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  • 特開-洗浄用積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038842
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】洗浄用積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20230310BHJP
   B32B 5/22 20060101ALI20230310BHJP
   A47L 17/00 20060101ALI20230310BHJP
   A47L 17/08 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B5/22
A47L17/00 Z
A47L17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145764
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】大里 雅人
(72)【発明者】
【氏名】出島 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】末原 弘基
【テーマコード(参考)】
3B082
4F100
【Fターム(参考)】
3B082HH01
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100BA03
4F100DJ01A
4F100DJ01B
4F100DJ01C
4F100EJ17C
4F100EJ42C
4F100GB71
4F100JA13C
4F100JK12A
4F100JK12C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】洗浄対象物に対する、汚れのかき取り性及び形状追随性に優れる、洗浄用積層体を提供する。
【解決手段】洗浄用積層体LBは、基層L3と、基層L3上に形成された中間層L2と、中間層L2上に形成された表層L1と、を備える。基層L3、中間層L2、及び表層L1は、それぞれ、ウレタンフォームである。表層L1はウレタンフォームの圧縮加工成形物である。表層L1の厚みは3.5mm以下であり、かつ基層L3の厚みの1/3以下である。表層L1のアスカーF硬度は85より大きく、かつ表層L1のアスカーF硬度は基層L3のアスカーF硬度の2倍以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、前記基層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された表層と、を備え、
前記基層、前記中間層、及び前記表層は、それぞれ、ウレタンフォームであり、
前記表層は、ウレタンフォームの圧縮加工成形物であり、
前記表層の厚みは、3.5mm以下であり、かつ前記基層の厚みの1/3以下であり、
前記表層のアスカーF硬度は85より大きく、かつ前記表層のアスカーF硬度は前記基層のアスカーF硬度の2倍以上である、洗浄用積層体。
【請求項2】
前記圧縮加工成形物の圧縮倍率は、4.5以上である、請求項1に記載の洗浄用積層体。
【請求項3】
前記表層は、前記圧縮加工成形物の圧縮方向と、前記洗浄用積層体の積層方向とが一致するように配置されている、請求項1又は2に記載の洗浄用積層体。
【請求項4】
前記表層のアスカーF硬度は、前記中間層のアスカーF硬度よりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄用積層体。
【請求項5】
前記洗浄用積層体のアスカーF硬度は、85未満である、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キッチン用スポンジ等の洗浄用スポンジにはウレタンフォームが広く用いられている。そのような洗浄用スポンジとして、ウレタンフォームの層を積層した積層体が知られている。特許文献1には、第1層が表面側がプロファイル加工されたエステル系三次元網状化ウレタンフォーム、第2層がエステル系セル膜未除去ウレタンフォーム、第3層がエステル系三次元網状化ウレタンフォーム、第4層がエステル系三次元網状化ウレタンフォームの熱プレスフォーム、を夫々接着剤にて接着して4層構造としたことを特徴とするキッチンスポンジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、食器などの洗浄対象物に対する、汚れのかき取り性と、形状追随性との両立に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、洗浄対象物に対する、汚れのかき取り性及び形状追随性に優れる、洗浄用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄用積層体は、
基層と、前記基層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された表層と、を備え、
