(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038914
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】スライド・ドア・システム、スライド・ドア、及び緩衝装置
(51)【国際特許分類】
E05F 5/02 20060101AFI20230310BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20230310BHJP
【FI】
E05F5/02 K
E05F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022132162
(22)【出願日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】21195398.9
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520457133
【氏名又は名称】ハヴァ スライディング ソリューションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ エッガー
(72)【発明者】
【氏名】マレク ラック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善されたスライド・ドア・システムを提供すること。
【解決手段】スライド・ドア・システムはスライド・ドアを備え、スライド・ドアが、閉鎖位置まで、定位置に配設された発動部材に対して走行レールに沿って変位可能であり、ドア・リーフを備え、取出し可能な封止ストリップ及び作動要素を備える可動式封止装置を備え付けられ、伝動要素を備える伝動装置を備え付けられ、キャリッジ本体及び走行要素を備える、ドア・リーフへ接続される、走行レールの長手方向軸に平行に変位可能に走行レール内で保持される、少なくとも2つのキャリッジを備え、発動部材及び伝動装置が、スライド・ドアが閉鎖位置に入ると、封止ストリップを押し出すために、力が発動部材から伝動装要素を介して作動要素へ伝達され得るように配設される。本発明によれば、閉鎖位置でスライド・ドアを停止させるための、発動部材を備える、定置緩衝装置が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド・ドア(11)を有するスライド・ドア・システム(1)であって、
前記スライド・ドア(11)が、閉鎖位置まで、定位置に配設された発動部材(911)に対して、走行レール(2)に沿って変位可能であり、
前記スライド・ドア(11)が、ドア・リーフ(111)を備え、
前記スライド・ドア(11)が、取出し可能な封止ストリップ(81)及び作動要素(82)を備える、可動式封止装置(8)を備え付けられ、
前記スライド・ドア(11)が、伝動要素(61)を備える伝動装置(6)を備え付けられ、
前記スライド・ドア(11)が、
- キャリッジ本体(31)及び走行要素(32)を備え、
- 前記ドア・リーフ(111)へ接続され、
- 前記走行レール(2)内で保持され、前記走行レール(2)の長手方向軸に平行に変位可能である、
少なくとも2つのキャリッジ(3)を備え、
前記発動部材(911)及び前記伝動装置(6)が、前記スライド・ドア(11)が前記閉鎖位置に入ると、前記封止ストリップ(81)を押し出すために、力が前記発動部材(911)から前記伝動要素(61)を介して前記作動要素(82)へ伝達され得るように、配設され、
前記閉鎖位置で前記スライド・ドア(11)を停止させるために設けられ、前記発動部材(911)を備える、定置緩衝装置(9)が設けられることを特徴とする、スライド・ドア・システム(1)。
【請求項2】
前記緩衝装置(9)が、緩衝本体(91)を備えること、及び前記発動部材(911)が、前記緩衝本体(91)へ接続される、若しくは接続可能である、又は前記緩衝本体(91)の一体化部分であることを特徴とする、請求項1に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項3】
前記緩衝本体(91)が、2つの脚要素(912)、及び前記脚要素(912)の間に配置され、前記伝動要素(61)を部分的に受容するように適合される発動チャネル(910)を備えることを特徴とする、請求項2に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項4】
前記発動部材(911)が、前記走行レール(2)の前記長手方向軸に対して、真っ直ぐに又は傾斜する曲線に沿って延びる斜面として設計されることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項5】
前記走行レール(2)が、U字の外形を有すること、又は前記走行レール(2)が、頭部(21)によって一方の端部で互いに接続され、互いに向かって配向された脚部(23)へもう一方の端部で接続される、2つの側部(22)を有するC字の外形を有し、前記脚部(23)に、前記キャリッジ(3)の前記走行要素(32)が支持され、前記脚部(23)に、前記緩衝本体(91)の前記脚要素(912)が支持されることを特徴とする、請求項2から4までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項6】
緩衝装置(9)が、前記走行レール(2)内に配設されること、及び
a)前記緩衝装置(9)が、少なくとも1つのダンパ(95、96)を備えること、又は
b)前記緩衝装置(9)が、両側に、減衰シリンダ(952)及びその中で誘導される減衰ピストン(951)を有する、前記走行レール(2)の前記長手方向軸に平行に配列された側方ダンパ(95)を備えること、又は
c)前記緩衝装置(9)が、各側に、減衰シリンダ(952)及びその中で誘導される減衰ピストン(951)を有する、前記走行レール(2)の前記長手方向軸に平行に配列された側方ダンパ(95)、並びに弾性材料から製作される、前記側方ダンパ(95)の間に配設された中央ダンパ(96)を備えること
を特徴とする、請求項1から5までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項7】
前記伝動要素(61)が、前記発動部材(911)との協働のために設けられた第1のレバー部(611)、及び前記可動式封止装置(8)の前記作動要素(82)との協働のために設けられた第2のレバー部(612)を備える伝動レバーであり、2つの前記レバー部(611、612)が、互いに平行に又は傾斜して配列されることを特徴とする、請求項1から6までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項8】
