(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003895
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】魚群探知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/96 20060101AFI20230110BHJP
G01S 7/62 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G01S15/96
G01S7/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105260
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174757
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和樹
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB01
5J083AB05
5J083AC05
5J083AC06
5J083AD01
5J083AD04
5J083AE04
5J083AF15
5J083AF16
5J083BA02
5J083BA13
5J083BE11
5J083CA01
5J083EA01
5J083EB01
(57)【要約】
【課題】探知性能を上げつつ不感帯の距離を短くできる魚群探知装置を提供すること。
【解決手段】固定された第1周波数f0にて超音波ビームTBを振動子16より第1時間T1送信し、その反射波を振動子16にて受信するように制御する第1制御手段21aと、第1制御手段21aによる制御後に、第1時間T1よりも長い第2時間T2かけて第2周波数f2から第3周波数f3の間で周波数を変化させながら超音波ビームTBを振動子16より送信し、その反射波を振動子16にて受信するように制御する第2制御手段21bと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、
その振動子により送信された超音波の反射波を前記振動子が受信して生じる受信信号に基づいて探知画像を形成する形成手段と、
その形成手段により形成される前記探知画像を表示する表示手段と、
固定された第1周波数にて前記超音波を前記振動子より第1時間送信し、その反射波を前記振動子にて受信するように制御する第1制御手段と、
前記第1制御手段による制御後に、前記第1時間よりも長い第2時間かけて第2周波数から第3周波数の間で周波数を変化させながら前記超音波を前記振動子より送信し、その反射波を前記振動子にて受信するように制御する第2制御手段と、を備えることを特徴とする魚群探知装置。
【請求項2】
前記第1制御手段の制御により反射波を受信する第3時間は、前記第2制御手段の制御により前記超音波が前記第2時間かけて送信されることによってその反射波が受信困難な深度からの反射波を受信するのに十分な時間に設定されることを特徴とする請求項1記載の魚群探知装置。
【請求項3】
前記第3時間は、前記第2制御手段の制御により反射波を受信する第4時間よりも短い時間に設定されることを特徴とする請求項2記載の魚群探知装置。
【請求項4】
前記第1周波数は、前記第2周波数から第3周波数の範囲外に設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の魚群探知装置。
【請求項5】
前記第1周波数は、前記第2周波数及び前記第3周波数よりも高い周波数に設定されることを特徴とする請求項4記載の魚群探知装置。
【請求項6】
前記第1周波数の前記超音波の前記振動子における受信感度が、前記第2周波数から前記第3周波数の範囲内の前記超音波の前記振動子における受信感度よりも低くなるように、前記第1周波数が設定されることを特徴とする請求項4又は5記載の魚群探知装置。
【請求項7】
前記形成手段は、第1深度に対応する位置において、前記第2制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号よりも前記第1制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて前記探知画像を形成し、前記第1深度よりも深い第2深度に対応する位置において、前記第1制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号よりも前記第2制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて前記探知画像を形成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の魚群探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に送信された超音波の反射波を受信して得られた受信信号に基づく探知画像を表示する魚群探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波の送受信によって水中の魚群などの探知対象物を探知する装置として魚群探知装置が知られている(例えば、特許文献1)。魚群探知装置は、例えば船舶の船底などに配置される振動子から細いビーム状の超音波を水中や水底に向けて送信(照射)し、そのビーム状の超音波の反射波を振動子が受信するように構成されている。魚群探知装置は、その反射波を振動子が受信して得られた受信信号に基づいて、超音波を反射した物体の存在位置とその反射強度(レベル)を示す探知画像を形成し表示装置に表示する。
