IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルペンの特許一覧

<>
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図1
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図2
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図3
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図4
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図5
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図6
  • 特開-紐巻取装置用ドラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003902
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】紐巻取装置用ドラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 65/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B65H65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105273
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】398022279
【氏名又は名称】株式会社アルペン
(74)【代理人】
【識別番号】100129698
【弁理士】
【氏名又は名称】武川 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】張能 賢一
(72)【発明者】
【氏名】緑川 忍
(57)【要約】      (修正有)
【課題】紐の固定作業が容易な紐巻取装置用ドラムを提供する。
【解決手段】本体中央部に形成された軸受部41の外方に配置された筒状の紐巻取部42と、当該紐巻取部42の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部43と、前記紐巻取部42の離間した位置に形成された2つの透孔44と、前記軸受部41の周辺位置に形成され前記2つの透孔44を紐が通過できるように配置された紐係止部45と、当該紐係止部45と前記紐巻取部42との間に形成された隙間Sとを有し、前記一方の透孔44から他方の透孔44まで紐3の端部を挿通した後、当該紐3を前記隙間Sに挿通し直すことで、当該紐3の端部に形成した抜止部31を前記紐係止部45と前記紐巻取部42とによって固定することができるようにした紐巻取装置用ドラム4である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体中央部に形成された軸受部と、
当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、
当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、
を有する紐巻取装置用ドラムであって、
前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、
前記軸受部の周辺位置に形成された紐係止部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部と、
当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、
を有し、
前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにしたことを特徴とする紐巻取装置用ドラム。
【請求項2】
前記紐係止部は、前記軸受部の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部の内側と同じ直径の円、又は、前記紐巻取部の内側より直径が大きな円で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紐巻取装置用ドラム。
【請求項3】
前記紐係止部は、前記軸受部の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部と同心円上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紐巻取装置用ドラム。
【請求項4】
本体中央部に形成された軸受部と、
当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、
当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、
を有する紐巻取装置用ドラムであって、
前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、
前記軸受部の近傍位置に形成された紐係止部及び紐抑え部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部及び紐抑え部と、
当該紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、
を有し、
前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにしたことを特徴とする紐巻取装置用ドラム。
