(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003880
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】トマト又はレモンの風味増強剤及び風味増強方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20230110BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230110BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20230110BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20230110BHJP
A23L 13/50 20160101ALN20230110BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L19/00 Z
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105234
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】神崎 理子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
【テーマコード(参考)】
4B016
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG02
4B016LG11
4B016LG16
4B042AC03
4B042AD20
4B042AD39
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK11
4B047LB02
4B047LF01
4B047LF04
4B047LG40
4B047LP01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するための風味増強剤及び風味増強方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するため、ルイボスを含有することを特徴とするトマト又はレモンの風味増強剤、及び、トマト又はレモンにルイボスを添加することを特徴とするトマト又はレモンの風味増強方法を提供する。本発明の風味増強剤及び風味増強方法によれば、ルイボスを添加することにより、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイボスを含有することを特徴とする、トマト又はレモンの風味増強剤。
【請求項2】
トマト又はレモンに、ルイボスを添加することを特徴とする、トマト又はレモンの風味増強方法。
【請求項3】
トマト及びルイボスを含有することを特徴とする、トマト加工食品。
【請求項4】
レモン及びルイボスを含有することを特徴とする、レモン加工食品。
【請求項5】
食肉、トマト又はレモン、及びルイボスを含有することを特徴とする、食肉加工食品。
【請求項6】
前記トマト又は前記レモンは、加熱されたものであることを特徴とする、請求項5に記載の食肉加工食品。
【請求項7】
食肉に、トマト又はレモン、及びルイボスを添加する工程、を含むことを特徴とする、食肉加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト又はレモンの風味増強剤及び風味増強方法に関するものである。また、本発明は、トマト又はレモンの風味が増強されたトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品の風味を向上するための方法が種々検討されている。例えば、特許文献1には、甘味料の1種であるスクラロースを果汁・果肉含有食品に添加配合することによってフルーツの風味が引き出され、フルーツ感やフレッシュ感が向上した果汁若しくは果肉含有食品が開示されている。また、特許文献2には、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することで、野菜又は野菜を使用した食品の風味の向上方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-135062号公報
【特許文献2】特開2013-009656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載された発明は、甘味料であるスクラロースを添加するため、食品本来の味とは異なる人工的な甘さが付与されるという問題がある。
そこで、本発明の課題は、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するための風味増強剤及び風味増強方法を提供することである。
また、本発明の課題は、トマトの風味又はレモンの風味が増強されたトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品及びそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、ルイボスを用いることによって、トマト、レモン又は食肉の本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を官能的に増強できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下のトマト又はレモンの風味増強剤及び風味増強方法、トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品及びその製造方法である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明のトマト又はレモンの風味増強剤は、ルイボスを含有することを特徴とする。
この風味増強剤によれば、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を官能的に増強することができる。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のトマト又はレモンの風味増強方法は、トマト又はレモンに、ルイボスを添加することを特徴とするものである。
この風味増強方法によれば、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を官能的に増強することができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明のトマト加工食品は、トマト及びルイボスを含有することを特徴とするものである。
このトマト加工食品によれば、トマト本来の味を維持しつつ、トマトの風味が官能的に増強されたトマト加工食品を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のレモン加工食品は、レモン及びルイボスを含有することを特徴とするものである。
このレモン加工食品によれば、レモン本来の味を維持しつつ、レモンの風味が官能的に増強されたレモン加工食品を提供することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工食品は、食肉、トマト又はレモン、及びルイボスを含有することを特徴とするものである。
この食肉加工食品によれば、食肉、トマト又はレモンの本来の風味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味が官能的に増強された食肉加工食品を提供することができる。
【0011】
本発明の食肉加工食品の一実施態様によれば、トマト又はレモンは加熱されたものであることを特徴とする。
トマトやレモンを加熱調理すると風味が弱くなることから、加熱されたトマト又はレモンを含有する食肉加工食品では、トマト又はレモンの風味を官能的に増強するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工食品の製造方法は、食肉に、トマト又はレモン、及びルイボスを添加する工程、を含むことを特徴とするものである。
この食肉加工食品の製造方法によれば、食肉、トマト又はレモンの本来の風味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味が官能的に増強された食肉加工食品を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するための風味増強剤及び風味増強方法を提供することができる。
