(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039009
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】吸水性樹脂組成物の処理方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/50 20060101AFI20230313BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230313BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230313BHJP
B09B 5/00 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
C08F8/50
B09B3/00 304H
B09B3/00 302E
B09B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145930
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】301023009
【氏名又は名称】SDPグローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一充
【テーマコード(参考)】
4D004
4J100
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA07
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA24
4D004CA34
4D004CA43
4D004CB13
4D004CB33
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC12
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA20
4J100AE77Q
4J100AJ02P
4J100AK01P
4J100AM15P
4J100BA03Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100HA51
4J100HB34
4J100HC38
4J100HE20
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】
衛生用品に含まれる吸水性樹脂組成物を効率的に処理し、省資源及び環境負荷低減に寄与することができる処理方法を提供すること。
【解決手段】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する吸水性樹脂組成物を脱水処理する脱水工程と、
前記脱水工程を経た吸水性樹脂組成物に電磁波を照射して前記架橋重合体(A)を分解し、反応性分解物を得る分解工程と、を有する吸水性樹脂組成物の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する吸水性樹脂組成物を脱水処理する脱水工程と、
前記脱水工程を経た吸水性樹脂組成物に電磁波を照射して前記架橋重合体(A)を分解し、反応性分解物を得る分解工程と、を有する吸水性樹脂組成物の処理方法。
【請求項2】
前記脱水工程が、酸及び/又は水溶性多価金属化合物を含有する処理液に、前記吸水性樹脂組成物を浸漬させる脱水前処理工程、及び、前記脱水前処理工程を経た前記吸水性樹脂組成物を遠心脱水する遠心脱水工程を有する、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記酸が、無機酸及び有機酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記水溶性多価金属化合物が、アルカリ土類金属塩及びアルミニウム塩からなる群より選ばれる1種以上である請求項2又は3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記電磁波がマイクロ波である請求項1~4のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記反応性分解物の数平均分子量が50~500000である請求項1~5のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する吸水性樹脂組成物を脱水処理する脱水工程と、
前記脱水工程を経た吸水性樹脂組成物に電磁波を照射して前記架橋重合体(A)を分解し、反応性分解物を得る分解工程と、を有する反応性分解物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用品の使用量が増加するにつれて、使用後の衛生用品のごみ処理問題が深刻な問題となりつつある。衛生用品、特に紙おむつは社会が少子高齢化する時代に欠かせない用品として急激に普及し、その消費は急増している。
【0003】
使用後の衛生用品のごみ処理に関し、紙おむつなどは、通常、焼却処理されているが、おむつ中の水分の割合は約8割近くであるため、焼却には大きな燃焼エネルギーが必要となる。このため処理には焼却炉自体に大きな負荷がかかり、結果として焼却炉の寿命を短くする原因に繋がる。また、焼却処理は大気汚染や地球の温暖化に繋がり、環境に負荷をかける要因にもなるため、改善が強く望まれている。