前記基層、前記中間層、及び前記表層は、それぞれ、ウレタンフォームであり、
前記表層は、ウレタンフォームの圧縮加工成形物であり、
前記表層の厚みは、3.5mm以下であり、かつ前記基層の厚みの1/3以下であり、
前記表層のアスカーF硬度は85より大きく、かつ前記表層のアスカーF硬度は前記基層のアスカーF硬度の2倍以上であることを特徴とする。
本発明による洗浄用積層体は、洗浄対象物に対する、汚れのかき取り性及び形状追随性に優れる。
本発明において、「形状追随性」とは、洗浄用積層体が柔軟性をもって洗浄対象物の形状に沿うことができる性能をいう。
本発明において、「アスカーF硬度」は、アスカーゴム硬度計F型(高分子計器株式会社製)を測定器として用いて測定することができる。具体的には、「アスカーF硬度」は、追って詳述する手順で測定することができる。
【0007】
本発明の洗浄用積層体において、
前記圧縮加工成形物の圧縮倍率は4.5以上であることが好ましい。
この場合、洗浄対象物に接触する層の硬度を高くして、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性を向上することができる。
本発明において、「圧縮倍率」とは、圧縮後の厚さに対する圧縮前の厚さの比をいう。
【0008】
本発明の洗浄用積層体において、
前記表層は、前記圧縮加工成形物の圧縮方向と、前記洗浄用積層体の積層方向とが一致するように配置されていると好適である。
この場合、基層、中間層、及び表層が、積層体として一体的に製造しやすくなる。
【0009】
本発明の洗浄用積層体において、
前記表層のアスカーF硬度は、前記中間層のアスカーF硬度よりも大きいことが好ましい。
この場合、中間層のアスカーF硬度を、表層のアスカーF硬度よりも小さくすることで、表層の硬度を高くしたことによる形状追随性の低下を抑制することができる。すなわち、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物に対する形状追随性を両立しやすくすることができる。
【0010】
本発明に係る洗浄用積層体において、
前記洗浄用積層体のアスカーF硬度は、85未満であることが好ましい。
この場合、洗浄用積層体全体としてのアスカーF硬度を、表層のアスカーF硬度よりも小さくすることで、表層の硬度を高くしたことによる形状追随性の低下を抑制することができる。すなわち、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物に対する形状追随性をさらに両立しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄対象物に対する、汚れのかき取り性及び形状追随性に優れる、洗浄用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る洗浄用積層体を示す、概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る洗浄用積層体を用いて、食器等の洗浄対象物を洗浄することができる。本発明に係る洗浄用積層体の洗浄対象物は食器に限られず、例えば、シンク、浴槽、洗面台、床、又は壁等、任意のものであってよい。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して例示説明する。
【0015】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る洗浄用積層体LBの概要について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る洗浄用積層体LBの斜視図である。図1の例において、洗浄用積層体LBは、食器洗浄用スポンジとして構成されている。但し、洗浄用積層体LBは、任意の種類の洗浄用スポンジとして構成されてよい。
【0017】
洗浄用積層体LBは、基層L3と、基層L3上に形成された中間層L2と、中間層L2上に形成された表層L1と、を少なくとも備える。本実施形態では、基層L3、中間層L2、及び表層L1の3つの層は、互いに固着されて形成されている。具体的には、本実施形態では、中間層L2は、ごく薄い接着剤層を介して基層L3上に隣接して設けられている。また、本実施形態では、表層L1は、ごく薄い接着剤層を介して中間層L2上に隣接して設けられている。接着剤層に使用される接着剤は任意のものを使用することができ、一例として、ウレタン系接着剤を使用することができる。ウレタン系接着剤は、相溶性がよく、各層の骨格内にまで含浸して強固に接着することとなる。但し、各接着剤層はなくてもよく、これら3つの層が接着剤を介さず単に圧着等によって固着されたものであってもよい。
なお、本明細書では、図1に表記する通り、洗浄用積層体LBの「積層方向X」とは、基層L3、中間層L2、及び表層L1が積層された方向をいう。
【0018】
本実施形態に係る洗浄用積層体LBにおいて、基層L3、中間層L2、及び表層L1は、それぞれ、ウレタンフォームである。特に、表層L1はウレタンフォームの圧縮加工成形物であり、表層L1の厚みは、3.5mm以下であり、かつ基層L3の厚みの1/3以下である。また、表層L1のアスカーF硬度は、85より大きく、かつ基層L3のアスカーF硬度の2倍以上である。