【請求項5】
前記紐係止部又は前記紐抑え部は、当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間に挿通し直された紐が緩んで軸心方向に抜け出さないようにするための爪を有していることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の紐巻取装置用ドラム。
【請求項6】
前記紐巻取部に形成された2つの透孔は、何れか一方の周方向に拡張するように形成されており、紐の抜止部を配置するスペースを提供できるものであることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の紐巻取装置用ドラム。
【請求項7】
前記紐巻取部に形成された2つの透孔は、互いに180度離間して配置されているものであることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の紐巻取装置用ドラム。
【請求項8】
前記紐巻取部に形成された各透孔は、挿通されるべき紐の直径の5~7倍の大きさの開口幅、又は、前記紐巻取部の周長に対して最小で5.9%最大で25%の円弧長の開口幅を有していることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の紐巻取装置用ドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐巻取装置用ドラムに関するものであって、紐の端部を迅速、簡単かつ確実に固定することができる紐巻取装置用ドラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、靴紐などを締め付けるための簡便な装置として、紐を巻き取るための小さなドラムを内部に備えた紐巻取装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-293号公報
【特許文献2】特開2015-297号公報
【特許文献3】特表2008-525052号公報
【特許文献4】国際公開特許 WO2006/050266号公報
【特許文献5】国際公開特許 WO2015/035885号公報
【特許文献6】特表2013-525007号公報
【特許文献7】国際公開特許 WO2011/137405号公報
【特許文献8】国際公開特許 WO2010/059989号公報
【特許文献9】国際公開特許 WO2015/039052号公報
【特許文献10】特許第5925765号公報
【特許文献11】特開2018-121890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、紐巻取装置用ドラムに紐の端部を固定するには、多くの場合直径15mm程度のドラムに形成した直径1~2mmの小さな透孔に紐の端部を繰り返し挿通する細かな作業を行う必要があり、手間と時間を要していた。
より詳細には、従来の紐巻取装置用ドラムに形成されている透孔は、最終的に当該透孔自体によって紐の端部を固定することになるため、その開口は、紐がギリギリ通過できればよい大きさに設定されており、上記特許文献に記載されているような従来の紐巻取装置用ドラムにおいては、紐の端部を迅速、簡単かつ確実に固定することができないという課題があった。
さらに、巻取部に紐の端部の一部が存在し、巻取部による紐巻取量を減少させたり、紐の端部が巻取部に飛び出して干渉し、紐をスムーズに巻き取れないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、紐巻取装置用ドラムにおいて、ドラムと紐との固定作業を迅速、簡単かつ確実に行うことができるドラムの構造を提供することにあり、ひいては紐巻取装置の組み立て作業、及び、紐巻取装置を備えた物品のメンテナンス作業を容易かつ低コストにすることができる利便性及び経済性に優れた紐巻取装置用ドラムを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、巻取部による紐巻取量の減少を防止すること、及び、紐の端部による干渉によって紐をスムーズに巻き取りできないことを防止することができる紐巻取装置用ドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、「本体中央部に形成された軸受部と、当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、を有する紐巻取装置用ドラムであって、前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、前記軸受部の周辺位置に形成された紐係止部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部と、当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、を有し、前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにした紐巻取装置用ドラム」を最も主要な特徴とするものである。
【0007】
(2)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部は、前記軸受部の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部の内側と同じ直径の円、又は、前記紐巻取部の内側より直径が大きな円で形成されているものであってもよい。
(3)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部は、前記軸受部の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部と同心円上に形成されているものであってもよい。