【0004】
上記課題に対し、使用済み衛生用品から部材を回収し、再利用するための検討が進められている。通常、衛生用品はパルプ繊維と吸水性樹脂粒子から構成される吸収体を含み、部材として再利用するためにはパルプ繊維と吸水性樹脂粒子を分離する必要がある。しかし、使用済み衛生用品の吸収体中の吸水性樹脂粒子は水を吸収して膨潤したゲル状態となるため、そのままでは分離が難しい。そこで、吸水性樹脂粒子を分解して可溶化し、パルプ繊維と吸水性樹脂粒子の可溶化成分を分離する技術が提案されており、例えば、パルプ繊維及び吸水性樹脂粒子を含む衛生用品をオゾン含有水溶液で処理することで、吸水性樹脂粒子を分解・可溶化した後、パルプ繊維を回収する技術(特許文献1及び2)がある。また、吸水性樹脂粒子を分解して可溶化する技術としては、分解方法として過酸化水素等の酸化剤を使用する技術、更に電磁波を照射する方法(特許文献3~6)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-881号公報
【特許文献2】特開2017-209675号公報
【特許文献3】特開平4-317784号公報
【特許文献4】特開平6-313008号公報
【特許文献5】特開2003-321574号公報
【特許文献6】米国特許2021-54164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した使用済み衛生用品の再利用技術は、パルプ繊維を回収し、再生パルプとして利用することが目的であり、吸水性樹脂粒子の分解・可溶化成分は廃棄されるか又は固形燃料等でリサイクルされている場合がほとんどであり、リサイクルの観点からは十分とは言い難い。また、電磁波照射によって吸水性樹脂粒子をそのモノマー主成分であるアクリル酸及び/又はその塩やオリゴマー体に分解する例もあるが、前処理として、吸水性樹脂粒子を超純水で10倍程度に膨潤させる操作を必要とする。これは分解後に得られるアクリル酸及び/又はその塩やオリゴマー体の濃度が低下するため、アクリル酸及び/又はその塩やオリゴマー体を得るという観点から非効率であり、再利用の観点から改善する余地がある。
【0007】
本発明の目的は、衛生用品に含まれる吸水性樹脂組成物を効率的に処理し、省資源及び環境負荷低減に寄与することができる処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する吸水性樹脂組成物を脱水処理する脱水工程と、
前記脱水工程を経た吸水性樹脂組成物に電磁波を照射して前記架橋重合体(A)を分解し、反応性分解物を得る分解工程と、を有する吸水性樹脂組成物の処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衛生用品に含まれる吸水性樹脂組成物を効率的に処理し、省資源及び環境負荷低減に寄与することができる処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の吸水性樹脂組成物の処理方法は、
水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する吸水性樹脂組成物を脱水処理する脱水工程と、
前記脱水工程を経た吸水性樹脂組成物に電磁波を照射して前記架橋重合体(A)を分解し、反応性分解物を得る分解工程と、を有する。
【0011】
本実施形態の吸水性樹脂組成物の処理方法によれば、衛生用品に含まれる吸水性樹脂組成物を効率的に処理し、省資源及び環境負荷低減に寄与することができる。
【0012】
<脱水工程>
〔吸水性樹脂組成物〕
前記吸水性樹脂組成物は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を構成単位として有する架橋重合体(A)と水とを含有する。
【0013】
前記水溶性ビニルモノマー(a1)としては特に限定はなく、公知のモノマー、例えば、特許第3648553号公報の0007~0023段落に開示されている少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するビニルモノマー(例えばアニオン性ビニルモノマー、非イオン性ビニルモノマー及びカチオン性ビニルモノマー)、特開2003-165883号公報の0009~0024段落に開示されているアニオン性ビニルモノマー、非イオン性ビニルモノマー及びカチオン性ビニルモノマー並びに特開2005-75982号公報の0041~0051段落に開示されているカルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基及びアンモニオ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するビニルモノマーが使用できる。
【0014】
これらの内、吸収性能等の観点から好ましいのはアニオン性ビニルモノマー、カルボキシ(塩)基、スルホ(塩)基、アミノ基、カルバモイル基、アンモニオ基又はモノ-、ジ-若しくはトリ-アルキルアンモニオ基を有するビニルモノマー、より好ましいのはカルボキシ(塩)基又はカルバモイル基を有するビニルモノマー、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸(塩)及び(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸(塩)、とりわけ好ましいのはアクリル酸(塩)である。
