(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038833
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】骨髄由来神経保護型ミクログリア様細胞の選択的誘導方法とその利用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20230310BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230310BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230310BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230310BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230310BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230310BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230310BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230310BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230310BHJP
A61K 35/15 20150101ALN20230310BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C12N5/078
A61P25/00 ZNA
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/10
A61P25/04
A61P25/02
A61P21/00
A61P43/00 111
A61K35/28
A61K35/15 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145754
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺島 智也
(72)【発明者】
【氏名】小島 秀人
(72)【発明者】
【氏名】樫 美和子
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BB32
4B065BC01
4B065BD03
4B065BD42
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087CA04
4C087DA32
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA08
4C087ZA16
4C087ZA22
4C087ZA36
4C087ZA94
4C087ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経変性疾患等に神経保護型ミクログリアを利用する治療方法を現実化するために、十分量のミクログリアを容易に及び簡便に得る方法、並びにミクログリア様細胞を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】下記の工程1及び2により神経保護型ミクログリアを製造する。
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M2ミクログリア様細胞の製造方法であって、下記の工程1及び2を含む製造方法;
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
【請求項2】
前記工程1における作用期間が48~120時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程2における作用期間が48~120時間である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程1及び2において作用させるGM-CSF及びIL4の濃度が、20ng/mlより大きく、40ng/ml以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法によって製造された、骨髄単核球由来M2ミクログリア様細胞。
【請求項6】
中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される、請求項5に記載のM2ミクログリア様細胞を含む医薬組成物。
【請求項7】
前記中枢神経疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄由来神経保護型ミクログリア様細胞の選択的誘導方法とその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクログリアとは、神経系での免疫反応に関与する細胞として知られている。ミクログリアには、M1ミクログリア及びM2ミクログリアが存在し、前者は炎症を惹起し、組織や細胞を破壊することが知られ、後者は、炎症を抑制し、組織や細胞を保護することが知られている。また、M1ミクログリアにIL-10やIL-4を作用させることにより、M2ミクログリアとなることが知られている。
【0003】