また、本発明によれば、トマトの風味又はレモンの風味が増強されたトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品及びそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ルイボスの水性抽出物の添加によるトマトの香気成分への影響を示すグラフである。
【
図2】トマトソースの味覚センサーの測定結果において、ルイボスの水性抽出物の添加による影響を示すグラフである。
【
図3】ルイボスの水性抽出物の添加によるレモンの香気成分への影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のトマト又はレモンの風味増強剤及び風味増強方法、トマト又はレモンの風味が増強されたトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品及びそれらの製造方法について詳細に説明する。なお、実施態様に記載する事項については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、同様の効果を奏する限り、これらに限定されるものではない。
【0016】
<風味増強剤>
本発明のトマト又はレモンの風味増強剤は、ルイボスを含有することを特徴とするものである。ルイボスは、食品の本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味(香り、味)を増強するという作用効果がある。具体的には、食品にルイボスを添加しても、味覚センサー(味認識装置TS-5000Z、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー)では、ほとんど変化しないが、官能試験では、トマト又はレモンの風味を強く増強するという作用が認められる。これは、ルイボスの添加により発生する揮発性成分(例えば、テルペン類など。)が人間の嗅覚に作用して、トマト又はレモンの香りや味を強く感じさせていると推察される。つまりは、トマト又はレモンの風味(香り、味)を増強するという本発明の作用効果は、官能的に強く感じる風味であって、味覚センサーなどにより示されるものではない。
さらには、本発明のトマト又はレモンの風味増強剤によると、新鮮なグリーンの香りや、トマトやレモンの酸味も強く感じられ、トマト加工食品やレモン加工食品のフレッシュ感を向上するという効果も認められる。
【0017】
本発明の風味増強剤は、トマト又はレモンの風味の特徴成分となる香気成分中のテルペン類を増強するという特徴を有する。テルペン類とは、イソプレンを構成単位とする炭化水素で、植物や昆虫、菌類などによって作り出される生体物質である。イソプレン単位の数に応じて、それぞれモノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セステルテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)と呼ばれる。モノテルペンはバラや柑橘類のような芳香を持ち、香水などにも多用される。例えばリモネンはレモンなど柑橘類に含まれる香気成分であり、溶剤や接着剤原料などとしても利用される。
【0018】
トマトの風味の特徴成分となるテルペン類としては、例えば、β-イオノン、フェニルエチルアルコール、TRANS-ゲラニルアセトン、ネロール、β-ダマスコン、シトロネロール、ゲラニアール、α-テルピネオール、サリチルアルデヒド、ネラール、フェニルアセトアルデヒド、β-シクロシトラール、イソゲラニアール、リナロール、イソホロン、β-フェランドレン、リモネン、(4Z,6E)-アロオシメンなどが挙げられる。
【0019】
レモンの風味の特徴成分となるテルペン類としては、例えば、α-テルピネオール、シネオール、リモネンなどが挙げられる。
【0020】
なお、本明細書における香気成分の測定は、例えば、ダイナミックヘッドスペース法による香気分析法を用いて測定することができる。詳細には、テナックス捕集菅を加熱脱着装置に導入し、気化した香気成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)にて測定することができる。
【0021】
本発明の風味増強剤の用途は、トマト又はレモンを含有する食品であれば、特に制限されないが、例えば、トマトを含有するトマト加工食品、レモンを含有するレモン加工食品に利用することができる。また、トマト又はレモンを含有する食肉加工食品にも好適に利用することができる。本発明の風味増強剤を添加することにより、トマト又はレモンを含有する食品の本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強することができる。なお、トマト加工食品、レモン加工食品、食肉加工食品については、後述する。
【0022】
次に、本発明で用いるルイボスについて、詳細に説明する。
[ルイボス]
ルイボス(学名:Aspalathus linearis)は、南アフリカ共和国北部セダルバーグ山脈一帯で生産されるマメ科のアスパラトゥス属の植物であり、飲料に使用される素材としては、通常、葉や枝が用いられる。ルイボスは、その茶葉はほのかに甘みがあり、フラボノイド(ポリフェノール)やミネラルを豊富に含み、カフェインを含まず、また、含まれるタンニンの濃度が非常に低いという特徴がある。
【0023】
使用するルイボスの形態は本発明の効果を奏する限り、特に限定はされない。例えば、花、茎、葉、根茎、根皮、根、種子又は全草等を乾燥して粉砕し、粉末としてもよいし、抽出物として用いることもできる。また、葉、茎等を発酵処理したものでもよい。
【0024】
発酵処理は、葉、茎等のルイボスの原料を細かく細断し、小高い丘状に積み上げ、水分を与えて6~8時間程度放置することにより行われる処理であり、葉を発酵すると、緑色から赤褐色へと変色する。発酵処理したルイボスは市場から入手しやすく、コスト面、工業面で利点を有する。一方、非発酵のルイボスを使用することにより、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するという効果や、フレッシュ感を向上するという効果をより一層発揮することができる。
【0025】
抽出物とは、例えば、花、茎、枝、葉、根茎、根皮、根、種子又は全草等から溶媒抽出、超臨界流体抽出、水蒸気蒸留等の蒸留法、圧搾等の周知の抽出方法により抽出後、周知のろ過方法によりろ過して得られる、ろ液に含まれた成分をいう。当該抽出物は抽出・ろ過により得られる物であればよく、揮発性成分、不揮発性成分、また、乾固により構造が変化する成分を含んでよい。また、その形態も液体、固体いずれも使用可能である。なお、抽出物の調製に使用するルイボスの部位としては葉、茎、枝が好ましい。
【0026】
抽出処理に使用するルイボスは、抽出効率を高めるという観点から乾燥物であることが好ましい。乾燥方法としては特に限定されないが、例えば、天日干し、風乾、加熱乾燥、真空乾燥、気流乾燥等が挙げられる。また、ルイボスは、抽出処理の前に粗く破砕することが好ましい。破砕方法としては特に限定されないが、例えば、一軸型破砕機や二軸型破砕機等の破砕機を用いて破砕することができる。なお、抽出効率を高めることができるため、抽出の前処理として乾燥、粗破砕を行うことがより好ましい。
【0027】
ルイボスの抽出に用いる溶媒の種類は特に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、エーテル類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、これらの1種、又は2種以上を混合して用いることができる。なお、上記の抽出溶媒のうち、特に、水、エタノール又はこれらの混合物が好ましい。さらに、そのまま食品に添加することが可能であり、使いやすいという観点から、水により抽出した水性抽出物が特に好ましい。ルイボスの水性抽出物を用いた場合、トマト、レモン又は食肉本来の味を維持しつつ、トマトやレモンの味や香りといった風味を向上させることができる。
【0028】
一方、エタノール含有溶媒を抽出に使用することにより、腐敗が生じにくいエタノール抽出物を得ることができる。このエタノール抽出物は、製造過程において、抽出液の濃縮時間が短い、抽出後の容器の洗浄性に優れる等の利点を有する。なお、エタノール含有溶媒としては、水とエタノールの混合溶媒が好ましく、この混合溶媒中のエタノールの含有量は、1~99体積%が好ましく、20~80体積%がさらに好ましく、40~60体積%が特に好ましい。
【0029】
