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▶ 世良 昌也の特許一覧

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  • 特開-アンカー設置固定具 図1
  • 特開-アンカー設置固定具 図2
  • 特開-アンカー設置固定具 図3
  • 特開-アンカー設置固定具 図4
  • 特開-アンカー設置固定具 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038879
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】アンカー設置固定具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20230310BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
E04D13/00 K
E04G23/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021169169
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】521184449
【氏名又は名称】世良 昌也
(72)【発明者】
【氏名】世良 昌也
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA05
2E176AA23
2E176BB34
(57)【要約】
【課題】陸屋根などの屋上防水面にアンカーを新設するために、既設防水層との防水性を確保するとともに次の改修時の防水施工を容易にすることのできる固定具を提供する。
【解決手段】新設するアンカー固定具は、旧防水層への固定フランジパネル10とアンカーを支持するフランジ20との二重構造を備える。固定フランジパネルは外周裏面側で旧防水との防水性を担保する機能を有し、アンカーを支持するフランジは取り外し可能な構造でのちの防水改修時に容易に防水施工後のアンカー復旧を可能としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸屋根などの屋上防水面にアンカーを設置する際に、旧防水面への設置フランジと、アンカーを支持するフランジの2枚の金属製フランジを有するアンカー設置固定具。
【請求項2】
旧防水面上に、複数の固定ビスで躯体に設置された設置用フランジとアンカー支持フランジが、設置用フランジと取り外し可能な金属製のアンカーボルトとビスで固定設置されている、請求項1に記載のアンカー設置固定具。
【請求項3】
旧防水面に設置された、設置用フランジの裏面側外周部分に、旧防水層との防水性を保持する不定形接着剤を配し、その内側に複数の固定ビスを配した、請求項1又は2に記載のアンカー設置固定具。
【請求項4】
前記アンカー設置固定具が、屋外露出状態での耐腐食性に優れたステンレス鋼材で作成された、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンカー設置固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸屋根などの屋上防水面に防水性、改修性に優れた、アンカー設置固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
陸屋根などの屋上では新築時予定していないアンテナ支持、太陽光発電設置、雪止め、改修工事での安全支持体など、後工事でのアンカー設置が検討されている。設置されるアンカーは、躯体に直接アンカーを埋設するケースやフランジにアンカーを設置して取り付けるケースなどが開示されている。
【0003】
躯体に直接アンカーを敷設する方法は、新築工事では多く採用されているものの既存防水層に設置するケースでは、特許文献1にも示されるように、貫通した旧防水部分の防水性能の保持に多大な工夫が必要となっている。また、フランジにアンカーを固定して設置するケースにおいては、アンカーへの荷重が直接固定するフランジの取り付けビスに掛かるのを防止して、補助するために、特許文献2の請求項2,3に示されるような荷重を負担する治具の設置が必要となっている。
【0004】
これらいずれの場合においても、次の防水改修に対する手法は、提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-219822
【特許文献2】特開2011-58216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の陸屋根屋上防水面にアンカーを新設しようとする場合、特許文献1に示されたような、アンカーを直接埋設しようとする場合に、既設防水層の種類や施工後経過年数によっては、安全な防水性を提供できないことがある。
【0007】
近年陸屋根の防水工法には、防水層の材質によらず特許文献2にも記載される防水面直下に断熱層を設けた仕様も増加しており、この場合にはアンカーの直接埋設は困難であり、特許文献2で示されているフランジにアンカーを固定して、その設置ビスに対して、断熱層の厚さごとに補強の設定が必要となるため、既設防水層への開削作業が必要となり、防水性が低下することがある。
【0008】
また、アンカー設置の要求が、太陽光発電パネルの設置用アンカーであった場合などは、防水層の耐用寿命と、太陽光発電パネルに期待される発電の寿命に、隔たりがあるため、必ず、防水層の改修が、複数回必要となるにも拘らず、その対応が非常に困難なものになっている。
【0009】
したがって、既設の陸屋根などの屋上防水面にアンカーを新設する場合、防水性能を維持しつつ、容易に改修が可能なアンカー固定具が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、防水面に固定するためのフランジ部材と、アンカーを支持するフランジ部材とからなり、防水面に固定するフランジの上面には、アンカーを支持するフランジと、同部材をナット固定するためのアンカーボルトが設置されている。また、アンカーを支持するフランジには、アンカーボルトの該当箇所に、穿孔部が施され、それをナットで固定できる構造となっている。
【0011】
防水面に固定されるフランジの裏面外周部には、既存防水層の防水性を保持するため不定形接着剤が塗布されるスペースを有し、その内側に、防水面に固定するビス用の穿孔部が施され固定されている。また、フランジの上面固定ビスの上部は止水性を有する定型テープで保持され、アンカーを保持するフランジで固定される。
【発明の効果】
【0012】