前記ドア・リーフ(111)が、上面にドア凹部(110)を備え、
a)前記ドア凹部(110)に、取付けユニット(41)及び取付けレール(42)を備える、取付け装置(4)が配設され、前記取付けユニット(41)が、前記キャリッジ(3)のうちの1つへ接続され、前記取付けレール(42)内で着脱可能に保持され、前記取付けレール(42)が、前記ドア・リーフ(111)へ直接に又は取付けバー(43)を介して接続される、
b)前記ドア凹部(110)に、前記取付け装置(4)に加えて、前記可動式封止装置(8)が配設され、
c)前記ドア凹部(110)に、前記取付け装置(4)及び前記可動式封止装置(8)の前方で、前記伝動装置(6)が配設される
ことを特徴とする、請求項1から7までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項9】
前記伝動装置(6)が、前記伝動要素(61)が回転可能に取り付けられる、レバー・シャフト(622)を保持するレバー・ホルダ(62)を備え、前記レバー・ホルダ(62)が、前記ドア・リーフ(111)へ接続された取付け基部(63)によって着脱可能に保持されることを特徴とする、請求項8に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項10】
前記レバー・ホルダ(62)及び前記取付け基部(63)が、相互に対応する係止要素(621、631)及び相互に対応する掛止め要素(622、632)を備えることを特徴とする、請求項9に記載のスライド・ドア・システム(1)。
【請求項11】
請求項1から10までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)のためのスライド・ドア(11)であって、
ドア・リーフ(111)を有し、
前記ドア・リーフ(111)へ接続され、各々がキャリッジ本体(31)及び走行要素(32)を備える、少なくとも2つのキャリッジ(3)を有し、
引込み可能な封止ストリップ(81)及び作動要素(82)を備える、可動式封止装置(8)を有し、
伝動要素(61)を備える伝動装置(6)を有し、
前記伝動装置(6)が、前記伝動要素(61)が回転可能に取り付けられる、レバー・シャフト(622)を保持するレバー・ホルダ(62)を備え、前記レバー・ホルダ(62)が、前記ドア・リーフ(111)へ接続された取付け基部(63)によって着脱可能に保持されることを特徴とする、スライド・ドア(11)。
【請求項12】
請求項1から10までの一項に記載のスライド・ドア・システム(1)のための緩衝装置(9)であって、前記緩衝装置(9)が発動部材(911)を備え、前記発動部材(911)によって、伝動装置(6)の伝動要素(61)が作動され得ることを特徴とする、緩衝装置(9)。
【請求項13】
前記発動部材(911)を一体化部分として備える、緩衝本体(91)が設けられることを特徴とする、請求項12に記載の緩衝装置(9)。
【請求項14】
前記緩衝本体(91)が、2つの脚要素(912)、及び前記脚要素(912)の間に配置され、前記伝動要素(61)を部分的に受容するために設けられる発動チャネル(910)を備えることを特徴とする、請求項13に記載の緩衝装置(9)。
【請求項15】
前記発動部材(911)が、前記走行レール(2)の長手方向軸に対して、真っ直ぐである又は曲線に沿って傾斜する斜面として形成されることを特徴とする、請求項11、12又は13に記載の緩衝装置(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口部を閉じるための少なくとも1つの可動式封止装置(activatable sealing device)を備えるスライド・ドアを有するスライド・ドア・システム、及びスライド・ドア・システムのための緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,891,052(B2)号は、ガラス・パネルを保持する役割を果たす、走行レールに沿って誘導されるキャリッジを有する、スライド・ドア・システムを開示する。キャリッジは、ガラス・パネルの上縁部が走行レールの断面内に収容され得るように、固定手段によってガラス・パネルへ接続される。これは、ガラス・パネルと走行レールとの間の空間がほぼ密閉されることを可能にする。例えば木から製作された、より厚い仕切りパネルを有するスライド・ドアの場合、走行レールの断面内に木製パネルを収めることは、ほぼ不可能である。
【0003】
米国特許第9,290,977(B2)号は、ドア・パネルへ接続され、ドア・パネルがドア開口部の前方でドア枠に対して誘導され得るように、レールに沿って移動され得るキャリッジを有する、スライド・ドア・システムを開示する。このスライド・ドア・システムのためには、それに応じて設計されたレールが必要となる。
【0004】
米国特許出願第2011/126,471(A1)号は、下降機構によって下降され得る、封止レール及びその中で保持された封止ストリップを有する、ドア又は窓のための可動式封止装置を開示する。下降機構は、相互に接続されたスライドを介して封止ストリップへ接続される板ばねに作用する、作動要素を備える。作動要素を圧迫することによって、スライドが作動され、板ばねが変形され、封止ストリップが下降させられる。この過程で、封止ストリップが下方へ移動されるだけでなく、キャリアの輪郭部もまた対応する前面に向かって移動され、したがって、その面に対しても封止が行われる。作動要素は、封止装置から突出し、ドアが閉じられると、ドア枠によって封止装置に対して押し付けられる。第2の作動ボタンが、ドアの反対側の端面に設けられることが可能であり、その結果、下降機構は、ドアの両側から作動されることが可能である。
【0005】
米国特許出願第2019/128,054(A1)号は、作動要素を備える可動式下降封止を有する、スライド・ドアを開示する。作動要素は、スライド・ドアへねじ止めされた伝動装置、及びドア枠へねじ止めされた発動ユニット(activation unit)によって動作可能である。伝動装置は、発動ユニットと協働することができる従動部、及びスライド・ドアが端位置へ移動されると、発動ユニットと協働することができる従動部へ接続された、ピポット・アームを備える。この動作において、従動部は、発動ユニットの接触面にわたって誘導され、ピポット・アームと共に回転され、それにより作動要素を下降封止に対して押し付ける。この装置は、発動ユニットの正確な位置決め及び組立てを確実にする。
【0006】
スライド・ドアが、通常は、連係するキャリッジへ接続される取付け装置を備え付けられることに留意されたい。取付け装置は、しばしば、ドア凹部に一体化され、それは、スライド技術及び走行技術が互いの隣に配置され、それにより、設置、保守、及び/又は調整中に干渉し合うことになり得ることを意味する。
