IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

特開2023-38770水性インクジェットインクセット及び印刷物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038770
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】水性インクジェットインクセット及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20230310BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230310BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230310BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 132
B41M5/00 120
C09D11/54
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145659
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彩弥子
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛峰
(72)【発明者】
【氏名】今西 秀樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA42
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB34
2H186AB35
2H186AB39
2H186AB40
2H186AB41
2H186AB54
2H186AB56
2H186AB57
2H186AB58
2H186BA11
2H186DA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
4J039AE04
4J039BE12
4J039EA48
4J039FA01
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】特に低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質及び加工性に優れる印刷物を形成可能なインクセットを提供する。
【解決手段】前処理液と水性インクジェットインクとを含み、前記前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂を含み、前記カチオン性水溶性樹脂は、前記前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、前記水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含み、前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂は、前記水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、水性インクジェットインクセット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理液と水性インクジェットインクとを含み、
前記前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂を含み、前記カチオン性水溶性樹脂は、前記前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、
前記水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含み、前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂は、前記水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、
水性インクジェットインクセット。
【請求項2】
基材に前処理液を付与することと、
前記前処理液が付与された前記基材に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与することとを含み、
前記前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂を含み、前記カチオン性水溶性樹脂は、前記前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、
前記水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含み、前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂は、前記水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、
印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記前処理液全量に対する前記カチオン性水溶性樹脂の量をX(質量%)、単位面積当たりの前記前処理液の付与量をX(g/m)、前記水性インクジェットインク全量に対する前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂の量をY(質量%)、単位面積当たりの前記水性インクジェットインクの付与量をY(g/m)としたとき、下記式(1)で表される比率Zが、0.5以上1.5以下である、請求項2に記載の印刷物の製造方法。
比率Z=(X×X)/(Y×Y) 式(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水性インクジェットインクセットおよび印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムは、流動性の高い液体インクを微細なノズルから噴射し、基材に付着させて印刷を行う印刷システムである。このシステムは、比較的安価な装置で、高解像度、高品位の画像を、高速かつ低騒音で印刷可能という特徴を有し最近急速に普及している。
インクとしては、安価に高画質の印刷物が得られることから、水性タイプのインクが普及している。水性インクは、水分を含有することにより乾燥性を高めたインクであり、さらに環境性に優れるという利点もある。
【0003】
インクジェット記録システムは近年、普通紙や専用紙等の紙媒体だけではなく、インクが繊維に沿って滲みやすい織物、フェルト等の不織布、木質材、基材のもつ空隙により機能を発現するような機能性多孔質材等にも利用され、さらにインクが浸透しにくいプラスチック基材、合成紙、金属基材、ガラス基材等にも利用されている。
【0004】
金属基材等のインクが浸透しにくい基材に対して水性インクを用いる場合、金属基材上に、あらかじめ前処理をして多孔質層又はインク受容層を形成し、その上からインクジェット印刷する方法がある。
特許文献1には、樹脂層で被覆された金属板に、無機系粒子と樹脂を含む多孔質層が形成され、その上にインクジェット印刷によって模様や文字等を描画する方法が提案されている。
特許文献2には、インク受容層を担持するアルミニウム基板に、インクジェット記録方式により記録を行う方法において、インク受容層は、共重合体エマルジョンと、カチオン性化合物と、無機充填剤とを含む塗工液を用いて形成されることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-37811号公報
【特許文献2】特開2004-209774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクが浸透しにくい基材に対して、基材に前処理等を行わずにインクジェット印刷すると、インクが基材上で滲み、ドットが広がってドット合一を起こし、良好な画像を得られない場合がある。このため、インクドットを基材上に良好に形成させるためのインク受容層をあらかじめ基材上に形成しておくか、インクの成分と反応して良好なドットを形成させるための前処理液を印刷前に基材に施すことが望ましい。
凝集剤を含む前処理液を用い、前処理液中の凝集剤によってインク中の成分を凝集させてインク滲みを抑制する場合、凝集の程度により、印刷画像にひび割れが生じ、結果として、印刷画像が白っぽくなり、良好な発色の画像が得られない場合がある。
また、印刷物の画像部分に、曲げ加工や穴あけ加工などの加工を施す場合もあるが、加工により、画像が割れたり白っぽくなったりすることがある。
【0007】
本発明の実施形態は、特に低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質および加工性に優れる印刷物を形成可能な水性インクジェットインクセットを提供することを課題とする。
本発明の他の実施形態は、特に低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質および加工性に優れる印刷物を形成可能な印刷物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態により、前処理液と水性インクジェットインクとを含み、前記前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂を含み、前記カチオン性水溶性樹脂は、前記前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、前記水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含み、前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂は、前記水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、水性インクジェットインクセットが提供される。
