートが施されていることを特徴とする車載用コネクタユニット。
【請求項5】
請求項1から4までの何れかに記載の車載用コネクタユニットにおいて、
前記インタフェースコネクタは非防水構造であることを特徴とする車載用コネクタユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用コネクタユニットにおいて、
前記インタフェースコネクタはUSBコネクタであることを特徴とする車載用コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に取り付けられて使用される車載用コネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図6はこの種の車載用コネクタユニットの従来例として特許文献1に記載されているUSBポートを示したものであり、このUSBポート10は自動二輪車のインナーボックスに取り付けられるもので、
図7はインナーボックスの奥壁20にUSBポート10が取り付けられた状態を示す。なお、
図6中、30はUSBポート10に接続されるスマートフォン等の外部機器のUSBプラグを示す。
【0003】
USBポート10はUSBプラグ30を矢印aで示す挿脱方向に挿脱させる機械的な継手としての口金部11と、口金部11を支持して車体側に固定されるケーシング12を備えている。ケーシング12には口金部11の外周を被覆する口金保持部12aが形成されている。USBポート10は車載時に口金部11の先端のポート開口11aが下向きになるように配置され、即ちUSBポート10はケーシング12を含む全体が車載時に傾斜して配置される。
【0004】
ケーシング12にはフランジ13が設けられており、さらに奥壁20の裏面に近接または当接するフード14が設けられている。フランジ13はケーシング12を伝った水をポート開口11aの外側に導く止水部となっている。また、ケーシング12の後端側には車体側に配策された車体側ハーネスを接続可能とするカプラ15が設けられている。
【0005】
ケーシング12内には回路基板16が収容されている。ケーシング12は車載時に下面側となる部分が開放された形状とされ、回路基板16を収容した状態でこの下面側の開放部分からポッティング樹脂17をケーシング12内に注入して充填することで回路基板16は水密に封止されている。ケーシング12の車載時における下面はポッティング樹脂17が露出したポッティング面17aとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2019/187791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、
図6及び7に示したUSBポート10では、回路基板16を収容したケーシング12内にポッティング樹脂17を充填して回路基板16を水密に封止するものとなっている。
【0008】
しかるに、このようにケーシング12内にポッティング樹脂17を充填する作業は面倒で工数がかかり、その分コストアップとなっていた。
【0009】
この発明の目的はこの問題に鑑み、車載用として被水(水を被ること、水を浴びて濡れること)に耐えうる構造であって、従来よりコストダウン可能な車載用コネクタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、車室側と車体側を隔てる隔壁に取り付けられる車載用コネクタユニットは、筒状部と、筒状部の前端に位置する前面板部とを有するケースと、筒状部に収納された回路基板と、回路基板に搭載されて車室側の電子機器のコネクタと接続されるインタフェースコネクタと、筒状部の後端を塞ぐ後面カバーと、後面カバーに保持されて車体側のハーネスコネクタと接続される内部コネクタとを備え、前面板部にはインタフェースコネクタが車室側に臨む開口と、筒状部の内部空間に通じる排水穴が設けられているものとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、車載用として被水に耐えうる構造であって、従来より安価に構成することができる車載用コネクタユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】Aはこの発明による車載用コネクタユニットの一実施例を示す側面図、Bはその背面図、Cはその斜視図。
【
図2】
図1Aに示した車載用コネクタユニットの分解斜視図。
【
図3】Aは
図1Aに示した車載用コネクタユニットの、ゴムキャップを外した状態の平面図、BはAのC-C線断面図。
【
図4】Aは
図1Aに示した車載用コネクタユニットの、ゴムキャップを外した状態の正面図、BはAのC-C線断面図。
【
図5】
図1Aに示した車載用コネクタユニットが隔壁に取り付けられた状態をゴムキャップの図示を省略して示した断面図。
【
図6】車載用コネクタユニットの従来例を示す斜視図。
【
図7】
