(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038841
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】列車制御装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/16 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
B61L23/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145763
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊平
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161CC02
5H161DD02
5H161EE07
5H161FF01
(57)【要約】
【課題】予備送信器を無くすことで、低コスト化と低消費電力化を図ることができる列車制御装置を提供する。
【解決手段】列車制御装置は、地上装置1から軌道回路1T,2T,3T,…にATC信号を出力し、列車2に搭載した車上装置3で受信して走行制御を行う。地上装置は、N(Nは2以上の正の整数)軌道分の信号を時分割で発生させる信号発生部11a,11bと、この信号発生部の出力を切り替える送信点切替器13a,13bとを有する送信器7a,7bをN台備え、これら送信器の送信タイミングを1周期ずつずらして加算し、ディジタルATC信号を生成する、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置から軌道回路にATC信号を出力し、列車に搭載した車上装置で受信して走行制御を行う列車制御装置であって、
前記地上装置は、N(Nは2以上の正の整数)軌道分の信号を時分割で発生させる信号発生部と、この信号発生部の出力を切り替える送信点切替器とを有する送信器をN台備え、これら送信器の送信タイミングを1周期ずつずらして加算し、ディジタルATC信号を生成する、ことを特徴とする列車制御装置。
【請求項2】
前記N台の送信器のM台(M<N)が故障したときに、正常な「M-N」台の送信器が送信点切替することにより、N軌道にそれぞれATC信号を送ることで、故障したM台の送信器の予備として用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
【請求項3】
前記N台の送信器で発生させるN軌道分のATC信号はそれぞれ、周波数が異なる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の列車制御装置。
【請求項4】
前記送信点切替器と前記軌道回路との間に、整合変成器架を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
【請求項5】
前記N台の送信器はそれぞれ、DSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いた信号発生部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上装置から軌道回路に速度制限情報を出力し、列車に搭載した車上装置で受信して走行制御を行う列車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATC(Automatic Train Control)装置において、列車に伝える速度制限情報(ATC信号)は、地上装置に設けられた送信器から各軌道回路に送信される。通常は、1つの軌道回路毎に1つの送信器が対応しているため、ATC信号を送信する多数の送信器が必要になり、送信器が故障したときの予備も必要になる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、N個(N:自然数)の主系機器に対してM個(M:2≦M≦Nなる自然数)の待機系機器を設け、主系機器の処理状態に異常が発生した場合に、待機系機器のうちのいずれかに切り替えるようにしている。このように、共通予備方式とすることにより、待機系機器の数、特に予備送信器の数を減らして低コスト化すると共に、設置スペースや消費電力の削減を図っている。現状のATC装置では、(N+2)方式と呼ばれる、主系送信器N台に対して予備系送信器2台を設ける方式を採用することで、予備系送信器の台数をより少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い安全性と高い信頼性が要求される列車制御装置では、信頼性の観点から予備送信器を無くすまでには至っていない。
しかも、待機系機器は少なくともウォームスタンバイにしておく必要があるため、無駄な電力を消費することになる。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、予備送信器を無くすことで、低コスト化と低消費電力化を図ることができる列車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る列車制御装置は、地上装置から軌道回路にATC信号を出力し、列車に搭載した車上装置で受信して走行制御を行う列車制御装置であって、前記地上装置は、N(Nは2以上の正の整数)軌道分の信号を時分割で発生させる信号発生部と、この信号発生部の出力を切り替える送信点切替器とを有する送信器をN台備え、これら送信器の送信タイミングを1周期ずつずらして加算し、ディジタルATC信号を生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、N台の送信器のうちM台(M<N)が故障したときに、正常な「N-M」台の送信器が送信点切替して、N軌道にそれぞれATC信号を送ることで、故障したM台の送信器の予備として用いることができる。