抽出温度は、抽出溶媒の種類により適宜設定することができる。水で抽出する場合は、好ましくは5~100℃であり、より好ましくは30~98℃であり、さらに好ましくは60~95℃である。エタノール含有溶媒で抽出する場合は、好ましくは5~60℃であり、より好ましくは10~40℃である。抽出時間は適宜設定することができるが、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは10分間以上であり、さらに好ましくは30分間以上である。抽出時間の上限は特に限定されないが、水で抽出する場合には、抽出液が腐敗しないように、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは3時間以内であり、さらに好ましくは2時間以内である。なお、エタノール含有溶媒で抽出する場合には、作業日数を考慮して適宜設定することができ、好ましくは1ヶ月以内、より好ましくは1週間以内である。
【0030】
抽出工程における抽出溶媒の使用量は、例えば、ルイボスの重量に対して1~1000倍量である。また、最適な溶媒量は溶媒の種類に応じて適宜設定され、水の場合には、ルイボスの重量に対して、好ましくは10~500倍量であり、より好ましくは20~300倍量である。エタノール含有溶媒の場合には、ルイボスの重量に対して、好ましくは5~500倍量であり、より好ましくは10~300倍量である。
【0031】
ルイボスと抽出溶媒の混合物は、ろ過によりルイボス抽出液と残渣に分離される。ろ過工程では、目開きが0.05~5mmの範囲の篩いを複数種類使用し、目開きの大きい篩いから小さい篩いの順にろ過することが好ましい。最後の篩いの目開きは、0.05~0.2mmであることが好ましい。
【0032】
本発明で用いるルイボスは、ルイボス抽出物を含む粉末組成物としてもよい。粉末組成物とすることにより、流通や計量等の取扱い性に優れるという利点がある。粉末組成物は、ルイボス抽出物をエキス分として例えば、0.1~99重量%、賦形剤を1~99.9重量%含有することができる。なお、エキス分とは、ろ過により得られたルイボス抽出液を乾固することにより残った残留物である。粉末組成物中におけるルイボス抽出物のエキス分の含有量は、好ましくは30重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上である。一方、粉末組成物の固結防止や、流動性の向上の観点から、好ましくは90重量%以下であり、特に好ましくは70重量%以下である。
【0033】
賦形剤とは、ルイボス抽出物のエキス分を粉末状態に維持するために添加される不活性の添加剤であり、例えば、デキストリン、でんぷん、乳糖等が挙げられる。用途と必要に応じて1又は2種以上の賦形剤を使用することができる。
【0034】
粉末組成物は、ルイボス抽出液に賦形剤を添加後、このルイボス抽出液を乾燥することにより得ることができる。このとき、賦形剤の添加量を調整することにより、粉末組成物中のルイボス抽出物のエキス分含量を調整することができる。なお、賦形剤を添加する前にルイボス抽出液を濃縮することが好ましい。濃縮工程を設けることにより、効率的に乾燥することができる。乾燥方法としては、公知の乾燥手段により行えばよいが、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。なお、凍結乾燥等で処理された場合等、必要に応じて粉砕処理を行って粉末化してもよい。
【0035】
本発明の風味改善剤の形態は、流通や使用の態様に合わせて適宜設定されるものであり、例えば、ルイボスの乾燥茶葉、ルイボスの植物体の粉砕物、ルイボスの抽出液、ルイボス抽出物の粉末組成物、当該粉末組成物の顆粒剤又は錠剤などが挙げられる。
【0036】
<風味増強方法>
本発明の風味増強方法は、トマト又はレモンに、ルイボスを添加することを特徴とするものである。なお、ルイボスについては、<風味増強剤>の項で説明したとおりである。
ルイボスの添加量としては、特に制限されないが、例えば、未希釈物及び未濃縮物のトマト又はレモン100質量部に対して、ルイボス抽出物のエキス分として0.001質量部以上、0.5質量部以下である。なお、「未希釈物及び未濃縮物」は、100%という意味であり、濃縮還元などの操作したものを含む。下限値として、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上である。上限値として、好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部以上の場合、トマト又はレモンの本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するという本発明の効果を一層発揮する。0.005質量部以下の場合、トマト又はレモンの本来の味を強く感じることができる。
【0037】
<トマト加工食品又はレモン加工食品>
本発明のトマト加工食品又はレモン加工食品は、トマト又はレモンとルイボスとを含む加工食品であれば、特に限定されるものではない。
トマト加工食品としては、例えば、トマトケチャップ、トマトソース、ピザソース、トマトジュース、トマトピューレ、乾燥トマト、トマトの水煮缶詰等がある。
レモン加工食品としては、例えば、ドレッシング、タレ、レモネード、レモンスカッシュ、レモンタルト、レモンゼリー、はちみつレモン、レモン飲料、レモン濃縮液等がある。
【0038】
本発明のトマト加工食品又はレモン加工食品において、トマト又はレモンは、加熱されたものであることが好ましい。トマトやレモンを加熱調理すると風味が弱くなることから、加熱されたトマト又はレモンを含有する食肉加工食品では、トマト又はレモンの風味を官能的に増強するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0039】
さらに、本発明のトマト加工食品又はレモン加工食品において、トマト又はレモンは、ルイボスと混合した状態で加熱されたものであることが好ましい。トマト又はレモンを、ルイボスと混合した状態で加熱することにより、加熱による風味の低下を一層抑制することができる。
【0040】
また、本発明のトマト加工食品や、本発明のレモン加工食品は、トマト又はレモンを主原料とする加工食品だけではなく、別の加工食品の原料として使用される場合や、別の加工食品の調味料やタレとして使用される場合も含まれる。例えば、別の加工食品の原料として使用される場合としては、中華まんの餡等が挙げられ、別の加工食品の調味料やタレとして使用される場合としては、食肉を主原料とする食肉加工食品の調味料やタレなどが考えられる。食肉加工食品のソースとしては、例えば、ハンバーグ、ミートボールやサラダチキン等のソース等が挙げられる。なお、食肉加工食品の詳細については、後述する。
【0041】
[トマト]
本発明で用いるトマトは特に限定されず、トマトそのものを用いてもよいし、トマトの水分量を調整するために加水したものでもよい。トマトとは、学名がSolanum lycopersicumであり、南アメリカのアンデス山脈高原地帯(ペルー、エクアドル)原産のナス科ナス属の植物である。日本名としては、「トマト」は、蕃茄、唐柿、赤茄子、小金瓜、珊瑚樹茄子等が知られている。トマトは、世界中で約9000種類、日本では品種登録されているものも含めて約150種類程度のものがあり、食用とされるものであれは、品種、大小の形状等に拘わらず使用することが可能である。トマトは、色による分類ではピンク系と赤系と緑系に大別される。ピンク系トマトの果実はピンク色を呈し、赤系トマトの果実は濃い赤やオレンジ色を呈する。トマトは、カロテノイドの1種であるリコピン及びβ-カロテンを包含し、それ以外に様々なビタミン、ミネラルを包含する。本発明にあっては、原料としてこれらのトマトを使用する。
【0042】
本発明で用いるトマトの状態は、特に限定されるものではなく、例えば、保存、解凍、整形したものでもよい。また、これらのトマトは、1種類でもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらにトマトの形状を加工する処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カット、スライス、ほぐす、裂く、絞る等でもよい。また、トマトによっては、小塊等原形の形態そのままであってもよい。加工処理されたトマトの形状は、特に限定されるものではない。トマトの形状の具体例としては、例えば、液体状、ペースト状、ピューレ状、ミンチ状、ブロック状、シート状、チップ状、バー状、くさび形形状、不定形乱切り状等が挙げられる。
【0043】
ナス科の野菜であるトマトの香気成分は、400以上の化合物が確認されている。主なものとしては2-メチル-1-ブタノール、ヘキサノール、トランス-2-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、リナロール、6-メチル-5-ヘプテン-2-オール、トランス-2-ヘキセナール、シス-3-ヘキセナール、ベンズアルデヒド、2-フェニルアセトアルデヒド、α-シトラール(ゲラ二アール)、シス-シトラール(ネラール)、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、β-イオノン、サリチル酸メチル、2-イソブチルチアゾール、ブチロラクトン等がある。フレッシュトマトの香気に大きく寄与しているものとしては、シス-3-ヘキセナール(新鮮なグリーンの香り)、ヘキセナール(草様の香り)、1-オクテン-3-オン(マッシュルーム様の香り)、メチオナール(ポテト様の香り)、1‐ペンテン-3-オン(グリーンな香り)、3-メチルブタナール(不快臭)等がある。
