IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクアインテック株式会社の特許一覧

特開2023-38860管端部材、管構造物および管構造物構築方法
<>
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図1
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図2
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図3
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図4
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図5
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図6
  • 特開-管端部材、管構造物および管構造物構築方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038860
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】管端部材、管構造物および管構造物構築方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/163 20060101AFI20230310BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20230310BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
F16L55/163
F16L58/10
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145804
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【テーマコード(参考)】
3H024
3H025
【Fターム(参考)】
3H024EA04
3H024EB02
3H024EC09
3H024ED01
3H024EE01
3H024EF09
3H025EA01
3H025EB02
3H025EC14
3H025ED02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外側管の内周面における端部から、該外側管の内周面側に配置され管端が該外側管の管端よりも奥側に位置する内側管の内周面における端部にかけて設置される管端部材に関し、外側管の内周面の端部が露出することがないようにする。
【解決手段】外側管EPLの内周面EPLiにおける端部全周から内側管LPの内周面LPiにおける端部全周にかけて覆う覆い部材11と、覆い部材11を、外側管EPLの内周面EPLiに向けて押圧する第1押圧部材12と、覆い部材11を、内側管LPの内周面LPiに向けて押圧する第2押圧部材12とを備え、覆い部材11が、外側管EPLの管端EPL1における内周面EPLiと外周面EPLoの間の厚み面EPL2に係止する係止部111が設けられたものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側管の内周面における端部から、該外側管の内周面側に配置され管端が該外側管の管端よりも奥側に位置する内側管の内周面における端部にかけて設置される管端部材であって、
前記外側管の内周面における端部全周から前記内側管の内周面における端部全周にかけて覆う覆い部材と、
前記覆い部材を、前記外側管の内周面に向けて押圧する第1押圧部材と、
前記覆い部材を、前記内側管の内周面に向けて押圧する第2押圧部材とを備え、
前記覆い部材が、前記外側管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に係止する係止部が設けられたものであることを特徴とする管端部材。
【請求項2】
前記係止部が、前記外側管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がり、前記厚み面の厚さ分以上延在したものであることを特徴とする請求項1記載の管端部材。
【請求項3】
埋設され内圧管として使用されていた既設管と、
前記既設管の内周面を裏打ちし、管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するライニング管と、
前記既設管の内周面における端部から前記ライニング管の内周面における端部にかけて設置された管端部材とを有する管構造物であって、
前記管端部材が、前記既設管の内周面における端部全周に押し付けられるとともに前記ライニング管の内周面における端部全周にも押し付けられた覆い部材を備えたものであり、
前記覆い部材が、前記既設管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に係止された係止部を有するものであることを特徴とする管構造物。
【請求項4】
前記既設管の外周面における端部と別管の端部を連結する継手部材を有し、
前記係止部は、前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がり、折れ曲がった先端が前記継手部材の内周面によって押さえられたものであることを特徴とする請求項3記載の管構造物。
【請求項5】
埋設され内圧管として使用されていた既設管の内周面を裏打ちし管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するライニング管を設けるライニング管形成工程と、
係止部が設けられた覆い部材を、前記既設管の内周面における端部全周から前記ライニング管の内周面における端部全周にかけて配置し、該既設管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に該係止部を係止した状態で、該覆い部材を、該既設管の内周面に向けて押圧するとともに該ライニング管の内周面に向けても押圧する管端部材設置工程とを有することを特徴とする管構造物構築方法。
【請求項6】
前記管端部材設置工程で設置された前記覆い部材に設けられていた、前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がった前記係止部を除去する係止部除去工程を有することを特徴とする請求項5記載の管構造物構築方法。
【請求項7】
前記既設管の外周面における端部と別管の端部を連結する継手部材の、一端側を該既設管の外周面における端部に固定するとともに、他端側を該別管の端部に固定し、該継手部材を設置する継手部材設置工程と、
