(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038888
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】杭かごの先端ヘッド及びこれを用いた杭かご
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017523
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021145803
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521395229
【氏名又は名称】大和建基合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128602
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和美
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA31
2D041CB05
2D041DA03
2D041EB10
(57)【要約】
【課題】場所打ち杭工法における吊り下げ杭かごの傾斜とスライムによるコンクリート杭の品質低下とを防止する。
【手段】掘削孔内に配置される杭かごの下端部に先端ヘッド10を設け、この先端ヘッド10は、杭かご20を下方に引き下げるように作用するボデイ11と、ボデイと杭かごとを接続するための接続手段12と、掘削孔1の孔内水を撹拌するための撹拌部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、
前記杭かごを下方に引き下げるように作用するボデイと、
前記ボデイと前記杭かごとを接続するための接続手段と、
前記掘削孔の孔内水を撹拌するための撹拌部と、
を備える杭かごの先端ヘッド。
【請求項2】
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、
前記杭かごを下方に引き下げるように作用するボデイと、
前記ボデイと前記杭かごとを接続するための接続手段と、
を備える杭かごの先端ヘッド。
【請求項3】
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、
前記掘削孔の孔内水を撹拌するための撹拌部と、
前記撹拌部と前記杭かごとを接続するための接続手段と、
を備える杭かごの先端ヘッド。
【請求項4】
前記ボデイにはコンクリートを前記掘削孔の底部側に導く導入孔が形成されている請求項1又は2に記載の杭かごの先端ヘッド。
【請求項5】
前記撹拌部は前記ボデイ外周に形成された傾斜した突起部又は傾斜した溝部を含む、請求項1に記載の杭かごの先端ヘッド。
【請求項6】
前記溝部の一方の壁面がテーパー加工されている、請求項5に記載の杭かごの先端ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の杭かごの先端ヘッドを備える杭かご。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築構造物の基礎工事に関連し、特に場所打ち杭の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の構築は、例えば、所定の場所の地面を掘削機で掘削し、孔内を壁面の土砂崩れを防止する泥水(安定液)で満たしながら地盤が安定な支持層まで掘削して掘削孔を形成する。この孔内に所定設計長の鉄筋かごを建て込み、鉄筋かご内にコンクリートを打設してコンクリート杭を構築する。鉄筋かごの建込みは、例えば予め設計長に基づいて製作された複数の鉄筋かご(節)を、孔口で順次接続しながら孔内に降下して行われる。
【0003】
例えば、鉄筋かご同士の接続は、先に孔内に挿入した鉄筋かご(第1の節)を仮置きバー等の仮置き治具で仮置きしておき、次に挿入する上側の鉄筋かご(第2の節)を、クレーンで吊って上記下側の鉄筋かごの上に下降させる。上側の鉄筋かごの主筋の下端部分を下側の鉄筋かごの主筋の上端部分に接する程度に落としたら下降を停止する。上側の鉄筋かごをクレーンで仮吊りしたまま、上下鉄筋かごの主筋相互間をカップラー等を介して接続する。