【0044】
[レモン]
本発明に用いられるレモンは特に制限されず、レモンそのものを用いてもよいし、レモンの水分量を調整するために加水したものを用いてもよい。レモンとは、学名がCitrus limonであり、ミカン科ミカン属の常緑低木、またはその果実のことである。柑橘類の一つであり、中でも主に酸味や香りを楽しむ、いわゆる香酸柑橘類に属するものである。食用とされるものであれば、品種、大小の形状等にかかわらず使用することが可能である。本発明にあっては、原料としてこれらのレモンを使用する。
【0045】
本発明で用いるレモンの状態は、特に限定されるものではなく、例えば、保存、解凍、整形したものでもよい。また、これらのレモンは、1種類でもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらにレモンの形状を加工する処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カット、スライス、ほぐす、裂く、絞る等でもよい。また、レモンによっては、小塊等原形の形態そのままであってもよい。加工処理されたレモンの形状は、特に限定されるものではない。レモンの形状の具体例としては、例えば、液体状、ペースト状、ピューレ状、ミンチ状、ブロック状、シート状、チップ状、バー状、くさび形形状、不定形乱切り状等が挙げられる。
【0046】
柑橘果実であるレモンの香気成分は、クマリン類まで含めると200近い化合物が確認されている。特徴的なものとしては、シトラールとその関連化合物(ネリルアセテート、ゲニルアセテート、ネロール、ゲラニオール)や、β-ピネーネ、β-ビサボレン、α-ベルガモテネ等のテルペン類や、メチルエピジャスモーネ等がある。レモンの香気成分の経時的な変化によるレモンの香気の劣化については、初期のフルーティー感やフレッシュ感ではシトラールが関係しており、変敗や酸敗等による劣化臭ではテルペン類が関係していると言われている。
【0047】
<食肉加工食品>
本発明の食肉加工食品は、食肉、トマト又はレモン、及びルイボスを含有することを特徴とするものである。「トマト又はレモン」とは、トマト又はレモンのどちらか一方が含まれていればよい、という意味であり、「及びルイボス」とは、ルイボスを必ず含むという意味である。つまり、本発明の食肉加工食品は、食肉、トマト及びルイボスを含む食肉加工食品であるか、又は、食肉、レモン及びルイボスを含む食肉加工食品であることを意味する。なお、本発明の食肉加工食品において、トマト及びレモンについては、どちらか一方を含有する場合に、他方の含有を排除することを意味するものではない。例えば、食肉、トマト及びルイボスを含有する本発明の食肉加工食品は、レモンを含有することができ、また、食肉、レモン及びルイボスを含有する本発明の食肉加工食品は、トマトを含有することができる。
【0048】
本発明の食肉加工食品に使用されるトマト又はレモンについては、上記の<トマト加工食品又はレモン加工食品>の項に記載した事項を準用する。
【0049】
本発明の食肉加工食品は、トマト又はレモンを含有するものであれば特に制限されないが、例えば、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、サラダチキン、ミートソース、ビーフシチューなどが挙げられる。
【0050】
本発明の食肉加工食品は、食肉、トマト又はレモン、及びルイボスが別々の態様で1つの食肉加工食品を形成しているものであってもよい。例えば、食肉については、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、サラダチキン等とし、トマト又はレモン、及びルイボスについては、トマト又はレモンとルイボスとを含有したソース等とする態様であってもよい。
また、本発明の食肉加工食品は、ミートソースやビーフシチューなどのように、食肉と、トマト又はレモンとルイボスが混合されたものであってもよい。
【0051】
[食肉]
本発明で用いる食肉は特に限定されない。例えば、家禽、家畜、野生鳥獣(狩猟肉、ジビエ)、魚類、魚介類、海洋哺乳類等でもよい。入手のしやすさから家禽、家畜、魚類、魚介類が適しており、より具体的には、鶏、鴨、七面鳥、牛、豚、羊、馬、サンマ、マグロ、イカ、タコ等が挙げられる。野生鳥獣の具体例としては、例えば、猪、鹿、熊等が挙げられる。海洋哺乳類の具体例としては、例えば、クジラが挙げられる。また、原料とする家禽、家畜、野生鳥獣、魚類、魚介類、海洋哺乳類の部位としては、特に限定されるものではなく、例えば、肉、皮、軟骨、スジ、内臓等でもよい。
【0052】
本発明の食肉には、食肉以外にも、大豆たんぱく等の植物性たんぱくを混合してもよい。食肉に混合する植物性たんぱくは、植物をそのまま原料として使用しても、当該植物原料に含まれるたんぱく質を食品の素材として高濃度化されたものを使用してもよい。原料となる植物は、たんぱく質を含むものであれば特に制限されないが、例えば大豆や小麦が挙げられる。
【0053】
原料に用いる大豆は、大豆そのものを用いてもよいし、大豆中の水分を調整するために加水したものや、脱脂大豆、大豆たんぱくを用いてもよい。脱脂大豆とは、大豆から油分を抽出して除いたものであり、畜肉と比較して蛋白質の含有量が低く、また、硬めで肉様の食感を有するという特徴を有する食品原料である。また、大豆たんぱくとは、大豆又は脱脂大豆から抽出され、タンパク質濃度を向上したものであり、粉末状、粒状等、形状も問わず、液状である豆乳等も使用可能である。
【0054】
なお、植物性たんぱくは、本発明の食肉加工食品における食肉に添加してもよい。本発明の食肉加工食品中における植物性たんぱくの含有量は、特に限定はされないが、例えば、食肉加工食品に対して、1~80重量%であり、好ましくは5~50重量%である。
【0055】
本発明で用いる食肉原料の状態は、特に限定されるものではなく、例えば、保存、解凍、整形したものでもよい。また、これらの食肉原料は、1種類でもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに食肉の形状を加工する処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カット、スライス、ほぐす、裂く等でもよい。また、食肉原料によっては、小塊等原形の形態そのままであってもよい。加工処理された食肉原料の形状は、特に限定されるものではない。食肉原料の形状の具体例としては、例えば、ミンチ状、ブロック状、シート状、チップ状、バー状、くさび形形状、不定形乱切り状等が挙げられる。
【0056】
[その他の原料]
本発明のトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品には、加工食品の風味等を向上させる調味料を添加してもよい。調味料の具体例としては、例えば、食塩、砂糖、酢、しょう油、味噌、みりん、アミノ酸、肉エキス、野菜エキス等が挙げられる。さらに、調味料に香辛料、着色料、酸化防止剤等を加えて調味処理をしてもよい。その配合についても特に限定はされない。調味料、香辛料、着色料、酸化防止剤等は1種類でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。なお、本発明の調味料の添加方法としては、固体や粉末のまま、まぶして添加してもよいし、液体に溶解させて塗布、原料に添加させてもよい。
【0057】
<トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品の製造方法>
(トマト加工食品又はレモン加工食品の製造方法)
本発明のトマト加工食品又はレモン加工食品の製造方法としては、ルイボスを添加する工程を含むものであれば、特に限定はされない。製造工程に加熱工程を含むものであってもよいし、加熱工程を含まないものであってもよい。トマト又はレモンの風味に関する物質は、加熱により失われやすい。従って、加熱工程を含む製造方法の場合には、より顕著に本発明の効果を発揮できる。
【0058】
また、ルイボスの添加するタイミングについては特に限定されないが、加熱工程の前でも後でもよい。トマト又はレモンの加熱工程の前に添加し、ルイボスをトマト又はレモンと混合した状態で加熱することにより、トマト又はレモンの風味の喪失を抑制するため、加熱工程の開始以前に添加されることが好ましい。なお、トマト又はレモンの加熱工程の後に添加した場合でも、ルイボスはトマト又はレモンの風味を増強する作用があるため、本発明の効果を発揮する。
【0059】