【0015】
なお、「カルボキシ(塩)基」は「カルボキシ基」又は「カルボキシレート基」を意味し、「スルホ(塩)基」は「スルホ基」又は「スルホネート基」を意味する。また、(メタ)アクリル酸(塩)はアクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸又はメタクリル酸塩を意味し、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。また、塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩及びアンモニウム(NH4)塩等が挙げられる。これらの塩の内、吸収性能等の観点から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、更に好ましいのはアルカリ金属塩、特に好ましいのはナトリウム塩である。
【0016】
前記水溶性ビニルモノマー(a1)は1種を単独で構成単位としてもよく、また、必要により2種以上を構成単位としても良い。
【0017】
[架橋剤(b)]
前記架橋剤(b)としては特に限定はなく公知(例えば、特許第3648553号公報の0031~0034段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有してかつ少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する架橋剤及び水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する架橋剤、特開2003-165883号公報の0028~0031段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、エチレン性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤及び反応性置換基を2個以上有する架橋剤、特開2005-75982号公報の0059段落に開示されている架橋性ビニルモノマー並びに特開2005-95759号公報の0015~0016段落に開示されている架橋性ビニルモノマー)の架橋剤等が使用できる。
【0018】
前記吸水性樹脂組成物は、前記架橋重合体(A)の表面が表面架橋剤により架橋された構造を有することが好ましい。前記架橋重合体(A)の表面を架橋することにより前記吸水性樹脂組成物のゲル強度を向上させることができ、前記吸水性樹脂組成物の望ましい保水量と荷重下における吸収量とを満足させることができる。また、前記架橋重合体(A)の表面が表面架橋剤で架橋されると、吸水性樹脂組成物の表面のブロッキングが抑制され、均一吸水が達成できるので電磁波で分解する際にも、分解効率の向上が期待できる。
【0019】
前記表面架橋剤としては、公知の有機表面架橋剤等が使用できる。これらの表面架橋剤のうち、経済性及び吸収特性の観点から、多価グリシジル化合物、多価アルコール及び多価アミンが好ましく、更に好ましいのは多価グリシジル化合物及び多価アルコール、特に好ましいのは多価グリシジル化合物、最も好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。前記表面架橋剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
前記吸水性樹脂組成物は、その性能を損なわない範囲で残留溶媒や残存架橋成分等の他の成分を多少含んでも良い。
【0021】
前記吸水性樹脂組成物は、脱水処理効率及び分解性の観点から、前記他の成分として、好ましくはヨウ素、テルル、アンチモン及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1種の典型元素を含むことが好ましい。前記吸水性樹脂組成物が当該典型元素を含む場合、前記吸水性樹脂組成物中の当該典型元素の含有量は、脱水処理効率及び分解性の観点から、0.0005~0.1重量%が好ましく、0.001~0.05重量%がより好ましい。
【0022】
前記他の成分のその他の例としては、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、通液性向上剤、無機質粉末及び有機質繊維状物等が挙げられる。その量は前記吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、通常、5重量%以下である。
【0023】
前記吸水性樹脂組成物の形状は特に限定されないが、吸収性能を向上させる観点から、粒子状が好ましい。粒子状の前記吸水性樹脂組成物(以下、吸水性樹脂組成物粒子ともいう)重量平均粒子径(μm)は、好ましくは250~600であり、より好ましくは300~500、更に好ましくは340~460である。
【0024】
前記吸水性樹脂組成物粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0025】
前記吸水性樹脂組成物は公知の製造方法により得ることができる。前記吸水性樹脂組成物の製造方法は、少なくとも前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程とを有する。その他には、ゲル粉砕工程、表面架橋工程、粉砕工程、分級工程等を含んでいるのが好ましい。
【0026】