【0007】
欧州特許第0,818,598(B1)号及び米国特許第9,341,011(B2)号は、スライド・ドアのドア・リーフの上面の凹部に挿入される取付けレールを有する、取付け装置を開示する。各取付けレールにおいて、取付けユニットは、軸方向に滑動可能及びロック可能である。取付けユニットは、接続ねじによって、走行レール内で誘導されるキャリッジのキャリッジ本体へ接続される。
【0008】
欧州特許第0,818,598(B1)号の装置において、スライド・ドアの高さ調整のための取付けユニットは、ドア・リーフの端面の前方の接続ねじが工具によって把持され、回され得るまで、取付けレールから外され、取り出される。
【0009】
米国特許第9,341,011(B2)号の装置において、取付けユニットは、走行レールの長手方向軸に平行に配列された調整ねじを備え、調整ねじによって、スライドが誘導路に沿って滑動可能に取り付けられる、スライド・ホルダが、軸方向に変位され得る。スライド・ホルダが軸方向に移動されると、調整ねじへ接続されたスライドは、誘導路に沿って上方又は下方に移動される。調整ねじを回すことによって、スライド・ドアは、したがって、上昇又は下降され得る。この調整のために、取付けレールから取付けユニットを取り外す必要はない。しかしながら、調整ねじへのアクセスは保たれる必要がある。
【0010】
欧州特許第0,818,598(B1)号は、さらに、減衰要素及びロック要素を備える緩衝装置を開示する。緩衝装置は、終止部でスライド・ドアを弾性的に停止させ、その後、それを保持する。緩衝装置は、精密に位置決めされることが可能であり、その結果、スライド・ドアは、閉鎖位置で、すなわち、正確に、閉じられるドア開口部の前方で停止される。
【0011】
スライド・ドア・システムは、したがって、走行路並びにスライド・ドアの取付け高さを調整することを可能にする、いくつかの装置を備える。追加の駆動装置が設けられ、駆動装置によって、スライド・ドアが自動的に移動され得ることが可能である。可動式封止装置の追加的設置により、封止装置が閉鎖位置で正確に発動されるために、スライド・ドア・システムの調整のための追加の要件が満たされる必要がある。走行技術及び封止技術の個々の調整装置又は装置部分は、この点で互いに整合される必要があり、それは大きな労力となり得る。
【0012】
さらに、スライド・ドア・システムの個々の装置部分の組立て、保守、及び/又は調整を妨げる場合があるので、装置と使用される装置部分とが干渉し合わないことを確実にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,891,052(B2)号
【特許文献2】米国特許第9,290,977(B2)号
【特許文献3】米国特許出願第2011/126,471(A1)号
【特許文献4】米国特許出願第2019/128,054(A1)号
【特許文献5】欧州特許第0,818,598(B1)号
【特許文献6】米国特許第9,341,011(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、スライド・ドアを備える改善されたスライド・ドア・システムであって、可動式封止装置、そのようなスライド・ドア・システムのためのスライド・ドア、及びスライド・ドア・システムのための改善された緩衝装置を備える、スライド・ドア・システムを提供することである。
【0015】
スライド・ドア・システムは、単純で小型の設計を有するべきであり、ほとんど労力を要さずに設置可能で、保守可能で、調整可能であるべきである。
【0016】
例えば、緩衝装置とキャリッジをスライド・ドアへ接続するための組立て装置との間の、封止装置及びそれを発動させるための要素などの封止技術の部分、並びに走行レール内で誘導されるキャリッジなどの走行技術の部分は、有利には相互に作用するべきであり、互いに対して最適に適合されるべきである。
【0017】
走行技術の部分及び封止技術の部分は、干渉し合うことなく使用される、及び/又は相互に作用すること可能であるべきである。特に、走行技術及び封止技術の要素は、有利には、組み立てられ、分解され、調整されることが可能であるべきである。
【0018】
さらに、走行技術の固定部分と封止技術の固定部分との相互作用は、事実上、相互の調整及び適合なしで、最適にもたらされることが可能であるべきである。
【0019】
スライド・ドアは、走行レールへ可能な限り近接して保持されるべきであり、その結果、可動式封止装置は、可能な限り小さい空隙を封止する必要がある。
【0020】
さらに、封止装置は、可動式であるべきである。可動式封止装置は、任意の機構によって上方又は下方に取り出されることが可能である、封止ストリップを備えるべきである。
【0021】
スライド・ドア装置の部分は、小型で、製造費用が安価で、組立てが容易であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この課題は、請求項1によるスライド・ドア・システム、請求項11によるスライド・ドア、及び請求項12による緩衝装置を用いて解決される。本発明の有利な実施例が、さらなる請求項に明示される。
【0023】
スライド・ドア・システムは、スライド・ドアを備え、
スライド・ドアが、閉鎖位置まで、定位置に配設された発動部材(activation member)に対して、走行レールに沿って変位可能であり、
スライド・ドアが、ドア・リーフを備え、
スライド・ドアが、キャリッジ本体及び走行要素を備え、ドア・リーフへ接続され、走行レール内で保持され、走行レールの長手方向軸に平行に変位可能である、少なくとも2つのキャリッジを備え、
スライド・ドアが、取出し可能な封止ストリップ及び作動要素を備える、可動式封止装置を備え付けられ、
スライド・ドアが、伝動要素を備える伝動装置を備え付けられ、
発動部材及び伝動装置が、スライド・ドアが閉鎖位置に入ると、封止ストリップを押し出すために、力が発動部材から伝動要素を介して作動要素へ伝達され得るように、配設される。
【0024】
本発明によると、閉鎖位置でスライド・ドアを停止させるために設けられ、発動部材を備える、定置緩衝装置が設けられる。
【0025】
好ましくは、緩衝装置は、走行レールの断面内に配置される。走行レールは、好ましくは、スライド・ドアの上面に配設され、その結果、ドア・リーフは、走行レール内を移動され得るキャリッジに吊持される。スライド・ドアが閉鎖位置にある状態で、ドア開口部は、好ましくは、密閉されることが可能である。
【0026】
走行技術と封止技術との相互の整合は、したがって、緩衝装置を参照して実行され、緩衝装置は、正確に位置決めされる必要がある。他方で、緩衝装置と発動部材との相互の位置決めは省略され、スライド・ドア・システムの複雑さの全体的な低減につながる。新たな調整を必要とするスライド・ドア装置への変更を行った場合、緩衝装置が再調整される必要があるだけでよい。