前述した本発明に係るアンカー固定具によれば、新設アンカーを設置する屋上面の防水層と、固定されるフランジ裏面外周に塗布された、不定形接着剤により、防水性を維持することが可能で、防水層直下に断熱層があっても新設フランジにかかる荷重は、固定用フランジを躯体に留めつけた複数のビスにより荷重負担できる。
【0013】
既存防水層に耐久寿命が訪れた場合、アンカーを支持するフランジを取り外し、防水面に固定したフランジに対して新設防水層をかぶせ工法等により、防水改修実施することで、アンカーを支持するフランジを再度取り付け、防水改修施工後にアンカー復旧が容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアンカー設置固定具の組立体の断面図である。
図2】本発明に係るアンカー設置固定具の分解斜視図である。
図3】防水面に敷設する固定用フランジ裏面への不定形接着剤塗布図である。
図4】本発明に係るアンカー設置固定具での防水改修工事後のアンカー復旧時組立体の断面図である。
図5】アンカー設置固定具が円形である場合の固定フランジと組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のアンカー設置の実施形態に関して、図面を参照しながら説明する。以下の図面において、同一もしくは類似の部分には、同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり各寸法やその比率等は、現実のものとは異なることがあることに留意が必要である。
【0016】
図1は、本発明のアンカー設置固定具の実施断面図である。設置対象となる陸屋根屋上構造は、RC躯体100に、断熱層200の構成を持つ防水層300が表皮となる屋上防水面に、本発明のアンカー設置固定具を新設した場合の断面図となっている。
【0017】
本発明が適合できる屋上構造は、図1に示されたRC躯体100に限ることなく、ALC躯体、木質系躯体、耐火金属デッキ、プレキャスト板などであっても良い。また、断熱層200は躯体を構成する条件ではない。防水層300もアスファルト、改質アスファルト、ゴムシート、塩ビシート、オレフィンシート、ウレタン塗膜などが対象とされる。
【0018】
本発明に係るアンカー設置固定具は、図2の分解斜視図に示されるように、屋上防水面に直接固定されるフランジ10と、そのフランジに固定するアンカー設置フランジ20から構成さる。
【0019】
図2に示された、両フランジと、フランジ10に固定されたアンカーボルト11やフランジ10の取り付けに使用するビス30、フランジ20に固定されたアンカー21やフランジ20の取り付けに使用するナット40、ワッシャ50、は固定強度を保持する機能、耐久性から金属製であることが望ましく、長期的な使用での耐蝕性を考慮し、実施形態に示すこれらの部材は、ステンレス鋼により作成されている。
【0020】
屋上防水面に固定するフランジ10の上面には、アンカー設置フランジ20を固定するためのアンカーボルト11を2ヵ所に事前固定している。アンカーボルト11はアンカー設置フランジとの固定強度を確保するためのものであるので、フランジの形状に拘らず2ヵ所以上の固定であることが望ましい。
【0021】
また、フランジ10は設置する屋上防水面との水密性を確保するため、図3に示すフランジ外周部裏面側への不定形接着剤60の塗布範囲を確保する必要がある。そのためその範囲の内側に、躯体とフランジを固定するための孔部12を配置しておき当該部分で躯体への固定を実施する。実施形態においては、100mm*200mmのフランジに対して、4ヵ所の固定用穿孔部12を外周から短辺35mm、長辺60mm内側に作成した。固定時の強度確保のためには、3ヵ所以上が好ましく、高い固定強度を得るためには固定数を増やすこともできる。
【0022】
図3に示す不定形接着剤60は、フランジ10を設置する屋上防水面300の材質によって適宜選定が必要となる。シリコーン、変性シリコーン、弾性エポキシ樹脂、ウレタン系接着剤、などから選定される。
【0023】
屋上防水面300への固定フランジ10の設置は、水洗浄が実施された防水面に対して新設したい位置を中心に、裏面側外周に不定形接着剤60を塗布したフランジ10を設置し、固定用ビス30を使用して取り付けを実施する。このとき躯体の種類と使用するビスの種類によっては、必要に応じて躯体側に穿孔穴をあけて固定する。
【0024】
屋上防水面に固定したフランジ10のビス頭部分には、テープ状の定型止水材70を敷設する。テープ状の定型止水材は、ブチルテープ、クロロプレンゴムテープ、ニトリルゴムテープなどが使用できる。
【0025】
設置するアンカー21を支持したフランジ20には、防水面に設置したフランジ10に固定されたアンカーボルト11の位置に合わせた孔部22が作成されており、アンカー支持フランジ20をフランジ10のアンカーボルト11にワッシャ50、ナット40を使用して固定することで、目的のアンカーを防水面上に設置することができる。
【0026】
図1に示すアンカー設置フランジ20は、固定するナット40を取り外すことで容易に脱着が可能であり、既設防水層300の劣化に伴う改修施工が必要となった場合にも、アンカー設置フランジ20を取り外して新設防水施工を実施することが可能となる。
【0027】
図4は、改修施工を施した場合の設置断面図を示す。フランジ20を取り外し、フランジ10に設置されたアンカーボルト11部分の防水性を確保できる工法を選定することで、図4に示す通り容易にアンカーの復旧が可能となる。
【0028】
図4に示す断面図は、旧防水層非撤去のかぶせ工法で施工した塩ビシート絶縁工法の場合を示し、フランジ20を撤去後、フランジ10のアンカーボルト11を貫通させて裏面側を不定形止水材403で止水した塩ビ被服ディスク402をフランジ10にビス固定して塩ビ防水シート400を施工して改修した場合を示す。
【0029】
前述した実施形態では、本発明のアンカー固定具のフランジ形状を矩形形状で実施したが、この形状は限定されるものではなく、アンカー固定具が円形である場合の一例を図5に示す。
【0030】
以上、代表的な実施形態を挙げて本発明の既設屋上防水面へのアンカー固定具について説明した。しかしながら、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではなく、既設の防水層と本発明の固定具が水密性を保持する方法や、改修防水層と本発明の固定具が水密性を保持する方法は、既設の防水の種類や改修を実施する防水の種類によって種々選定されることを留意されたい。
【符号の説明】
【0031】
10 防水面固定フランジ
11 アンカーボルト
12 孔部
20 アンカー支持フランジ
21 アンカー
22 孔部
30 固定ビス
40 ナット
50 ワッシャ
60 不定形接着剤
70 定型止水材
100 下地
200 断熱材
300 旧防水層
400 改修新設防水層
図1
図2
図3
図4
図5