前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がった前記係止部の先端が、前記継手部材設置工程で設置された前記継手部材の内周面によって押さえ込まれたことにより生じた、該先端と該継手部材の内周面との隙間に止水材を充填する止水材充填工程とを有することを特徴とする請求項5記載の管構造物構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外側管の内周面における端部から、該外側管の内周面側に配置され管端が該外側管の管端よりも奥側に位置する内側管の内周面における端部にかけて設置される管端部材、その管端部材を有する管構造物およびその管構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水配管、農業用水配管、上水道管、ガス管等の既設管では、老朽化したり管壁が損傷した場合に、管壁の内周面を裏打ちするように、既設管の内側にライニング管が設けられることがある(例えば、特許文献1等参照)。この場合、既設管とライニング管の間に僅かに発生する隙間に、ライニング管内を流れる圧力流体が侵入し、既設管を腐食させる恐れがある。このため、従来より、管端部材を設置し、その隙間に圧力流体が侵入することを防止している。
【0003】
図1は、従来の管端部材の設置方法を示す断面図である。
【0004】
図1には、既設管である外側管91と、その外側管91の内周面を裏打ちしたライニング管である内側管92の断面の上側部分のみが示されている。この図1では、外側管91の管端911は図の左側に示されており、左側が管端側になり、右側が奥側になる。図1に示す内側管92は、外側管91の内周面91i側に配置され、内側管92の管端921は、外側管91の管端911よりも奥側に位置している。
【0005】
図1(a)では、ゴム製の円筒状のパッキン部材931が、外側管91の内周面91iにおける端部から内側管92の内周面92iにおける端部にかけて貼り付けられているが、パッキン部材931も断面の上側部分のみが示されている。図1(a)に示すパッキン部材931は、円筒状のパッキン部材931の管端側の端9311を、外側管91の管端911の位置に一致させるようにして貼り付けられている。
【0006】
パッキン部材931は、人の手によって貼り付けられただけであり、外側管91と内側管92の間のシール性は不十分である。そこでパッキン部材931の押圧のために拡径バンド932が用いられる。拡径バンド932は、ステンレス製のC字状のものであり、奥側から管端側に向けて順に取り付けられる。図1(b)では、パッキン部材931の奥側に拡径バンド932が内側から嵌め込まれている。拡径バンド932を内側から嵌め込むにあたっては、C字状の拡径バンド932を不図示の拡径工具で押し拡げた状態で、C字状の隙間にその隙間を塞ぐ固定プレート(不図示)を挿入する。固定プレートを挿入することで、拡径バンド932は、拡径工具を取り外しても押し拡げられた状態を維持しパッキン部材931を外側に向けて押圧する。C字状の隙間を塞ぐ固定プレートは、管端側から奥側に向けてハンマーで叩きながら挿入する。このハンマーで叩く衝撃に伴って、拡径バンド932とともにパッキン部材931は奥側にどうしてもずれてしまうのが実情である(図1(b)中の矢印参照)。しかも、奥側から順に複数の拡径バンド932を嵌め込んでいくと、拡径バンド932を新たに嵌め込む度にパッキン部材931は奥側にずれてしまう。
【0007】
図1(c)は、4箇所に拡径バンド932を嵌め込み、管端部材93の設置が完了した様子を示す図である。図1(c)に示す状態では、パッキン部材931が奥側にずれてしまったことにより、外側管91の内周面91iにおける管端911から15cm程度の部分が露出してしまっている。
【0008】
図1(d)は、外側管91の外周面91oに継手部材95の一端側が接続した様子を示している。図1(d)に示す継手部材95の他端側には別の管が接続し、内周面91i側に内側管92が設けられた外側管91に、圧力流体が流れるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11-179804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
外側管91が鋳鉄製等の鉄製である場合には、内周面91iの露出した端部に生じた錆が圧力流体に混入し、圧力流体を使用する側で不具合が生じる場合がある。また、外側管91が、鉄製でなくても、老朽化したり損傷している場合には、露出した部分の管壁の一部が剥がれ落ち圧力流体に混入し、これもまた圧力流体を使用する側で不具合が生じる場合がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、外側管の内周面の端部が露出することがない管端部材、その管端部材を有する管構造物およびその管構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決する本発明の管端部材は、
外側管の内周面における端部から、該外側管の内周面側に配置され管端が該外側管の管端よりも奥側に位置する内側管の内周面における端部にかけて設置される管端部材であって、
前記外側管の内周面における端部全周から前記内側管の内周面における端部全周にかけて覆う覆い部材と、
前記覆い部材を、前記外側管の内周面に向けて押圧する第1押圧部材と、
前記覆い部材を、前記内側管の内周面に向けて押圧する第2押圧部材とを備え、
前記覆い部材が、前記外側管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に係止する係止部が設けられたものであることを特徴とする。
【0013】
この管端部材によれば、前記覆い部材を奥側にずらそうとうする力が加えられても、前記係止部が前記厚み面に係止されているため、該覆い部材が奥側にずれることはなく、外側管の内周面の端部が露出することがなくなる。
【0014】
なお、本発明の管端部材は、外側管が既設管、内側管がライニング管に限った構成の二重管に使用される以外にも、新品の外側管と、裏打ちされたものに限らない新品の内側管といった構成の二重管にも使用可能である。
【0015】
前記覆い部材は、伸長性を有するものであったり、弾性変形するものであることが好ましい。
【0016】
前記第1押圧部材と前記第2押圧部材は一体のものであってもよい。あるいは、前記第1押圧部材を前記外側管の延在方向に複数備えていてもよいし、前記第2押圧部材を前記内側管の延在方向に複数備えていてもよい。
【0017】
前記第1押圧部材は、前記外側管の内周面に向けて前記覆い部材を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであり、前記第2押圧部材は、前記内側管の内周面に向けて前記覆い部材を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであってもよい。
【0018】
また、上記管端部材において、
前記係止部が、前記外側管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がり、前記厚み面の厚さ分以上延在したものであってもよい。
【0019】
すなわち、前記係止部は、折れ曲がった先端が、前記外側管の外周面と一致したものであってもよいし、該外周面からさらに外側に突出したものであってもよい。この態様によれば、前記係止部の係止量を十分に確保することができる。前記先端が、前記外周面よりも外側に突出し、この突出が邪魔になる場合には、管端部材の設置後に、前記係止部を除去すればよい。
【0020】
上記目的を解決する本発明の管構造物は、
埋設され内圧管として使用されていた既設管と、