【0003】
探知性能を上げるべく、探知対象物からの反射強度(レベル)を高くするためには、振動子から送信される超音波の電力(音圧)を大きくする必要がある。その1つの方法として、超音波の振幅を大きくすることが挙げられるが、振動子が耐えられる電圧に限界がある。そこで、振動子より送信される超音波の時間(パルス長)を長くすることで、超音波の電力を大きくする方法が知られている。
【0004】
ところで、振動子より超音波を送信する方式として、従来よりパルス方式が知られている。パルス方式は、固定の周波数で超音波を所定時間(所定のパルス長)送信する方式である。パルス方式において、送信する超音波の電力を大きくするために前記所定時間を長時間に設定した場合、探知対象物から反射してくる反射波の長さ(時間)も長くなる。よって、複数の探知対象物が接近していた場合、各々から反射してくる反射波が混ざり合い、各探知対象物を切り分けて表示することが難しくなる。従って、魚群探知装置の使用者が、精度よく探知対象物を見分けることが困難となる場合が生じる。
【0005】
これに対し、振動子より超音波を送信する別の方式として、チャープ方式がある。チャープ方式は、周波数が徐々に高くなるように、又は、周波数が徐々に低くなるように、周波数を変化させながら、超音波を所定時間送信する方式である。チャープ方式は、時間とともに周波数を変化させるために前記所定時間としてある程度の長さが必要となるが、逆に前記所定時間を長時間とすることで、超音波の電力を大きくすることができる。さらに、チャープ方式は周波数が徐々に変化するものであるので、前記所定時間を長時間に設定することで、近接する探知対象物からの反射波が混ざり合ったとしても、反射してくる周波数の時間的なずれから、これら探知対象物を切り分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的な魚群探知装置では、超音波の送受信を1つの振動子で行うものが多く、探知対象物からの反射強度を上げつつ近接する探知対象物を精度よく探知できるように、振動子からチャープ方式にて超音波を長時間送信したとしても、次のような問題が生じる。即ち、超音波が送信される間、その振動子において探知対象物からの反射波を受信できないため、振動子が取り付けられた位置から所定の距離は探知対象物の不感帯となり、探知対象物の探知が不可能となる。そして、超音波の送信時間を長くすればするほど、この不感帯も長くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、探知性能を上げつつ不感帯の距離を短くできる魚群探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載の魚群探知装置は、超音波を水中に送信し、その反射波を受信可能な振動子と、その振動子により送信された超音波の反射波を前記振動子が受信して生じる受信信号に基づいて探知画像を形成する形成手段と、その形成手段により形成される前記探知画像を表示する表示手段と、固定された第1周波数にて前記超音波を前記振動子より第1時間送信し、その反射波を前記振動子にて受信するように制御する第1制御手段と、前記第1制御手段による制御後に、前記第1時間よりも長い第2時間かけて第2周波数から第3周波数の間で周波数を変化させながら前記超音波を前記振動子より送信し、その反射波を前記振動子にて受信するように制御する第2制御手段と、を備える。
【0010】
請求項2記載の魚群探知装置は、請求項1記載の魚群探知装置において、前記第1制御手段の制御により反射波を受信する第3時間は、前記第2制御手段の制御により前記超音波が前記第2時間かけて送信されることによってその反射波が受信困難な深度からの反射波を受信するのに十分な時間に設定される。
【0011】
請求項3記載の魚群探知装置は、請求項2記載の魚群探知装置において、前記第3時間は、前記第2制御手段の制御により反射波を受信する第4時間よりも短い時間に設定される。
【0012】
請求項4記載の魚群探知装置は、請求項1から3のいずれかに記載の魚群探知装置において、前記第1周波数は、前記第2周波数から第3周波数の範囲外に設定される。
【0013】
請求項5記載の魚群探知装置は、請求項4記載の魚群探知装置において、前記第2周波数及び前記第3周波数よりも高い周波数に設定される。
【0014】
請求項6記載の魚群探知装置は、請求項4又は5記載の魚群探知装置において、前記第1周波数の前記超音波の前記振動子における受信感度が、前記第2周波数から前記第3周波数の範囲内の前記超音波の前記振動子における受信感度よりも低くなるように、前記第1周波数が設定される。
【0015】
請求項7記載の魚群探知装置は、請求項1から6のいずれかに記載の魚群探知装置において、第1深度に対応する位置において、前記第2制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号よりも前記第1制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて前記探知画像を形成し、前記第1深度よりも深い第2深度に対応する位置において、前記第1制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号よりも前記第2制御手段の制御により前記振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて前記探知画像を形成する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の魚群探知装置によれば、まず第1制御手段の制御により、固定された第1周波数にて振動子より超音波が第1時間送信され、その反射波が該振動子によって受信される。