【0004】
続いて、仮置き治具を引き抜いて、接続した鉄筋かごを孔内に静かに吊り降ろしていく。これを繰り返して鉄筋かごの各節を連結接続してなる所定長の鉄筋かごを孔内に建込み、主筋天端を地面などの基準レベルに合わせて鉄筋かごを固定する。続いて鉄筋かご内にトレミー管を用いてコンクリートを打設する。打設しているコンクリートの天端を検尺し、トレミー管がコンクリート中から抜けないようにしてトレミー管を段階的に引き上げ、掘削孔の底部から孔口部までコンクリートを充填してコンクリート杭を形成する。
【0005】
例えば、特許文献1には場所打ち杭工法の例が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した場所打ち杭工法では掘削過程でスライム(掘削土)が発生する。スライムは循環される泥水中を浮遊して孔口又はビット先端の吸い口等で回収されるが、現場の土質が悪い場合、孔内の泥水が汚れている場合、鉄筋かごを固定してから生コンクリート打設までに(作業の流れやトラブル等で)長時間を経過した場合等には、泥水中のスライムが沈降し、孔底部に堆積する。堆積したスライムの上にコンクリートを打設すると先端部が孔底部(支持層)から離れた状態の設計長よりも短いコンクリート杭が生じてしまう。杭本来の設計長と強度を確保するためにスライムを除去するスライム処理が必要である。
【0008】
しかし、一旦スライムが底部に堆積すると除去が難しい。例えば、スライム処理は鉄筋かごを掘削孔から外に出す等の作業を必要とし、長時間を要する。特に夏場ではスライム処理に時間を掛けるとコンクリート品質や強度に問題が出て、打設のために待機している生コンクリート車のコンクリートが使用できなくなることも生じ得、作業時間の超過と共に経済的損失も多大である。
【0009】
また、鉄筋かご建込み時に、従来の施工方法では鉄筋かごの孔投入時、1節目2節目等は安定を欠きやすく、杭孔壁に接触することがあることも不具合であった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、スライム処理時間の短縮と杭品質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため本発明の杭かごの先端ヘッドは、
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、上記杭かごを下方に引き下げるように作用するボデイと、上記ボデイと上記杭かごとを接続するための接続手段と、上記掘削孔の孔内水を撹拌するための撹拌部と、を備える。
かかる構成とすることによって、杭かごの中心軸を掘削孔内に鉛直に保ちやすくなるので、杭かごを回動(正回転と逆回転の繰り返し)させて先端ヘッドを動かし、掘削孔内の底部等に沈殿したスライムを撹拌して浮遊させることが可能となる。それにより、底部等のスライムが除けられて杭かごの孔底部への着底がより確実になる。
【0012】
また、本発明の杭かごの先端ヘッドは、
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、上記杭かごを下方に引き下げるように作用するボデイと、上記ボデイと上記杭かごとを接続するための接続用部材と、を備える。
かかる構成とすることによって、杭かごの中心軸を掘削孔内に鉛直に保ちやすくなる。
【0013】
また、本発明の杭かごの先端ヘッドは、
掘削孔内に配置される杭かごの下端部に設けられる杭かごの先端ヘッドであって、上記掘削孔の孔内水を撹拌するための撹拌部と、上記撹拌部と上記杭かごを接続するための接続用部材と、を備える。
かかる構成とすることによって、杭かごを回動させて先端ヘッドを動かして掘削孔内の孔内水をかき混ぜ、底部等に沈降したスライムを浮遊させることが可能となる。それにより、底部等のスライムが除けられて杭かごの孔底部への着底がより確実になる。
【0014】
好ましくは、上記ボデイにはコンクリートを上記掘削孔の底部側に導く導入入孔が形成されている。それにより、鉄筋かごの先端にヘッドを設けても掘削孔内の底部にセメントを導出することが容易になる。
好ましくは、上記撹拌部は少なくとも上記ボデイ外周に形成された杭かごの軸方向に対して傾斜した突起部又は傾斜した溝部を含む。
好ましくは、上記溝部の一方の壁面がテーパー加工されている。