前記既設管の内周面を裏打ちし、管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するライニング管と、
前記既設管の内周面における端部から前記ライニング管の内周面における端部にかけて設置された管端部材とを有する管構造物であって、
前記管端部材が、前記既設管の内周面における端部全周に押し付けられるとともに前記ライニング管の内周面における端部全周にも押し付けられた覆い部材を備えたものであり、
前記覆い部材が、前記既設管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に係止された係止部を有するものであることを特徴とする。
【0021】
この管構造物は、本発明の管端部材を有するものであり、前記既設管の内周面の端部が露出することがなく、圧力流体に該既設管に由来した異物が混入する恐れがなくなる。
【0022】
なお、前記管端部材が、前記覆い部材を、前記既設管の内周面に向けて押圧する第1押圧部材と、前記覆い部材を、前記ライニング管の内周面に向けて押圧する第2押圧部材とを備えた態様であってもよく、さらには、前記第1押圧部材は、前記既設管の内周面に向けて前記覆い部材を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであり、前記第2押圧部材は、前記ライニング管の内周面に向けて前記覆い部材を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであってもよい。
【0023】
また、上記管構造物において、
前記既設管の外周面における端部と別管の端部を連結する継手部材を有し、
前記係止部は、前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がり、折れ曲がった先端が前記継手部材の内周面によって押さえられたものであってもよい。
【0024】
すなわち、前記係止部は、前記先端が、前記既設管の外周面からさらに外側に突出したものであり、該係止部の係止量が十分に確保されている。また、前記先端が前記継手部材の内周面によって押さえられたことで該継手部材の内周面とのシール性が高まっている。
【0025】
なお、前記係止部の前記先端と前記継手部材の内周面との隙間には止水材が充填されていてもよい。
【0026】
上記目的を解決する本発明の管構造物構築方法は、
埋設され内圧管として使用されていた既設管の内周面を裏打ちし管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するライニング管を設けるライニング管形成工程と、
係止部が設けられた覆い部材を、前記既設管の内周面における端部全周から前記ライニング管の内周面における端部全周にかけて配置し、該既設管の管端における内周面と外周面の間の厚み面に該係止部を係止した状態で、該覆い部材を、該既設管の内周面に向けて押圧するとともに該ライニング管の内周面に向けても押圧する管端部材設置工程とを有することを特徴とする。
【0027】
前記管端部材設置工程によれば、前記厚み面に前記係止部を係止した状態で、前記覆い部材を外側に向けて押圧していることで、該覆い部材を奥側にずらそうとうする力が加えられても、該覆い部材が奥側にずれることはなく、前記既設管の内周面の端部が露出することがなくなる。
【0028】
なお、前記ライニング管形成工程では、前記既設管の管端から前記ライニング管の管端が突出するようライニング管を設けてから、該ライニング管における、前記既設管の管端から突出した部分を切断し、さらに、該ライニング管の端部を削り取り、該ライニング管の管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するように最終的に仕上げてもよいし、最初から、管端が該既設管の管端よりも奥側に位置するようにライニング管の長さを該既設管の長さよりも短くしておいてもよい。
【0029】
また、前記管端部材設置工程における前記覆い部材の押圧は、前記ライニング管の内周面に向けての押圧を先に行い、その後で、前記既設管の内周面に向けての押圧を行ってもよいし、反対に、該既設管の内周面に向けての押圧を先に行い、その後で、該ライニング管の内周面に向けての押圧を行ってもよいし、該既設管の内周面に向けての押圧と該ライニング管の内周面に向けても押圧を同じタイミングで行ってもよい。
【0030】
さらに、前記管端部材設置工程における前記覆い部材の押圧は、押圧部材に奥側に押す力が加わることで該押圧部材によって前記覆い部材が外側に向けて押圧される態様であってもよい。
【0031】
また、上記管構造物構築方法において、
前記管端部材設置工程で設置された前記覆い部材に設けられていた、前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がった前記係止部を除去する係止部除去工程を有していてもよい。
【0032】
前記管端部材設置工程が終了した後であれば、前記係止部が邪魔になる場合には前記係止部除去工程を行えばよい。例えば、前記係止部の外側に向けて折れ曲がった先端が、前記既設管の外周面からさらに外側に突出して邪魔になる場合があげられる。前記係止部除去工程では。前記係止部全体を除去してもよいし、該係止部の一部のみを除去してもよい。
【0033】
あるいは、上記管構造物構築方法において、
前記既設管の外周面における端部と別管の端部を連結する継手部材の、一端側を該既設管の外周面における端部に固定するとともに、他端側を該別管の端部に固定し、該継手部材を設置する継手部材設置工程と、
前記既設管の内周面における端縁で外側に向けて折れ曲がった前記係止部の先端が、前記継手部材設置工程で設置された前記継手部材の内周面によって押さえ込まれたことにより生じた、該先端と該継手部材の内周面との隙間に止水材を充填する止水材充填工程とを有することを特徴とする。
【0034】
この管構造物構築方法では、前記覆い部材における前記係止部の前記先端は、前記既設管の外周面からさらに外側に突出したものであり、該係止部の係止量が十分に確保されている。また、前記先端が前記継手部材の内周面によって押さえられたことで該継手部材の内周面とのシール性が高まり、さらに、前記止水材充填工程によって止水材が充填されることで、シール性がさらに高められている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、外側管の内周面の端部が露出することがない管端部材、その管端部材を有する管構造物およびその管構造物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来の管端部材の設置方法を示す断面図である。
図2】管構造物を構築する現場を模式的に示した平面図である。
図3】(a)は管構造物構築方法を示すフローチャートであり、(b)は(a)に示す管端部材の設置工程(ステップS90)を詳細に示したフローチャートである。
図4図3(a)に示すライニング管加熱(ステップS60)を実行している様子を模式的に示す断面図である。
図5】本実施形態のパッキン部材を示す図である。
図6】(a)は係止部の折れ曲がった先端が、既設管部分の外周面からさらに外側に突出した態様の管端部材を示す断面図であり、(b)は既設管部の外周面に継手部材が取り付けられた状態を示す断面図であり、(c)はステップS93が実施された後の管端部材10を示す断面図である。
