(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039020
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】施術器および施術方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145952
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】512135584
【氏名又は名称】株式会社ミヤコケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】阿部 あい子
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
4C053JJ18
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減すること。
【解決手段】施術用グローブ20a,20bを介して被施術者の体に蓄電される電荷が、放電回路14によって放電されるため、被施術者の体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。もとより、施術用グローブ20a,20bを介して被施術者の体に電気刺激を与えることができるため、筋肉に刺激を与える施術を行うことができる。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に電気刺激を与えることで、筋肉に刺激を与えることが可能および/または美容成分を肌の深層部まで浸透させることが可能な施術器であって、
電源に電気的に接続可能な電源接続端子と、
前記電源接続端子と電気的に接続可能な第1および第2出力端子と、
前記第1および第2出力端子に電気的に接続されると共に前記生体に接触可能な第1および第2導子と、
前記第1および第2導子を介して前記生体に蓄積された電荷を放電可能な放電回路と、
を備える施術器。
【請求項2】
前記電源接続端子と前記第1および第2出力端子とを電気的に接続可能であると共に前記第1および第2出力端子の電極を周期的に切替可能な電極切替回路と、前記第1および第2出力端子の電極を切り替えると共に前記生体に蓄積された電荷を放電するよう前記電極切替回路および前記放電回路を制御する制御部と、をさらに備え、
該制御部は、前記電極を切り替える毎に前記生体に蓄積された電荷を放電するよう前記電極切替回路および前記放電回路を制御する
請求項1に記載の施術器。
【請求項3】
前記電極切替回路は、一端が前記電源接続端子に接続されると共に他端がグランドに接地された第1および第2スイッチング素子と、一端が前記電源接続端子に接続されると共に他端が前記第1および第2出力端子に接続され,前記第1および第2スイッチング素子のオン動作に伴ってオンするよう前記第1および第2スイッチング素子に並列に配置された第3および第4スイッチング素子と、一端が前記第1および第2出力端子に接続されると共に他端が前記グランドに接地され,前記第1および第2スイッチング素子に並列に配置されると共に前記第3および第4スイッチング素子に直列に配置された第5および第6スイッチング素子と、を有しており、
前記放電回路は、前記第1および第2出力端子間に接続された放電抵抗を有しており、
前記制御部は、前記第1および第6スイッチング素子をオンすると共に前記第2および第5スイッチング素子をオフする第1状態と、前記第2および第5スイッチング素子をオンすると共に前記第1および第6スイッチング素子をオフする第2状態と、を交互に繰り返し実行すると共に、前記第1状態から前記第2状態への切替えの際に、前記第1、第2および第5スイッチング素子をオフすると共に前記第6スイッチング素子をオンする第3状態、および、前記第2状態から前記第1状態への切替えの際に、前記第1、第2および第6スイッチング素子をオフする第4状態を実行するよう前記電極切替回路および前記放電回路を制御する
請求項2に記載の施術器。
【請求項4】
前記制御部は、低周波治療に適した周波数よりも高い第1周波数で前記第1状態と前記第2状態とを交互に繰り返す第1動作を実行すると共に、該第1動作が前記第1周波数よりも長い第2周波数の周期で所定時間繰り返されるよう前記電極切替回路および前記放電回路を制御する
請求項3に記載の施術器。
【請求項5】
前記第1および第2導子は、導電性を有するグローブである
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の施術器。
【請求項6】
生体に電気刺激を与えることで、筋肉に刺激を与えることが可能および/または美容成分を肌の深層部まで浸透させることが可能な施術方法であって、
(a)前記生体に第1および第2導子を接触させ、
(b)前記第1および第2導子に通電すると共に、
(c)前記第1および第2導子を介して前記生体に蓄積された電荷を放電する
施術方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)は、前記第1および第2導子の電極を周期的に切り替えるステップを含んでおり、