前記吸水性樹脂組成物の含水率は、壊れ防止性の観点から、好ましくは2%、より好ましくは3%以上であり、前記吸水性樹脂組成物の吸水性能の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下である。前記吸水性樹脂組成物に含まれる水分の由来としては、その製造中に意図的に添加される場合でもよいし、空気中の水分を取り込むことで水分量が増加する場合等でもよい。前記吸水性樹脂組成物の含水率は、例えば、赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W]によりサンプル2.00gを加熱し、減少重量の乾燥前サンプル重量に対する比を含水率(%)として測定することができる。
【0027】
前記吸水性樹脂組成物は、パルプ繊維とともに衛生用品の構成成分となりうる。衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁製品、ペットシート等が挙げられる。衛生用品の製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等に記載のもの)と同様である。
【0028】
前記脱水工程における前記吸水性樹脂組成物の脱水処理の方法は特に限定されないが、架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、前記脱水工程は、酸及び/又は水溶性多価金属化合物を含有する処理液に、前記吸水性樹脂組成物を浸漬させる脱水前処理工程、及び前記脱水前処理工程を経た前記吸水性樹脂組成物を遠心脱水する遠心脱水工程を有するのが好ましい。なお、脱水前処理工程に供される前記吸水性樹脂組成物は、使用済衛生用品や未使用衛生用品等の衛生用品に含まれる前記吸水性樹脂組成物も含まれる。
【0029】
衛生用品に含まれる吸水性樹脂組成物を脱水する場合は、衛生用品から前記吸水性樹脂組成物を分離させた後で前記吸水性樹脂組成物を脱水処理してもよいし、前記吸水性樹脂組成物を含む衛生用品を脱水処理してもよい。効率的に脱水処理する観点から、衛生用品から前記吸水性樹脂組成物を分離させた後で前記吸水性樹脂組成物を脱水処理することが好ましい。
【0030】
前記吸水性樹脂組成物の衛生用品からの分離は、公知の方法により行うことができる。衛生用品から前記吸水性樹脂組成物を分離する公知の方法としては、例えば、使用済おむつからパルプを回収するために、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、及び過マンガン酸カリウム水溶液を用いることで、吸水性樹脂組成物の結合を切断することによる水溶化の方法(特開2021-001783号公報)、過ヨウ素酸塩を含む分解剤を用いる方法(特開2001-316519号公報)、アルカリ水溶液を用いて加水分解することで水溶化する方法(特開2020-049398)、不活化水溶液としてクエン酸などの酸を用いることで、前記吸水性樹脂組成物中の中和部分を未中和状態へと変換し、パルプとの分離を促進する方法(特開2019-085686)、粉砕したおむつを水の入った槽に入れ、パルプと前記吸水性樹脂組成物との比重及び沈降速度の差を利用することで分離方法(特開2002-273731)も挙げられる。
【0031】
前記吸水性樹脂組成物を含む衛生用品を脱水処理する場合は、衛生用品を粉砕する工程(以下、「粉砕工程」と称する)を経た衛生用品を脱水処理することが脱水効率の観点から好ましい。
【0032】
前記粉砕工程は、衛生用品を粉砕して粉砕物を得る工程である。粉砕は公知の粉砕機又は破砕機を使用することができ、例えば生ごみ粉砕機に使われているディスポーザー型破砕機(高速回転するターンテーブルで該衛生用品を壁面に飛ばし、ターンテーブル周縁部についている固定式、又は可変式のハンマーと壁面の固定刃等で破砕)、カッターミル、一軸型破砕機、二軸型破砕機、同軸心型破砕機、ハンマー式破砕機、ボールミル等が挙げられるが、衛生用品の素材にはプラスチック製のシートや不織布、伸縮性のある材料が含まれることから、高速回転しながら刃で切断するディスポーザー型破砕機やカッターミルが特に好適である。
【0033】
衛生用品の粉砕物は、水性懸濁液に含まれていてもよい。衛生用品の粉砕物が含まれる水性懸濁液を得る方法としては、水を加えて衛生用品を膨潤させた後粉砕する方法、粉砕しながら水を加えて粉砕する方法、粉砕後に水を加える方法があるが、粉砕機への負荷低減の観点から、水を加えて衛生用品を膨潤させた後粉砕する方法が好ましい。
【0034】
衛生用品の粉砕物の大きさの好適な範囲は、前記遠心脱水工程による分離回収方式にも依存するが、水流での輸送性の観点から、好ましくは衛生用品の一片の長さが100mm以下である。粉砕物の大きさは、前述した粉砕機又は破砕機の種類、及び処理条件等により適宜調整可能である。
【0035】
酸及び/又は水溶性多価金属化合物を含有する処理液に、前記吸水性樹脂組成物を浸漬させる脱水前処理工程について説明する。本処理により前記吸水性樹脂組成物の吸水能が低下し、前記吸水性樹脂組成物の含水率及び体積が低下する。その結果、前記吸水性樹脂組成物のゲル弾性が向上し、効率的かつ簡便に遠心脱水が可能となる。
【0036】