図7図3(a)に示す管端部材の設置工程と新設管と二重管の接続工程の変形例を2つ示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
図2は、管構造物を構築する現場を模式的に示した平面図である。
【0039】
この図2には、上下方向に広い道路R1が通り、左右方向に狭い道路R2が通った、交差点IS周辺の現場が示されている。広い道路R1は交通量が多く、通行止めや車線規制を行うことが困難な道路である。一方、狭い道路R2は交通量が少なく、通行止めを行うことが可能な道路である。
【0040】
老朽化した既設管EPは、狭い道路R2の下をその道路R2に沿って延在している。このため、交差点ISでは、広い道路R1の下を横切るように延在している。図2では、左側を上流側とし、右側を下流側とする。
【0041】
図3(a)は、管構造物構築方法を示すフローチャートである。
【0042】
図3(a)に示す管構造物構築方法では、まず、既設管EPの代わりになる新設管を埋設する(ステップS10)。図2に示す現場では、狭い道路R2を通行止めにし、既設管EPと並ぶように新設管を埋設する。狭い道路R2の、交差点ISよりも上流側の部分では、上流側新設管NP1を埋設し、交差点ISよりも下流側の部分では、下流側新設管NP2を埋設する。図2では、上流側新設管NP1を埋設した箇所には土が戻されており、下流側新設管NP2を埋設した箇所にも土が戻されている。この図2においては、埋設されている管は二点鎖線で示している。
【0043】
広い道路R1は通行止めや車線規制を行うことが困難であることから、交差点IS内で新設管を新たに埋設する作業を行うことができず、既設管を掘り出すことなく埋めたままの状態で、その既設管の内周面に新たなライニング管を設けることを行う。ライニング管は、既設管内に、反転挿入によって通される場合もあれば引き込むことによって通される場合もある。ライニング管を既設管内に通す場合の入口側を発進側と称し、出口側を到達側と称する。交差点ISに対する上流側および下流側のいずれか一方側が発進側になり、他方側が到達側になる。以下の説明では、交差点ISに対する上流側を発進側にし、交差点ISに対する下流側を到達側にする。
【0044】
ステップS10に続くステップS20では、交差点ISから上流側にずれた位置に発進側の縦穴VH1を掘削するとともに交差点ISから下流側にずれた位置に到達側の縦穴VH2を掘削する。なお、発進側の縦穴VH1と到達側の縦穴VH2はどちらを先に掘削してもよいし、同時に掘削してもよい。また、ステップS10とステップS20はどちらを先に実施してもよいし、同時に実施してもよい。図3には、縦穴VH1,VH2の縁を一点鎖線で示している。上流側の縦穴VH1を設けたことで、上流側新設管NP1の下流端部が掘り起こされているとともに、既設管EPのうち、交差点ISよりも上流側の部分も掘り起こされている。また、下流側の縦穴VH2を設けたことで、下流側新設管NP2の上流端部が掘り起こされているとともに、既設管EPのうち、交差点ISよりも下流側の部分も掘り起こされている。
【0045】
続くステップS30では、縦穴VH1,VH2によって掘り起こされた既設管EPを切断し、既設管EPの一部を除去する。図2ではクロスハッチングを施した部分が除去された部分になる。このステップS30では、ライニング管を設ける既設管部分EPLを切り出す工程になり、発進側の端部と到達側の端部が形成されたことになる。既設管部分EPLよりも上流側には、上流側既設管EP1が埋設されたままであり、既設管部分EPLよりも下側には、下流側既設管EP2が埋設されたままである。上流側既設管EP1も下流側既設管EP2も、除去されずに埋設されたまま存置される。
【0046】
ステップS40では、既設管部分EPL内にライニング管を引き込む。
【0047】
ここでライニング管について詳述する。ライニング管は、未硬化の硬化性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等)を含浸した筒状のものであり、以下の手順によって工場で予め用意される。まず、外側フィルム層が外側に位置しその外側フィルム層の内側に基材層が位置した筒状のベースホースと、伸長層が外側に位置しその伸長層の内側に基材層が位置した筒状のキャリブレーションホースを別々に用意し、それぞれの基材層に熱硬化性樹脂を含浸する。次いで、熱硬化性樹脂が含浸されたベースホースの内側にキャリブレーションホースを工場内で反転挿入する。反転挿入では、基材層が内側に位置するキャリブレーションホースをその基材層が外側にくるようにめくり返しながら、キャリブレーションホースをベースホースの内側に挿入する。キャリブレーションホースは、ベースホースの一端側からベースホースの内側に入れ込まれ、空気又は水の力によって工場内で反転挿入される。キャリブレーションホースは、ベースホースよりも厚みが薄いものであるため、反転挿入は容易に行われる。キャリブレーションホースを反転挿入することで、ベースホースの基材層とキャリブレーションホースの基材層が接触し、ベースホースとキャリブレーションホースという2つの筒状の部材が一体になったライニング管が完成する。ライニング管の最外側面は外側フィルム層によって構成されるとともにその最内側面は伸長層によって構成され、外側フィルム層と伸長層の間に、熱硬化性樹脂を含浸した基材層が配置される。その後、伸長層の内側に、ライニング管を加熱するための蒸気を供給するための蒸気供給チューブを挿入しておく。完成したライニング管は偏平にし、つづら折りにして折り畳んだ状態あるいは巻き取った状態で低温保管可能である。ライニング管は、折り畳んだ状態あるいは巻き取った状態のまま保冷車によって施工現場に運搬され、ステップS40で使用される。
【0048】
ステップS40では、到達側の縦穴VH2内に不図示のウインチを設置する。続いて、滑車を介してウインチに巻かれている引込ワイヤの後端を、既設管部分EPLの、到達側端部から発進側端部に挿通させ、既設管部分EPL内に引込ワイヤを貫通させる。
【0049】
ライニング管の先頭部分を結束ワイヤで結束し、その結束ワイヤと既設管部分EPLの発進側端部まで貫通した引込ワイヤの後端を接続する。到達側の縦穴VH2内に設置した不図示のウインチで、引込ワイヤを巻き取り、ライニング管を、既設管部分EPLの発進側端部から既設管部分EPL内に引き込む。ライニング管の、結束ワイヤで結束した先頭部分が、既設管部分EPLの到達側端部から出るまで引込ワイヤを巻き取ったらウインチを停止して引き込みを完了する。
【0050】
ステップS50では、ライニング管から結束ワイヤを取り外し、既設管部分EPLを貫通したライニング管の両側の開口端それぞれを密閉状態にする。ライニング管の内部には、蒸気供給チューブが、発進側端部から到達側端部まで通っている。ステップS50では、ライニング管内に蒸気供給チューブから常温のエアーを供給し、ライニング管を膨らませ、ライニング管を拡径させる。ライニング管が十分に膨らむと、ライニング管の外側フィルム層が既設管部分EPLの内周面に押し付けられる。
【0051】
図4は、図3(a)に示すライニング管加熱(ステップS60)を実行している様子を模式的に示す断面図であり、図の左側が発進側になり右側が到達側になる。この図4には、広い道路を通って交差点ISを行き来する車両V1,V2が示されている。また、狭い道路R2に車両が進入することを防止するための三角コーンTCも示されている。