次に、第2制御手段の制御により、第1時間よりも長い第2時間かけて第2周波数から第3周波数の間で周波数を変化させながら、超音波が振動子より送信され、その反射波が該振動子によって受信される。そして、これらの反射波を振動子が受信して生じる受信信号に基づいて、探知画像が形成手段により形成され、表示手段に表示される。第2制御手段の制御によって、超音波が第1時間よりも長い第2時間かけて送信されるので、反射波の強度を高くできる。また、周波数が変化しながら超音波が送信されるので、探知対象物が近接していたとしても、各々の探知対象物を切り分けて表示することができる。これらにより、探知性能を上げることができる。一方、第1制御手段の制御による超音波の送受信では、超音波が第2時間よりも短い第1時間だけ振動子から送信されるので、該振動子において反射波が受信できない期間を短くできる。よって、不感帯を短くできる。また、第1制御手段によって送信される超音波の送信時間が短いことによって、探知対象物が近接していたとしても、これらの探知対象物からの反射波が混ざり合うことも抑制できるので、各々の探知対象物を切り分けて表示することができる。よって、探知性能を上げつつ不感帯の距離を短くできるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の魚群探知装置によれば、請求項1記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第1制御手段の制御により反射波を受信する第3時間は、第2制御手段の制御により超音波が第2時間かけて送信されることによってその反射波が受信困難な深度からの反射波を受信するのに十分な時間に設定される。よって、第2制御手段の制御によって、超音波の送信時間が長いために長い距離となる不感帯における探知対象物の探知を、第1制御手段の制御による超音波の送受信によって、その第1制御手段の制御による不感帯を除いて確実に行うことができるという効果がある。
【0018】
請求項3記載の魚群探知装置によれば、請求項2記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第1制御手段の制御では、探知範囲すべてからの反射波を待つことがないため、第1制御手段の制御により反射波を受信する第3時間は、第2制御手段の制御により反射波を受信する第4時間よりも短い時間に設定される。よって、単純に2つの方式にて超音波を送受信する場合と比較して、探知範囲に係る探知時間を短くできるという効果がある。
【0019】
請求項4記載の魚群探知装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第1制御手段の制御により送信される超音波の第1周波数は、第2制御手段の制御により送信される超音波の第2周波数から第3周波数の範囲外に設定されるので、第2制御手段の制御において反射波を振動子にて受信する場合に、第1制御手段の制御にて送信された超音波の反射波が重畳してノイズとなって表示されることを抑制できるという効果がある。
【0020】
請求項5記載の魚群探知装置によれば、請求項4記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第1制御手段の制御により送信される超音波の第1周波数は、第2制御手段の制御により送信される超音波の第2周波数及び第3周波数よりも高い周波数に設定される。超音波の周波数が高い場合、同一時間内において振動子内部で受信した反射波の反射する回数が多くなる。超音波は反射面でのエネルギー損失が大きいため、単位時間当たりのエネルギーの減衰量が大きくなる。ここで、振動子の受信回路には、一般的に初段において保護回路が設けられ、反射波を振動子が受信することで発生した電圧が、安全なレベルの電圧を超えている間、その保護回路にて後段の回路に伝搬しないようになっており、その期間も不感帯となる。第1周波数が高い周波数に設定されることで、振動子にて受信した反射波のエネルギーが早く減衰するため、受信によって発生する電圧も早期に減衰することになるので、保護回路の動作による不感帯となる期間も短くできるという効果がある。
【0021】
請求項6記載の魚群探知装置によれば、請求項4又は5記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、第1制御手段の制御により送信される第1周波数の超音波の振動子における受信感度が、第2制御手段の制御により送信される第2周波数から第3周波数の範囲内の超音波の振動子における受信感度よりも低くなるように、第1周波数が設定される。第1制御手段の制御では、第2制御手段の制御によって不感帯となる深度の浅い探知範囲からの反射波を受信することになるため、振動子の受信感度が低くても有効に機能する。よって、使用する振動子として、受信感度が高い領域を、少なくとも第2周波数から第3周波数を含むように狭いものを使用することができるという効果がある。また、振動子における第1周波数の受信感度が低いため、受信によって得られる電圧は低くなるので、上記した保護回路の動作による不感帯となる期間も短くできるという効果がある。
【0022】