ルイボスを添加する方法としては、特に限定されない。ルイボスの固体や破砕した粉末をそのままトマト、又はレモンにまぶして添加してもよいし、調味液等の液体に溶解させて塗布することもできる。また、ルイボスの抽出液にトマト又はレモンを浸漬させて添加することもできる。なお、ルイボスが均等にトマト又はレモンに浸透し、操作も簡便であることから、ルイボスの抽出液にトマト又はレモンを浸漬させて添加することが好ましい。
【0060】
(食肉加工食品の製造方法)
本発明の食肉加工食品の製造方法としては、食肉に、トマト又はレモン及びルイボスを添加する工程を含むものであれば、特に限定はされない。製造工程に加熱工程を含むものであってもよいし、加熱工程を含まないものであってもよい。トマト又はレモンの風味に関する物質は、加熱により失われやすいので、加熱工程を含む製造方法の場合には、より顕著に本発明の効果を発揮できる。また、トマトやレモン、ルイボスを添加するタイミングは特に限定されないが、加熱工程によるトマトやレモンの風味の喪失を抑制するため、トマトやレモンの加熱工程の開始以前にルイボスを添加することが好ましい。また、食肉やトマト、レモン、ルイボスについての加熱工程は別々に施されてもよく、例えば、加熱工程が施された食肉に、トマトやレモン、ルイボスを加えてから、再度加熱工程を施してもよい。
【0061】
食肉加工食品にトマトやレモン、ルイボスを添加する方法としては、特に限定されない。トマトやレモンをそのままや、トマトやレモンを刻んだ状態にしたり、調味液等の液体にしたりして添加してもよい。また、ルイボスにおいても、ルイボスの固体や破砕した粉末をそのまま食肉にまぶして添加してもよいし、トマト、又はレモンにまぶしたものを食肉に添加してもよいし、調味液等の液体に溶解させて塗布することもできる。また、ルイボスの抽出液にトマトやレモン、食肉を浸漬させて添加することもできる。なお、トマトやレモン、ルイボスが均等に食肉に浸透し、操作も簡便であることから、トマトやレモン、ルイボスの混合液に食肉を浸漬させて添加することが好ましい。
【0062】
ルイボスの添加量は対象とする加工食品によっても適宜変更可能であり、特に制限されない。例えば、ルイボスの水性抽出物(抽出条件:ルイボスの重量に対して100~200倍量の沸騰水で1~10分間)としての添加量は、未希釈及び未濃縮のトマト又はレモン100重量部に対して、好ましくは1.0~500重量部であり、より好ましくは、2.0~250重量部であり、さらに好ましくは、5.0~150重量部とすることができる。添加量が1.0重量部より多い場合には、食品の本来の味を維持しつつ、トマト又はレモンの風味を増強するという本発明の効果をより一層発揮することができる。また、500重量部より少ない場合には、トマト又はレモンの本来の味や香りを強く感じることができる。
【0063】
加工食品におけるルイボスのエキス分の含有量は、加工食品によって適宜変更可能であり、特に制限されない。例えば、ルイボスのエキス分の含有量は、トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品に対して、0.001~3.0質量%であり、より好ましくは0.005~2.0質量%であり、さらに好ましくは0.01~1.0質量%であり、特に好ましくは0.02~0.5質量%である。ルイボスのエキス分の含有量が、上記の範囲内であれば、トマトやレモンの本来の味を維持しつつ、トマトやレモンの風味を増強することができる。
【0064】
本発明のトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品で前述以外に用いられる具材は、惣菜の製造に一般的に使用されるものであり、例えば、玉ねぎやキャベツ等の野菜類、調味料、香辛料、増粘多糖類等の食品添加物等を適宜挙げることができる。また、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、ルイボス以外にマスキング効果や呈味感を付与する甘味料、香料、調味料等を添加することができる。さらに、マスキング効果のある物質として、紅茶パウダー、緑茶パウダー等公知の食品素材も併用することができる。
【0065】
本発明では、トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品は公知の方法により調製することができる。例えば、原料の混合(混練)には、一般的なミキサー等により行うことができ、成型は、押し出し式等の一般的な成型方法を使用して行うことができる。
【0066】
また、加熱工程における加熱の方法は特に限定されず、公知の方法で加熱・調理することができる。例えば、スチーム加熱、焼成、ボイル、フライ等を挙げることができる。加熱処理の温度としては、特に制限されるものではなく、好ましくは40~300℃であり、より好ましくは50~200℃であり、さらに好ましくは60~150℃であり、特に好ましくは70~100℃である。さらに、加熱調理の時間も特に制限されるものではなく、好ましくは10~100分であり、より好ましくは20~60分である。なお、これらの加熱処理は、1種類でもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。2種類以上の加熱処理をする場合は、任意の順序で行うことができる。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ルイボスによるトマトの風味向上>
[試験例1:トマト加工食品]
生のトマトにルイボスを添加し、加熱処理することにより、ルイボスを用いたトマト加工食品における、トマトの風味向上効果について検証した。
【0068】
生のトマトをフードプロセッサーで破砕し均一にしたものを生トマト液として調製し、以下の試料を加えた。
(1A)未処理:生トマト液150gをそのまま利用した。
(1B)ルイボス:生トマト液150gにルイボスの水性抽出物75gを加えたものである。
(1C)緑茶:生トマト液150gに緑茶75gを加えたものである。
次に、それぞれ(1A)、(1B)、(1C)の試料を三方袋に真空密封し、ウォーターバスを用いて75℃で30分間、加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで加熱処理されたトマト加工食品を得た。なお、ルイボスの水性抽出物及び緑茶は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0069】
(官能評価)
(1A)、(1B)、(1C)のトマト加熱加工食品に関する官能評価は、以下の基準で訓練されたパネラー4名が食べた時に味覚や嗅覚によりトマト加工食品中におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
【0070】
(点数基準)
未加熱の生のトマトを基準として、上記(1A)、(1B)、(1C)のトマト加工食品の香りや味について、以下の基準に基づきパネラー4名が点数をつけた。
(トマトの香りに関する点数)
・4点:基準と比べて、トマトの香りが大いに向上した。
・3点:基準と比べて、トマトの香りが向上した。
・2点:基準と比べて、トマトの香りがやや向上した。
・1点:基準と比べて、トマトの香りが変わらなかった。
・0点:基準と比べて、トマトの香りが低下した。
(トマトの味に関する点数)
・4点:基準と比べて、トマト味が大いに向上した。
・3点:基準と比べて、トマト味が向上した。
・2点:基準と比べて、トマト味がやや向上した。
・1点:基準と比べて、トマト味が変わらなかった。
・0点:基準と比べて、トマト味が低下した。
【0071】
(評価基準)
上記の点数について、平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎:平均値が3点以上~4点以下
〇:平均値が2点以上~3点未満
□:平均値が1点以上~2点未満
×:平均値が0点以上~1点未満
【0072】
【0073】
表1において、(1A)、(1B)、(1C)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加したトマト加工食品は、未処理のものに比べて、トマトの香りの向上効果が認められ、トマトの味においてもフレッシュトマトの味がして、後味もすっきりしたものとなっており、加熱をしても顕著なトマトの風味向上効果が認められた。また、緑茶を使用したものは、緑茶の味が残り、渋みがするものとなり、トマト本来の味を損なう結果となったが、ルイボスで処理したものは、ルイボスの味が残ることはなく、トマト本来の味を損なうことはなかった。
【0074】
(香気分析)
次に、(1A)、(1B)、(1C)のトマト加工食品について、トマトの香りの特徴成分である、テルペン類成分について、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。なお、ガスクロマトグラフィーによる測定の条件は以下の通りである。