前記ステップ(c)は、前記第1および第2導子の電極の切り替え時に、前記第1および第2導子を介して前記生体に蓄積された電荷を放電するステップを含んでいる
請求項6に記載の施術方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)は、低周波治療に適した周波数よりも高い第1周波数で前記第1および第2導子の電極を交互に切替える動作を、前記第1周波数よりも長い第2周波数の周期で所定時間繰り返すステップを含んでいる
請求項7に記載の施術方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に電気刺激を与えることで筋肉に刺激を与えることが可能および/または生体に電気刺激を与えることで美容成分を肌の深層部まで浸透させることが可能な施術器および施術方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001-76884号公報(特許文献1)には、導子を生体に接触させると共に、当該導子に低周波のパルス電流を流して患部の治療などの施術を行う施術器が記載されている。
【0003】
当該施術器は、高周波の矩形波パルス群の繰り返しを刺激信号として、当該刺激信号を低周波の正弦波に近似した波形に変調して生体に付与するため、皮膚の表層の筋肉およびインナーマッスルに良好に電気刺激を与えることができると共に、低周波を用いた施術に特有の刺激感(ピリピリ感)を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導子が装着された生体は、等価的にコンデンサとして機能し、導子に通電することで当該生体にコンデンサ容量に応じた電荷が蓄積される。当該生体に電荷が蓄積された状態で導子への通電が継続されると、生体に不要な刺激として不快感が生じる。上述した公報に記載の施術器は、こうした生体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激については、何ら言及がなされておらず、施術の際に生ずる不快感の低減という点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減に資する施術器および施術方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の施術器は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る施術器の好ましい形態によれば、生体に電気刺激を与えることで、筋肉に刺激を与えることが可能および/または美容成分を肌の深層部まで浸透させることが可能な施術器が構成される。当該施術器は、電源に電気的に接続可能な電源接続端子と、電源接続端子と電気的に接続可能な第1および第2出力端子と、第1および第2出力端子に電気的に接続されると共に生体に接触可能な第1および第2導子と、第1および第2導子を介して生体に蓄積された電荷を放電可能な放電回路と、を備えている。電極切替え回路は、電源接続端子と第1および第2出力端子とを電気的に接続可能であると共に第1および第2出力端子の電極を周期的に切替可能である。
【0009】
本発明によれば、第1および第2導子を介して生体に電気刺激を与えることができるため、筋肉に刺激を与えたり、美容成分を肌の深層部まで浸透させたりする施術を行うことができる。そして、当該施術において、放電回路を用いて生体に蓄積された電荷を放電することができるため、生体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0010】
本発明に係る施術器の更なる形態によれば、電極切替回路と、制御部と、をさらに備えている。電極切替回路は、電源接続端子と第1および第2出力端子とを電気的に接続可能であると共に、第1および第2出力端子の電極を周期的に切替可能である。また、制御部は、第1および第2出力端子の電極を切り替えると共に、生体に蓄積された電荷を放電するように電極切替回路および前記放電回路を制御する。そして、当該制御部は、電極を切り替える毎に生体に蓄積された電荷を放電するように電極切替回路および放電回路を制御する。
【0011】
本形態によれば、電極が切り替わる毎に放電するため、生体に電荷が蓄積することを効果的に抑制することができる。これにより、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0012】