【0052】
また、図4には、既設管部分EPLに複数のひび割れC1~C4が生じた様子が示されている。
【0053】
また、図4には、既設管部分EPLを貫通した状態で拡径されたライニング管LPも示されている。このライニング管LPの中心部分には、蒸気供給チューブ36が通っている。図4に示す蒸気供給チューブ36には、延在方向に沿って1mおきに直径1cm程度の丸孔362が設けられ、到達側の端部には、幅が数cmであり長さが10cm~20cm程度のスリット孔361が設けられている。さらに、ライニング管LPの、発進側端部には発進側治具34が配置されており、到達側端部には到達側治具35が配置されている。発進側治具34は、栓部材341と、発進側締付部材342と、チューブ締付部材343を備えている。栓部材341は、蒸気供給口3411と蒸気排出口3412を有する。この栓部材341は、発進側締付部材342によってライニング管LPの発進側の開口端に固定されており、蒸気供給口3411と蒸気排出口3412を除いて、ライニング管LPの発進側の開口を閉塞するものである。蒸気供給口3411には、蒸気供給チューブ36がチューブ締付部材343によって固定されている。到達側治具35は、締結ドラム351と到達側締付部材352を備えている。締結ドラム351は、円筒形状の剛体である。ライニング管LPの到達側端部と蒸気供給チューブ36の到達側端部は、剛体である締結ドラム351の外周面で到達側締付部材352によって締め付けられ、ライニング管LPの到達側の開口も蒸気供給チューブ36の到達側の開口も密閉されている。なお、ライニング管LPとして、到達側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。同様に、蒸気供給チューブ36として、到達側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。
【0054】
図4に示す発進側の縦穴VH1の入口近傍には、ボイラー31、コンプレッサー32、ミキシング装置33および排気装置38が設置されている。ボイラー31からは、例えば100℃を超えて加熱された過熱蒸気が送り出される。なお、ボイラー31から送り出される蒸気は、飽和蒸気であってもよい。コンプレッサー32は、外気(空気)を圧縮して送り出すものである。ボイラー31から送り出された過熱蒸気とコンプレッサー32から送り出された外気は、ともにミキシング装置33に供給されて混合される。以下、ミキシング装置33で混合されて送り出される、過熱蒸気と外気の混ざり合った気体を、加熱用蒸気と称する。ボイラー31とミキシング装置33をつなぐ配管には蒸気バルブ311が設けられており、コンプレッサー32とミキシング装置33をつなぐ配管には空気バルブ321が設けられている。蒸気バルブ311と空気バルブ321を操作して絞り量を調整することで、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の温度を調整したり、その加熱用蒸気の流量を調整することができる。排気装置38は、消音部381と排気ダクト382を有する。
【0055】
ミキシング装置33からは供給用ホースSHが延在している。この供給用ホースSHは、栓部材341の蒸気供給口3411に接続している。また、栓部材341の蒸気排出口3412からは排気用ホースCHが延在している。この排気用ホースCHは、消音部381に接続している。排気用ホースCHの途中には、排気用ホースCH内を流れる流体の流量を調整するための排気バルブCH1が設けられている。上述したライニング管拡径工程(ステップS50)では、この排気バルブCH1と蒸気バルブ311は閉めた状態にし、空気バルブ321は開いた状態にして、コンプレッサー32を稼動し、ライニング管LPの内部に外気(空気)を供給する。
【0056】
ライニング管加熱工程(ステップS60)では、加熱用蒸気(例えば、80℃から100℃の加熱用蒸気)が用いられる。拡径された状態のライニング管LPの内部には、蒸気供給チューブ36に設けられたスリット孔361と丸孔362から加熱用蒸気が吹き出し、ライニング管LPは、既設管部分EPLの内周面に押し付けられた状態が維持されるとともに加熱用蒸気によって加熱される。その結果、ライニング管LPに含浸されていた熱硬化性樹脂の硬化が開始される。
【0057】
なお、ライニング管LPの到達側端部には、ドレン排出管37が差し込まれている。図4では、図示の都合上、ドレン排出管37がライニング管LPの上側部分に差し込まれている様に描かれているが、実際にはドレン排出管37は、ライニング管LPの下端部分に差し込まれている。加熱用蒸気は、ある程度の熱をライニング管LPに奪われることで、ライニング管LPの内部では一部がドレンに変化する。ドレン排出管37にはバルブ371が設けられた配管が接続している。そのバルブ371を開けることで、ライニング管LPの内部で生じたドレンは、ライニング管LPの外部に排出される。
【0058】
ライニング管LPの到達側で蒸気供給チューブ36から供給された加熱用蒸気は、発進側の栓部材341における蒸気排出口3412に向かってライニング管LP内を流れ徐々に温度が低下していき、その蒸気排出口3412から排気用ホースCHを通って消音部381に送り込まれる。消音部381は、排気用ホースCHの断面積よりも広い断面積の内部空間を有するとともに消音材も配置されている。加熱用蒸気にはボイラー31の炊き出し音等の音波がのっており、また、大気放出音も生じる。消音部381は、これらの音を消音するものである。消音部381を通過した加熱用蒸気は排気ダクト382から大気中に排気される。
【0059】
ステップS60では、ライニング管LPの到達側の端部および発進側の端部それぞれにおいて、ライニング管LP自身の温度を測定している。熱硬化性樹脂の硬化発熱によってライニング管LPの端部それぞれの温度は、一旦は上昇するが、その後、温度低下を開始する。ライニング管LPの温度が、温度上昇から温度低下に転じほぼ一定の温度に落ちついたことで、熱硬化性樹脂の硬化は十分なレベルまで完了している。この状態から、硬化を完了させる加熱用蒸気よりも高い温度の加熱用蒸気(例えば、100℃~105℃)を供給する。こうすることで、熱硬化性樹脂の強度を高めることができる。強度を高めるための加熱用蒸気による加熱時間は予め実験によって求めておき、その加熱時間が経過するとステップS60は終了になる。
【0060】
以上説明したライニング管加熱工程(ステップS60)によれば、ライニング管LPが既設管部分EPLの内周面に押し付けられた状態で、含浸されている熱硬化性樹脂が硬化するとともに強度を増し、既設管部分EPLの内周面の内側にライニング管LPによる新たな自立管路が形成される。既設管部分EPLは外側管の一例に相当し、新たな自立管路として形成されライニング管LPは内側管の一例に相当する。
【0061】
その後、ボイラー31を停止して蒸気バルブ311を閉じることで、加熱用蒸気に代えて外気(常温の空気)を供給し、硬化したライニング管LPを冷却する。
【0062】
図3に示すステップS70では、管口の切断を行い、ライニング管LPの両端を開口する。図4に示すライニング管LPは、既設管部分EPLよりも、発進側にしても到達側にしても突出しているが、このステップS70では、硬化したライニング管LPの両端それぞれの突出した部分を切断する。