【0075】
GC/MS分析条件:
・香気を捕集した捕集管に、内部標準物質として0.1% benzyl alcohol 1μLを添加した。
・GERSTEL社TDS(熱脱着装置)にてAgilent社GC/MSに導入した。
・GERSTEL社TDS(熱脱着装置)条件は以下の通りであった。
キャリアーガス:高純度ヘリウムガス 21psi
熱脱着温度:210℃
CIS4:-150℃→210℃
CTS2:-150℃→210℃
・Agilent GC/MS
測定条件は、以下の通りとした。
カラム:J&W DB-WAX 60m×0.32mm I.d.×0.25μm
キャリアーガス:高純度ヘリウムガス 21psi at 40℃ 定流量
昇温条件:40℃(hold 2.5min)→5℃/min→210℃<hold>
分析時間:75min
EI測定:マスレンジ20~350
・AREA数値は0.1%benzyl alcohol 1μL(内部標準物質)を1E+09にしたものである。
【0076】
トマトの香りに含有されるテルペン類についての結果を
図1に示した。なお、
図1に示されるピーク面積は、測定対象としたβ-イオノン、フェニルエチルアルコール、TRANS-ゲラニルアセトン、ネロール、β-ダマスコン、シトロネロール、ゲラニアール、α-テルピネオール、サリチルアルデヒド、ネラール、フェニルアセトアルデヒド、β-シクロシトラール、イソゲラニアール、リナロール、イソホロン、β-フェランドレン、リモネン、(4Z,6E)-アロオシメンの合算のピーク面積となっている。ここで、
図1のグラフにおける縦軸は、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積を表している。
【0077】
図1に示されるように、(1A)、(1B)、(1C)を比較した場合、ルイボスの水性抽出物を添加したトマト加工食品は、未処理のもの及び緑茶で処理したものと比べて、トマトの香りの特徴成分と考えられるテルペン類を顕著に増強する効果があることがわかった。
【0078】
[試験例2:トマト加工食品]
生のトマトにルイボスを添加し、加熱加圧処理することにより、ルイボスを用いたトマト加工食品における、トマトの風味向上効果について検証した。
【0079】
生のトマトをフードプロセッサーで破砕し均一にしたものを生トマト液として調製し、以下の試料を加えた。
(2A)未処理:生トマト液150gをそのまま利用した。
(2B)ルイボス:生トマト液150gにルイボスの水性抽出物75gを加えたものである。
(2C)緑茶:生トマト液150gに緑茶75gを加えたものである。
次に、それぞれ(2A)、(2B)、(2C)の試料を三方袋に真空密封し、高圧蒸気滅菌機を用いて120℃で15分33秒間、加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで加熱加圧処理されたトマト加工食品を得た。なお、ルイボスの水性抽出物及び緑茶は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0080】
(官能評価)
(2A)、(2B)、(2C)のトマト加工食品の官能評価は、試験例1と同様の基準及び方法を用いて、トマト加工食品中におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
評価結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
表2において、(2A)、(2B)、(2C)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加したトマト加工食品は、未処理のものに比べて、トマトの香りの向上効果が認められ、トマトの味においてもフレッシュトマトの味がして、後味もすっきりしたものとなっており、加熱加圧加工をしても顕著なトマトの風味向上効果が認められた。また、緑茶を使用したものは、緑茶の味が残り渋みがするものとなり、トマト本来の味を損なう結果となったが、ルイボスで処理したものは、ルイボスの味が残ることはなく、トマト本来の味を損なうことはなかった。
【0083】
[試験例3:トマト加工食品]
生のトマトにルイボスを添加することにより、ルイボスを用いたトマトの風味向上効果について検証した。
【0084】
生のトマトをフードプロセッサーで破砕し均一にしたものを生トマト液として調製し、以下の試料を加えて、三方袋に真空密封した。
(3A)未処理:生トマト液150gをそのまま利用した。
(3B)ルイボス:生トマト液150gにルイボスの水性抽出物75gを加えたものである。
以上から、(3A)、(3B)に対応する未加熱トマト液をそれぞれ得た。なお、ルイボスの水性抽出物は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0085】
(官能評価)
(3A)、(3B)の未加熱トマト液の官能評価は、試験例1と同様の基準及び方法を用いて、未加熱トマト液におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
評価結果を表3に示す。
【0086】
【0087】
表3において、(3A)、(3B)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加した未加熱トマト液は、未処理のものに比べて、トマトの香りの向上効果が認められ、トマトの味においてもフレッシュトマトの味がして、後味もすっきりしたものとなっていた。また、酸味が強く感じられ、味がまとまっていた。よって、生トマトにおいても顕著なトマトの風味増強効果が認められた。
【0088】
[試験例4:トマト加工食品]
加熱後のトマトにルイボスを添加することにより、ルイボスを用いたトマト加工食品における、トマトの風味向上効果について検証した。
【0089】
生のトマトをフードプロセッサーで破砕し均一にしたものを生トマト液として調製し、この生トマト液を90℃30分間加熱したものを加熱トマト液として調製し、以下の試料を加えて、三方袋に真空密封した。
(4A)未処理:加熱トマト液150gをそのまま利用した。
(4B)ルイボス:加熱トマト液150gにルイボスの水性抽出物75gを加えたものである。
以上から、(4A)、(4B)に対応する加熱トマト液をそれぞれ得た。なお、ルイボスの水性抽出物は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0090】
(官能評価)
(4A)、(4B)の加熱トマト液の官能評価は、試験例1と同様の基準及び方法を用いて、加熱トマト液中におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
評価結果を表4に示す。
【0091】
【0092】
表4において、(4A)、(4B)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加した加熱トマト液は、未処理のものに比べて、トマトの香り及び味の増強効果が認められた。また、フレッシュトマトの風味が増強され、後味もすっきりしたものとなっており、顕著なトマトの風味増強効果が認められた。一方、未処理のものは、加熱による特徴的な不快な香気が強く発生していた。ルイボスを添加したものは、加熱による特徴的な不快な香気が抑制され、生トマトに近い風味が増強されているものとなっており、加熱したトマト液であってもルイボスによるトマト風味の増強効果がはっきりと認められた。
【0093】
[試験例5:トマト加工食品]
トマトソースにルイボスを添加し、加熱加圧処理することにより、ルイボスを用いたトマトソース加工食品における、トマトの風味向上効果について検証した。
【0094】
トマトケチャップ105g、中濃ソース22.5g及び醤油7.5gを混ぜ合わせた液状ソース135g(基本ソース)を調製し、以下の試料を加えた。
(5A)未処理:基本ソース135gに水150gを加えたものである。
(5B)ルイボス:基本ソース135gにルイボスの水性抽出物150gを加えたものである。
(5C)緑茶:基本ソース135gに緑茶150gを加えたものである。
次に、それぞれ(5A)、(5B)、(5C)の試料を三方袋に真空密封し、高圧蒸気滅菌機を用いて120℃で4分間、加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで加熱加圧されたトマトソースを得た。なお、ルイボスの水性抽出物及び緑茶は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0095】
(官能評価)
(5A)、(5B)、(5C)のトマトソースに関する官能評価は、基準を基本ソースとした以外は、試験例1と同様の基準及び方法を用いて、トマトソース中におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