それにより、先端ヘッドを上下動すると掘削孔内の流体の抵抗によって先端ヘッドに回転が生じ、スライムを浮遊させることが可能となる。
【0015】
好ましくは、杭かごは先端部に上述した先端ヘッドを備える。それにより、スライムの影響がより少ない場所打ちコンクリート杭を製作し得る杭かごを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先端ヘッドの重量により掘削孔内に杭かごの中心軸を鉛直に保ちやすくなる。また、先端ヘッドの回動により掘削孔内の底部等に沈殿したスライムがかき混ぜられるので、底部等のスライムを除けて杭かごをより確実に着底することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図2】実施例1の先端ヘッドと鉄筋かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図3】実施例1の先端ヘッドと鉄筋かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図4】場所打ち杭の施工例を説明する説明図である。
【
図5】場所打ち杭の施工例を説明する説明図である。
【
図6】先端ヘッドの導入孔の作用を説明する説明図である。
【
図8】実施例2の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図9】実施例2の先端ヘッドと鉄筋かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図10】実施例2の先端ヘッドと鉄筋かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図11】実施例3の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図12】実施例4の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図13】実施例4の先端ヘッドと鉄筋かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図14】実施例5の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図15】実施例6の先端ヘッドを説明する説明図である。
【
図16】実施例6の先端ヘッドと伸縮式杭かごとの接続例を説明する説明図である。
【
図17】伸縮式杭かごの建込みの例を説明する説明図である。
【
図18】先端ヘッドを接続した伸縮式杭かごの建込みの例を説明する説明図である。
【
図19】先端ヘッドとトレミー管との作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例0019】
図1は、本発明の実施例1の杭かごの先端ヘッドの例を説明するものであり、同図(A)は先端ヘッドの平面図、同図(B)は先端ヘッドの側面図、同図(C)は先端ヘッドの底面図である。なお、以下の各実施例では杭かごとして鉄筋かごを使用しているが、鉄材に限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、先端ヘッド10は、ボデイ11、接続用鉄筋12、導入孔13、撹拌部14、重心15、座面16を備えている。ボデイ11は先端ヘッド10のベースとなるもので、先端ヘッド10に接続される後述の鉄筋かご20を鉛直方向に引き下げる適度な重量を持っており、例えば、鉄などの金属やコンクリートによって製作される。ボデイ11の重量は、例えば鉄筋かご20の第1の節の重量の20%~70%程度とする。より望ましくは50%程度とする。例えば、鉄筋かご20の長さが3m程度で500kgwである場合、先端ヘッド10の重量を250kgw程度に設定する。重量が小さい場合(20%以下)には鉛直方向に作用する引力が弱く、重量が大きい場合(70%以上)には、鉄筋の強度的負担やクレーンの吊り下げ荷重が増す。ボデイ11は、概略、半球状やお椀型等に形成され、その上面には上方に突出する接続用鉄筋12が環状に複数本配置されている。なお、ボデイ11の形状は半球状等に限定されない。
図1(A)に示すように平面視で多角形であっても良い。接続用鉄筋12は先端ヘッド10と鉄筋かご20とを接続する接続手段としての部材であり、鉄筋かご20の複数の主筋の下端部と対応した位置に配置されている。