【0019】
このように、洗浄用積層体LBでは、洗浄対象物に接触して洗浄する面を構成する表層L1の硬度を高くしているため、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性が向上する。しかしながら、一般に、硬いウレタンフォーム層は洗浄対象物の形状に沿いにくく、形状追随性が低下する。この点、本実施形態では、表層L1の層厚を小さくすることで、洗浄対象物の形状に沿いやすくしている。これにより、ウレタンフォーム層を硬くしたことによる形状追随性の低下を抑制することができる。すなわち、洗浄用積層体LBによれば、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物に対する形状追随性が両立されやすくなる。よって、洗浄用積層体LBは、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物に対する形状追随性に優れる。
【0020】
本実施形態に係る洗浄用積層体LBの各層の構成及び機能について詳細に説明する。
【0021】
基層L3、中間層L2、及び表層L1はウレタンフォームを用いて形成される。基層L3、中間層L2、及び表層L1を形成するウレタンフォームは、エステル系ウレタンフォームであっても、エーテル系ウレタンフォームであってもよい。本実施形態では、耐久性及び使用性等の観点から、エステル系ウレタンフォームが用いられている。
【0022】
本実施形態に係る洗浄用積層体LBは、エステル系ウレタンフォームの性状を十分に生かして、例えば食器洗浄用のスポンジとして提供されるものである。本実施形態に係る洗浄用積層体LBは、種々の性状を有する3層のウレタンフォーム層を積層した食器洗浄用のスポンジである。
【0023】
エステル系ウレタンフォームはコハク酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸等にて代表される脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等にて代表される脂肪族及び/又は脂環族ポリオールとを反応して得られるポリエステルポリオールと、TDI、MDI、TODI、XDI等にて代表されるポリイソシアネートとの反応によってフォーム化し、セル形成されたもので、通常はセル膜が全ての骨格に付着した状態である。そして性状はセルの性状がバラツキが少なく、優れた外観を呈し、引っ張り強度、伸び等が大きく、耐油性、耐溶剤性にも優れたものである。
【0024】
本実施形態において、基層L3及び表層L1は、それぞれ、互いに連通するセルを有する三次元網状化ウレタンフォームである。三次元網状化ウレタンフォームとは、ウレタンフォームのセル膜を除去したウレタンフォームであって、骨格のみが残り三次元網状化を呈するものである。通常はこのセル膜の除去は公知の爆発法にて行うものであり、除去されたセル膜は骨格に一体に付着するため、処理前に比べて強度的に、更には、耐油性、耐溶剤性にも優れたものとなる。
【0025】
本実施形態では、特に、表層L1がウレタンフォームの圧縮加工成形物である。具体的には、表層L1は、軟質ポリウレタンフォームの圧縮加工成形物である。「圧縮加工成形」とは、ウレタンフォームに適当な熱と圧力をかけることによりプレスするものであり、フォーム自体に永久変形を付与して体積密度及び硬度の増加をもたらすものである。よって、永久変形をもたらされたウレタンフォームの熱プレス品は、強度的にも、耐油性、耐溶剤性にも極めて優れたものとなる。本実施形態では、表層L1を熱プレスによって圧縮成型加工している。ウレタンフォームを圧縮成型加工することにより、ウレタンフォームに硬度が付加され、洗浄対象物の表面におけるこびりつく汚れに対して機能する。
【0026】
本実施形態において、中間層L2及び基層L3は、いずれも非圧縮加工成形物である。
【0027】
本実施形態において、中間層L2は、セル膜未除去ウレタンフォームである。但し、一部のセル膜はセル室間を互いに連通する孔を有している。中間層L2のウレタンフォームは、セル膜が除去されていないため、中間層L2はフォーム体内に洗剤及び水の保持をする機能を果たすものである。
【0028】
本実施形態において、基層L3は、上述した通り、非圧縮成型物である。基層L3は、セル膜が除去されていることから、素早く洗剤がなじみ一気に泡立てを行う層であり、洗浄力を増す効果がある。
【0029】
本実施形態において、表層L1の圧縮前の密度は、特に限定されないが、例えば、27.5~32.5kg/mとすることができる。中間層L2の密度は、特に限定されないが、例えば、29~33kg/mとすることができる。基層L3の密度は、特に限定されないが、例えば、26~30kg/mとすることができる。本実施形態において、「密度」は、JIS K6400-1に準拠して測定することができる。
【0030】