(4)さらに、本発明は、「本体中央部に形成された軸受部と、当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、を有する紐巻取装置用ドラムであって、前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、前記軸受部の近傍位置に形成された紐係止部及び紐抑え部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部及び紐抑え部と、当該紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、を有し、前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにした紐巻取装置用ドラム」であってもよい。
【0008】
(5)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部又は前記紐抑え部は、当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間に挿通し直された紐が緩んで軸心方向に抜け出さないようにするための爪を有しているものであってもよい。
(6)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された2つの透孔は、何れか一方の周方向に拡張するように形成されており、紐の抜止部を配置するスペースを提供できるものであってもよい。
(7)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された2つの透孔は、互いに180度離間して配置されているものであってもよい。
(8)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された各透孔は、挿通されるべき紐の直径の5~7倍の大きさの開口幅、又は、前記紐巻取部の周長に対して最小で5.9%最大で25%の円弧長の開口幅を有しているものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
(1)上記のように構成した本発明の紐巻取装置用ドラムにおいては、紐巻取部の離間した位置に形成された一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を紐係止部の外面と紐巻取部の内面との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を紐係止部と紐巻取部とによって固定することができ、組み付けやメンテナンスの手間を軽減することができる巻取装置を提供することができる。
なお、紐巻取部に形成される透孔は、当該透孔自体で紐の端部を固定する部分ではないため、紐の端部が容易に通過できるように紐の太さよりもかなり開口幅を大きくすることができ、そのため上記の効果を得られることになる。
さらには、ドラムに形成された透孔に2本の紐を同時に挿通することも可能となり、ドラムに紐の両端部(1つの端部又は2つの端部)を固定する作業をより効率的に行うこともできる。
また、本発明の紐巻取装置用ドラムにおいては、紐巻取部による紐巻取量の減少を防止すること、及び、紐の端部による干渉によって紐をスムーズに巻き取りできないことを防止することができる。
【0010】
(2)また、本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部を前記紐巻取部の内側と同じ直径の円、又は、前記紐巻取部の内側より直径が大きな円で形成することによって、紐係止部と紐巻取部の内側との距離が縮まり、紐の抜止部を確実に捉え、かつ、ドラムの中央部では紐を通し易く、紐が抜け出し難い適切な形状とすることができる。さらに、紐が軸や他方の紐の端部と干渉することを防止することもできる。
さらに、紐係止部の外面と紐巻取部の内面との間の隙間を広く確保することができる。
(3)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部が、前記軸受部の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部と同心円上に形成されている場合には、紐を透孔に挿通する際に軸抑えが邪魔になることがなく、軸抑えによって紐の端部を固定できるとともに、ドラムの安定した回転を得られ、かつ、紐が軸と接することを効果的に防止することができる。
さらに、紐係止部の外面と紐巻取部の内面との間の隙間を広く確保することができ、かつ、隙間が均一になるので、比較的に太い紐でも対応し易いスペースを作り出し易く、スムーズに紐を収納することができる。
(4)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、本体中央部に形成された軸受部と、当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、を有する紐巻取装置用ドラムであって、前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、前記軸受部の近傍位置に形成された紐係止部及び紐抑え部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部及び紐抑え部と、当該紐係止部及び紐抑え部の外面と前記紐巻取部の内面との間に形成された隙間と、を有する場合には、前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって迅速、簡単かつ確実に固定することができる。