【0021】
図示の例ではボデイ11の上面の外周を八角形状に形成しており、八角形状の各頂点部に外方に突起した撹拌部14が設けられている(
図1(A)参照)。ボデイ11の外面には外面から外方に突起した撹拌部14が複数設けられている。撹拌部14はボデイ11の底部の径方向に成形された突起部とボデイ11の外周の上下方向に成形された突起部で構成された帯状の突起によりなる。撹拌部14の突起量は、例えば30mm~250mm程度であるが、これに限定されるものではない。例えば、ボデイ11の底部の撹拌部14の突起量eを50mm~200mm程度、側面に成形された撹拌部14の突起量fを30mm~100mm程度と、別々に突起量を設定することができる(
図3(A)参照)。撹拌部14の突起量は、鉄筋かご20の径や掘削孔1の孔径等に対応して適宜に設定される。
【0022】
後述のように、施工者が先端ヘッド10を鉄筋かご20に取り付け、吊り下げられた鉄筋かご20を正方向又は逆方向に交互に回転させると、先端ヘッド10も回転し、撹拌部14の回転によって孔内水115が撹拌される。孔底部3に堆積した土砂や沈殿物であるスライム4が流動化して浮遊する。また、孔壁面2の削り残した土砂5などを掻き落とすことが可能となる(
図4参照)。
【0023】
ボデイ11の底部には、円形(導入孔13が設けられた場合には環状)の座面16が形成されている。円形状あるいは環状の座面16は掘削孔の底部に鉄筋かご20を可及的に安定して配置させる。
【0024】
望ましくは、ボデイ11の中心軸に相当する部分には、ボデイ11の上面側と下面側(底部)を貫通する導入孔13が設けられる。後述するように、導入孔13はトレミー管によるコンクリートの掘削孔の孔底部3への打ち込みを容易にする。更に望ましくは上面側の孔口径は下面側の孔口径よりも大きく設定される。それにより、トレミー管の先端が挿入孔内に入りやすくなる。また、コンクリートが導入孔13に導出されて掘削孔の孔底部3により集まりやすくなる。
【0025】
ボデイ11の重心15は半球状のボデイ11の中心軸上に存在するように設計製作される。導入孔13が設けられない場合であっても、先端ヘッド10はその重量によって鉄筋かご20を鉛直方向(下方)に引き下げるように機能する。
【0026】
図2及び
図3は、第1の実施例の先端ヘッド10と鉄筋かご20との接続例を説明する図である。
【0027】
円筒状の鉄筋かご20は、環状に複数配置されて中心軸方向に延在する主筋21と、複数の主筋21と直交して接続される環状の複数の帯筋22を含んでいる。
【0028】
図2(A)に示す例では、鉄筋かご20の直径よりも先端ヘッド10の接続用鉄筋12の環状配列の直径が狭くなっている。このため、主筋21の下端部側はクランク状に形成されて接続用鉄筋12との径方向のずれが調整されている。鉄筋かご20と先端ヘッド10との接続は、例えばクレーンで第1節の鉄筋かご20を吊り下げ、鉄筋かご20の複数の主筋21の各下端部と先端ヘッド10の複数の接続用鉄筋12とをそれぞれスリーブ30によって接続することで行っている。この例では、接続用鉄筋12とスリーブ30が接続手段となっている。
【0029】
図2(B)に示す例では、スリーブ30を用いずに第1節の鉄筋かご20の複数の主筋21の各下端部に先端ヘッド10が直接設けられている。この例では、主筋21の下端部を接続用鉄筋として用いている。この例では、主筋21の下端部が接続手段を兼ねている。なお、接続手段は実施例のものに限定されず、同様に機能するものであればよい。
【0030】
図2(C)に示す例では、鉄筋かご20の主筋21の環状配列の直径と先端ヘッド10の接続用鉄筋12の環状配列の直径が同じに形成されている。鉄筋かご20の主筋21の下端部にはクランク状部分はなく、直線状に形成されている。鉄筋かご20と先端ヘッド10との接続は、鉄筋かご20の複数の主筋21の各下端部と先端ヘッド10の複数の接続用鉄筋12とをそれぞれスリーブ30によって接続することで行っている。この例では、接続用鉄筋12とスリーブ30が接続用部材となっている。
【0031】