本発明の他の実施形態により、基材に前処理液を付与することと、前記前処理液が付与された前記基材に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与することとを含み、前記前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂を含み、前記カチオン性水溶性樹脂は、前記前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、前記水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含み、前記アニオン性水分散性ウレタン系樹脂は、前記水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、印刷物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、特に低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質及び加工性に優れる印刷物を形成可能な水性インクジェットインクセット及び印刷物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0011】
<水性インクジェットインクセット>
一実施形態の水性インクジェットインクセット(以下、単に「インクセット」と称することがある。)は、前処理液と水性インクジェットインク(以下、単に「インク」、又は「水性インク」と称することがある。)とを含み、前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂(以下、「カチオン性水溶性樹脂A」と称することがある。)を含み、カチオン性水溶性樹脂Aは、前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂(以下、「アニオン性水分散性ウレタン系樹脂B」と称することがある。)を含み、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、水性インクジェットインクセットである。
【0012】
一実施形態によるインクセットを用いた場合、特に低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質及び加工性に優れる印刷物を形成可能となる。その理由は、下記のように考えられるが、本発明の範囲が下記の理論に拘束されることはない。
表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂(カチオン性水溶性樹脂A)を、前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下の量で含む前処理液と、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂(アニオン性水分散性ウレタン系樹脂B)を、インク全量に対して1.0質量%以上15質量%以下の量で含む水性インクジェットインクを用いることで、前処理液とインクとが接触すると、前処理液のカチオン性水溶性樹脂Aが、インク中の色材及びアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bを凝集する凝集剤として作用し、これらのインク成分が適度に凝集してインクの滲みが抑制されて、発色のよい良好な印刷画像を得ることができる。また、前処理液とインクとの接触によるインク成分の凝集を適度な程度の凝集にコントロールすることができるため、インク成分の過度な凝集によるインクのドットサイズの過度な低下や、インク量が多い部分等でのインク付与後または加熱乾燥時等の画像の収縮による画像のひび割れを抑制し、発色のよい良好な印刷画像を得ることができる。
また、水性インクジェットインクが、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bを含むことで、ウレタン系樹脂の柔軟性により、印刷画像が加工に追従しやすくなり、加工により画像が割れたり白っぽくなったりすることが抑制され得る。
【0013】
また、水性インクジェットインクに、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bがインク全量に対して1.0質量%以上含まれると、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのバインダーとしての定着性能が発揮されやすく、耐久性に優れた印刷画像を得ることができる。
【0014】
「前処理液」
以下、前処理液について説明する。
【0015】
前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂(カチオン性水溶性樹脂A)を含むことが好ましい。
【0016】
カチオン性水溶性樹脂Aは、23℃において、水に対する樹脂の溶解度が5g/100g以上であることが好ましく、20g/100g以上であることがより好ましい。
【0017】
カチオン性水溶性樹脂Aは正の表面電荷を有しており、その表面電荷量の絶対値は5.5meq/g以下であることが好ましい。
【0018】
インク成分の凝集を向上させ、インクドットの滲みを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、カチオン性水溶性樹脂Aの表面電荷量の絶対値は、1.0meq/g以上であることが好ましく、2.0meq/g以上であることがより好ましく、2.5meq/g以上であることがさらに好ましい。
【0019】
インク成分が過度に凝集しないように凝集の程度をコントロールし、インクドットサイズの過度な低下および画像のひび割れを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、カチオン性水溶性樹脂Aの表面電荷量の絶対値は、5.5meq/g以下であることが好ましく、5.0meq/g以下であることがより好ましく、4.5meq/g以下であることがさらに好ましい。
【0020】
インク成分の適度な凝集、およびそれによる印刷画像の画質の向上の観点から、カチオン性水溶性樹脂Aの表面電荷量の絶対値は、1.0meq/g以上5.5meq/g以下であることが好ましく、2.0meq/g以上5.0meq/g以下であることがより好ましく、2.5meq/g以上4.5meq/g以下であることがさらに好ましい。
【0021】
カチオン性水溶性樹脂Aの表面電荷量、及び、後述するアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの表面電荷量は、樹脂の有効成分当たりの電荷量(単位:meq/g)として表され、高分子電解質滴定を用いて求めることができる。高分子電解質滴定では、水性試料の電荷量を、反対電荷の高分子電解質を用いた滴定により、定量的に測定することができる。滴定の反応終点を検出する方法として、流動電位法を使用することができる。流動電位法を使用した測定装置として、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製、Model CAS)を用いることができる。この装置では、測定したい物質を含む水性試料を含む液体を測定セルに入れ、ピストンを上下運動させることで試料液に強力な流れを起こし、流動電位を発生させる。具体的には、樹脂の表面電荷量は、以下のようにして求めることができる。測定する樹脂を含む水性試料を、既知の電荷密度を持つ反対電荷の高分子電解質で滴定し、流動電位が0mVになる反応終点までに使用した高分子電解質の量から水性試料の総電荷量を求めることができる。この水性試料の総電荷量を水性試料に含まれる樹脂の有効成分量で割った値が、樹脂の表面電荷量(単位meq/g)である。
カチオン性水溶性樹脂Aなどのカチオン性物質の表面電荷量の測定には、反対電荷の高分子電解質として、N/400 PVSK溶液(0.0025Nポリビニル硫酸カリウム滴定液、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いることができる。アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bなどのアニオン性物質の表面電荷量の測定には、反対電荷の高分子電解質として、N/400 DADMAC溶液(0.0025Nポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)溶液、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いることができる。
【0022】
カチオン性水溶性樹脂Aとしては、例えば、構成単位に塩基性基を有する樹脂、塩基性基が導入された樹脂等を用いることができる。例えば、カチオン性水溶性樹脂Aとして、アミン、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリジノン塩等のカチオンサイトを1個、又は2個以上有する樹脂を用いることができる。
より具体的には、カチオン性水溶性樹脂Aとしては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アクリルアミドの共重合体等、又はこれらの誘導体を挙げることができる。
カチオン性水溶性樹脂Aとしては、例えば、アクリルアミド・アクリロニトリル・N-ビニルアクリルアミジン塩酸塩・N-ビニルアクリルアミド・ビニルアミン塩酸塩・N-ビニルホルムアミド共重合物、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合物等が挙げられる。
これらは、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