請求項7記載の魚群探知装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の魚群探知装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、深度の浅い第1深度に対応する位置において、第2制御手段の制御により振動子が受信して生じる受信信号よりも第1制御手段の制御により振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて探知画像が形成される。一方、深度の深い第2深度に対応する位置において、第1制御手段の制御により振動子が受信して生じる受信信号よりも第2制御手段の制御により振動子が受信して生じる受信信号を強く反映させて探知画像が形成される。これにより、探知性能が高く且つ不感帯の距離が短い探知画像を表示手段に表示させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態である魚群探知装置の構成を概略的に示す概略図である。
【
図2】同魚群探知装置が搭載された船舶によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図である。
【
図3】同魚群探知装置の機能的構成を示したブロック図である。
【
図4】(a)は、同魚群探知装置によりパルス方式にて送信される超音波ビームの波形を模式的に示した図であり、(b)は、同魚群探知装置によりチャープ方式にて送信される超音波ビームの波形を模式的に示した図である。
【
図5】同魚群探知装置の制御装置により実行される魚群探知処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0025】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚群探知装置12の概略構成について説明する。
図1は、その魚群探知装置12の構成を概略的に示す概略図であり、
図2は、魚群探知装置12が搭載された船舶11によって水中の探知を行う場合の状態を側面より示す模式図である。
【0026】
図1及び
図2に示す通り、魚群探知装置12は船舶11に搭載され、該船舶11直下又は周囲の水中に対し、魚群などの探知対象物Gの探知を行うものである。魚群探知装置12は、本体13と、本体13に設けられ使用者からの入力を受け付ける操作ボタン14と、本体13に一体形成された表示装置15と、超音波ビームTBを送受信する振動子16とにより構成される。
【0027】
振動子16は、船舶11の船底又は船尾に固着され、ケーブルによって本体13と電気的に接続されている。振動子16は、本体13の送信回路30(
図3参照)から送信される信号によって、細いビーム状の超音波ビームTBを1つの方向(例えば、船舶11の真下方向)に送信(照射)する。また、振動子16は、探知対象物Gや、海底,湖底,川底,池の底といった水底などから反射された超音波ビームTBの反射波を受信し、その受信によって得られた受信信号を本体13の受信回路31(
図3参照)へ送信する。
【0028】
ここで、振動子16の受信感度は、後述するチャープ方式にて送信される超音波ビームTBの周波数(本実施形態では、130~220kHz)において最もよい特性を示すものが使用される。換言すれば、チャープ方式における超音波ビームTBの周波数は、振動子16の受信感度が高い周波数に設定される。一方で、後述するパルス方式にて送信される超音波ビームTBの周波数(本実施形態では、240kHz)は、振動子16の受信感度が低い周波数となるように設定される。
【0029】
魚群探知装置12の本体13は、例えば船舶11の操舵室内に配置され、振動子16が超音波ビームTBの反射波を受信することによって得られた受信信号に基づいて探知画像を形成し、この探知画像を表示装置15に表示することで、水中の探知結果を使用者に示す。
【0030】
次いで、
図3を参照して、魚群探知装置12の機能的構成について説明する。
図3は、魚群探知装置12の機能的構成を示したブロック図である。魚群探知装置12は、本体13内部に制御装置20を有している。制御装置20は、魚群探知装置12の動作を制御するものであり、図示しない演算処理装置としてのCPU(Central Proccesing Unit)と、不揮発性のメモリであるROM(Read Only Memory)又は/及びフラッシュメモリと、揮発性のメモリであるRAM(Random Access Memory)と、を少なくとも有して構成される。
【0031】
CPUは、ROM又は/及びフラッシュメモリに記憶されたプログラムデータや固定値データ等に基づいて、RAMに各種データを一時的に記憶し、また、読み出しながら、魚群探知装置12の動作を制御する。このCPUの動作によって、制御装置20は、超音波制御手段21と、形成手段24として機能する。また、CPUは、その動作によって、RAMをパルス受信バッファ22とチャープ受信バッファ23として機能させる。
【0032】
また、制御装置20は、上述した操作ボタン14及び表示装置15と接続されるほか、本体13内部に設けられた送信回路30及び受信回路31と接続され、振動子16は、送信回路30及び受信回路31を介して制御装置20により制御される。
【0033】
超音波制御手段21は、操作ボタン14による使用者からの入力(例えば、探知対象物Gの探知範囲(探知深度)等)に基づいて、振動子16から所定条件で超音波ビームTBを送受信するように、送信回路30及び受信回路31を介して振動子16を制御する。
【0034】
ここで、本実施形態の魚群探知装置12では、1回の探知において、2つの方式で超音波ビームTBを順次送受信するように制御される。即ち、超音波制御手段21は、第1制御手段21aと第2制御手段21bとを有しており、まず第1制御手段21aにてパルス方式にて超音波ビームTBの送受信を行い、次に第2制御手段21bにてチャープ方式にて超音波ビームTBの送受信を行うように、振動子16を制御する。