本発明に係る施術器の更なる形態によれば、電極切替回路は、第1および第2スイッチング素子と、第3および第4スイッチング素子と、第5および第6スイッチング素子と、を有している。第1および第2スイッチング素子は、一端が電源接続端子に接続されると共に他端がグランドに接地されている。第3および第4スイッチング素子は、一端が電源接続端子に接続されると共に他端が第1および第2出力端子に接続され、第1および第2スイッチング素子のオン動作に伴ってオンするように第1および第2スイッチング素子に並列に配置されている。第5および第6スイッチング素子は、一端が第1および第2出力端子に接続されると共に他端がグランドに接地され、第1および第2スイッチング素子に並列に配置されると共に第3および第4スイッチング素子に直列に配置されている。また、放電回路は、第1および第2出力端子間に接続された放電抵抗を有している。そして、制御部は、第1および第6スイッチング素子をオンすると共に第2および第5スイッチング素子をオフする第1状態と、第2および第5スイッチング素子をオンすると共に第1および第6スイッチング素子をオフする第2状態と、を交互に繰り返し実行すると共に、第1状態から第2状態への切替えの際に、第1、第2および第5スイッチング素子をオフすると共に第6スイッチング素子をオンする第3状態、および、第2状態から第1状態への切替えの際に、第1、第2および第6スイッチング素子をオフする第4状態を実行するように電極切替回路および放電回路を制御する。
【0013】
本形態によれば、第1、第2、第3、第4、第5および第6スイッチング素子をスイッチングするのみという簡易な制御で、第1および第2導子(第1および第2出力端子)の電極を切替えることができると共に、生体に蓄積した電荷の放電を電極の切替え時に行うことができる。
【0014】
本発明に係る施術器の更なる形態によれば、制御部は、低周波治療に適した周波数よりも高い第1周波数で第1状態と第2状態とを交互に繰り返す第1動作を実行すると共に、当該第1動作が第1周波数よりも長い第2周波数の周期で所定時間繰り返されるように電極切替回路および放電回路を制御する。
【0015】
本形態によれば、低周波治療に適した周波数(例えば、0.1Hz~1000Hz)よりも高い第1周波数、具体的には、中周波(例えば、1000Hz~10000Hz)や高周波(例えば、10000Hz以上)の電流を生体に流すため、皮下約2~10cmまで電気刺激をあたえることができ、インナーマッスルに刺激を与えることができる。また、当該中周波や高周波による通電を、当該中周波や高周波よりも長い周波数、即ち、低周波の周期で所定時間繰り返すため、低周波に近似した電流を生体に流しているのと同等の作用、具体的には、中周波や高周波では電気刺激を与えることができない皮下の表層の筋肉に電気刺激を与えることができる。なお、実際に生体に流れる電流は中周波や高周波であるため、低周波を用いた施術に特有の刺激感(ピリピリ感)を低減することができる。
【0016】
本発明に係る施術器の更なる形態によれば、第1および第2導子は、導電性を有するグローブである。
【0017】
本形態によれば、導子を施術箇所の形状によりフィットさせた状態で施術を行うことができるため、きめ細かで効率の良い施術を行うことができる。
【0018】
本発明に係る施術方法の好ましい形態によれば、生体に電気刺激を与えることで、筋肉に刺激を与えることが可能および/または美容成分を肌の深層部まで浸透させることが可能な施術方法が構成される。当該施術方法では、(a)生体に第1および第2導子を接触させ、(b)第1および第2導子に通電すると共に、(c)第1および第2導子を介して生体に蓄積された電荷を放電する。
【0019】
本発明によれば、第1および第2導子を介して生体に電気刺激を与えることができるため、筋肉に刺激を与えたり、美容成分を肌の深層部まで浸透させたりする施術を行うことができる。そして、当該施術において、放電回路を用いて生体に蓄積された電荷を放電することができるため、生体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0020】
本発明に係る施術方法の更なる形態によれば、ステップ(b)は、第1および第2導子の電極を周期的に切り替えるステップを含んでいる。また、ステップ(c)は、第1および第2導子の電極の切り替え時に、第1および第2導子を介して生体に蓄積された電荷を放電するステップを含んでいる。
【0021】
本形態によれば、電極が切り替わる毎に放電するため、生体に電荷が蓄積することを効果的に抑制することができる。これにより、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0022】
本発明に係る施術方法の更なる形態によれば、ステップ(b)は、低周波治療に適した周波数よりも高い第1周波数で第1および第2導子の電極を交互に切替える動作を、第1周波数よりも長い第2周波数の周期で所定時間繰り返すステップを含んでいる。
【0023】
本形態によれば、低周波治療に適した周波数(例えば、0.1Hz~1000Hz)よりも高い第1周波数、具体的には、中周波(例えば、1000Hz~10000Hz)や高周波(例えば、10000Hz以上)の電流を生体に流すため、皮下約2~10cmまで電気刺激をあたえることができ、インナーマッスルに刺激を与えることができる。また、当該中周波や高周波による通電を、当該中周波や高周波よりも長い周波数、即ち、低周波の周期で所定時間繰り返すため、低周波に近似した電流を生体に流しているのと同等の作用、具体的には、中周波や高周波では電気刺激を与えることができない皮下の表層の筋肉に電気刺激を与えることができる。なお、実際に生体に流れる電流は中周波や高周波であるため、低周波を用いた施術に特有の刺激感(ピリピリ感)を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態に係る施術器1の構成の概略を示す概略構成図である。