神経変性疾患等に対して、M2ミクログリアのような神経保護型ミクログリア様細胞を用いて治療することが有効であると考えられる。また、ミクログリアは、大脳皮質から得ることができることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kobashi S,Terashima T,Katagi M,Nakae Y,Okano J,Suzuki Y,Urushitani M,Kojima H.Transplantation of M2-Deviated Microglia Promotes Recovery of Motor Function after Spinal Cord Injury in Mice.Mol Ther.2020 Jan8;28(1):254-265.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
神経変性疾患等に神経保護型ミクログリアを利用する治療方法を現実するためには、十分量のミクログリアを容易に及び簡便に調製できることが必要となるが、自家移植することを前提に、大脳皮質を原料に所定量のミクログリアを得ることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、骨髄に含有される単核球細胞に所定の濃度の成長因子を作用させ、特定の培養方法に供することによって、神経保護型の自家移植可能なミクログリアを容易に誘導できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示す態様の発明を広く包含する。
【0007】
項1 M2ミクログリア様細胞の製造方法であって、下記の工程1及び2を含む製造方法;
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSFを作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
【0008】
項2 前記工程1における作用期間が48~120時間である、上記項1に記載の製造方法。
【0009】
項3 前記工程2における作用期間が48~120時間である、上記項1又は項2に記載の製造方法。
【0010】
項4 工程1及び2において作用させるGM-CSF及びIL4の濃度が、20ng/mlより大きく、40ng/ml以下である、上記項1~項3の何れか1項に記載の製造方法。
【0011】
項5 上記項1~項4の何れか1項に記載の製造方法によって製造された、骨髄単核球由来M2ミクログリア様細胞。
【0012】
項6 中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される、上記項5に記載のM2ミクログリア様細胞を含む医薬組成物。
【0013】
項7 前記中枢神経疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、上記項6に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によると、移植に使用する際に十分な量のM2ミクログリア様細胞を容易に誘導することができる。また、本発明の製造方法にて製造されたM2ミクログリア様細胞は、ALSに代表される神経変性疾患の治療及び/又は予防のために有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは、実施例1における培養手順、及び処理前の骨髄単核球細胞細胞(Day0)及び処理後7日目の分化誘導された細胞(Day7)における透過光写真像(位相差)を示す。
図1Bは、各MethodA、B、及びCにおける培養開始時の骨髄単核球細胞に対する処理後7日目の分化誘導された細胞数(平均)の相対値を示す。**は、p<0.01を示す。#は、p<0.05を示す。
図1Cは、各MethodA、B及びCの処理後7日目の分化誘導された細胞における、GAPDHに対するArg1及びNos2のmRNAの発現量を示す。*は、p<0.05を示す。
【
図2】
図2Aは、Method Cにおける、処理前の骨髄単核球細胞細胞(Day0)及び7日目の分化誘導された細胞(Day7)におけるCD11bのフローサイトメトリーの結果を示す。
図2Bは、Method Cにおける、処理前の骨髄単核球細胞細胞(Day0)及び7日目の分化誘導された細胞(Day7)におけるCD206のフローサイトメトリーの結果を示す。
図2Cは、Method Cにおける、処理前の骨髄単核球細胞細胞(Day0)及び7日目の分化誘導された細胞(Day7)におけるCD86のフローサイトメトリーの結果を示す。
【
図3】
図3Aは、実施例2の実験の概略を示す模式図である。
図3Bは、実施例2の結果を示す。グラフの縦軸は、CTL medium-の際に得られた細胞生存数に対する相対値を表す。*は、p<0.05を示す。n.sは有意差が無かったことを表す。
【
図4】
図4Aは、実施例3における、行動学評価実験の結果を示す。+は、2群間(CTL及びBM-iMG)の経時的変化を含めた有意差検定結果であり、p<0.05を示す。
図4Bは、実施例3における、マウス重量の移植開始時に対する相対平均値を示す。
図4Cは、実施例3における、生存曲線(カプランマイヤー)を示す。+は、2群間(CTL及びBM-iMG)の有意差検定結果であり、p<0.05を示す。
【
図5】
図5は、実施例4にて実験した、実施例3にて製造した移植マウス脊髄における組織染色実験を確認する実験結果を示す。
図5Aは、β-チューブリンの組織免疫染色像である。
図5Bは、
図5Aに示す結果を定量化したグラフである。
図5Cは、GFAPの組織免疫染色像である。
図5Dは、
図5Cに示す結果を定量化したグラフである。*は、p<0.05を示す。#は、p<0.05を示す。
【
図6】
図6は、実施例4の実験結果を示す。具体的に、実施例3にて製造した移植マウス脊髄における組織染色実験を確認結果を示す。
図6Aは、Iba1の組織免疫染色像である。
図6Bは、
図6Aに示す結果を定量化したグラフである。*は、p<0.05を示す。#は、p<0.05を示す。
【
図7】
図7は、実施例5にて実験した、実施例3にて製造した移植マウス脊髄における発現量を確認する実験結果を示す。*は、p<0.05を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について説明する。なお、以下において、数値範囲を示す「~」の標記は「未満」又は「超過」の意味であることを特に断らない限り「以上以下」を示す。つまり、「A~B」は「A以上B以下」を意味する。