カチオン性水溶性樹脂Aの市販品としては、例えば、ハイモ株式会社製「ハイマックスSC-700M」、センカ株式会社製「ユニセンスKCA101L」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0024】
上記したカチオン性水溶性樹脂Aは、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
カチオン性水溶性樹脂Aは、有効成分量で、前処理液全量に対して、1.0質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0025】
インク成分の凝集を向上させ、インクドットの滲みを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、カチオン性水溶性樹脂Aは、有効成分量で、前処理液全量に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.5質量%以上であることがさらに好ましく、5.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
インク成分が過度に凝集しないように凝集の程度をコントロールし、インクドットサイズの過度な低下および画像のひび割れを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、カチオン性水溶性樹脂Aは、有効成分量で、前処理液全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
インク成分の適度な凝集、およびそれによる印刷画像の画質の向上の観点から、カチオン性水溶性樹脂Aは、有効成分量で、前処理液全量に対して、1.0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
前処理液は、バインダー樹脂をさらに含んでよい。バインダー樹脂として、水分散性樹脂、カチオン性水溶性樹脂A以外の水溶性樹脂、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。バインダー樹脂としては、例えば、カチオン性樹脂、非イオン性樹脂またはこれらの組合せを用いてよく、前処理液の安定性の観点から、カチオン性樹脂が好ましい。前処理液は、例えば、バインダー樹脂として、カチオン性水分散性樹脂、非イオン性水分散性樹脂等の水分散性樹脂、またはこれらの組合せを含んでよく、カチオン性水分散性樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
カチオン性水分散性樹脂としては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等が挙げられる。カチオン性の分散剤は、例えば、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等が挙げられる。カチオン性水分散性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系単位、アクリル系単位、又はこれらの組み合わせを少なくとも含む重合体を意味する。(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、後述する(メタ)アクリル系モノマー由来の単位を含むことが好ましい。カチオン性水分散性樹脂としては、カチオン性水分散性(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
【0030】
カチオン性水分散性樹脂は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電し、正電荷を帯びた樹脂粒子であることが好ましい。
カチオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上0.5meq/g以下であることが好ましい。カチオン性水分散性樹脂の表面電荷量は、上述のカチオン性水溶性樹脂の表面電荷量と同様の方法で測定することができる。
【0031】
カチオン性水分散性樹脂は、インク中で粒子状となる水中油(O/W)型の樹脂エマルションとしてインクに配合することができ、インク中で樹脂粒子の状態となることが好ましい。
カチオン性水分散性(メタ)アクリル系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「ポリゾールAP-1350」、「ポリゾールAP-1370」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0032】
非イオン性水分散性樹脂としては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する非イオン性の官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に非イオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。非イオン性の官能基としては、代表的にはポリオキシアルキレングリコール基、カルボキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。非イオン性の分散剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。
非イオン性水分散性樹脂は、樹脂粒子表面がほとんど帯電していない樹脂粒子であることが好ましい。非イオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g未満が好ましい。
【0033】
非イオン性水分散性樹脂の表面電荷量は、カチオン性水溶性樹脂Aの表面電荷量と同様の方法で、N/400 PVSK溶液(0.0025Nポリビニル硫酸カリウム滴定液、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて、測定することができる。
【0034】
非イオン性水分散性樹脂は、インク中で粒子状となる水中油(O/W)型の樹脂エマルションとしてインクに配合することができ、インク中で樹脂粒子の状態となることが好ましい。
【0035】
バインダー樹脂は、有効成分量で、前処理液全量に対して、1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
水分散性樹脂は、有効成分量で、前処理液全量に対して、1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0036】
前処理液は、水性溶媒として水を含むことが好ましい。前処理液において、主溶媒が水であってもよい。なお、樹脂エマルション等に溶媒として水が含まれる場合は、各成分中の水は前処理液中の水の一部に換算して、前処理液を作製する。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、前処理液全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましい。
【0037】
前処理液は、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤は、水と相溶性を示すことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0038】
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
これらは、単独で用いてもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
水溶性有機溶剤のなかから、グリコール類、グリセリン類、グリコールエーテル類、及びこれらの組み合わせを用いることが好ましく、より好ましくはグリコールエーテル類である。これらの水溶性有機溶剤は、水との相溶性がより良好である。
水溶性有機溶剤のなかから、低極性溶剤を用いることが好ましい。低極性溶剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリアセチン、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、2-ピロリドン等を好ましく用いることができる。
【0040】
水溶性有機溶剤は、粘度調整と保湿効果の観点から、前処理液全量に対し、1~60質量%であってよく、1~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%がさらに好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
低極性の水溶性有機溶剤は、例えば、前処理液全量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0041】
前処理液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、より好ましくは非イオン性界面活性剤である。
【0042】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましい。
【0043】
界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。界面活性剤は、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0044】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
【0045】
