IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-騒音低減構造 図1
  • 特開-騒音低減構造 図2
  • 特開-騒音低減構造 図3
  • 特開-騒音低減構造 図4
  • 特開-騒音低減構造 図5
  • 特開-騒音低減構造 図6
  • 特開-騒音低減構造 図7
  • 特開-騒音低減構造 図8
  • 特開-騒音低減構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038834
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】騒音低減構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20230310BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20230310BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20230310BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
E04B1/86 M
E04B1/82 M
E04B1/86 H
E04B1/86 K
E04B1/86 Z
E04B1/00 501Z
G10K11/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145755
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 朗蘭
(72)【発明者】
【氏名】中川 武彦
【テーマコード(参考)】
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF03
2E001DF04
2E001FA31
2E001GA12
2E001HB03
2E001HB04
5D061CC07
(57)【要約】
【課題】建物内外双方の騒音を低減できる騒音低減構造を提供する。
【解決手段】騒音低減構造は、建物10におけるベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、外部から入射する騒音を吸音する吸音機構20を備え、吸音機構20は、窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜して騒音を反射する反射部32Aと、反射部32Aで反射した反射音を吸音する吸音部32Bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、外部から入射する騒音を吸音する吸音機構を備え、
前記吸音機構は、
前記天井面又は前記側壁面に対して窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜して前記騒音を反射する反射部と、
前記反射部で反射した反射音を吸音する吸音部と、
を備えた騒音低減構造。
【請求項2】
前記吸音機構は、前記窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した複数の羽板によって形成されたルーバーを備え、
前記反射部は、それぞれの前記羽板に形成され、
前記吸音部は、前記羽板の裏側又は前記吸音機構が設けられた天井面若しくは側壁面に配置されている、
請求項1に記載の騒音低減構造。
【請求項3】
前記吸音機構は、前記窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように位置をずらして配置された複数の羽板によって形成されたルーバーを備え、
前記反射部は、それぞれの前記羽板に形成され、
前記吸音部は、前記ルーバーより前記窓面寄りの天井内部に配置されている、
請求項1に記載の騒音低減構造。
【請求項4】
前記吸音機構は前記天井面及び前記側壁面の双方に設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載の騒音低減構造。
【請求項5】
前記吸音部は、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている、請求項1~4の何れか1項に記載の騒音低減構造。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ベランダ天井面に、入射した騒音の音波を反射する反射面を備えた遮音性ベランダ構造が記載されている。この遮音性ベランダ構造では、騒音の直接波の伝搬方向に対する反射面の傾斜角度を90度以上に設定することで、建物の窓開口へ入射する騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-211509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の遮音性ベランダ構造では、騒音を建物の外部へ反射する。このため、建物の内部の騒音を低減することができても、建物の外部の騒音を低減することは難しい。これにより、反射した騒音が異なる建物へ影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、建物内外双方の騒音を低減できる騒音低減構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の騒音低減構造は、建物におけるベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられると共に、外部から入射する騒音を吸音する吸音機構を備え、前記吸音機構は、前記天井面又は前記側壁面に対して窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜して前記騒音を反射する反射部と、前記反射部で反射した反射音を吸音する吸音部と、を備える。