【0017】
本明細書において、ある成分を「を含む」又は「を含有する」との表現には、当該成分を含み、さらに他の成分を含んでいてもよいとの意味のほか、当該成分のみを含むとの意味の「のみからなる」、及び当該成分を必須として含むとの意味の「から必須としてなる」の概念も包含される。
【0018】
本明細書において、「神経保護型ミクログリア様細胞」を「M2ミクログリア細胞」と呼ぶことがある。
【0019】
本発明のM2ミクログリア様細胞の製造方法は、下記の工程1及び2を含む。
工程1:骨髄単核球細胞に対して、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を作用させる工程
工程2:工程1で作用させた後の細胞に対して、GM-CSF及びIL4を作用させる工程。
【0020】
上記するM2ミクログリア様細胞とは、特に限定されないが、例えば、CD206、Arg1、IRF4、FIZZ等のマーカーを発現する細胞を挙げることができる。
【0021】
上記工程1における骨髄単核球細胞とは、骨髄に含有される造血幹細胞から誘導される単核系細胞である限り、特に限定されない。例えば、骨髄単核球細胞は、骨髄から赤血球、血小板及び顆粒球系細胞を濃度勾配法等により除去して得られる、リンパ球、単球系である白血球、及びそれらの前駆細胞、間葉系幹細胞等の未分化な細胞集団を含む造血系細胞の集合体を挙げることができる。より具体的には、T細胞/NK細胞、B細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ等の免疫担当細胞、およびそれらの前駆細胞や、血管内皮、骨、軟骨等へと分化する能力を持つ間葉系幹細胞を挙げることができる。
【0022】
上記工程1における「作用させる工程」とは、本発明の効果を発揮する範囲に限り、特に限定されない。例えば、培養に供する培地に、作用させる物質を含有させて所定期間の培養を実施する態様を挙げることができる。
【0023】
上記工程1における骨髄単核球細胞の由来は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。具体的に、ラット、マウス等のげっ歯類動物、ブタ、サル、ヒト等を挙げることができる。中でも、治療対象(例えば、ヒト)に移植する際に適合する動物とすることが好ましい。
【0024】
上記工程1における作用時間は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、48~120時間とすることができる。好ましくは、60~108時間、より好ましくは60~96時間である。工程1における作用時間を48時間以上とすることによって、移植に必要な細胞数を確保できる。工程1における作用時間を120時間以下とすることによって、神経細胞保護作用を発揮しない分画の増殖を避けることができる。
【0025】
上記工程2における作用時間も、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、48~120時間とすることができる。好ましくは、60~108時間であり、より好ましくは72~96時間である。工程2における作用時間を48時間以上とすることによって、神経細胞保護型ミクログリアへ効率よく誘導でき、工程2における作用時間を120時間以下とすることによって、移植に適した、安定した神経細胞保護型のミクログリアを得ることができる。
【0026】
上記工程1及び2にて作用させるGM-CSF及びIL4の濃度は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、20ng/mlを超える濃度で、40ng/ml以下となる濃度とすることができる。好ましくは、30ng/mlを超える(又は以上となる)濃度で、40ng/ml以下となる濃度とすることができる。GM-CSF及びIL4の濃度を20ng/mlを超える濃度とすることによって、培養細胞のほぼ半数以上を神経細胞保護型のミクログリアに分化誘導でき、GM-CSF及びIL4の濃度を40ng/ml以下とすることによって、さらに効率よく神経細胞保護型のミクログリアを得ることができる。なお、GM-CSF及びIL4の濃度は同一であっても異なっていてもよく、GM-CSFの濃度は工程1及び2において同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
上記工程1及び2では、培地中でGM-CSF又はIL4を作用させることができる。具体的な培地は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDM、StemSpan(登録商標)等の基礎培地を挙げることができる。これらの中でも、未分化な細胞を効率よく分化させることに鑑みてStemSpanを使用することが好ましい。このStemSpanには、インスリン、トランスフェリン、2-メルカプトエタノール等が含有される。
【0028】
上記の培地には、FBSやFCS等の細胞培養に使用される公知の血清が含有されていてもよいし、ペニシリン/ストレプトマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ゲンタマイシン、G418等の抗生物質が含有されていてもよい。
【0029】
なお、上記血清は、非動化血清とすることもできるし、血清に変えて、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、2-メルカプトエタノール、3’チオールグリセロール、StemSure(登録商標)等の血清代替物を使用することもできる。
【0030】