【
図2】EMS駆動回路10の一例を示す説明図である。
【
図3】出力可変回路9からEMS駆動回路10に供給される電流の波形、スイッチング素子SW1,SW3,SW4,SW6へのスイッチング信号の波形、および、出力端子T2,T3から出力される電流の波形を示す説明図である。
【
図4】変形例の施術器100の構成の概略を示す概略構成図である。
【
図5】変形例の施術器200の構成の概略を示す概略構成図である。
【
図6】導電性プローブ220a,220bの一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0027】
本実施の形態に係る施術器1は、生体に電気刺激を与えて筋肉を刺激することで筋肉を訓練し強化するElectric Muscle Stimulation(電気的筋肉刺激法、以下、「EMS」という。)美容機器であり、
図1に示すように、装置本体2と、当該装置本体2に電気的に接続される施術用グローブ20a,20bと、を備えている。装置本体2は、電源80に電気的に接続可能であり、当該電源80から供給される電力により駆動する。
【0028】
装置本体2は、
図1に示すように、操作部4と、表示パネル6と、電源80からの交流入力を安定化した直流出力に変換するコンバータ8と、コンバータ8によって変換された直流出力を調整可能な出力可変回路9と、EMS駆動回路10と、装置全体を制御する電子制御ユニット18と、を備えている。
【0029】
操作部4は、装置本体2の電源をオン/オフする図示しない電源スイッチや、施術用グローブ20a,20bに通電する電流値や周波数を切り替えるレベル切替スイッチ(図示せず)などを有している。表示パネル6は、電源の状態(オン/オフ)や、設定された電流値・周波数などを表示する。
【0030】
出力可変回路9は、コンバータ8によって変換された直流出力を、レベル切替スイッチによって設定された周波数および電流値に調整したうえでEMS駆動回路10に供給する。本実施の形態では、出力可変回路9からEMS駆動回路10に供給される電流は、
図3(a)に示すように、低周波治療に適した周波数(低周波、0.1Hz~1000Hz)、例えば、6Hzないし12Hz、パルス幅2msないし4msの矩形波とした。
【0031】
EMS駆動回路10は、
図2に示すように、入力端子T1と、出力端子T2,T3と、電極切替回路12と、放電回路14と、を備えている。電極切替回路12は、抵抗R1,R2,R3,R4と、スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6と、を有している。入力端子T1は、本発明における「電源接続端子」に対応し、出力端子T2,T3は、それぞれ本発明における「第1出力端子」および「第2出力端子」に対応する実施構成の一例である。また、スイッチング素子SW1は、本発明における「第1スイッチング素子」に対応し、スイッチング素子SW2は、本発明における「第3スイッチング素子」に対応し、スイッチング素子SW3は、本発明における「第5スイッチング素子」に対応し、スイッチング素子SW4は、本発明における「第2スイッチング素子」に対応し、スイッチング素子SW5は、本発明における「第4スイッチング素子」に対応し、スイッチング素子SW6は、本発明における「第6スイッチング素子」に対応する実施構成の一例である。
【0032】
抵抗R1は、一端が入力端子T1に電気的に接続されている。抵抗R2は、一端が抵抗R1の他端に電気的に接続されている。スイッチング素子SW1は、コレクタが抵抗R2の他端に電気的に接続されており、エミッタがグランドGに接地されている。即ち、抵抗R1,R2およびスイッチング素子SW3は、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続されている。
【0033】
スイッチング素子SW2は、エミッタが接続点y1で抵抗R1の一端に電気的に接続されている。換言すれば、スイッチング素子SW2は、エミッタが接続点y1を介して入力端子T1に電気的に接続されていると言うことができる。また、スイッチング素子SW2は、ベースが抵抗R1および抵抗R2の接続点y2に電気的に接続されている。スイッチング素子SW3は、コレクタがスイッチング素子SW2のコレクタに電気的に接続されており、エミッタがグランドGに接地されている。即ち、スイッチング素子SW2,SW3は、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続されていると共に、抵抗R1,R2およびスイッチング素子SW1に並列に配置されている。スイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3の接続点y3は、出力端子T2に電気的に接続されている。
【0034】
また、抵抗R3は、一端が入力端子T1に電気的に接続されている。抵抗R4は、一端が抵抗R3の他端に電気的に接続されている。スイッチング素子SW4は、コレクタが抵抗R4の他端に電気的に接続されており、エミッタがグランドGに接地されている。即ち、抵抗R3,R4およびスイッチング素子SW4は、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続されている。