前記処理液に含まれる酸は、前記吸水性樹脂組成物の脱水効率の観点から、無機酸及び有機酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。当該無機酸としては、前記吸水性樹脂組成物との反応性と実際のハンドリングの観点から、スルファミン酸、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、硫酸、塩酸、硝酸、及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。当該有機酸としては、前記吸水性樹脂組成物の脱水効率の観点から、スルホン酸基を分子内に有する有機酸、カルボン酸基を分子内に有する有機酸、ホスホン基又はリン酸基を分子内に有する有機酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、カルボン酸基を分子内に有する有機酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。また、無機酸と有機酸を任意の割合で併用して使用することもできる。
【0037】
カルボン酸基を分子内に有する有機酸としては、ハロゲン含有カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、ケトカルボン酸、等が挙げられる。
【0038】
ハロゲン含有カルボン酸としては、その分子中の水素原子をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び/又はヨウ素原子に置換した置換基数に応じて、モノハロゲンカルボン酸、ジハロゲンカルボン酸、トリハロゲンカルボン酸、ペンタハロゲンカルボン酸、等が挙げられる。
【0039】
モノハロゲンカルボン酸としては、モノフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノヨード酢酸、2-フルオロプロピオン酸、2-クロロプロピオン酸、2-ブロモプロピオン酸、2-ヨードプロピオン酸、2-フルオロ酪酸、2-クロロ酪酸、2-ブロモ酪酸、2-ヨード酪酸、オルト-フルオロ安息香酸、オルト-クロロ安息香酸、オルト-ブロモ安息香酸、オルト-ヨード安息香酸、3-クロロマンデル酸、等が挙げられる。
【0040】
ジハロゲンカルボン酸としては、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、ジヨード酢酸、2、2-ジフルオロプロピオン酸、2、2-ジクロロプロピオン酸、2、3-ジクロロプロピオン酸、2、2-ジブロモプロピオン酸、2,3-ジブロモプロピオン酸、2、2-ジヨードプロピオン酸、2、2-ジフルオロ酪酸、2、2-ジクロロ酪酸、2、2-ジブロモ酪酸、2、2-ジヨード酪酸、等が挙げられる。
【0041】
トリハロゲンカルボン酸としては、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、3、3、3-トリフルオロプロピオン酸、等が挙げられる。
【0042】
ペンタハロゲンカルボン酸としては、ペンタフロオロピオン酸、等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基、及びヒドロキシル基を有する化合物のことであり、例えば、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、4-クロロサリチル酸5-クロロサリチル酸、2、5-ジヒドロキシ安息香酸、3、5-ジブロモサリチル酸、4-メチルサリチル酸、等が挙げられる。
【0044】
アミノ酸とは、1分子中にカルボキシル基、及びアミノ基を有する化合物のことであり、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、チロシン、3-アミノヘキサ二酸、等が挙げられる。
【0045】
ケトカルボン酸とは、1分子中にカルボキシル基、及びケトン基を有する化合物のことであり、例えば、ピルビン酸、オキサロ酢酸、α-ケト酪酸、α-ケトグルタル酸、アセト酢酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、等が挙げられる。
【0046】
ホスホン基又はリン酸基を分子内に有する有機酸としては、メチルジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トランス-1、2-シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミン、テトラメチレンホスホン酸、及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。
【0047】
前記脱水前処理工程における前記処理液の酸の含有量は、脱水処理効率及び分解効率の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましく0.5重量%以上であり、処理後のハンドリングの観点から、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0048】
前記処理液に含まれる水溶性多価金属化合物は、脱水効率の観点から、アルカリ土類金属塩及びアルミニウム塩からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。前記アルカリ土類金属塩は、吸水性樹脂組成物との反応性と実際のハンドリングの観点から、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、水素化カルシウム、炭化カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、臭素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、塩化カルシウムがより好ましい。前記アルミニウム塩は、脱水効率の観点から、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び水酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0049】