図6に示した車載用コネクタユニットの取付け状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、初めに、車両において車室側と車体側を隔てる隔壁に取り付けられて使用される車載用コネクタユニットの被水について述べる。
【0014】
車体側からの被水は走行中にタイヤが巻き上げた水や洗車の際の高圧洗浄水など大量の被水が想定されるが、このような車体側からの被水による水は隔壁の存在により車室側への浸入が防止されるため、車室側から被水する原因とはならない。一方、車室側からの被水は運転者が飲料水をこぼすなど発生頻度が少ない現象であって、たとえ発生しても少量の被水しか想定されない。
【0015】
このように車体側からの被水と車室側からの被水には、その程度に大きな差があり、この発明による車載用コネクタユニットはこの点を考慮したものである。
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0017】
図1はこの発明による車載用コネクタユニットの一実施例の外観を示したものであり、
図2は
図1に示した車載用コネクタユニット100を各部に分解して示したものである。
【0018】
車載用コネクタユニット100はこの例ではケース40と回路基板50とインタフェースコネクタ60と後面カバー70と内部コネクタ80とゴムシール90とゴムキャップ110とポッティング樹脂120とによって構成されており、内部コネクタ80のハウジング81はこの例では後面カバー70と一体形成されたものとなっている。
図2中、82は内部コネクタ80の端子を示す。車体側のハーネスコネクタと接続される内部コネクタ80はこの例では2本の端子82を有するものとなっている。
【0019】
図3B及び
図4Bはゴムキャップ110の図示を省略して車載用コネクタユニット100の断面構造の詳細をそれぞれ示したものである。
【0020】
ケース40は角筒状をなす筒状部41と、筒状部41の前端に位置する前面板部42とを有している。前面板部42には開口43が形成されており、前面板部42の板面にはこの開口43を囲む環状部44が突出形成されている。さらに、前面板部42には環状部44を挟む左右両側に取付け穴45がそれぞれ形成され、同様に環状部44を挟む左右両側に排水穴46がそれぞれ取付け穴45の下方に位置して形成されている。これら開口43、取付け穴45及び排水穴46はいずれも筒状部41の内部空間に通じている。
【0021】
内部コネクタ80のハウジング81は筒状をなし、ハーネスコネクタと嵌合される嵌合部81aと、嵌合部81aの基端を蓋する基部81bとよりなる。基部81bは後面カバー70の一部を構成しており、嵌合部81aは後面カバー70より後方に突出されている。基部81bには端子圧入穴81cが2つ形成されている。
【0022】
端子82はL字状に折り曲げられた形状を有し、L字の一辺には幅方向両側に突出する一対の突起82aが形成されている。端子82はL字の一辺が端子圧入穴81cに圧入されて
図1B,3B等に示したようにハウジング81に取り付けられている。一方、端子82のL字の他辺は回路基板50のスルーホール51に挿入されて半田付け接続される。
【0023】
回路基板50にはこのように内部コネクタ80の端子82が接続され、さらにインタフェースコネクタ60が搭載されて、この回路基板50がケース40の筒状部41に収納されている。車室側の例えばスマートフォン等の電子機器のコネクタと接続されるインタフェースコネクタ60はケース40の前面板部42に設けられている開口43を介して車室側に臨むように位置されている。なお、インタフェースコネクタ60はこの例では非防水構造のUSB Type-Aコネクタとされている。
【0024】
ケース40の筒状部41の後端は後面カバー70によって蓋される。後面カバー70は外周面上に突出する突部71を複数備えており、後面カバー70はこれら突部71が筒状部41に設けられている複数の穴47にそれぞれ嵌め込まれて筒状部41の後端を塞ぐように取り付けられている。
【0025】
なお、この例では後面カバー70の外周面に環状溝72を形成して、この環状溝72に環状をなすゴムシール90を取り付け、筒状部41の後端の内周面と後面カバー70の外周面との間にゴムシール90が挟み込まれるものとなっており、さらに内部コネクタ80の端子82が基部81bより車体側に突出している部分に樹脂ポッティングを施して、端子82の突出している部分にポッティング樹脂120を具備するものとなっており、これにより筒状部41の後端の、即ちケース40の後端の水密封止をより完全なものとしている。
【0026】
ゴムキャップ110はケース40の前面板部42の開口43を蓋するもので、蓋部111の背面側には一対のアーム部112を備えている。ゴムキャップ110の取付けは前面板部42の2つの取付け穴45にアーム部112をそれぞれ挿入することによって行われる。アーム部112には先端に抜け止め部112aが設けられているため、この抜け止め部112aが前面板部42に引っ掛かることによってゴムキャップ110は抜け止めされ、またアーム部112の長さ分、ゴムキャップ110は手前に引き出すことができ、かつアーム部112の変形(撓み)により蓋部111を例えば上下方向に変位させることができるものとなっている。
