IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋電機製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インバータ制御装置 図1
  • 特開-インバータ制御装置 図2
  • 特開-インバータ制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038793
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230310BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20230310BHJP
   H02P 21/04 20060101ALI20230310BHJP
   H02P 21/24 20160101ALI20230310BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P27/06
H02P21/04
H02P21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145695
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諭
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA19
5H505BB04
5H505DD05
5H505EE41
5H505FF02
5H505FF04
5H505HB01
5H505JJ05
5H505JJ06
5H505LL14
5H505LL22
5H505LL24
5H770AA15
5H770BA03
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】インバータの低周波数領域において発生しやすい推定速度の認識誤差による車両衝動を緩和する。
【解決手段】インバータ制御装置10は、回転子の回転周波数である回転子周波数を演算により推定する推定速度演算部11と、回転子周波数の変化量である加減速度を演算する加減速度演算部13と、回転子周波数に基づき、インバータ20が出力する電圧の周波数を指示するインバータ周波数指令を生成するインバータ周波数指令生成部12と、インバータ周波数指令に基づき、電圧指令をインバータ20に出力するトルク制御部14と、を備え、インバータ周波数指令生成部12は、インバータ周波数指令を、加減速度を維持するように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータを制御し、誘導電動機に電流を印加することで該誘導電動機の回転子にすべりを発生させるインバータ制御装置であって、
前記回転子の回転周波数である回転子周波数を演算により推定する推定速度演算部と、
前記回転子周波数の変化量である加減速度を演算する加減速度演算部と、
前記回転子周波数に基づき、前記インバータが出力する電圧の周波数を指示するインバータ周波数指令を生成するインバータ周波数指令生成部と、
前記インバータ周波数指令に基づき、前記インバータが出力する電圧を指示する電圧指令を前記インバータに出力するトルク制御部と、を備え、
前記インバータ周波数指令生成部は、前記インバータ周波数指令を、前記加減速度を維持するように制御することを特徴とする、インバータ制御装置。
【請求項2】
前記インバータ周波数指令生成部は、ブレーキ動作において、前記インバータ周波数指令が閾値を超える場合には、前記インバータ周波数指令を変更させず、前記インバータ周波数指令が前記閾値以下となった場合には、前記インバータ周波数指令を、前記加減速度を維持するように制御することを特徴とする、請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記インバータ周波数指令生成部は、トルク指令が増加した場合には、前記インバータ周波数指令の変化量を増加させ、前記トルク指令が減少した場合には、前記インバータ周波数指令の変化量を減少させることを特徴とする、請求項2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記推定速度演算部は、前記誘導電動機の電流及び電圧を空間ベクトルに変換した電流ベクトル及び電圧ベクトルにより、前記誘導電動機の磁束ベクトルを演算し、前記磁束ベクトル及び前記電流ベクトルから前記誘導電動機のすべり周波数を演算し、前記磁束ベクトルの角周波数及び前記すべり周波数の差分を前記回転子周波数として演算することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車(鉄道車両)に搭載されるインバータを制御するインバータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気車(鉄道車両)のインバータ主回路システムを構成する主電動機は、一般にかご形三相誘導電動機が採用されている。インバータ制御装置は、誘導電動機に配置される速度センサ(例えば、PG(Pulse Generator)センサ)により誘導電動機の回転数を検出することにより、出力する指令に応じて誘導電動機の印加電圧や回転数を制御することができる。しかし、速度センサは電子部品により構成され、保守・点検が必要である。また、速度センサが故障すると誘導電動機を制御できなくなる場合が多いため、速度センサには高信頼の部品が採用され、コストが高くなっていた。