【0027】
緩衝装置は、少なくとも1つの減衰要素若しくはダンパ、及び/又はロック要素を保持又は備える、緩衝本体を備える。好ましくは、緩衝装置は、少なくとも1つの中央減衰要素又は中央ダンパを備える。代替的に、緩衝装置は、各側に側方減衰要素又は側方ダンパを設けられてもよい。さらに好ましい実施例では、側方ダンパ及び中央ダンパは、組み合わせて設けられ得る。
【0028】
減衰要素、側方ダンパ及び/又は中央ダンパは、ゴムなどの弾性材料から製作され得る。減衰要素、側方ダンパ及び/又は中央ダンパはまた、ばね要素、空圧ダンパ、液圧ダンパ、オイル・ダンパ、又は磁気要素を有する磁気ダンパなどの機械式ダンパであり得る。
【0029】
緩衝装置のロック要素は、好ましくは、少なくとも1つのロック・アームを備え、ロック・アームによって、キャリッジが保持され得る。好ましくは、ロック要素は、フォーク形状であり、対向するキャリッジに向かって方向付けられた、2つのロック・アームを有する。キャリッジが入ると、キャリッジは、好ましくは、緩衝装置へ連結され、それによって、少なくとも1つのロック・アームが、キャリッジ本体の走行輪のうちの1つ及び/又は部分を弾性的に覆い、保持する。
【0030】
キャリッジは、走行レール内に機械的に又は磁気的に取り付けられ得る。走行要素は、ローラ、車輪、スライド要素、又は強磁性若しくは永久磁気要素であり得る。
【0031】
発動部材は、緩衝本体へ着脱可能に接続されることが可能であり、少なくとも1つのダンパ又はロック要素も、同様であり得る。好ましい実施例では、発動部材は、緩衝本体の一体化部分である。緩衝本体は、有利には、発動部材を設けられ得る。例えば、緩衝本体は一体成型で製造され、それにより、緩衝本体及び発動部材を別々に製造する必要がなくなる。
【0032】
緩衝装置は、好ましくは、走行レール内で応力を加えることが可能であり、その結果、緩衝装置は、好適な位置へ移動され、固定される又は応力を加えられることが可能である。
【0033】
走行レールは、頭部、及び脚部が設けられる少なくとも1つの側部を備える。好ましくは、走行レールは、頭部によって一方の端部で互いに接続され、互いに対向する脚部によってもう一方の端部で接続される、2つの側部を有するC字の外形又はU字の外形を有する。1つ又は複数の脚部は、キャリッジの走行要素が支持される上面に走行面を有する。
【0034】
好ましくは、緩衝装置又は緩衝本体は、走行レールの脚部に支持される脚要素を備える。この実施例では、緩衝装置は、好ましくは、カウンタねじのための少なくとも1つのねじ付き穴を設けられ、カウンタねじは、走行レールの頭部に対してねじ込まれて、走行レールの脚部に対して緩衝装置又は緩衝本体を圧迫し、それによって、それを留める。
【0035】
緩衝装置の脚要素の間に、好ましくは、発動部材が設けられ、伝動要素を部分的に受容するのに好適である、発動チャネル(activation channel)がある。伝動要素、場合により伝動レバーは、したがって、発動チャネルに入り、そこで発動部材と協働することができる。緩衝装置のこの設計により、スライド・ドアは、スライド・ドアの上に露出された伝動要素の部分が緩衝装置に、好ましくは走行レールの断面にも入ることができるので、走行レールに対してさらに上昇され得る。走行レールに対してスライド・ドアを最大限に持ち上げることよって、可動式封止装置によって閉じられる必要がある、スライド・ドアの上縁部と走行レールの下縁部との間の空隙は、縮小される。可動式封止装置又はその他の最適化された封止装置を使用することが、したがって、より容易である。
【0036】
好ましい実施例では、発動部材は、走行レールの長手方向軸に対して、真っ直ぐに又は好ましくは傾斜する曲線に沿って延びる斜面として設計される。しかしながら、発動部材はまた、伝動要素が回転するのを可能にする、他の幾何学的形状であり得る。
【0037】
好ましい実施例では、斜面は、伝動レバーとして設計される伝動要素の回転速度がスライド・ドアの一定の運行速度で高い値から連続的に減少されるように、峻度が選択される曲線に沿って伸びる。すなわち、斜面に沿って駆動すると、伝動レバーは、まず、迅速に封止ストリップを上昇させるために、急速に回される。封止ストリップの弾性封止要素が変形される、走行レールと接触するわずかに前又は後に、回転速度が、それに応じて減少し、その結果、封止ストリップが、制御された方式で走行レールに対して圧迫される。斜面の曲線又は経路の断面又は勾配は、好ましくは、使用される装置の部分への最小負荷及び最適な封止がもたらされるように選択される。
【0038】
伝動装置の伝動要素は、好ましくは、発動部材との協働のために設けられた第1のレバー部、及び封止装置の作動要素との協働のために設けられた第2のレバー部を備える伝動レバーである。2つのレバー部は、異なる形状及び寸法であり、異なって方向付けられ得る。好ましくは、両方のレバー部は、互いに平行に又は傾斜して配列される。第1のレバー部は、典型的には第2のレバー部より長く、例えば、ドア・リーフのドア凹部から突出する。
【0039】
スライド・ドアは、ガラス又は木又は別の材料から製作されるドア・リーフを備え得る。
【0040】
好ましくは、ドア・リーフは、上面に、好ましくは、ドア・リーフの一方の端面からもう一方の端面へ延び、ドア・リーフの残りの部分によって片側又は両側で画定される、取付けチャネル又は凹部を設けられる。
【0041】
好ましくは、ドア凹部が設けられ、
a)ドア凹部に、取付け装置が、キャリッジのうちの1つへ接続され、ドア・リーフへ接続された取付けレール内で着脱可能に保持される、取付けユニットを備えて配設され、
b)ドア凹部に、可動式封止装置が、取付け装置の傍に配設され、
c)ドア凹部に、取付け装置及び可動式封止装置の前方で、伝動装置が配設される。
【0042】
好ましくは、伝動装置は、伝動要素、場合により伝動レバーが回転可能に取り付けられる、レバー・シャフトを保持するレバー・ホルダを備え、レバー・ホルダが、好ましくは、ドア・リーフへ接続される取付け基部によって着脱可能に保持される。レバー・ホルダ及び取付け基部は、したがって、好ましくは、相互に対応する係止要素及び相互に対応する掛止め要素を備える。
【0043】
伝動装置のこの実施例は、いくつかの利点を有する。伝動装置を取り付けるために、取付け基部は、まず、例えば、それを所定の場所でねじ止めすることによって、ドア・リーフへ接続され得る。その後、レバー・ホルダが挿入され得る。
【0044】