図3(A)に示す例では、鉄筋かご20の直径よりも先端ヘッド10の接続用鉄筋12の環状配列の直径が狭くなっている。このため、主筋21の下端部側を内側(中心軸方向)に傾斜させることで接続用鉄筋12との径方向のずれが調整されている。鉄筋かご20と先端ヘッド10との接続は、鉄筋かご20の複数の主筋21の各下端部と先端ヘッド10の複数の接続用鉄筋12とをそれぞれスリーブ30によって接続することで行っている。この例では、接続用鉄筋12とスリーブ30が接続用部材となっている。なお、撹拌部14の突起量e,fについては
図1の説明において説明されている。
【0032】
図3(B)に示す例では、同図(A)の例においてスリーブ30を用いずに第1節の鉄筋かご20の複数の主筋21の各下端部に先端ヘッド10が設けられている。この例では、主筋21の下端部を接続用鉄筋12として用いている。主筋21の下端部が接続用部材を兼ねている。
【0033】
上述した
図2(A)、同図(C)及び
図3(B)の例では、先端ヘッド10と鉄筋かご20とは別々に造られるので製作容易である。
図2(B)及び
図3(B)の例では、鉄筋かご20の第1節を製作する際に先端ヘッド10内の図示しない鉄筋が組み付けられ、コンクリート型枠によって先端ヘッド10が第1節に形成される。
【0034】
後述の先端ヘッド10(の撹拌部14)による孔壁面2の削り残し5の掻き落としのため(
図4参照)、
図2(B)に示すように、先端ヘッド10の撹拌部14を含む直径dは鉄筋かご20の直径Dより大きくすることが望ましい。その一方、先端ヘッド10の直径dが大きすぎると、鉄筋かご20の建込みの際に先端ヘッド10の一部が孔壁面2に接触し易くなって孔底部3の土砂やスライム4を増加させる可能性がある。そこで、先端ヘッド10の撹拌部14の凸部を含む直径dあるいは撹拌部14の径方向におけるボディ11からの突出量は掘削孔径、孔深さ、鉄筋かご径、建込み精度等に対応した適宜な寸法に設定される。例えば、ボデイ11からの撹拌部14の突出量はかぶり(鉄筋かごから孔壁面までの距離)の10%~60%程度とするが、これに限定されない。例えば、掘削孔径(直径)が1000mm、鉄筋かごの直径Dが800mm、かぶりが100mmの場合、先端ヘッド10の撹拌部14を含む直径dを860mm(鉄筋かごからのはみ出しが片側30mm)程度とする。もっとも、掘削孔径や鉄筋かごは種々のものがあり、これ等数値に限定されるものではない。
【0035】
図4及び
図5は、実施例の先端ヘッドを使用した場所打ち杭の施工例を説明する説明図である。
図4(A)は、工事設計に基づく杭心の芯出し、掘削開始を経て掘削孔1が支持層に到達して掘削完了となった状態を示す。孔口付近の崩壊を防止するためにスタンドパイプ110が設けられ、図示しない掘削機のビット113により掘削孔1を形成する。掘削孔1内には張り水がなされる。張り水としてはベントナイト溶液等の壁の崩れを抑制する安定液114を使用することが望ましい。
【0036】
例えば、安定液114は掘削の際にロッド112を介してビット113の先端部から掘削孔1内に供給される。ベントナイト溶液は土砂の粒子を吸着する性質があり、切削された土砂は安定液114と共に孔底部3から浮上する。掘削孔1内には安定液114と切削土砂を含む孔内水(泥水)115が貯留され、孔内水115は図示しないサンドポンプによって孔口部から外部に排出される。孔内水115の比重は適宜に調整される。排出された孔内水115はマッドスクリーン等によって土砂等が除かれて再利用される。
【0037】
図4(B)は孔壁検査を示す。掘削が終了すると、音波孔壁測定器117を使用して掘削孔1の状態を調べる。図示の例では掘削孔1の孔壁面2の一部に削り残し5が生じている。掘削孔1の孔底部3にスライム4が残っている。音波孔壁測定器117により、掘削孔1の深さ方向の孔径が連続的に測定されて壁面の状態が記録される。施工者はこの記録により削り残し5の場所を判別することができる。また、スライム4の場所(深さ)を判別することができる。
【0038】
図4(C)は鉄筋かご20の建込みの際に先端ヘッド10を使用して削り残し5を除去する例を示す。施工者は鉄筋かご20の第1節に先端ヘッド10を接続する。更に、第1節に第2節を接続することを繰り返して複数の節を接続して所要の長さの鉄筋かご20を組み立て、掘削孔1への建込みを行う。鉄筋かご20の組み立ての例は後述の