アセチレン系界面活性剤の市販品として、例えば、日信化学工業株式会社製「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1006」、「オルフィンE1020」、エボニックインダストリーズ社製「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール104」「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0046】
上記した界面活性剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
界面活性剤は、前処理液全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がり好ましく、0.5~2質量%がさらに好ましい。
【0048】
前処理液には、例えば、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、消泡剤、定着剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含有させることができる。
【0049】
前処理液の作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望の前処理液を得ることができる。例えば、材料を一括又は分割して混合して前処理液を得ることができる。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0050】
「水性インクジェットインク」
以下、水性インクジェットインクについて説明する。
【0051】
水性インクジェットインクは、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂(アニオン性水分散性ウレタン系樹脂B)を含むことが好ましい。
【0052】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bとしては、ウレタン骨格を有し水分散性を備える水分散性ウレタン系樹脂を用いることができる。
水分散性ウレタン系樹脂としては、例えば、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合からなる群から選択される1種、又は2種以上を含むウレタン系樹脂等を用いることができる。
具体的に、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bとしては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にエーテル結合とエステル結合を含むポリエステル・エーテル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂などを挙げることができる。なかでも、ポリカーボネート型ウレタン樹脂、ポリエステル型ウレタン樹脂を好ましく用いることができる。
【0053】
インクがアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bを含むことで、ウレタン系樹脂の柔軟性により、印刷画像が加工に追従しやすくなり、加工により画像が割れたり白っぽくなったりすることが抑制され得る。
【0054】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、水分散性を示すことから、水中で水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型の樹脂エマルションを形成することができる。アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、インク中で樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bとしては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性の官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性の樹脂粒子分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基は、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等である。アニオン性の樹脂粒子分散剤は、例えば、陰イオン界面活性剤等である。
【0055】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、負の表面電荷を有しており、その表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上0.09meq/g以下であることが好ましい。
【0056】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bがアニオン性を呈し、前処理液とインクとの接触によるインク成分の凝集を向上させ、インクドットの滲みを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上であることが好ましく、0.02meq/g以上であることがより好ましく、0.03meq/g以上であることがさらに好ましい。
【0057】
インク成分が過度に凝集しないように凝集の程度をコントロールし、インクドットサイズの過度な低下および画像のひび割れを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.09meq/g以下であることが好ましい。
【0058】
インク成分の適度な凝集、及びそれによる印刷画像の画質の向上の観点から、アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上0.09meq/g以下であることが好ましく、0.02meq/g以上0.09meq/g以下であることがより好ましく、0.03meq/g以上0.09meq/g以下であることがさらに好ましい。
【0059】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのガラス転移点は、-40℃~40℃が好ましく、-30~30℃が好ましい。乾燥による収縮を抑制し、印刷画像のひび割れを抑制する観点から、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのガラス転移点は、-40℃以上が好ましく、-30℃以上がより好ましい。低温乾燥での良好な成膜、及び、皮膜が過度に硬くなることで加工時に画像が割れることを抑制する観点から、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのガラス転移点は、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。
ガラス転移点の測定方法は、示差走査熱量測定(DSC)にしたがって行うことができる。
【0060】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、基材上で透明の塗膜を形成する樹脂であることが好ましい。これによって、水性インクの発色への影響を低減することができる。
【0061】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、10000~100000が好ましく、15000~80000がより好ましい。
【0062】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、インク中で粒子状となる水中油(O/W)型の樹脂エマルションとしてインクに配合することができ、インク中で樹脂粒子の状態となることが好ましい。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのインク中での樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット印刷に適した大きさであればよく、一般的には平均粒子径で300nm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、インクの吐出性及びインクの貯蔵安定性の観点から、より好ましくは250nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下であり、一層好ましくは150nm以下である。さらに、色材として顔料を用いる場合は、顔料粒子同士の結着性をより高める観点からは、この樹脂粒子の平均粒子径は、顔料の平均粒子径(一般的には80~200nm程度)よりも小さいことが好ましい。
また、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bのインク中での樹脂粒子の平均粒子径の下限値は、特に限定はされないが、インクの貯蔵安定性の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
【0063】
本明細書において、特に断らない限り、平均粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒子径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nanoParticaSZ-100(株式会社堀場製作所)等を用いることができる。
【0064】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの樹脂エマルションの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス470」、「スーパーフレックス460S」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0065】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0066】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、有効成分量で、インクの全量に対して、1.0質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0067】