前記脱水前処理工程における前記処理液の水溶性多価金属化合物の含有量は、脱水効率の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、より効率的な脱水の観点から、好ましくは100重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0050】
前記脱水前処理工程における前記処理液の温度は、脱水効率と経済性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、脱水効率の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
【0051】
前記脱水前処理工程において、前記処理液に前記吸水性樹脂組成物を浸漬させる時間は、処理効率と脱水性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上であり、炭素収率の観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下である。
【0052】
前記遠心脱水工程で前記吸水性樹脂組成物に含まれる水を除去する方法としては特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0053】
前記脱水工程で脱水処理された前記吸水性樹脂組成物の保水量は、前記架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、10g/g未満が好ましく、8g/g以下がより好ましい。また、前記脱水工程で脱水処理された前記吸水性樹脂組成物の保水量は、架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、2g/g以上が好ましい。なお、本明細書において、前記吸水性樹脂組成物の保水量は実施例に記載の方法で測定する。
【0054】
<分解工程>
前記分解工程で、前記脱水工程を経た前記吸水性樹脂組成物に照射する電磁波は、前記架橋重合体(A)を分解して解重合することができれば特に限定されない。当該電磁波としては、マイクロ波が例示できる。
【0055】
前記脱水工程を経た前記吸水性樹脂組成物は、架橋物であり保水しているが、電磁波を照射することで前記架橋重合体(A)が有する特定の結合を選択的に切断することにより解重合される。そして解重合によって生成された反応性分解物は照射前の吸水性樹脂組成物が保持していた水に溶解又は懸濁することとなる。
【0056】
前記脱水工程を経た前記吸水性樹脂組成物は、水溶性多価金属化合物によって脱水処理された吸水性樹脂組成物であることが好ましい。電磁波によって分解を行うと、分解効率や炭素収率の向上が見込めるからである。これは、前記架橋重合体(A)中にあるカルボキシル基部位に対して水溶性多価金属化合物が配位するため、電磁波照射の際に脱炭酸を抑止されると推測される。
【0057】
電磁波を照射する前記吸水性樹脂組成物は、前記脱水工程を経た前記吸水性樹脂組成物に水を添加してもよい。分解効率、反応性分解物の再利用の観点から、電磁波を照射する吸水性樹脂組成物が含有する水分量は、吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、20重量%以上が好ましく、反応性分解物の再利用の観点から、500重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、400重量%以下である。水分量が500重量%以下であることで反応性分解物を再利用する際に、反応性分解物の水溶液又は懸濁液を脱水処理することなく使用することが可能となる。
【0058】
前記分解工程で前記吸水性樹脂組成物に照射する電磁波の出力は、架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、200W以上が好ましく、500W以上がより好ましく、同様の観点から、1500W以下が好ましく、1000W以下がより好ましい。
【0059】
前記電磁波の照射時間は特に限定されないが、架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、2分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、経済性の観点から、120分以下が好ましく、60分以下がより好ましい。
【0060】
前記電磁波を照射する際の前記吸水性樹脂組成物の温度は特に限定されないが、架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、再利用の観点及び炭素収率の観点から、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0061】
