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特開2023-3900ブートストラップ回路、および半導体装置
<図1>
  • 特開-ブートストラップ回路、および半導体装置 図1
  • 特開-ブートストラップ回路、および半導体装置 図2
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  • 特開-ブートストラップ回路、および半導体装置 図4
  • 特開-ブートストラップ回路、および半導体装置 図5
  • 特開-ブートストラップ回路、および半導体装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003900
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ブートストラップ回路、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/06 20060101AFI20230110BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H03K17/06 063
H03K17/687 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105270
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】政所 隆大
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX05
5J055AX44
5J055BX16
5J055CX20
5J055DX12
5J055DX56
5J055DX72
5J055DX83
5J055EX02
5J055EX07
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ18
5J055EZ20
5J055EZ65
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】スイッチ素子がブリッジ接続されたパワーデバイスのハイサイドスイッチ素子を駆動するハイサイドドライバの電源に適したブートストラップ回路を提供する。
【解決手段】
本発明は、ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドスイッチ素子QHをオンオフ駆動するハイサイドドライバDrHに、電源供給をローサイドにある電源から供給するブートストラップ回路B/Sであって、ブートストラップ回路B/Sは、複数の直列接続されたダイオード群(D1~Dn)と、複数のダイオード群のうち少なくともハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードD1を除く残りのダイオード群(D2~Dn)と並列接続されたスイッチSWを備え、該スイッチSWをブリッジ接続されたスイッチ素子のデッドタイム信号に応じてオフさせることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバに、電源供給をローサイドにある電源から供給するブートストラップ回路であって、
前記ブートストラップ回路は、複数の直列接続されたダイオード群と、前記複数のダイオード群のうち少なくともハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードを除く残りのダイオード群と並列接続されたスイッチを備え、
前記スイッチを前記ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動する駆動信号を生成する制御回路のデッドタイム信号に応じてオフさせることを特徴とするブートストラップ回路。
【請求項2】
前記デッドタイム信号を延長させる延長手段を備え、前記デッドタイムと延長手段による延長期間とを合算した時間で前記スイッチをオフさせることを特徴とする請求項1記載のブートストラップ回路。
【請求項3】
前記ブリッジ接続されたスイッチ素子を駆動する前記ハイサイドドライバと、前記ブートストラップ回路と、前記制御回路と、を備えたことを特徴とする請求項1または2項記載の半導体装置。
【請求項4】
ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバに、電源供給をローサイドにある電源から供給するブートストラップ回路であって、
前記ブートストラップ回路は、複数の直列接続されたダイオード群と、前記複数のダイオード群のうち少なくともハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードを除く残りのダイオード群と並列接続されたスイッチと、
前記スイッチ素子をオンオフ駆動する駆動信号を生成する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、ハイサイドスイッチ素子を駆動する駆動信号のターンオフ信号に同期してデッドタイムより長い所定の1ショットパルスを生成し、
前記スイッチを前記1ショットパルスに応じてオフさせることを特徴とするブートストラップ回路。