図7により説明される。鉄筋かご20は図示しないクレーンによって吊り下げられて、掘削孔1の中心軸と鉄筋かごの中心軸が一致するように調整されて掘削孔内に導入される。施工者は鉄筋かご20の先端ヘッド10の降下位置が削り残し5の場所に到ると鉄筋かご20をゆっくり回動する。それにより、先端ヘッド10の撹拌部14等が孔内水115を流動させて削り残し5を落下させる。また、撹拌部14等が削り残し5に接触して削り残し5を落下させて除去する。掘削孔1の孔底部3には掘削された土砂のスライム4が堆積されている。
【0039】
図4(D)は、鉄筋かご20の先端ヘッド10を使用してスライム4を撹拌する例を示す。施工者は鉄筋かご20を降下させ、先端ヘッド10の位置がスライム4の存在する場所に到ると、鉄筋かご20をゆっくり回動する。それにより、先端ヘッド10の撹拌部14等が沈積しているスライム4や孔内水115を撹拌する。撹拌されたスライムは上部に向かって浮遊する。更に、鉄筋かご20の降下量を調整して先端ヘッド10を孔底部3の直上まで撹拌と降下を繰り返して移動し、孔底部3のスライムを浮遊させる。
【0040】
図5(A)は、トレミー管130による安定液114の孔内への供給を示している。撹拌が終わったら、鉄筋かご20を降下して先端ヘッド10の底部を孔底部3に着座させ、鉄筋かご20をスタンドパイプ110側で固定する。次に、クレーンによりトレミー管130を吊り下げて鉄筋かご20内に導入する。更に降下量を調整してトレミー管130の先端を先端ヘッド10の導入孔13内まで挿入する。トレミー管130を介して安定液114を孔底部3に供給する。それにより、撹拌されたスライム4の多くが安定液114と共に孔口に向けて浮上する。
なお、トレミー管130内にゴムホースを入れてゴムホースを介して安定液114を孔底部3に供給することとしても良い。また、掘削工法により、孔口から安定液114を供給し、トレミー管130内にゴムホースを入れてトレミー管130の先端部から安定液114をゴムホースを介して吸い込む場合もある。
【0041】
図5(B)は、トレミー管130によるコンクリート140の孔内への供給を示している。トレミー管130への供給を安定液114からコンクリート140に切り替える。トレミー管130の先端は先端ヘッド10の導入孔13内に挿入されており、トレミー管130を介してコンクリート140が孔底部3に供給される。
【0042】
図6に示すように、トレミー管130から供給されるコンクリート140は先端ヘッド10の導入孔13を通って孔底部3に到り、孔壁面2に沿って上昇する。孔底部3、先端ヘッド10及び鉄筋かご10の先端部はコンクリート140で埋設される。孔底部3に残存していた残渣やスライム4はコンクリート140によって押し上げられて安定液115と一緒に浮上して孔口に運ばれ、あるいは打ち込まれたコンクリートの天端(上部)に載るようにして孔口に向かって押し上げられる。孔口部に浮遊するスライム4は孔外に導出され、図示しないサンドポンプ等によって回収される。
【0043】
図5(C)は、トレミー管130によるコンクリート140の孔内への充填を示している。施工者は、打ち込まれたコンクリートの天端を検尺し、トレミー管130が打ち込まれたコンクリート中から抜けないようにして連結されてなるトレミー管130を一本ずつ外しながら段階的に上昇させ、コンクリート140の打ち込みを行う。コンクリート140は天端にスライム4を載せた状態で孔口に向かって上昇する。
【0044】
図5(D)は、コンクリート140の打設が終了した状態を示している。コンクリート140の充填が孔口まで到るとコンクリートの打設は終了する。コンクリート140で押し上げられて孔口に到ったスライム4はポンプや施工者等によって除去され、トレミー管130は引き抜かれる。コンクリート140が硬化することによって掘削孔1にコンクリート杭が形成される。
【0045】
図7は、鉄筋かご20の傾きによる不具合と先端ヘッド10の荷重(錘作用)による改善を説明する図である。
図7(A)は、鉄筋かご20の第1の節に先端ヘッド10を接続しない場合の例を示している。地面の所定位置にスタンドパイプ(あるいは口元管)110が設けられ、掘削孔1が形成されている。この例では鉄筋かご20は2つの節を連結して構成されている。
【0046】
鉄筋かご20の各節の接続例を説明する。鉄筋かご20の各節は現場の近くであるいは他所において製作されて、掘削孔1の近傍に準備されている。施工者は、