【0035】
ここで、
図4を参照してパルス方式の超音波ビームTBと、チャープ方式の超音波ビームTBとを説明する。
図4(a)は、パルス方式にて送信される超音波ビームTBの波形を模式的に示した図であり、
図4(b)は、チャープ方式にて送信される超音波ビームTBの波形を模式的に示した図である。なお、
図4(a)及び(b)は、各々の方式の超音波ビームTBの特徴を分かりやすく示すため、波形の時間軸(横軸)と強度軸(縦軸)のスケールをそれぞれで異ならせている。
【0036】
パルス方式の超音波ビームTBは、
図4(a)に示す通り、周波数が第1周波数f1に固定されて、第1時間T1だけ送信されるように、送信回路30を介して振動子16が制御される。本実施形態に係る第1制御手段21aでは、第1周波数f1として240kHzが設定され、第1時間T1として100マイクロ秒が設定される。そして、第1制御手段21aは、このようなパルス方式の超音波ビームTBを送信した後、第3時間(本実施形態では10ミリ秒間)、探知対象物Gからの反射波を振動子16にて受信するよう受信回路31を制御する。
【0037】
つまり、パルス方式の超音波ビームTBでは、振動子16から距離7.5cm(=音速1500m/秒×100マイクロ秒÷2(超音波ビームTBの往復))までが超音波ビームTBの送信に起因する不感帯となり、振動子16からおよそ7.5cm~7.5m(=1500m/秒×10ミリ秒÷2)の範囲で探知対象物Gの探知が行われる。
【0038】
一方、チャープ方式の超音波ビームTBは、
図4(b)に示す通り、周波数が第2周波数f2から第3周波数f3の間で徐々に高くなるように変化しながら、第2時間T2だけ送信されるように、送信回路30を介して振動子16が制御される。本実施形態に係る第2制御手段21bでは、第2周波数f2として130kHzが設定され、第3周波数f3として220kHzが設定され、第2時間T2として5ミリ秒が設定される。
【0039】
そして、第2制御手段21bは、このようなチャープ方式の超音波ビームTBを送信した後、第4時間、探知対象物Gからの反射波を振動子16にて受信するように受信回路31を制御する。この第4時間は、使用者が操作ボタン14を操作することにより設定された探知範囲(探知深度)に応じて設定される。
【0040】
つまり、チャープ方式の超音波ビームTBでは、振動子16から距離3.75m(=1500m/秒×5ミリ秒÷2)までが超音波ビームTBの送信に起因する不感帯となり、振動子16からおよそ3.75m~使用者に設定された探知深度の範囲で、探知対象物Gの探知が行われる。
【0041】
なお、本実施形態に係る魚群探知装置12は、使用者により設定される探知範囲(探知深度)が、第1制御手段21aの制御によって探知可能な最大深度である7.5mよりも深い深度に設定されるように構成されている。
【0042】
ただし、使用者により設定される探知範囲(探知深度)が、第1制御手段21aの制御によって探知可能な最大深度である7.5mよりも浅い深度に設定されるように構成されることも当然可能である。この場合、使用者により設定される探知範囲(探知深度)が、第1制御手段21aの制御によって探知可能な最大深度である7.5mよりも浅い深度に設定されたときには、第1制御手段21aの制御のみによって、つまり、パルス方式の超音波ビームTBのみを用いて、探知対象物Gの探知を行うようにしてもよい。
【0043】
また、
図4(b)では、周波数が第2周波数f2から第3周波数f3の間で徐々に高くなるように変化するチャープ方式の超音波ビームTBについて説明したが、チャープ方式の超音波ビームTBとして、周波数が第3周波数f3から第2周波数f2の間で徐々に低くなるように変化するものを採用してもよい。
【0044】
送信回路30は、超音波ビームTBを送信するように振動子16を駆動制御する回路である。
【0045】
例えば、送信回路30は、第1制御手段21aから、送信モードとしてパルスモード、送信周波数として240kHz、送信時間として100マイクロ秒、その他送信の諸条件(例えば、振幅等)が指示されると、その諸条件に従いながら、周波数240kHzのパルス方式の超音波ビームTBを100マイクロ秒送信するように、振動子16を駆動制御する。
【0046】
また、送信回路30は、第2制御手段21bから、送信モードとしてチャープモード、送信周波数として130~220kHz、送信時間として5ミリ秒、その他送信の諸条件が指示されると、その諸条件に従いながら、周波数130kHzから220kHzの間で周波数が徐々に高くなるチャープ方式の超音波ビームTBを5ミリ秒送信するように、振動子16を駆動制御する。
【0047】
受信回路31は、振動子16が超音波ビームTBの反射波を受信して生じる受信信号を、振動子16より受信して、制御装置20へ送信する回路である。振動子16から見て、受信回路31の初段には図示しない保護回路が設けられている。反射波を振動子16が受信することで発生した受信信号の電圧が安全なレベルの電圧を超えている間、その保護回路にて後段の回路に伝搬しないようになっており、制御装置20全体を保護している。つまり、保護回路の動作により受信信号が公団の回路に伝搬しない期間も不感帯となる。保護回路を伝搬した受信信号は、受信回路に設けられた図示しない増幅回路にて増幅され、同じく受信回路に設けられた図示しないAD変換回路にてディジタル信号に変換されて、制御装置20へ送信される。
【0048】