レバー・ホルダを挿入する前に、取付け装置の取付けユニットは、取付けレールに挿入され、取付けレールもまた、ドア凹部の内側に前もって取り付けられ、又は適当であれば、ねじ止めされている。好ましくは、取付けバーは、例えば、タッピング取付けねじ又は木ねじによって、ドア凹部の内側に固定される。取付けレールは、それに続いて、取付けバーのねじ付き孔にねじ込まれるねじによって、固定され得る。これは、好ましくは、いくつかの取付け穴を備える取付けバーが、特に安定した方式で取り付けられ得るという利点を有する。取付けレールは、その後、例えば、2つの取付けねじのみを用いる、簡素な方式で取付けバーへ接続され得る。
【0045】
取付けユニットは、レバー・ホルダが予め組み立てられた取付け基部へ接続される前に、取付けレールに挿入される。レバー・ホルダはまた、取付けバーへ着脱可能に接続され得る。
【0046】
取付けユニットが、例えば、スライド・ドアの保守又は調整のために、取付けレールから取り外される必要がある場合に、伝動装置のレバー・ホルダは、まず固定を解除され、取っ手を用いて、又は工具を使用して取り外される。取付けユニットは、ここで、ドア・リーフの前面の前方で、取付け基部を介して取付けレールから引き出され得る。その後で、取付けユニットは、取付けレール内に押し戻されることが可能であり、レバー・ホルダは、取っ手を用いて取付け基部へ再び接続されることが可能である。
【0047】
取付け基部は、レバー・ホルダ及び伝動レバーなしで取り付けられるので、レバー・ホルダを取り付けた後にレバー・ホルダの下にある、取付け基部の領域は、取付けねじを挿入するために使用されることが可能である。これは、取付けフランジが、レバー・ホルダの領域の外側で必要とされず、それゆえに、レバー・ホルダが、取付け基部の寸法へ縮小され得ることを意味する。伝動装置は、したがって、可能な限り最小の空間を占める。これは、伝動装置が、好ましくは、カバーのための空間を残しつつ、安定した方式でドア・リーフの前方へ近接して取り付けられることを可能にする。
【0048】
本発明が、図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明のスライド・ドア11を有する本発明のスライド・ドア・システム1の図であり、スライド・ドア11によって、ドア枠12によって囲まれたドア開口部10が、封止装置8、18によって密閉されることが可能であり、スライド・ドア11が、ドア開口部10が閉じられる閉鎖位置でスライド・ドア11を補足及び保持する緩衝装置9まで、走行レール2に沿ってキャリッジ3によって変位されることが可能であり、スライド・ドア11が、発動部材911(
図3を参照)を設けられ、発動部材911によって、可動式封止装置8が作動されることが可能である。
【
図2a】上面にドア凹部110を有する、緩衝装置9に対向する
図1のスライド・ドア11の前面の図であり、可動式封止装置8を作動させるために設けられた伝動装置6が、前面に配設され、その後ろに、並んで、可動式封止装置8及び取付け装置4が配設され、取付け装置4が、接続部材35によって
図1のキャリッジ3のうちの1つへ接続される。
【
図2b】取り付けられた緩衝装置9の後面が描写された、
図2aのスライド・ドア11の前面の図であり、緩衝装置9が、少なくとも1つのカウンタねじ99によって走行レール2の断面内で応力を加えられる。
【
図3】概略的に示されたドア・リーフ111、走行レール2内で誘導され、緩衝装置9に対向するキャリッジ3、取付け装置4、可動式封止装置8、及び伝動装置6を伴う空間を表す、
図1のスライド・ドア11を有するスライド・ドア・システム1の図であり、伝動装置6が、レバー・シャフト622によって回転可能に保持され、第1のレバー部611で緩衝装置9と、及び第2のレバー部612で可動式封止装置8の作動要素82と協働し得る、伝動レバー61を備える。
【
図4】ドア・リーフ111の対向する前面が描写された、
図3のスライド・ドア11の図である。
【
図5a】伝動装置6の記号で示された伝動レバー61による発動前の、概略的に示された取出し機構84を有する、
図4の可動式封止装置8の図である。
【
図5b】伝動装置6の記号で示された伝動レバー61による発動、及び取出し機構84の作動後の、
図5aの可動式封止装置8の図であり、取出し機構84によって、封止ストリップ81が上昇されている。
【
図6b】前面からの
図6aの緩衝装置6の図である。
【
図7a】取付けレール42を有する
図3の取付け装置4の図であり、取付けレール42内で、キャリッジ3へ接続される取付けユニット41が保持され、取付けレール42が、この好ましい実施例では、取付けバー43へ接続される。
【
図7b】取付けユニット41を通る長手方向断面を伴う、
図7aの取付け装置4の分解図であり、取付けユニット41が、接続ねじ35によって、連係するキャリッジ3のキャリッジ本体31へ接続される。
【
図8a】レバー・シャフト622及び伝動レバー61を保持するレバー・ホルダ62を備え、ドア・リーフ111へ接続された取付け基部63へ離脱可能に接続される、ドア凹部110に挿入された
図3の伝動装置6の図である。
【
図8b】レバー・ホルダ62が、取付け基部63及び長手方向断面が示されたドア・リーフ111から脱離された状態の、
図8aの伝動装置6の図である。
【
図8c】互いに脱離された、
図8bの伝動レバー61及びレバー・ホルダ62の図である。
【
図9】好ましく設計された緩衝装置9及び好ましく設計された取付け装置4を有する、さらに好ましい実施例における
図1のスライド・ドア・システム1の図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明のスライド・ドア11を有する本発明のスライド・ドア・システム1を示し、スライド・ドア11によって、簡素なドア開口部10、又はドア枠12によって囲まれたドア開口部10が閉じられ得る。スライド・ドア11は、ドア・リーフ111を備え、ドア・リーフ111の前方4分の1の部分が、上面で及び好ましくは下面でもドア凹部110に配設された可動式封止装置8を部分的に露出させるために、切り取られている。第1の取付け装置4がまた、スライド・ドア11の上面に示され、第1の取付け装置4は、一方でドア・リーフ111へ、もう一方で第1のキャリッジ3へ接続される。一方でドア・リーフ111へ、もう一方で第2のキャリッジ3へ接続される、第2の取付け装置4は、ドア・リーフ111の後側によって覆われる。
【0051】
2つのキャリッジ3は、走行レール2内で誘導され、第1のキャリッジ3が走行レール2内に取り付けられる本発明の緩衝装置9に当たるまで、走行レール2に沿って移動され得る。走行レール2の左部分は、緩衝装置9を示すために長手方向軸に沿って切り取られる。
【0052】
緩衝装置9によって、スライド・ドア11は、ドア開口部10の前方の端位置又は閉鎖位置で弾性的に停止され、好ましくは、ロック要素98(