【0063】
続いて、ライニング管の端部除去工程(ステップS80)を実施する。このステップS80の工程では、硬化したライニング管LPの管端が、既設管部分EPLの管端よりも奥側に位置するように、硬化したライニング管LPの端部をグラインダー等で削り取る。こうすることで、既設管部分EPLの内周面における端部が露出する。この結果、埋設され内圧管として使用されていた既設管部分EPLの内周面を裏打ちし管端が既設管部分EPLの管端よりも奥側に位置するライニング管LPが完成する。ステップS40~ステップS80は、ライニング管形成工程の一例に相当する。
【0064】
なお、硬化したライニング管の管端が、最初から、既設管部分EPLの管端よりも奥側に位置するように、既設管部分EPLの長さよりも短いライニング管を用いて、ステップS40~ステップS70を実施しておけば、ステップS80の実施は不要になる。
【0065】
続いて、管端部材の設置工程(ステップS90)を実行する。
【0066】
図3(b)は、同図(a)に示す管端部材の設置工程(ステップS90)を詳細に示したフローチャートである。
【0067】
まず、パッキン部材を設置する(ステップS91)。パッキン部材は、覆い部材の一例に相当する。
【0068】
図5は、本実施形態のパッキン部材を示す図である。この図5でも、図1と同じく、図の左側が管端側になり、右側が奥側になる。
【0069】
図5(a)には、ステップS80によって端部が削り取られたライニング管LPと、内周面における端部が露出した既設管部分EPLそれぞれの断面の上側部分のみが示されている。既設管部分EPLの管壁の厚みは、既設管の径に応じて変わってくるが、例えば、5mm以上10mm以下である。ライニング管LPの管壁の厚みも、既設管の径に応じて変わってくるが、例えば、10mm以上20mm以下である。
【0070】
また、図5(a)では、ライニング管LP(内側管に相当)と既設管部分EPL(外側管に相当)からなる二重管WPの下に、本実施形態のパッキン部材11(覆い部材に相当)の断面の上側部分のみが示されている。パッキン部材11の厚みは5mm程度であるが、図5では、各部材の厚みの相対的な関係を無視して示している。図5(a)に示すパッキン部材11は、ゴム製であって、伸長性と可撓性を有する。パッキン部材11は、シール部110と、既設管部分EPLの管端EPL1における管壁の厚み面EPL2に係止する係止部111を有する。なお、厚み面EPL2とは、管端EPL1における、内周面EPLiと外周面EPLoの間の面である。
【0071】
図5(b)には、既設管部分EPLの内周面EPLiにおける端部全周からライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周にかけてパッキン部材11が接着剤によって貼り付けられている。図5(b)に示すパッキン部材11における係止部111は、既設管部分EPLの厚み面EPL2に係止されている。この係止部111は、厚み面EPL2に係止されているだけであって貼り付けられていなくてもよいが、厚み面EPL2に貼り付けられている方が係止力が高められる。また、係止部111は、シール部110と同じゴム製であるが、係止部111をシール部110よりも伸長性が劣るもの(例えば、全体を剛体にしたり、剛体が内包されたもの)にすることで係止力をより高めることができる。
【0072】
図5(a)に示すように、パッキン部材11のシール部110は、奥側に向かうほど径が漸次小さくなる円錐台形状のものである。このシール部110は、図5(b)に示すように、既設管部分EPLの内周面EPLiにおける端部全周からライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周にかけて貼り付けられることで、既設管部分EPLの内周面EPLiとライニング管LPの内周面LPiとの段差st(ライニング管LPの管壁の厚み分の差)に追従した形状になる。すなわち、シール部110(パッキン部材11)にも段部113が形成される。
【0073】
図5(b)に示す係止部111は、既設管部分EPLの内周面EPLiにおける端縁Eg(図5(a)参照)で外側に向けて折れ曲がり、厚み面EPL2の厚さ分だけ延在したものである。したがって、係止部111の折れ曲がった先端1111は、既設管部分EPLの外周面EPLoに一致している。なお、外側とは、既設管部分EPLの中心軸側を内側とした場合の径方向外側のことをいう。
【0074】
図3(b)に示す管端部材の設置工程(ステップS90)では、パッキン部材11が設置されると、拡径バンド12の嵌め込みが行われる(ステップS92)。
【0075】
本実施形態の拡径バンド12も、図1を用いて説明した拡径バンド932と同じく、ステンレス製のC字状のものであり、奥側から管端側に向けて順に取り付けられる。この拡径バンド12は、第1押圧部材や第2押圧部材の一例に相当する。図5(c)では、パッキン部材11の奥側に拡径バンド12が内側から嵌め込まれている。拡径バンド12を内側から嵌め込むにあたっては、C字状の拡径バンド12を不図示の拡径工具で押し拡げた状態で、C字状の隙間にその隙間を塞ぐ固定プレート(不図示)を挿入する。固定プレートを挿入することで、拡径バンド12は、拡径工具を取り外しても押し拡げられた状態を維持しパッキン部材11を外側に向けて押圧する。C字状の隙間を塞ぐ固定プレートは、管端側から奥側に向けてハンマーで叩きながら挿入する。拡径バンド12は、不図示の拡径工具で押し拡げられた状態であるが、固定プレートの挿入によってさらに押し拡げられる。固定プレートをハンマーで叩く衝撃が加わっても、本実施形態のパッキン部材11は、係止部111が既設管部分EPLの厚み面EPL2に係止されているため、パッキン部材11全体が奥側にずれてしまうことが防止されている。奥側から順に複数の拡径バンド12を嵌め込んでいっても、パッキン部材11全体が奥側にずれてしまうことが防止される。
【0076】
図5(d)は、4箇所に拡径バンド12を嵌め込み、管端部材10の設置工程が終了した様子を示す図である。図5(d)に示すパッキン部材11は、係止部111が既設管部分EPLの厚み面EPL2に係止されており、既設管部分EPLの内周面EPLiにおける端部全周はシール部110によって覆われ、露出している部分はない。
【0077】
なお、図5(a)に示すパッキン部材11に代えて、シール部110に、図5(b)に示す段部113が予め形成された2段筒構造のものを用いてもよい。ただし、現場におけるライニング管LPの端部除去(図3(a)に示すステップS80)では、ライニング管LPの端部を既設管部分EPLの管端EPL1から奥側に所定長だけ正確に削り取ることが困難であることがあり、ライニング管LPの管端LP1の位置が前後する場合がある。この場合には、予め形成しておいた段部113が、ライニング管LPの実際の管端LP1の位置よりも奥側になってしまうと不都合が生じるため、段部113を、既設管部分EPLの管端EPL1寄りに設けておくことが好ましい。また、シール部110が軸心方向(延在方向)に径が等しい円筒状のものを用いてもよい。ただし、本実施形態のように奥側に向かうほど径が漸次小さくなる円錐台形状のシール部110の方が、パッキン部材11を既設管部分EPLの管端EPL1からライニング管LPの内周面LPiに届くまで容易に挿入することができる。シール部110がこのような円錐台形状であると、拡径バンド12のC字状の隙間に固定プレートを挿入する際に、拡径バンド12が奥側によりずれやすくなってしまうが、係止部111が設けられているためずれる心配もなく、パッキン部材11の挿入の容易性が際立つようになる。なお、シール部110は、径が等しい部分と径が漸次小さくなる部分が組み合わさって全体として見れば管端側(手前側)よりも奥側の方が径が小さくなったものであってもよい。