【0007】
請求項1の騒音低減構造では、ベランダの天井面及び側壁面の少なくとも一方に、騒音を吸音する吸音機構が設けられている。この吸音機構は、前記天井面又は前記側壁面に対して窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜して騒音を反射する反射部と、反射部で反射した反射音を吸音する吸音部と、を備えている。
【0008】
すなわち、吸音機構がベランダの天井面にあれば、下方からの騒音を反射し、さらに吸音できる。また、吸音機構がベランダの側壁面にあれば、側方からの騒音を反射し、さらに吸音できる。これにより、例えばベランダの天井面に反射部のみを設けて吸音部を備えない構造と比較して、建物内外双方の騒音を低減できる。
【0009】
また、吸音機構における反射部が天井面又は側壁面に対して窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜している。このため、反射部が天井面又は前記側壁面と平行な構成と比較して、ベランダの前方寄りの方向からの騒音も低減し易い。また、室内からの眺望を妨げにくく、室内への採光も妨げ難い。
【0010】
請求項2の騒音低減構造は、請求項1に記載の騒音低減構造において、前記吸音機構は、前記窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した複数の羽板によって形成されたルーバーを備え、前記反射部は、それぞれの前記羽板に形成され、前記吸音部は、前記羽板の裏側又は前記吸音機構が設けられた天井面若しくは側壁面に配置されている。
【0011】
請求項2の騒音低減構造では、反射部が、複数の羽板にそれぞれ形成されている。すなわち、反射部は分割して形成されている。
【0012】
このため、それぞれの羽板を、天井面又は側壁面に対して「傾斜させた状態」で配置すれば、例えばこれらの羽板を天井面又は側壁面に対して「平行に並べて配置」しても、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。この場合、羽板を天井面又は側壁面に対して「斜めに並べて配置」した構成と比較して、吸音機構を省スペース化できる。
【0013】
あるいは、吸音機構がベランダの天井面にある場合、それぞれの羽板の高さ方向の位置をずらして配置すれば、これらの羽板それぞれの傾斜の有無に関わらず、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。
【0014】
また、吸音機構がベランダの側壁面にある場合、それぞれの羽板の横方向の位置をずらして配置すれば、これらの羽板それぞれの傾斜の有無に関わらず、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。
【0015】
請求項3の騒音低減構造は、請求項1に記載の騒音低減構造において、前記吸音機構は、前記窓面から前記ベランダの先端に向かって拡がるように位置をずらして配置された複数の羽板によって形成されたルーバーを備え、前記反射部は、それぞれの前記羽板に形成され、前記吸音部は、前記ルーバーより前記窓面寄りの天井内部に配置されている。
【0016】
請求項3の騒音低減機構では、反射部が、複数の羽板にそれぞれ形成されている。すなわち、反射部は分割して形成されている。これらの反射部は、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように位置をずらして配置されることにより、窓面から前記ベランダの先端に向かって傾斜して配置される。
【0017】
そして、吸音部がルーバーより窓面寄りの天井内部に配置されているため、吸音部が風雨に晒され難い。このため、吸音性能が劣化し難い。
【0018】
請求項4の騒音低減構造は、請求項1~3の何れか1項に記載の騒音低減構造において、前記吸音機構は前記天井面及び側壁面の双方に設けられている。
【0019】
請求項4の騒音低減構造では、吸音機構が天井面及び側壁面の双方に設けられているため、どちらか一方のみに設けられている場合と比較して、下方及び側方から入射する騒音を吸音できる。このため、吸音性能を高めることができる。
【0020】
請求項5の騒音低減構造は、請求項1~4の何れか1項に記載の騒音低減構造において、前記吸音部は、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている。
【0021】