【0035】
スイッチング素子SW5は、エミッタが接続点y4で抵抗R3の一端に電気的に接続されている。換言すれば、スイッチング素子SW5は、エミッタが接続点y4を介して入力端子T1に電気的に接続されていると言うことができる。また、スイッチング素子SW5は、ベースが抵抗R3および抵抗R4の接続点y5に電気的に接続されている。スイッチング素子SW6は、コレクタがスイッチング素子SW5のコレクタに電気的に接続されており、エミッタがグランドGに接地されている。即ち、スイッチング素子SW5,SW6は、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続されていると共に、抵抗R3,R4およびスイッチング素子SW4に並列に配置されている。スイッチング素子SW5およびスイッチング素子SW6の接続点y6は、出力端子T3に電気的に接続されている。
【0036】
なお、スイッチング素子SW1,SW4は、PNPトランジスタであり、スイッチング素子SW2,SW3,SW5,SW6はNPNトランジスタである。即ち、本実施の形態では、出力端子T2,T3のハイサイド側に、PNPトランジスタであるスイッチング素子SW1,SW4を配置し、出力端子T2,T3のローサイド側に、NPNトランジスタであるスイッチング素子SW2,SW3,SW5,SW6を配置している。
【0037】
放電回路14は、
図2に示すように、スイッチング素子SW3,SW6と、放電抵抗Rdと、を有している。スイッチング素子SW3,SW6は、電極切替回路12と共用である。放電抵抗Rdは、出力端子T2と接続点y3との接続点y7と、出力端子T3と接続点y6との接続点y8と、の間に、電極切替回路12に並列に配置されている。
【0038】
電子制御ユニット18は、
図1に示すように、CPU18aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU18aの他にEMSプログラムなどの処理プログラムを記憶するROM18bと、データを一時的に記憶するRAM18cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット18には、電源スイッチからオン/オフ信号や、レベル切替スイッチからの設定振幅値(電流値や電圧値),設定周波数、図示しないタイマーからの施術時間などが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット18からは、出力可変回路9への駆動信号やEMS駆動回路10への駆動信号(スイッチング素子SW1,SW3,SW4,SW6のスイッチング信号)などが出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット18は、本発明における「制御部」に対応する実施構成の一例である。
【0039】
施術用グローブ20a,20bは、銀や銅等を電気抵抗1kΩ以下となるように混入した導電性繊維素材によって構成されている。導子として施術用グローブ20a,20bを用いることによって、施術箇所の形状によりフィットさせた状態で施術を行うことができる。これにより、きめ細かで効率の良い施術を行うことができる。施術用グローブ20aは、本発明における「第1導子」および「グローブ」に対応し、施術用グローブ20bは、本発明における「第2導子」および「グローブ」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
次に、こうして構成された施術器1の動作について説明する。施術者が操作部4の電源スイッチをオン操作すると共に被施術者の体(施術箇所)に施術用グローブ20a,20bを接触させると、電子制御ユニット18のCPU18aは、ROM18bに格納されたEMSプログラムにしたがって施術器1を駆動する。電子制御ユニット18のCPU18aは、まず、レベル切替スイッチで設定した振幅値および周波数(例えば、6Hzないし12Hz)の電流がEMS駆動回路10に出力されるように、出力可変回路9を制御する処理を実行する。
【0041】
そして、電子制御ユニット18のCPU18aは、EMS駆動回路10の電極切替回路12のスイッチング素子SW1,SW6をオンすると共に、スイッチング素子SW3,SW4をオフするように、当該SW1,SW3,SW4,SW6を制御する処理を実行する。スイッチング素子SW1がオンされることに伴って、スイッチング素子SW2がオンされ、出力端子T2がプラス極に通電する。一方、スイッチング素子SW6がオンされることによって、出力端子T3がマイナス極に通電する(以下、「第1状態」という)。これにより、被施術者の施術箇所に接触された施術用グローブ20a,20bに、レベル切替スイッチで設定した振幅値の電流(EMSに適した振幅値の電流)が流れる。具体的には、施術用グローブ20aから施術用グローブ20bへレベル切替スイッチで設定した振幅値の電流(EMSに適した振幅値の電流)が流れる。このとき、被施術者の体は、等価的にコンデンサとして機能するため、被施術者の体には電荷が蓄積される。