インク成分の凝集を向上させ、インクドットの滲みを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点、及び、定着性の向上により印刷画像の耐久性を向上させる観点から、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、有効成分量で、インク全量に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましく、5.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0068】
インク成分が過度に凝集しないように凝集の程度をコントロールし、インクドットサイズの過度な低下および画像のひび割れを抑制して印刷画像の画質を向上させる観点から、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、有効成分量で、インク全量に対して、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、有効成分量で、インク全量に対して、1.0質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上12質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの量(有効成分量)は、質量比で、色材1に対し、0.1~10が好ましく、0.1~8がさらに好ましく、0.5~5がさらに好ましい。
【0071】
インクは、上記したアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bに加えて、その他の水分散性樹脂(以下、「水分散性樹脂C」と称することもある。)を含んでもよい。
【0072】
水分散性樹脂Cは、水分散性を示すことから、水中で水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型の樹脂エマルションを形成することができる。水分散性樹脂Cは、インク中で樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。
水分散性樹脂Cは、インクの安定性の観点から、アニオン性樹脂、両性樹脂、非イオン性樹脂またはこれらの組合せが好ましく、アニオン性樹脂がより好ましい。
水分散性樹脂Cとしては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。水分散性樹脂Cとしてアニオン性水分散性樹脂を用いる場合、アニオン性水分散性樹脂としては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性の分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基は、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等である。アニオン性の樹脂粒子分散剤は、例えば、陰イオン界面活性剤等である。
【0073】
水分散性樹脂Cは、負の表面電荷を有することが好ましい。水分散性樹脂Cは、アニオン性水分散性樹脂であり、かつ表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上0.09meq/g以下であることが好ましく、0.02meq/g以上0.09meq/g以下であることがより好ましく、0.03meq/g以上0.09meq/g以下であることがさらに好ましい。アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.01meq/g以上であることが好ましく、0.02meq/g以上であることがより好ましく、0.03meq/g以上であることがさらに好ましい。アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量の絶対値は、0.09meq/g以下であることが好ましい。アニオン性水分散性樹脂の表面電荷量は、上述したアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの表面電荷量と同様の方法で得ることができる。
【0074】
水分散性樹脂Cは、基材上で透明の塗膜を形成する樹脂であることが好ましい。これによって、水性インクの発色への影響を低減することができる。
【0075】
水分散性樹脂Cの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000~100000が好ましく、5000~80000がより好ましい。
【0076】
水分散性樹脂Cは、インク中で粒子状となる水中油(O/W)型の樹脂エマルションとしてインクに配合することができ、インク中で樹脂粒子の状態となることが好ましい。
水分散性樹脂Cのインク中での樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット印刷に適した大きさであればよく、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bと同様の数値範囲であることが好ましい。
【0077】
水分散性樹脂Cとして、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの水分散性樹脂は、水中油(O/W)型の樹脂エマルションとしてインクに配合することができる。水分散性樹脂Cとしては、水分散性(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、アニオン性水分散性(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
【0078】
水分散性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の単位を含む重合体であることが好ましい。水分散性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の単位とともに、その他のモノマー由来の単位を含んでもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の単位としては、スチレン単位、酢酸ビニル単位、塩化ビニル単位等が挙げられる。これらは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水分散性(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル重合体、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル共重合体、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル重合体、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、又はこれらの組み合わせである。
【0079】
水分散性(メタ)アクリル系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール9780」、「モビニール727」、「モビニール745」、「モビニール966A」、「モビニール940」;BASF社製の「ジョンクリル7100」、「ジョンクリルPDX-7370」、「ジョンクリルPDX-7341」;DIC株式会社製の「ボンコートEC-905EF」、「ボンコート5400EF」、「ボンコートCG-8400」;DSM社製「NeoCryl A-1125」、「NeoCryl A-1127」、「NeoCryl A-6069」、「NeoCryl A-1092」、「NeoCryl A-2092」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0080】
上記した水分散性樹脂Cは、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
インクが水分散性樹脂Cを含む場合、水分散性樹脂Cは、有効成分量で、インク全量に対し、0.1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。
水分散性樹脂Cは、有効成分量で、インク全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。水分散性樹脂Cは、有効成分量で、インク全量に対し、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0081】
インクが水分散性樹脂Cを含む場合、水分散性樹脂Cの量(有効成分量)は、質量比で、色材1に対し、0.1~8が好ましく、0.5~2がさらに好ましい。
【0082】
インクが含む全ての樹脂の合計量に対し、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、有効成分量で、20質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましい。
インクが水分散性樹脂Cを含む場合、インクが含む全ての樹脂の合計量に対し、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂B及び水分散性樹脂Cの合計量は、有効成分量で、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bを含むインク中の全ての水分散性樹脂の合計量は、有効成分量で、インク全量に対し、1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。
【0083】