請求項5の騒音低減構造では、吸音部が、パンチングメタル及び多孔質材料の少なくとも一方によって形成されている。このため、吸音部は、風雨に晒されても、雨水が溜まりにくく排水されやすいため、劣化し難い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、建物内外双方の騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)は吸音機構を天井面に形成した騒音低減構造を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図2】(A)は吸音部としてパンチングメタルを用いた例を示す羽板の断面図であり、(B)は吸音機構として多孔質材料を用いた例を示す羽板の断面図であり、(C)は吸音機構としてパンチングメタル及び多孔質材料を用いた例を示す羽板の断面図である。
図3】(A)は吸音機構を側壁面に形成した騒音低減構造を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図4】(A)は吸音機構を天井面及び側壁面に形成した騒音低減構造を示す側断面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
図5】吸音部を天井面に形成した変形例を示す側断面図である。
図6】(A)は吸音部を天井面に形成し、羽板を湾曲させた変形例を示す側断面図であり、(B)は羽板の拡大図である。
図7】羽板の配置の変形例を示す側断面図である。
図8】羽板の配置及び吸音部の配置の変形例を示す側断面図である。
図9】羽板の配置及び吸音部の配置の別の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る騒音低減構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0025】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0026】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0027】
<騒音低減構造>
図1(A)、(B)には、本発明の実施形態に係る騒音低減構造20の一例が示されている。騒音低減構造20は、建物10に適用され、建物10の内部及び外部の双方の騒音を抑制することを目的とする騒音抑制手段である。
【0028】
騒音低減構造20は、建物10のベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に設けられる吸音機構を備えている。本明細書においては、ベランダ12の天井面に設けられる吸音機構を吸音機構20Aと称し、ベランダ12の側壁面に設けられる吸音機構を吸音機構20Bと称す。
【0029】
詳しい実施形態については後述するが、騒音低減構造20は、吸音機構20Aのみによって形成されてもよいし(図1参照)、吸音機構20Bのみによって形成されてもよい(図3参照)。また、騒音低減構造20は、吸音機構20A及び20Bの双方によって形成されてもよい(図4参照)。
【0030】
(建物)
建物10の用途は特に限定されるものではないが、本実施形態における建物10は共同住宅とされている。そして、騒音低減構造20は、建物10のベランダ12に適用されている。
【0031】
建物10におけるベランダ12の前面には、図示しない幹線道路(高速自動車国道、一般国道、都道府県道等)が通っている。ベランダ12の長手方向(X方向)は、幹線道路における車線の方向に沿って配置されている。なお、建物10の前面には、幹線道路以外の各種道路や、電車の軌道などが通っていてもよい。
【0032】
ベランダ12は、建物10の屋内空間Rとガラス窓14によって隔てられた屋外空間である。ガラス窓14は、屋内空間Rからベランダ12へ出入りするための掃き出し窓であり、ベランダ12の長手方向に沿って配置されている。ガラス窓14の外側には、スラブ16が形成されている。
【0033】
スラブ16は、建物10の外側へ跳ね出した片持ちスラブであり、建物10の階毎に設けられ、それぞれの階におけるベランダ12の床面を形成している。スラブ16の先端には、手すり16Aが設けられている。なお、図示を簡略化するため、図1(B)では、手すり16Aは省略している。その他の平面図においても同様である。
【0034】
<吸音機構の具体例>
(天井面に設けられる吸音機構)
図1には、吸音機構20Aのみによって形成された騒音低減構造20が示されている。天井面に設けられる吸音機構20Aは、一例として、ルーバー30Aによって形成されている。「天井面」とは、ベランダ12の上方のスラブ16の付近(下方のスラブより上方のスラブに近い位置)のことである。
【0035】
ルーバー30Aは、複数の羽板32によって形成されている。羽板32は、長手方向がベランダ12の長手方向(X方向)と一致するように配置された、長尺の平板部材である。また、図1(B)に示すように、羽板32は、ベランダ12のX方向における両側に配置された隔て板18間に亘って配置されている。
【0036】
図1(A)に示すように、羽板32は、天井面において、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜して配置されている。
【0037】
ここで、「ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって」とは、ベランダ12の奥行き方向(Y方向)の内側から外側へ向かうことを示す。「拡がるように傾斜して配置されている」とは、ベランダ12の上下方向(Z方向)における下方から上方へ傾斜して配置されている状態を示す。
【0038】