【0042】
続いて、電子制御ユニット18のCPU18aは、上記状態からEMS駆動回路10の電極切替回路12のスイッチング素子SW1をオフにする処理、即ち、スイッチング素子SW3,SW6をオンすると共に、スイッチング素子SW1,SW4をオフするように、当該SW1,SW3,SW4,SW6を制御する処理を実行する。これにより、被施術者の体に蓄積された電荷は、放電抵抗Rdおよびスイッチング素子SW3,SW6を介してグランドGに流れる。即ち、被施術者の体に蓄積された電荷が放電される(以下、「第1放電状態」という)。このように、被施術者の体には、電荷が蓄積されないため、体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0043】
こうして被施術者の体に蓄積された電荷を放電した後、電子制御ユニット18のCPU18aは、EMS駆動回路10の電極切替回路12のスイッチング素子SW1,SW6をオフすると共に、スイッチング素子SW3,SW4をオンするように、当該SW1,SW3,SW4,SW6を制御する処理を実行する。スイッチング素子SW4がオンされることに伴って、スイッチング素子SW5がオンされ、出力端子T3がプラス極に通電する。一方、スイッチング素子SW3がオンされることによって、出力端子T2がマイナス極に通電する(以下、「第2状態」という)。これにより、第1状態(施術用グローブ20aから施術用グローブ20b)とは逆の方向、即ち、施術用グローブ20bから施術用グローブ20aへレベル切替スイッチで設定した振幅値の電流(EMSに適した振幅値の電流)が流れる。このときも、第1状態のときと同様、被施術者の体に電荷が蓄積される。
【0044】
続いて、電子制御ユニット18のCPU18aは、上記状態からEMS駆動回路10の電極切替回路12のスイッチング素子SW4をオフにする処理、即ち、スイッチング素子SW3,SW6をオンすると共に、スイッチング素子SW1,SW4をオフするように、当該SW1,SW3,SW4,SW6を制御する処理を実行する。これにより、被施術者の体に蓄積された電荷は、放電抵抗Rdおよびスイッチング素子SW3,SW6を介してグランドGに流れる。即ち、被施術者の体に蓄積された電荷が放電される(以下、「第2放電状態」という)。このように、被施術者の体には、電荷が蓄積されないため、体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0045】
電子制御ユニット18のCPU18aは、第1状態から第1放電状態および第2状態を経て第2放電状態までを1サイクルとする動作が繰り返されるように、スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6のスイッチング制御を繰り返し実行する。ここで、当該1サイクルの周期は、本実施の形態では、
図3(b)に示すように、出力可変回路9からEMS駆動回路10に供給される電流の周波数(
図3(a)、低周波:0.1Hz~1000Hz)よりも高い周波数(中周波:1000Hz~10000Hzや、高周波:10000Hz以上)、例えば、5kHzないし10kHzとした。これにより、出力端子T2,T3からの出力は、
図3(c)に示すように、
図3(a)と(b)との合成波となる。即ち、被施術者の体には、低周波に近似でされた中周波や高周波の電流が流れることになる。第1状態および第2状態は、それぞれ本発明における「第1状態」および「第2状態」に対応し、第1放電状態および第2放電状態は、それぞれ本発明における「第3状態」および「第4状態」に対応する実施構成の一例である。また、出力可変回路9からEMS駆動回路10に供給される電流の周波数(
図3(a)、低周波:0.1Hz~1000Hz)は、本発明における「第2周波数」に対応し、出力可変回路9からEMS駆動回路10に供給される電流の周波数(
図3(a)、低周波:0.1Hz~1000Hz)よりも高い周波数中周波:1000Hz~10000Hzや、高周波:10000Hz以上)は、本発明における「第1周波数」に対応する実施構成の一例である。
【0046】
この結果、皮下約2~10cmまで電気刺激をあたえることができて、インナーマッスルに刺激を与えることができると共に、中周波や高周波では電気刺激を与えることができない皮下の表層の筋肉にも電気刺激を与えることができる。なお、実際に生体に流れる電流は中周波や高周波であるため、低周波を用いた施術に特有の刺激感(ピリピリ感)を低減することができる。
【0047】
電子制御ユニット18のCPU18aは、EMSプログラムにしたがって上述した処理を、設定された施術時間実行する。施術時間は、本発明における「所定時間」に対応する実施構成の一例である。
【0048】