【0003】
そこで、速度センサを使用することなく誘導電動機を制御することが可能な速度センサレス制御を採用するインバータ制御装置が普及した(例えば、特許文献1参照)。速度センサレス制御は高精度のトルク制御により電気車の性能を向上させるだけでなく、速度センサがないことによるコスト削減や、誘導電動機の構造的自由度が大きくなるというメリットがある。そのため、現在では数多くの鉄道車両に速度センサレス制御が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-69895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
速度センサレス制御は、誘導電動機からの速度センサ入力がないため、インバータ制御装置は誘導電動機の回転数を推定しつつインバータを制御しなければならない。誘導電動機の固定子に印加する一次電圧及び電流、並びに固定子からの一次磁束により回転子が回転することで発生するすべりによって得られる二次電流により、誘導電動機の二次磁束及びトルクが得られる。このとき磁束演算及びトルク演算から座標変換によって得られた値から回転子の回転数を推定する。ところが、この一連の動作において検出する電圧や電流に検出誤差が発生すると大きな演算誤差を引き起こし、磁束やトルクの精度が悪化することにより誘導電動機を正常に制御できなくなるという欠点がある。
【0006】
また、速度センサレス制御では、固定子を制御するインバータ周波数と回転子を制御するロータ周波数との差、すなわちすべりを認識させることで二次磁束成分となる励磁電流及びトルク電流を認識し、d軸電流(励磁電流)、q軸電流(トルク電流)として回転子の回転速度を推定し、インバータの出力電圧ベクトルとして誘導電動機を制御する。
【0007】
しかし、上述したように、回転子が回転することにより検出される誘起電圧や電流に検出誤差が発生すると演算誤差を引き起こし、すべりにより得られる2次磁束成分によって演算する車両の推定速度を正常に認識することが困難となる。特に、インバータの低周波領域となる、車両が停止しようとする状況では、推定速度の誤認識により車両衝動が発生することがある。
【0008】
この改善策として、誘導電動機のすべりにより得られる2次磁束成分を精度良く捉えるために、誘導電動機に入力させる励磁電流を大きくして誘導電動機の誘起電圧を大きくさせることが考えられる。しかし、誘導電動機に対し励磁電流を大きくすると、磁気飽和が発生し、誘導電動機の回路定数に変化が生じ、車両の推定速度演算の誤差が拡大することがある。
【0009】
また、推定速度の認識誤差は誘導電動機の電圧や電流の検出誤差や、誘導電動機の温度変化による等価回路定数の変化により発生すると考えられている。また、誘導電動機の制御にはデッドタイムを必要とし、この期間に電圧誤差が発生する。デッドタイムによる電圧誤差は電流にひずみを生じさせ、トルクリプルにより車両衝動を誘発する。これらを改善するには、誘導電動機温度の常時監視による誘導電動機の等価回路定数最適化や、デッドタイムによる電圧誤差分を補正した最適化制御により改善できるものと考えられる。しかし、これらの複合的要素が絡むことに対応するアルゴリズムを確立するには非常に困難である。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、インバータの低周波領域において発生しやすい推定速度の認識誤差による車両衝動を緩和することが可能なインバータ制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るインバータ制御装置は、インバータを制御し、誘導電動機に電流を印加することで該誘導電動機の回転子にすべりを発生させるインバータ制御装置であって、前記回転子の回転周波数である回転子周波数を演算により推定する推定速度演算部と、前記回転子周波数の変化量である加減速度を演算する加減速度演算部と、前記回転子周波数に基づき、前記インバータが出力する電圧の周波数を指示するインバータ周波数指令を生成するインバータ周波数指令生成部と、前記インバータ周波数指令に基づき、前記インバータが出力する電圧を指示する電圧指令を前記インバータに出力するトルク制御部と、を備え、前記インバータ周波数指令生成部は、前記インバータ周波数指令を、前記加減速度を維持するように制御することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係るインバータ制御装置において、前記インバータ周波数指令生成部は、ブレーキ動作において、前記インバータ周波数指令が閾値を超える場合には、前記インバータ周波数指令を変更させず、前記インバータ周波数指令が前記閾値以下となった場合には、前記インバータ周波数指令を、前記加減速度を維持するように制御することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係るインバータ制御装置において、前記インバータ周波数指令生成部は、トルク指令が増加した場合には、前記インバータ周波数指令の変化量を増加させ、前記トルク指令が減少した場合には、前記インバータ周波数指令の変化量を減少させることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係るインバータ制御装置において、前記推定速度演算部は、前記誘導電動機の電流及び電圧を空間ベクトルに変換した電流ベクトル及び電圧ベクトルにより、前記誘導電動機の磁束ベクトルを演算し、前記磁束ベクトル及び前記電流ベクトルから前記誘導電動機のすべり周波数を演算し、前記磁束ベクトルの角周波数及び前記すべり周波数の差分を前記回転子周波数として演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インバータの低周波領域において発生しやすい推定速度の認識誤差による車両衝動を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置を含む、インバータ主回路システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置の制御を示す状態遷移図である。