水性インクジェットインクは、色材を含むことができる。色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。画像の耐候性及び発色性の点から、顔料を好ましく用いることができる。
【0084】
顔料は、顔料分散体としてインクに好ましく配合することができる。
顔料分散体としては、顔料が溶媒中に分散可能なものであって、インク中で顔料が分散状態となるものであればよい。例えば、顔料を顔料分散剤で水中に分散させたもの、自己分散性顔料を水中に分散させたもの、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を水中で分散させたもの等を用いることができる。
【0085】
顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、銅フタロシアニン顔料等の金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0086】
さらに、有機顔料としては、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等が挙げられる。
また、無機顔料としては、コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、これらの金属酸化物及び硫化物、並びに黄土、群青、紺青等が挙げられる。
また、顔料として白色顔料を用いてもよい。白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム等の無機顔料が挙げられる。
【0087】
これらの顔料の平均粒子径は50~500nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。これらの顔料の平均粒子径は、発色性の観点から50nm以上であることが好ましく、吐出安定性の観点から500nm以下であることが好ましい。
【0088】
インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤や界面活性剤に代表される顔料分散剤を好ましく用いることができる。
高分子分散剤の市販品として、例えば、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」、ジョンソンポリマー社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」、BYK社製の「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-193」、「DISPERBYK-199」、第一工業製薬株式会社製のポリビニルピロリドン「K-30」、「K-90」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0089】
界面活性剤型分散剤には、インク中の顔料の分散安定性、及び前処理液からのイオン性の影響を考慮して、非イオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
界面活性剤型分散剤の市販品として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60」、「エマルゲンA-90」、「エマルゲンA-500」、「エマルゲンB-40」、「エマルゲンL-40」、「エマルゲン420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0090】
これらの顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散剤を用いる場合では、顔料分散剤の添加量はその種類によって異なり特に限定はされない。例えば、顔料分散剤は、有効成分の質量比で、顔料1に対し、0.005~0.5の範囲で添加することができる。
【0091】
色材として自己分散性顔料を配合してもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
【0092】
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0093】
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
【0094】
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる(いずれも商品名)。上記した顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。また、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を使用してもよい。
【0095】
色材として染料を配合してもよい。染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられる。これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものを好ましく用いることができる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。
【0096】
上記した色材は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
色材は、有効成分量で、インク全量に対し、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。
【0097】
インクは、水性溶媒として水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。なお、上記した樹脂エマルション、顔料分散体等に溶媒として水が含まれる場合は、各成分中の水はインク中の水の一部に換算して、インクを作製する。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
【0098】
水は、インク粘度の調整の観点から、インク全量に対して20~90質量%で含まれることが好ましく、30~80質量%で含まれることがより好ましい。
【0099】
インクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤は、水と相溶性を示すことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0100】
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な水溶性有機溶剤の中から、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を混合して用いる場合は、水とともに単一の相を形成することができる組み合わせが好ましい。
【0101】
水溶性有機溶剤のなかから、グリコール類、グリセリン類、グリコールエーテル類、及びこれらの組み合わせを用いることが好ましく、より好ましくはグリコールエーテル類である。これらの水溶性有機溶剤は、水との相溶性がより良好である。
水溶性有機溶剤のなかから、低極性溶剤を用いることが好ましい。低極性溶剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な低極性溶剤から1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0102】
水溶性有機溶剤は、粘度調整と保湿効果の観点から、インク全量に対し、例えば、1~60質量%で含ませることができ、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%がより好ましい。
低極性の水溶性有機溶剤は、インク全量に対し、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0103】
インクは、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、より好ましくは非イオン性界面活性剤である。
【0104】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましい。
【0105】
界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な界面活性剤から、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
界面活性剤は、インク全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がり好ましく、0.5~2質量%がさらに好ましい。
【0107】
その他、インクには、上記の成分に加え、任意に、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、消泡剤、定着剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含有させることができる。
【0108】
インクの粘度は、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において1~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、インクジェット印刷装置用として適している。
【0109】
インクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、顔料分散体を用いる場合は、顔料と顔料分散剤と水との混合物をビーズミル等の分散機を用いて分散させて顔料分散体を得て、次いで、顔料分散体とアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Aの樹脂エマルションと必要に応じて水及び/またはその他の材料とを一括又は分割して混合してインクを得ることができる。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0110】