【0027】
従って、車載用コネクタユニット100の非使用時には蓋部111を前面板部42に押し付けることでインタフェースコネクタ60が臨む開口43を蓋することができ、車載用コネクタユニット100の使用時、即ち車室側の電子機器のコネクタをインタフェースコネクタ60に接続する際には蓋部111を引っ張り、例えば上方に変位させることにより、ゴムキャップ110を取り外すことなく、コネクタの接続を行うことができる。
【0028】
図5は上述した車載用コネクタユニット100が一例として自動二輪車の車室側と車体側を隔てる隔壁200に取り付けられた状態をゴムキャップ110の図示を省略して示したものであり、
図5中、矢印Rは車室側を示し、矢印Bは車体側を示す。
【0029】
車載用コネクタユニット100は隔壁200に設けられた取付け穴210に車室側から挿入され、前面板部42が隔壁200に密着されて取り付けられている。隔壁200に取り付けられた車載用コネクタユニット100は
図5に示したように傾斜した状態となっており、即ち排水穴46の車室側の開口が下に向くように取り付けられている。
【0030】
以上、この発明による車載用コネクタユニットの一実施例及びその取付け構造について説明したが、回路基板50を収容するケース40の後端は水密封止されているため、車体側からの被水がケース40の後端からケース40内に浸入することはなく、また車体側からの被水は隔壁200により車室側への浸入が防止されるため、車体側からの被水がケース40の前端(前面板部42)からケース40内に浸入することもなく、よって車体側からの被水によって回路基板50が水没することはない。
【0031】
一方、ケース40の前面板部42には回路基板50が収容されている筒状部41に通じる排水穴46が存在し、この排水穴46は筒状部41の内部底面の延長上に、その一内壁が位置し、かつ車載時には車室側の開口が下向きとなるように配置されるため、車室側からの被水は排水穴46によって良好に排水される。よって、車室側からの少量の被水によって回路基板50が水没することも起こり得ない。
【0032】
このように、この例では従来のようにケース内にポッティング樹脂を注入、充填して全方位からの被水に対し、回路基板を水密に封止する防水構造と異なり、車体側からの被水と車室側からの被水の程度の差を考慮して回路基板を保護できる適正な耐水構造としたものであって、ケース内にポッティング樹脂を注入、充填する面倒で工数がかかる作業は不要であり、その分コストダウンすることができる。
【0033】
なお、上述した例ではケース40の筒状部41の後端と後面カバー70との間にゴムシール90を挟み込んで水密封止しているが、ゴムシールがなくても水密構造とできる場合にはゴムシール90は不要となる。また、内部コネクタ80において端子圧入穴81cと端子82との間に生じうる隙間を封止すべく、部分的な樹脂ポッティングを施しているが、例えば端子82がハウジング81にインサート成形される場合にはポッティング樹脂120は不要となる。
【0034】
また、内部コネクタ80のハウジング81は後面カバー70と一体形成されているが、後面カバー70とは別体として内部コネクタ80が後面カバー70に保持される構造としてもよい。
【0035】
インタフェースコネクタ60は上述した例ではUSB Type-Aコネクタとしているが、USB Type-Cコネクタを用いる場合もあり、また他のコネクタを用いる場合もあり、インタフェースコネクタ60の種類は特に限定されない。加えて言えば、インタフェースコネクタ60は非防水構造、防水構造のどちらであってもよいが、非防水構造のコネクタとすればコスト面で有利となる。
【0036】
なお、回路基板50は水没することはないものの、耐水性の点から回路基板50に防湿コートを施すようにしてもよい。コーティング剤としては例えば常温型フッ素コーティング剤を用いることができ、またウレタン系、アクリル系、シリコン系などの樹脂を皮膜成分とするコーティング剤を用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 USBポート 11 口金部
11a ポート開口 12 ケーシング
12a 口金保持部 13 フランジ
14 フード 15 カプラ
16 回路基板 17 ポッティング樹脂
17a ポッティング面 20 奥壁
30 USBプラグ 40 ケース
41 筒状部 42 前面板部
43 開口 44 環状部
45 取付け穴 46 排水穴
47 穴 50 回路基板
51 スルーホール 60 インタフェースコネクタ
70 後面カバー 71 突部
72 環状溝 80 内部コネクタ
81 ハウジング 81a 嵌合部
81b 基部 81c 端子圧入穴
82 端子 82a 突起
90 ゴムシール 100 車載用コネクタユニット
110 ゴムキャップ 111 蓋部
112 アーム部 112a 抜け止め部
120 ポッティング樹脂 200 隔壁
210 取付け穴