前記吸水性樹脂組成物への前記電磁波の照射は、前記架橋重合体(A)を効率的に分解処理する観点から、ラジカル源の存在下で行われることが好ましい。当該ラジカル源としてはアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、プロオキシダント類、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、オゾン、過酸化水素が例示でき、経済性の観点から、過酸化水素が好ましい。
【0062】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体としては、公知のものであれば特に制限はないが、アスコルビン酸としては、L体、D体及びDL体のいずれであってもよく、入手容易性の観点から、L-アスコルビン酸が好ましい。また、アスコルビン酸誘導体とは、アスコルビン酸及びその一部を化学修飾や置換した誘導体を意味する。アスコルビン酸誘導体の具体例としては、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グリコシド等が挙げられる。また、これらのアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)や有機塩(アンモニウム、アミン等)も使用可能であり、本発明のアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体に含まれる。これらのアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいし、更に鉄イオン、銅イオンなどと組み合わせ使用してもよい。
【0063】
前記分解工程で得られる前記架橋重合体(A)の反応性分解物は、前記架橋重合体(A)の構成モノマーである(a1)及び/又は、その重合物などの混合物として得られる。再利用の観点からは、前記架橋重合体(A)の構成モノマー、該構成モノマーの水溶性重合体であることが好ましい。
【0064】
前記分解工程で得られる前記架橋重合体(A)の反応性分解物の数平均分子量は、分解生成物を架橋重合体の原料として再利用する観点から、好ましくは50以上、より好ましくは70以上であり、モノマーやオリゴマーと反応する際の反応効率の観点から、好ましくは500000以下、より好ましくは100000以下、特に好ましくは10000以下である。なお、本明細書において、前記分解工程で得られる前記架橋重合体(A)の反応性分解物の数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定する。
【0065】
<反応性分解物の製造方法>
本実施形態の反応性分解物の製造方法は、前記脱水工程と、前記分解工程と、を有する。本実施形態の反応性分解物の製造方法が有する前記脱水工程と前記分解工程は、前記吸水性樹脂組成物の処理方法が有する前記脱水工程と前記分解工程と同様なので説明を省略する。
【実施例0066】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、分解生成物の数平均分子量、分解後の炭素収率は以下の方法により測定した。
【0067】
<反応性分解物の数平均分子量>
反応性分解物の数平均分子量の測定方法としては、例えば、多角度光散乱検出器(昭光サイエンティフィック(株)製DAWN HELEOS II)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー(株)製、1200シリーズ)(以下、GPC-MALSと略記する)を使用し、溶剤として0.5M酢酸と0.2M硝酸ナトリウムを含む水溶液を用い、サンプル濃度は0.2重量%とし、カラム固定相にはポリマー系充填剤(昭光サイエンティフィック(株)製OHpak SB-806M HQ)を用い、カラム温度は40℃として測定される。
【0068】
<分解後の炭素収率測定>
電磁波照射によって得られる反応性分解物の炭素収率については、島津全有機体炭素計TOC-LCPH(株式会社 島津製作所社製)を使用して測定した。
【0069】
<製造例1>
アクリル酸157部(2.18モル部)、架橋剤(b){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル}0.6305部(0.0024モル部)及び脱イオン水344.65部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.63部、2%アスコルビン酸水溶液1.1774部及び2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.355部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1)を得た。次にこの含水ゲル(1)502.27部をミンチ機で細断しながら48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合し、含水ゲル粒子を得た。更に含水ゲル粒子を通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサーにて粉砕した後、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整することにより、乾燥体粒子(1)を得た。この乾燥体粒子(1)100部を高速攪拌しながら硫酸ナトリウムアルミニウムミョウバン12水和物を0.5部、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5.00部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋して、吸水性樹脂組成物(P-1)を得た。当該吸水性樹脂組成物(P-1)の保水能は40g/gであった。