評価結果を表5に示す。
【0096】
【0097】
表5において、(5A)、(5B)、(5C)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加したトマトソースは、未処理のものに比べて、トマトの香り及び味の増強効果が認められた。また、フレッシュトマトの風味がして、後味もすっきりしたものとなっていた。すなわち、トマトを使用したケチャップのような加工食品を加熱加圧しても、ルイボスを添加することにより顕著なトマトの風味増強効果が認められた。また、緑茶を使用したものは、緑茶の味が残り、渋みがするものとなり、トマトソース本来の味を損なう結果となったが、ルイボスで処理したものは、ルイボスの味が残ることはなく、トマトソースの本来の味を損なうことはなかった。
【0098】
(味覚センサーによる分析)
(5A)、(5B)、(5C)のトマトソースを、味覚センサーを用いて、分析した。評価項目は、酸味、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、苦味、渋味、旨味コクとした。
味覚センサーによる分析は、味覚センサー(味認識装置TS-5000Z、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー)に各種センサー(AAE、CT0、CA0、C00、AE1)を用い、マニュアルに従って酸味、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、苦味、渋味、旨味コクを測定した。この際、補正処理に用いる基準サンプルとして、(5A)の試料を用いた。結果を
図2に示す。ここで、本分析においては、味覚センサーの渋味刺激及び渋味は、(5A)、(5B)に比べて(5C)で強くなった。この強くなった渋味刺激及び渋味は、処理に使用した緑茶由来の反応であり、緑茶で処理を行うと、トマトソース本来の味を損なうことが分かった。一方、ルイボスで処理した(5B)においては、渋味刺激及渋味が強くなることはないため、ルイボスはトマトソース本来の味を損なうことがないことが分かった。
【0099】
[試験例6:トマト加工食品]
トマトソースにルイボスを添加し、加熱処理することにより、ルイボスを用いたトマトソースにおける、トマトの風味増強効果について検証した。
【0100】
トマトケチャップ105g、中濃ソース22.5g及び醤油7.5gを混ぜ合わせた液状ソース135g(基本ソース)を調製し、以下の試料を加えた。
(6A)未処理:基本ソース135gに水150gを加えたものである。
(6B)ルイボス:基本ソース135gにルイボスの水性抽出物150gを加えたものである。
(6C)緑茶:基本ソース135gに緑茶150gを加えたものである。
次に、それぞれ(6A)、(6B)、(6C)の試料を三方袋に真空密封し、ウォーターバスを用いて75℃で30分間、加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで加熱処理されたトマトソースを得た。なお、ルイボスの水性抽出物及び緑茶は、市販のティーバック(nichie社製)を用いて、茶葉約5.4gに対して1Lの沸騰水で5分間抽出したものを用いて、試料を作成した。
【0101】
(6A)、(6B)、(6C)のトマトソースに関する官能評価は、試験例5と同様の基準及び方法を用いて、トマトソース中におけるトマトの香りやトマト味について評価した。
評価結果を表6に示す。
【0102】
【0103】
表6において、(6A)、(6B)、(6C)を比較すると、ルイボスの水性抽出物を添加したトマトソースは、未処理のものに比べて、トマトの香り及び味の増強効果が認められた。また、フレッシュトマトの風味がして、後味もすっきりしたものとなっていた。トマトを使用したケチャップのような加工食品を加熱しても、ルイボスを添加することにより顕著なトマトの風味増強効果が認められた。また、緑茶を使用したものは、緑茶の味が残り、渋みがするものとなり、トマトソース本来の味を損なう結果となったが、ルイボスで処理したものは、ルイボスの味が残ることはなく、トマトソース本来の味を損なうことはなかった。
【0104】
<ルイボスによるレモンの風味増強>
[試験例7:レモン加工食品]
レモンの絞り果汁にルイボスを添加し加熱処理することにより、ルイボスを用いたレモンの風味増強効果について検証した。
【0105】
レモンの絞り果汁を生レモン液として調製し、以下の試料を加えた。
(7A)未処理:生レモン液160gをそのまま利用した。
(7B)ルイボス:生レモン液160gにルイボスエキスを0.12g加えたものである。なお、(7B)試料におけるルイボスの含有量は、エキス分として0.01質量%であり、生レモン液100質量部に対する添加量は、エキス分として0.01質量部である。
次に、それぞれ(7A)、(7B)の試料を三方袋に真空密封し、ウォーターバスを用いて90℃で30分間加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで(7A)、(7B)に対応する加熱レモン液をそれぞれ得た。なお、ルイボスエキスは、佐藤食品工業株式会社のルイボス茶エキスT-75(エキス分として13.9質量%)を用いて試料を作成した。
【0106】
(官能評価)
(7A)、(7B)の加熱レモン液に関する官能評価は、以下の基準で訓練されたパネラーが食べた時に味覚や嗅覚により加熱レモン液中におけるレモンの酸味やレモンの香りについて行った。
【0107】
(点数基準)
未加熱のレモン果汁を基準として、上記(7A)、(7B)の加熱レモン液について、レモンの香りや味について、以下の基準に基づいて、パネラー4名が点数をつけた。
(レモンの香りに関する点数)
・4点:基準と比べて、レモンの香りが大いに向上した。
・3点:基準と比べて、レモンの香りが向上した。
・2点:基準と比べて、レモンの香りがやや向上した。
・1点:基準と比べて、レモンの香りが変わらなかった。
・0点:基準と比べて、レモンの香りが低下した。
(レモンの酸味に関する点数)
・4点:基準と比べて、レモンの酸味が大いに向上した。
・3点:基準と比べて、レモンの酸味が向上した。
・2点:基準と比べて、レモンの酸味がやや向上した。
・1点:基準と比べて、レモンの酸味が変わらなかった。
・0点:基準と比べて、レモンの酸味が低下した。
【0108】
(評価基準)
上記の点数について、平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎:平均値が3点以上~4点以下
〇:平均値が2点以上~3点未満
□:平均値が1点以上~2点未満
×:平均値が0点以上~1点未満
【0109】
【0110】
表7において、(7A)、(7B)を比較すると、未処理のものは、加熱によりフレッシュな風味がなく、こもった風味となり、レモンの香りもはっきりとした香りではなくなり、ぼやけた香りとなってしまったことが分かった。さらに、加熱した際の特徴的な香気(加熱香気)が強く出ることも分かった。一方、ルイボスエキスを添加した加熱レモン液は、未処理のものに比べて、レモンの酸味を強く感じ、また、生レモン様の香気を感じ、後味もすっきりしていることが分かった。また、未処理の場合には強かった加熱香気を感じることはなかったことから、ルイボスには加熱香気を抑制し、レモンの香味を増強させる効果があることが分かる。つまり、ルイボスはレモンの酸味及び風味を増強し、レモンのフレッシュ感を向上させることが分かる。
【0111】
(香気分析)
次に、(7A)、(7B)の加熱レモン液における、レモンの香りの特徴成分について、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。なお、ガスクロマトグラフィーによる測定の条件は以下の通りである。
<分析・試験方法>
試料約1gとMonoTrap(登録商標)RGC18TD(GLサイエンス製)をヘッドスペースバイアル内にセットし、室温にて4時間静置した。静置後、ヘッドスペースバイアルから取り出したMonoTrap(登録商標)RGC18TDを不活性ガス中で加熱し、有機成分を加熱脱離させ冷却濃縮後、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)によるスキャンモードでの測定を行った。検出された成分については、自動解析による定性処理(ライブラリー検索)を行った。
<使用機器>
加熱脱着装置:GERSTEL製TDU
GC/MS:Agilent製GC7890B+MSD5977A型
ライブラリー:Wiley又はNIST
【0112】
香気分析の結果を
図3に示す。
図3に示されるように、(7A)、(7B)を比較した場合、ルイボスエキスを添加した加熱レモン液である(7B)は、未処理のものである(7A)と比べて、レモンの香りを特徴づける成分物質であるリモネン、シオネール及びα-テルピオネールを顕著に増強する効果があることがわかった。また、この結果は、官能評価の結果を裏付けるものであった。ここで、