受信回路31は、送信回路30の制御によって振動子16からの超音波ビームTBの送信が終了した後、第1制御手段21a又は第2制御手段21bより指示された時間、超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信して生じる受信信号を、制御装置20へ送信する。
【0049】
つまり、第1制御手段21aにより、パルス方式の超音波ビームTBが振動子16より送信された場合は、その送信後10ミリ秒間、超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信することによって生じる受信信号が受信回路31により受信され、制御装置20へ送信される。
【0050】
また、第2制御手段21bにより、チャープ方式の超音波ビームTBが振動子16より送信された場合は、その送信後、使用者が操作ボタン14を操作することにより設定された探知範囲(探知深度)に応じて設定された時間、超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信することによって生じる受信信号が受信回路31により受信され、制御装置20へ送信される。
【0051】
パルス受信バッファ22は、パルス方式の超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信することによって生じる受信信号に基づいて算出される各深度からの反射波の強度を、深度毎に記憶するメモリである。制御装置20は、第1制御手段21aの制御に基づき、受信回路31を介して振動子16からの受信信号を受信すると、その受信信号に基づいて各深度からの反射波の強度を算出して、その算出した強度を深度毎にパルス受信バッファ22に記憶する。
【0052】
チャープ受信バッファ23は、チャープ方式の超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信することによって生じる受信信号に基づいて算出される各深度からの反射波の強度を、深度毎に記憶するメモリである。制御装置20は、第1制御手段21aの制御に基づき、受信回路31を介して振動子16からの受信信号を受信すると、その受信信号に基づいて各深度からの反射波の強度を算出して、その算出した強度を深度毎にチャープ受信バッファ23に記憶する。
【0053】
形成手段24は、超音波ビームTBの反射波を振動子16が受信して生じる受信信号に基づいて、表示装置15の表示する探知画像を形成する。本実施形態では、パルス受信バッファ22に記憶された、パルス方式の超音波ビームTBの送受信により得られた各深度からの反射波の強度(以下「パルス側強度」という)と、チャープ受信バッファ23に記憶された、チャープ方式の超音波ビームTBの送受信により得られた各深度からの反射波の強度(以下「チャープ側強度」)と、を合成処理することで、探知画像を形成する。
【0054】
合成処理は、例えば、深度毎に、その深度dにおけるパルス側強度P1(d)とチャープ側強度P2(d)とを、以下の(1)式によってアルファブレンドすることにより行われる。
【0055】
P(d)=α(d)×P1(d)+(1-α(d))×P2(d) ・・・(1)
ここで、P(d)は、深度dにおける合成後の反射波の強度である。α(d)は、深度d毎に、0以上1以下の値で規定されるα値である。
【0056】
α値は、第2制御手段21bの制御によって送受信されるチャープ方式の超音波ビームTBにおいて不感帯に位置する深度dに対しては、「1」が設定される。つまり、当該不感帯に位置する深度dについては、パルス側強度P1(d)がそのまま、当該深度dの反射波の強度P(d)となる。なお、本実施形態では、チャープ方式の超音波ビームTBが5ミリ秒間、振動子16より送信されるので、上述の通り、振動子16より距離3.75mが不感帯となる。
【0057】
一方、第1制御手段21aの制御により設定された受信時間(第3時間)よって、パルス方式の超音波ビームTBの反射波が受信できない深い深度dに対しては、α値が「0」が設定され、チャープ側強度P2(d)がそのまま、当該深度dの反射波の強度P(d)となる。なお、本実施形態では、パルス方式の超音波ビームTBの反射波の受信時間(第3時間)が10ミリ秒であるので、振動子16より距離7.5m以上の深度dに対して、α値が「0」に設定される。
【0058】
そして、チャープ方式の超音波ビームTBにおける不感帯の最深深度d1(3.75m)から、パルス方式の超音波ビームTBの反射波を受信する最深深度d2(7.5m)までは、両方式にて反射波を受信している。そこで、各々の深度dに対応するα値であるα(d)を、次の(2)式で定める。
【0059】
α(d)=(d2―d)/(d2-d1)・・・(2)
このように、チャープ方式の超音波ビームTBにおける不感帯の最深深度d1(3.75m)から、パルス方式の超音波ビームTBの反射波を受信する最深深度d2(7.5m)までの深度dにおけるα値であるα(d)を(2)式にて定めることにより、方式の異なるパルス方式の超音波ビームTBの反射波に基づいて形成される探知画像と、チャープ方式の超音波ビームTBの反射波に基づいて形成される探知画像とを、滑らかにつなぐことが可能となり、方式の違いによる筋が探知画像に表示されることを抑制できる。
【0060】
次いで、
図5を参照して、制御装置20にて実行される魚群探知処理について説明する。
図5は、その魚群探知処理を示すフローチャートである。魚群探知処理は、魚群探知装置12の電源がオンされてときに魚群探知装置12を構成する各デバイスの初期設定が行われた後に実行が開始され、魚群探知装置12の電源がオフされるまで継続して実行される。