このため、予備送信器を設けることなく安定した列車の運行制御を行うことができ、予備送信器を無くすことで列車制御装置の低コスト化と低消費電力化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る列車制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図1における車上装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示した2台のATC送信器における出力信号を示す図である。
【
図4】
図1の地上装置から出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図5】一方のATC送信器が故障し、他方のATC送信器が正常の場合に、各軌道回路へ出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図6】一方のATC送信器が正常で、他方のATC送信器が故障した場合に、各軌道回路へ出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る列車制御装置について説明するためのもので、N台のATC送信器の模式図である。
【
図8】
図7に示したN台のATC送信器からレールに出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図9】
図7に示したN台のATC送信器において、1台のATC送信器が故障し、「N-1」台のATC送信器が正常な場合に、各軌道回路へ出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図10】
図9における正常な「N-1」台のATC送信器からレールに出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図11】
図7に示したN台のATC送信器において、「N-1」台のATC送信器が故障し、1台のATC送信器が正常な場合に、各軌道回路へ出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【
図12】
図11における正常な1台のATC送信器からレールに出力されるディジタルATC信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る列車制御置の概略構成を示している。この列車制御置は、ATC地上装置1、列車2に搭載されたATC車上装置3、レール4に形成される軌道回路1T,2T,3T,…などで構成される。地上装置1は、ATC架5と整合変成器架6を備えている。ATC架5は、ATC送信器7a、ATC送信器7b、速度情報設定部8及びCPU(Central Processing Unit)9などで構成される。
【0011】
CPU9には、各軌道回路の速度情報を決定するための外部条件が入力され、速度情報設定部8に外部条件に応じた速度情報が設定される。
ATC送信器7aは、送信信号発生部(信号発生部)11aと、電力増幅器12aと、送信点切替器13aで構成される。同様に、ATC送信器7bは、送信信号発生部(信号発生部)11bと、電力増幅器12bと、送信点切替器13bで構成される。送信信号発生部11a,11bには、速度情報設定部8に設定された速度情報が入力される。
【0012】
送信信号発生部11a,11bはそれぞれ、DSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成され、ディジタル信号処理によって2軌道分の信号を生成する。これら送信信号発生部11a,11bと送信点切替器13a,13bはCPU9で制御される。
【0013】
ATC送信器7a,7bから出力される2つのサイクリックな信号は、対応する電力増幅器12a,12bに入力されて増幅される。電力増幅器12a,12bの出力は、送信点切替器13a,13bによりCPU9からの指示に基づいて切り替え操作が行われることで、該当する軌道回路にそれぞれ送信される。2つの送信点切替器13a,13bから出力される信号のうち、同一軌道回路の信号が加算されて重畳される。各送信器のATC信号は、2軌道分の信号が時分割で生成されたのと同様となる。
【0014】
すなわち、送信点切替器13aは、電力増幅器12aから出力される信号S1とS2を切り替え、送信点切替器13bは、電力増幅器12bから出力される信号S3とS4を切り替える。送信点切替器13a,13bから出力される信号のうち、同一軌道回路の信号S1と信号S3、及び信号S2と信号S4がそれぞれ加算されて重畳され、整合変成器架6の変成器を介して各軌道回路1T,2Tに供給される。
【0015】
このように、ATC送信器7aとATC送信器7bが共に正常な場合には、現状の軌道回路毎にATC送信器1台が配置される場合と同様な連続したATC信号となる。ATC送信器7a,7bから出力されるディジタルATC信号(ディジタル電文)が、整合変成器架6を介してレール4に形成された軌道回路1T,2Tにそれぞれ入力される。
【0016】
そして、地上装置1から送信されたATC信号が、列車2に設置された車上子で受信され、当該ATC信号に基づき、車上装置3で列車2の走行制御が行われる。
【0017】
図2は、