さらに、紐抑え部によって紐が軸と干渉することを防ぐことができる。
【0011】
(5)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐係止部又は前記紐抑え部が、当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間に挿通し直された紐が緩んで軸心方向に抜け出さないようにするための爪を有している場合には、紐がドラムの外方に抜け出して紐巻取装置が正常に作動しなくなることを爪によって常に防ぐことができる。
(6)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された2つの透孔が、何れか一方の周方向に拡張するように形成されており、紐の抜止部を配置するスペースを提供できるものである場合には、ドラムのスペース利用効率を高め、ドラムの小型化に有利となるとともに、ドラムによる紐の巻き取りに支障が生じることを防ぐことができる。
(7)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された2つの透孔が、互いに180度離間して配置されているものである場合には、紐の端部を真っ直ぐに挿通することができ、ドラムに対する紐の固定作業を極めて迅速かつシンプルなものとすることができる。
また、ドラムの構造自体についても、点対称のシンプルで安定した形態とすることができ、製造容易かつ取扱い容易なものとすることもできる。
(8)本発明の紐巻取装置用ドラムにおいて、前記紐巻取部に形成された各透孔が、挿通されるべき紐の直径の5~7倍の大きさの開口幅、又は、前記紐巻取部の周長に対して最小で5.9%最大で25%の円弧長の開口幅を有しているものである場合には、透孔に紐をスムーズに挿通することができ、ドラムに対する紐の固定作業を非常に迅速かつ簡単に行うことができる。
ここで、最小で5.9%とした理由は、最も一般的な実施形態において、紐の線径が約1mmの場合、1.5mmの透孔が最低必要となる。そこから計算すると、最小は5.9%となる。
また、最大で25%とした理由は、最も一般的な実施形態において、紐巻取量を確保し、かつ、紐巻取部の強度を考慮した場合、最低でも紐巻取部として円周の半分は必要と判断できるからである。
さらに、ドラムの強度低下や、紐を巻取可能な量の低下を招くことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した一実施形態の紐巻取装置用ドラムの底面図及び底面側から見た断面図であって、ドラムに形成した透孔に紐を挿通し、当該ドラムに紐を固定する手順を示す図である。
図2図2は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した一実施形態の紐巻取装置用ドラムを備えた靴紐巻取装置の分解斜視図である。
図3図3は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した一実施形態の紐巻取装置用ドラムの六面図及びドラムを直径方向にて切断した断面図である。
図4図4は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した一実施形態の紐巻取装置用ドラムの底面側から見た断面図であって、紐係止部の直径の大きさについて説明するための図である。
図5図5(A)~(C)は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した他の実施形態の紐巻取装置用ドラムの底面側から見た断面図及び当該ドラムに紐を固定した状態を示す底面側から見たドラムの断面図である。
図6図6は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化したさらに他の実施形態の紐巻取装置用ドラムの底面図及び底面側から見たドラムの断面図である。
図7図7(A)~(D)は本発明を靴紐巻取装置用ドラムについて具体化したさらに他の実施形態の紐巻取装置用ドラムの底面図及び当該ドラムに紐を固定する手順を示す底面側から見たドラムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、「本体中央部に形成された軸受部と、当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、を有する紐巻取装置用ドラムであって、前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、前記軸受部の周辺位置に形成された紐係止部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部と、当該紐係止部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、を有し、前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにした紐巻取装置用ドラム」、又は、「本体中央部に形成された軸受部と、当該軸受部の外方に配置された筒状の紐巻取部と、当該紐巻取部の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部と、を有する紐巻取装置用ドラムであって、前記紐巻取部の離間した位置に形成された2つの透孔と、前記軸受部の近傍位置に形成された紐係止部及び紐抑え部であって、前記2つの透孔を紐が通過できるように配置された紐係止部及び紐抑え部と、当該紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間に形成された隙間と、を有し、前記一方の透孔から他方の透孔まで紐の端部を挿通した後、当該紐を前記紐係止部及び紐抑え部と前記紐巻取部との間の隙間に挿通し直すことで、当該紐の端部を結ぶなどして形成した抜止部を前記紐係止部と前記紐巻取部とによって固定することができるようにした紐巻取装置用ドラム」であって、以下において説明する実施形態などにより好適に具体化することができる。