図3を参照)によって固定され、その結果、スライド・ドア11は、定められた位置、すなわち閉鎖位置で保持され、自動的に退行することができない。スライド・ドア11は、力を加えることによってのみ、ロック要素98から外され、再び退行され得る。
【0053】
緩衝装置9へ接続される発動部材911(
図3を参照)によって、可動式封止装置8がまた、作動され、可動式封止装置8によって、スライド・ドア11の上縁部と例えば走行レール2の下縁部との間の空隙が封止され得る。
【0054】
スライド・ドア11の下側に任意選択で設けられる可動式封止装置8はまた、冒頭で説明された先行技術から公知であるように、閉鎖位置が到達されると作動され得る。
【0055】
ドア枠12の垂直枠材121、122に、従来的な封止18が、好ましくは、スライド・ドア11が閉鎖位置に到達すると、スライド・ドア11と垂直枠材121、122との間の空隙を封止するために、設けられる。
【0056】
スライド・ドア11の閉鎖位置において、ドア開口部10は、したがって、この好ましい実施例では完全に閉じられ、封止される。
【0057】
図2aは、ドア・リーフ111の上面にドア凹部110を有する、緩衝装置9に対向する
図1のスライド・ドア11の前面を示し、可動式封止装置8を作動させるために設けられた伝動装置6が、前面に配設され、その後ろに、並んで、可動式封止装置8及び第1の取付け装置4が配設され、取付け装置4が、接続部35、例えば接続ねじによって
図1の第1のキャリッジ3へ接続される。緩衝装置9は、第1のキャリッジ3を露わにするために、走行レール2から取り外されている。
【0058】
走行レール2は、頭部21によって上部で互いに接続され、互いに対向する脚部23によって底部で接続される、2つの側部22を備える。
【0059】
キャリッジ3はキャリッジ本体31を備え、キャリッジ本体31が両側に走行要素32を保持し、走行要素32が走行レール2の脚部23に支持される。緩衝装置9に対向して、キャリッジ本体31は、スライド・ドア11の閉鎖位置が到達されると、緩衝装置9の1つ又は複数の減衰要素に当接する、停止要素311をさらに備える。
【0060】
伝動装置6は、ドア・リーフ111の前面に直接隣接して取り付けられ、伝動レバー61、レバー・ホルダ62及び取付け基部63の実施例において、伝動要素を備える。レバー・ホルダ62は、取付け基部63に着脱可能に据え付けられる係止プレート621、及びレバー・シャフト622を備え、レバー・シャフト622によって、伝動レバー61が回転可能に支持される。伝動レバー61は、緩衝装置9と協働することができる第1のレバー部611、及び可動式封止装置8の作動要素82と協働することができる第2のレバー部612を備える。両方のレバー部611、612は、互いに隣接し、スライド・ドア11が閉鎖位置に移動されるとすぐに、作動要素82及び緩衝装置9との相互作用が起こるように、寸法が決められる。
【0061】
取付け基部63は、係止要素及び掛止め要素631を含み、係止要素及び掛止め要素631によって、レバー・ホルダ62が離脱可能に係止される。レバー・ホルダ62は、ロック凹部620を備え、ロック凹部620に、掛止め要素631が係合することができる。ロック凹部620はまた、窓を形成し、窓を通して、工具、例えばねじ回しが、掛止め要素631を押し下げ、レバー・ホルダ62からそれを外すために、挿入され得る。レバー・ホルダ62は、したがって、手の1つの動きで、取付け基部63か脱離され得る。
【0062】
可動式封止装置8は、作動要素82によって作動され得る、取出し可能な封止ストリップ81及び取出し機構84(
図5aを参照)が配設される、ハウジング83を備える。
【0063】
可動式封止装置8に加えて、取付け装置4が、各々のキャリッジ3のためにドア凹部110の内側に配設される。示された取付け装置4は、取付けユニット41が滑動され、掛止め舌状部(latching tongue)411などの掛止め要素によって、1つ又は複数の位置でロックされることが可能である、取付けレール42を備える。
【0064】
図2bは、取り付けられた緩衝装置9の後面が描写された、
図2aのスライド・ドア11の前面を示し、緩衝装置9が、少なくとも1つのカウンタねじ99によって走行レール2の断面内で応力を加えられる。緩衝装置9は、走行レール2の脚部23に支持される、脚要素912を有する緩衝本体91を備える。緩衝本体91の内側で、カウンタねじ99は、ねじ付き穴に保持される。走行レール2の頭部21に対してこのカウンタねじ99を回すことによって、緩衝本体91は、走行レールの脚部23に対して圧迫され、応力を加えられる。緩衝装置9は、したがって、走行レール2に挿入され、好適な位置へ移動され、カウンタねじ99を締めることによって所定の場所で固定され得る。
【0065】
さらに、緩衝本体91は、スライド・ドア11又は第1のキャリッジ3が緩衝装置9に対して移動されると、伝動レバー61の第1のレバー部611と相互に作用し得る、発動部材911を備える。この動作中に、伝動レバー61が回転され、第2のレバー部612が作動要素82に対して誘導され、封止装置8の取出し機構が作動され、封止ストリップ81が走行レール2の下側に対して誘導され、それによって、ドア・リーフ111の上縁部と走行レール2の下縁部との間の空隙を封止する。少なくとも、封止ストリップ81の最上部は、好ましくは、弾性があり、それによって、走行レール2の下側に対して均一に圧迫される。閉鎖過程中の封止ストリップ81の動きは、矢印記号で表される。
【0066】
発動部材911が、事実上完全に、緩衝装置9に一体化され、それゆえに、発動部材911は、追加の空間を全く要しないことが確認できる。本発明による緩衝装置9は、したがって、従来的な緩衝装置9の寸法で製造され得る。
【0067】
図3は、概略的に示されたドア・リーフ111、走行レール2内で誘導され、緩衝装置9に対向する第1のキャリッジ3、第1の取付け装置4、可動式封止装置8、及び伝動装置6を伴う空間を表す、
図1のスライド・ドア11を有するスライド・ドア・システム1を示す。走行レール2は、長手方向軸に沿って切り取られている。
【0068】
好ましい実施例では、緩衝装置9は、中心軸に沿った長手方向断面が示される。断面は、カウンタねじ99が回転可能に保持される、2つのねじ付き孔又はねじチャネル990を通って延びる。ねじチャネル990は、底部が開放しており、その結果、工具は、断面図で示された走行レール2の頭部に対してそれらを回転させるために、下からカウンタねじ99へ繋げられることが可能である。
【0069】