本実施形態では、羽板32の下端部がベランダ12の奥行き方向内側に配置され、上端部がベランダ12の奥行き方向外側に配置されるように傾斜して配置されている状態を示す。
【0039】
羽板32は、各々がこのように傾斜した状態で、上下方向(Z方向)に沿って複数並べて配置されている。図1(A)においては、羽板32は3本図示されているが、羽板32の本数は2本以上であれば特に限定されるものではない。
【0040】
羽板32は、反射部32A及び吸音部32Bを備えている。反射部32Aは羽板32の表側(下方の前面道路に向けられた面)に形成され、吸音部32Bは、羽板32の裏側(上方のスラブ16に向けられた面)に形成されている。
【0041】
図1(A)に矢印N1で示したように、ルーバー30Aに下方から入射する入射音は、一部が羽板32の反射部32Aによって反射され、さらに反射音の一部が、吸音部32Bに入射して吸音される。
【0042】
図2(A)に示す反射部32Aは、一例として、アルミやステンレス等の金属材料等、重量のある材料によって形成され、平滑で硬い面を形成している。反射部32Aには、排水性の観点から、図示しない水抜き孔を所定の位置に設けることが好ましい。
【0043】
一方、吸音部32Bは、一例としてパンチングメタル50によって形成されている。パンチングメタル50は、面内方向に所定の間隔で複数の貫通孔52が形成された鋼製又はアルミ製の板材である。パンチングメタル50は、反射部32Aに、ボルトや接着剤等、適宜の固定手段を用いて固定されている。
【0044】
なお、本発明における吸音部32Bは、図2(B)に示す多孔質材料54としてもよい。多孔質材料54としては、例えば空隙を有する発泡ポリプロピレン等を用いることができる。また、多孔質材料54としては、ウレタン等を用いてもよい。
【0045】
また、本発明における吸音部32Bは、図2(C)に示すように、パンチングメタル50と多孔質材料54とを組み合わせて用いることもできる。このように、吸音部32Bを、パンチングメタル50及び多孔質材料54の少なくとも一方によって形成することで、吸音部32Bは、風雨に晒されても、雨水が溜まりにくく排水されやすいため、劣化し難い。
【0046】
なお、本発明の吸音機構による「吸音」性能とは、入射音の少なくとも一部が吸音(消音)される性能のことを示している。吸音されない入射音は、外部に反射されてもよい。
【0047】
この吸音性能を発揮するために、吸音機構は、入射音を吸音するための孔(パンチングメタル50の貫通孔52や多孔質材料54の気泡)を備えている。
【0048】
(側壁面に設けられる吸音機構)
図3には、吸音機構20Bのみによって形成された騒音低減構造20が示されている。側壁面に設けられる吸音機構20Bは、一例として、ルーバー30Bによって形成されている。「側壁面」とは、隣接する住戸間のベランダ12を仕切る隔て板18の付近(隔て板から概ね50cm以内の部分)のことである。
【0049】
ルーバー30Bは、天井面に設けられる吸音機構に設けられるルーバー30Aと同様の羽板32によって形成されている。ルーバー30Bにおいて、羽板32は、長手方向がベランダ12の上下方向(Z方向)と一致するように配置されている。また、羽板32は、上下のスラブ16間に亘って配置されている。
【0050】
羽板32は、側壁面において、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜して配置されている。
【0051】
ここで、「ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって」とは、上記と同様に、ベランダ12の奥行き方向(Y方向)の内側から外側へ向かうことを示す。「拡がるように傾斜して配置されている」とは、ベランダ12の長手方向(X方向)における内側(ベランダ12の中心側)から外側(隔て板18側)へ傾斜して配置されている状態を示す。
【0052】
本実施形態では、羽板32の内側端部がベランダ12の奥行き方向内側に配置され、外側端部がベランダ12の奥行き方向外側に配置されるように傾斜して配置されている。
【0053】
羽板32は、このように傾斜した状態で、ベランダ12の奥行方向(Y方向)に沿って複数並べて配置されている。図3(A)、(B)においては、羽板32は3本図示されているが、羽板32の本数は2本以上であれば特に限定されるものではない。
【0054】
図3(B)に矢印N2で示したように、ルーバー30Bに側方から入射する入射音は、一部が羽板32の反射部32Aによって反射され、さらに反射音の一部が、吸音部32Bに入射して吸音される。
【0055】
なお、図3(B)には、ルーバー30Bを、ベランダ12の両側に配置した例、換言すると1住戸毎に両側の2箇所に配置した例を示しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばルーバー30Bは、ベランダ12の片側のみに配置してもよい。また、ルーバー30Bは、例えば避難経路の確保のため、隔て板18の全面に設ける必要はない。
【0056】
(天井面及び側壁面に設けられる吸音機構)
図4(A)、(B)には、吸音機構20Aにおけるルーバー30Aと、吸音機構20Bにおけるルーバー30Bと、を組み合わせた例が示されている。それぞれの構成については上述した通りであり、詳しい説明は省略する。
【0057】