【0061】
制御装置20は、魚群探知処理を開始すると、まずパルス方式送受信処理を実行する(S1)。このパルス方式送受信処理を実行する制御装置20が、魚群探知装置12の第1制御手段21aとして機能する。
【0062】
このパルス方式送受信処理では、送信回路30に対して、送信モードとしてパルスモード、送信周波数として240kHz、送信時間として100マイクロ秒、その他送信の諸条件(例えば、振幅等)を指示する。この指示に基づいて送信回路30が振動子16を駆動することで、周波数240kHzのパルス方式の超音波ビームTBが、100マイクロ秒送信される。
【0063】
また、パルス方式送受信処理では、振動子16によるパルス方式の超音波ビームTBの送信が終了した後、超音波ビームTBの反射波の受信時間として10ミリ秒を受信回路31に指示する。これにより、受信回路31は、10ミリ秒間、振動子16が超音波ビームTBの反射波を受信することによって発生した受信信号を振動子16より受信し、制御装置20へその受信信号を送信する。そして、パルス方式送受信処理は、受信回路31より送信された受信信号に基づいて、各深度からの反射波の強度を算出し、その算出した強度を深度毎にパルス受信バッファ22に記憶する。
【0064】
次に、制御装置20は、チャープ方式送受信処理を実行する(S2)。このチャープ方式送受信処理を実行する制御装置20が、魚群探知装置12の第2制御手段21bとして機能する。
【0065】
このチャープ方式送受信処理では、送信回路30に対して、送信モードとしてチャープモード、送信周波数として130~220kHz、送信時間として5ミリ秒、その他送信の諸条件(例えば、振幅等)を指示する。この指示に基づいて送信回路30が振動子16を駆動することで、周波数130kHzから220kHzの間で周波数が徐々に高くなるチャープ方式の超音波ビームTBが5ミリ秒送信される。
【0066】
また、チャープ方式送受信処理では、振動子16によるチャープ方式の超音波ビームTBの送信が終了した後、超音波ビームTBの反射波の受信時間として、使用者が操作ボタン14を操作することで設定された探知範囲(探知深度)に応じた時間を受信回路31に指示する。これにより、受信回路31は、その設定された時間、振動子16が超音波ビームTBの反射波を受信することによって発生した受信信号を振動子16より受信し、制御装置20へその受信信号を送信する。そして、チャープ方式送受信処理は、受信回路31より送信された受信信号に基づいて、各深度からの反射波の強度を算出し、その算出した強度を深度毎にチャープ受信バッファ23に記憶する。
【0067】
次に、制御装置20は、合成処理を実行する(S3)。この合成処理を実行する制御装置20が、魚群探知装置12の形成手段24として機能する。
【0068】
合成処理は、上述した通り、深度毎に、その深度dにおけるパルス受信バッファ22に記憶されたパルス側強度P1(d)と、チャープ受信バッファ23に記憶されたチャープ側強度P2(d)とを、(1)式を用いてアルファブレンドすることにより合成し、探知画像を形成する。
【0069】
合成処理の後、制御装置20は、その合成処理に基づいて形成された探知画像を表示装置15に表示し(S4)、S1の処理に戻る。そして、制御装置20は、S1~S4の処理を繰り替え実行する。
【0070】
制御装置20は、この魚群探知処理を実行することによって、次の作用効果を奏する。
【0071】
(ア)第2制御手段21bの制御によって、パルス方式の超音波ビームTBが送信される第1時間T1(100マイクロ秒)よりも長い第2時間T2(5ミリ秒)かけて、チャープ方式の超音波ビームTBが送信されるので、反射波の強度(レベル)を高くできる。また、チャープ方式では、周波数が変化しながら超音波ビームTBが送信されるので、その超音波ビームTBの送信時間が長くして、近接する探知対象物Gからの反射波がまじりあったとしても、反射してくる周波数の時間的なずれから各々の探知対象物Gを切り分けて表示することができる。これらにより、探知性能を上げることができる。
【0072】
一方、第1制御手段21aの制御によるパルス方式の超音波ビームTBの送受信では、チャープ方式の超音波ビームTBが送信される第2時間T2よりも短い第1時間T1(100マイクロ秒)だけ振動子16から送信されるので、当該振動子16において反射波が受信できない期間を短くできる。よって、探知対象物Gを探知できない不感帯を7.5cmと短くできる。
【0073】
また、パルス方式の超音波ビームTBの送信時間が短いことによって、探知対象物Gが近接していたとしても、これらの探知対象物Gからの反射波が混ざり合うことも抑制できるので、各々の探知対象物Gを切り分けて表示することができる。
【0074】
以上より、魚群探知装置12は、探知性能を上げつつ不感帯の距離を短くできる。
【0075】
(イ)第2制御手段21bの制御によりチャープ方式の超音波ビームTBが送信される第2時間T2は5ミリ秒に設定される一方、第1制御手段21aの制御によりパルス方式の超音波ビームTBの反射波を受信する第3時間は10ミリ秒に設定される。即ち、第1制御手段21aの制御によりパルス方式の超音波ビームTBの反射波を受信する第3時間は、第2制御手段21bの制御によりチャープ方式の超音波ビームTBが第2時間T2かけて送信されることによってその反射波が受信困難な深度からの反射波を受信するのに十分な時間に設定される。よって、第2制御手段21bの制御によって、超音波ビームTBの送信時間が長いために長い距離となる不感帯における探知対象物Gの探知を、第1制御手段21aの制御による超音波ビームTBの送受信によって、その第1制御手段21aの制御による不感帯を除いて確実に行うことができる。