水性インクジェットインクセットは、上記した前処理液と上記した水性インクジェットインクとを含むことができる。水性インクジェットインクセットは、その他のインク、及び/又は後処理剤等をさらに含んでもよい。
【0111】
「基材」
水性インクジェットインクセットは、浸透性基材及び低浸透性基材のいずれにも適用することができる。特に、低浸透性基材に対して、印刷画像の画像品質及び加工性をより向上させ得る。
【0112】
低浸透性基材は、基材内部に液体が染み込んでいかない基材であり、具体的には、インク中の液体の大部分が基材の表面上に留まる基材である。
低浸透性基材としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタン、錫、クロム、カドミウム、合金(例えばステンレス、スチール等)等の金属板等の金属基材;ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス等の板ガラス等のガラス基材;PETフィルム、OHTシート、ポリエステルシート、ポリプロピレンシート等の樹脂製シート、アクリル板等の樹脂基材;アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化ケイ素等の成形体等のセラミック基材等が挙げられる。
これらの基材は、メッキ層、金属酸化物層、樹脂層等が形成されていてもよく、又は、界面活性剤、コロナ処理等を用いて表面処理されていてもよい。例えば、樹脂層が形成されていない金属基材を用いても、印刷画像の画像品質及び加工性を向上させ得る。
【0113】
浸透性基材としては、例えば、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙;織物、不織布等の布;調湿用、吸音用、断熱用等の多孔質建材;木材、コンクリート、多孔質材等が挙げられる。
【0114】
<印刷物の製造方法>
一実施形態の印刷物の製造方法は、基材に前処理液を付与すること(以下、「工程1」と称することもある。)と、前処理液が付与された基材に、水性インクジェットインクをインクジェット方式で付与すること(以下、「工程2」と称することもある。)とを含み、前処理液は、表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂(カチオン性水溶性樹脂A)を含み、カチオン性水溶性樹脂Aは、前処理液全量に対して1.0質量%以上20質量%以下であり、水性インクジェットインクは、水、色材、及び、表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂(アニオン性水分散性ウレタン系樹脂B)を含み、アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bは、水性インクジェットインク全量に対して1.0質量%以上%15質量%以下である、印刷物の製造方法である。
【0115】
前処理液として、上記した前処理液を用いることができる。水性インクジェットインクとして、上記した水性インクジェットインクを用いることができる。基材として、上記した基材を用いることができる。
また、上記した水性インクジェットインクセットを用いてもよい。
【0116】
工程1において、基材に前処理液を付与する方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット方式を用いてもよいし、ローラーやスプレー等で必要量を塗布するようにしてもよい。インクジェット方式を用いる場合、インクジェット印刷装置としては、例えば、後述する工程2で用いることができるものが挙げられる。
前処理液の付与領域は、基材全面でもよいし、画像領域のみに選択的に付着させてもよい。あるいは、ベタ画像部分など、単位面積当たりある一定以上のインクが付着する箇所にのみ前処理液を塗布することもできる。前処理液は、たとば、インクが付与される領域の少なくとも一部を含む領域に付与してもよい。
【0117】
前処理液の付与量は、単位面積当たり、1~200g/mが好ましく、5~100g/mがより好ましく、10~50g/mがさらに好ましい。
【0118】
工程2において、前処理液が付与された基材に、水性インクジェットインクを付与する方法としては、インクジェット方式を用いることができる。インクジェット方式での付与に用いるインクジェット印刷装置は、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよく、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
【0119】
インクの付与量は、単位面積当たり、1~200g/mが好ましく、5~100g/mがより好ましく、10~50g/mがさらに好ましい。
【0120】
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの量とカチオン性水溶性樹脂Aの量のバランスを良好にし、印刷画像のドットサイズをより適正なものとして、よりすぐれた画質の印刷画像を得る観点から、前処理液全量に対するカチオン性水溶性樹脂Aの量をX(質量%)、単位面積当たりの前処理液の付与量をX(g/m)、水性インクジェットインク全量に対するアニオン性水分散性ウレタン系樹脂Bの量をY(質量%)、単位面積当たりの水性インクジェットインクの付与量をY(g/m)としたとき、下記式(1)で表される比率Zが、0.5以上1.5以下であることが好ましい。
【0121】
比率Z=(X×X)/(Y×Y) 式(1)
【0122】
比率Zが0.5以上1.5以下であるとき、ウレタン系樹脂が適度に凝集するため、印刷画像の耐久性及び加工性もさらに向上し得る。
【0123】
比率Zは、例えば、0.1以上、または0.2以上であってよい。比率Zは、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。一方、比率Zは、例えば、5.5以下、または2.5以下であってよい。比率Zは、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。比率Zは、例えば、0.1以上5.5以下であってよく、0.2以上2.5以下であってよい。比率Zは、0.5以上1.5以下が好ましく、0.7以上1.2以下がより好ましい。
【0124】
印刷物の製造方法は、熱処理工程を含んでよい。
例えば、工程1の後、及び/又は、工程2の後に、揮発分の除去のために熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、25℃~150℃が好ましく、50℃~120℃がより好ましい。熱処理時間は、10秒~60分が好ましく、1~30分程度がより好ましい。
【0125】
基材にインクを付与した後に、基材を後処理してオーバーコート層を形成する工程をさらに設けてもよい。基材を後処理する方法としては、例えば、基材に後処理剤を付与して行うことができる。
【0126】
一実施形態により、印刷物が提供される。一実施形態の印刷物は、基材と、基材に形成される前処理層と、前処理層上に形成されるインク画像層とを有する。基材は、上述の基材であってよい。前処理層は、上述の前処理液を用いて得られた層であってよく、インク画像層は、上述の水性インクジェットインクを用いて得られた層であってよい。印刷物は、例えば、上述の水性インクジェットインクセットを用いて製造することができる。一実施形態の印刷物は、例えば、上述の水性インクジェットインクセットを用いて製造することができる。印刷物は、例えば、上述の印刷物の製造方法を用いて製造することができる。
【実施例0127】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
【0128】
<前処理液の作製>
表1および2に前処理液1~12の処方を示す。表中の各成分の配合量は、その成分に溶媒等が含まれる場合は、溶媒等を含む総量で示す。
表中に示す前処理液の処方にしたがって、各成分を混合し、その後、孔径3μmのメンブレンフィルターで濾過し、前処理液1~12を得た。
【0129】
用いた成分は、以下の通りである。
(成分1a:カチオン性水溶性樹脂)
カチオン性水溶性樹脂1:ハイモ株式会社製「ハイマックスSC-700M」、アクリルアミド・アクリロニトリル・N-ビニルアクリルアミジン塩酸塩・N-ビニルアクリルアミド・ビニルアミン塩酸塩・N-ビニルホルムアミド共重合物、有効成分35.0質量%
カチオン性水溶性樹脂2:センカ株式会社製「ユニセンスKCA101L」、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、有効成分23.0質量%
カチオン性水溶性樹脂3:ハイモ株式会社製「ハイマックスSC-506」、アルキルアミン・エピクロロヒドリン付加物の4級アンモニウム塩、有効成分60.0質量%
カチオン性水溶性樹脂4:センカ株式会社製「ユニセンスKHE1000L」ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合物、有効成分23.0質量%
【0130】
(成分1b:多価金属塩)
塩化カルシウム:富士フイルム和光純薬株式会社製「塩化カルシウム10%」、有効成分10.0質量%
【0131】
(成分2:バインダー樹脂(樹脂エマルション))
カチオン性(メタ)アクリル系樹脂エマルション1:昭和電工株式会社製「ポリゾールAP-1370」、有効成分32.5質量%
カチオン性(メタ)アクリル系樹脂エマルション2:昭和電工株式会社製「ポリゾールAP-1350」、有効成分46.5質量%
【0132】
(成分3:水溶性有機溶剤)
表中のグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルは、富士フイルム和光純薬株式会社より入手可能である。
【0133】