図1における車上装置3の構成例を示している。車上子で受信されたATC信号は、変成器31を介して周波数f1用のバンドパスフィルタ32と、周波数f2用のバンドパスフィルタ33に入力される。バンドパスフィルタ32,33のフィルタ出力は加算され、フィルタ34を介してA/Dコンバータ35でディジタル信号に変換される。
【0018】
A/Dコンバータ35から出力されるディジタル信号は、DSPまたはFPGAで構成された処理装置36に入力されてソフトウェアによるディジタル信号処理が実行される。処理装置36は、バンドパスフィルタ37,38と復調回路39,40を備えている。復調回路39,40の出力信号は、CPU41に供給されて復調結果が判別され、速度情報が確定する。CPU41による速度情報は、速度照査部へ供給される。
【0019】
なお、
図2では周波数f1用のバンドパスフィルタ32と、周波数f2用のバンドパスフィルタ33を設けたが、周波数f1と周波数f2の2波を通す1つのバンドバスフィルタを設けても良い。
【0020】
次に、上記のような構成の列車制御装置の動作を説明する。ATC架5のCPU9には、各軌道回路の速度情報を決定するための外部条件が入力される。CPU9は、入力された外部条件に基づき、速度情報設定部8を設定する。また、このCPU9は、送信信号発生部11a,11bと、送信点切替器13a,13bの動作を制御する。
【0021】
ATC送信器7a,7bはそれぞれ、1つの送信器で2つの軌道回路のATC信号を1周期毎に発生し、ATC信号を2つの軌道回路毎に時分割で送信する。このときのATC信号の周波数は、軌道回路毎に異ならせる(一般に有絶縁軌道回路においては、絶縁破壊時の漏れ込みによる不正扛上を考慮し、軌道周波数を異ならせている)。
【0022】
例えば、
図3に示すように、電力増幅器12aは、f2,f1,f2,f1,f2,f1,…となるように、送信信号発生部11aでサイクリックに生成した信号を電力増幅して送出する。ここで、f1は軌道回路1T送信用の信号周波数であり、f2は軌道回路2T送信用の信号周波数である。
また、電力増幅器12bは、送信信号発生部11bで生成し、電力増幅器12aの出力に対して1周期ずらした、f1,f2,f1,f2,f1,f2,…となる信号を電力増幅後にサイクリックに送出する。ここでも、f1は軌道回路1T送信用の信号周波数であり、f2は軌道回路2T送信用の信号周波数である。
このように、1周期ずらす(遅らせる)のは、同一軌道へのATC送信器7a,7bの出力が重ならないようにするためである。
【0023】
これら2つのサイクリックな信号を、対応する送信点切替器13a,13bに入力する。そして、CPU9からの指示に基づき切り替え操作を行うことで、ATC送信器7aは軌道回路1Tに信号周波数f1のみの信号S1を出力し、軌道回路2Tに信号周波数f2のみの信号S2を出力する。同様に、ATC送信器7bは軌道回路1Tに信号周波数f1のみの信号S3を出力し、軌道回路2Tに信号周波数f2のみの信号S4を出力する。
【0024】
図4に示すように、軌道回路1TへのディジタルATC信号としては、ATC送信器7aの1T送信タイミングの出力信号S1と、ATC送信器7bの1T送信タイミングの出力信号S3を加算して重畳した信号S5(信号S1+信号S3=信号S5)を、変成器を介して入力する。また、軌道回路2TへのディジタルATC信号としては、ATC送信器7aの2T送信タイミングの出力信号S2と、ATC送信器7bの2T送信タイミングの出力信号S4を加算して重畳した信号S5(信号S2+信号S4=信号S6)を、変成器を介して入力する。
【0025】
ATC送信器7aとATC送信器7bが共に正常な場合には、現状の軌道回路毎に送信器1台が配置される場合と同様な連続したATC信号となる。
【0026】
これに対し、例えばATC送信器7aが故障し、ATC送信器7bが正常の場合には、各軌道回路へのATC信号は
図5に示すようになる。ATC送信器7aの故障によって軌道回路1Tへの送信タイミングの信号S1と、軌道回路2Tへの送信タイミングの信号S2が出力されないので、軌道回路1Tへ送信されるATC信号S5は信号S3と等しくなる。また、軌道回路2Tへ送信される信号S6は信号S4と等しくなる。従って、この場合には、軌道回路1T,2T共に1周期断続した波形のATC信号となる。
【0027】
また、ATC送信器7aが正常で、ATC送信器7bが故障した場合には、各軌道回路へのATC信号は
図6に示すようになる。ATC送信器7bの故障によって軌道回路1Tへの送信タイミングの信号S3と、軌道回路2Tへの送信タイミングの信号S4が出力されないので、軌道回路1Tへ送信されるATC信号S5は信号S1と等しくなる。また、軌道回路2Tへ送信される信号S6は信号S2と等しくなる。従って、この場合には、軌道回路1T,2T共に1周期断続した波形のATC信号となる。
なお、
図5と
図6は、時間的に見れば1周期遅れてはいるが、同一波形の断続した信号である。
【0028】
一般にATC信号は、常時連続送信が基本の形態となっていた。これは地上装置の故障または車上装置の故障により情報受信が不可能となり危険状態となることを防ぐためである。常時ATC信号を受信する構成にしておけば、地上装置や車上装置が故障して信号を受信できなければ無信号を検知して非常ブレーキ制御となる。
しかし、無線LANを使用している列車制御システムにおいては、時分割で情報を送るため、受信側では断続的な情報受信となっている。このような断続的な情報の受信でもシステムとして列車運行に支障のないようにすれば、特に問題なく列車制御できる。
【0029】
本第1実施形態において、正常時は連続した信号となっているが、一方の送信器が故障した場合は、送信側で時分割送信としているため、受信側では断続的な情報受信となる。しかし、上述した無線LANによる列車制御と同様に、システムとして運行に支障がないような断続時間とすれば良い。