下側に、緩衝本体91は、斜面として設計される発動部材911を備える。緩衝本体91は、したがって、緩衝本体91に完全に一体化され、したがって、追加の空間を全く要しない、発動部材911を一体化する。この目的のために、緩衝本体91は、好ましくは、脚要素912の間に発動チャネル910を備え、発動チャネル910に、伝動レバー61の第1のレバー部611が入ることができる。スライド・ドア11が緩衝装置9に向かってさらに移動されると、伝動レバー61は時計回りに回転され、それによって、第2のレバー部612が、可動式封止装置8の作動要素82に向かって誘導される。発動チャネル910は、したがって、伝動レバー61が発動チャネル910に少なくとも部分的に収容されることを可能にし、それゆえに、スライド・ドア11は、ほぼ走行レール2まで上昇されることが可能であり、最小限の空隙のみがそれらの間にできる。
【0070】
前方で、緩衝装置9は、2つの、そのうちの1つのみが示される、側方ダンパ95、及び中央ダンパを備える。中央ダンパ96は、ゴム又はプラスチックなどの弾性材料から製作される。側方ダンパ95は、好ましくは、互いに対して移動され得るピストン及びシリンダを備える。
【0071】
さらに、緩衝装置9は、上面に好ましくは弾性があるロック要素98を備え、ロック要素98は、緩衝本体91の後側に据え付けられ、表象的に示されたねじ981によって緩衝本体91に対して弾性的に回転され得る。長手方向に切り取られたロック要素98はまた、対向する第1のキャリッジ3に向かって配向される、2つの弾性ロック・アーム982(1つのみが示される)を備える。2つの弾性ロック・アームは、弾性的に係合し、キャリッジ3のローラ32のうちの1つを保持するように、各々が設計される。
【0072】
図3は、
図5a及び
図5bを参照して以下でより詳細に説明される、可動式封止装置8、
図4、
図7a及び
図7bを参照して以下でより詳細に説明される、取付け装置4、並びに
図8a、
図8b及び
図8cを参照して以下でより詳細に説明される、伝動装置6をさらに示す。
【0073】
図4は、ドア・リーフ111の対向する前面が描写された、
図3のスライド・ドア11を示す。取付け装置4は、ドア凹部110で伝動装置6の後ろに配設される。ドア・リーフ111へ堅固に接続、例えばねじ止めされる取付けレール42は、互いに向かって配向された係止フランジ421を有する側面要素によって画定される、取付けチャネル420を備える。取付けユニット41は、取付けチャネル420に挿入され、係止フランジ421によって保持される。接続ねじ35は、係止フランジ421の間で突出し、キャリッジ3のキャリッジ本体31にねじ込まれる。
【0074】
係止フランジ421はまた、取付けユニット41の掛止め舌状部411が係合される、ロック・カウンタシンク4210を備える。掛止め舌状部411を持ち上げることによって、取付けユニット41は、外され、別の掛止め位置へ取付けレール42の内側で移動され得る。
【0075】
図2aを参照して、レバー・ホルダ62が、事実上1つの手の動きで固定を解除され、取り外され得ることは、既に説明された。キャリッジ3が点検又は調整される必要がある場合に、取付けユニット41及びレバー・ホルダ62のロック接続が外され、その後で、キャリッジ3を伴って取付けユニット41が延びることができる。キャリッジ3の保守又は調整後、取付けユニット41が取付けレール42に押し戻され、所定の場所でロックされる。その後、レバー・ホルダ62は、取っ手を用いて取付け基部63へ再び接続される。
【0076】
図5aは、伝動装置6の記号で示された伝動レバー61による発動前の、概略的に示された取出し機構84を有する、
図4の可動式封止装置8を示す。好ましい実施例では、取出し機構84は、プッシュ・ロッド842によって作動要素82へ接続される、いくつかの板ばね141を備える。作動要素82を移動させることによって、板ばね141は、好ましくは弾性終端要素811を備える封止ストリップ81が持ち上げられ、走行レール2の下側に対して弾性的に圧迫されるように、曲げられる。
【0077】
図5bは、作動装置82に対して誘導された、記号で示された伝動レバー61による発動、及び取出し機構84の作動後の、
図5aの可動式封止装置8を示し、取出し機構84によって、封止ストリップ81が持ち上げられた。
【0078】
図6aは、ロック要素98を有する、側面からの
図1の緩衝装置6を示し、ロック要素98が、アンカ部981によって後側で緩衝本体91に据え付けられ、前側に2つの弾性アンカ・アーム982を備え、弾性アンカ・アーム982が、走行輪32上で係合し、それを各々保持することが可能であるように、曲げられる。発動部材911が一体化され、緩衝本体91に埋め込まれるので、その下部のみが視認可能である。
【0079】
図6bは、前方からの
図6aの緩衝装置6を示す。2つの側方ダンパ95が、中央ダンパ96へ対称に配設されることが確認できる。上部側に、2つのロック・アーム982、及びカウンタねじ99のうちの1つが視認可能である。緩衝装置9の底部側に、緩衝本体91の脚要素912が示され、脚要素912の間に、発動チャネル910が緩衝本体91内に沈降される。発動チャネル910のチャネル底部は、好ましくは斜面形状の発動部材911を形成する。カウンタねじ99及び固定ねじ981を回すためにねじ回しが挿入され得る穴は、斜面911で挿入され、カウンタねじ99及び固定ねじ981によって、ロック要素98が保持され、予め応力を加えられる。
【0080】
図6cは、
図6aの緩衝装置6の分解図を示す。緩衝本体91が、側方ダンパ95を受容するための2つの側方開口部915、中央ダンパ96を受容するための中央開口部916、及びロック部98のアンカ要素981を係止するための係止突起部918を備えることが示される。表象的に、側方ダンパ95が、好ましくは、ピストン・ロッド953へ接続され、減衰シリンダ952に滑動可能に取り付けられる、ピストン951を備えることが示される。減衰シリンダ952内には、ピストン951によって変位される、例えば、空気などの粘性物質又は媒体が入れられる。好ましくは、ピストン951は、弾性要素によってその元の位置へ戻される。緩衝本体91は、好ましくは、プラスチック又は金属から製作される。
【0081】
図7aは、取付けレール42を有する、
図3及び
図4の取付け装置4を示し、取付けレール42内で、キャリッジ3へ接続される取付けユニット41が保持され、取付けレール42が、この好ましい実施例では、取付けバー43に支持される。好ましい実施例では、取付けバー43は、スライド・ドア11のドア・リーフ111へ、ドア凹部110内で接続可能であり、好ましくは、金属から製作される。取付けレール42を取付けバー43へより容易に連結するために、対応する連結要素429、439が設けられる。連結要素429、439は、取付けレール42及び取付けバー43の対応する取付け孔及びねじ付き孔が、常に、互いに同軸に配列されることを確実にする。
【0082】
図7bは、分解図で、取付けユニット41を通る長手方向断面を伴う、
図7aの取付け装置4を示す。