(成分4:界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤:エボニックインダストリーズ社製「サーフィノール440」(非イオン性)、有効成分100.0質量%
【0134】
表1および2に記載のカチオン性水溶性樹脂、多価金属塩、およびバインダー樹脂の表面電荷量の絶対値は、以下のようにして求めた値である。カチオン性水溶性樹脂1~4、塩化カルシウム、及びカチオン性(メタ)アクリル系樹脂エマルション1及び2それぞれについて、水性試料を準備した。有効成分量が0.03%になるように希釈した水性試料を、N/400 PVSK溶液(0.0025Nポリビニル硫酸カリウム滴定液、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製、Model CAS)で滴定し、流動電位が0mVになる反応終点までに使用したN/400 PVSK溶液の量から水性試料の総電荷量を求めた。この水性試料の総電荷量を、水性試料中のカチオン性水溶性樹脂、多価金属塩またはバインダー樹脂の有効成分量で割った値を表面電荷量(単位:meq/g)とし、その絶対値を、表面電荷量の絶対値(単位:meq/g)とした。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
<顔料分散体の作製>
表3に顔料分散体の処方を示す。
表中に示す処方にしたがって、各成分をプレミックスした。その後、500mLのPP(ポリプロピレン)容器に300gの混合物を入れ、直径Φ0.5mmのジルコニアビーズを、PP容器中の総量が容器の9割程度になるように添加した。このPP容器をロッキングミル(株式会社セイワ技研製)にセットし、2時間分散した後、ジルコニアビーズを分散液から分離し、マゼンタ分散体を得た。
【0138】
用いた成分は以下の通りである。
マゼンタ顔料:DIC株式会社製「FASTOGEN SUPER MAGENTA RGT」(キナクリドン系顔料)
アクリル系高分子分散剤:BYK社製「DISPERBYK-190」、有効成分40質量%
pH調整剤:富士フイルム和光純薬株式会社製「TEA(トリエタノールアミン)」
防腐剤:ロンザジャパン株式会社製「PROXEL XL2(S)」
【0139】
【表3】
【0140】
<インクの作製>
表4および5に、インク1~9の処方を示す。表中の各成分の配合量は、その成分に溶媒等が含まれる場合は、溶媒等を含む総量で示す。
各表に示すインクの処方にしたがって、各成分を混合し、その後、孔径3μmのメンブレンフィルターで濾過し、インクを得た。
【0141】
用いた成分は、以下の通りである。
(成分1:顔料分散体)
マゼンタ分散体:上記手順によって製造したもの、顔料分20質量%
【0142】
(成分2a:アニオン性ウレタン系樹脂エマルション)
アニオン性ウレタン系樹脂エマルション1:第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス470」、有効成分38.0質量%
アニオン性ウレタン系樹脂エマルション2:第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス460S」、有効成分38.0質量%
アニオン性ウレタン系樹脂エマルション3:DSM社製「NeoRez R-986」、有効成分25.0質量%
【0143】
(成分2b:(メタ)アクリル系樹脂エマルション)
アニオン性(メタ)アクリル系樹脂エマルション:ジャパンコーティングレジン株式会社製「モビニール 966A」、有効成分45.0質量%
【0144】
(成分3:水溶性有機溶剤)
表中のグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルは、富士フイルム和光純薬株式会社より入手可能である。
【0145】
(成分4:界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤:エボニックインダストリーズ社製「サーフィノール440」(非イオン性)、有効成分100.0質量%
【0146】
表4および5に記載のアニオン性ウレタン系樹脂エマルションおよび(メタ)アクリル系樹脂エマルションの表面電荷量の絶対値は、以下のようにして求めた値である。アニオン性ウレタン系樹脂エマルション1~3およびアニオン性(メタ)アクリル系樹脂エマルションそれぞれについて水性試料を準備した。有効成分量が0.03%になるように希釈した水性試料を、N/400 DADMAC溶液(0.0025Nポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)溶液、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製、Model CAS)で滴定し、流動電位が0mVになる反応終点までに使用したN/400 DADMAC溶液の量から水性試料の総電荷量を求めた。この水性試料の総電荷量を、水性試料中の樹脂の有効成分量で割った値を表面電荷量(単位:meq/g)とし、その絶対値を表面電荷量の絶対値(単位:meq/g)とした。
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
<評価方法>
得られたインクを用いて、以下の手順に従って加飾物品を作製し、以下の評価を行った。結果を表6~9に示す。
基材には、白塗装されたアルミニウム板(ニッカル商工株式会社、アルミ平板)を用いた。
10cm×10cmにカットした白塗装アルミニウム板に、エアスプレーで前処理液をウェット塗布量が20g/mになるよう吹き付けた。その後、白塗装アルミニウム板を120℃のオーブンで10分間加熱した。
インクをインクジェットプリンタ(Anajet社製Anajet mPower-10)のインクジェットヘッドに導入し、上記のように前処理液付与および加熱処理が行われた白塗装アルミニウム板に、プリンタで可能な最高濃度で、マゼンタの単色ベタ画像を、ウェット塗布量が20g/mになるよう印刷した。
印刷後に150℃のオーブンで10分間加熱乾燥させ、得られた印刷物を加飾物品とした。
【0150】
表6~9において、比率Zは、前処理液全量に対する表面電荷量の絶対値が5.5meq/g以下のカチオン性水溶性樹脂の量をX(質量%)、単位面積当たりの前処理液のウェット塗布量をX(g/m)、水性インクジェットインク全量に対する表面電荷量の絶対値が0.01meq/g以上0.09meq/g以下のアニオン性水分散性ウレタン系樹脂の量をY(質量%)、単位面積当たりの水性インクジェットインクのウェット塗布量をY(g/m)として、下記式(1)により得られた値である。
【0151】
比率Z=(X×X)/(Y×Y) 式(1)
【0152】
(印刷画像の画像品質)
得られた加飾物品の画像部をズーム顕微鏡で観察し、ベタ画像の濃さ及び均一性、並びにひび割れを観察した。以下の評価基準で画像品質を評価した。
AA:濃く均一なベタ画像が形成されている
A:やや色が薄いが均一なベタ画像を形成されている
B:ベタ画像の一部に、画像がひび割れている部分がある
C:ベタ画像の色が薄くムラが多い、または、ベタ画像に、全体的に画像のひび割れがみられる
【0153】
(印刷画像の耐久性)
得られた加飾物品の画像部を荷重60kg/mかけて底面積9cm×9cmスチールウールで往復し、基材表面の変化を観察した。以下の評価基準で印刷画像の耐久性を評価した。
AA:20往復擦っても画像に大きな変化がない
A:20往復擦って、画像の一部が白っぽくなる
B:20往復以下で画像の一部が剥がれる
C:10往復以下で画像の一部が剥がれる
【0154】
(印刷画像の加工性)
得られた加飾物品をベンダーで90度に折り曲げ、折り曲げた部分の画像の変化を観察した。以下の評価基準で印刷画像の加工性を評価した。
AA:曲げによる画像の微小なひび割れによる白化は観察されなかった
A:白化は観察されないが、拡大鏡で分かる微小なひび割れが観察された
B:白化が観察されたが、剥がれは観察されなかった
C:白化が観察され、画像が割れた部分から剥がれが生じていた
【0155】
【表6】
【0156】
【表7】
【0157】
【表8】
【0158】
【表9】
【0159】
各表に示す通り、各実施例の印刷物(加飾物品)は、印刷画像の画像品質、加工性及び耐久性に優れていた。
【0160】
カチオン性水溶性樹脂を含まずに多価金属塩を含む前処理液を用いた比較例1では、画像品質が実施例1~10に劣っていた。また、加工時に白化が生じた。また、耐久性も悪かった。
表面電荷量の絶対値が5.5meq/gより高いカチオン性水溶性樹脂を含む前処理液が用いられた比較例2及び3では、良好な画像が形成できず、ひび割れも発生した。加工時にも白化が生じた。また、耐久性も悪かった。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂の量がインク全量に対して1.0質量%未満のインクが用いられた比較例4では、画像が滲んでムラができた。また、加工性、耐久性も悪かった。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂の量がインク全量に対して15質量%より多いインクが用いられた比較例5では、画像が薄くなってしまった。また、加工時に白化が生じた。
アニオン性水分散性ウレタン系樹脂を含まないインクが用いられた比較例6では、加工性が悪く、画像品質も実施例1~10に劣っていた。耐久性も悪かった。
カチオン性水溶性樹脂の量が前処理液全量に対して1.0質量%未満の前処理液が用いられた比較例7では、画像が良好に形成できず薄くムラが多くなってしまった。加工時の白化も見られた。耐久性も悪かった。
表面電荷量の絶対値が0.09meq/gより大きいアニオン性水分散性ウレタン系樹脂が用いられた比較例8では、画像が薄くなった。加工時の白化も見られた。耐久性も悪かった。
カチオン性水溶性樹脂の量が20質量%より多い前処理液を用いた比較例9では、インクドットが小さくなり画像が薄く、ひび割れも目立った。加工時のひび割れも目立った。耐久性も悪かった。