【0030】
このように、1台の送信器出力を2軌道分のディジタルATC信号の時分割とし、もう一方の送信器出力を他方の送信周期から1周期遅らせた信号とすることにより、正常時はもちろん、一方が故障した場合でも他方が1周期おくれただけの同一2軌道分の信号を出力しているため、列車を制御する信号は列車に伝えられ、安定に列車を運行することができる。
【0031】
これは、2つの主系送信器が2つの軌道のATC信号を時分割で時間差を設けて出力していることから、お互いが主系でもあり、かつ予備系ともなっていることと等価である。
【0032】
従って、本発明の列車制御装置によれば、一般的に必要であった予備系送信器が不要になるので、低コスト化と低消費電力化を図ることができる。また、予備系送信器の分のATC架の設置スペースも低減できる。
【0033】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係る列車制御装置におけるATC送信器について説明するための模式図である。本第2実施形態は、上述した第1実施形態のATC送信器を2台からN(Nは2以上の正の整数)台に増加させたものである。すなわち、N軌道分のATC信号を時分割で生成し、かつ1周期ずつずらして送信するN台の送信器7-1,7-2,…,7-nを用意し、送信点切替器13-1,13-2,13-3,…,13-nの操作により端子T1,T2,T3,…,Tnの順番に切り替えて送信する。そして、これら送信器7-1,7-2,…,7-nから送信される信号を加算してディジタルATC信号SS1,SS2,SS3,…SSnを生成し、各軌道回路1T,2T,3T,…,nTに送信する。
【0034】
図8は、
図7に示したN台の送信器からレールに出力されるディジタルATC信号を示している。送信点切替器13-1,13-2,13-3,…,13-nの端子T1,Tn,Tn-1,…,T2を介して出力された周波数f1の信号が加算され、ディジタルATC信号SS1が生成されて軌道回路1Tに送信される。送信点切替器13-1,13-2,13-3,…,13-nの端子T2,T1,Tn,…,T3を介して出力された周波数f2の信号が加算され、ディジタルATC信号SS2が生成されて軌道回路2Tに送信される。送信点切替器13-1,13-2,13-3,…,13-nの端子T3,T2,T1,…,Tnを介して出力された周波数f3の信号が加算され、ディジタルATC信号SS3が生成されて軌道回路3Tに送信される。更に、送信点切替器13-1,13-2,13-3,…,13-nの端子Tn,Tn-1,Tn-2,…,T1を介して出力された周波数fnの信号が加算され、ディジタルATC信号SSnが生成されて軌道回路nTに送信される。
【0035】
このように、N台の送信器7-1,7-2,…,7-nから軌道回路1T,2T,3T,…,nTにそれぞれ、
図8に示すような周波数f1,f2,f3,…,fnのディジタルATC信号が送信される。
【0036】
本第2実施形態において、
図9に示すようにATC送信器7-1が故障した場合には、ATC送信器7-2,7-3,…,7-nから軌道回路1T,2T,3T,…,nTにそれぞれ、
図10に示すような周波数f1,f2,f3,…,fnのディジタルATC信号が送信される。すなわち、1台のATC送信器7-1が故障しても、残りの「N-1」台のATC送信器7-2,7-3,…,7-nがN軌道分のディジタルATC信号を送信する。この結果、各軌道回路1T,2T,3T,…,nTには、ATC送信器7-1から送信される信号分(1/N)が欠損したディジタルATC信号が入力されるが、システム上は重故障にはならず、列車の走行制御が行われる。
【0037】
また、本第2実施形態において、
図11に示すようにATC送信器7-1,7-3,…,7-nが故障した場合には、ATC送信器7-2から軌道回路1T,2T,3T,…,nTにそれぞれ、
図12に示すような周波数f1,f2,f3,…,fnのディジタルATC信号が送信される。すなわち、「N-1」台のATC送信器7-1,7-3,…,7-nが故障しても、残りの1台の送信器7-2がN軌道分のディジタルATC信号を送信する。この結果、各軌道回路1T,2T,3T,…,nTには、ATC送信器7-1,7-3,…,7-nから送信される信号分が欠損したディジタルATC信号が入力されるが、無信号許容時間の範囲内であればシステム上は重故障にはならず、列車の走行制御が行われる。
なお、Nの数を増やすほど、冗長度が上がるが、無信号許容時間を考慮した台数設定が必要であり、無信号許容時間を超えないようにATC送信器の数を設定すると良い。
【0038】
以上の第1、第2実施形態で説明された回路構成や動作手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0039】
例えば、上述した第1、第2実施形態では、軌道回路に異なる周波数のディジタルATC信号を交互に入力したが、現行のシステムでも1つの周波数で運用している線区もあることから、本方式においても1つの周波数のディジタルATC信号を入力して対応することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…ATC地上装置(地上装置)、2…列車、3…ATC車上装置(車上装置)、4…レール、5…ATC架、6…整合変成器架、7a,7b,7-1~7-n…ATC送信器、8…速度設定部、9…CPU、11a,11b…送信信号発生部(信号発生部)、12a,12b…電力増幅器、13a,13b,13-1~13-n…送信点切替器、1T,2T,3T…軌道回路、S5,S6…ディジタルATC信号、SS1~SSn…加算したディジタルATC信号