【0014】
以下、本発明の紐巻取装置用ドラムを靴紐の締め付けに用いることができる靴紐巻取装置用ドラムについて具体化した、図1図3に示す一実施形態について説明する。
なお、下記の実施形態と対応する紐巻取装置内部の構成およびその作用効果については、特願2013-127574(特開2015-293)、特願2016-157594(特開2018-23614)などにおいても開示されている。
また、従来から提案されている多くの紐巻取装置に使用するためのドラム又はリールとして、本発明の紐巻取装置用ドラムは利用できる。
【0015】
靴紐巻取装置1は、靴に固定されるベース部材2と、靴紐3を巻き取るための靴紐巻取装置用ドラム4と、当該ドラム4を回転駆動するための略円盤状のダイヤル5と、当該ダイヤル5を前記ベース部材2に装着するために前記ベース部材2に対して回転自在に固定される軸部材6と、当該軸部材6にて一端部が軸支されるバネ部材7などから構成されている。
ここで、紐の一例として挙げられている前記靴紐3としては、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、又は、ナイロン繊維などからなる強度に優れた組紐を好適に用いることができるが、他の樹脂又は金属からなるマルチフィラメント又はモノフィラメントの紐(ワイヤー状のものを含む)であってもよい。
当該靴紐3の直径の具体例としては、後述する紐巻取部42の外径が1.3cm程度である図1図3に示す一実施形態の場合において、0.9mm~1.1mm程度の組紐が挙げられる。
また、紐巻取装置用ドラム4の材質としては、次のものに限定されないが、POM(ポリアセタール)、ナイロン、ポリカーボネート、ABSなどが好適に使用できる。
そして、前記靴紐3の端部には、アンカーとして作用する抜止部31が形成される。
【0016】
前記ベース部材2は、有底円筒状のドラム収納部21を有しており、その底部中央に前記靴紐巻取装置用ドラム4を回転可能に軸支するための円柱状の回転軸22が突設されている。
また、前記ドラム収納部21の底部には、靴紐引出口23が2箇所形成されており、それらの靴紐引出口23は、前記回転軸22を中心として互いに約100度離間した位置に配置されている。
さらに、前記ドラム収納部21の上端部には、外側に向けて突出する3個のラチェット爪24が等間隔にて形成されている。
【0017】
前記靴紐巻取装置用ドラム4は、本体中央部を貫通する円状に形成された軸受部41と、当該軸受部41の外方に配置された円筒状の紐巻取部42と、当該紐巻取部42の軸方向両端部に形成された環状のフランジ部43と、を有している。
さらに、当該靴紐巻取装置用ドラム4は、前記軸受部41を中心として互いに180度離間した位置における前記紐巻取部42に(径方向に)形成された2つの透孔44と、前記軸受部41の周辺位置に形成された紐係止部45であって、前記2つの透孔44を靴紐3が通過できるように配置された紐係止部45と、当該紐係止部45の外面と前記紐巻取部42の内面との間に形成された隙間Sと、を有している。
また、本実施形態においては、紐係止部45を前記紐巻取部42の内側と同じ直径の円(図4(A)に記載されている円C1)、又は、前記紐巻取部42の内側より直径が大きな円(図4(A)に記載されている円C2)で形成することによって、紐係止部と紐巻取部の内側との距離が縮まり、靴紐3の抜止部31を確実に捉え、かつ、ドラム4の中央部では靴紐3を通し易く、靴紐3が抜け出し難い適切な形状とすることができる。さらに、靴紐3が回転軸22や他方の靴紐3の端部と干渉することを防止することもできる。
【0018】
ここで、前記透孔44は、好ましくは、挿通されるべき靴紐3の直径の3~7倍の大きさの開口幅、又は、前記紐巻取部42の周長に対して最小で5.9%最大で25%の円弧長の開口幅を有していると良い。より好適には、前記透孔44は、挿通されるべき靴紐3の直径の5~7倍の大きさの開口幅を有していると良い。
なお、この開口幅は、大きすぎるとドラムの強度低下、及び、紐巻取量の減少を招き、小さすぎると紐を通過させる際の作業性が低下、又は、紐を通過させる作業自体が困難となる。
そこで、図1に示す前記靴紐巻取装置用ドラム4の実施形態において、各透孔44の開口幅は、挿通されるべき靴紐3の直径の5~7倍程度の大きさで、前記紐巻取部42の周長に対して約18%(角度として約65度)の円弧長の開口幅を有している。
さらに、前記2つの透孔44の形成位置は、靴紐3が挿通されるドラム4の中央部のライン(図中における3時及び9時の左右方向のライン)と対応して開口する位置だけではなく、何れか一方の周方向に拡張する部分(それぞれ図中における2時及び8時の方向)まで広げられている。
【0019】
従って、靴紐3の一方の端部に形成した抜止部31が前記の様に透孔44を拡張した部分に納まることで、ドラムの中央部のライン上に干渉するものが無くなり、他方の靴紐3の端部を透孔44にスムーズに挿通することができる。
さらには、靴紐3の端部による干渉によって靴紐3をスムーズに巻き取りできないことを防止することができるばかりか、ドラム4から靴紐3を引き出す部分が広くゆとりがあるため、靴紐3をドラム4から引き出す部分における靴紐3の強い折り曲げ(キンク)の発生を防止でき、紐切れのトラブルを防止することもできる。
【0020】