図3】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置における停止時の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、周波数と角周波数は単位が違うだけで相互に変換が可能であり、演算の際にいずれを用いてもよいため、本明細書では周波数という表記に角周波数も含めるものとする。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置を含む、インバータ主回路システム1の構成例を示す。インバータ主回路システム1は、インバータ制御装置10と、インバータ20と、電流検出器30と、電圧検出器40と、誘導電動機50と、を備える。
【0019】
インバータ20は、インバータ制御装置10から入力された、誘導電動機50への出力電圧を指示する電圧指令vに応じた電圧vを誘導電動機50に印加する。
【0020】
電流検出器30は、誘導電動機50に流れる電流iを検出し、検出結果をインバータ制御装置10に出力する。
【0021】
電圧検出器40は、誘導電動機50に印加される電圧vを検出し、検出結果をインバータ制御装置10に出力する。
【0022】
インバータ制御装置10は、インバータ20を制御し、誘導電動機50に電流を印加することで該誘導電動機50の回転子にすべりを発生させる。また、インバータ制御装置10は、速度センサレス制御を行う。すなわち、速度センサを用いずに、演算により誘導電動機50の回転子の回転周波数(以下、「回転子周波数」という)ωを求め、トルク指令Tに従って誘導電動機50のトルク制御を行う。回転子周波数ωは、車両の推定速度を意味する。誘導電動機50のトルクが車両の車輪軸に伝えられることにより、車両を加減速させることができる。インバータ制御装置10は、推定速度演算部11と、インバータ周波数指令生成部12と、加減速度演算部13と、トルク制御部14と、を備える。
【0023】
推定速度演算部11は、回転子周波数ωを演算により推定し、インバータ周波数指令生成部12と、加減速度演算部13に出力する。推定速度演算部11は、例えば、電流検出器30により検出された電流i、及び電圧検出器40により検出された電圧vを用いて回転子周波数ωを演算する。
【0024】
詳細には、推定速度演算部11は、式(1)により誘導電動機50の磁束ベクトルφを演算する。ここで、Rは誘導電動機50の一次抵抗であり、L,L,Mはそれぞれ誘導電動機50の一次自己インダクタンス、二次自己インダクタンス、相互インダクタンスである。iは、検出又は推定された、誘導電動機50に流れる電流を空間ベクトルに変換した電流ベクトルである。vは、検出又は推定された、誘導電動機50に印可された電圧を空間ベクトルに変換した電圧ベクトルである。
【0025】
【数1】
【0026】
なお、電圧vの代わりに、インバータ制御装置10が出力する電圧指令vを用いてもよい。その場合には、インバータ主回路システム1は電圧検出器40を備えなくてもよい。
【0027】
磁束ベクトルφの角周波数ωは、磁束ベクトルφのd軸成分であるφ2d及び磁束ベクトルφのq軸成分であるφ2qを用いて、式(2)で表される。
【0028】
【数2】
【0029】
また、推定速度演算部11は、磁束ベクトルφ、及び電流検出器30により検出された電流に対応する電流ベクトルiを用いて、式(3)により誘導電動機50のすべり周波数ωscを演算する。
【0030】
【数3】
【0031】
そして、推定速度演算部11は、式(4)に示すように、磁束ベクトルφの角周波数ω及びすべり周波数ωscの差分を、誘導電動機50の回転子周波数ωとして演算する。
【0032】
【数4】
【0033】
加減速度演算部13は、推定速度演算部11により求められた回転子周波数ωの変化量である加減速度dωを演算し、インバータ周波数指令生成部12に出力する。
【0034】
インバータ周波数指令生成部12は、推定速度演算部11により求められた回転子周波数ωに基づき、インバータ20が出力する電圧の周波数を指示するインバータ周波数指令ω を生成し、トルク制御部14に出力する。インバータ周波数指令生成部12は、すべり周波数指令演算部121と、加算部122と、オープンブレーキ周波数指令演算部123と、を備える。
【0035】
すべり周波数指令演算部121は、入力されたトルク指令Tと二次磁束指令φ とに基づき、以下の式(5)を用いてすべり周波数指令ω を生成し、加算部122に出力する。
【0036】
【数5】
【0037】
加算部122は、推定速度演算部11により演算された回転子周波数ωと、すべり周波数指令演算部121により生成されたすべり周波数指令ω と、を加算して、インバータ周波数指令ω を生成し、オープンブレーキ周波数指令演算部123に出力する。