以上説明した本実施の形態に係る施術器1によれば、施術用グローブ20a,20bを介して被施術者の体に蓄電される電荷が、放電回路14によって放電されるため、被施術者の体に蓄積された電荷に起因する不要な刺激が生じることがない。もとより、施術用グローブ20a,20bを介して被施術者の体に電気刺激を与えることができるため、筋肉に刺激を与える施術を行うことができる。これにより、施術効果を低減することなく、施術の際に生ずる不快感のさらなる低減を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る施術器1によれば、出力端子T2,T3の電極を切り替える毎に、被施術者の体に蓄電された電荷を放電するため、被施術者の体に電荷が蓄積することを効果的に抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態に係る施術器1によれば、低周波治療に適した周波数(例えば、0.1Hz~1000Hz)よりも高い中周波(例えば、1000Hz~10000Hz)や高周波(例えば、10000Hz以上)の電流を、低周波の周期で所定時間繰り返し生体に流す、即ち、3種類の異なる周波数の電流を合成あるいは干渉させて生体に流すことができるため(商品名・施術名:3DABE(3 Discharge Alternating current Blend Emsの略) wave)、皮下約2~10cmまで電気刺激をあたえることができ、インナーマッスルに刺激を与えることができると共に、中周波や高周波では電気刺激を与えることができない皮下の表層の筋肉にも電気刺激を与えることができる。なお、実際に生体に流れる電流は中周波や高周波であるため、低周波を用いた施術に特有の刺激感(ピリピリ感)を低減することができる。
【0051】
本実施形態では、スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6として、バイポーラトランジスタを用いたが、これに限らない。例えば、リレーや、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートトランジスタなどを用いても良い。
【0052】
本実施形態では、抵抗R1,R2およびスイッチング素子SW3を、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続し、スイッチング素子SW2,SW3を、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続すると共に、抵抗R1,R2およびスイッチング素子SW1に並列に配置すると共に、抵抗R3,R4およびスイッチング素子SW4を、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続し、スイッチング素子SW5,SW6を、入力端子T1およびグランドG間に直列に接続すると共に、抵抗R3,R4およびスイッチング素子SW4に並列に配置したが、生体に蓄積される電荷を放電可能であれば、スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6の数や配置、抵抗R1,R2,R3,R4の数や配置は、これに限らない。
【0053】
本実施形態では、EMS美容機器に適用したがこれに限らない。例えば、生体に美容成分を浸透させるエレクトロポレーション(EP)美容器機器やイオン導入美容機器、あるいは、EMS機能やEP機能、イオン導入機能を二つ以上備える複合美容機器に適用しても良い。
図4は、EMS機能とEP機能とを備える変形例の施術器100の一例を示す構成図である。変形例の施術器100は、
図4に示すように、モード切替回路11およびEP駆動回路16を備えている点を除いて、本実施の形態の施術器1と同一の構成を有している。施術器100では、操作部4によって選択されたモード(EMSモードまたはEPモード)に応じた振幅値(電流値または電圧値)および周波数がモード切替回路11を介して出力可変回路9からEMS駆動回路10またはEP駆動回路16に供給される。
【0054】
本実施形態では、導子として施術用グローブ20a,20bを用いたが、これに限らない。例えば、導子として導電性パッドや、導電性プローブ220a,220b、導電性マスクを用いても良い。
図5は、施術用グローブ20a,20bに替えて導電性プローブ220a,220bを用いた場合の施術器200を示す説明図であり、
図6は、導電性プローブ220a,220bの一例を示す外観図である。導電性プローブ220a,220bは、
図6に示すように、コードCD,CDを有する本体222a,222bと、当該本体222a,222bに一体にされた導電性のパッド224a,224bと、本体222a,222bに取り付けられたグリップバンド226a,226bと、から構成されている。導電性プローブ220a,220bは、例えば、Oプローブ(株式会社ミヤコケミカル製の商品名)を用いることができる。
【0055】
本実施形態では、出力端子T2,T3の電極を切り替える毎に放電する構成としたが、これに限らない。例えば、出力端子T2,T3の電極の切り替えを所定回実施後毎(例えば、スイッチング素子SW1,SW3,SW4,SW6のスイッチング周波数(高周波あるいは中周波)の1周期毎や、数周期毎など)に放電する構成や、任意あるいは所定のタイミングで放電する構成としても良い。
【0056】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。