本実施形態では、吸音機構が天井面及び側壁面の双方に設けられているため、どちらか一方のみに設けられている場合と比較して、ベランダ12に下方及び側方から入射する騒音を吸音できる。このため、吸音性能を高めることができる。
【0058】
<吸音機構の展開例>
以下、吸音機構の展開例について説明する。なお、各展開例は天井面に設けられる吸音機構20Aとして説明するが、これらの展開例は、側壁面に設けられる吸音機構20Bとしても、同様の構成で用いることができる。
【0059】
(吸音部の配置の展開例)
図1、3に示すように、上記の実施形態における吸音部32Bは、ルーバー30A、30Bを構成する羽板32の裏面に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図5に示す吸音部34Bのように、吸音部は、天井面(本実施形態においてはスラブ16の下面)に設けてもよい。
【0060】
吸音部34Bは、スラブ16の下面の少なくとも一部を被覆して配置され、吸音部32Bと同様に、パンチングメタル50、多孔質材料54又はパンチングメタル50と多孔質材料54との複合材料で形成することができる(図2参照)。
【0061】
このように吸音部を天井面に設ける場合は、ルーバー34を形成する各羽板34Aの表面及び裏面が、それぞれ反射部を構成する。羽板34Aは、反射部32A(図2参照)と同様の素材で形成される。
【0062】
また、羽板34Aは、羽板32と同様に上下方向(Z方向)に沿って複数並べて配置してもよいが(図1参照)、図5に示した例のように、ベランダ12の奥行方向(Y方向)に沿って複数並べて配置してもよい。
【0063】
羽板34Aを反射部とし、スラブ16の下面に吸音部34Bを設けたこの構成では、矢印N3で示したように、ルーバー34に下方から入射する入射音は、反射部である羽板34Aによって反射され、さらに反射音の一部が、複数回反射を繰り返し、吸音部32Bに入射して吸音される。
【0064】
なお、図6(A)に示す羽板34Cのように、反射部である羽板は、ベランダ12の屋外側に向かって凸となるように湾曲して形成してもよい。羽板をこのように形成することで、図6(A)、(B)に矢印N4で示すように、ルーバー34に下方から入射する入射音は上方へ向かって反射し易くなる。このため、図6(A)に示す吸音部34Bへ反射音を入射させやすい。
【0065】
なお、図6(B)には、湾曲していない羽板34Aを、湾曲した羽板34Cと下端部の高さを揃えて配置した場合における、羽板34Aに対する入射音の反射方向の一例を、矢印N5で示している。矢印N5とN4とを比較すると、矢印N4のほうが上方へ向かって傾斜している。つまり、反射音を吸音部34Bへ入射させ易い。
【0066】
(ルーバーにおける羽板の配置の展開例1)
図1(A)に示すように、ルーバー30Aの羽板32は、下端部がガラス窓14側(Y方向内側)に配置され、上端部が屋外側(Y方向外側)に配置されるように傾斜して配置されている。図5に示す羽板34A、図6に示す羽板34Cについても同様である。しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0067】
例えば図7に示すルーバー36の羽板36A、36B及び36Cのように、下端部を屋外側(Y方向外側)に配置して、上端部をガラス窓14側(Y方向内側)に配置することにより傾斜して配置してもよい。但し、この場合は、屋外側に配置された羽板の下端部を、ガラス窓14側に配置された羽板の下端部より高い位置に配置する。
【0068】
図7に示した例では、羽板36Aは羽板36Bより屋外側に配置され、羽板36Bは羽板36Cより屋外側に配置されている。そして、羽板36Aの下端部が羽板36Bの下端部より高い位置に配置され、羽板36Bの下端部が羽板36Cの下端部より高い位置に配置されている。
【0069】
このように、本発明における「窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜した複数の羽板」とは、図1(A)に示す羽板32、図5に示す羽板34A及び図6に示す羽板34Cのように、「単体の羽板」のそれぞれが、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜している態様を含む。さらに、図7に示す羽板36A、36B及び36Cのように、「複数の羽板」が、窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜して配置された態様を含む。
【0070】
なお、羽板36A、36B、36Cは反射部として形成され、矢印N6、N7で示すように、ルーバー36に下方から入射する入射音は、羽板36A、36B、36Cの少なくとも1つによって反射され、さらに反射音の一部が、天井面の吸音部34Bに入射して吸音される。
【0071】
(ルーバーにおける羽板の配置の展開例2)
図7を用いて説明した、「複数の羽板」が窓面からベランダの先端に向かって拡がるように傾斜して配置された態様は、図8に示すルーバー38のように形成することもできる。
【0072】
ルーバー38は、水平に配置された複数の羽板38Aによって形成されている。羽板38Aは、ガラス窓14の窓面(ベランダ12の奥行き方向内側)からベランダ12の先端(ベランダ12の奥行き方向外側)に向かって、拡がるように位置をずらして配置されている。具体的には、ベランダ12の奥行き方向外側に配置された羽板38Aが、内側に配置された羽板38Aよりベランダ12の上方に配置されている。