本実施形態において、表層L1の圧縮前の硬さ(N)は、特に限定されないが、例えば、105~155Nとすることができる。中間層L2の硬さ(N)は、特に限定されないが、例えば、150~250Nとすることができる。基層L3の硬さ(N)は、特に限定されないが、例えば、70~130Nとすることができる。ここで、「硬さ(N)」は、JIS K6400-2(D法)に準拠して測定した25%ILD硬度である。
【0031】
本実施形態において、表層L1としての圧縮加工成形されたウレタンフォームのセル数は5~10個/インチとすることができる。中間層L2のウレタンフォームのセル数は25~35個/インチとすることができる。基層L3のウレタンフォームのセル数は10~20個/インチとすることができる。
【0032】
本実施形態に係る洗浄用積層体LBの構成について、詳細に説明する。
【0033】
本実施形態において、表層L1の厚みは3.5mm以下であり、かつ基層L3の厚みの1/3以下であることを必要とし、表層L1の厚みは、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上であることが好ましく、かつ表層L1の厚みは、基層L3の厚みの1/4以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましく、1/10超であることが好ましい。本実施形態において、表層L1の厚みは、例えば、2mm又は3mmとすることができる。
表層L1の厚みが3.5mm超の場合、又は表層L1の厚みが基層L3の厚みの1/3よりも大きい場合、表層L1に対し、洗浄用積層体LB全体の厚みが大きくなりすぎるため形状追随性の確保が困難になる。
【0034】
本実施形態において、基層L3の厚みは、上記の条件及び本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に選択されてよい。すなわち、基層L3の厚みは、上述した表層L1及び中間層L2と共に積層され洗浄用積層体LBとして構成された場合に、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物への形状追随性を損なわない範囲で好適に選択されうる。具体的には、基層L3の厚みは、例えば、17~19mmの範囲とすることが好ましい。本実施形態において、基層L3の厚みは、例えば、18.5mmとすることができる。
【0035】
本実施形態において、中間層L2の厚みは、上記の条件及び本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に選択されてよい。すなわち、中間層L2の厚みは、上述した表層L1及び基層L3と共に積層され洗浄用積層体LBとして構成された場合に、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物への形状追随性を損なわない範囲で洗剤及び水を保持するのに好適に選択されうる。具体的には、中間層L2の厚みは、例えば、9~11mmの範囲とすることが好ましい。本実施形態において、中間層L2の厚みは、例えば、10.5mmとすることができる。
【0036】
本実施形態において、洗浄用積層体LBの寸法は、上記の条件及び本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に選択されてよい。具体的には、洗浄用積層体LBの厚みは、例えば、35mm以下であることが好ましく、28~32mmの範囲とすることがより好ましい。本実施形態において、洗浄用積層体LBの厚みは、例えば、30mm又は32mmとすることができる。洗浄用積層体LBの厚みを情範囲内とすることで、洗浄用積層体LBを手で握って食器等を洗浄する場合に、手になじみやすくなり、使用性が向上する。
【0037】
本実施形態において、表層L1としての圧縮加工成形物の圧縮倍率は、4.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、表層L1としての圧縮加工成形物の圧縮倍率は、7未満であることが好ましい。本実施形態では、表層L1としての圧縮加工成形物の圧縮倍率は、例えば、4.5又は5とすることができる。圧縮倍率を4.5以上とすることにより、表層L1に対し、十分な硬度を付与して、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性を向上することができる。
【0038】
本実施形態において、表層L1は、圧縮加工成形物の圧縮方向と、洗浄用積層体LBの積層方向Xとが一致するように配置されていることが好ましい。これにより、基層L3、中間層L2、及び表層L1が、積層体として一体的に製造しやすくなる。また、基層L3及び中間層L2にての泡立ちが表層L1に引き継がれやすくなる。
【0039】
本実施形態において、表層L1のアスカーF硬度は85より大きく、かつ表層L1のアスカーF硬度は基層L3のアスカーF硬度の2倍以上であることを必要とし、表層L1のアスカーF硬度は、90より大きいことが好ましく、95より大きいことがより好ましく、かつ表層L1のアスカーF硬度は基層L3のアスカーF硬度の3倍以上であることが好ましく、5倍未満であることが好ましい。本実施形態では、表層L1のアスカーF硬度は、例えば、92又は93とすることができる。表層L1のアスカーF硬度を85超とすることで、又は、基層L3のアスカーF硬度の2倍以上とすることで、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性を向上することができる。また、表層L1のアスカーF硬度は100より小さいことが好ましい。