図7aで掛止め陥没部4210に差し込まれる掛止め舌状部411は、端部が露出され、好ましくは弾性がある。キャリッジ3のキャリッジ本体31へ接続される接続ねじ35は、取付けユニット41の接続チャネル410で回転可能に保持される。
【0083】
図7bで取付けレール42から分離される、取付けバー43は、取付け穴430及びねじ付き孔431を備える。タッピング取付けねじ432は、取付け穴430を通過して、取付けバー43をドア・リーフ111へ接続することができる。それに続いて、取付けレール42は、取付けバー43のねじ付き孔431に、取付けレール42の取付け穴4230を通して、取付けねじ423を挿入することによって、取付けバー43へ接続され得る。これは、取付けバー43が、必要な数のタッピング取付けねじ432で簡素な方式で取り付けられることが可能であり、それに続いて、例えば、2つの取付けねじ423のみが、取付けレール42の設置のために必要とされるという利点を有する。取付けレール42は、したがって、設計がより簡素で、設置がより容易であり得る。
【0084】
図7bは、取付けレール42がいくつかのロック・カウンタシンク4210を備え、ロック・カウンタシンク4210に、取付けユニット41の掛止め舌状部411が差し込まれ得ることをさらに示す。取付けユニット41及び/又は取付けレール42及び/又は取付けバー43は、プラスチック又は金属などの任意の材料から製作され得る。
【0085】
図8aは、レバー・シャフト622及び伝動レバー61を保持するレバー・ホルダ62を備え、ドア・リーフ111へ接続、例えばねじ止めされた取付け基部63へ着脱可能に接続される、ドア凹部110に挿入された
図3の伝動装置6を示す。
【0086】
図8bは、レバー・ホルダ62が、取付け基部63及び長手方向断面が示されたドア・リーフ111から脱離された状態の、
図8aの伝動装置6を示す。レバー・ホルダ62は、ロック凹部620を有する係止プレート621、及びレバー・シャフト622を保持する軸受けフランジ623(
図6cを参照)を備える。
【0087】
取付け基部63は、外周保持フランジ631を備え、外周保持フランジ631の下に、レバー・ホルダ62の係止プレート621が押し込まれ得る。この過程で、係止プレート621は、弾性掛止め要素632上で誘導され、弾性掛止め要素632は、それがレバー・ホルダ62のロック凹部で係合し得る前に、下方にずらされる。工具を挿入することによって、掛止め要素632が、再び下方にずらされて、取付け基部63からレバー・ホルダ62を外すことが可能である。
【0088】
図8cは、互いに脱離された、
図8bの伝動レバー61及びレバー・ホルダ62を示す。伝動レバー61の2つのレバー部611、612は、異なる寸法を有するが、同じ方向に方向付けられ、それゆえに、伝動レバー61は、わずかな空間だけを要する。
【0089】
図9は、好ましく設計された緩衝装置9及び好ましく設計された取付け装置4を有する、さらに好ましい実施例における
図1のスライド・ドア・システム1を示す。取付けレール42から取り外されており、断面図で示される、取付け装置4の取付けユニット41は、米国特許第9,341,011(B2)号から公知である。この実施例では、取付けユニット41は、走行レールの長手方向軸に平行に配列され、取付け本体415に回転可能に取り付けられた調整ねじ416を備え、調整ねじ416によって、スライド418が誘導路に沿って変位可能に取り付けられる、スライド・ホルダ417が、軸方向に変位され得る。スライド・ホルダ417が軸方向に移動されると、接続ねじ416へ接続されるスライド418は、誘導路に沿って上又は下に移動される。調整ねじ415を回すことによって、スライド・ドア11は、したがって、上昇又は下降され得る。この調整のために、取付けレール42から取付けユニット41を取り外す必要はないが、調整ねじ416へのアクセスは確保される必要がある。これを行うため、伝動装置6のレバー・ホルダ62は、
図8a、
図8b及び
図8cを参照して上記のように、取付け基部63から脱離される。
【0090】
この実施例では、キャリッジ3は、一方がもう一方の後に配設される、2つのローラ32のみを備え、そのうちの第1のローラ32は、キャリッジ本体31が緩衝本体91に当たるとすぐに、ロック部98の単一のロック・アーム982によって保持される。
【0091】
緩衝装置9はまた、発動チャネル910を有する緩衝本体91を備える。この場合に、発動部材911は、緩衝本体91に成形されないが、取付け部9110によって発動チャネル910に据え付けられ得る。このように、緩衝装置9は、好適な発動部材911を備え付けられ得る。取付け部9110は、好ましくは脱着可能であり、その結果、取付け部9110は、必要に応じて脱離され、再び挿入され得る。
図9は、取外し後の、及び緩衝装置9への挿入後の、発動部材911を有する取付け部9110を示す。
【符号の説明】
【0092】
1 スライド・ドア・システム
10 ドア開口部
11 スライド・ドア
12 ドア枠
18 可動式でないドア封止
110 ドア凹部
111 ドア・リーフ
2 走行レール
21 走行レール2の頭部
121、122 枠材
22 走行レール2の1つ又は複数の側部
23 走行レール2の1つ又は複数の脚部
3 キャリッジ
31 キャリッジ本体
311 キャリッジ本体31の停止要素
32 走行要素、走行輪
4 取付け装置
41 取付けユニット
410 接続チャネル
411 掛止め舌状部
415 取付け本体
416 調整ねじ
417 スライド・ホルダ
418 スライド
42 取付けレール
420 取付けチャネル
421 係止フランジを有する側面要素
4210 ロック・カウンタシンク
422 接続プレート
423 補正ねじ
43 取付けバー
430、431 取付け穴、ねじ付き孔
432 タッピング取付けねじ
6 伝動装置
61 伝動要素、伝動レバー
611 第1のレバー部
612 第2のレバー部
62 レバー・ホルダ
620 ロック凹部
621 係止プレート
622 レバー・シャフト
63 取付け基部
631 保持フランジ
632 掛止め要素
8 可動式封止装置
81 封止ストリップ
811 弾性終端要素
82 作動要素
83 封止装置のハウジング
84 取出し機構
841 板ばね
842 プッシュ・ロッド
9 緩衝装置
91 緩衝本体
910 発動チャネル
911 発動部材、接触斜面
9110 取付け部
912 脚要素
915 側方開口部
916 中央開口部
918 係止突起部
95 側方ダンパ
951 ピストン・ロッド953を有するピストン
952 減衰シリンダ
953 ピストン・ロッド
96 中央ダンパ
98 ロック要素
981 アンカ要素
982 ロック・アーム
99 カウンタねじ
990 ねじチャネル
【外国語明細書】