(1)鉄筋かご20の第1の節20aを図示しないクレーンによってつり上げて掘削孔1内に導入し、仮置き治具120を使用して支持固定する。仮置き治具120は、例えばかんざし筋等である。仮置き治具120はスタンドパイプ110や図示しない作業台等に鉄筋かご20を固定する。掘削孔1の孔口部等に固定する場合もある。
【0047】
(2)鉄筋かご20の第2の節20bをクレーンで吊り上げて固定されている第1の節20aにスリーブを介して接続(連結)する。
(3)鉄筋かご20の第2の節をクレーンで吊り、仮置き治具120の支持を解除して鉄筋かご20の第1の節20a及び第2の節20bを掘削孔1内にゆっくり降下する。
(4)仮置き治具120によって鉄筋かご20の第2の節20bを支持固定する。
図7(A)はこの状態を示している。
このような手順を繰り返して鉄筋かご20の各節を連結接続して所望の長さの杭かごを孔内に組み立てる。
【0048】
図7(A)の例では、基準位置(例えば仮置き治具120)において掘削孔1の孔中心と円筒状の鉄筋かご20の中心とは一致しているが、鉄筋かご20の中心軸が鉛直方向から僅かに傾いている。このようなことは、作業の不正確、鉄筋かご20の支持不足、鉄筋かご20の組み立て精度不良、鉄筋かご20の撓み等によって生じ得る。例えば、掘削孔1の長さ(深さ)が30mで心曲がり(偏心)が500mmであれば、かぶりを100mmとすると、鉄筋かご20は孔口から6mのところで孔壁面2に接触する。かぶりが100mmでは、鉄筋かご20は孔口から10mのところで孔壁面2に接触する。鉄筋かご20は接触した位置から孔壁面の土砂を削り落としながら降下する。鉄筋かご20は、例えば10m~35mと長いので、僅かな傾斜でも鉄筋かご20の先端部では孔壁面2に接触して壁面の土砂を落下させる可能性がある。鉄筋かご20を正確に製作し、掘削孔1の中心位置で鉛直方向に導入することが重要である。
【0049】
図7(B)は、鉄筋かご20の第1の節20aに先端ヘッド10が設けられた例を示しており、
図7(A)の例の手順(3)に相当する。先端ヘッド10、鉄筋かご20の第1の節20a及び第2の節20bの各重心が鉄筋かご20のほぼ中心軸上に存在するように正確に組み立てられている。この鉄筋かご20をクレーンで吊って掘削孔1内にゆっくり降下したところである。
【0050】
この状態では先端ヘッド10の荷重が鉄筋かご20の先端部に対して鉛直方向の引力として作用する。施工者がクレーンによって掘削孔1の中心に鉄筋かご20の中心を合わせると、先端ヘッド10は掘削孔1の中心軸と鉄筋かご20の中心軸とが同軸位置になるように作用する。また、先端ヘッド10の荷重は施工者が鉄筋かご20をゆっくり回動した場合に回転軸がブレることを抑制するように作用する。これは既述した孔内水115を先端ヘッド10で撹拌する際に孔壁面を直接削ることを回避可能とする。
【0051】
図7(C)は、鉄筋かご20の第1の節20aの下端に先端ヘッド10を接続した状態で鉄筋かご20の第2の節20bを支持固定した例を示しており、
図7(A)の例の手順(4)に相当する。仮置き治具120によって鉄筋かご20の第2の節20bを支持固定する。
【0052】
この例でも先端ヘッド10の荷重によって鉄筋かご20に鉛直方向の引力が作用する。この結果、掘削孔1の中心軸と鉄筋かご20の中心軸とが同軸位置になり、鉄筋かご20の傾斜は修正される。仮置き治具120において掘削孔1の中心に鉄筋かご20の中心を合わせることで鉄筋かご20と孔壁面2とは略一定の間隔に保たれる。この状態でコンクリートの打ち込みを行うと、コンクリート杭の鉄筋の露出が防止され、均一なかぶり厚が得られる。
このように、先端ヘッド10は鉄筋かご20の中心軸を鉛直方向に修正する錘として機能するので具合が良い。
第1の実施例ではボデイ11と撹拌突起部14とが一体に成型され、あるいはボデイ11の一部分として撹拌突起部14が整形されているが、第2の実施例ではボデイ11の一部にボデイ材質とは異なる金属板による撹拌板14aが設けられている。したがってボデイ11の一部で製作される場合よりも、より形状の自由度の高い撹拌手段を構成することが可能である。金属板は鉄板が好適であるが、ステンレス板、銅板、アルミ板、樹脂板等であっても良く、特定の材質のものに限定されない。撹拌板14aはフィンや羽根等と言われる形状のものであってもよく、スライム等を撹拌できる形状であればよい。