【0073】
ルーバー38の羽板38Aは反射部として形成され、吸音部40は、ルーバー38よりガラス窓14寄りの天井内部に配置されている。「天井内部」とは、スラブ16と、スラブ16の下方かつガラス窓14より上方に設けられた軒天板42との間の空間のことを示す。
【0074】
吸音部40は、上述した吸音部32B、34Bと同様の素材を用いて形成され、軒天板42の上面に設置されている。なお、吸音部40は、図8に破線40Aで示すように、例えば天井内部において、スラブ16の下面に設置してもよい。
【0075】
また、軒天板42には、図9に示すように、天井内部と外部とを貫通する貫通孔42Aを設けてもよい。軒天板42に貫通孔42Aを設けることで、天井内部に雨水や湿気が溜まることを抑制できる。
【0076】
また、貫通孔42Aの有無に関わらず、吸音部40は、複数の吸音部材40Bによって構成してもよい。吸音部材40Bは、上述した吸音部32B、34Bと同様の素材を用いて板状に形成され、面内方向が上下方向(Z方向)及びベランダ12の長手方向(X方向)に沿うように配置されている。
【0077】
矢印N8で示すように、ルーバー38に下方から入射する入射音は、羽板38Aの少なくとも1つによって反射され、さらに反射音の一部が、吸音部40に入射して吸音される。
【0078】
図8、9で示したように、吸音部40をルーバー38よりガラス窓14寄りの天井内部に配置することで、吸音部40が風雨に晒され難くなる。これにより、吸音性能が劣化し難い。
【0079】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る騒音低減構造では、図1図3及び図4に示すように、ベランダ12の天井面及び側壁面の少なくとも一方に、騒音を吸音する吸音機構(吸音機構20A、20B、又は、20A及び20Bの双方)が設けられている。この吸音機構は、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜して騒音を反射する反射部(反射部32A、羽板34A、34C、36A、36B、36C又は38A)と、反射部で反射した反射音を吸音する吸音部(吸音部32B、34B、40)と、を備えている。
【0080】
すなわち、図1及び図4に示すように、吸音機構20Aがベランダ12の天井面にあれば、下方からの騒音を反射部32Aで反射し、さらに吸音部32Bで吸音できる。また、図3及び図4に示すように、吸音機構20Bがベランダ12の側壁面にあれば、側方からの騒音を反射部32Aで反射し、さらに吸音部32Bで吸音できる。これにより、例えばベランダ12の天井面に反射部のみを設けて吸音部を設けない構造等と比較して、建物10の内外双方の騒音を低減できる。
【0081】
また、吸音機構20A、20Bにおける反射部(反射部32A、羽板34A、34C、36A、36B、36C又は38A)が、ベランダ12の天井面又は側壁面に対して、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜している。このため、反射部が天井面又は側壁面と平行な構成と比較して、ベランダ12の前方からの騒音も低減し易い。また、屋内空間Rからの眺望を妨げにくく、屋内空間Rへの採光も妨げ難い。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る騒音低減構造では、反射部(反射部32A、羽板34A、34C、36A、36B、36C又は38A)が、複数の羽板にそれぞれ形成されている。すなわち、反射部は分割して形成されている。
【0083】
このため、それぞれの羽板を、例えば図3に示す羽板32、図5に示す羽板34A、図6に示す羽板34Cのように、天井面又は側壁面に対して「傾斜させた状態」で配置すれば、これらの羽板を天井面又は側壁面に対して「平行に並べて配置」しても、これらの羽板はそれぞれが傾斜しているので、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。この場合、羽板を天井面又は側壁面に対して「斜めに並べて配置」した構成と比較して、吸音機構を省スペース化できる。
【0084】
あるいは、吸音機構がベランダ12の天井面にある場合、図7に示す羽板36A、36B、36C又は図8に示す38Aのように、それぞれの羽板の上下方向(Z方向)の位置をずらして配置すれば、ガラス窓14の窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。
【0085】
また、吸音機構がベランダ12の側壁面にある場合も、羽板36A、36B、36C又は38Aと同様に、それぞれの羽板の横方向(X方向)の位置をずらして配置すれば、窓面からベランダ12の先端に向かって拡がるように傾斜した反射部を形成できる。
【符号の説明】
【0086】
10 建物
12 ベランダ
20A 吸音機構
20B 吸音機構
30A ルーバー
30B ルーバー
32 羽板
32A 反射部
32B 吸音部
34 ルーバー
34A 羽板(反射部)
34B 吸音部
34C 羽板(反射部)
36 ルーバー
36A 羽板(反射部)
36B 羽板(反射部)
36C 羽板(反射部)
38 ルーバー
38A 羽板(反射部)
40 吸音部
50 パンチングメタル
52 貫通孔
54 多孔質材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9