【0078】
図2では、切り出された既設管部分EPLの内周面側に点線で示すようにライニング管LPが設置されている。ライニング管LPと既設管部分EPLからなる二重管WPの両端部それぞれには、図3(b)を用いて説明した管端部材の設置工程によって、管端部材10が設置されているが、この図2では図示省略されている。
【0079】
図3(a)に示す管構造物構築方法では、管端部材10が設置された二重管WPと新設管NPの接続工程(ステップS100)が実施される。
【0080】
このステップS100では、管端部材10が設置された二重管WPの両端それぞれに継手部材(図6(b)参照)を設置する。また、図2に示す発進側の縦穴VH1を掘削することで掘り起こされた、上流側新設管NP1の下流端部にも継手部材を設置する。さらに、到達側の縦穴VH2を掘削することで掘り起こされた、下流側新設管NP2の上流端部にも継手部材を設置する。続いて、二重管WPの発進側の継手部材と、上流側新設管NP1の下流端部に設置された継手部材との間に、鋳鉄製の上流側接続管CP1(図2参照)を設置する。また、二重管WPの到達側の継手部材と、下流側新設管NP2の上流端部に設置された継手部材との間に、鋳鉄製の下流側接続管CP2(図2参照)も設置する。二重管WPと新設管NPの接続工程(ステップS100)が完了すると、図2に示す、上流側新設管NP1、上流側接続管CP1、二重管WP、下流側接続管CP2および下流側新設管NP2がつながった管構造物PSが構築される。管構造物PSが構築されると、発進側の縦穴VH1も到達側の縦穴VH2も埋められ、狭い道路R2には舗装が施される。
【0081】
図5を用いて説明した管端部材10では、係止部111の折れ曲がった先端1111が、既設管部分EPLの外周面EPLoに一致しており、係止部111の係止量は十分に確保されている。ただし、既設管部分EPLの管壁の厚みは既設管によって変わるため、係止部111の折れ曲がった先端1111が、既設管部分EPLの外周面EPLoに必ず一致するとは限らず、その外周面EPLoに達しない場合(既設管部分EPLの管壁の厚みよりも短い場合)があってもよい。あるいは、係止部111の係止量を最大限に確保するため、係止部111の長さを長目にしておいてもよい。
【0082】
図6(a)は、係止部の折れ曲がった先端が、既設管部分の外周面からさらに外側に突出した態様の管端部材を示す断面図である。以下の説明では、これまで説明した構成要素と同じ名称の構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0083】
図6(a)に示す係止部111は、厚み面EPL2(図5(a)参照)に係止されているだけであって貼り付けられていない。図6(a)に示すパッキン部材11もゴム製であって可撓性を有するため、係止部111は、図6(a)に示す矢印のように奥側とは反対側(手前側)に撓むことが可能である。
【0084】
また、図6(a)に示す既設管部分EPLの外周面EPLoには、外側に向けて突出した外周リブEPL3が周方向に延在している。
【0085】
図7は、図3(a)に示す管端部材の設置工程と新設管と二重管の接続工程の変形例を2つ示すフローチャートである。
【0086】
図7には、図3(b)に示す管端部材10の設置工程(ステップS90)におけるステップS91およびステップS92が示されている。左側に示す第1変形例では、ステップS92に続いて、新設管と二重管の接続工程(ステップS100)が実施される。まず、既設管部分EPLの外周面EPLoから先端1111がさらに外側に突出している係止部111を傾斜させた状態で継手部材20を接続する(ステップS101)。
【0087】
図6(b)は、既設管部分EPLの外周面EPLoに継手部材20が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0088】
既設管部分EPLの外周面EPLoに設けられた外周リブEPL3には、半割れ固定フランジFR1が係止されている。半割れ固定フランジFR1は、既設管部分EPLの外周面EPLoを外側から挟み込むように1/2円弧に分割されたフランジである。さらに、既設管部分EPLの外周面EPLoにおける管端EPL1(図6(a)参照)側には、ルーズフランジFR2が外嵌めされている。このルーズフランジFR2に対向するように、継手部材20が既設管部分EPLの外周面EPLoに外嵌めされる。継手部材20は、鋳鉄製であり、一端には第1フランジ21が設けられ、他端には第2フランジ22が設けられている。第1フランジ21は、ルーズフランジFR2との間に2つのゴムリング25を挟み込み、第1フランジ21、ルーズフランジFR2および半割れ固定フランジFR1をネジ棒26が貫通している。ネジ棒26は、周方向に間隔をあけて各フランジの全周にわたって配置されている。ネジ棒26には、各フランジごとにナット271~273が設けられており、これらのナット271~273を締め込むことで、二重管WPに継手部材20が固定される。
【0089】
二重管WPに継手部材20をセットすると、係止部111の、外周面EPLoからさらに外側に突出した先端1111が、継手部材20の内周面20iによって押さえられることで撓まされ、図6(b)に示すように、係止部111は斜めの姿勢になる。係止部111の先端1111は、継手部材20の内周面20iに押さえられていることで、その内周面20iとのシール性が高まっている。
【0090】
続いて、図7に示すステップS102では、傾斜させた係止部111の周辺に止水材を充填する。図6(b)には、係止部111の先端1111と継手部材20の内周面20iとの隙間に灰色で示した止水材28が充填されており、上記シール性がさらに高められている。
【0091】
続くステップS104では、新設管に接続管を接続する。例えば、図2に示す上流側新設管NP1や下流側新設管NP2といった鋳鉄製の新設管に、図6(b)に示す継手部材20と同じような継手部材を介して、図2に示す上流側接続管CP1や下流側接続管CP2といった鋳鉄製の接続管を接続する。
【0092】
次いで、ステップS105では、二重管WPに接続した継手部材20に接続管を接続する。図6(b)に示すように、継手部材20の内周面20iには、接続管の先端を受け止める段部23が周方向に設けられている。この段部23には、接続管の先端(接続管の管壁の厚み面)が突き当たり、継手部材20の第2フランジ22とその接続管の外周面に設けられたフランジを連結することで、継手部材20に接続管を接続する。ステップS105の実施が完了すると、新設管と二重管の接続工程(ステップS100)は終了になる。
【0093】
一方、図7の右側に示す第2変形例では、ステップS92に続いて、ステップS93が実施される。ステップS93は、既設管部分EPLの外周面EPLoから先端1111がさらに外側に突出している係止部111全体を除去する工程である。