図3のグラフにおける縦軸は、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積を表している。
【0113】
[試験例8:レモン加工食品]
レモンの絞り果汁にルイボスを添加することにより、ルイボスを用いた未加熱のレモンにおける、レモンの風味増強効果について検証した。
【0114】
レモンの絞り果汁を生レモン液として調製し、以下の試料を加えた。
(8A)未処理:生レモン液160gをそのまま利用した。
(8B)ルイボス:生レモン液160gにルイボスエキスを0.12g加えたものである。なお、(8B)試料におけるルイボスの含有量は、エキス分として0.01質量%であり、生レモン液100質量部に対する添加量は、エキス分として0.01質量部である。
以上から、(8A)、(8B)に対応する未加熱レモン液をそれぞれ得た。なお、ルイボスエキスは、佐藤食品工業株式会社のルイボス茶エキスT-75(エキス分として13.9質量%)を用いて試料を作成した。
【0115】
(8A)、(8B)の未加熱レモン液に関する官能評価は、試験例7と同様の基準及び方法を用いて、未加熱レモン液中におけるレモンの香りやレモンの酸味について評価した。
評価結果を表8に示す。
【0116】
【0117】
表8において、(8A)、(8B)を比較すると、未処理のものは、未加熱のため、生のレモンの香りを感じた。一方、ルイボスエキスを添加した未加熱レモン液は、未処理のものに比べて、レモンの酸味を強く感じ、また、後味もすっきりしていることが分かった。ルイボスはレモンの酸味及び風味を増強し、レモンのフレッシュ感を向上させることが分かる。
【0118】
[試験例9:レモン加工食品]
加熱後のレモンの絞り果汁にルイボスを添加することにより、ルイボスを用いたレモン加工食品における、レモンの風味増強効果について検証した。
【0119】
レモンの絞り果汁を90℃30分間加熱したものを加熱レモン液として調製し、以下の試料を加えた。
(9A)未処理:加熱レモン液160gをそのまま利用した。
(9B)ルイボス:加熱レモン液160gにルイボスエキスを0.12g加えたものである。なお、(9B)試料におけるルイボスの含有量は、エキス分として0.01質量%であり、生レモン液100質量部に対する添加量は、エキス分として0.01質量部である。
以上から、(9A)、(9B)に対応する加熱レモン液をそれぞれ得た。なお、ルイボスエキスは、佐藤食品工業株式会社のルイボス茶エキスT-75(エキス分として13.9質量%)を用いて試料を作成した。
【0120】
(9A)、(9B)の加熱レモン液に関する官能評価は、試験例7と同様の基準及び方法を用いて、加熱レモン液中におけるレモンの香りやレモンの酸味について評価した。
評価結果を表9に示す。
【0121】
【0122】
表9において、(9A)、(9B)を比較すると、未処理のものはレモンの香りもはっきりとした香りではなくなり、ぼやけた香りとなっていたことが分かった。さらに、加熱香気が強く出ていることも分かった。一方、ルイボスエキスを添加した加熱レモン液は、未処理のものに比べてレモンの酸味を強く感じ、また、生レモンの香気を感じ、後味もすっきりしていることが分かった。また、加熱香気を感じることはなかったことから、加熱したレモンにルイボスを添加するだけでも加熱香気を抑制し、レモンの香味を向上させる効果があることが分かる。つまり、ルイボスを添加するだけでレモンの酸味及び風味を増強し、レモンのフレッシュ感を向上させることが分かる。
【0123】
[試験例10:レモン加工食品]
加熱後のレモンの絞り果汁にルイボスを添加した後、さらに加熱することにより、ルイボスを用いた加熱レモン液における、レモンの風味増強効果について検証した。
【0124】
レモンの絞り果汁を90℃30分間加熱したものを加熱レモン液として調製し、以下の試料を加えた。
(10A)未処理:加熱レモン液160gをそのまま利用した。
(10B)ルイボス:加熱レモン液160gにルイボスエキスを0.12g加えたものである。なお、(10B)試料におけるルイボスの含有量は、エキス分として0.01質量%であり、生レモン液100質量部に対する添加量は、エキス分として0.01質量部である。
次に、それぞれ(10A)、(10B)の試料を、ウォーターバスを用いて90℃で30分間、さらに加熱した。その後、氷水に入れ、30分間冷却処理することで(10A)、(10B)に対応する加熱レモン液をそれぞれ得た。なお、ルイボスエキスは、佐藤食品工業株式会社のルイボス茶エキスT-75(エキス分として13.9質量%)を用いて試料を作成した。
【0125】
(10A)、(10B)の加熱レモン液に関する官能評価は、試験例7と同様の基準及び方法を用いて、加熱レモン液中におけるレモンの香りやレモンの酸味について評価した。
評価結果を表10に示す。
【0126】
【0127】
表10において、(10A)、(10B)を比較すると、未処理のものはレモンの香りもはっきりとした香りではなくなり、ぼやけた香りとなってしまったことが分かった。さらに、加熱香気が強く出ていることも分かった。一方、ルイボスエキスを添加した加熱レモン液は、未処理のものに比べて、レモンの酸味を強く感じ、また、生レモンの香気を感じ、後味もすっきりしていることが分かった。また、加熱香気を感じることはなかったことから、ルイボスには加熱したレモンにルイボスを添加しさらに加熱をしたとしても加熱香気を抑制し、レモンの香味を増強させる効果があることが分かる。つまり、ルイボスはレモンの酸味及び風味を増強し、レモンのフレッシュ感を向上させることが分かる。
【0128】
<製造例1:食肉加工食品(トマト風味ハンバーグ)>
原料として、合挽肉300g、たまねぎ(みじん切り)2分の1個、卵2分の1個、食パン(細断したもの)1枚、牛乳大さじ3、塩コショウ少々を用いて、常法によりハンバーグを作製した。また、原料として、トマト缶400g、ケチャップ大さじ2、ソース大さじ2、バター1片、塩コショウ少々、ルイボスの水性抽出物(試験例1と同様)75gを用いて、常法によりトマトソースを作製した。得らえたハンバーグにトマトソースをかけて、トマト風味ハンバーグを作製した。
得られたトマト風味ハンバーグは、フレッシュなトマトの風味を強く感じた。
【0129】
<製造例2:食肉加工食品(レモン風味サラダチキン)>
原料として、ささみ3枚、塩小さじ1、バジル小さじ1、オリーブオイル大さじ1、レモン汁小さじ2、ルイボスの水性抽出物(試験例1と同様)数滴を袋に入れ、揉み込んだのち、沸騰したお湯に袋ごと投入して、3分間加熱した。その後、火を止めて、1時間放置することにより、レモン風味サラダチキンを得た。
得られたレモン風味サラダチキンは、フレッシュなレモンの風味を強く感じた。
【0130】
以上のことから、本発明のトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品は、トマト又はレモンにルイボスの水性抽出物やルイボスエキスを添加することで、原材料の本来の味を維持しながら、トマトやレモンの味や香りといった風味を向上させることがわかった。また、トマトやレモンにルイボスの水性抽出物やルイボスエキスを添加したのち、加熱処理した場合や、トマトやレモンを加熱後にルイボスの水性抽出物やルイボスエキスを添加した場合や、さらには、トマトやレモンを加熱後にルイボスの水性抽出物やルイボスエキスを添加したのち、再度加熱処理した場合においても、原材料の本来の味を維持しながら、得られた加工食品において、食品の加熱香気を抑制し、トマトやレモンの風味を向上させることがわかった。また、加熱処理においては、加熱温度や加熱時間が様々な加熱条件であっても、原材料の本来の味を維持しながら、得られた加工食品において、食品の加熱香気を抑制し、トマトやレモンの風味を向上させることがわかった。これにより、本発明のトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品の製造方法は、トマトやレモン、食肉など、加工食品における原材料の本来の味を維持しつつ、トマトやレモンの風味が向上したトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品を提供できることがわかった。
本発明によって、食品原料であるトマト又はレモンにルイボスを添加することで、トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品本来の味を保ちながら、トマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品におけるトマト又はレモンの風味向上をすることができる。従って、本発明は、商品価値が向上した様々なトマト加工食品、レモン加工食品又は食肉加工食品を製造、又は保存する際に利用することができる。