前記軸受部41には、前記ベース部材2の前記回転軸22が挿入され、前記ドラム収納部21内にて前記靴紐巻取装置用ドラム4が回転可能となっている。
なお、前記靴紐巻取装置用ドラム4の上下両面には、前記紐巻取部42と前記軸受部41との間に形成された凹部46が形成されており、前記ドラム4の下側に形成された前記凹部46は、前記ドラム収納部21の内底部に面しており、前記2個の紐係止部45を備えている。
【0021】
本発明のこの実施形態の靴紐巻取装置用ドラム4において、前記紐係止部45は、前記軸受部41の周囲にて互いに180度離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えの一部として構成されており、前記紐巻取部42の内側と同じ直径の円C1を構成するように形成配置されている。
従って、紐係止部45と紐巻取部42の内面との距離が縮まり、靴紐3の抜止部31を確実に捉え、かつ、ドラム4の中央部では靴紐3を通し易く、靴紐3が抜け出し難くすることができる。
この軸抑えは、その内周面が前記回転軸22と接し、ドラム4の安定した回転を提供するものとなる。
前記紐係止部45の形成位置、即ち、本発明の紐係止部として作用する部分は、前記軸抑えの両端部であり、前記透孔44の端部付近である。
【0022】
一方、ドラム4の上側に形成された前記凹部46は、前記ダイヤル5側に面しており、前記紐巻取部42の内周面に沿うように環状に配置された複数の上向きの歯47を備えている。
そして、当該上向きの歯47が、前記ダイヤル5の下面に環状に配置されて形成された下向きの歯と噛合することで、前記ダイヤル5の回転を前記ドラム4に伝達できるようになっている。
前記紐係止部45は、当該紐係止部45と前記紐巻取部42との間に形成された隙間Sに挿通し直された(入れられた)靴紐3が緩んで軸心方向に抜け出さないようにするための爪48を有している。
なお、当該爪48は、前記紐係止部(軸抑え)45の上端部から前記隙間Sを部分的に覆うように外方に向けて突出形成されている。
【0023】
上記の通り構成された本発明のこの実施形態の靴紐巻取装置用ドラム4においては、前記一方の透孔44から他方の透孔44まで、ドラム本体の中央部をその直径方向にて真っ直ぐに通過するように、靴紐3の端部を挿通した後、当該靴紐3を前記紐係止部(軸抑え)45と前記紐巻取部42との間の隙間Sに挿通し直すことで、当該靴紐3の端部を結ぶなどして形成した太い部分である抜止部31を、透孔44の端部付近に形成した前記紐係止部45と前記紐巻取部42とによって挟むようにして固定することができるようになっている。
【0024】
前記ダイヤル5は、その中央部に軸穴51を有しており、その軸穴51の周囲に前記下向きの歯が形成されている。さらに、前記ダイヤル5は、その周縁部の内側面において、当該ダイヤル5の回転軸方向に延びる複数個の山部と谷部とからなる円筒状に配置された環状ギヤを備えている。
この環状ギヤの谷部と前記ラチェット爪24は噛み合うように配置されており、ダイヤル5を回転させると、前記ラチェット爪24が環状ギヤの山部を乗り越えることによって、ダイヤル5の回転を一方向にのみ可能となるように制御することができる。
【0025】
さらに、前記ダイヤル5は、その回転軸方向に沿って移動可能となっており、前記上向きの歯47と前記下向きの歯とが噛合して前記ダイヤル5の回転を前記ドラム4に伝達できるロック状態と、前記上向きの歯47と前記下向きの歯とが離れて前記ドラム4が自由に回転できるように前記ダイヤル5から前記ドラム4を切り離した解除状態とを実現することができるようになっている。
【0026】
前記軸部材6は、前記ダイヤル5を前記ベース部材2に対して回転自在に装着するために、ネジ8によって前記ベース部材2に固定されるものであって、前記ダイヤル5を前記ドラム4に接近させたロック位置と当該ドラム4から離した解除位置との間で移動可能な状態で保持し案内することができるようになっている。
前記バネ部材7は、前記ダイヤル5がロック位置から解除位置まで移動することで、前記ドラム4をロック状態から解除状態に切替可能としている。
また、前記ダイヤル5の上側には、円盤状のカバー部材9が嵌合し、靴紐巻取装置1の内部を保護し、ゴミなどが入り込まないようになっている。
【0027】
次に、上記にて説明した靴紐巻取装置用ドラム4に靴紐3の端部を固定し、靴紐巻取装置1を組み付ける方法について説明する。
まず、靴紐巻取装置1のベース部材2にドラム4を装着するため、2ヶ所の靴紐引出口23にそれぞれ靴紐3の先端を挿入し、ドラム収納部21側からその靴紐3の両端部を引き出す。
そして、図1に示すように、ドラム4の一方の透孔44から他方の透孔44まで、靴紐3の先端を挿通し、靴紐3の先端を結ぶ、又は、靴紐3の先端に別部材のアンカーをカシメ付けることなどによって靴紐3の先端部に大径の抜止部31を形成する。
【0028】
次いで、当該靴紐3を前記紐係止部(軸抑え)45の外面と前記紐巻取部42の内面との間の隙間Sに配置するように挿通し直す(入れる)ことで、当該靴紐3の抜止部31を前記紐係止部45と前記紐巻取部42とによって挟むようにして固定する。
【0029】
引き続き、ドラム4の前記とは反対側の透孔44から他の透孔44まで、前記靴紐3の他方の先端を挿通し、当該靴紐3の先端を結ぶ、又は、靴紐3の先端に別部材のアンカーをカシメ付けることなどによって靴紐3の先端部に抜止部31を形成する。
次いで、当該靴紐3を前記とは反対側の前記紐係止部(軸抑え)45の内面と前記紐巻取部42の外面との間の隙間Sに配置するように挿通し直す(入れる)ことで、当該靴紐3の抜止部31を前記紐係止部45と前記紐巻取部42とによって挟むようにして固定する。
なお、靴紐3の先端部に抜止部31を予め形成し、その靴紐3の先端部を両透孔44に挿通する手順を採用してもよい。