【0094】
図6(c)は、ステップS93が実施された後の管端部材10を示す断面図である。
【0095】
図6(c)には、係止部111全体が除去されたパッキン部材11が示されている。図6(c)に示す既設管部分EPLの内周面EPLiにおける端部全周は、端縁Egからシール部110によって覆われており、露出している部分はない。ただし、既設管部分EPLの厚み面EPL2は露出してしまっている。現場における既設管の一部除去(図3(a)に示すステップS30)では、既設管部分EPLの管端EPL1における切断面(厚み面EPL2)がきれいな切断面にならない場合もあり得る。図5に示す係止部111や、図6(b)に示す係止部111であれば、厚み面EPL2を隠すことができ、さらには、ライニング管LP内を流れる圧力流体に厚み面EPL2に由来した異物が混入する恐れもなくなるといった利点がある。これらの利点からすると、除去作業はやや煩雑になるが、係止部111のうち、既設管部分EPLの外周面EPLoから外側に突出した部分のみを除去するようにしてもよい。
【0096】
第2変形例では、ステップS93の実施が完了すると、管端部材10の設置工程(ステップS90)は終了になり、新設管と二重管の接続工程(ステップS100)が開始される。このステップS100では、図6(c)に示すように、二重管WPに継手部材20が接続される(ステップS103)。以降は、ステップS104およびステップS105が実施され、新設管と二重管の接続工程(ステップS100)が終了する。
【0097】
次に、図5を参照しながら、第3変形例について説明する。この第3変形例は、外側管(既設管部分EPL)の内周面EPLiにおける端部から、外側管(既設管部分EPL)の内周面EPLi側に配置され管端が該外側管(既設管部分EPL)の管端EPL1よりも奥側に位置する内側管(ライニング管LP)の内周面LPiにおける端部にかけて設置される管端部材10であって、前記外側管(既設管部分EPL)の内周面LPiにおける端部全周から前記内側管(ライニング管LP)の内周面LPiにおける端部全周にかけて覆う覆い部材(パッキン部材11)と、前記覆い部材(パッキン部材11)を、前記外側管(既設管部分EPL)の内周面LPiに向けて押圧する第1押圧部材(図5(d)に示す左側2つの拡径バンド12)と、前記覆い部材(パッキン部材11)を、前記内側管(ライニング管LP)の内周面LPiに向けて押圧する第2押圧部材(図5(d)に示す右側2つの拡径バンド12)とを備え、前記覆い部材(パッキン部材11)が、前記外側管(既設管部分EPL)と前記内側管(ライニング管LP)との段差st(ライニング管LPの管壁の厚み分の差)に係止する不図示の係止部が設けられたものであることを特徴とする。
【0098】
なお、前記覆い部材(パッキン部材11)は、伸長性を有する基部(シール部110)を有するものであり、前記係止部は、前記基部よりも伸長性が劣るものであり、好ましくは剛体である。こうすることで、前記覆い部材(パッキン部材11)を奥側にずらそうとうする力が加えられても、前記係止部が前記段差stに係止されやすくなり、該係止部による該段差stへの係止が維持される。
【0099】
また、図2を用いて説明した内圧管リニューアル工法についてまとめると、埋設され内圧管として使用されていた既設管EPを、ライニング部分(既設管部分EPL)と、該ライニング部分よりも上流側の上流側部分(上流側既設管EP1)と、該ライニング部分(既設管部分EPL)よりも下流側の下流側部分(下流側既設管EP2)とに分割する分割工程(図3(a)に示すステップS30)と、前記ライニング部分(既設管部分EPL)の内周面EPLiを裏打ちするライニング管LPを設けるライニング工程(図3(a)に示すステップS40~ステップS60)と、前記上流側部分(上流側既設管EP1)の代わりに新規な上流側部分(上流側新設管NP1)を埋設する新規上流側部分埋設工程と(図3(a)に示すステップS10)、前記下流側部分(下流側既設管EP2)の代わりに新規な下流側部分(下流側新設管NP2)を埋設する新規下流側部分埋設工程(図3(a)に示すステップS10)と、前記ライニング管LPの上流側の管端と、前記新規上流側部分埋設工程で埋設された新規上流側部分(上流側新設管NP1)を接続する上流側接続工程(図3(a)に示すステップS100)と、前記ライニング管LPの下流側の管端と、前記新規下流側部分埋設工程で埋設された新規下流側部分(下流側新設管NP2)を接続する下流側接続工程(図3(a)に示すステップS100)とを有することを特徴とする内圧管リニューアル工法になる。
【0100】
前記ライニング部分(既設管部分EPL)は、交通量が多かったり、建築物が建築されている等の事情により、全長にわたって掘り起こして新規な管に交換することが困難な部分に適用される。前記ライニング部分(既設管部分EPL)では、該ライニング部分の上流側の端部と下流側の端部のみを掘り起こすだけですむ。すなわち、掘り起こすことができる上流側部分と、掘り起こすことができる下流側部分との間を結ぶ部分が前記ライニング部分になる。
【0101】
前記ライニング工程は、未硬化の前記ライニング管LPを潰した状態で前記ライニング部分に引き込んだ後、該ライニング管を前記ライニング部分の内周壁に押し付けた状態で該ライニング管を硬化させる工程であってもよい。
【0102】
前記新規上流側部分埋設工程は、前記上流側接続工程が実施される前に完了していればどのタイミングで実施されてもよい。同じく、前記新規下流側部分埋設工程は、前記下流側接続工程が実施される前に完了していればどのタイミングで実施されてもよい。前記ライニング工程は、前記分割工程の後であって、前記上流側接続工程および前記下流側接続工程が実施される前であればどのタイミングで実施されてもよい。
【0103】
本発明は、これまでに説明した実施の形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、管端部材10は、外側管が既設管、内側管がライニング管に限った構成の二重管に使用する以外にも、新品の外側管と、裏打ちされたものに限らない新品の内側管といった構成の二重管にも使用可能である。一例としては、外側管が剛性を確保するための管であり、内側管が圧力流体に侵食されない材質の管で構成された二重管の、外側管と内側管の間に僅かに発生する隙間をシールするための管端部材であってもよい。
【0104】
また、以上説明した実施の形態の記載や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、実施の形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 管端部材
11 パッキン部材(覆い部材)
110 シール部
111 係止部
1111 先端
12 拡径バンド(第一押圧部材、第二押圧部材)
EP 既設管(外側管)
EP1 上流側既設管
EP2 下流側既設管
EPL 既設管部分
EPLi 内周面
EPLo 外周面
EPL1 管端
EPL2 厚み面
Eg 端縁
LP ライニング管(内側管)
LPi 内周面
WP 二重管
NP 新設管
NP1 上流側新設管
NP2 下流側新設管
PS 管構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7