【0038】
オープンブレーキ周波数指令演算部123は、ブレーキ動作において、加算部122により生成されたインバータ周波数指令ω を、加減速度演算部13から入力された加減速度dωを維持するように制御し、トルク制御部14に出力する。詳細については後述する。
【0039】
トルク制御部14は、トルク指令Tと、二次磁束指令φ と、電流検出器30により検出された電流iと、オープンブレーキ周波数指令演算部123により生成されたインバータ周波数指令ω と、を入力する。トルク制御部14は、これらの入力に基づき、誘導電動機50のトルクがトルク指令Tに追従するように、インバータ20が出力する電圧を指示する電圧指令vを生成し、インバータ20に出力する。
【0040】
なお、図1においては、トルク指令Tと二次磁束指令φ とがトルク制御部14に入力される例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、トルク制御部14は、入力されたトルク指令Tに基づき二次磁束指令φ を算出してもよい。
【0041】
つぎに、インバータ制御装置10の制御について説明する。図2は、ブレーキ動作におけるインバータ制御装置10の制御を示す状態遷移図である。インバータ制御装置10は、加算部122が出力するインバータ周波数指令ω が閾値であるオープンブレーキ開始周波数ωSTを超える場合には、通常運転モードで運転する(状態A)。インバータ制御装置10は、加算部122が出力するインバータ周波数指令ω がオープンブレーキ開始周波数ωST以下となった場合には、オープンブレーキモードで運転する(状態B)。オープンブレーキ開始周波数ωSTは予め定められ、例えば3Hzである。
【0042】
図3は、オープンブレーキ周波数指令演算部123の制御を説明する図である。オープンブレーキ周波数指令演算部123は、通常運転モードでは(すなわち、インバータ周波数指令ω がオープンブレーキ開始周波数ωSTを超える場合には)、加算部122から入力されたインバータ周波数指令ω を変更させないでそのままトルク制御部14に出力する。オープンブレーキ周波数指令演算部123は、オープンブレーキモードでは(すなわち、インバータ周波数指令ω がオープンブレーキ開始周波数ωST以下となった場合には)、インバータ周波数指令ω を、オープンブレーキモード開始時における加減速度dωを維持するようにオープンループ制御し、トルク制御部14に出力する。すなわち、オープンブレーキ周波数指令演算部123は、オープンブレーキモードにおいて、直前の通常運転モードと同じ割合でインバータ周波数指令ω を減少させる。
【0043】
従来、インバータ20の低周波領域では、推定速度演算部11で推定した回転子周波数ωに誤差が生じ、その結果インバータ周波数指令ω も誤差が生じることがあった。本発明に係るインバータ制御装置10は、オープンブレーキ周波数指令演算部123及び加減速度演算部13を備え、加減速度演算部13により、回転子周波数ωの精度が高い領域において加減速度dωを事前に演算しておく。そして、回転子周波数ωの精度が保てなくなる速度域(オープンブレーキ開始周波数ωST以下の領域)では、加算部122で生成されたインバータ周波数指令ω をそのまま使用するのではなく、オープンブレーキ周波数指令演算部123により、加減速度dωを維持するようにインバータ周波数指令ω を制御する。これにより、インバータ20の低周波数領域において発生しやすい推定速度の認識誤差による車両衝動を緩和することが可能となる。
【0044】
また、停止位置を調整するために低速度域において、トルク指令Tを変化させる場合がある。オープンブレーキ周波数指令演算部123は、オープンブレーキモード制御中にトルク指令Tが変化した場合、インバータ周波数指令ω を一定の割合で減少させると、車両衝動が発生するおそれがある。そのため、オープンブレーキ周波数指令演算部123は、オープンブレーキモードにおいて、図3の一点鎖線で示すように、トルク指令Tが負の方向に増加(トルク指令Tの絶対値が増加)した場合には、インバータ周波数指令ω の変化量を増加させる。また、図3の点線で示すように、トルク指令Tが負の方向に減少(トルク指令Tの絶対値が減少)した場合には、インバータ周波数指令ω の変化量を減少させる。
【0045】
例えば図3に示すように、インバータ周波数指令ω がオープンブレーキ開始周波数ωSTを下回った時点のトルク指令Tを基準トルク指令TSTとして記憶しておき、オープンブレーキ制御中にトルク指令Tに変化があった場合には、基準トルク指令TSTとの比率により、インバータ周波数指令ω を増減させる。
【0046】
このようにオープンブレーキ周波数指令演算部123が動作することにより、インバータ制御装置10は、車両の動きに合わせてインバータ20を制御することができ、インバータ20の低周波領域においてトルク指令Tが変化した場合においても、車両衝動を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、速度センサレス制御を行う電気車に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 インバータ主回路システム
10 インバータ制御装置
11 推定速度演算部
12 インバータ周波数指令生成部
13 加減速度演算部
14 トルク制御部
20 インバータ
30 電流検出部
40 電圧検出部
121 すべり周波数指令演算部
122 加算部
123 オープンブレーキ周波数指令演算部
図1
図2
図3