【請求項5】
前記ブリッジ接続されたスイッチ素子を駆動する前記ハイサイドドライバと、前記ブートストラップ回路と、前記制御回路と、を備えたことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ素子がブリッジ接続されたパワーデバイスのハイサイドスイッチ素子を駆動するハイサイドドライバの電源に適したブートストラップ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PWMインバータ、LLC回路などといった応用回路において、フルブリッジあるいはハーフブリッジ構成される、高電位(ハイサイド)と低電位(ローサイド)との間に直列に接続された2つのスイッチング素子のうちハイサイドを駆動する回路の電源として、ブートストラップ回路が使用されている。
このようなブリッジ回路では、ハイサイドスイッチ素子がオフ、ローサイドスイッチ素子がオンの状態にあるときに、ブートストラップ回路に含まれるブートコンデンサを充電することにより、駆動電源に接続されるハイサイドスイッチ素子のゲート・ソース間電圧( ゲート電圧) を確保している。
【0003】
この種のブートストラップ回路において、ブリッジ回路の負荷が誘導性負荷(モータ、インダクタなど)の場合、ブリッジ回路と負荷との接続点電位が負電位となり、ブートコンデンサの充電電圧が、ハイサイドスイッチ素子の許容されるゲート電圧( 許容ゲート電圧) よりも高くなる、いわゆる、過充電になる場合がある。ブートコンデンサが過充電になると、スイッチング素子のゲートに入力される信号が、許容ゲート電圧よりも大きくなる場合があり、不具合の発生の原因になる可能性がある。
ここで、ハイサイドスイッチング素子を確実かつ安定して駆動可能な駆動電圧を提供することを目的としたブートストラップ回路が開示されている。(特許文献1)
特許文献1には、ブートストラップのブートコンデンサ電圧をモニタして、過電圧を検知したらブートストラップダイオードに直列接続されている抵抗のインピーダンスをスイッチで切り替えて、ブートコンデンサ電圧が上がりすぎないようにしている。
【0004】
あるいは、ブートコンデンサ電圧を生成する手段として、まずブートコンデンサに電源と同じ電圧まで充電させておいて、ブートコンデンサの(-)側を制御回路の電源電圧に上げ、GNDに対するコンデンサの(+)側電圧を2倍とすることで、低Ron、高速スイッチングを実現している。(特許文献2)
【0005】
または、ブートストラップ電圧の充電経路を起動時と通常時で切り替えることによって、起動直後においてもハイサイドスイッチング素子を問題なく動作させることを実現している。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表WO2019/193805号公報
【特許文献2】特許第6177573号公報
【特許文献3】特開2002-330064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1(従来技術1)のようにブートストラップのブートコンデンサ電圧をモニタして、過電圧を検知するにはブートコンデンサと並列に過電圧検出回路を設け、レベルシフト回路を介してローサイドにあるブートストラップ抵抗値を切り替える必要がある。すなわち、過電圧検出回路とレベルシフト回路が必要になり、ブリッジ回路の耐圧が高いとレベルシフト回路にも高圧素子が必要となり、回路規模が大きくなってしまうという問題がある。また、過電圧検出回路に例えばコンパレータを使用するとブートストラップ回路の消費電流が増加し、よりブートストラップ回路規模が大きくなる問題も生じる。
また、特許文献2(従来技術2)のようにブートコンデンサの(-)端子を制御電源電圧に接続して2倍の電圧にする場合もブートストラップ回路規模が大きくなる問題が生じる。
また、特許文献3(従来技術3)のようにブートストラップ電圧の充電経路を起動時と通常時で切り替える場合も同様にブートストラップ回路規模が大きくなる問題が生じる。
【0008】
本発明の課題は、ブリッジ回路の負荷との接続点電位が負電位になった場合でもブートストラップ回路のブートコンデンサ電圧が上昇しないように、簡単な回路構成で調整して提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバに、電源供給をローサイドにある電源から供給するブートストラップ回路であって、前記ブートストラップ回路は、複数の直列接続されたダイオード群と、前記複数のダイオード群のうち少なくともハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードを除く残りのダイオード群と並列接続されたスイッチを備え、前記スイッチを前記ブリッジ接続されたスイッチ素子をオンオフ駆動する駆動信号を生成する制御回路のデッドタイム信号に応じてオフさせることを特徴とする。
【0010】