【0030】
上記の方法を採用することで、ドラム4に対して靴紐3の端部を固定する作業を極めて迅速、簡単かつ確実に終えることができる。
上記の通り靴紐3の両端をドラム4に固定した後、ドラム4をドラム収納部21内に配置し、前記バネ部材7を取り付けた前記軸部材6をネジ8によって回転軸22に固定することで、前記ダイヤル5をベース部材2に装着するとともに、カバー部材9をダイヤル5に取り付ける。
【0031】
次に、本発明の紐巻取装置用ドラムを具体化した他の実施形態について説明する。
図5(A)~(C)に示すドラム4の実施形態においては、前記紐巻取部42に形成された2つの透孔44が、何れか一方の周方向に拡張するように形成されており、靴紐3の抜止部31を配置するスペースを提供できるようになっている。
また、前記紐係止部45が、前記軸受部41の周囲にて互いに離間して形成された一対の弧状の突起からなる軸抑えであって、前記紐巻取部42と同心円上に形成されている(図4(B)の円C3参照)。なお、この円C3は、前記紐巻取部42の内面を構成する円の直径よりも直径が小さいものとなっている。
即ち、当該2つの透孔44の形成位置は、靴紐3が挿通されるドラム4の中央部のライン(図中における3時及び9時の左右方向のライン)と対応して開口する位置だけではなく、何れか一方の周方向に拡張する部分(それぞれ図中における2時及び8時の方向)まで広げられている。
さらに、図5(B)に示す実施形態においては、透孔44が周方向に拡張された部分と対応する位置において、前記紐係止部(軸抑え)45に窪み45aが形成されており、当該部分に抜止部31が収まるようになっている。
また、図5(C)に示す実施形態においては、各軸抑えの厚みが薄く形成されており、それらの一方の端部(180度離れた位置)に別途紐係止部45を突設している。
従って、当該紐係止部45が形成されていない部分の軸抑えと前記紐巻取部42との間の隙間Sが広くても靴紐3の抜止部31を固定できるようになっている。
【0032】
図6に示すドラム4の実施形態においては、前記軸受部41の近傍位置に、互いに180度離間して形成された紐係止部45及び紐抑え部49であって、前記2つの透孔44を靴紐3が図中の矢印で示すように本体中央部を支障無くスムーズに通過できるように配置されたものを有している。
この実施形態においては、回転軸22に接する軸抑えを省略しており、靴紐3が回転軸22に触れるのを防止する作用を前記紐抑え部49によって得ている。
そして、この実施形態においても、当該紐係止部45及び紐抑え部49の外面と、前記紐巻取部42の内面との間に形成された隙間Sを有しており、前記一方の透孔44から他方の透孔44まで靴紐3の端部を真っ直ぐに挿通した後、当該靴紐3を前記隙間Sに挿通し直す(入れる)ことで、当該靴紐3の端部を結ぶなどして形成した抜止部31を前記紐係止部45と前記紐巻取部42とによって挟むようにして固定することができる。
なお、靴紐3の端部に抜止部31を形成するためには、一重結びであったり、金具などにてカシメることを採用できる。
【0033】
図7に示すドラム4の実施形態においては、他の実施形態とは異なり、2つの透孔44の形成位置が互いに接近した位置(およそ、図中の10時から12時までの位置と、7時から9時までの位置)とされている。
そして、図6に示す実施形態と同様に、前記軸受部41の近傍位置に形成された紐係止部45及び紐抑え部49であって、2つの透孔44を靴紐3が通過できるように配置されたものを有している。
従って、前記紐係止部45及び紐抑え部49の形成位置が図6に示す実施形態とは異なり、互いに180度離間した位置には形成されていない。
しかしながら、前記紐係止部45の形成位置は、透孔44の端部付近であり、靴紐3の抜止部31を当該紐係止部45と前記紐巻取部42とによって挟むようにして固定することができるようになっている。
なお、各透孔44の開口幅は、他の実施形態と同様に、挿通されるべき靴紐3の直径の5~7倍程度の大きさで、前記紐巻取部42の周長に対して約18%(角度として約65度)の円弧長の開口幅を有している。
【0034】
本発明は、靴紐以外の紐(例えば、次のものに限定されないが、鞄や袋の紐、帽子の紐、衣服の紐、医療器具の紐など)を巻き取るための紐巻取装置用ドラムとして具体化して実施したり、その趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状、寸法、角度、設置位置、大きさ、数などを適宜変更して実施してもよい。
例えば、本発明は、透孔44を何れか一方の周方向に拡張しないで、図中の3時及び9時の方向にのみ左右対称にて形成しても良い。
また、本発明は、紐の1つの端部のみを固定するドラムとして利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、紐を固定する作業性に優れた紐巻取装置用ドラムとして産業上好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 紐巻取装置の一例としての靴紐巻取装置
2 ベース部材
21 ドラム収納部
22 回転軸
23 靴紐引出口
24 ラチェット爪
3 靴紐(紐)
31 抜止部
4 靴紐巻取装置用ドラム(ドラム又はリール)
41 軸受部
42 紐巻取部
43 フランジ部
44 透孔
45 紐係止部(軸抑え)
45a 窪み
46 凹部
47 上向きの歯
48 爪
49 紐抑え部
5 ダイヤル
51 軸穴
6 軸部材
7 バネ部材
8 ネジ
9 カバー部材
S 隙間
C1 紐巻取部の内面と同じ直径の円
C2 紐巻取部の内面より大きい直径の円
C3 紐巻取部の内面より小さい直径の円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7