また、上記の培地には、通常、細胞培養に使用される公知の成分を、本発明の効果を発揮できる範囲において、適宜使用することもできる。例えば、L-グルタミン等のアミノ酸、アスコルビン酸等のビタミン、ビオチン、グルコース、B27サプリメント、N2サプリメント、増殖因子、サイトカイン、無機塩類等の栄養添加物を挙げることができる。
【0031】
上記工程1及び2における作用は、所定の容器内で上記培地に培養する態様とすることができる。斯かる容器とは、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、シャーレ、フラスコ、培養プレート、ボトル、バッグ等を挙げることができる。
【0032】
上記工程1及び2における作用温度は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、35~39℃とすることができ、より好ましくは36~38℃である。また、上記工程1及び2における作用環境も本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば大気中とすることもできるし、CO2環境下とすることもできる。好ましくは、5%のCO2環境下とすることである。また、酸素濃度は、特に限定されず、例えば、約20%の酸素濃度とすることができる。
【0033】
なお、上記の培地は、培養の途中で新しい培地に、適宜交換することができる。このような交換間隔は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、特に限定されない。例えば、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、3.5日、4日おきとすることができる。なお、このような培地交換は、培地の全てを交換してもよいし、一部の培地の交換としてもよい。
【0034】
本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞は、中枢神経疾患の治療及び/又は予防のために使用される医薬組成物とすることができる。すなわち、前記医薬組成物は、本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞を含有する。なお、上記医薬組成物に含有されるM2ミクログリア様細胞は、これを製造する時に使用した培養培地及び/又はその培養上清と共に含有されることもできる。すなわち、本発明の医薬組成物は、本発明の製造方法にて得られるM2ミクログリア様細胞の培養培地及び/又はその培養上清を有効成分とすることもできる。
【0035】
上記中枢神経疾患とは、特に限定されない。例えば、脳梗塞、低酸素脳症、脊髄損傷、神経因性疼痛、脳炎、脊髄炎、及び神経変性疾患等を挙げることができる。前記神経変性疾患とは、特に限定されない。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、及び筋萎縮性硬化症等を挙げることができる。
【0036】
上記医薬組成物に含有される上記M2ミクログリア様細胞の量は、特に限定されない。例えば、100質量部の医薬組成物に対して、0.001~100質量部とすることができる。このような医薬組成物には、上記M2ミクログリア様細胞の他に、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、親水性ポリマー、キレート剤等を含有されることができる。また、上記M2ミクログリア様細胞の足場として、細胞外基質や細胞外マトリクスを含有することもできる。
【0037】
上記医薬組成物の投与経路又は投与経路は、本発明の効果を発揮する範囲に限り、特に限定されない。例えば、組織内直接投与、髄腔内投与、経静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与等を挙げることができる。
【0038】
上記医薬組成物の投与対象は、特に限定されない。例えば、上記する中枢神経疾患に罹患するホ乳類動物、又は罹患する可能性があるホ乳類動物を挙げることができる。このようなホ乳類動物は、特に限定されない。例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジサル、ヒト等を挙げることができる。これらの中でも、ヒトであることが好ましい。
【0039】
上記医薬組成物の投与量は、本発明の効果を所望する投与対象の年齢、所望する効果の程度等によって変化するので、一概に決定することはできない。例えば、投与対象が体重60kgのヒト男性であれば、一回当たりの投与量として、医薬組成物に含有されるM2ミクログリア様細胞が、104~1010細胞となるような量の医薬組成物を投与することができる。
【0040】
以下に、本発明を更に詳細に説明するための実施例を示す。但し、本発明が、下記に実施例に示す範囲に限定されないのはいうまでもない。
【実施例0041】
下記の実施例における統計分析は、平均値±SDで表される。複数のデータ間の比較については、一元配置分散分析及びScheffeテストを使用した。また、行動分析では、二元配置分散分析にてデータの分析を行った。カプランマイヤー曲線の統計分析には、ログランク検定を使用した。0.05未満のP値は有意であると解釈する。これらの統計分析は、IBM SPSS Statisticsバージョン25(International Business Machines Corporation)を使用した。
C57BL/6マウス(ジャクソンラボラトリーズ社)から全骨髄細胞を回収した。その後、Ficoll-Paque Plusgradient separation(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を使用して、全骨髄細胞から単核細胞を単離した。そして、これらの単離した単核細胞を、GM-CSF又はIL-4と共に、無血清増殖培地であるStemSpan(登録商標)(ステムセルテクノロジーズ社)で、以下に示す3パターンの培養方法により、7日間培養した。