ブリッジ接続されたスイッチ素子のハイサイドスイッチ素子をオンオフ駆動するハイサイドドライバに、電源供給をローサイドにある電源から供給するブートストラップ回路であって、前記ブートストラップ回路は、複数の直列接続されたダイオード群と、前記複数のダイオード群のうち少なくともハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードを除く残りのダイオード群と並列接続されたスイッチと、前記スイッチ素子をオンオフ駆動する駆動信号を生成する制御回路と、を備え、前記制御回路は、ハイサイドスイッチ素子を駆動する駆動信号のターンオフ信号に同期してデッドタイムより長い所定の1ショットパルスを生成し、前記スイッチを前記1ショットパルスに応じてオフさせることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記ブリッジ接続されたスイッチ素子を駆動する前記ハイサイドドライバと、前記ブートストラップ回路と、前記制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のブートストラップダイオード群と並列接続された短絡用のスイッチをローサイドで制御することが可能であり、回路を簡素化できる。
また、ブリッジ回路、ドライバおよびブートストラップ回路を半導体集積回路で構成した場合においても、ハイサイドドライバの電源に接続されたダイオードを除く残りのダイオード群および並列接続されたスイッチは低耐圧素子で構成できるため、ブートストラップ回路規模を通常と変わらない大きさにできる利点がある。
また、ブートコンデンサ電圧の上昇要因であるブリッジ回路素子と並列接続された回生ダイオードもしくはブリッジ回路素子の寄生ダイオードの順方向電圧と、今回の発明で使用する直列ダイオードの順方向電圧でキャンセルさせることで、より広い温度範囲で安定したブートストラップ電圧を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態のブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
図2図2は、第1の実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。
図3図3は、図1に示す第1の実施形態の応用回路図である。
図4図4は、第1の実施形態の応用回路図の各部動作を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第2の実施形態のブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
図6図6は、第2の実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。
【0014】
以下、本発明のブートストラップ回路の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。図1に示す構成図は、例えば三相PWMインバータの1アーム分を摘出した回路に相当する。
【0016】
図1に示す構成図は、入力電源2の両端にハーフブリッジ回路を構成するハイサイドスイッチ素子QH、ローサイドスイッチ素子QLが接続されている。また、ハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインと巻線L1の一方の端子が接続されている。ハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLを制御するPWM信号を生成する制御回路4、制御回路4から出力されたPWM信号の一方は、ハイサイドにレベルシフトして送信するレベルシフト回路L/HおよびゲートドライバDrHを介してハイサイドスイッチ素子QHのゲート端子にゲート信号VgHとして出力される。
また、制御回路4から出力されたPWM信号の他方は、ゲートドライバDrLを介してローサイドスイッチ素子QLのゲート端子にゲート信号VgLとして出力される。
また、制御電源電圧Vccは、制御回路4、ゲートドライバDrLおよびブートストラップ回路B/Sに供給され、ブートストラップ回路B/S回路を介してレベルシフト回路L/HおよびゲートドライバDrHにも供給されている。
【0017】
制御回路4は、基準となる基準値と例えば巻線L1に流れる電流を検出し、検出した電流値と基準値とを比較し、電流値と基準値との差分を誤差信号として指令値部41からPWM生成部42へ出力する。PWM生成部42では受信した誤差信号を基にPWM信号を生成するとともに、生成したPWM信号の位相を180度反転させた信号を生成して、2つの信号をデッドタイム部DTへ出力する。デッドタイム部DTはPWM生成部42からの位相の異なる2つの信号のハイ/ロー切り替わりのタイミングでそれぞれのPWM信号に所定の時間幅を備えるデッドタイムの期間を設ける。これにより、ハイサイドスイッチ素子QHとローサイドスイッチ素子QLの同時オン動作を防いで短絡電流が流れることを阻止することができる。
なお、このデッドタイム信号は、ブートストラップ回路B/SへスイッチSWのオンオフ信号として出力される。
【0018】
ブートストラップ回路B/Sは、ダイオードD1およびダイオードD2~Dn(nは整数)の直列接続回路を介してハイサイドドライバDrHおよびレベルシフト回路L/Sへ電源電圧を供給する。ブートストラップ回路B/SがコンデンサCbに充電するのは、ローサイドスイッチ素子QLがオン状態時、またはハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとの接続点Vsの電位がGND近傍になった時である。