【0070】
<実施例1>
吸水性樹脂組成物(P-1)1.000gを目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に入れて、次いで超純水40.0mlを全量吸水させ、そのまま60分間静置した後、1.0重量%塩化カルシウム水溶液500mlを入れた1Lコニカルビーカー(同上)に移し、更に60分間静置後、ティーバッグごと遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の水分を除去し、分解用試料(Q-1)を得た(脱水後保水量3.1g/g)。なお、脱水後の保水量は以下の方法により測定した。即ち、吸水性樹脂組成物(P-1)1.000gを目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に入れた後に、超純水等によって吸水性樹脂粒子を膨潤させる。続けて1.0重量%塩化カルシウム水溶液500ml中に無撹拌下、60分間浸漬した後引き上げて、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の塩化カルシウム水溶液を取り除き、ティーバッグを含めた重量(h3)を測定し次式から脱水後保水量を求めた。(h4)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
脱水後保水量(g/g)=(h3)-(h4)
【0071】
次に、ティーバッグから試料(Q-1)1.000gを分解用試験管にはかり取り、過酸化水素(3.5%水溶液 東京化成工業社製)0.05gを入れて試験管のふたを閉じ、マイクロ波照射を以下の条件で実施した。すなわち、マイクロ波照射の出力を500Wとし、照射時間を2分間で室温から200℃までの昇温を行った後、更に200℃で5分間200℃を保持する条件で行い、反応性分解物(Z-1)を得た。
【0072】
<実施例2>
実施例1において、照射時間を2分間から5分間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、反応性分解物(Z-2)を得た。
【0073】
<実施例3>
実施例1において、照射時間を2分間から30分間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、反応性分解物(Z-3)を得た。
【0074】
<実施例4>
実施例1において、照射時間を2分間から30分間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、反応性分解物(Z-4)を得た。
【0075】
<実施例5>
吸水性樹脂組成物(P-1)1.000gを目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に入れて、次いで超純水40.0mlを全量吸水させ、そのまま60分間静置した後、0.5重量%硫酸水溶液500mlを入れた1Lコニカルビーカー(同上)に移し、更に60分間静置後、ティーバッグごと遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の水分を除去し、分解用試料(Q-2)を得た(脱水後保水量8.2g/g)。次に、ティーバッグから試料(Q-2)1.000gを分解用試験管にはかり取り、過酸化水素(3.5水溶液 東京化成工業社製)0.02gを入れて試験管のふたを閉じ、マイクロ波照射を以下の条件で実施した。すなわち、マイクロ波照射の出力を500Wとし、照射時間を30分間で室温から200℃までの昇温を行った後、更に200℃で5分間200℃を保持する条件で行い、反応性分解物(Z-5)を得た。
【0076】
<比較例1>
吸水性樹脂組成物(P-1)(保水能40g/g)1.000gを分解用試験管にはかり取り、次いで超純水8.986mlを全量吸水させ、そのまま60分間静置し、比較用の分解用試料を得た(給水後保水量9.0g/g)。過酸化水素(3.5%水溶液 東京化成工業社製)0.004gを入れて試験管のふたを閉じ、マイクロ波照射を以下の条件で実施した。すなわち、マイクロ波照射の出力を500Wとし、照射時間を2分間で室温から200℃までの昇温を行った後、更に200℃で5分間200℃を保持する条件で行い、比較用の反応性分解物(ZR-1)を得た。
【0077】
【0078】
表1に示す結果から、実施例に係る吸水性樹脂組成物の反応性分解物の炭素収率は極めて高く、また比較例1に比べて分解前の保水量が少ないことが分かる。分解前の吸水性樹脂組成物の保水量が少ないために、電磁波処理1回あたりの分解で得られる反応性分解物量が多く、より効率的に反応性分解物を得ることができ、工業化の際においては省エネルギーに伴う処理効率を上げられる利点がある。また、反応性分解物に含まれる水分が多いと電磁波分解途中における分解装置内の圧力が上昇するため、設備設計上好ましくないが、本発明の処理方法では圧力上昇を抑制できる利点がある。
【0079】
本結果から、本発明は、吸水性樹脂組成物を電磁波照射により、効率的かつ簡便に分解することが可能であり、再度原料としての使用も可能であって省資源及び環境負荷低減の観点から、優れた処理方法といえる。