【0040】
本実施形態において、「アスカーF硬度」は、次のような手順で測定したものである。すなわち、表層L1のアスカーF硬度は、表層L1としての板状体を水平な台上に測定対象として載置し、測定器としてのアスカーゴム硬度計F型(高分子計器株式会社製)を、載置した当該板状体上に載せてから20秒後以降1分30秒以内の値を測定した。測定するまでの時間は、測定器を載せてから安定することを目的として適宜調整してよい。次に述べる中間層L2、基層L3、及び洗浄用積層体LBについても同様にアスカーF硬度を測定した。
【0041】
本実施形態において、表層L1のアスカーF硬度は、中間層L2のアスカーF硬度よりも大きいことが好ましい。具体的には、中間層L2のアスカーF硬度は、85未満であることが好ましく、80未満であることがより好ましい。また、中間層L2のアスカーF硬度は、50以上であることが好ましく、55以上であることがより好ましく、60以上であることが更に好ましい。本実施形態では、表層L1のアスカーF硬度を高くしているため形状追随性が低下する虞があるが、中間層L2のアスカーF硬度を、表層L1のアスカーF硬度よりも小さくすることで、表層L1の硬度を高くすることによる形状追随性の低下を抑制することができる。すなわち、洗浄対象物に付着した汚れのかき取り性及び洗浄対象物に対する形状追随性を両立しやすくすることができる。また、基層L3のアスカーF硬度は、20以上であることが好ましく、25以上であることが更に好ましい。基層L3のアスカーF硬度は、55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、45以下であることが更に好ましい。
【0042】
本実施形態において、洗浄用積層体LBのアスカーF硬度は、85未満であることが好ましく、80未満であることがより好ましい。また、洗浄用積層体LBのアスカーF硬度は、60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましい。本実施形態では、洗浄用積層体LBのアスカーF硬度は、例えば、81、77、又は76とすることができる。洗浄用積層体LBのアスカーF硬度が85未満であることにより、洗浄用積層体LB全体として柔らかくなるため洗浄対象物の形状に沿いやすくなり、形状追随性が向上する。さらに、洗浄用積層体LBが手になじみやすくなり、使用性が向上する。一方、洗浄用積層体LBのアスカーF硬度が65以上であることにより、洗浄用積層体LBの成形全体の形状が安定する。
【0043】
本実施形態に係る洗浄用積層体LBは、例えば以下のように製造することができる。スラブ発泡等により得られた軟質ポリウレタンフォームを除膜処理することで、セル膜を除去し、セルが互いに連通する構造の軟質ポリウレタンフォームを用いて、所定厚さの板状体を形成し、表層L1用と基層L3用とのそれぞれについて用意する。表層L1用の板状体を加熱しつつ厚み方向へ一軸圧縮して成形することで、圧縮加工成形物の表層L1を得る。一方、基層L3用の板状体については、圧縮処理を行わず、非圧縮加工成形物とする。中間層2については、スラブ発泡等により得られた軟質ポリウレタンフォームであって、スラブ発泡等により得られた軟質ポリウレタンフォームを除膜処理せずに用いて、所定厚さの板状体を用意する。表層L1の圧縮方向が積層方向Xになるように、基層L3と、中間層L2と、表層L1とを順に各層間に接着剤を介して重ね、ロールコーター等で圧着して貼り合わせ、洗浄用積層体LBを得る。これら3つの層は、接着剤を介さず単に熱溶着等によって貼り合わせてもよい。
【0044】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【0045】
例えば、洗浄用積層体LBは、表層L1、中間層L2、及び基層L3に加え、他の層を更に備えてもよい。具体的には、例えば、特に、基層L3において、中間層L2が設けられた面と反対側の面上に、他の層が形成されてもよい。他の層の素材はウレタンフォームに限られず、任意のものとすることができる。具体的には、他の層は、例えば、セルロース等の有機繊維、又はメラミンフォーム、ポリエチレンフォーム、及びポリプロピレンフォーム等の発泡樹脂を任意に用いて形成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の洗浄用積層体は、任意の種類の洗浄用スポンジに適用可能であり、例えば、家庭用洗浄スポンジに好適に用いることができ、特に、食器等を洗浄するためのキッチン用スポンジに好適に用いることができる。本発明の洗浄用積層体は、キッチン用スポンジに用いる場合、陶器、ガラス、プラスチック等、任意の素材の食器の洗浄に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
L1 表層
L2 中間層
L3 基層
LB 洗浄用積層体
図1