【0019】
ここで、ダイオードDnのアノードは制御電源の電圧Vccの正極に接続され、ダイオードDnと直列接続されたダイオードD1のカソードはコンデンサCbの一方の端子と接続され、ハイサイドドライバDrHおよびレベルシフト回路L/Sの正極電源端子に接続されている。
コンデンサCbの他方の端子は、ハイサイドドライバDrHのGND端子およびハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとの接続点Vsに接続されている。
ダイオードD2アノードおよびDnカソードの両端子間にスイッチSWが接続され、スイッチSWのオン/オフはデッドタイム部DTから出力されるデッドタイム信号に基づいてオン/オフされる。
ここで、ダイオードD1の耐圧のみハイサイドスイッチ素子QHとローサイドスイッチ素子QLの耐圧と同等以上必要であり、ダイオードD2~Dnは10~数十V程度以上の耐圧があればよい。
【0020】
図2は第1の実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。
ハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとの接続点Vs波形が高電圧にある時、ハイサイドスイッチ素子QHがオンであり、第1駆動信号VGHはハイの状態になり、ローサイドスイッチ素子QLの第2駆動信号はローの状態になっている。また、このときの巻線L1に流れる電流ILは時間の経過とともに増加する。
ここで、時刻t1にて第1駆動信号VGHがハイからローになると、ハイサイドスイッチ素子QHがターンオフし、巻線L1に流れる電流ILは増加から減少へ反転する。
次に時刻t1~t2の期間がデッドタイム期間となり、第1駆動信号VGH、第2駆動信号VGLともにローのままである。このデッドタイム期間に、デッドタイム部DTからデッドタイム信号が出力されて、ブートストラップ回路B/SのスイッチSWをオフする。
この時刻t1~t2にかけてハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとの接続点Vs電圧は入力電源の電圧VinからGNDより低い負電圧まで低下する。これは、巻線L1の回生電流によりローサイドスイッチ素子QLと並列接続されているダイオードDLの順方向電圧によるものである。また、巻線L1以外の配線インピ-ダンスによる影響により、ダイオードDLの順方向電圧に加えて負電圧が重畳される。
時刻t2にて第2駆動信号VGLがローからハイに変わり、ローサイドスイッチ素子QLがオンになるとVs電圧はほぼGND電圧となる。
ここで、この時刻t1~t2にかけてハイサイドドライバDrHの電源に供給される電圧は、(制御電源の電圧Vcc)+(負電圧の絶対値)となるが、ブートストラップ回路B/SのスイッチSWはオフされるため、該電圧からダイオードD1~Dnの順方向電圧が差し引かれることになる。
従って、負電圧とダイオードD1~Dnの順方向電圧とにより相殺されるようにダイオードn数を設定して接続しておくことで、ハイサイドドライバDrHの電源電圧を負電圧による過充電から防止することができる。
また、ダイオードD2~Dnは低耐圧ダイオードでよく、制御回路4を構成する集積回路にハイサイドドライバDrH、ブートストラップ回路B/SのダイオードD2~DnおよびスイッチSWを内蔵することを考えた場合、構成するチップ面積が小さくて済む利点がある。
また、ダイオードD2~Dnを短絡するスイッチSWのオン/オフ信号はデッドタイム信号で行うため、新たな制御信号を生成する必要もなく簡単に構成できる利点がある。
また、ローサイドスイッチ素子QLの回生ダイオードないしは素子の寄生ダイオードDLの順方向電圧と、ダイオードD1~Dnの順方向電圧が、環境温度に対してキャンセルされ、温度範囲に対しても安定したブートストラップ電圧を生成できる。
【0021】
(第1の実施形態の応用例)
図3は、図1に示す第1の実施形態の応用回路図である。図1と異なるのは、図1の制御回路4を、時間延長回路(Extend)44を備えた制御回路4aに置き換えている点である。
制御回路4aは、デッドタイム部から出力されたデッドタイム信号を、時間延長回路44を介してデッドタイム信号の時間延長を行う。
【0022】
図4は、第1の実施形態の応用回路図の各部動作を示すタイミングチャートである。図4では、図2に示す巻線電流ILより大きい電流が流れる条件としている。
ここで、時刻t1aにて第1駆動信号VGHがハイからローになると、ハイサイドスイッチ素子QHがターンオフし、巻線L1に流れる電流ILは増加から減少へ反転する。
次に時刻t1a~t2aの期間がデッドタイム期間となり、第1駆動信号VGH、第2駆動信号VGLともにローのままである。この時刻t1aにて、デッドタイム回路DTからデッドタイム信号が出力されて、時間延長回路(Extend)44を介してブートストラップ回路B/SのスイッチSWはオフする。ここで、時間延長回路(Extend)44は、時刻t1a~t2a間のデッドタイム信号が入力されると、この期間より長い時刻t1a~t3aに延長したパルス幅を出力する。