【0076】
(ウ)第1制御手段21aの制御では、使用者が操作ボタン14を操作することにより設定された探知範囲(探知深度)すべてからの反射波を待つことがなく、第1制御手段21aの制御により反射波を受信する第3時間(10ミリ秒)は、第2制御手段21bの制御により反射波を受信する第4時間(使用者により設定された探索範囲(探索深度>7.5m)に応じた時間>10ミリ秒)よりも短い時間に設定される。よって、単純に2つの方式にて超音波ビームTBを送受信する場合と比較して、探知範囲に係る探知時間を短くできる。
【0077】
(エ)第1制御手段21aの制御により送信されるパルス方式の超音波ビームTBの第1周波数f1(240kHz)は、第2制御手段21bの制御により送信されるチャープ方式の超音波ビームTBの第2周波数f2(130kHz)から第3周波数f3(220kHz)の範囲外に設定される。これにより、第2制御手段21bの制御において反射波を振動子16にて受信する場合に、第1制御手段21aの制御にて送信された超音波ビームTBの反射波が重畳してノイズとなって表示されることを抑制できる。
【0078】
(オ)第1制御手段21aの制御により送信されるパルス方式の超音波ビームTBの第1周波数f1(240kHz)は、第2制御手段21bの制御により送信されるチャープ方式の超音波ビームTBの第2周波数f2(130kHz)及び第3周波数f3(220kHz)よりも高い周波数に設定される。超音波ビームTBの周波数が高い場合、同一時間内において振動子16内部で受信した反射波の反射する回数が多くなる。超音波ビームTBは反射面でのエネルギー損失が大きいため、単位時間当たりのエネルギーの減衰量が大きくなる。ここで、振動子16の受信回路31には、保護回路が設けられ、反射波を振動子16が受信することで発生した電圧が、安全なレベルの電圧を超えている間、その保護回路にて後段の回路に伝搬しないようになっており、その期間も不感帯となる。第1周波数f1が高い周波数に設定されることで、振動子16にて受信した反射波のエネルギーが早く減衰するため、受信によって発生する電圧も早期に減衰することになるので、保護回路の動作による不感帯となる期間も短くできるという効果がある。
【0079】
(オ)第1制御手段21aの制御により送信される第1周波数f1(240kHz)のパルス方式の超音波ビームTBの振動子16における受信感度が、第2制御手段21bの制御により送信される第2周波数f2(130kHz)から第3周波数f3(220kHz)の範囲内のチャープ方式の超音波ビームTBの振動子16における受信感度よりも低くなるように、第1周波数f1が設定される。第1制御手段21aの制御では、第2制御手段21bの制御によって不感帯となる深度の浅い探知範囲からの反射波を受信することになるため、振動子16の受信感度が低くても有効に機能する。よって、使用する振動子16として、受信感度が高い領域を、少なくとも第2周波数f2から第3周波数f3を含むように狭いものを使用することができる。また、振動子16における第1周波数f1の受信感度が低いため、受信によって得られる電圧は低くなるので、受信回路31に設けられた保護回路の動作による不感帯となる期間も短くできるという効果がある。
【0080】
(カ)形成手段(合成処理)24は、浅い深度例えば第1深度の位置において、第2制御手段21bの制御により振動子16が受信して生じる受信信号よりも第1制御手段21aの制御により振動子16が受信して生じる受信信号を強く反映させて探知画像が形成される。一方、形成手段(合成処理)24は、第1深度よりも深い第2深度の位置において、第1制御手段21aの制御により振動子16が受信して生じる受信信号よりも第2制御手段21bの制御により振動子16が受信して生じる受信信号を強く反映させて探知画像が形成される。これにより、探知性能が高く且つ不感帯の距離が短い探知画像を表示手段に表示させることができる。
【0081】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。また、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0082】
上記実施形態において、第1制御手段21aの制御により送信されるパルス方式の超音波ビームTBの第1周波数f1が、第2制御手段21bの制御により送信されるチャープ方式の超音波ビームTBの第2周波数f2及び第3周波数f3よりも高い周波数に設定される場合について説明したが、その第1周波数f1が、第2周波数f2及び第3周波数f3よりも低い周波数に設定されても、周波数を低くしたことによる保護回路の動作に基づく不感帯の伸びが実用上問題なければよいことは言うまでもない。
【0083】
また、上記実施形態では、超音波ビームTBを水中の1つの方向(船舶11の真下方向)に固定して送信し、その反射波を受信して水中の探知を行う魚群探知装置について、本発明を適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、1つの方向に送信される超音波ビームTBの送信方向を変化させながら、所定範囲にわたり水中の探知を行うソナー型の魚群探知装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
12 魚群探知装置
15 表示装置(表示手段)
16 振動子
21 超音波制御手段
21a 第1制御手段
21b 第2制御手段
24 形成手段
f1 第1周波数
f2 第2周波数
f3 第3周波数
T1 第1時間
T2 第2時間