図2のタイミングチャートと同じように時刻t1a~t2aにかけてハイサイドスイッチ素子QHのソースとローサイドスイッチ素子QLのドレインとの接続点Vs電圧は入力電圧VinからGNDより低い負電圧まで低下する。この負電圧は、図4では巻線L1に流れる回生電流が大きくなり、さらに巻線L1以外の配線インピ-ダンスによる影響が大きくなり、重畳される負電圧も比較的大きくなる。
次に、時刻t2aにて第2駆動信号VGLがローからハイに変わり、ローサイドスイッチ素子QLがオンになるとVs電圧はほぼGND電圧となる。
この時刻t1a~t2aにかけてハイサイドドライバDrHの電源に供給される電圧は、(制御電源の電圧Vcc)+(負電圧の絶対値)-(ダイオードD1~Dnの順方向電圧)となる。
しかしながら、巻線電流L1の電流ILが大きくなることにより、ローサイドスイッチ素子QLのターンオン速度が少し遅れて立ち上がると、図1の構成ではブートストラップ回路B/SのスイッチSWが先にオフからオンに変わってしまうため、瞬時ではあるが、ハイサイドドライバDrHの電源に供給される電圧が過充電される可能性が出てくる。
従って、時間延長回路(Extend)44を介してデッドタイム信号を時刻t3aまで延長することで、確実に負電圧とダイオードD1~Dnの順方向電圧とにより相殺されるようにブートストラップ回路B/SのスイッチSWをオフすることで負電圧による過充電を防止することができる。
また、制御回路4aを構成する集積回路にハイサイドドライバDrH、ブートストラップ回路B/SのダイオードD2~DnおよびスイッチSWを内蔵することを考えた場合、構成するチップ面積が小さくて済む利点も第1の実施形態と同様にある。
【0023】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態のブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。
第1の実施例ではブートストラップ回路B/SのスイッチSWのオン/オフ制御をデッドタイム信号で行ったが、第2の実施形態では、デッドタイム信号の代替えとして、ハイサイドスイッチ素子QHのオフ信号をトリガにして、デッドタイム信号より時間の長い所定のパルス幅を持たせた1ショットパルス信号を生成してスイッチSWのオン/オフ制御を行う。
【0024】
図5は、第2の実施形態のブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図である。図1と異なるのは、図1の制御回路4を、1ショット回路(1Shot)45を備えた制御回路4bに置き換えている点である。なお、制御回路4bのPWM生成部42bは、デッドタイム部DTを内蔵している。
1ショット回路(1Shot)45が出力する所定のパルス幅は、デッドタイム信号より時間幅を長く設定することで、実質、第1の実施形態の応用例と同等の効果を得られる。
図6は、第2の実施形態の各部動作を示すタイミングチャートである。図6にデッドタイム信号を図示しないが、第1駆動信号VGHと第2駆動信号VGLが同時にローとなっている期間(デッドタイム)に対して、ハイサイドスイッチQHのターンオフ時刻t1bを起点にt3bまでの1ショットパルスを生成してブートストラップ回路B/SのスイッチSWのオフ制御を行う。従って、デッドタイム信号より長い信号でスイッチSWのオフ制御を行うことで、第1の実施形態の応用例と同等の効果を得られる。
【0025】
このように、第2の実施形態によれば、デッドタイム信号を直接得ることなく、ハイサイドスイッチ素子QHのオフ信号をトリガにして、デッドタイム信号より時間の長い所定のパルス幅を持たせた1ショットパルスを生成して、ブートストラップ回路B/SのスイッチSWのオフ制御を行うことができる。これにより、ハイサイドスイッチ素子QHのオフ直後にVs端子の負電圧発生によるハイサイドドライバDrHの電源電圧の過充電を防止することを確実に行なうことが可能になる。
また、制御回路4bを構成する集積回路にハイサイドドライバDrH、ブートストラップ回路B/SのダイオードD2~DnおよびスイッチSWを内蔵することを考えた場合、構成するチップ面積が小さくて済む利点も第1の実施形態と同様にある。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための例示であって、個々の構成、組合せ等を上記のものに特定するものではない。本発明は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、PWMインバータに使用されるIPM等に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 、1a 、1b ブートストラップ回路およびハイサイドドライバの回路とその周辺を含めた構成図
2 入力電源
3 制御電源
4、4a、4b 制御回路
41 指令値部
42、42b PWM生成部
43 デッドタイム部
44 延長時間回路
45 1ショット回路
B/S ブートストラップ回路
Cb コンデンサ
D1~Dn、DH,DL ダイオード
DrH ハイサイドドライバ
DrL ローサイドドライバ
L1 巻線
L/S レベルシフト回路
QH ハイサイドスイッチ素子
QL ローサイドスイッチ素子
SW スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6